レジャー旅行者の異質性についての分析 個別旅行者vsツアーパック旅行

レジャー旅行者の異質性についての分析
個別旅行者 vs ツアーパック旅行者 vs フリーパック旅行者
當摩 真弓
指導教員:石川 竜一郎先生
2009 年 1 月 26 日
卒業研究概要
卒業研究題目:レジャー旅行者の異質性についての分析
個別旅行者 vs ツアーパック旅行者 vs フリーパック旅行者
学籍番号:200511019
主専攻:社会経済システム
氏名:當摩 真弓
指導教員:石川 竜一郎先生
1.目的
本研究では、アンケート調査のデータを用いて因子分析を行い、レジャー旅行者の好みに基づいて、
旅行者がどのようなタイプに分類されるかを考える。ここで分類されたタイプと、先行研究で分類さ
れたビジネス旅行者のタイプで比較を行い、レジャーとビジネスという目的の違いで、旅行者市場に
差が出るかを検証する。加えて、1元配置の分散分析を行い、レジャー旅行者の選択する旅行形態の
違いが、どのような好みに基づくものかを検証する。ここで差が出た好みの項目に基づき、旅行会社
の新規顧客獲得に効果的な方法を検討する。
2.特色
アンケート調査(有効回答数100:男女各50人)は質問紙法で行い、旅行形態や旅行内容に関す
る項目への重要度などを調べた。
また、レジャー旅行者の分類は、その予約方法の違いから、(a) 個別旅行 (b) ツアーパック旅行 (c)
フリーパック旅行の3つとした。
3. 結論
レジャー旅行者のタイプには、「利便性重視」型、「自由さ重視」型、「高級さ重視」型の3タイプが
存在し、ビジネス旅行者のタイプとの共通性が高いことがわかった。また、3つの旅行形態の中で、
個別旅行者には、旅行中の予定や、交通手段、宿泊先において自由行動が可能なものが最も好まれる
ことがわかった。この結果より、旅行会社がパック旅行の新たな顧客となりうる個別旅行者を獲得す
るには、自由行動の多さをアピールした商品を提示すべきであると考えられる。
3
謝辞
まず、この研究を進めるにあたり、研究テーマのなかなか決まらなかった私に様々な助言をくださ
り、1年にわたって指導してくださった石川竜一郎先生に感謝いたします。進行が遅れていた私を、
あたたかく見守ってくださったおかげで、最後までやり通すことができました。
そして、アンケート内容などに関し、貴重な意見をしてくださった、同じ研究室の皆さんに感謝い
たします。
最後に、この大学4年間で支えてくださったすべての方に感謝いたします。
5
目次
第 1 章 序章
9
1.1
研究動機 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
1.2
研究の背景
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
1.3
目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
第 2 章 ビジネス旅行者の異質性の分析
11
先行研究の目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
2.1.1
ブラジル国内の移動手段の変化について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
2.1.2
ブラジルの国内航空産業市場について
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
2.1.3
目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
2.2
調査方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
2.3
分析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
2.3.1
ビジネス旅行者のタイプについて . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
2.3.2
航空会社の特徴と旅行者の好みとの関係 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
15
結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
