肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 第 1.0 版 2011 年年 8 ⽉月 1 ⽇日 バイオマーカー委員会コメント 第 1.1 版 2011 年年 10 ⽉月 12 ⽇日 バイオマーカー委員会承認 第 1.2 版 2011 年年 11 ⽉月 2 ⽇日 理理事会で修正の上承認 ⽇日 本 肺 癌 学 会 バ イ オ マ ー カ ー 委 員 会 光冨 徹哉、⾕谷⽥田部 恭、秋⽥田 弘俊、弦間 昭彦、曽⽥田 学、 豊岡 伸⼀一、中川 和彦、⻄西尾 和⼈人、萩原 弘⼀一、 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 2 ⽬目次 はじめに ..................................................................................................... 3 1.ALK 転座肺癌 ............................................................................................ 3 2.ALK 転座のメカニズム ................................................................................ 3 3.ALK 転座肺癌の臨臨床病理理学的特徴 .................................................................. 5 4.ALK 阻害剤の臨臨床試験 ................................................................................ 6 5.クリゾチニブ耐性 ....................................................................................... 7 6.ALK 転座の診断 ......................................................................................... 7 6.1FISH .................................................................................................. 7 6.2RT-‐‑‒PCR .............................................................................................. 9 6.3IHC .................................................................................................. 10 7.ALK 遺伝⼦子検査のアルゴリズム ................................................................... 14 おわりに・・・実地診療療と ALK ...................................................................... 15 ⽂文献 ......................................................................................................... 16 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 3 EML4-‐‑‒ALK 遺伝⼦子転座は⾃自治医⼤大の曽⽥田、間野 らによって 2007 年年に初めて報告された (1)。 BCR-‐‑‒ABL 遺伝⼦子の転座は慢性⾻骨髄性⽩白⾎血病の原 因であり、ABL チロシンキナーゼ阻害剤であるイ マチニブが⾼高い抗腫瘍効果をもたらすことが知ら れている。同様に、EML4-‐‑‒ALK 遺伝⼦子転座をもつ 肺癌も、ALK の阻害剤である PF02341066(クリ ゾチニブ)によく奏効することが明らかとなって きた(2)。EML4-‐‑‒ALK 転座発⾒見見時にすでにこの薬物 が存在していたこともあり、急速に臨臨床試験が進 ⾏行行し、発⾒見見から 4 年年⾜足らずの 2011 年年には承認申 請が FDA(⽶米国⾷食品医薬局)および PMDA に提出さ れ, FDA は 2011 年年 8 ⽉月 26 ⽇日付けで ALK 遺伝⼦子 異異常のある⾮非⼩小細胞肺癌の治療療薬として、クリゾ チニブを承認した。わが国でも 2012 年年初めから はクリゾチニブが実地診療療に登場することが期待 されている。しかしながら、EML4-‐‑‒ALK 肺癌を適 正に取り扱うためには様々な注意が必要である。 本稿ではクリゾチニブが有効である肺癌の診療療、 とくに ALK 遺伝⼦子変異異の診断にあたってどのよう な注意が必要かを中⼼心に最新の知⾒見見をまとめた。 統的にマススペクトロメトリーで解析する⽅方法で 全 く 独 ⽴立立 し て ALK の 活 性 化 を 発 ⾒見見 し た (4) 。 EML4-‐‑‒ALK のトランスジェニックマウスでは⽣生後 数週のうちに数百個の肺腫瘍を形成するが、ALK のチロシンキナーゼ阻害剤を投与すると急速な腫 瘍消退が観察された(5)。 2.ALK 転座のメカニズム ALK 遺 伝 ⼦子 転 座 は も と も と anaplastic lymphoma に お い て 、 次 い で inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)(炎症性筋線維芽 細胞性腫瘍)2において報告された。これらの場合、 転座の相⼿手⽅方の遺伝⼦子は EML4 ではなく、リンパ 腫の場合 NPM,TPM3, TFG, ATIC, CLTC1, MSN, TPM4, ALO17, MYH9 など、IMT の場合 TPM4, RANBP2, CARS, SEC31L1 である(6)。ALK 転座 は ALK 側のエクソン 20 以降降(チロシンキナーゼ ドメインの上流流)と融合タンパクを作っているこ とが多く、イントロン 19 上の脆弱部位が想定され ている。 1.ALK 転座肺癌 2007 年年に⾃自治医⼤大の曽⽥田、間野らのグループは軽 度度喫煙歴のある男性肺癌の cDNA 発現ライブラリ ーをマウス 3T3 線維芽細胞にトランスフェクショ ンしフォーカス形成を指標にトランスフォーミン グ活性をもつ遺伝⼦子を回収するという、1980 代に RAS 遺伝⼦子をクローニングした⽅方法を改良良した⽅方 法で EMK4-‐‑‒ALK 融合遺伝⼦子を同定した1(1)。これ は と も に 第 ⼆二 染 ⾊色 体 短 腕 に 逆 向 き に 存 在 す る EML4 ( echinoderm microtubule-‐‑‒associated protein-‐‑‒like 4 ) 遺 伝 ⼦子 と ALK ( anaplastic lymphoma kinase)遺伝⼦子が⼩小さな逆位を形成す ることで互いに同じ向きに融合したものである (1)(図1)。 受容体型チロシンキナーゼである ALK はリガンド 結合によって⼆二量量体化し活性化するが、この遺伝 ⼦子転座がおこると ALK に結合した coiled-‐‑‒coil ドメ インによってリガンド結合なしに恒常的に⼆二量量体 化し活性化すると考えられている(3)。