助産師教育 NEWS LETTER 全国助産師教育協議会 Japan Society of Midwifery Education No.66 2010.3.10 川端文部科学大臣へ助産師・保健師教育の推進について陳情 全国助産師教育協議会 教育主事 2009年7月、「保健師助産師看護師法及び看護師等の人 材確保の促進に関する法律案」が可決され、助産師・保健 師の教育年限が6ヶ月以上から1年以上になりました。助 産師・保健師教育は今、大きな変化の時を迎えています。 この時を好機として、全国助産師教育協議会(全助協)は 全国保健師教育協議会(全保教)と共同して、助産師・保 健師教育の推進に向けて活動しましたので、この間の動き についてお知らせ致します。 全助協と全保教で共同して教育改革を促進する活動 1.2009年11月11日:全助協と全保教の連名で「助産師教 育及び保健師教育の充実に向けた改革加速に関する要望 書」を川端文部科学大臣宛に提出する。要望書は全助協 平澤美恵子会長と全保教村嶋幸代会長とが文部科学省看 護教育専門官に手渡し、助産師・保健師教育の改革加速 を要望しました。 2.2009年11月27日:日本看護科学学会において全助協・ 全保教が共催で交流集会を開催。演題「保健師・助産師 教育の将来像」 、発言者は江幡芳枝理事、村嶋幸代会長 (全保教) 、ファシリテーターは茅島江子理事、岡本玲子 副会長(全保教)。江幡は助産師教育の大学院および専 攻科・別科の現状について、村嶋会長は保健師の大学院 教育の必要性について話題提供をしました。参加者は 100名を超え、会場からは ʻ助産師教育の復権の時ʼ とい う力強い発言もあり盛況でした。 3.2009年12月7日:民主党参議院副会長円より子議員へ の陳情。円より子議員は「雇用と経済に希望を、女性と こどもに幸福を、医食住学で安心を」という三本柱を掲 げて活動している議員です。これまでも助産師の問題に は深い関心を寄せ、2005年1月に参議院議長に「助産師 に関する質問主意書」を提出し、政府から「分娩介助9 回を下回った場合に10回程度に満たないと判断してい る」との回答を得ています。円議員の質問を契機に分娩 扉 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 新設校の紹介 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 諸外国の母子保健 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 素敵な助産師 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 新人助産師の広場 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 教育推進委員会委員長 江 幡 芳 枝 介助10例程度が遵守されてきていることは記憶に新しい 事と思います。茅島理事をとおして円議員へ面会する機 会を得、助産師・保健師教育の改革促進について陳情し ました。参加者は江幡・茅島理事、全保教奥山則子理 事、NPOお産サポートJAPAN矢島床子代表と理事2名 の6名でした。円議員から川端文部科学大臣との面談の 場を設定して下さる旨の話を頂きました。 4.2010年1月15日:川端文部科学大臣への陳情 円議員の計らいにより川端文部科学大臣へ直接陳情す る機会を得ました。看護職の教育改革を推進している日 本看護協会より参加希望があり、4団体9名が参加しま した。全助協からは会長代理で江幡・茅島理事、全保教 村嶋会長・岡本副会長、日本看護協会から久常節子会長 と常任理事2名、NPOお産サポートJAPANから矢島代 表と理事1名が出席しました。川端文部科学大臣に対し て、各団体の代表から助産師・保健師・看護師教育の現 状と問題点について説明が行われ、保助看法改正の主旨 を尊重して、助産師・保健師教育は学部教育終了後の1 年以上の教育として大学院で教育できるように推進して 欲しい旨の要望を致しました。 円議員および川端文部科学大臣は以前からNPOお産 サポートJAPANに対して理解と支援をしてこられた経 緯があります。この度、川端文部科学大臣に直接お会い して陳情の機会を得ることができましたのは、NPOお 産サポートJAPANの地道な活動に依るところが多大に ありました。 1 2 5 8 9 ㌀ ㌀ 地区会報告 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ニュース ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 平成21年度 第3回理事会報告 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 編集後記 ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ―1― 11 14 16 16 新設校の紹介 藤華医療技術専門学校 助産学科紹介 藤華医療技術専門学校 助産学科 大分県南西部に位置する豊後大野市にある藤華医療 学科長 濱 田 了 は、各々の施設で即戦力として働くことが約束されて 技術専門学校は、平成4年に看護学科(3年課程)単 います。 科でスタート、その後平成13年に理学療法学科と作業 そのような1期生が入学して、はや9カ月が過ぎた 療法学科が追加、そして今回、平成21年4月に助産学 今、心配していた分娩介助実習も1名を除いて、すべ 科が開設されました。 てを修了できています。初めての学生、助産学科の教 大分県内の助産師の育成に関しては、これまで、県 員も初めて、初めてのカリキュラム、初めて助産学生 立の保健助産師の合同コースがあり、長年にわたり大 を受け入れる施設の助産師……すべてが初めてのこと 分県の母子保健を担っていました。