18
2.1
2.4
第 3 章 レジャー旅行者の異質性の分析
19
3.1
目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
19
3.2
調査方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
20
3.3
分析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
21
3.3.1
レジャー旅行者のタイプについて . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
22
3.3.2
旅行形態の特徴と旅行者の好みとの関係 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
25
結論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
27
3.4
第 4 章 まとめ
31
7
第 1 章 序章
1.1
研究動機
今日、消費者のニーズは多様化しており、旅行の選び方も様々である。そして、旅行代理店やイン
ターネットでは、そのニーズに対応するべく、様々なパッケージツアーが提供されている。昨年では
エース JTB と学生の共同開発によって、学生が求める、おトクで思い出作りに最適な国内旅行パッ
ケージツアー「ガクタビジャパン」が発売された。しかし、この旅行は学生にとって魅力的であって
も、社会人や年配の方にとってはあまり魅力のないかもしれない。それぞれが求める要素や重要とす
るもの、つまり好みが異なっている可能性があるからだ。
旅行において、選択する際には、その選択の仕方によって、好みに差が出るのではないのだろう
か。出るとすれば一体どんな好みに差がでているのだろうか。
本論文では、この動機に基づき、まずは、先行研究として Huse and Evangelho (2006) を取り上
げ、ビジネス旅行者の異質性について考えてみる。
1.2
研究の背景
Huse and Evangelho (2006) では、まずはじめに、因子分析を用いて、市場におけるビジネス旅行
者のタイプについての分析を行っている。その結果、ビジネス旅行者のタイプは「贅沢嗜好」と「ノ
ンフリル(簡素なこと)嗜好」の2種類に分かれていることがわかった。
続いて、ビジネス旅行者を既存大手航空会社(FSC)の利用者と格安航空会社(LCC)の利用者に
分類し、それぞれの利用者の好みと、選択した航空会社との関係を、順序離散反応 (ordered discrete
resronse) モデルによって分析している。その結果、FSC 利用者と LCC 利用者の間で大きく異なって
評価された項目が、
「機内サービス」と「ビジネスラウンジ」の2項目であることがわかった。また、
以前の LCC の利用経験が、「機内サービス」と「ビジネスラウンジ」の項目の評価に対して、LCC
にとって有利な影響を与えている傾向があることもわかった。
以上の結果から、LCC はまず、低価格商品などを用いて、より多くの顧客に LCC の利用経験をつ
9
くるべきであると提案している。そして、その利用経験で、顧客の好みに対して、LCC にとって有
利な影響を与えることで、さらなる市場シェアの獲得を行っていくべきであると結論づけている。
この Huse and Evangelho (2006) では、ビジネス旅行者の異質性について示されたが、レジャー
旅行者の異質性については分析されていない。そこで、本研究では Huse and Evangelho (2006) の
方法を参考に、レジャー旅行者の異質性についての分析を行っていく。
1.3
目的
上述の背景に基づき、本研究ではまず、レジャー旅行者市場にはどのようなタイプが存在するのか
を調べ、Huse and Evangelho (2006) で見出されたビジネス旅行者のタイプとの比較を行い、両市場
にどのような違いがあるのか(または違いがないのか)を調べることを第1の目的とする。
続いて、レジャー旅行者の旅行形態を、予約の仕方によって、
• 個別旅行
宿泊先、交通手段など、すべてを自分で、個別に予約する旅行
• ツアーパック旅行
宿泊先や交通手段をまとめて予約でき、さらに、旅行日程中の予定(観光など)もすべて決め