遺伝⼦子の転 座は⾎血液腫瘍ではよく知られた癌遺伝⼦子の活性化 メカニズムであるが、上⽪皮性の固形腫瘍ではまれ であると考えられていたのでその意味でも重要な 発⾒見見といえる。⼀一⽅方、Cell Signaling Technology のグループは肺癌細胞内のリン酸化チロシンを系 1 EML4 遺伝⼦子と ALK 遺伝⼦子の rearrangement(遺伝⼦子 再構成)あるいは translocation(転座)によって両者の融 合遺伝⼦子(fusion gene)が形成される。その結果両者が 融合したタンパクが発現される。この時 ALK タンパク の発現量量は正常より増加し、検出できるようになること が多い。また、この転座は突然変異異ともいえる。 長腕 第2 染色体 EML4 ALK ・15 14 13・・・3 2 1 1 2 3・・・・・19 20 21・・・ ・・15 14 119 3・・・3 ・・・3 22 11 1 1 22 33・ ・・・13 ・19 20 21・・・ 短腕 EML4-‐ALK ALK-‐EML4 はじめに EML4-‐ALK variant 1 TK 1 2 3 ・・・・・・・ ・・ ・・ ・・ 13 20・・ ・・・・・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ Coiled-‐coil 図1.EML4-‐‑‒ALK variant 1 のメカニズム。染⾊色体 短腕上で、EML4 と ALK 遺伝⼦子内の切切断点で、逆向 に回転するようにして再結合することで、 EML4-‐‑‒ALK と ALK-‐‑‒EML4 が形成される。EML4の⼆二 量量体化に必要な coiled-‐‑‒coil domain, ALK のチロシ ンキナーゼドメインをともにもつ EML4-‐‑‒ALK のみが 活性があると考えられる。 2 IMTは,主として,筋線維芽細胞の特徴を⽰示す紡錘形 細胞の増殖から成り,リンパ球や形質細胞を主とする炎 症細胞浸潤を伴う稀な腫瘍である。原発巣としては,肺 が最も多く,次いで腸間膜・腹腔内臓器(肝・胃・腸・ 膀胱など)・頭部・四肢などと多岐にわたる。(Coffin C M, Watterson J, Priest J R ,et al: Extrapulmonary inflammatory myofibroblastic tumor (inflammatory pseudotumor); A clinicopathologic and immunohistochemical study of 84 cases. Am J Surg Pathol 19: 859―872, 1995) 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 4 EML4-‐ALK E6a/b;A20 E14; del12A20 E14;ins11del49A20 E2;A20 & E2;ins117A20 E20;A20 E13;A20 E13; ins69A20 E15del19; del20A20 E18;A20 E17ins61; ins34A20 TFG-‐ALK KIF5B-‐ALK E3;A20 V1 Tyrosine kinase V2 Tyrosine kinase V3a/3b Tyrosine kinase V4 Tyrosine kinase V5a/b Tyrosine kinase V6 Tyrosine kinase V7 Tyrosine kinase V4’ Tyrosine kinase V5’ Tyrosine kinase V8 Tyrosine kinase Tyrosine kinase E24; A20 E15; A20 Tyrosine kinase Tyrosine kinase Modified from Sasaki T et al., Eur J Cancer, 2010 図2.肺癌にみられる ALK 遺伝⼦子転座(Horn L, Pao W. EML4-‐‑‒ALK: honing in on a new target in non-‐‑‒small-‐‑‒cell lung cancer. J Clin Oncol 2009; 27: 4232-‐‑‒5.を改変) ⼀一⽅方、転座の相⼿手⽅方である NPM, TPM3, EML4 は すべてオリゴマー化ドメインあるいは coiled-‐‑‒coil ドメインをもっており、これらが ALK と融合する ことで、リガンドの結合がなくても恒常的な ALK の⼆二量量体化をきたすことで活性化されてがん化キ ナーゼになる。⼀一⽅方、別の ALK の活性化メカニズ ムとして、EGFR 遺伝⼦子変異異のような、ALK 遺伝 ⼦子のキナーゼドメインの点突然変異異が神経芽細胞 腫で報告されている。 EML4-‐‑‒ALK は肺癌特異異的であり他の腫瘍では報告 がないが、10 種類以上の variant があることが明 らかとなっている(図2)。トランスフォーム活性 には EML4 の N 末端側の coiled-‐‑‒coil ドメインと ALK エクソン 20 のキナーゼドメインは必須であ り、すべての variant はこれをもっている。中に は 10-‐‑‒70 塩基の⽋欠失や挿⼊入を伴っているものもあ る。この中では特に、EML4 エクソン 13 と ALK エクソン 20 の融合(variant 1)、EML4 エクソン 6 と ALK エクソン 20 の融合(variant 3a/b)の ⼆二種がそれぞれ 30%程度度で最も多い(図3)。 ⽵竹内らは⾼高感度度免疫染⾊色法にて陽性を⽰示した肺癌 検体から新たな ALK 転座を⾒見見いだした。この場合 KIF5B 遺伝⼦子のエクソン 24 が ALK のエクソン 20 と融合していた(7)。最近 KIF5B のエクソン 15 と 融合する例例も報告された(8)。KIF5B は細胞内⼩小器 官の運搬に関するタンパクであるが、これも⼆二量量 体化ドメインをもっており、よって EML4-‐‑‒ALK と 同様に⼆二量量体化することで ALK のキナーゼが活性 化されると考えられている。 Cell Signaling Technology のグループはチロシ ンリン酸化をうけているタンパクを、免疫沈沈降降と マススペクトロメトリーを組み合わせて、41 の肺 癌細胞株、150 以上の肺癌検体を⽤用いて網羅羅的に 検索索した。その結果、1 例例の細胞株 H2228 と 3 例例の臨臨床検体において ALK リン酸化が亢進してお り、3 例例から EML4-‐‑‒ALK(E6;A20 と E13;A20) を同定した。もう⼀一例例は TFG 遺伝⼦子(TRK fused gene)のエクソン3と転座していたが、これはリ ンパ腫において以前同定されていたものと同じ融 合であった。TFG も coiled-‐‑‒coil ドメインを有して いる。 E2:A20 2% E15:A20 2% E18:A20 2% E14:A20 3% E17:A20 1% unknown 19% E13:A20 33% E20:A20 9% E6a/b:A20 29% 図3.肺癌における EML4-‐‑‒ALK 転座の頻度度(Sasaki T, Rodig SJ, Chirieac LR, Janne PA. The biology and treatment of EML4-‐‑‒ALK non-‐‑‒small cell lung cancer. Eur J Cancer 2010; 46: 1773-‐‑‒80.