この学校が大学へ ばかりでした。想定外の対応に追われた9カ月でもあ 移行するのに伴い、純粋に助産師として県内施設に残 りました。今は、迫りくる第93回助産師国家試験に備 る学生は、年平均3名程度となってしまい、大分県内 えて、国家試験対策に学生とともに奮闘中です。 も他県と同様周産期医療従事者の慢性的な人手不足を 後2ヶ月後には、彼女たちも助産師として働き始め 招いていました。 ます。県内の助産師の就業状況からみると、公的医療 このような状況の中、県内の産婦人科医の先生方を 機関では助産師の数は充足されていますが、診療所に はじめ、日本助産師会、看護協会、大分県……と多く おける充足率はかなり低くなっています。正常分娩の の方々のご支援により、助産学科の開設に至っており 大半は、これら診療所で扱われているにもかかわらず ます。 助産師の数が少ないままです。そこでの助産師の役割 本学校の教育方針は、形から心を養う実学教育…… は、ただ分娩介助をするだけの助産師で終わっていま そして校是に「礼儀・奉仕・感謝」の精神のもと医療 す。 「産婦とその家族が満足のいくお産」をするため、 人としての、態度や心を身につけることが教育目標で 「生き生きと子育てに取り組める母親」になってもら もあります。助産学科では、助産師として必要な知 うためには、妊娠中からの助産師の関わりや指導が鍵 識・技術の教授はもちろんのこと、地域に貢献できる を握るということは分かっていても出来ないのが現状 即戦力を備えた助産師を育てることを目指していま です。卒業していく学生が分娩介助要員だけの助産師 す。 にならないためにも、診療所で働く助産師の数が増 第1期生の特徴としては、県内出身者16名、県外者 え、助産師の本来の力が十分発揮できることを願うと 4名。入学者の半数以上が、産婦人科での勤務を経験 ころです。これからも地域を支えられる人材を送りだ した看護師です。そして、各産科施設の推薦を受け せるよう努力してまいります。 て、入学しています。当然、助産師の資格を得た後 ―2― 新設校の紹介 都城洋香看護専門学校助産学科の紹介 都城洋香看護専門学校助産学科 教育主事 入 澤 みち子 本学科は、宮崎県の南西部に位置する都城に平成21 た。学生の反応では、知識の獲得はもちろん、対象や 年4月、既存の看護学科に併設して学生定員10名で開 妊娠・分娩等の現象の理解において、これまでの看護 設いたしました。宮崎県の助産師就労状況も他県の例 師としての視点から大きく変化し、診断に対する責任 に漏れず、民間病院・診療所における充足率が出産数 感と自覚も芽生えてきています。継続事例実習でも、 に比較して低く、その解消の一助と、地域における母 分娩方針の変更等でやむを得なかった場合を除き各学 子ケアの向上を目的として、地域医師会をはじめ関連 生とも2例の展開を行い、それぞれ達成感のある内容 諸機関のご協力を得て発足いたしました。 となりました。一方で学生間のレディネスの差が大き 当学科の教育目標は「助産師として、対象となる いことから、学習方法等については慎重な指導が必要 人々を尊重し、専門職としての価値観、知識、技術お になると思われます。中でも基礎看護技術の確認や、 よび能力を実践に活かすことができる人材を育成す 助産過程の前提となる看護過程の展開等は、個別指導 る。」とし、実践力のある助産師の育成をめざしてい を繰り返し要しました。 ます。学生の9割は看護師の臨床経験を持ち、平均年 現在は、全てのカリキュラムを終了し国家試験が目 齢は28.4歳となっています。産科経験者は7割で助産 前に迫っている段階です。今年度の課題を評価し、来 師資格取得への意欲や学習のモチベーションは高いも 年度に向けて準備を新たに開始しているところです のがあります。教育課程は指定規則に基づき、履修単 が、地域に貢献できる助産師の育成をめざして今後と 位数を37単位、1035時間と設定いたしました。実習施 も努力を重ねたいと思っております。 設は近隣の産科診療所4施設と当校関連施設の産科病 棟・NICU等にお願いしております。診療所では助産 師学生の実習指導は初めての経験となるため、各施設 2名ずつの指導助産師の方々に、厚生労働省主催の実 習指導者講習会(特定分野)に参加していただき、指 導体制を整えました。学生の配置は一施設に3名から 4名とし、指導者の方々は意欲的で教員との連携を図 りながらきめ細かく指導していただいております。 今年度は初年度ということで、教育計画どおりに齟 齬のないよう運営していくため、努力を重ねてきまし ―3― 新設校の紹介 鹿児島大学医学部保健学科看護学専攻の紹介 鹿児島大学医学部保健学科母性・小児看護学講座 吉 留 厚 子 鹿児島大学は3つのキャンパスに分かれ、医学部保 のに不幸にして選考から外れた学生のなかには、卒業 健学科看護学専攻のキャンパスは鹿児島市の中心から 後に1年課程の学校に進学することもあり、選考人数 少し離れた丘の上に位置し、遠くに噴火している桜島 の制限をしなければならないことにジレンマを感じる を眺めることができます。本学の助産師教育の始まり こともあります。分娩実習は、離島である奄美大島の は昭和32年10月に鹿児島県立大学医学部附属助産婦学 県立大島病院を含め、5つの病院・医院で実施してい 校として発足し、昭和33年5月鹿児島大学医学部附属 ます。他の公立の病院は異常妊娠に特化していますの 助産婦学校へ移管し、専門学校の短大化に伴い、平成 で、実習は私立の病院や医院に頼らなくてはならない 元年に鹿児島大学医療技術短期大学助産学特別専攻科 現状で、実習施設の確保が非常に不安定な状況にあり として開設されました。医療短期大学の閉校に伴い、 ます。これが一番の課題であると考えています。鹿児 助産学特別専攻科も閉校への道をたどり、平成10年に 島県は離島が多く、なかには出産施設がない島もある 鹿児島大学医学部保健学科内で学部教育として助産師 ことから、奄美大島での実習で学生は、妊婦は分娩前 教育を開始することになりました。