られているパックツアーを、旅行代理店などを利用して予約する旅行
• フリーパック旅行
宿泊先と交通手段をまとめて予約できるが、旅行日程中の予定はすべて自由行動となっている
パックツアーを、旅行代理店などを利用して予約する旅行
以上の3つに分け、レジャー旅行者の選択する旅行形態と、その好みとの関係を分析することで、旅
行会社の新規顧客の獲得に有効な方法について考えることを第2の目的とする。
なお、本研究において「レジャー旅行」とは、「1泊以上の宿泊を伴うプライベートな旅行」をさ
している。
10
第 2 章 ビジネス旅行者の異質性の分析
2.1
先行研究の目的
Huse and Evangelho (2006) では、ブラジルの国内航空産業市場における、ビジネス旅行者の異質
性についての分析を行っている。
まずはじめに、ビジネス旅行者の市場には、どのようなタイプが存在するのかについて、因子分析
を行っている。調査において、旅行者の好みをあらわす項目として、10段階評価で重要度を回答し
てもらった10個の項目を変数として分析を行い、そこで抽出された共通因子を消費者のタイプとし
ている。
続いて、ビジネス旅行者を既存大手航空会社(FSC)の利用者と格安航空会社(LCC)の利用者に
分類し、それぞれの利用者間で評価に差がある項目はどれかについて、性別や年齢などの乗客特性と、
利用するルートの距離などのルート特性をコントロールした上で、順序離散反応 (ordered discrete
resronse) モデルを用いて分析している。
分析について述べる前に、分析対象となったブラジルの航空産業市場について、簡単に述べていく。
2.1.1
ブラジル国内の移動手段の変化について
ブラジルは、面積851.2万平方キロメートルという、日本の22.5倍もある広大な国であ
る。当然、都市間の距離も長く、国内での移動にも一苦労である。ここで、都市間の移動手段として
考えられるのは、自家用車、長距離バス、鉄道、航空機であるが、これまで、ほとんどの国民は長距
離バスを利用していた。その最も大きな理由として、国内に低所得者層が多かったことがあげられ
る。所得が少なければ、自家用車を購入する余裕はなく、公共交通機関を利用する人が多くなるが、
国内を走る鉄道は少ない。残された選択肢は、長距離バスと航空機であるが、航空券の価格はとても
手の届くものではなかった。価格の安価な長距離バスは、国民の移動手段に欠かせない存在であった
といえる。
しかし、近年の経済成長により新興国となったブラジルでは、国民所得の増加に加え、2001年
の格安航空会社ゴル航空の市場参入による航空券の価格低下によって、航空機は、国民の移動手段と
11
して、身近なものへと変化していった。また、航空機と長距離バスの移動時間を比べた場合、例え
ば、コルンバ∼カンポ・グランデ間では、長距離バスが約6∼6.5時間かかるのに対し、航空機は
約1時間で到着する。さらに遠い都市間を移動する場合、長距離バスだと丸1日以上もかかることも
多い。この移動時間の大幅な短縮も魅力となり、航空機を利用する国民が増加した。
2.1.2
ブラジルの国内航空産業市場について
国民の移動手段として、重要な存在となった航空機であるが、本節では、その国内航空機市場につ
いて、先行研究の調査対象となった、ヴァリグ航空、タム航空、ゴール航空を中心に述べていく。
現在、ブラジル国内で最大の航空会社は、1961年に創業したタム航空である。9.11同時多
発テロによる、航空業界の不況の影響を受けたものの、タム航空は運行機材の絞込みなど、格安航
空会社に近いビジネスモデルへの転換を行った経営改革が功を奏し、2003年以降国内シェアで
No. 1となり、2007年では、国内シェア約50%を誇っている。現在も、近年の旅客需要の増加
を受け、積極的に事業拡張を行っている。
そのタム航空より以前に、長年国内シェア No. 1を誇っていたのが、1927年に創業したブラジ
ル最古の航空会社、ヴァリグ航空である。創業以来、長きに渡り中南米最大の航空会社であったヴァ
リグ航空であるが、採算性の低い路線の運行や、高コスト体制による経営の悪化と、9.11同時多
発テロによる、航空業界の不況の影響を受け、2005年に破産申請し、経営再建を行っていた。
そして、そのヴァリグ航空を2007年に買収したのが、ブラジル発の格安航空会社ゴル航空で
