機関誌143号 - 小松社会保険労務士事務所

第 143 号
え く れ し あ
瓦 版
∼ 集 い の 場 ∼
∞
∞
∞
∞ ∞
∞
∞
目
∞
∞
∞
∞
∞
∞
次
1.年次有給休暇取得の法改正(案)をめぐって
2.「ブラック企業」と外国人技能実習生
∼スクラムユニオン土屋委員長による大学講義より∼
特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
吉田舞
3.無料相談会のお知らせ
4. 江田島技能実習生による殺傷事件裁判から
裁判を傍聴して
裁判の争点のまとめ
働く者の相談室くれ
米今達也
5.外 国 人 労 働 者 関 連 の ニ ュ ー ス か ら
中国人農業技能実習生に関する人権救済申立事件(勧告)
外国人技能実習制度 人権保障の仕組みこそ必要
「もう二度と日本では働かない」円安直撃、日本から逃げ出す外国人労働者
6.本の紹介
中空構造日本の深層
河合隼雄
著
7.今月の言葉
年次 有給休 暇 取 得の 法改正 (案 )をめぐ っ て
∼
会社に時季指定の義務づけ
∼
年次有給休暇はアルバイト・パートを問わず全ての労働者の権利として労働基準法に定めら
れています。アルバイト・パートまた外国人労働者は年次有給休暇の権利があることすら知ら
ない人達が少なくありませんし、知っていても下手に請求すると解雇される憂き目に遭うので
はないかと戦々恐々としている現実もあります。日本人の場合、高校生の時また大学に入った
時点で簡単な労働基準法の知識やアルバイト等で賃金が支払われない場合の相談先等指導する
必要があると思います。賃金が支払われなければ当然労働基準監督署に相談に行くよう教えれ
ばいいのでしょうが、高校生のアルバイトの賃金未払で申告しても相手が支払いそうもなけれ
ば申告の取り下げを言ってくることもあるので地域のユニオンの存在も併せて指導していく必
要があるといえます。労働基準法の話も条文の解説に終始すれば観念的になりすぎてしまい関
心も薄いでしょうが、実際に発生した事例を通して話を進めていけば自分の経験と照らし合わ
せ て 興 味 が わ く の で は な い か と 思 い ま す 。そ う い っ た 意 味 で は「 労 働 法 は ぼ く ら の 味 方 ! (岩 波
ジ ュ ニ ア 新 書 )864 円 」は 小 説 仕 立 て で 楽 し く 読 め る の で 若 い 人 に は 読 ん で お い て も ら い た い 本
といえます。
年次有給休暇の問題は日本人のメンタリティーにとって権利なのか恩恵なのか曖昧模糊とし
た感情があるのではないでしょうか。権利と理解できている正社員でさえ取得に気後れする現
実 も あ る と い え ま す 。 労 働 調 査 会 の 調 査 (調 査 シ リ ー ズ No.85 H23.6.20)に よ る と 年 次 有 給 休
暇を積極的に取得しない理由の最も多いのが「病気や急な用事のために残しておく必要がある
か ら 」 で 64.6% 、 次 い で「 休 む と 職 場 の 他 の 人 に 迷 惑 を か け る か ら 」60.2% 、「 職 場 の 周 囲 の
人 が 取 ら な い の で 年 休 が 取 り に く い か ら 」42.2% 等 が 挙 げ ら れ て い ま す 。サ ラ リ ー マ ン 時 代 を
振 り 返 っ て み て も 同 じ よ う な 回 答 を し た と 思 い ま す 。し か し 週 休 2 日 で 祝 日 も あ る た め 年 次 有
給休暇を消化するためにわざわざ休む必要はないとの思いも強くあります。残業が連日続き休
みたくても休めない状況の人にとっての問題は適正な人員配置がなされているかどうかの問題
であっって、年休の行使ができる環境にないと言った話とは違うのではないでしょうか。こう
した状況であれは健康配慮義務の問題としてその解消に会社が取り組むのが先であるはずです。
また子育て中の労働者にとってはそのために必要な休暇は年次有給休暇で対処する問題ではな
く、既に導入されている子供の看護休暇の充実なりそうした環境に対しての休暇制度を充実さ
せていくべきだといえます。ちなみに子供の看護休暇は育児介護休業法で小学校に上がるまで
の 子 を 対 象 と し て 子 供 一 人 な ら 1 年 に 5 日 、 二 人 以 上 な ら 1 年 に 10 日 の 看 護 休 暇 の 請 求 が 認
められています。また要介護者がいる場合の介護休暇も対象となる要介護者一人なら 1 年に 5
日 、 二 人 な ら 1 年 に 10 日 の 休 暇 が 認 め ら れ て い ま す が 、 こ れ ら は 有 給 休 暇 と さ れ て い ま せ ん
ので無給とされている会社では本来請求すべきこれらの休暇ではなく年次有給休暇を請求する
ことになり年次有給休暇の消化促進に寄与しているというのも変な話です。この辺りの整備の
方が年次有給休暇の取得促進に優先する問題ではないでしょうか。
1 月 7 日 の 読 売 新 聞 に 、「 政 府 が 2 6 日 に 召 集 予 定 の 通 常 国 会 に 提 出 す る 労 働 基 準 法 改 正 案
の骨子が明らかになった。/企業に対し、従業員がいつ有給休暇を取得するか時期を指定する
こ と を 義 務 づ け 、確 実 に 取 得 さ せ る こ と が 柱 だ 。働 き 過 ぎ を 防 止 し 、仕 事 と 生 活 の 調 和 (ワ ー ク・
ラ イ フ ・ バ ラ ン ス )の 実 現 を 図 る 狙 い が あ る 。」 と の 記 事 が 載 っ て い ま し た 。 実 際 に ど の よ う な
法案なのかは分かりませんが、欧米に比べて有給休暇の取得率が低いことからこうした法案が
出てきています。それぞれの国にはそれぞれの歴史や文化的背景がありそれを考慮に入れず有
給休暇を会社が指定して取得させると言うのには大きな問題があるのではないでしょうか。公
務員や一部の大企業には病気で長期間休んだとしても賃金保障されていますが、大多数の企業