わが国の看護学教 から家族と離れ病院の近くや看護師寮に住み、出産の 育、助産学教育の流れに沿うように、教育課程が移行 時を迎えなければならないことも知ることができまし してきました。専門学校から現在まで50年以上の長い た。この出産状況が鹿児島県の特徴であり、県立大島 歴史があり、数多くの卒業生を輩出し鹿児島県の母子 病院実習の経験が卒業研究のテーマに結びつく学生も 保健に寄与しています。専門学校、医療短期大学特別 いました。 専攻科時代には20名の学生を教育してきましたが、学 本学は以前、全国助産師教育協議会に入会していま 部教育では実習期間の減少や実習施設の確保の厳しさ したが、大学化の際に退会したと聞いています。助産 から、養成数が制限され今年度は9名の学生が実習を 師教育を仲間といっしょに考え助産師教育に貢献する 終え国家試験に臨んでいます。 ためには本協議会の会員となることが必要であると考 助産師課程の選考は、3年次生より助産学の選択科 えまして、保健学科看護学専攻の教員の協力も得るこ 目を希望により履修させ、3年次の終わりに選考試験 とができ平成21年度より再度入会することができまし を実施しています。当大学では編入学生も助産師の国 た。 家試験受験資格が取得できますので、希望して入学し てくる学生もいます。助産師になりたいと思っていた ―4― 諸外国の母子保健 フランスの助産師教育と助産師活動の実際 フランス在住、アリエ県ムラン市 母子保健課助産師 モタン 康 子 (日本赤十字助産師学校卒業生) 11.新生児の神経感覚的異常の検査 2009年5月5日に助産師教育の再認識、助産師活動 範囲の再検討のスローガンを掲げて助産師団体全国評 12.子宮内器具の観察 議会を中心に、9団体の加入者がストライキを起こし 13.分娩に起因するトラブルに対する会陰括約筋訓 練 ました。フランスの政府がそれに答え、ヨーロッパ化 フランスの助産師には硬膜外麻酔分娩時、麻酔医師 の新路線を打ち出し改正案を交付しました。その中の の不在中は産婦と胎児の観察を行うことや、鎮痛剤を 改正案の2点について報告します。 はじめに現行の助産師教育を記述します。助産師団 自動ポンプで投与する際の速度を変更することも可能 体全国評議会のホームページには、1985年に初めて助 であり、予防接種の実施や規定の薬剤或いは医療器具 産師教育に研究論文が取り入れられ、2002年に、助産 の処方箋の発行の他、妊娠期間の休職の処方も許可さ 師教育は大学入学資格(バカロレア)を取得後PCEM れていることはご存じの事と思います。これらの業務 (Premier Cycle des Etudes Médicale:医学部歯学部 権に関しては今回の主題から外れていますので、機会 があればまたご紹介したいと思います。 進学希望者と共通教育)の1年終了後に試験結果の順 さて次に改正案を詳しく紹介します。第1点目の改 位により、医学部、歯学部、大学病院付属助産師学校 正点は、 (以下助産師学校)への入学が許可されています。 Ⅰ.2009年7月22日に公衆衛生法典の第4151−7−1 助産師学校では4年間にわたり理論教育、実習教 育、論文教育が行われています。「前半2年は正常産 条の一部が改正されました。 と心理学、後半2年は産科学、婦人科学、小児学を学 (HPST法:医療機関と患者の関係と地域保健機関 習し異常発見ができることを教育目的として、合計5 の か か わ り か た の 改 革 法 )に よ り、助 産 師 教 育 (LMD Maîeutique)が大学化されます。 年間の教育である。」と書かれています。 次に助産師の業務権は、下記の13点が、公衆衛生法 Clermont-ferrand市助産師学校教員 R−4127-318条(2006年10月17法令―NO2006-1268, Marie-Christine LEMARIE 記 グルノブル大学が先頭切って助産師教育5年間の大 3条2004年10月18日官報)に表示されています。 1.妊娠中の経過観察のみのエコグラフィー 学化に踏み切ったのが10年以上前、2010年度からは現 2.妊娠中あるいは正常出産後健診の際の子宮頸癌 在の全医学系課程から名前も改めて、この共通課程1 細胞診 年と、第1課程は保健衛生学(licence Santé)となり 3.妊娠末期の羊水検査 ます。教育施設こそ変化はないがそのシステムが改正 4.妊娠中・分娩中の胎児の状態、分娩監視装置の されます。医学系課程一年生(PCEM1)には、2010 観察 年度から薬学部進級希望者が加わり、4種類の医学関 5.皮膚乱切法(英Scarification cutaneous)によ 係従業者の教育機関となります。その4種類の学生の る胎児の採血及び胎児血ph値測定 呼び方は保健衛生学士一年生(L1)と改正され、 6.胎児パルスオキシメーターによる血中酸素飽和 2010年から学士2と学士3(L2とL3)と、第二課 度測定 程は修士1と修士2(M1とM2)と呼びます。 7.分娩時の局所麻酔 第 2 点 目 の 改 正 点 は、ECTS( European Credit 8.会陰切開、複雑でない会陰切開創の修復 Transfer System )を 取 り 入 れ ま す。こ の ECTS は、 9.医師到来までの新生児の緊急蘇生術 ヨーロッパ内で助産師教育受講中の学生の学科終了単 10.子宮損傷がない場合の人工胎盤娩出術及び子宮 位を加算できるようにしたもので、学生にヨーロッパ 内チェック、必要時には助産師が麻酔蘇生医に麻 圏内で自由に助産師教育継続の可能を保証していま 酔を依頼することも可能 す。ECTS は 1 年 間 に 60ECT を 修 得 単 位 と し ま す。 ―5― 諸外国の母子保健 Organisation Générale Tronc Commun et Filières en L1 Santé (L1保健衛生学の共通課程の計画書) ヨーロッパ大多数の助産師教育期間は、1年間におお も成果がある方法とされています。