ある。ゴル航空は、2001年に創業し、インターネットによるチケット販売や、短距離シャトル
便1 中心の運行など、徹底した低コスト経営により、それまでに比べ、格安で航空券の販売を行った。
その結果、先に述べた2社を始めとする既存の航空会社の顧客だけでなく、長距離バスの利用者の取
り込みにも成功し、現在では、タム航空に次ぐ国内シェア約36%を誇っている。また、タム航空同
様、旅客需要の増加に対応し、ヴァリグ航空の買収による路線網の拡大など、積極的に拡張を行って
いる。
なお、Huse and Evangelho (2006) で調査・分析が行われた、2005年における国内線マーケッ
トシェアは、タム航空が約43%、ヴァリグ航空、ゴル航空がともに約27%である。
1 事前予約なしで乗ることができる便のこと。大都市間を高頻度で運行している。低運賃で、座席は自由な場合もある。
12
2.1.3
目的
先進国と違い、新興国であるブラジルでの航空産業市場は、今後さらに拡大していく市場である。
そのビジネス旅行者市場には、どのようなタイプが存在するのかを調査すること、そして、ビジネス
旅行者が選択した航空会社と、その旅行者の好みとの関係についての概観を導くことにより、今後ま
すます成長が期待される格安航空会社の市場戦略を提案している。
2.2
調査方法
ブラジルの主要国内線空港である、サントス・デュモン空港(リオ・デ・ジャネイロ)において、
4日間に渡り、91人2 にインタビュー調査を行っている。ビジネス旅行者への接触は、対象者が
チェックインしてからセキュリティ・チェックに向かう間に、無作為行っている。
調査では、利用する航空会社のほか、以下の項目を重視する度合いを1(全く重要でない)∼10
(とても重要である)の10段階評価で回答してもらっている。
• VIP ラウンジ(ビジネスラウンジ)
• 機内サービスの質
• マイレージサービス(FFP)
• 運行回数
• 時間の正確さ
• 駐車場の割引
• ホテルの割引
• チェックインの簡単さ
• チケット販売の簡素化
• 午前1∼4時発のフライト(価格が非常に安い)
これに加えて、乗客の特性として、
• 性別
• 年齢
• 住所
• FFP に加入しているか
• 以前に格安航空会社を利用したことがあるか
2 このうち3人は、先行研究で調査を行った後に経営破綻したヴァスピ航空の利用者であったため、分析時にはデータを破
棄している。
13
そして、ルートの特性として、
• 道のり(出発地、経由地、目的地)
• 距離
以上の項目についても調査している。
分析
2.3
2.3.1
ビジネス旅行者のタイプについて
まずはじめに、対象者に10段階評価で回答してもらったデータをもとに、ビジネス旅行者にはど
のようなタイプが存在するかについて、因子分析を行っている。
まずはじめに、対象者全体、既存大手航空会社(FSC)利用者、格安航空会社(LCC)利用者そ
れぞれのデータの因子数について、帰無仮説を「因子×個でデータを十分説明できる」とした尤度比
検定を行っており、結果は以下のようになっている。
因子数
χ2 検定統計量 (自由度)
P値
全体
1
68.5(35)
0.0006
全体
2
37.9(26)
0.06
FSC
1
41.5(35)
0.209
LCC
1
36.3(35)
0.408
データ
この結果を有意水準5%で見ると、対象者全体のデータでは2因子、FSC 利用者のデータでは1因
子、LCC 利用者のデータでは1因子で有意でないという結果が出ており、それぞれの因子数がデー
タを説明するのに適したものであると判断できる。
次に、2因子が抽出された対象者全体のデータについてみていく。この2因子の、それぞれの項目
に対する因子負荷を軸にとり、プロットしたものが次の図である。
この図から、10個の項目を以下の3つのグループに分けることができる。
• グループ1
VIP ラウンジ(ビジネスラウンジ)、機内サービスの質、FFP
• グループ2
運行回数、時間の正確さ、駐車場の割引、ホテルの割引、チェックインの簡単さ、チケット販
売の簡素化
14
図 2.1: 因子分解の図 (Huse and Evangelho (2006, p.262, Fig.1))
• グループ3
午前1∼4時発のフライト(価格が非常に安い)
このグループ分けは、対象者が似たような評価をする傾向のある項目をまとめたものである。例え