では有給休暇が無くなれば賃金カットされてしまいます。有給休暇を早々と全て消化してしま
い、風邪をひいて休んで賃金カットされるのは当然のこととして受け入れられる人はどの程度
いるでしょうか。ましてや病気がちな人、高齢な家族や病弱な家族また障害を持った家族を抱
えている人にとっては意味もなく有給休暇を消化することを望むでしょうか。こうした問題に
対 し て の 補 償 が 法 律 的 に 確 立 さ れ た う え で 「 仕 事 と 生 活 の 調 和 (ワ ー ク ・ ラ イ フ ・ バ ラ ン ス )の
実現を図る」ために有給休暇の取得を増進する施策を取られるなら理解できます。もし日本人
が長期休暇できない状況への批判への対処方法あるのならむしろサバティカル休暇制度を導入
すべきではないでしょうか。これは一定期間勤務すれば年次有給休暇とは別に長期間の有給休
暇 を 与 え る も の で す 。大 学 の 先 生 や カ ト リ ッ ク の 神 父 さ ま に は こ の 制 度 が あ る と 聞 い て い ま す 。
知 り 合 い の 神 父 さ ま は 現 在 1 年 間 の サ バ テ ィ カ ル 休 暇 で イ タ リ ア に 勉 強 に 行 っ て い ま す し 、ス
ペ イ ン の サ ン チ ャ ゴ 巡 礼 や 外 国 旅 行 さ れ た 方 も い ま す 。労 働 基 準 法 が 定 め て い る 有 給 休 暇 に は 、
勤務期間の経過によって当然に権利が発生するもので、労働者の自由な意思に従って行使でき
るものと言うことが大前提としてあります。例外として、業務に差し障りがある場合の時季変
更権が使用者に認められていること、5 日を超える年次有給休暇については労使協定によって
時季指定することができることがあります。5 日を超える日数すべてが計画的付与の対象とな
っててはいても労働者側はそんなに多くの日数を認めるはずはないので社内旅行や盆また年末
年始等に絡めて時季指定すると言うのが一般的かも知れませんが実態はよく分かりません。た
だ技能実習生が勤務していた造船所がお盆の休暇に 2 日の計画付与分を含めて長期の休暇とし
て い た 例 が あ り ま し た 。先 の 調 査 の 中 で 計 画 的 付 与 を 採 用 し て い る 企 業 は 21.8% あ る と 報 告 さ
れており、導入を希望の割合が高いのは「年休の取得日数が少ない者や労働時間が長い者、上
司が年休取得に積極的でない者」のグループと報告されています。年次有給休暇が取りにくい
環境があるのは事実でしょうが、こうした状況を克服していくためには労使双方ともに雇用関
係は主従関係ではなく契約関係であり、双方が権利と義務の関係を負っていることを強く意識
していく以外にないといえます。今回の会社に時季指定させて年次有給休暇取得の促進を図る
と言うのも先の造船所のように一斉に休暇を取る方式それもせいぜい 5 日以内の話でなければ
納得できない話ではないでしょうか。
「ブラック企業」と外国人技能実習生
∼スクラムユニオン土屋委員長による大学講義より∼
特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所
吉田舞
1 2 月 1 0 日( 水 )、私 が 非 常 勤 を し て い る 大 学 の 授 業 で 、土 屋 事 務 局 次 長 に 日 本 の「 ブ ラ ッ
ク 企 業 」と 外 国 人 技 能 実 習 生 の 現 状 に つ い て お 話 を し て い た だ き ま し た 。こ れ ま で 、授 業 で は 、
グローバル化のもとでの労働市場の再編、労働階層の両極化など、労働の性格・構成・機能の
変容についての講義をしてきました。それらを踏まえ、現在、就職活動をしている学生や、ア
ルバイトをしている学生にとって、今回の講義はとても刺激的だったようです。
講義では、アルバイトをしている受講生が多いことから、アルバイトでも有給休暇を取得で
き る 事 、残 業 代 も 保 障 さ れ な け れ ば な ら な い こ と な ど を 詳 し く 説 明 し て い た だ き ま し た 。ま た 、
アルバイトであっても契約書が交わされなければならないこと、契約書に含まれるべき具体的
な 事 項 を 教 え て も ら い ま し た 。 そ の な か で 、「 契 約 書 は も ら っ て な い 」「 も ら っ た け ど 、 じ っ く
り目を通したことない」という声もあり、改めて自分たちの現在の労働条件を見直す機会にな
り ま し た 。 受 講 生 は 、「 契 約 の 内 容 を 確 認 し な い と い う こ と は 、 自 分 の 権 利 を 失 う こ と 」「 最 終
的には自分の身は自分で守らなければならない」というようなコメントが出ていました。その
一 方 で 、「 企 業 に 抗 議 す る 勇 気 が な か っ た り 、仲 間 が い な か っ た り 、な か な か ア ク シ ョ ン が と れ
な い と い う 現 状 が あ る の で は な い か 」、つ い サ ー ビ ス 残 業 を し て し ま う こ と は「 日 本 人 の 良 い 所
で も あ る の で 、難 し い 問 題 だ と 思 う 」と い う 意 見 も 出 ま し た 。ま た 、あ る 学 生 は 、「 も っ と 早 く
こ の よ う な 情 報 が 知 り た か っ た 」「 日 本 の 教 育 シ ス テ ム の な か で 、ア ル バ イ ト を 始 め る 年 齢 に な
る 前 に( 比 較 的 早 い う ち に )、労 働 や 雇 用 に つ い て 学 び 知 識 を つ け る こ と は 、重 要 だ と 思 う 」と
話していました。
私自身、土屋さんにこの話を依頼した当初、これから社会に出て働く学生にとって、具体的