これらは臨床指導 よそ1500時間を費やし、1ECTS単位は25時間から30 者が実習指導法として行えます(carte conceptuelle 時間の教育時間とし、合計304ECTSを修得すること 概略図、コーチング機能、臨床判断、医学資料の勉強 と規定されております。 会)。これらの学習は校内演習または実習場で行いま す。 第3点目の改正点の研究課程の新設は、助産師の教 育程度、研究活動の向上、助産師研究者の育成、生物 工学課程(Biotechnologie)にも編入を可能にしてい 3.Les mise en situations 体験学習 ます。具体的には、保健助産科学士3年と同時に研究 これは臨床指導者が行うことと、この場合はあら 課程修士1年を修了し、研究課程修士2年は国立公衆 かじめ担当者の承諾を得て行います。 衛生院での教育を可能とします。研究修士課程修了 後、保健助産科修士1年との継続も可能です。 4.Le port folio 評価書 次に、評価はどのように行われるのかを記載しま 助産師教師、臨床指導者の総合評価ができるよう す。 に実習評価書を明確にします。評価の質を確保す Lʼévaluation des etudiants sages-femmes(助産 るために、ガイダンスを両者間で決定します。こ 師学生の評価) の評価書は学生にも指導者にも教育内容の進み方 1.Les évaluations formatives 理論的評価 が計画的に把握できるような評価書を作る必要が 各段階で学生の自立・自主を促し、動機を発展さ あります。 せいろいろな見解の学習と、その相互関係を学生 助産教育大学化問題を解決するには、国の予算から のリズムにあわせていく教育方法を行う。 地方予算へとの地方分権化に基づき、資産資源、司法 この学習法で学生の弱点を発見し最適な指導をす 機構、人材資源、動産資源、財源資源の各点を新規に る。この理論教育評価は助産師教師によって行わ 検討していくことになると考えられます。 れる。 Ⅱ.2009年7月22日付HPST法の改正によりフランス 2.L ʼ apprentisage par problème parresolution de problème L ʼ apprentisage の助産師活動の範囲が拡大されました。 Lʼapprentisage du フランス助産師評議会紙(sages-femmes contact) raisonnement clinique 問題点を解決させながらす 2009年10月号抜粋 る学習法 Marianne Benoit Truong-Canh 記 Lʼapprentisage par problème 問題点分析 助産師はこの日から健康な女性の婦人科ケアの予防 Lʼapprentisage parresolution de problème 問題点 的業務を実践することになりました。産婦人科医不足 解決 の現状対策として助産師の業務実践範囲が拡大されま した。これは助産師の専門業務上、受胎調節方法をよ Lʼapprentisage du raisonnement clinique 臨床的 りよく女性に提供することがこの法によって拡大化さ 解釈 れ、活動範囲の最も重要な新規定を説明します。 この3方法は、保健衛生に関する教育方法の中で最 ―6― 諸外国の母子保健 1.公衆衛生法典の新規定 1)L4151−1条 助産師業務は、公衆衛生法規L4151-2条から4条 に述べられている「妊娠の診断、妊娠経過の観察、分 娩に向けた精神予防準備に必要不可欠な行為、分娩監 視並びに分娩介助、出産後の母子ケアに必要な行為を 実施することが許可される」。また、公衆衛生法規L 4127-1条には「助産師が正常褥婦の産後健診を行う ことが許可される」に、次の事が加えらました。 助産業務に「受胎調節と産婦人科ケアの予防業務が 許可される」。ただし、異常や不健康な状態を発見し た場合は医師の支援を求める義務がある。 2)L5134−1条 「子宮内避妊器具 またはペッサリーは医師または 助産師が処方できる。薬局またはL2311-4条に記さ れた家族計画相談センター内での処方のみが許可され ている。ペッサリーの初使用時は医師あるいは助産師 察の必要性を勧告していますが、どのような方法で行 が行うこと。子宮内避妊器具の装着は医師または助産 うのかを今後検討されていくと思われます。 師に許可されている。この行為は医療機関あるいは公 この点に関して、ANAES(評価団体)は次のよう 認医療センターの中のみで行われる。 」 な勧告をしています。健康な女性が、喫煙習慣はな 3)「助産師は局所避妊薬と経口避妊薬の処方が可能 く、臨床上異常がなく経口避妊薬の服用を希望する場 である。ただし、血液検査に異常がある場合は主治 合には、スクーリニング血液検査は経口避妊薬服用開 医が中心となって行われる。 」 始後、3ヶ月から6ヶ月後に行えばよい(エストロプ ロジェステロン系も可)。この血液検査が実践されて いない事を理由に経口避妊薬の処方を遅らせてはなら 2.公衆衛生法典の新規定の解釈と実践 はじめに助産業務の拡大化には、婦人科治療分野は ないです。血液検査は3項目からなり、全コレステ 含まれないことを断っておきます。助産師が婦人科予 ロール値、トリグリセリン値、空腹時血糖値を検査し 防ケアを実施することは健康な女性が有利になりま ます。この検査は5年毎に行います。血液凝固系試験 す。婦人科健診中に子宮頸癌細胞診をはじめ、必要時 は必要な場合のみで、高中脂肪血の場合はかならず服 は女性に専門的な診察あるいは相談の必要性を勧告で 用前に、経口避妊薬服用開始後3ヶ月から6ヶ月後に きます。 必ず3項目の血液検査を行うことと記されておりま す。