ば、グループ1に属している VIP ラウンジをに対して、重要であると評価する人は、同じグループ
に属する、機内サービスの質と、マイレージサービスについても重要であると評価する傾向がある、
ということである。
ここで、Huse and Evangelho (2006) は、グループ1の項目に対して、高い評価をする人達を「贅
沢嗜好(luxury-loving)」、そしてグループ3の項目に対して、高い評価をする人達を「ノンフリル
嗜好(no-frills)」として、ビジネス旅行者のタイプ分けを行っている。この2つのタイプは、グルー
プ1とグループ3の項目に対して、大きく異なった反応を示しているが、グループ2の項目への反応
は、どちらがのタイプにもあまり差がみられない。
2.3.2
航空会社の特徴と旅行者の好みとの関係
前節で、ビジネス旅行者には「贅沢嗜好」と「ノンフリル嗜好」の2タイプが存在することがわ
かった。本節では、既存大手航空会社(FSC)利用者と格安航空会社(LCC)利用者の間で、どの
項目が大きく異なって評価されているのかを分析していく。
15
はじめに、10段階評価を行った項目の評価について、以下の式を定義する。
yij = (aij F S − uij F S ) × 1{i ∈ F S} + (aij LC + uij LC ) × 1{i ∈ LS}
このとき、各項は以下の通りである。
yij :個人 i によって与えられる項目 j の評価
1{E}:事象 E が起きたとき 1、それ以外は 0 をとる、事象 E の指示関数
aij F S ,aij LC :推定されたパラメータ
uij F S ,uij LC :平均 0、分散 1 の誤差項
この回帰モデルは切片項のみであらわされており、乗客やルートの特性がコントロールされていない
ため、一般化を行ってから回帰分析を進めていく。
まず、yij は1∼10の順序の決まった離散値を取る変数である。この yij を従属変数、そして
LCC: 旅行者が LCC を利用するとき 1、それ以外は 0 をとる
GEN DER: 男性ならば 1、女性なら 0 をとる
AGE: 旅行者の年齢
LCC F LOW N : 旅行者が過去に LCC を利用したことがあれば 1、それ以外は 0 をとる
V ARIG M ILES: 旅行者がヴァリグ航空のマイレージプログラムの会員ならば 1、それ以外は 0 を
とる
T AM M ILES: 旅行者がタム航空のマイレージプログラムの会員ならば 1、それ以外は 0 をとる
RJ DU M : 旅行者がリオ・デ・ジャネイロ近辺に住んでいれば 1、それ以外は 0 をとる
DIST : 出発地から目的までの陸路の距離(1000km 単位)
AIR DIST : 出発地から目的までの空路の距離(1000km 単位)
Route fixed − effect: ある特定のルートならば 1、それ以外は 0 をとる
以上の変数を独立変数として、10個の項目それぞれについて、「帰無仮説 H0 :それぞれの独立変数
の係数は 0」を順序プロビットモデルを用いて分析を行う。この結果、帰無仮説が有意水準5%(た
だし、*の箇所のみ10%)で棄却され、従属変数 yij に影響を与える独立変数と項目の組み合わせ、
そして、その係数を以下の表にまとめる。
16
運行回数
FFP
機内サービス
ビジネスラウンジ
LCC
-
-
0.595
0.485∗
LCC F LOW N
-
-0.757
-0.567
-0.499
AGE
-
-
-
0.028
0.688
-
-
-
V RG M ILES
-
1.063
-
-
T AM M ILES
0.602
0.762
-
-
-
1.290
-
-
RJ DU M
AIR DIST
この結果からわかることの1つ目は、LCC が機内サービスの質、ビジネスラウンジの重要度に正
(+) の影響を与えているのに対し、LCC F LOW N は負 (-) の影響を与えているということである。
これはつまり、初めて LCC を利用する人は機内サービスの質やビジネスラウンジを重要と考えてい
るが、LCC のサービスを経験することによって、その利便性などを実感することで、両項目を重視
しなくなる傾向にある、ということである。
2つ目は、V RG M ILES 、T AM M ILES 、AIR DIST が FFP の重要度に (+) 影響を与えてい