な 現 場 の 声 を 聞 く こ と は 、き っ と 今 後 の た め に な る と 考 え て い ま し た 。し か し 、実 際 は 、現 在 、
すでに自分自身もしくは友人がいわゆるブラック・アルバイトに悩んでいる学生や、家族が仕
事で体調を崩しているという学生が多かったことに驚かされました。そして何より、私自身、
土屋さんの話を聞くなかで、自分や自分の家族の労働環境を見直す良い機会となりました。
外国人技能実習生に関しては、労働相談に来る約半数が外国人であるという事実に衝撃を受
け た 学 生 も い ま し た 。い か に 外 国 人 の 日 本 で の 労 働 環 境 が 深 刻 か と い う 点 に 驚 い た だ け で な く 、
日常の生活のなかで外国人労働者に会うことがなく、それほど多くの外国人労働者が広島にい
ることを知らなかったという感想もありました。今や外国人労働者は、日本経済にはなくては
ならない存在となりつつあるにも関わらず、社会のなかでは生活者としても「顔の見えない」
存在であるということを改めて考えさせられました。
身 近 な 法 律 相 談 会 (第 9 回 )
日
時
平成27 年
2月
8 日 (日 )
13 時 ∼ 1 7 時 (受付終了は16時)
会
場
カトリック幟町教会
多目的ホール
広 島 市 中 区 幟 町 4− 42
教会の駐車場は使用できません。
どなたでもご来場ください。
外国人の方は可能であれば母国語の通訳をご同伴ください。
共催:法律相談室
響き
/
フィリピン人労働者を支援する会
江田島技能実習生による殺傷事件裁判から
1 .裁 判 を傍 聴 して
平成13年3月14日に発生した中国人技能実習生による殺傷事件が裁判員裁判として1月
19日から始まりました。初日は3倍を超える傍聴者のため抽選があり、残念ながら外れてし
まい傍聴できませんでしたが、2日目以降は全員が傍聴できる状況となりました。私にとって
関心があるのはこれまで見てきた技能実習生制度に係る様々な問題が事件の直接的原因として
有ったのかと言う点のみです。殺意があったか、精神的問題があるか否かなど傍聴する中で感
じることはあっても裁判所の判断を待ちたいと思います。社長の奥さんが死刑を望んだのは当
然のことでしょうし、私自身同じ立場だったら同じことを言ったと思います。ただ頭の中では
「人間に人間を殺す権利はない」とは思っていますが・・。これまで傍聴した中で技能実習生
制度との関係で感じたことを報告したいと思います。
弁護側は技能実習生として不当な扱いを受けた等の問題はないとの立場で弁護をしています
し、これまでの証人尋問を通しても特別問題はなかったと思われます。しかし事件とは関係な
く技能実習生制度問題との観点でみると問題が無いとも言えませんでした。技能実習生問題に
詳しい全統一の鳥井さんが証人として出廷される予定なので被告が意識していたか否かにかか
わらず技能実習生としてどのよう問題があったかが解明されればと思っています。
【技能実習生の受入について】
① 協 働 組 合 は 、島 嶼 部 で 人 材 が 不 足 し て い る こ と か ら 労 働 力 向 上 の た め 寄 与 し て い る と 答 え 、
社長の妻は「実習生を受け入れたのは、仕事がきついため日本人は何時いてくれない為で、
実 習 性 は 3 年 い て く れ る 。」 と 答 え て い ま す 。
② また弁護側からの入国帰国前後に技能実習生がカキ打ちに従事しているのかとの質問に、
協同組合は「実習生が水産業出身者であるかは送出し機関の書類でしか確認していないし、
帰 国 後 カ キ 養 殖 の 仕 事 に 従 事 し て い る と 聞 い て い る 。」と 答 え て い ま す 。し か し 社 長 の 妻 は「 来
日前カキ養殖に携わっていたものがいたと聞いたことがないし、帰国後カキ養殖に携わった
と 聞 い た こ と も な い 。」 と 証 言 し て い ま す 。
③ 弁護側からの「労働力確保は安い労働力の確保を意味しているか」との質問に、協同組合
は「 経 費 を 加 え る と 日 本 人 並 み の 賃 金 を 出 し て い る こ と に な る 。」と 答 え て い ま す 。こ の 協 同
組 合 で は 、 管 理 費 (2 5 千 円 )と 賦 課 金 (一 万 円 )を 受 入 企 業 か ら 毎 月 徴 収 し て い ま す 。 調 書 に
は四万一千円となっているとのことでした。後者は往復の旅費や在留資格更新の費用を含め
たものかもしれませんが、これ等を賃金と見做すところに問題があります。あくまでも受け
入れに要する経費であるはずなのにこれらを合算したものが技能実習生の賃金と考えるとこ
ろはこの制度の大きな問題の一つといえます。
④ 「 実 習 生 一 人 の 職 場 は 珍 し く 、カ キ ウ チ 2 3 6 社 の う ち 80% に 実 習 生 が あ り 、平 均 3 .3
人 で あ る 。」と 広 島 県 の 現 状 が 説 明 さ れ ま し た が 、各 社 の 従 業 員 に 対 す る 割 合 は ど う な の で し
ょうか。
【 研 修 事 業 所 の 変 更 】 (協 同 組 合 理 事 へ の 訊 問 )
技能実習生が研修先を変更することは原則としてあり得ません。あるとすれば研修先が倒産
したり、何らかの入管法関連の違反があった場合などに限られます。被告は半年ほどで研修先
が川口水産に変更されています。検察官からこの原因について質問された協同組合の理事は
「 23 年 9 月 に 前 受 入 先 の 隣 の 会 社 で 不 法 就 労 が 発 覚 し た た め 移 籍 さ せ た 方 が 良 い と 判 断 し た
ためである」と答えると、裁判長から「前受入先の関連企業であったためではないか」との確
認 が 入 り 、「 そ の 通 り で す 。」 と の 回 答 を し ま し た 。 弁 護 側 か ら は こ の 辺 り の こ と に つ い て の 質