より) 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 5 3.ALK 転座肺癌の臨臨床病理理学的特徴 ALK 転座を有する肺癌の特徴について表 1 にまと めた。⾮非⼩小細胞肺癌全体では 2-‐‑‒5%程度度である。 組織型では圧倒的に腺癌に多く、腺癌での頻度度は 4-‐‑‒5%程度度であり、他の組織型では例例外的である。 最初に報告された症例例は喫煙者であったが、⼀一般 には⾮非喫煙者に多いとされる。また、EGFR 遺伝 ⼦子変異異にみられるような⼈人種差はないようである (表1)。年年齢では若若年年者に多い傾向にあり ALK 肺 癌の平均年年齢は 50 代半ばとするものが多く、ALK を有しない肺癌より 10 才程度度若若年年である。性差は 明らかではないが、⾮非喫煙者の数を反映してかや や⼥女女性に多い。 表1.�種々の臨床病理学的因子とALK遺伝子転座の関連 Soda Nature 2007 Rikova Cell 2007 Lung Cancer 2008 Shinmura Perner Neoplasia 2008 Koivunen CCR 2008 Wong Cancer 2009 Boland Hum Pathol 2009 Martelli Am J pathol 2009 Rodig CCR 2009 Shaw* JCO 2009 Inamura Mod Pathol 2009 Takahashi Ann Surg 2010 Paik JTO 2011 unpublished 2011 Yatabe Total *臨床病理学的因子で選択した症例 75 103 77 603 306 266 335 120 358 141 363 211 640 831 4429 しかしながら、重要な点は ALK 転座は喫煙者や⾼高 齢者の肺癌でもまれならず検出されるので、この ような臨臨床背景のみで ALK の存在を確実に予測あ るいは否定することは不不可能であるということで ある。すなわち検査を⾏行行うまでは不不明であるとい うスタンスが必要である。 ⼀一 ⽅方 、 ALK 転 座 は 肺 腺 癌 に 主 に ⾒見見 ら れ る 他 の EGFR,KRAS,HER2 の遺伝⼦子変異異とは相互に排他 的な関係があることがくりかえし⽰示されており、 他の遺伝⼦子変異異がすでに検出されておればその症 例例における ALK 転座の検出の可能性はほとんどな いと考えていいであろう。しかし、ALK 転座を有 する治療療前の肺癌の 50 例例中 3 例例に EGFR 遺伝⼦子 変異異を認めたという報告もある。(9) 5(7%) N/A 4(4%) N/A 2(3%) 2/50(4%) 16(3%) N/A 6(2%) 8/208(4%) 13(5%) 11/209(5%) 6(2%) N/A 9(8%) N/A 20(6%) 20/358(6%) 19(13%) 18/130(14%) 11(3%) 11/253(4%) 5(2%) 5/211(2%) 28(4%) 27/450(6%) 31(4%) 31/730(4%) 175(4%) 133/2699(5%) N/A N/A 0/27 N/A 0/97 2/12* N/A N/A ー 1/11(9%) 0/110 0/102 1/190(1%) 1/100(1%) 5/649(1%) N/A N/A 0/22 (0%) N/A 4/69 (6%) 10/127 N/A N/A 14/95(15%) 19/85 (22%) 6/105(6%)腺癌 4/92 (4%) 16/275(6%) 21/364 (6%) 94/1234(8%) N/A N/A 2/41(5%) N/A 2/184 (1%) 1/82 N/A N/A 6/243(2%) 0/57 (0%) 5/147(3%)腺癌 1/118 (1%) 12/365(3%) 6/379 (2%) 34/1626(1%) N/A N/A N/A N/A 53 66 N/A N/A 55.9 61.9 59(52-65) 64(55-71) 69.8 69.6 N/A N/A 51(29-76) 66(29-90) 52 (29-76) 65 (29-90) 56 ± 11 64 ± 9 70.0 ± 9.7 65.2 ± 10.1 N/A N/A 57 ± 9.9 65 ± 9.5 N/A N/A N/A N/A 1/39 (2.5%) N/A 5/124 (4%) 8/134 N/A N/A 9/220(4%) 8/85 (9%) 5/134(4%)腺癌 4/100 (4%) 14/226(6%) 20/382 (5%) 74/1444(5%) 図4.ALK 肺癌の組織像。ALK 陽性肺癌では、特徴的な篩状パターンを⽰示す腺癌が多いとされる。これらのパター ンは腺癌組織分類で腺房型腺癌や充実型腺癌に分類される。また、印環細胞癌の形態を⽰示す腺癌においても ALK 融 合遺伝⼦子を有することが多いが、この成分は部分的にみられることがほとんどである。 ALK ALK N/A N/A 1/38 (2.5%) N/A 3/187 (2%) 5/132 N/A N/A 11/138(8%) 11/38 (29%) 6/119(5%)腺癌 1/111 (1%) 14/414(3%) 11/447 (2%) 63/1624(4%) 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 6 病理理組織学的にも特徴があることが知られており、 Inamura らは EML4-‐‑‒ALK 肺癌の 11 例例のうち 6 例例が acinar type が優勢であることを報告した。 ちなみに他の 5 例例は papillary 優勢であった(WHO 分類では 4 例例が acinar、2 例例が papillary、5 例例が mixed であった)(10)。11 例例全例例は Thyroid transcription factor1(TTF-‐‑‒1)陽性であり、cell lineage 的には EGFR 変異異の多い、末梢肺由来の 細胞に由来すると考えられる。また、Rodig らは 優勢なパタ-‐‑‒ンが細気管⽀支肺胞上⽪皮癌(BAC)、 acinar、papillary、solid のうちでの ALK 肺癌の 割合は 1/22,4/124,0/46,11/134 と solid type に多いと報告している(11)。細胞レベルでは細胞 内に豊富なムチンを有し核が偏在しているいわゆ る印環細胞(signet ring cell)を有する症例例が ALK 肺癌の82%を占めていた。すなわち、腺癌症例例を 印環細胞がない、10%以下、10%以上での ALK 転座の頻度度はそれぞれ、3/295,2/21,12/26 であ った(11)。図4に ALK 肺癌の典型的な組織像を⽰示 す。 4.ALK 阻害剤の臨臨床試験 PF02341066(クリゾチニブ)はもともと MET の 阻害剤として開発されていたが、ALK の阻害効果 もあることが明らかとなった。第 I 相試験の part I の⽤用量量増量量試験中に ALK 転座を有する IMT や、す こし以前に発⾒見見された ALK 転座を有する肺癌の症 例例に著効がみられた。このため、Part2 では 250mg ⼀一⽇日⼆二回の推奨⽤用量量で、ALK か MET の活性化を有 することが適格条件にいれられ症例例が集積された。 ALK 肺癌に対する結果が 2009 年年の⽶米国臨臨床腫瘍 学会ついで 2010 年年の New England Journal of Medicine 誌でこの第 II 相部分というべき試験の 結果が報告された(2)。