ることである。ヴァリグ航空とタム航空では、自社の FFP の会員に対し、自社の航空機を利用する
ことでためたマイレージを、航空券と引き換えられるサービスを提供している。FFP の会員である
人は、航空機を利用する際にマイレージをためるために、FFP を提供している航空会社を利用しよ
うとする傾向にあるといえる。また、飛行距離が長くなるほど加算されるポイントが高いので、FFP
の魅力が高まっていると考えられる。
3つ目は、AGE がビジネスラウンジの重要度に正 (+) の影響を与えているということである。こ
れは、年齢が高くなるほどビジネスラウンジの魅力が高まる傾向にあると考えられるが、この研究の
対象者がビジネス旅行者であることを考慮して、年齢が高まる=会社での地位(役職)が高まるとす
るならば、会社での地位が高くなるほどビジネスラウンジを利用する傾向にある、といえる。
4つ目は、RJ DU M 、T AM M ILES が運行回数の重要度に正 (+) の影響を与えているというこ
とである。運行回数を重視する人は、主な移動手段として航空機を利用していると考えられる。つま
り、空港の所在地であるリオ・デ・ジャネイロ近辺に住んでいる人と、タム航空の FFP に加入して
いる人が、主な移動手段として、他の交通機関よりも航空機を利用する傾向にある、といえる。
17
2.4
結論
この研究で、ブラジル国内航空産業市場において、ビジネス旅行者には「贅沢嗜好」と「ノンフリ
ル嗜好」の2タイプが存在することが示された。
また、FSC 利用者と LCC 旅行者の間で大きく異なって評価されている項目は、「機内サービス」
と「VIP ラウンジ(ビジネスラウンジ)」の2項目であることがわかった。そして、この2項目は、
「以前に LCC の利用経験がある」とした旅行者が、その利便性などを実感することで、両項目を重
視しなくなる傾向にあることも示された。
これらの結果より、LCC は低価格商品などで顧客を引き込むことで、LCC の利用経験をつくるこ
とで、利用した顧客の好みの変化を促し、市場シェアを拡大していくべきである、としている。
18
第 3 章 レジャー旅行者の異質性の分析
3.1
目的
Huse and Evangelho (2006) から、ビジネス旅行者市場には、
「贅沢嗜好」と「ノンフリル嗜好」の
2タイプが存在することが示された。また、FSC 利用者と LCC 利用者の間で、その重要度の評価に
差が出た項目は「機内サービス」と「ビジネスラウンジ」の2項目であることがわかった。この2
項目に対して、LCC の利用経験が、その重要度が低くする要因となっていることが示された。また、
その他に、年齢が「ビジネスラウンジ」の重要度を高める要因となっていることなどが示された。
このように Huse and Evangelho (2006) ではビジネス旅行者の異質性について示されたが、レジャー
旅行者の異質性については何も示されていない。しかし、『本研究を考えるうえで、価格は重要な特
性であるだろうが、それを考慮しないのにはいくつかの理由がある。1つ目は、ビジネス旅行者はチ
ケットを自分のお金で買わないこと…。2つ目は…予算が管理されていて、その予算は企業によって
均一でないこと…。』(Huse and Evangelho (2006) , p.261) という記述があることから、自分のお金
で旅行をするレジャー旅行者とは区別して分析を行っていることがわかる。つまり、ビジネス旅行者
とレジャー旅行者を同一のものとは考えていない、ということである。
そこで、本研究では、分析されていなかったレジャー旅行者に焦点をあて、その異質性について分
析を行う。そして、(1)Huse and Evangelho (2006) で同一でないと考えられたレジャー旅行者市場
とビジネス旅行者市場のタイプを比較することで、両市場にどのような違いがあるのか(または違い
がないのか)を調べること、(2) レジャー旅行者の選択する旅行形態1 と、その好みとの関係を分析す
ることで、旅行会社の新規顧客の獲得に有効な方法について考えること、の2つを目的とする。
なお、Huse and Evangelho (2006) の分析では、旅行者の交通手段のみについて考えていたが、レ
ジャー旅行者が旅行をする際に、交通手段のみを単独で考慮することは少ないと思われる。このた