問はなかったため残業代等どのような状況だったかは不明なままです。
【以前1人いた実習生の帰国】
被告の前に1名いた技能実習生が帰国した理由は、近所のカキ養殖場にいた女性技能実習生
と恋仲になり、その子が帰国させられたことから平成24年8月に帰国した。これは社長の妻
の 証 言 で あ る が 、協 同 組 合 の 理 事 は「 自 己 都 合 で 帰 国 し た 。」と 答 え た だ け で し た 。な ぜ そ の 子
が帰国させられたのか、自己都合で帰国とはどのようなものだったのかは質問されず不明。
【仕事の内容】
カ キ 筏 で の 収 穫 、帰 っ て き て 洗 浄 し 、そ し て 6 名 い る 打 ち 子 へ の カ キ の 補 充 や カ キ の む き 身
で一杯になったバケツの計量・記録また牡蠣殻の片づけ等仕事場の進捗状況に気配りをしなが
ら自分もカキ打ちの仕事をしていた。
【 労 働 時 間 ・ 賃 金 に つ い て 】 (社 長 の 妻 へ の 訊 問 )
検 察 官 の こ の 質 問 に 対 し て 、社 長 の 妻 は「 契 約 書 上 の 契 約 で は 5:30∼ 14:30 で あ っ た が 、
実 際 は 6:00∼ 17:00 の 労 働 で 2 時 間 の 残 業 が あ っ た 。」と 答 え ま し た 。こ の 辺 り は 弁 護 側 が
詳しく聞き出しています。
① こ の 勤 務 時 間 で 月 曜 か ら 土 曜 ま で 働 い て お り 、丸 1 日 日 曜 日 を 休 ん だ の は 出 勤 表 に よ る と
24 年 1 月 は 正 月 3 日 日 を 除 く と 1 回 だ け 、 24 年 2 月 は 1 回 し か な か っ た 。
② 36協定には特約条項として「繁忙期には年6回を限度として80時間まで労働させるこ
とができる」となっているが、これは協同組合が作成したもので内容については知らない。
③ 労働時間の記録票には残業時間を二重線で消した跡があるが、これは協同組合から80時
間 を 超 え た 時 間 を 抹 消 し て 、現 金 を 渡 す よ う に 指 導 さ れ て い た た め で あ る 。こ の 点 に 関 し て 、
協同組合は「そのような指導をしたことは無い。残業させないように指導しているが具体的
な数字をあげて指導したかどうかは覚えていない。残業時間については記憶にないが、80
時 間 に は 達 し て は い な か っ た 。」 と 答 え て い ま す が 、 こ の 証 言 の 時 、 突 然 出 て き た 8 0 時 間
は何を言っているのか理解できませんでしたが、妻の証言を聞いて納得できました。また、
「 契 約 書 通 り 賃 金 が 支 払 わ れ て い る こ と を 賃 金 台 帳 と 出 勤 簿 で 確 認 し 、 問 題 は な か っ た 。」
と証言しています。しかし賃金計算の最後の段階を見た所で最低賃金が修正されていない程
度 の こ と し か 把 握 で き ま せ ん 。稼 働 状 況 を 記 録 し た 賃 金 計 算 の 基 礎 資 料 で あ る メ モ ま た 技 能
実習生からの聞取りをしなければ確認できないはずです。川口水産ではこの点の問題は無か
ったようですが、他の受入機関ではどうだったのか心配になります。
④ 各月の残業時間について3か月分を示して確認を求めると間違いないはずと回答。
24 年 12 月
89 時 間
25 年 1 月 77.25 時 間
25 年 2 月 94.25 時 間
⑤ 「 賃 金 は 手 取 り で 、15 万 ∼ 20 万 円 程 度 で あ っ た 。給 料 に 不 満 を 持 っ て い た と は 思 え な い 、
最後の給料時には、多すぎると言ってきたので、黙って取っておくようにと言ったほどであ
る 。」 と の 妻 の 証 言 が あ り 賃 金 上 の 問 題 が あ っ た と は 弁 護 側 は 考 え て い な い よ う で あ る 。
⑥ か っ て 受 け 入 れ て い た 技 能 実 習 生 を 2 名 か ら 1 名 に し た 理 由 に つ い て 、「 平 成 2 2 年 か ら
賃 金 が 高 く な っ た た め 技 能 実 習 生 を 二 人 か ら 一 人 に し た 。」と 答 え た こ と に 対 し て 、最 低 賃 金
違反が原因であったことを弁護側に指摘されて認める。
⑦ ま た「 技 能 実 習 生 の 賃 金 は 法 律 で 決 ま っ て い た 。」と 言 っ て い ま す 。最 低 賃 金 の こ と を 指 し
ていると考えられますが、協同組合からの指示または最後に触れる労働組合との関係の中で
の取り決めのことを指しているのでしょうか。
【宿舎の問題】
「 生 活 場 所 は 作 業 場 の 2 階 で 、冷 暖 房 等 全 て 整 え て い る 。ト イ レ と 風 呂 は 別 室 と な っ て い る 。」
とのことで特段問題は無いようであった。記録が不確かなのですが、家賃が1万円、水道光熱
費が5千円程度のようです。アパートを借りている訳でもないので必要なのかと思いますが、
社会保険料相当額の回収なのでしょうか。ちなみに日系フィリピン人の例では家賃水道光熱費
は無料とよく聞きます。その代り社会保険や労働保険への加入は無視されています。
【技能実習生への支援・水産庁の労働組合加入への指示】
①
協 働 組 合 は 事 件 当 時 、 70∼ 80 名 受 け 入 れ て お り 、 自 分 と 中 国 人 の 通 訳 3 名 で 対 応 し て い
た。通訳は月に3回程度訪問し、問題があればその都度訪問していた様子です。また川口水
産でも問題の無い対応をしていたようですし、特に社長の妻に対しては社長が倒れている側
にいても「お母さん」と言って何もしなかったそうです。
② ただ私自身気になる問題として、水産業の技能実習生は労働組合に加入させられ毎月3千