さらに、この結果は 2011 年年の ASCO で update されたので(12)ここではそ の結果を紹介する。 1500 例例の肺癌患者が FISH 法によってスクリーニ ングされ 119 例例の ALK 肺癌が同定された。ほとん どの患者が前治療療をうけていた。Part2 において ALK 肺癌患者はその⽤用量量で 28 ⽇日サイクルの治療療 をうけた。ALK 肺癌患者は若若年年で⾮非喫煙、腺癌が 多い傾向であった。116 例例が抗腫瘍効果を判定可 能で、2 例例の CR を含む 71 例例が奏効し、奏効率率率は 61%、投与後 8 週, 16 週の病勢制御率率率はそれぞれ 79%, 67%であった。PD は 5 例例であった。無増 悪⽣生存期間(PFS)中央値は 10.0 ⽉月(95%信頼 区間 8.2-‐‑‒14.7 ⽉月 N=119)であった。有害事象は ⼀一般に軽度度であり、119 例例中有害事象は 114 例例に 認められたが、このうち 95 例例はグレード1/2 で あり、グレード 3/4 は 19 例例であった。特徴的な 有害事象として視障害(残像など)が 62%にみら れたが、多くは⼀一過性であり眼科的異異常はみとめ られない。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 7 この⾮非常に良良好な成績をうけて、厚⽣生労働省省医 薬品第2部会は2011.1.20⽇日、優先的な承認審査 など開発、実⽤用化の促進に向けた優遇措置を受け られる「希少疾病⽤用医薬品」に指定することを認 め、承認申請がなされ、2012年年初めの承認が⾒見見込 まれている。現在わが国ではALK肺癌の⼆二次治療療 でクリゾチニブとドセタキセルまたはペメトレキ セドとの第III相試験、および⼀一次治療療でクリゾチ ニブとシスプラチン+ペメトレキセドとを⽐比較す る第III相試験が進⾏行行中である。 5.クリゾチニブ耐性 ろう。またクリゾチニブ耐性症例例から樹⽴立立された 細 胞 株 DFCI076 は L1152R と い う ⼆二 次 変 異異 と EGFRシグナルの活性化が認められたという(9)。 6.ALK 転座の診断 ALK の 異異 常 を 検 出 す る ⽅方 法 と し て Immunohistochemistry ( IHC ) 免 疫 染 ⾊色 法 、 Fluorescence in situ hybridization(FISH) 法、RT-‐‑‒PCR 法(塩基配列列決定を含む)がある。 各検出法の⻑⾧長所と短所について表 6 にまとめると ともに、それぞれについて解説する。 ALK転座肺癌に対するクリゾチニブのPFSは10.0 ヶ⽉月であり、これはEGFR変異異肺癌におけるゲフィ チニブやエルロチニブのPFSと同等である。すな わち、当初は感受性であってもEGFR-‐‑‒TKIと同様に 耐性が獲得される。このメカニズムとしてALK遺 伝⼦子の⼆二次突然変異異が報告されている(13) 。 こ の症例例においてはC1156YとL1196Mの⼆二つのキ ナーゼドメインの⼆二次変異異が報告されており、ど ちらもin vitroでの耐性を誘導した。ことに、ALK のL1196Mは、ゲフィチニブ・エルロチニブの耐 性に関わるEGFR遺伝⼦子のT790Mやイマチニブの 耐性に関わるABLのT315Iと相同な遺伝⼦子変異異で ゲートキーパー変異異といわれる。現在開発中の新 規のALK阻害剤やHSP90阻害剤はこのような変異異 に対しても有効であるとの報告があり、耐性の機 序別に⼆二次治療療の戦略略がとられるようになるであ 6.1FISH 法 Break apart法 ALK gene Probe Probe 蛍光⾊色素でラベルした DNA プローブを標本上で 標的遺伝⼦子とハイブリダイズさせ、そのシグナル を蛍光顕微鏡で観察する⽅方法である。前述したク リゾチニブの臨臨床試験での患者適格基準は FISH が陽性であることであるので、現時点での標準検 査といえよう。また、⽶米国では FDA により、クリ ゾチニブ適応に対して FDA で承認された検査キッ トを⽤用いることとされており、現時点では FISH 法のみが FDA で認可されている。 No fusion Fusion positive 図5.Break-‐‑‒apart 法による。ALK 遺伝⼦子転座の検出。転座点を挟んだプローブを異異なる蛍光⾊色素でラベルし FISH を⾏行行うと、転座のない場合は緑と⾚赤が近接し、重なると⻩黄⾊色のシグナルを与えるが、転座があると緑と⾚赤が離離れてみ える。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 8 FISH の⽅方法としては ALK 遺伝⼦子と EML4遺伝⼦子 にそれぞれプローブをおいて、これらが融合する のを検出する⽅方法(fusion assay)と、ALK 遺伝 ⼦子の切切断点をへだてて⼆二つのプローブをおいてお き、これらが切切断されてほかの遺伝⼦子と融合する ことを検出する⽅方法(break-‐‑‒apart assay)(図5) の⼆二つが存在する。しかし、EML4 と ALK はもと もと染⾊色体 2 番短腕の⽐比較的近いとこに存在して いるので、融合のシグナルがしばしばわかりにく いこと、EML4 のみが融合の相⼿手とはかぎらない こ と 、 な ど か ら 現 在 で は 後 者 の break-‐‑‒apart assay が使われることがほとんどである。先のク リゾチニブの臨臨床試験では 15%以上の腫瘍細胞 が分離離したシグナルをもっているか、分離離した 3’ 側のシグナルを持っている場合に陽性と判断され た。Abbott Molecular 社からキットが発売されて おり(Vysis LSI ALK Dual Color, Break Apart Rearrangement Probe; Abbott Molecular, Abbott Park, IL)先の臨臨床試験を含め、多くの研 究者はこのキットを⽤用いている。 Chihara らは NEJM 誌のデータから FISH に加え て IHC か RT-‐‑‒PCR によって EML4-‐‑‒ALK 転座が確 認された症例例の奏効率率率は 22/27,81%であるのに 対し、FISH のみでそれ以上の確認がされなかった 症例例の奏効率率率は 25/52,48%でこの差は統計学的 に有意であると指摘している(P=0.007)(14)。 このことは個々の症例例における FISH の評価の難 しさを⽰示唆しており、奏効率率率と関連した判定基準 の作成が急がれる(15)。 6.1.1 FISH のための検体 FISH には通常のホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE)標本が⽤用いられる。DNA 抽出のためには 厚めの薄切切切切⽚片が求められることが多いのに対し、 FISH では免疫染⾊色と同じ厚さ(3-‐‑‒4um 厚)が求 められる。また、通常の免疫染⾊色に⽐比べてより強 い熱処理理やタンパク分解酵素を⽤用いるため、薄切切 した組織がスライドからはがれやすい。必ず剥離離 防⽌止剤を塗布されたコートスライドを⽤用いる必要 がある。代表的なコートスライドとして、MAS コ ー ト ス ラ イ ド ・ MAS-‐‑‒GP コ ー ト ス ラ イ ド ・ FRONTIER コートスライド(松浪浪ガラス)などが ある。 FISH の標的分⼦子は DNA であるため、標本内の DNA の断⽚片化に強く影響を受ける。