(ANAES−2004年12月発行 ホームページhttp: これに関して公衆衛生法典L4151-4条(2004年8 //www.has-sante.fr) 月9日公布)には、 「助産業務に必要な検査を処方で きる」と書かれています。しかし、異常があるなら ば、医師を紹介することが必要です。助産師はどの業 最後に法律改正に伴い、フランスの助産師業務の権 務場所にかかわらず、次の権限を修得する必要があり 限がまたひとつ増加し、それに伴い責任も重くなりま ます。「婦人科の予防的診察を行う。経口避妊薬を初 す。そして、ヨーロッパの統合によりフランスの助産 処方する。必要な場合には経口避妊薬の投与前に検査 師教育の利点であった実習教育重視型の教育姿勢が理 の補足を行う。子宮内避妊器具を装着する。経口避妊 論教育化されてきつつあります。助産技術をしっかり 薬の再処方は短期間の場合には許可される。初回子宮 確立していた教育システムが、高等教育の中で進歩と 頸癌細胞診に異常がなければ5年間はこの検査は毎年 いう名で変化しております。助産師教育課程の中で堅 行う必要はない。」などです。 実な実践教育を行うことが継続教育に結びついて実践 今後は子宮頸癌細胞診が正常な場合で経口避妊薬を 能力の高い助産師を育てることであると、昨今のフラ 長期間服用する時に、この検査の継続実践が義務づけ ンスの助産師教育の在り様を見て感じるこの頃です。 2010年1月11日 られています。しかし誰が実施するのか、主治医の診 ―7― 素敵な助産師 開業21年、真木助産師の母乳育児支援 まどれ助産院母乳育児相談室 是 枝 寿 美 私は、まどれ助産院母乳育児相談室で働いていま 援助をしたいと思いつつ何もできない無力さを感じる す。ここは、桶谷式乳房管理法認定者である真木めい ことはしばしばありました。もっと自分に知識と技術 子助産師が21年前に開業した母乳外来専門の助産院 があればとよく思っていました。ここは、母乳外来専 で、1日25人前後のお母さん方が来室されます。分泌 門なので命にかかわるような緊急性の高い事態はほぼ 不足・分泌過多・乳房トラブルで悩んでいる人や、扁 起こりません。どのようなケースでも、時間や月日を 平・陥没乳頭などにより直接授乳が困難な人、未熟児 かけて一人一人とじっくり向き合うことができます。 や病気の児に母乳をあげたい、児が母乳を嫌がって飲 助産師が活躍する場は色々あると思いますが、病院 まなくなった、復職にあたっての母乳育児の続け方、 は緊急性が求められる場面が多く、どうしても褥婦さ 母乳をやめる時の相談、母乳育児や育児全般について ん一人一人にゆっくりと時間をかけて授乳を見たり、 の相談など、様々な悩みを抱えたお母さん方がいらっ 援助をしたりすることはできないのが現状ではないか しゃいます。 と思います。地域にこういった母乳外来専門の受け皿 ここで働いてみてお母さん方からよく聞く言葉は があるということは重要だと思いますし、外来にい 「出産すると自然と母乳は出るものだと思っていまし らっしゃるお母さん方の多さをみると、ニーズも大き た。こんなに母乳育児で悩むとは思ってもみませんで いと感じます。 した。」というものです。お母さん方は出産までをイ 真木助産師は、赤ちゃんの成長を見るのも楽しみだ メージできていても、赤ちゃんが生まれてからの生活 し、同じようにお母さんたちがどんどんお母さんらし のことはイメージするところまで至っておらず、実際 くなっていく、お母さん自身の成長を見るのも楽しみ に母乳育児がスタートしてから大変さに悩むお母さん の一つだと言います。時にはお母さんたちを励まし、 たちが多いです。ここでは、お母さんたちは乳房手技 でも無理はさせないように、そしてお母さんを否定し を受けながら母乳に関することだけでなく、家族のこ ないで母乳育児を頑張る気持ちが湧き上がるようなか とや仕事のこと子供のことなど、真木助産師に様々な かわりを心がけていくなかで、お母さんと真木助産師 ことを相談します。相談に乗ってほしい、何らかの解 との間に確かな信頼関係が構築されていくのを感じま 決策を教えてほしいというときもありますが、ただ真 す。 「真木先生に出会わなければ母乳育児はもうとっ 木助産師に話を聞いてほしいという人もたくさんい くに諦めていました。 」というお母さんは多く、こう らっしゃいます。 いった存在にいつか私もなりたいと思います。 十分に母乳が出ないと自分は母親失格なのではない 今、世の中は不況ですが、この仕事はニーズもあり かと自分自身を責めてしまうお母さんは多く、誰にも お母さんたちは変わらずに来てくれます。そして、育 相談できないまま一人で悩み抱えこんで、最後の手段 児に前向きなお母さんたちがここには来てくれるの にとこちらへ来室されるお母さんも多くいらっしゃい で、私たちも前向きな母子からパワーをもらえます。 ます。真木助産師の「今までよく頑張ってきたね」と 退院してすぐに母子共に来室され、それから母乳育 いう言葉に涙を流すお母さんたちを私は何人もみてき 児を続ける1〜2年くらいにわたり乳房の状態が良く ました。母乳の悩みだけでなく、お母さんと赤ちゃ なり子どももすくすく成長し、母子の絆はどんどん深 ん、家族全体を受け止めて支えていける、そんな地域 まっていくというかけがえのない日々を近くで見るこ に根差した助産院の役割は大きいと感じます。助産師 とができ、お母さんたちの笑い声と、赤ちゃんの元気 に求められるものは知識・技術、そしてこころだとつ な泣き声と、たくさんのありがとうの中で働けて本当 くづく思います。 に幸せを感じます。私もいつか、真木助産師のように 私は、3年間大学病院に勤務しましたが、その間陥 地域に根差した活動をして、たくさんの笑顔に囲まれ 没乳頭で乳房緊満が強いケースなど、自分ではどうに て働いていきたいと思います。 も援助できないケースは多く、母乳育児が軌道にのる ―8― 新人助産師の広場 新人助産師の広場 医療法人社団スズキ病院 スズキ記念病院 助産師 佐 (医療法人社団スズキ病院附属助産学校 藤 優 平成20年度卒) 4月に入職し、新人オリエンテーションや研修、業 輩スタッフに指示されてやっとという状態でした。