円の組合会費が徴収されているらしいことです。実際2件そうした事例があったと聞いてい
ますが、川口水産では不明です。弁護士さんに聞くと契約書にはそのような記載はなかった
そうです。賃金明細書がどうなっていたのか気になります。
③ 一 般 社 団 法 人 大 日 本 水 産 会 の 「 外 国 人 漁 業 技 能 実 習 の 手 引 き 」 (26年 4月 )に は 、
「 ( 3 ) 労 働 組 合 へ の 加 入 手 続 き (P.27)
漁 船 漁 業 職 種 で は 受 入 れ 船 主 の 団 体 、例 え ば 漁 業 協 同 組 合 や 船 主 組 合 が 労 働 組 合 と の 間 で 労 働
協 約 を 締 結 し 関 係 労 使 の 協 議 を 円 滑 に 促 進 す る 旨 、水 産 庁 よ り 指 導 を 受 け て お り ま す 。そ の た め
技 能 実 習 生 を 労 働 組 合 に 加 入 さ せ る 手 続 き を 行 い ま す 。 p58 に 労 働 組 合 の 1 つ で あ る 全 日 本 海
員 組 合 と 締 結 し た 場 合 の 労 働 協 約 書 モ デ ル 例 を 記 載 し ま す 。( 参 考 資 料 4。た だ し 、労 働 組 合 の
選択を限定するものではありません。)」
ま た 賃 金 に つ い て P.17に は
「 技 能 実 習 生 を 雇 用 す る 企 業 等 が 、技 能 等 の 程 度 や 責 任 の 度 合 い 等 を 勘 案 し て 企 業 の 持 つ 給 与
規 定 等 に 基 づ き つ つ 独 自 に 決 め る も の で あ り 、そ の 際 に 日 本 人 と 同 等 の 給 与 水 準 を 保 障 し 、か つ 、
最 低 賃 金 法 で 定 め る 基 準 を 下 回 ら な い 金 額 で な け れ ば な り ま せ ん 。漁 船 漁 業 の 場 合 、技 能 実 習 生
の最低賃金は一般社団法人大日本水産会と全日本海員組合との中央協定で定められた最低基準
を使用してください。」
水 産 庁 の 指 導 文 書 を 探 し て み ま し た が 見 つ か り ま せ ん で し た 。こ の 適 用 が 被 告 に も あ っ た の か
も わ か り ま せ ん 。も し 労 働 組 合 へ の 加 入 が 義 務 付 け ら れ 、労 働 組 合 と の 関 係 が 構 築 さ れ れ ば 技 能
実 習 生 に と っ て 重 要 な 支 援 機 関 と な る は ず で す 。先 に あ げ た 2 例 で は 技 能 実 習 生 は そ の 事 実 さ え
知 ら さ れ て い な い 状 況 で あ っ た た め 、地 域 ユ ニ オ ン を 探 し て 支 援 を 受 け て い ま す 。こ の 2 件 の 例
の技能実習生が加入させられていた労働組合は組合員に対する教宣活動も支援活動行わないま
ま組合会費だけ徴収していたことは技能実習生制度上大きな問題といえます。
これから建設業また介護関係での受け入れに併せて技能実習生保護の名目で同様なことが行
なわれると技能実習生保護ではなく単なる賃金搾取の構造が導入されるだけの話となってしま
い ま す 。も し 水 産 庁 の 指 導 が 事 実 な ら ば 、労 働 組 合 へ の 加 入 を 国 が 指 導 す る こ と 自 体 異 常 な こ と
と し か 思 え ま せ ん 。も し そ う す る 必 要 が あ る の で あ れ ば 全 国 で 支 援 実 績 の あ る ユ ニ オ ン な い し 支
援団体との連携が取れる仕組みづくりの方がはるかに効果があるといえます。
2 . 裁 判 の 争点 の ま とめ
はじめに
働く者の相談室くれ
米今達也
江田島市のおける中国人実習生による水産会社社長・従業員殺害事件の公判が1月19日広
島地裁で始まった。マスコミでも詳しく報じられているように、被告は精神的に不安定な状態
にあり、出廷を拒んだり、不規則発言をして退廷を命じられるなど、公判に耐えられるような
状態ではないようで、弁護人は、精神状態が安定するまで裁判を中断することを求めている。
この裁判は、陳告の責任を明確にすることにあるのだが、事件当初から背景に「外国人技能研
修 制 度 が あ る 事 は 明 白 で あ る 。被 告 が ど の 様 な 経 過 で 日 本 に 来 て 同 社 で 働 く こ と に な っ た の か 、
どのような労働条件で働いていたのか、人間関係はどのようなものであったか?等々解明すべ
き点は多い。 12月にも音戸の瀬戸で音戸町の水産会社の夏季船と貨物船が衝突してカキ船
が転覆してインドネシア人実習生が犠牲となる事件があったが、呉市・広島市の水産業は実習
生 な く し て 成 り 立 た な い 程 多 く の 実 習 生 が 来 て い る が 、「 日 本 の 先 進 技 術 の 研 修 」と い う 目 的 と
は 程 遠 く 、実 態 は 単 純 労 働 に 従 事 し て い る 。そ し て 、多 く の 人 が 低 賃 金・低 労 働 条 件 下 に あ り 、
人権も侵害されている事例も多い。裁判の中では、被告をはじめとして、実習生がどのような
条件の下で働いていたのかが明らかにされなければならない。新聞報道に基づいて纏めてみま
した。
江田島事件初公判(2015年1月19日)冒頭陳述(要旨)
検察側
《事件の経過》
被告は2012年5月に技能実習生として滞日した。日本語などの研修を宇した後、同9月
から川口水産で働き始めた。
川口信行社長は仕事について厳しく指導する一方、被告が日本に慣れるよう食事会を開くな
ど配慮した。従業員も悪意のないからかいの言葉を交えて気軽に声をかけていた。しかし被告
は「自分だけが理不尽に叱責され、馬鹿にされていると鬱憤をためていた。ただ川口社長の妻
には唯一心を許していた。被告は中国の家族との関係にも悩みを抱えていた。これらの問題か
ら精神的に追い詰められ、犯行に及んだ。