⻑⾧長期間(5 ⽇日 以上程度度)ホルマリンに浸透させることによる過 固定や蟻酸を主成分とした脱灰操作によって、 DNA 断⽚片化が引き起こされるため、これらの操作 は避けるべきであり、結果としてこのような状態 になってしまった組織標本を⽤用いることは避ける。 とくに、肺癌⾻骨転移巣標本では、殆どの場合脱灰 操作が加わることから FISH および免疫染⾊色によ る検討ができないことを知っておく必要がある。 Size marker Sample DNA control Positive control Negative control EML4 exon 13 ALK Exon20 の variant1の検出。 図6.RT-‐‑‒PCR 産物の直接塩基配列列決定法による EML4-‐‑‒ALK 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 9 乳癌における HER2 遺伝⼦子増幅解析について は 、 固 定 ま で の 条 件 が American Society of Clinical Oncology / College of American Pathologists によって細かく規定されたガイドラ イ ン が 発 表 さ れ て い る ( http://www.cap.org/apps/docs/committee s/immunohistochemistry/summary_̲of_̲reco mmendations.pdf)。このガイドラインでは、切切 除されてから1時間以内に中性緩衝ホルマリンで の固定が始められるべきであり、腫瘍を5-‐‑‒6mm に細切切し、6以上24時間以下に固定を終了了しな ければならないとされている。また、これらの時 間(固定までの時間、固定⽅方法、固定時間)の記 録を残すように勧めているほか、未染標本は作製 してから6週間以内にテストが完了了しなければな らないと述べられている。原則としてこれらの推 奨に従う必要があるが、欧⽶米ではホルマリン固定 以外の固定液が使⽤用されることがあり、中性緩衝 ホルマリンが推奨されている。しかしながら、新 しく作成された通常ホルマリン固定でも問題が⽣生 じることはなく、これは⽇日本における乳癌、胃癌 の HER2 検査でも同様のコンセンサスが得られて いる。 FISH は形態学的な観察が可能であり、腫瘍細 胞の同定が可能であるが、暗視野での観察であり、 光学顕微鏡ほど詳細な観察は不不可能である。その ため、腫瘍細胞数が極端に少ない標本は避けるべ きである。 6.2 RT-‐‑‒PCR(reverse transcriptase3–PCR)法 EML4-‐‑‒ALK 転座は EML4 が逆⽅方向に融合するため に、EML4 側と ALK 側にそれぞれプライマーを設 定しておけば正常では PCR 産物ができず、逆位を もって転座が起こったときのみに PCR 産物が得ら れるはずであり、⾮非常に特異異度度の⾼高い転座の検出 が期待される。また、必要により塩基配列列を引き 続いて決定することも可能でヌクレオチドレベル での転座のメカニズムを検証することも可能とな る(図6)。 しかしながら、上述したように、EML4-‐‑‒ALK には 多くの種類があるので、検出に際してはそこに留留 意する必要がある。Takeuchi らはこれらを考慮し て EML4 のエクソン2とエクソン 13 に⼆二つのセ ンス側のプライマー、ALK のエクソン 20 にアン チセンス側のプライマーをおく multiplex PCR で 多くの variant を検出できると報告している(16)。 3 通常遺伝情報の流流れは DNA-‐‑‒>RNA-‐‑‒>蛋⽩白であるが、 レトロウイルスといわれる⼀一群のウイルスは RNA 依存 性 DNA 合成酵素をもっている。この酵素は reverse transcriptase(逆転写酵素)という。 この場合、染⾊色体 DNA では通常増幅可能な PCR 産物の⼤大きさの範囲をこえるため、検体としては mRNA を逆転写して合成される cDNA を⽤用いる必 要がある 4。PCR 産物の⼤大きさを知ることでどの variant であるかを知ることが可能であるが、たと えば EML4 のエクソン 20 が ALK のエクソン 20 と融合する variant2 では PCR 産物が 1284 塩基 対と⽐比較的⼤大きくなってしまうのが難点である。 このためにはかなり⾼高品質の RNA とともに⾼高い RT-‐‑‒PCR の技術が必要とされるが、通常のホルマ リン固定パラフィン包埋(FFPE)標本からこの⻑⾧長 さの RNA を抽出するのはかなり困難である。した がって、固定前に検体を処理理する必要があり、ル ーチンの臨臨床検査にもちいる場合には問題となる であろう。また、EML4-‐‑‒ALK を検出するように設 計された PCR プライマーからは、当然 KIF5B-‐‑‒ALK や TFG-‐‑‒ALK などの転座は検出できず、未知のパー トナーに対応出来ないという⽋欠点もある。 6.2.1. RT-‐‑‒PCR の検体 染⾊色体逆位によって通常は転写産物に含まれない 配列列のプライマーを⽤用いる点では、感度度が上がる と考えられるが、⻑⾧長いキメラ転写物を検出する必 要が有り、⾼高品質の RNA が必要である。また、抽 出後には腫瘍細胞が含まれていたかの検証ができ ないため、いかにその確証を取るかが重要となっ てくる。具体的には、検体採取後、ホルマリン固 定する組織と対になるように組織を採取し、直ち に RNA 分解阻害剤(RNAlater/Qiagen など)で 処理理する必要がある。また、細胞診検体では⽣生⾷食 や PBS でよく攪拌して腫瘍細胞の分布に偏りを無 くす必要がある。EGFR 遺伝⼦子変異異が DNA をもと に検討されていることから、RNA ⽤用の検体処理理法 とは異異なることに留留意が必要である。より⼀一般的 な⽅方法としては、腫瘍組織の⼀一部を OCT コンパウ ンドに包埋し、凍結切切⽚片を⽤用いることで、腫瘍細 胞に富んだ領領域から選択的に DNA もしくは RNA を取ることが可能である。また、スタンプ法は、 ⽣生検組織、切切除材料料ともに⽤用いることができるが、 腫瘍細胞が選択的にスライドに付着するため(17)、 そのアルコール固定標本は良良い解析ソースとなる。 胸⽔水などでは、免疫染⾊色法や FISH 法にも応⽤用可 4 細胞の核から抽出される DNA は genomic DNA(染⾊色 体 DNA)であり、これにはタンパク質合成の設計図と なる部分(エクソン)とタンパク質には翻訳されない部 分(イントロン)がある。タンパク質合成の前にまず DNA はメッセンジャーRNA(mRNA)に転写 (transcription)されるが、この際イントロン部分が⾶飛 ばして転写される。これをスプライシング(splicing)と 呼ぶ。さらに mRNA からタンパク質が合成される過程 を翻訳(translation)という。RNA から上述の逆転写 酵素をもちいて合成された DNA を cDNA (complementary DNA)といい、イントロン部分がない。 これに対して染⾊色体 DNA を gDNA と記載することがあ る。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 10 5 能になる点で、積極的にセルブロック を作成する ようにすべきである。 6.3IHC 法(immunohistochemistry, 免疫組織化 学法) ALK 免疫染⾊色は、その転座を有するリンパ腫の同 定に有⽤用であるが、肺癌における EML4-‐‑‒ALK は通 常の免疫組織化学染⾊色では検出されにくいことが 多い(18)。