成人男性を対象とした、アルギン酸カルシウム含有食品の単回摂取による

成人男性を対象とした、アルギン酸カルシウム含有食品の単回摂取による食後の血中中性
脂肪値および血糖値におよぼす影響
澤邊昭義 1、福田靖 2、上野昌樹 2、河内幸枝 2、竹田竜嗣 1、米虫節夫 3
1 近畿大学農学部、2 マロニー株式会社、3 大阪市立大学大学院
Effect of postcibal blood triglyceride level and blood glucose level by single intake of
calcium alginate content food for adult men
Akiyoshi SAWABE 1, Yasushi FUKUDA 2,Masaki UENO 2, Yukie KAWACHI 2, Ryuji
TAKEDA 1, and Sadao KOMEMUSHI 3
1 Faculty
3
of Agriculture, Kinki University, 2 Malony Co., Ltd,
Graduate School of Engineering, Osaka City University
We examined adult men as compared with (only as for the load food at intake) at food
(study food) and study food non-intake to contain calcium alginate.
Namely, we
examined effect of TG level (triglyceride level) and a Glu level (blood glucose level) after
having single intake with curry and rice (load food). As a result, the change (quantity
of increase) of the triglyceride level one hour after the load food intake in comparison
with the fasting was 25.9±12.8 mg/dL (n=16, mean±S.E.) in study food intake time,
and only load food decreased in significance as compared with 36.9±20.0 mg/dL (n=16,
mean±S.E.) at intake (p = 0.029). Also, it was 72.6±40.3 mg/dL (n=16, mean±
S.E.) in study food intake time, and, about Cmax ⊿ TG (maximal triglyceride increase
level), only load food decreased in significance as compared with 86.3±38.3 mg/dL
(n=16, mean±S.E.) at intake (p = 0.045). As for blood glucose level, the change one
hour after the load food intake in comparison with the fasting was 39.9±27.8 mg/dL
(n=19, mean±S.E.) in study food intake time, and only load food was a decrease
tendency than 49.6±29.3 mg/dL (n=19, mean±S.E.) at intake (p = 0.095).
Key Words:calcium alginate, TG, Blood glucose, metabolic syndrome
はじめに
現代人の食生活は、栄養が豊富で様々な種類の食材を食することができるようになった。
その結果、生活スタイルについても多種多様になっている。厚生省(現厚生労働省)が成
人病の呼称を「生活習慣病」に変更したのは、平成 8 年である。この背景には、当時、が
ん、心臓病、糖尿病などの疾病が生活習慣と密接に関係していることが示され、社会問題
化した背景があったと考えられる。このような、生活習慣病の中でも特に糖尿病、高血圧、
高脂血症などは肥満に起因するとされる。肥満は、耐糖能異常を誘発しやすくその結果、
血糖を高め、これらに起因した高血糖が高血圧や高脂血症の起因となっている 1~2)。これら
の一次予防(健康維持)には、生活習慣の改善と日頃からの個人の自覚による運動量の確