そ 務を覚えることに必死になっていたことが、ついこの の後「自分の直後のケアが遅かったから」 「自分のせ 間のことのように感じますが、助産師になってまもな いだ」と不安と恐怖心でベビーキャッチに入ることが く1年が経ちます。 怖くなり、過去を振り返ることばかりで前に進めませ 私は現在新生児室に勤務しており、直接、分娩の介 んでした。そんなとき、先輩方が声をかけてくださっ 助をすることはありませんが、ベビーキャッチや新生 て、私の話をたくさん聞いてくれ、自分の体験談も交 児の管理、産後の授乳指導や介助、沐浴や育児の指導 え、その時の対応など具体的に助言してくれました。 などを行っています。新生児室勤務が決まった際、友 私はそこでやっと、自分が体験したことを無駄にせず 人に「お産とれなくていいの?」と聞かれたことがあ 次に生かせるように頑張ろうと、前に進めることがで ります。分娩の介助をしたくて助産師を目指したわけ きたのです。 ではない私にとって、それは重要なことではありませ 日々、助産師の先輩たちから学ぶこと、助けられる んでした。私は物心ついたときから看護師になり小児 ことがたくさんあります。知識や技術面だけでなく、 科で勤務することが夢でした。看護学校に入り今まで 精神面でも支えられていると感じています。そして先 知らなかった看護の勉強をしていくうちに、まず小児 輩たちのように、助産師として専門的な新生児ケアを を知るには、その子が生まれてくる過程、出産時の母 しっかり学び、現場で実践できるよう努力していこう 親や家族の思いを知りたい、そして学びたいと思い始 と思います。まだまだ未熟で知らないことや経験不足 め、それがきっかけで助産師を目指しました。助産師 のこともありますが、自分がなりたいと思った道を全 の仕事というとイコール分娩介助と皆連想することが 力で進んでいきたいです。 多いと思いますが、それだけではありません。妊娠 中・産後の管理や指導、乳房管理、性教育、新生児訪 問、育児相談など活躍の分野は幅広くあり、女性の一 生に関わることのできる仕事です。私はその中で新生 児ケアや母親や家族への指導をさせていただき、赤 ちゃんの愛らしい姿に癒されて、褥婦さんたちの頑張 りと笑顔に元気をもらっています。特に、無事生まれ てきた我が子を初めて見たときの母親には、自分も胸 が熱くなりいつも感動してしまいます。 就職してちょうど半年が経った頃、ベビーキャッチ で状態の良くない児に遭遇することが続き、とても落 ち込んだ時期がありました。もちろん状態の悪いベ ビーがいつも生まれるわけではありませんが、その状 況に初めての私は、動揺と焦りで自分から動けず、先 ―9― 新人助産師の広場 新人助産師の広場 日本赤十字社 瀧 葛飾赤十字産院 野 八 重 (日本赤十字九州国際看護大学4期生) 助産師として働き始めて2年が経つ。生まれたばか たケースが増えるほど、生と死が常に隣り合わせであ りの命の温かさと重みを初めて感じた助産学実習、励 ることを痛感し、分娩に携わることへの恐怖心を感じ まし合いながら看護師・保健師・助産師免許の取得を る自分がいる。笑顔の数と同じくらい悩み、時には涙 目指していた学生の頃には想像していなかった多くの を流した2年間であった。 出来事を、今経験している。先輩方からのアドバイス しかし、どんなに戸惑いや恐怖を感じていても、助 や関わった方々からの言葉を拠りどころに自分の課題 産師という道を選択したことに後悔はない。それは、 を見出している。その課題を乗り越える過程でまた新 私が、母児とそのご家族から、日々のケアを通して、 たな課題に気がつく、ということを繰り返しながら、 教科書だけでは学べない多くのことを教えていただけ 瞬く間に過ぎた2年であった。 るからであり、また、その関わりが楽しいものだから 就職した病院は、年間2,000例近くの分娩があり、 である。一緒に悩んだり、笑ったりしてくれる同期、 産科・小児科(NICU・GCU)からなる地域周産期母 優しく、時には厳しくご指導してくださる先輩、いつ 子医療センターである。現在、私は分娩室・手術室を も私の身体を気遣い温かく見守ってくれる家族、その 中心に勤務している。当院では、分娩をローリスク分 他たくさんの人々の温かい支えと励ましがあるからだ 娩とハイリスク分娩の2つに分けて管理している。 と心から感謝している。 ローリスク分娩であっても、時には異常に移行するこ 1人の助産師として専門性や能力を磨く過程で、こ ともある。助産師が母児に対する判断・ケアに責任を れからもたくさんの課題や悩みにぶつかるだろう。だ 持つとともに、潜在的な異常が予測される場合には医 が、私を支えてくださっている方々への感謝の気持ち 師に報告し、協力して対応に当たらなければならな を忘れず、尊い命に携わる者としての責任と誇りを い。つまり、ローリスク分娩であっても、母児の安全 持って、お母さんが「産んで良かった」 、そして赤 を守るためには、助産師としての高度かつ的確なアセ ちゃんが「生まれてきて良かった」と思える瞬間のた スメント能力が求められる。 めに、「助産とは何か」を問い続けながら、一歩一歩、 また、流産や死産で子どもを亡くした親や、障害を 着実に進んでいきたいと思う。 持って生まれた子どもとその親、何らかの理由で母子 分離状態にある親に対するケアについて考えることも 多い。特別なケアを必要とする人々に関わるとき、対 象者が抱く一つ一つの反応に目を向けた個別的なケア の重要性や、母児だけでなく家族や母児を取り囲む社 会を含めた総合的なケアに目を向ける必要性を感じ る。それと同時に、助産師としての知識不足や技術の 未熟さ、自身の弱さを知り、「担当が私でなければ、 より良いケアを提供できたのではないか」という不全 感をいつも抱く。