すなわち肺癌においては ALK 転座がお こっていてもリンパ腫ほどには発現レベルが⾼高く ないが、いろいろな⼯工夫により肺癌においても⾼高 い感度度、特異異度度が報告されるようになった。 6.3.1 検体 FISH 法とほぼ同様に未染薄切切標本によって検討 がなされる。抗原賦活化処理理による薄切切組織脱離離 を防⽌止するため、コートスライドグラスを⽤用いる 必要がある。少なくとも1枚の未染標本があれば 免疫染⾊色による検討が可能であるが、FISH 検体⽤用 に同時に未染標本を作っておくとよい。通常予備 を含めて 3〜~4 枚の未染標本が必要である。重要な 点は、これらのうちの 1 枚を HE 染⾊色し、腫瘍細 胞の存在を確認することである。特に TBLB 標本 では、病理理診断の後に再薄切切して作製した標本で は組織⾃自体がほとんどなくなったり、腫瘍細胞が 消失してしまうことがあるので注意を要する。組 織の固定については、FISH の項で解説したとおり、 ASCO/CAP による浸潤性乳癌における HER2 検査 ガイドラインに従って固定を⾏行行うことが求められ る。 6.3.2抗原賦活 ホルマリン固定によってタンパク質にメチレン架 橋などが形成され抗原決定基の⽴立立体障害やマスキ ングが起こる、これを加熱、たんぱく分解酵素な どを⽤用いて活性化することを抗原賦活化といい、 5 セルブロックの作製法については幾つかの⽅方法があ る。フィブリン・クロット法、グルコマンナン法、アガ ロース法等が知られているが、アルギン酸ナトリウム法 は以下の⼯工程でできる最も簡便便な⽅方法である。 アルギン酸ナトリウム法(佐野順司他、⽇日臨臨細胞誌 44:291-‐‑‒7, 2005) 1.1500rpm、5 分で遠沈沈する。 2.ホルマリン液で再浮遊させ、2-3 時間固定する。 3.再度度遠沈沈後、上澄を捨て、沈沈渣を蒸留留⽔水にて再浮遊、 洗浄する。 4.再度度遠沈沈し、上清を捨て、1%アルギン酸ナトリウ ム液 0.5mL を加え、攪拌する 5.1M 塩化カルシウム液 1〜~2 滴を加えると瞬時にゲル 化する。 6.ゲルをピンセットで摘んで取り出し、通常のパラフ ィン包埋して標本を作製する。 ALK 染⾊色の場合はもともと発現量量が少ないことも あり必須の⼯工程である。表 3 に⽰示すように、加熱 には電⼦子レンジや圧⼒力力鍋、オートクレーブなどが ⽤用いられ、いろいろな抗原賦活⽤用の溶液が⽤用いら れている。この段階で切切⽚片が剥離離することがある ので、剥離離防⽌止⽤用のアミノシランコート、MAS コ ートなどでコートされたスライドグラスを⽤用いる 必要がある。 6.3.3 ⼀一次抗体 ALK1(Dako),5A4(Novocastra, SantaCruz), SP8 ( Lab vision ) , ZAL4 ( Zymed ) ,P80 (Nichirei), D5F3(Cell signaling technology) などのクローンが ALK 抗体として存在する。表 6 にいくつかの検討結果を⽰示す。Mino-‐‑‒Kenudson らによれば ALK1 に対して D5F3 が有意に優れて いるが、残念念ながらこの抗体は現在市販されてい ない(18) 。 ⽵竹内らの ALK1, 5A4, SP8 の三者の クローンの検討では、検出法として iAEP 法(後述) を⽤用いた場合、三者とも⾼高感度度であるが、SP8 で は偽陽性率率率が⾼高い (7) 。 ⼀一⽅方、通常の検出⽅方法 を⽤用いた場合は ALK1 で感度度が低いことが複数の 報告で⽰示されている(表 3)。 6.3.4 検出法(増感法) 通常の免疫染⾊色では alkaline phosphatase や horse radish peroxidase(HRP)を標識識酵素とし た酵素抗体法が最も多く⽤用いられている。⽬目的の タンパクに対する⼀一次抗体処理理、この抗体に対す る HRP 結合 2 次抗体処理理し、この HRP 活性をジ アミノベンチジン DAB による反応によって可視 化している。 Intercalater or Linker ALK 通常のポリマー法 ALK 感度増強法 図7. 免疫染⾊色による増感法。図では通常のポリマー 法と感度度増強法の違いを⽰示している。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 11 この感度度を増強するために 2 次抗体以降降にポ リマーによって多くの HRP 分⼦子を結合させたもの が市販されている。近年年ではさらに、それらより も⾼高感度度である EnvisonFlex+(Dako 社)、iAEP 法(ニチレイ)などがある。両者は、⼀一次抗体と の反応後に、リンカーを反応させるステップを経 ることで、より多くの HRP 標識識ポリマーとの結合 を可能にしている(図7)。⽵竹内らは 11 例例の ALK—FISH 陽性の肺癌のうち、ALK-‐‑‒5A4 抗体を ⽤用いた通常法では 3 例例しか陽性像が認められなか ったにもかかわらず、iAEP 法では 11 例例すべてが 陽性となることを⽰示している(7)。⼀一⽅方で、Paik らは同様の⾼高感度度法を⽤用いなくても ALK-‐‑‒5A4 抗 体での⾄至適化を⾏行行い 640 例例中で 38 例例の IHC 陽性 例例を報告しているが(20)、FISH との⼀一致率率率が低く、 ⽅方法論論的に⼗十分に適切切化が⾏行行われているとは⾔言え ない。 表3�免疫染色によるALK転座の検出とRT-PCRあるいはFISHとの一致に関する文献報告のまとめ Author Wong Jokoji R Martelli Shaw Inamura Takeuchi Tissue/section Antibody Supplyer Dilution Antigen retrieval Cancer 2009 Paraffin/not specified Polyclonal Invitrogen 1:1000 microwave J Clin Pathol 2010 Paraffin/regular 5A4 Abcam 1:100 Microwave Am J Pathol 2009 Paraffin/regular N/A microwave J Clin Oncol 2009 Paraffin/not specified Paraffin/not specified ALK1 Dako N/A N/A ALK1 Dako 1:20 Heating Paraffin/not specified 5A4 Abcam 1:50 97C, 40min 5A4 Abcam 1:50 97C, 40min ALK1 Dako 1:20 97C, 40min ALK1 Dako 1:20 97C, 40min SP8 Abcam 1:100 97C, 40min Mod Pathol Clin Cancer Res 2009 2009 Boland Hum Pathol Clin Cancer Res Rodig Clin Cacner Res Paik Yatabe 1:100 97C, 40min ALK1 Dako 1:100 Dako PT link 2009 Paraffin/TMA ALK1 Dako 1:2 ALK1 Dako 1:2 ALK1 Dako 1:2 D5F3 Cell Signaling Technology 1:100 Dako 1:100 pressure cooker(Decloaking Chamber BiocareMedical); pressure