《犯行の状況》
13 年 3 月 14 日 、被 告 は 河 口 社 長 と カ キ の 水 揚 げ し た 後 、体 調 不 良 で 仕 事 を 休 み 、作 業 所 2
階の自室にいた。午後 4 時半に従業員が1階の掃除をしながら笑いあっていた。被告はまた自
分をばかにして笑っていると思い、鬱積を爆発させた。包丁をポケットに入れて1階へ。従業
員の1人をクワで殴り、止めに入った河口社長の顔をクワの柄で殴った。別の従業員の肩を包
丁で刺した後。対折れた川口社長の胸を4回包丁で刺し、スコップでなぐった。
さらに建物の外に逃げた橋下政子さんを追いかけてスコップでなぐるなどした。この間に他の
従業員や車で通りがかった人にも襲いかかりけがを負わせたり車のガラスを壊した・
《殺意の有無》
川口社長以外の従業員についても殺意があった。注目すべきは、どのような形や材質の凶器
を使ったか。くわ。スコップ。包丁は殺害するのに十分な重さや大きさであると認識していて
使っていた。頭などを一方的に力を込めて殴り重大な結果も導いている。川口社長だけを狙っ
たのではなく、従業員全員を殺そうと手当たり次第に襲いかかった。
《責任能力の程度》
被告には完全責任能力があった。犯行動機は会社関係者への鬱憤を爆発させ。それ以外の人
は現場から追い払うためで、理解できる。攻撃対象と通行人を区別している。川口社長の妻に
攻撃していない。目的に応じて合理的だ。犯行後には自傷行為をしており、駆け付けた警察官
に罪を認めている。精神的な病気もなかった。
弁護側
【被告の状態】
勾留は1年5ヶ月に及び、コミュニケーションを取れない状況が続く。もともとストレスに
弱い性格もあり、普通ではない不安定な精神状態にある。このような状態では裁判を十分理解
できず、裁判に対応できない。被告が出廷しない可能性もあり、出廷しても会話が成立しない
場合がある。このような行為は被告の不誠実さのためではないと理解してほしい。
【争点】
今回争点で最も重要なのが情状だ2人が死亡、7人がけがをした重大な事件。川口社長以外
への殺意はなかったと主張するが、無実を訴えているわけではない。生育歴や外国人技能実習
制度、善悪の判断ができない異常なストレスの高まりなど被告の背景を考慮して量刑を決めて
欲しい。
《殺意の有無》
被告は衝動的に犯行に及んでおり、逮捕後、殺意の有無が明確に説明出来ていなかった。従
業員の殺害を決意尾するまでの動機はない。被告と従業員らの間で過去にトラブルはなく、一
緒に酒を飲むなど良好な関係だった。被告は自室から包丁を持ち出しているが、実際に使用し
たのは川口社長と従業員の一人だけ。この従業員には生命の危険があるような使用方法を取っ
て い な い 。橋 下 さ ん へ の 殺 人 は 傷 害 致 死 、他 の 従 業 員 6 人 に 対 し て は 傷 害 罪 を 適 用 す る べ き だ 。
《責任の軽減》
被告は善悪を判断する力が著しく衰えた心神耗弱状態だった。軽度の精神遅滞や統合失調症
の精神障害が認められる。普段のおとなしい性格とかけ離れた行動を取っている。無関係の第
三者にも無差別に攻撃している。攻撃に及ぶ動機が認められない。
《情状》
事件は突発的で衝動的な犯行だ。計画的な犯行に比べ悪質性が高いとはいえない。小学4年
から家の仕事の手伝いで学校に行かなくなった。生育環境の影響で知的能力、コミュニケーシ
ョン能力、ストレスに対応する能力が未成育のままだ。
また、外国人技能実習制度に構造的な問題があり、被告の精神面に負担を与えてた。技能実習
制度は技術の海外移転を目的にするが、実際は受け入れ先の労働者不足を補い、実習生は出稼
ぎで来日してる。川口水産の被告も例外ではない。職場に一人しか実習生がいない特殊な環境
で、身近に相談できる相手もいなかった。またこの制度は様々な契約関係や利害関係が有り、
実習生の個別の問題に対応がなされにくい。
外国人労働者関連のニュースから
1 . 中 国人 農 業技能 実 習 生に関す る人権 救済申立事件 (勧告 )
2014年12月1日付
日弁連HPから
こ の 勧 告 は 2012 年 10 月 22 日 に 東 京 弁 護 士 会 に 到 着 し た 中 国 人 技 能 実 習 生 か
ら の 人 権 侵 害 に 対 す る 救 済 を 求 め る 投 書 が 発 端 で し た 。勧 告 書 に は 42 ペ ー ジ に わ
た る 資 料 が 添 付 さ れ 人 権 侵 害 の 状 況 等 が 詳 し く 報 告 さ れ て い ま す 。ま た 法 務 省 入 国
管理局からの回答も掲載されています。
(日 弁 連 H P の 人 権 救 済 申 立 事 件「 警 告・勧 告・要 望 」2014 年 の ペ ー ジ 下 記 ア ド レ ス )
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/complaint/year/2014/141
201.html
レタス栽培等に従事していた中国人農業技能実習生に対し、中国の送出し機関が行き過
ぎた管理をしていたことを、日本の監理団体である事業協同組合が適切な監理をせずに看
過していたことが人権侵害にあたるとし、事業協同組合、法務省及び厚生労働省に対して
勧告した事例。
中国人農業技能実習生は、技能実習制度の下で来日し、レタス栽培に従事していたが、
長時間かつ休日の少ない厳しい労働環境と、狭く不衛生な寄宿舎が多いといった厳しい生
活環境に置かれ、過酷な条件下にあった。また、中国の送出し機関は、私生活や交友関係
に 及 ぶ 規 則 と そ の 違 反 に 対 す る 制 裁 金 を 定 め 、こ れ ら 規 則 の 遵 守 を 監 督 す る 監 督 者 を 置 き 、
更に保証金徴収や保証人との間の違約金契約による威嚇の下で労働を強いて、預貯金の自
由な処分の可能性を奪うなどの行為をして、技能実習生が逃亡や権利主張を事実上できな
いようにしていた。
日本の監理団体である事業協同組合は、適正な技能実習の実施を監理するべき立場にあ