保が必要であるが、現代人の食生活においては難しい側面も多い。また、運動不足や不規
則な生活をとる人はさらに増加しており、肥満・高血圧・高脂血症をはじめとする生活習
慣病といわれる症状を有する人やその予備軍の割合は年々増加している。これらの解消に
は、運動不足の解消や規則正しい食生活を送ることが重要であるが、現代人の忙しい生活
では意識していても難しくなっている。そういった中で、食品の役割が見直されている。
食品には一次機能である栄養機能、二次機能である嗜好・食感機能、そして三次機能の体
調調整機能があるが、この三次機能の重要性が増してきている。
アルギン酸は、海藻類をはじめとする、褐藻類に多く含まれる多糖類で食物繊維様の物
質である。ナトリウム塩は水に溶解するが、カルシウム塩は、ゲル状の物質となり、水に
溶解しないことが知られている。また、辻らの研究では、アルギン酸カルシウムを摂取さ
せた高血圧自然発症ラットは、1%食塩負荷にもかかわらず血圧を上昇させなかったという
報告がある。このように、アルギン酸カルシウムは、食物繊維様の役割を持つことから、
血圧降下作用だけでなく、血糖値抑制効果、脂質吸収抑制効果を持つ可能性が示唆される。
そこで、アルギン酸カルシウム含有食品を用いて、脂質のやや多い食事とともに摂取した
際の影響について、検討した。
方法
被験者は、健常な日常生活を送る成人男性のボランティアであり、年齢 30~60 歳かつ
BMI 値が 20 以上 25 未満の者を募集した。耐糖能の異常を示す HbA1c や血糖値、肝機能、
腎機能に異常が無いかを確認し、ヘルシンキ宣言に則したインフォームド・コンセントを
行い、了承を得た者を試験対象者とした。
試験前日午後9時以降、絶食、水以外の飲料の摂取も制限した被験者に、表 1 の栄養成
分を含む負荷食品(カレー)のみを食べる場合と負荷食品と一緒にアルギン酸カルシウム
含有食品 100g(栄養成分は表 2)を摂取させ、食事前、食後 30 分~食後 6 時間の中性脂肪
値と食事前、食後 30 分~食後 2 時間の血糖値を比較した。
結果
負荷食品摂取後の TG 値に対する影響
空腹時を基準とした負荷食品摂取後の TG 値の変化量を図1に示した。空腹時と比較した
TG 値の変化量は、負荷食品摂取 1 時間後において、試験食品摂取時では負荷食品のみと比
べて有意に低かった(p = 0.029)
。これは、アルギン酸カルシウム含有食品が、食物繊維様
の働きを行い、小腸で脂肪の吸収の阻害を行う可能性や、リパーゼの働きの抑制などが考
えられる。
負荷食品摂取後の血糖値の変化に及ぼす影響
空腹時を基準とした負荷食品摂取後の血糖値の変化量を図 2 に示した。空腹時と比較し
た血糖の変化量は、負荷食品摂取 1 時間後において、試験食品摂取時では負荷食品のみと
比べて低い傾向であった(p = 0.095)
。
まとめ
本試験では、実際の食事メニューでの影響を見るため、脂質の多い食事メニューでの実
施により、血中グルコースの上昇も比較的穏やかであり、大きな差は認められなかった。
しかし、炭水化物の多い食事に偏れば、血中グルコースの値はさらに上昇するものと考え
られる。食後の血中グルコースの急激な上昇を抑制する可能性が示唆されたことは、イン
スリンの上昇を抑制できる可能性もあり、食後の運動と組み合わせることで、生活習慣病
の予防にもつながると考えられる。
参考文献
1)中尾一和・門脇 孝編:脂肪細胞の驚異と肥満, 講談社サイエンティフィク, 東京(1999)
2)土部聡福ら:コロソリン酸高含有バナバ抽出物カプセル剤による食後血糖値の上昇に対
する抑制効果 日本食生活学会誌 17(3), 255-259 (2006)
3) 竹田竜嗣ら:澱粉由来食品マロニーにおけるグリセミック・インデックスおよびグリセ
ミック・ロードに関する研究 食生活研究 28(3), 39-44, 2008 食生活研究会
4)辻啓介ら:食物繊維のナトリウム吸着能が高血圧自然発症ラットの血圧に及ぼす影響
日本家政学会誌 39(3), p187-195, 1988
成人女性を対象とした、アルギン酸カルシウム含有食品の
摂取による脚のむくみに及ぼす影響の検討試験
澤邊昭義 1、福田靖 2、上野昌樹 2、河内幸枝 2、竹田竜嗣 1、米虫節夫 3
1 近畿大学農学部
2 マロニー株式会社、3 大阪市立大学大学院
Clinical study of effect of the edema of leg by the intake of calcium alginate content food
for adult women
Akiyoshi SAWABE 1, Yasushi FUKUDA 2,Masaki UENO 2, Yukie KAWACHI 2, Ryuji