cooker(Decloaking Chamber BiocareMedical); pressure cooker (Decloaking Chamber [Biocare Medical]) pressure cooker (Decloaking Chamber [Biocare Medical]) Dako PT link 2010 J Thorac Oncol 2011 J Thorac Oncol 2011 unpublished data Abcam Paraffin/whole section Paraffin/mostly TMA (116 of 153 cases) Yi SP8 2009 MinoKenudso n ALK1, ALKc, DAKO, Sigma, 5A4 Santa Cruz Paraffin/whole section ALK1 Paraffin/TMA 5A4 Novocatra Paraffin/TMA 5A4 Santa Cruz 1:30 Heating Dako PT link また、Yi らは、感度度の低い ALK1 抗体を⽤用いつつ も、Envision FLEX+7感度度 90%、特異異度度 97.8% であることを報告している (21)(表 3) 。これら の報告から、現時点では、ALK—5A4 抗体を⽤用い、 ⾼高感度度検出系を⽤用いる事で、他の遺伝⼦子検出法と ⾼高い⼀一致率率率を⾒見見込むことが可能と考えられる(図 8)。⽣生検組織や細胞診セルブロック検体でも同様 に免疫染⾊色を主体とした⽅方法の応⽤用が可能である と考えられる(図 9)。しかしながら、現時点では外 科材料料での検討が多く⽣生検組織での⼀一致率率率を検討 した報告が少ないので、それらの整合性が⼗十分に 検討された施設でのみ⾏行行われるべき解析⼿手技と位 置づけられよう。 Buffer Detection method citrate (pH 6.0) Dako HRP complex, not further specified Target Retrieval Envision Flex+ Solution (pH 9.0, Dako) citrate (pH 6.0) REAL envision or EDTA (pH 8.0) N/A N/A Target Retrieval EnVision + Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval iAEP method Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval EnVision+ Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval iAEP method Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval EnVision+ Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval iAEP method Solution (pH 9.0, Dako) Target Retrieval EnVision+ Solution (pH 9.0, Dako) EDTA (pH 8.0) ADVANCE (Envision Flex+) EDTA (pH 8.0) EnVision+ number of IHC-positive Standard number of Standardpositive 13 of 266 Concordance to Standard Sensitivity & Specificity N.A. 8 of 8 100% (tested in 12 of 13 ALK+ cases ) 100% 19/141 100% 12 of 12 RT-PCR, direct sequencing 8 of 254 FISH 0/662 N/A 19/19 11/11 100% 11 of 21 FISH (some RT-PCR) RT-PCR (reported previously) RT-PCR 11 of 11 100% 2 of 21 RT-PCR 2 of 11 18% (2 of 11) 11 of 21 RT-PCR 11 of 11 100% 1 of 21 RT-PCR 1 of 11 9% (1 of 11) 19/21 RT-PCR 11 of 11 2 of 21 RT-PCR 2 of 11 100% but 8 of 10 false positive 18% (2 of 11) 6/335 FISH, and partly with RT-PCR FISH (applied to all cases examined) 6 of 6 100% 10/243 40% (4 of 10) 40% and 100% respectively 11/253 4 of 239 100% and 100% respectively 25% and 100% respectively 100% and 100% respectively 9% and 100% respectively 100% and 20%, respectively 18% and 100%, respectively EDTA (pH 8.0) tyramide amplification 8 of 239 FISH (applied to all cases examined) 8 of 10 80% (8 of 10) 80% and 100%, respectively EDTA (pH 8.0) EnVision+ 6 of 37 FISH 6 of 19 32% (6 of 19) 67% and 97%, respectively EDTA (pH 8.0) EnVision+ 21 of 153 FISH 21 of 22 95% (21 of 22) 100% and 97%, respectively ADVANCE (Envision Flex+) CC1 i-view solution(Tris/bor detection kit ate/EDTA) (Ventana) 11 of 101 FISH 9 of 10 90% (9 of 10) 28 of 640 FISH 28 of 640 Target Retrieval Envision Flex+ Solution (pH 9.0, Dako) 13 of 354 RT-PCR 12 of 354 100% (28 of 28), but 10 of 612 false positive 100% , but 1 false positive 90% and 98%, respectively 100% and 98%, respectively EDTA (pH 8.0) 7 100% and 99%, respectively ⽶米国では ADVANCE detection system として販売さ れているが、これは⼤大規模臨臨床検査センター⽤用に⾄至適化 された EnvisionFlex+system のことである。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 12 ABC Clone 5A4 Clone D5F3 動物種が異なるた ない。 め、比較でき 図8−1 抗体別、検出法別の免疫染⾊色態度度のちがい。陽性反応の強い場合は、どの⽅方法を⽤用いても陽性反応が得 られる。 