るところ、中国の送出し機関がこれらの行為をしていることを知りながら、看過し、ある
いはこれを利用して技能実習生の管理を行っていた。その結果、技能実習生は、憲法22
条1項が保障する移転の自由、憲法13条が保障する自己決定権を奪われ、同条及び憲法
25条が保障する最低限の健康で文化的な生活を送ることのできる権利を侵害されていた。
技 能 実 習 生 が 受 け た こ の よ う な 人 権 侵 害 に つ い て 、申 立 て に よ ら ず 職 権 で 調 査 を 開 始 し 、
事業協同組合、法務省及び厚生労働省に対して、以下のとおり勧告した。
(1)事 業 協 同 組 合 に 対 す る 勧 告
① 私生活の自由を制約する規則を設ける送出し機関からは技能実習生を受け入れな
いこと。
② 技能実習生を監視する目的で送出し機関から派遣された「班長」らを技能実習生の
在留資格で受け入れないこと。
③ 実習実施機関が技能実習生へ直接賃金を現金で支払う等するよう指導をすること。
④ 送 出 し 機 関 が 、保 証 金 徴 収 や 違 約 金 契 約 を 行 っ て い る 送 出 し 機 関 か ら は 技 能 実 習 生
を受け入れないこと。
⑤ 過去に事業協同組合の不当な管理により被害を被った技能実習生等に対して被害
の回復に努めること。
(2)厚 生 労 働 省 に 対 す る 勧 告
① 直ちに、事業協同組合の人権侵害行為について被害実態の調査を行い、労働諸法令
に基づく行政指導等を行って、再発防止を図ること。
② 本件のような人権侵害行為を引き起こす構造的問題点を有する技能実習制度を直
ちに廃止すること。
(3)法 務 省 に 対 す る 勧 告
① 直ちに、事業協同組合の人権侵害行為について被害実態の調査を行い、指針に基づ
く不正行為認定を行って技能実習生の受入れを停止し、改善指導等により再発防止を
図ること。
② 本件のような人権侵害行為を引き起こす構造的問題点を有する技能実習制度を直
ちに廃止すること。
【法務省入国管理局の見解】(平成 27 年 1 月 8 日)
①に対して
川 上 村 農 林 業 事 業 協 同 組 合 の 実 施 す る 技 能 実 習 に つ い て は ,元 技 能 実 習 生 と 称 す る 者 か ら の
情報提供を受け,東京入国管理局において,現地での実地調査を4度実施し,同組合役職員,
実 習 実 施 機 関 ,技 能 実 習 生 本 人 か ら 事 情 の 聞 取 り を 行 っ た ほ か ,既 に 帰 国 済 の 技 能 実 習 生 か ら
の 聞 取 り や 関 係 機 関 へ の 照 会 等 の 所 要 の 調 査 を 行 っ た 。そ の 結 果 ,同 組 合 の 不 正 行 為 が 確 認 さ
れ た た め ,平 成 2 6 年 9 月 4 日 ,同 組 合 に「 不 正 行 為 通 知 」を 行 い ,技 能 実 習 生 の 受 入 れ を 5
年間停止させる措置を講じているものである。
な お ,東 京 入 国 管 理 局 に よ る 調 査 に お い て ,貴 会 が 人 権 侵 害 行 為 と し て 勧 告 書 で 指 摘 す る 各
行為について,その全てを事実として認定したものではない。
②に対して
技 能 実 習 制 度 に つ い て は ,平 成 2 6 年 6 月 2 4 日 に 閣 議 決 定 さ れ た「「 日 本 再 興 戦 略 」改 訂
2 0 1 4 」に お い て ,国 際 貢 献 を 目 的 と す る と い う 制 度 の 趣 旨 を 徹 底 す る た め ,制 度 の 適 正 化
を 図 る 等 抜 本 的 に 見 直 し を 行 う こ と と さ れ て お り ,法 務 省 入 国 管 理 局 に お い て は ,同 閣 議 決 定
に 沿 っ て ,厚 生 労 働 省 等 関 係 省 庁 と 連 携 し な が ら ,同 制 度 の 適 正 化 等 の た め の 抜 本 的 見 直 し の
検討を進めているところである。
2.外国人技能実習制度
人権保障の仕組みこそ必要だ
愛媛新聞ONLINE
2015年 01 月 24 日(土)
研修の名の下、途上国の人々を安い労働力として酷使し問題視される外国人技能実習制度。
政府は監督機関を新設して受け入れ先の不正監視や実習生保護を強化する報告書案を有識者懇
談会に示した。これを基に今月召集の通常国会に関連法案を提出する。
現在国内で働く実習生は約15万人。安倍政権は経済界の強い要請を受け、労働力不足の解
消策としてさらなる拡大を成長戦略に盛る。最長3年の受け入れ期間を5年に延長し、介護分
野 に も 対 象 を 広 げ る 方 針 だ 。不 正 監 視 強 化 の 背 景 に は 国 内 外 の 支 持 を 得 た い と の 思 惑 が あ ろ う 。
だが、同制度は本来、習得した技術を母国発展に役立ててもらうための仕組みだ。国際貢献
の目的からかけ離れ、低賃金で労働力補てんに利用する実態には問題がある。研修名目の曖昧
な制度で労働者に弱い立場を強いること自体、根本から改めるべきである。
転職の自由のない実習生への人権侵害や違法行為は著しい。厚生労働省の一昨年の立ち入り
調査では、受け入れた2318事業所の約8割に当たる1844事業所が何らかの労働基準関
係法令違反をしていた。法定労働時間の超過や賃金不払いに加え、業務の安全配慮も不十分で
実習生は命の危険にさらされている。
毎年調査していても、タイムカード偽造など悪質な事例が後を絶たない。新たな監視組織で
は調査頻度は受け入れ団体で年1回、働かせる団体傘下の企業は3年に1回だという。それで
労働環境が守られるとは到底思えない。
パスポートや通帳の取り上げ、外部との連絡禁止、帰国強要などの人権侵害も明らかになっ
ている。米国務省の人身取引報告書は「強制労働」と厳しく指弾している。
政府は母国語の相談窓口を新設し、必要なら企業変更をあっせんするというが、大切なのは
事後対応でなく最初から人権を守る仕組みだとの認識を求めたい。都合のいい労働力との発想