TAKEDA 1, and Sadao KOMEMUSHI 3
1 Faculty
3
of Agriculture, Kinki University, 2 Malony Co., Ltd,
Graduate School of Engineering, Osaka City University
In five adult women, we examined effect of the edema of the leg when they took in
study food (calcium alginate content food) for six days for a pilot. Before study food
intake initiation (first day testing, examination for D1) and study food intake sixth day
(examination for D6), we made subjects locus rest for six hours, and a bent induce
edema and measured bowel anticnemion circumference, the bowel anticnemion part
volume, body water quantity and a bodily sensation questionnaire. As a result, in
"edema score of the foot" of the bodily sensation questionnaire, the sixth lesson change
significantly decreased with 1.93±2.03 (VAS mm, mean±S.E. n=5) on the D6 testing as
compared with 3.95±2.15 (VAS mm, mean±S.E. n=5) at the D1 testing after the
edema induction that we compared with the edema-induced front (p = 0.010). Also,
bowel anticnemion circumference (we measure the 3cm upper part of the bowel
anticnemion maximal part by three-dimensional image analysis) before the edema
induction was 359.5±21.6mm (mean±S.E. n=5) and a tendency to decrease than 366.7
±16.6mm (mean±S.E. n=5) at examination for D1 at examination for D6 (p = 0.085).
Based on this evidence, by consecutive intake of the study food, we improved a bodily
sensation of the edema of the foot after the rest for six hours. Also, it was suggested
that we tended to reduce bowel anticnemion circumference before the edema induction.
Keywords: edema of leg, calcium alginate, visual analog scale
はじめに
エアコンの普及により、生活が便利になった反面、現代人の過ごす生活は季節感が減少
し、生活の大半を一定の気温、湿度の範囲で過ごすようになりました。もともと人間も恒
温動物であり、体温の調整機能は備わっていますがストレスの多い生活や生活習慣の変化
により、低体温の人が増えている。特に女性は、思春期の過度なダイエット傾向により、
痩せ形の女性が増える半面、脂肪の役割でもあった体温調整機能がうまく働かず、低体温
の女性が多くなっていると考えられる。低体温は血流を悪くする可能性も示唆されており、
手足の末梢血管の血流が悪くなると、冷え症やむくみといった症状を誘発することがある。
むくみとは,組織間隙に生理的な代償能力を凌駕して,過剰な水分が貯留した状態と定
義される 1)。また,むくみには,健常人が日常生活の中で普通に体験するものと、病気を起
因とするむくみがあり、健常人の日常生活のむくみの中では,一般的には男性に比べて骨
格筋量の少ない女性の下肢のむくみに関する研究が多くなされている
2)∼6)。これらの改善