め、交通手段に加えて、宿泊先や旅行先での過ごし方なども含めて分析を行う。
1 予約の仕方によって、個別旅行、ツアーパック旅行、フリーパック旅行の3つのタイプに分類した。この3タイプの定義
については、第1章1・3を参照
19
3.2
調査方法
2008年12月14日、東京・日本橋にある某コーヒーショップにて、来店されるお客様に無作
為に接触し、アンケートの回答を依頼した。対象者には、最近の旅行について思い出しながら、回答
をしてもらった。
アンケートの内容は、まず旅行の予約に関する項目として、
• 旅行の情報源
• 予約時期
• 予約方法
以上3つの質問を、選択形式で回答してもらった。3つ目の予約方法の回答によって、対象者を個別
旅行者、ツアーパック旅行者、フリーパック旅行者の3タイプに区別する。
次に、旅行内容に関する質問として、
• 行き先
• その旅行先への訪問経験(回数)
• 旅行先までの交通手段
• 旅行期間
• 旅行の同行者
• 一緒に旅行に行った人の数
以上5つの質問を、同様に選択形式で回答してもらった。
続いて、旅行のときに重視する項目(旅行者の好み)についての質問として、
• 料金が安い
• 出発時間・ホテルなどが自由に選べる
• 豪華さ・高級さがある
• 安心・安全である
• 手続きが簡単である
• 旅行中の予定を自由に決められる
• 特典(ポイント付与・割引などがある)
• 旅行先で案内してくれる人がいる
• 旅行先がベストシーズン中である
以上9つの項目についてそれぞれ、1(重要でない)∼5(重要である)の5段階評価で回答しても
らった。
最後に、対象者個人に関する質問として、
20
• 性別
• 年齢
• 旅行に行く頻度
以上3つの質問を、選択形式で回答してもらった。
なお、実際のアンケートは、本論文の最後に付してある。
アンケート調査の結果、有効回答数100のデータを得ることができた。
アンケート回答者の年齢・性別構成は以下の通りである。(単位:人)
∼20 代
30 代
40 代
50 代∼
計
男性
10
19
10
11
50
女性
22
10
10
8
50
計
32
29
20
19
100
さらに、年齢別・性別の個別旅行者、ツアーパック旅行者、フリーパック旅行者の構成は、以下の通
りである。(単位:人)
性別
年齢別
男
女
∼20 代
30 代
40 代
50 代∼
計
個別旅行者
25
21
13
16
8
9
46
ツアーパック旅行者
4
6
3
2
1
4
10
フリーパック旅行者
21
23
16
11
11
6
44
このデータに基づき、分析を行っていく。
3.3
分析
まず、レジャー旅行者市場にはどのようなタイプが存在するかについて、因子分析を行う。そし
て、そこで見出されたレジャー旅行者のタイプと、ビジネス旅行者のタイプについての比較を行う。
続いて、レジャー旅行者の選択する旅行形態(個別旅行、ツアーパック旅行、フリーパック旅行)
と、旅行者の好みとの関係について、1元配置の分散分析・多重比較を行う。そして、選択する旅行
形態間で、重要度に差がある項目はどれかを調べる。
21
3.3.1
レジャー旅行者のタイプについて
まず、レジャー旅行者市場にはどのようなタイプが存在するかを調べるため、Huse and Evangelho
(2006) を参考に、調査において、対象者に5段階評価で回答してもらったデータを用いて、旅行者
全体のデータについて因子分析を行う。この因子分析によって抽出された共通因子を旅行者のタイプ
とする。因子抽出法には最尤法、因子の回転には、プロマックス法(斜交回転)を採用した。
ここで、因子分析のモデルについて考えみる。因子分析はいくつかの要因の共通因子を抽出する方
法で、変数(要因)xk の数が p 個、共通因子 fk の数が m 個の因子分析モデルは以下のようになる。
x1 = a11 f1 + a12 f2 + . . . + a1m fm + ²1
x2 = a21 f1 + a22 f2 + . . . + a2m fm + ²2
..
.
xp = ap1 f1 + ap2 f2 + . . . + apm fm + ²p
この式を行列式にあらわすと、
x = Λf f + D
となる。このとき、a11 , a12 , . . . , apm を因子負荷と呼ぶ。因子負荷は、共通因子が項目それぞれに与
える影響をあらわしたものである。そしてこの因子負荷を並べた