ABC method iAEP method Clone 5A4 Clone D5F3 Flex+ method Clone ALK1 Envision Flex+ Clone ALK1 iAEP 動物種が異なるた め、比較できない。 図8−2 しかし検体によっては、⾼高感度度法を⽤用いるだけでは不不⼗十分であり、抗体のクローンも⼤大きな影響 を与える。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 13 図9−1 ⽣生検組織での検出例例。 図9−2 細胞診セルブロックにおける検出例例。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 14 7.ALK 遺伝⼦子検査のアルゴリズム(図 10) な限り RT-‐‑‒PCR 法での検討が望まれる。⼀一般にこ のカテゴリーは稀であり、これからの奏効率率率との ⽐比較検討にゆだねられる。 どのような患者にどのタイミングで検査を⾏行行うか は重要な問題である。近未来にクリゾチニブをは じめとする ALK 阻害剤が実地臨臨床で使⽤用可能とな った時どのようなスクリーニング検査が効率率率がよ いであろうか?まだ、ALK についての検討が⼗十分 になされているとは⾔言えない状況ではあるが、こ れまで分かっている知⾒見見をもとに最も望ましいと 考えられるアルゴリズムを図 10 に⽰示した。おそら くは、すでに⾏行行われている乳癌・胃癌での HER2 検査と同様に免疫染⾊色によるスクリーニングを⾏行行 い、FISH による確認によりその対象を絞るのが適 当であろう。 RT-‐‑‒PCR は、キメラ転写物が直接塩基決定法など で確認出来れば、最も確実な融合の証明と⾔言うこ とができる。そのため、細胞診検体などしか⽤用い ることができない場合など、この RT-‐‑‒PCR 法によ る融合遺伝⼦子の証明を積極的に⾏行行う必要がある。 ただし、RT-‐‑‒PCR 陰性の場合には、免疫染⾊色もし くは FISH による再検査を妨げるものではないし、 投与適格の決定にはむしろそれによる確認が必要 である。 免疫染⾊色によるスクリーニング結果が陰性であっ ても、臨臨床的(40 歳以下の患者など)、形態学的 (粘液産⽣生を伴う篩状増⽣生パターンを⽰示す腺癌や 印環細胞癌、TTF-‐‑‒1 陽性の粘液産⽣生性腺癌)に、 ALK 陽性肺癌が疑われる場合では、EGFR 変異異・ KRAS 変異異が認められなければ FISH 検査による 確認を⾏行行ってもよいであろう。また、IHC 陽性で あっても FISH 陰性の場合も考えられるが、可能 免疫染⾊色によるスクリーニングの有⽤用性は後追い 報告で確認されているものの、その抗原賦活化法、 抗 ALK 抗体クローン、検出⽅方法などにより⼤大きく 影響される。免疫染⾊色の偽陽性は存在するものの、 それに焦点を当てて論論じた報告はまだ出されてい ないのが現状である。また、FISH 法についてもそ の評価の点で経験が求められる。特に ALK 陽性肺 癌の頻度度はこれまでの遺伝⼦子変異異よりも頻度度が少 なく、経験の蓄積や⽐比較検討が難しい。 Lung Cancer Specimen EGFR/KRAS mutation test RT-‐PCR ALK IHC RNA抽出可能(細胞診、新鮮凍結標本など) Negative Negative Positive Negative Positive ALK inhibitor 図 10 ALK 転座肺癌診断のアルゴリズム。 FISH (very rare) Positive FFPE 標本に対しては、IHC 法 によるスクリーニング、FISH 法による確認という⽅方法が、利利便便性やコストの点から 推奨される。ALK IHC 陰性であっても、臨臨床的(40 歳以下の患者)、形態学的(粘液産⽣生を伴う篩状増⽣生パターン を⽰示す、印環細胞癌などや TTF-‐‑‒1 陽性の粘液産⽣生性腺癌)に ALK 陽性肺癌が疑われる場合では FISH 法による確 認が望まれる。ALK-‐‑‒IHC 陽性、FISH 陰性となる場合は極めて少ないと考えられるが、神経内分泌泌腫瘍などでは起 こり得ることを念念頭に置く必要がある。 胸⽔水や洗浄液などの細胞診検体をもとにした RT-‐‑‒PCR 法はキメラ転写物が直接塩基決定法で証明できればきわめて 確実な融合の証明であり、その証明により ALK 阻害剤適応の対象となる。ただし、陽性の場合でも FISH 法による 確認が望まれる。陰性の場合でもほかの遺伝⼦子パートナーとの fusion の可能性があるため、免疫染⾊色法に戻っての 検査が必要となる。 IHC 法、FISH 法、RT-‐‑‒PCR 法いずれの⽅方法でも⻑⾧長所と短所があり、それをよく考慮する必要がある。⼀一つの検査が 陽性であっても 2 つ以上の⽅方法により融合遺伝⼦子の存在を確認することが望まれる。また、本⼿手引きでは、認可後 2 年年間はこれらの検査についは精度度を保証された検査センターでの施⾏行行を提⾔言したい。 肺癌患者における ALK 遺伝⼦子検査の⼿手引き 15 7.1 ALK 検査に関する提⾔言 上述したように、FISH、RT-‐‑‒PCR、免疫染⾊色をル ーチンに⾏行行える施設で、常に三者の結果を⽐比較検 討できる施設にあっては、免疫染⾊色はきわめて有 ⽤用なスクリーニング検査といえる。しかし、染⾊色 条件の精度度管理理については⾼高度度なものが要求され る。そこで、本⼿手引きにおいては、ALK 検査は、 今後⼆二年年程度度は検査センターで⾏行行うことを原則と することを提⾔言したい。EGFR 遺伝⼦子変異異検査は すでに必要な検査となっており、その検査で同等 性が報告されている三菱菱メディエンス、SRL、BML の 3 社では、ALK 検査においても、精度度管理理上問 題がないことが確認されている。これらの検査セ ンターで症例例を蓄積していくことが重要であると 考える。⾃自院での検討を希望する施設においては、 この期間に検査結果についての⽐比較検討を⾏行行い、 ⾼高い⼀一致率率率を⽰示す必要がある。また、いずれの検 査でも、⻑⾧長所・短所が存在するので(表 2)、可能 な限り 2 つ以上の検査で陽性であることを確認し たい。 保険診療療上の留留意点 2011 年年 4 ⽉月 1 ⽇日現在 ALK 遺伝⼦子再構成のた めの RT-‐‑‒PCR や FISH は保険適⽤用されていない。 N002 免疫染⾊色においては 5.その他(1 臓器につ き)400 点が請求できるが、乳腺における HER2、 ⼤大腸癌における EGFR 免疫染⾊色と同様の 690 点が 請求できるよう、早期の保険適応を望みたい。ま た、FISH 法については体外診断薬として承認され ており、近い将来に保険適応される予定である。 おわりに・・・実地診療療と ALK ALK 陽性肺癌は全肺癌の数パーセントを占め るに過ぎず、その対象は限られている。しかしな がら、ALK 転座肺癌において ALK チロシンキナ ーゼ阻害剤の効果は著明であることが多く、正し い患者選択を⾏行行うことが最重要であることはいう までもない。しかし、ALK 肺癌の診断は、肺癌に おける EGFR、乳癌や胃がんにおける HER2 検査 などの種々の遺伝⼦子検査の中にあっても難しい点 が多い。⽇日本肺癌学会が中⼼心となって衆中の知恵 を結集し、この頻度度は低いが治療療効果の⾼高い遺伝 ⼦子変異異をもつ肺癌の個別化治療療を成功させたいも のである。このために本⼿手引きが⼀一助となれば幸 いである。 ⽂文献 1. 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