には、日ごろから体温を上昇させることや加齢や筋肉量を適度に保ち、基礎代謝を増加さ
せるといったことが重要であるが、現代人の生活スタイルではそれらを実現するのは容易
ではない。本試験の目的は、海藻に多く含まれるアルギン酸とカルシウムが入っているア
ルギン酸カルシウム含有食品の「むくみ改善効果」について、探索的に調査することであ
る。アルギン酸は、海藻のヌルヌルした成分であり、カルシウムとくっつくと寒天状にな
るので、海中で揺られている海藻の体の柔軟性を支える成分でもある。アルギン酸には様々
な役割があるとされ、食物繊維様の働きをすることがわかっている。
むくみとアルギン酸に関する研究は、例が少なく、口承的であるが、本試験では、探索
的に調査を行った。
方法
被験者は健常な日常生活を送る成人女性のボランティアであり、年齢 20~45 歳の者を募
集した。ヘルシンキ宣言に則したインフォームド・コンセントを行い、了承を得た者を試
験対象者とした。事前検査として、問診、身体測定、食事の後、むくみ誘発試験(図 1 お
よび次項)を行った。むくみ誘発試験では、摂取前、摂取 2, 4, 6 時間後にむくみ測定(メ
ジャーによる測定のみ)を行い、摂取前と摂取 6 時間後に体感アンケートを行った。被験
者には月経 5~7 日目に来院させ、摂取 1 日目検査(以下、D1 検査)として、問診、身体測
定、食事の後にむくみ誘発試験を実施し、メジャーによる脹脛周囲長の測定、三次元画像
解析による脚体積および脹脛周囲長の測定およびVASアンケートによる体感効果の調査
を行った。検査終了後に試験食品および日誌を配布し、事前検査当日から 5 日間、自宅で
試験食品を摂取させた。5 日間の摂取期間中、被験者は通常通りの生活を送るとともに、試
験食品の摂取状況、飲酒、運動の状況、体調の変化、医薬品の服用状況などを日誌に記録
させた。摂取 6 日目(以下、D6 検査)に、再度被験者を来院させ、摂取 1 日目検査と同様
に、問診、身体測定、食事の後にむくみ誘発試験および測定を実施した。
結果
三次元画像解析による腸脛周囲長および体積の経時変化を図 1 に示した。むくみ誘発
試験後の腸脛周囲長(三次元画像解析により腸脛最大部の 3cm 上部を測定)は、有意な差
が認められなかったが、むくみ誘発前の腸脛周囲長が、D1 検査時と比べて、D6 検査時で
は低下する傾向であった(p = 0.085)。これは、継続摂取により、日常生活でのむくみの発
生の軽減の可能性を示すと考えられる。メジャーでの腸脛周囲長の変化の特に大きかった
被験者 ID6004 の結果を図 2 に示した。全体での大きな動きはなかったが、被験者 ID6004
では、摂取後に顕著にむくみの抑制が起こっていた。
また、体感アンケートの結果では、「足のむくみ」スコアにおいて、むくみ誘発前と比較
したむくみ誘発後 6 時間目の変化量が、D1 検査時の 3.95 ± 2.15 と比べて、D6 検査では
1.93 ± 2.03 と有意に低下した(p = 0.010)
。
現代の生活環境において、立ち仕事は非常に多くなっている。また、美容の追及する社
会情勢があり、近年の女性は若年者を中心にスレンダー体系の女性が多くなってきている。
その反面、貧血や血行不良・筋肉量の減少、基礎体温の低下などが原因とされる四肢や顔
の「むくみ」と呼ばれる現象に悩む女性も多い。内臓疾患と起因とするむくみ(浮腫)は
明らかに病態であり治療が必要であるが、日常生活上で起こる非常に軽度のむくみは、生
活の QOL を低下し、作業効率も低下させることから改善や予防方法が模索されている。
このように、少数例でパイロット的に行った試験ではあるが、体感アンケートによる改
善および、腸脛周囲長の抑制が認められたことから、本試験食品がむくみの抑制が期待で
きる可能性が示唆された。
参考文献
1)則松(田村)亜紀子、森浩:与那国島産ボタンボウフウを含有する飲料摂取による下肢
むくみ改善効果、食品科学工学会雑誌、59, 509-514 (2012)
2)李英淑ら:成人女性下腿部の表面積ならびに容積の季節、性周期、日内の変化について、
日本家政学会誌、38, 205-213 (1987)
3) 丸山康子、飯塚幸子:成人女子下腿部及び足部形態における日内変動に関する研究、
実践女子大学家政学部紀要、25,55-63 (1988)
4) 我部山キヨ子、性周期に伴う浮腫に関する研究─浮腫の主観的評価と客観的評価の関
連性─、周産期医学、31, 262-267 (2001)
5) 須藤元喜ら:勤労女性における下肢のむくみと筋疲労に関する研究─アンケート調査
および心理計測から─、日本女性心身医学会雑誌、15, 175-182 (2010).
6) 須藤元喜ら:下肢のむくみと筋疲労の関連性、日本生理人類学会誌、15, 21-26 (2010)