が消えない限り状況改善は難しいだろう。
これは外国人だけの問題ではない。安い労働力確保に安易に走って、賃金や業務の改善、雇
用施策を置き去りにすれば、国内の格差社会は拡大し、産業は先細る。
それでも、少子化による労働力不足が避けられない状況下、外国人の力を借りようと本気で
考えるなら、日本人と同様の労働の権利保障や家族を含めた社会保障、日本語教育などの支援
システム確立が先だ。正規の労働者であり社会の一員として、真正面から受け入れなければな
らない。
韓国や台湾では外国人労働者受け入れ体制充実に政府が本腰を入れている。将来を見つめた
政策論議や外国との信頼構築がないなら、日本経済にしっぺ返しがくるだろう。
3.「もう二度と日本では働かない」円安直撃、日本から逃げ出す外国人労働者―日本
Livedoor news
2015 年 1 月 14 日 22 時 10 分
2015 年 1 月 、日 本 華 字 紙・中 文 導 報 は 記 事「 中 国 人 技 能 実 習 生 、
も は や 日 本 行 き を 歓 迎 せ ず 」を 掲 載 し た 。日 本 で は 約 15 万 5000
人の技能実習生が働き、そのうちの 7 割が中国人だ。日本経済を
支える貴重な働き手だが、今「日本回避」の動きが広がっている
という。
写真は江蘇省海安県の縫製工場
2012 年 7 月 か ら 技 能 実 習 生 と し て 日 本 で 働 く 張 さ ん 。最 初 の 1 年 で 150 万 円 を 貯 め て 父 親
に 送 金 し た 。人 民 元 で 10 万 元 だ 。そ し て 2 年 目 の 今 、同 じ 150 万 円 が 人 民 元 に 換 算 す る と わ
ずかに 7 万元になってしまった。猛烈な円安の影響だ。
張 さ ん は 今 年 の 7 月 に 契 約 満 了 で 帰 国 す る 。「 も う 日 本 に は 二 度 と 来 な い 」と 失 望 を 語 っ た 。
帰国する張さんの代わりを見つけられるかが難題だ。今や中国人労働者にとって日本は人気の
目的地ではない。円安の影響でシンガポールなど他の外国のほうが稼げるというのが理由の一
つ。それに加えて人手不足で中国国内の給与水準が上昇していることも背景にある。
また「パスポートを取り上げる」「奴隷のような扱いをする」「最低賃金を下回る給与」な
どの違法行為が次々と報じられるなど技能実習生制度の問題点も伝えられ、日本行きを嫌う要
因 と な っ て い る 。 ( 翻 訳 ・ 編 集 /KT)
本
の
紹
介
中空構造日本の深層
河合隼雄
著
中公文庫
705 円
お 正 月 頃 だ っ た か 、 「 1 0 0 分 de 名 著 」 と 言 う 番 組 が ゲ ス ト 数 名 を 招 い て 対 談 や ら そ れ ぞ
れのおすすめの本の紹介などをしているのを眠りながら聞いていると精神科医の斉藤環さんが
河合隼雄の「中空構造の深層」の紹介をされましたので翌日買ってきて読んでみました。
この本は深層心理学者である著者が日本神話や昔話等からヒントを得て日本人のものの考え
方について書かれた論考を集めた本でした。内容は3部からなり、第1部が日本神話を中心に
中空構造についての3篇、第2部は昔話や民話を中心に深層心理についてのもの4篇、第3部
は 現 在 の 問 題 に つ い て 5 編 の 論 考 が 集 め ら れ て い ま す 。第 3 部 に は「 フ ィ リ ピ ン 人 の 母 性 原 理 」
というものが含まれており最初にこの部分から読み始めてしまいました。これは海外在住の日
本人の子供たちの教育問題の一環としてフィリピンへの調査団の一員として見聞きされたこと
を書かれています。仏教が中心のアジア地域において唯一フィリピンはカトリックの国であり
ながら父性的な宗教を母性的なものに変容させて受入いると述べられています。確かにフイリ
ピン人は子供が万歳している像を拝んでいるのをこれまで不思議に思っていました。これはカ
ト リ ッ ク の サ ン ト ニ ー ニ ョ (幼 児 期 の キ リ ス ト )信 仰 を ア ジ ア の 母 性 的 感 性 に 併 せ て 受 容 し た 結
果と納得できました。その結果フィリピン人にとって三位一体とは、「神と子と聖霊」ではな
く、「神と子とマリア」と理解されているとのことでした。この辺りのことは機会を見つけて
確認してみようと思っています。
思いがけずフィリピン人のメンタリティーを知ることができたのは大きな収穫でしたが、本
来の目的であった日本人の深層心理は中空構造であるとの点については、古事記に書かれた神
話の成り立ちを通して日本人の考え方の深層には中心に絶対的権力者が存在せず、それを取り
巻いて有力者が存在していると説明しています。その例としてイザナミとイザナキの子供にア
マテラス、ツクヨミとスサノオがおり、月の神であるツクヨミが日本人のメンタリィティーと
しては中心となるべき存在なのに全く存在自体無視されている。また同様に古事記冒頭の最初
の神としての天之御中主神、高御産巣日神と神産巣日神の三神の中心であるべき天之御中主神
の存在感は全くない。日本では弁証法的に中心が生まれることではなく、むしろ中心となる存
在が現れると取り除かれていく構造が日本人の深層心理の中にあると説明されています。
言
葉
死にのぞんだ時、私たちは成し遂げた仕事の量によって評価されるのでなく、
その仕事の中にどの位愛を入れたかによってはかられるでしょう。
そして、その愛は自己犠牲から出るもので、
痛みを覚えるほどのものでなければなりません。
マザー・テレサ
発
「 愛 を 語 る 」 P 107
行
所
医事業務支援センター・小松社会保険労務士事務所
フィリピン人労働者を支援する会
〒734-0045 広島市南区西本浦町 14-11-511
携帯 090-7590-0215 Tel・Fax 082-285-9039
e-mail [email protected]
http://srk2002.com/
平成27年 2月 1日 発行