介助させていただく分娩数や関わっ ― 10 ― 地区会報告 東京地区研修会報告 聖母大学 開催日時:2009年12月5日(土) 会 母性看護・助産学 和 智 志げみ 10:00〜17:00 場:聖母大学(東京都新宿区下落合4-16-11) 参加者数:31名 参 加 費:1000円 テ ー マ:助産師教育におけるミニマム・リクワイアメントの「評価」のためのOSCEの検討 ―分娩期に焦点をあてて― 研修目的:OSCEの基本的理論を理解し、助産師教育におけるOSCEの実際を知ることで助産師教育機関への導入に 役立てること。 プログラム: 1.講義 OSCEの基本的理論 中野弘一氏 (東邦大学医学部教授) 助産教育おけるOSCEの実際 伊藤美栄氏 (京都医療センター附属京都看護助産学校) 2.グループワーク 分娩期のOSCEの評価項目の検討 3.グループワークの結果報告とまとめ 参加者の声:参加者にアンケートを実施し、12名から協力を得られた。 (回収率38.7%)参加者は、大学、専攻科、 助産師学校、さらに臨床で指導者として教育に関わる方もいた。今回は若手教員を対象としたこともあり、アン ケートに協力を得られた12名の教育経験は3年未満のものが多かった。OSCEの導入を検討している施設からの参 加が多く、助産実践能力の評価としてOSCEに関心がよせられていることが推察された。講義、グループワークに 参加し、今後ぜひ活用していきたいという声が多く、グループワークでは、他施設の教員と情報交換ができたこ とが有意義であったと、施設間の情報交換をする機会ともなっていた。本研修を企画し、研修を通して助産実践 能力を評価する方法の1つとしてOSCEを活用できる可能性を強く感じることができた。 まとめ:中野先生からは、OSCEの基本的理論についてわかりやすい講義を頂いた。新しい知識だけでなく、先生の 医学教育に携わった経験からの示唆を得た。特に、講義中のお話の中で印象に残っていることは、 「評価で重要な ことは、順番を決めることではなく、医療の現場に出して良い学生かどうかの最低ラインを引くこと。 」という言 葉である。生命に携わる医療者を育てる教員の責任の重さを再認識することができた。 伊藤先生からは、助産教育におけるOSCEの実際について、京都医療センター附属京都看護助産学校で使用して いる評価表を惜しげもなく公開して頂き、具体的な評価方法を理解することができた。さらに、グループワーク では、ほとんど初対面の教員同士で、実際に分娩期の評価表の作成に挑んだ。その結果、態度領域評価の困難性 や評価内容の選定など多くの課題が見え、有意義な時間を持つことができた。 ― 11 ― 地区会報告 中国・四国地区研修会報告 県立広島大学保健福祉学部 日 時:平成21年9月25日 場 所:県立広島大学 助産学専攻科 下 見 千 恵 11:00〜14:30 三原キャンパス(4102会議室、4301演習室) 参加者:33名 助産教育の認証評価をテーマに、 「平成21年度 中国・四国ブロック研修会および情報交換会」が開催された。参 加者は、機関校7校および個人会員あわせて18名、助産学生15名であった。 プログラム 1)講演会 「助産教育の評価について―日本助産評価機構の紹介と評価の実際―」 講師 日本助産評価機構理事長 恵美須文枝先生 2)ランチョン形式での情報交換会、その後テーマについて講師の恵美須先生を交えてディスカッションおよび 意見交換 ランチョン形式の情報交換会では、和やかな雰囲気で行われ、その後のディスカッションにおいても、同様に自 由で闊達な意見交換の場となった。講演を受けて疑問や意見に対し、直接講師の恵美須先生にお答えいただき、助 産教育の認証評価について理解が深まった。参加者の感想では、“認証評価の話を詳しく説明していただき、今後の 実習等で参考になった”、“ミニマムリクワイアメンツや認証評価についての疑問が解決できた”、“認証評価を意識す ることで、自分たちの今後の教育に対する考え、具体的な方向か見えてきた” などの意見が寄せられた。一方、 “様々な教育施設の特徴など、お互いに学び合う場にしてほしい”という意見もあった。また、“開始時期、プログラ ム等配慮がなされてよかった”と、地の利の状況など地域特有の背景も影響した意見もあり、プログラムに関しては 概ね良い評価が得られた。 〈後記〉 日本における大学の質の保証システムは、2004年度以降「認証評価」という事後チェック形式が導入され、大き く転換された。大学単位での認証評価は義務化され大学をめぐる環境が変化する中、一方、専門職大学院は専門分 野別の認証評価であり、助産教育においても、助産専門職大学院の認証評価がすでに行われたことは記憶に新しい。 助産教育は大学院での教育のほか、学部での教育や1年の養成課程がある。助産教育の分野別評価である助産専門 職大学院認証評価は教育活動等の質の保証と向上に資するという点で、あらゆる助産師教育課程において、自己点 検・自己評価の視点を得られる。教育評価とも言える自己点検・自己評価は、教育活動等の発展に向けた内部の質 保証のメカニズムでもあろう。自主的で自律的な質保証が期待されている。 ― 12 ― 地区会報告 平成21年5月〜12月にかけて行われた「今後の看護教員のあり方に関する検討会」の検討結果が厚生労働省医政 局看護課より平成22年2月17日付で公表されました。 「今後の看護教員のあり方に関する検討会」 報告書概要 本検討会では、看護教員の資質の維持・向上に向けた現状と課題を把握し、看護教員の養成と継続教育の推進、 看護実践能力の維持・向上に関する方策について検討を行った。 Ⅰ.看護教員の資質・能力に関して 質の高い教育を実施するためには、看護実践能力と教育実践能力のどちらも必要でそのバランスが重要であり、 求められる能力としては、①学生等の体験や臨床実践の状況を教材化して学生等に説明するなどの教育実践能力、 ②学生等や教員間、実習施設とのコミュニケーション能力、③学生等に適切に教えることを目的とした看護実践能 力、④マネジメント能力、⑤研究能力があげられた。 Ⅱ.看護教員の養成について 看護教員の養成においては、専任教員の要件となっている看護教員養成講習会が重要な役割を果たしているが、 実施内容のばらつきや開催都道府県の偏り等を改善するために、 ① 看護教員養成講習会の運営・評価等に関するガイドラインの作成・導入 ② 看護教員養成講習会の教育内容及び時間等を含めた実施要領の見直し ③ ブロック単位で受講者を調整する仕組みの構築 などの必要性が示され、通信制の導入、大学や大学院での養成の推進等が今後のあり方とされた。 Ⅲ.看護教員の継続教育について 看護教員の質を向上させるためには、継続教育とキャリアアップの仕組みの充実が求められており、 ① 看護師等養成所内においてFDの一環として、教員相互の授業参観による教育実践能力の向上などといった能 力開発に取り組むこと ② 新任看護教員の研修を含め、看護教員の経験等に応じた継続研修の充実に対する支援 ③ 看護教員のキャリアアップを目指すためには学会や大学院等の活用を推進すること などの必要性が示された。 Ⅳ.学生等の看護実践能力の向上を図るための教育体制について 学生等の看護実践能力の向上の観点から、学生等の実習の質を上げるためには、 ① 学内演習時から臨床の実習指導者が関わることのできるシステムや、高度実践能力を持つ看護職員(専門看 護師や認定看護師等)を教員として活用するシステムを作ること ② 看護教員と臨床の実習指導者は、患者を尊重する立場と学生等の教育者としての立場との調和を保つことが 重要で、協働する中で適切に役割分担をしていくこと ③ 学生等の実習には実習指導者の専任配置が最も望ましく、将来的には、臨地実習に対する実習指導者の専任 配置や看護教員等の配置といった体制の義務化について検討すること などの必要性が示された。 今後、看護教員の努力に加え、看護師等学校養成所間の連携を図るとともに、看護教育に携わる団体や学会、都 道府県、国は協力してこれらの改善策を着実に推進していくことが重要である。 ― 13 ― ニュース 少子化の流れを変え、男女ともに子育てや介護をしながら働き続けることができる社会を目 指して、育児・介護休業法が改正されました! 平成22年度予算案(厚生労働省医政局)には看護職員の確保・定着に積極的に取り組むため の事業予算が盛り込まれています。 ― 14 ― ニュース 医療ネグレクト……複雑な価値観が多様化してきましたが、養育者の宗教に絡んだ子ども への不適切なかかわりの一例といえます。 ― 15 ― 全国助産師教育協議会 平成21年度 第3回理事会議事録 日時:平成21年11月15日㈰ 13:00〜17:00 場所:本会事務所 出席:平澤、近藤、熊澤、村上、佐藤、島田(真)、江幡、恵美須、北川、島田(啓) 、髙田 眞鍋、平田、吉留、灘、下見、宇都宮 監事:小田切 出席者:18名 欠席:太田、茅島、我部山、監事: 丸山 書記:吉田(神奈川県立保健福祉大学) 議事次第 Ⅰ.会長挨拶 Ⅱ.議事録署名人の指名 Ⅲ.前回理事会議事録(案)の承認 Ⅳ.報告事項 1)庶務・渉外報告;村上理事、熊澤理事 ① 正会員の退会希望(平成22年度より);鳥取大学医学部、敦賀市立看護専門学校 ② 賛助会員の入会希望(平成22年度より);日本ライトサービス株式会社 2)各委員会・地区活動報告 ① 教育推進委員会(東京地区);江幡理事 ② 教育検討委員会(中部地区);北川理事、島田(啓)理事 ③ 組織強化委員会(近畿地区);高田理事、眞鍋理事 ④ 広報検討委員会(九州・沖縄地区);平田理事、吉留理事 ⑤ 教員・臨床指導者研修委員会;熊澤理事、恵美須理事 ⑥ データベース整備委員会;灘理事、下見理事、宇都宮理事 ⑦ 将来構想プロジェクト;高田理事、眞鍋理事 ⑧ 研修会(関東・甲信越地区);村上理事 3)その他 ① 要望書に関して、平澤会長より報告 ② 要望書の提出手続きについて Ⅴ.審議事項 1)12月6日 助産団体連絡会の出席者について 2)各委員会の今後の活動計画 3)平成22年度総会の日程・会場・プログラムについて 日程:6月5日㈯、6日㈰ 会場:昨年と同様、日本赤十字看護大学武蔵野キャンパス(案) 4)公益法人に向けて関連事項の検討 ① 各種規程、定款の改正 ② 公益社団法人提出書類等 ③ 臨時総会の開催(2月研修会時) 【お知らせ】 5)特別会計の今後の運用について 6)平成21年度活動報告書作成と提出時期について 平成22年度全国助産師教育協議会総会は6月5日㈯、 7)地方厚生局への訪問記録について 6日㈰に決定しました。 8)ミニマム・リクワイアメンツ冊子印刷代について 会場:日本赤十字看護大学武蔵野キャンパス 9)Webサーバー立ち上げについて 10)ニュースレター企画案(2月下旬発行予定)について 11)賛助会員入会について 12)その他 次回 第4回理事会 編 平成22年2月28日㈰ 集 後 午後1時から5時 場所:本会事務所 ●助産師教育ニュースレター 記 発行人 冬季五輪、熱戦の幕が閉じました。達成感あふ れる笑顔は感動でした。2月が駆け抜け、春弥生 (3月) 、春を告げる花、梅の花、桃の花も早めに 咲き、桜の枝先は膨らみはじめ、躍動の春がすぐ そこまで。選手からもらったバンクーバーの感動 を教育研究等の活気につないで行きたいもので す。 平田伸子(九州大学)、吉留厚子(鹿児島大学) ― 16 ― 第66号 2010年3月10日 一般社団法人 全国助産師教育協議会 Japan Society of Midwifery Education (J.S.M.E) 会長 平澤美恵子 〒111-0054 東京都台東区鳥越2−12−2 日本助産師会館3階 電話・FAX 03−3866−3017 事務局在室曜日 火・金(10〜17時) http://www.1.ocn.ne.jp/~zenjomid E-mail [email protected]
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