a11


 a21

Λf =  .
 .
 .

ap1
a12
a22
..
.
ap2
...
a1m


. . . a2m 

.. 
..

.
. 

. . . apm
を因子負荷行列、D は誤差 ²1 , ²2 , . . . , ²p の行列である。ここで、変数 x1 , x2 , . . . , xp の分散共分散行
列 Σ は、


V ar(x1 )


 Cov(x2 , x1 )

Σ=
..

.


Cov(xp , x1 )
Cov(x1 , x2 )
V ar(x2 )
..
.
Cov(xp , x2 )
. . . Cov(x1 , xp )


. . . Cov(x1 , xp ) 


..
..

.
.


...
V ar(xp )
である。このとき、誤差 ²1 , ²2 , . . . , ²p はすべて互いに独立、誤差と共通因子 f1 , f2 , . . . , fm は互いに
22
独立、共通因子は互いに独立であり、分散1であると仮定すると、
Σ = Λ f Λf t + D
とあらわされ、この式より、因子負荷行列を求めることができる。最尤法ならば、p 変数の N 個の
データ {x1 , x2 , . . . , xN } が与えられたとき、p 変数の尤度関数
(2π)−
Np
2
· |Λf · Λf t + D|
−N
2
· e− 2 ·tr((Λf ·Λf
N
t
+D)−1 ·S)
· e− 2 ·(x̄−µ)·(Λf ·Λf
N
t
+D)−1 ·(x̄−µ)t
を最大にする Λf を求める。
SPSS で分析を行った結果、計算された因子の共通性は以下のとおりである。
項目
初期
因子抽出後
価格が安い
.126
.159
出発時間・ホテルが自由
.226
.320
豪華さ・高級さ
.222
.502
安心・安全
.323
.482
手続きが簡単
.271
.630
旅行中の予定が自由
.302
.602
特典がある
.131
.096
案内人がいる
.298
.352
ベストシーズン中
.203
.196
共通性は、それぞれの項目が因子によって説明される割合をあらわす。「特典がある」の項目は共通
性が.096 となっており、因子によって上手く説明されていないため、この項目を除く8つの項目で分
析を進めていく。
因子抽出を行った結果、3つの共通因子が抽出された。プロマックス回転後の因子負荷行列は以下
のようになった。
23
項目
因子1
因子2
因子3
手続きが簡単
.910
.034
-.282
安心・安全
.475
.085
.413
ベストシーズン中
.380
-.104
.062
-.021
.792
-.048
出発時間・ホテルが自由
.052
.562
.134
案内人がいる
.256
-.429
.156
豪華さ・高級さ
.042
.087
.648
価格が安い
.144
.070
-.402
旅行中の予定が自由
この因子負荷行列をもとに、共通因子が影響を与える項目 (正負どちらに影響を与えるか) をまとめ、
名前をつけると以下のようになる。
• 因子1:利便性重視
手続きが簡単である (+)、安心・安全である (+)、旅行先がベストシーズン中である (+)
• 因子2:自由さ重視
旅行中の予定を自由に決められる (+)、出発時間・ホテルなどが自由に選べる (+)、旅行先で
案内してくれる人がいる (-)
• 因子3:高級さ重視
豪華さ・高級さがある (+)、価格が安い (-)
この共通因子3つが旅行者のタイプと考えられるので、レジャー旅行者には「利便性重視」型、「自
由さ重視」型、「高級さ重視」型の3タイプが存在することがわかった。また、因子相関行列は、
因子
1
2
3
1
1.000
-.011
.260
2
-.011
1.000
-.133
3
.260
-.133
1.000
以上のようになり、因子間に相関はないものと考えられる。
同様に、データを個別旅行者、ツアーパック旅行者、フリーパック旅行者に分類し、因子分析を
行ったが、分類した事によって、標本数が少なくなったため、上手く因子を抽出することができな
かった。
24
3.3.2
旅行形態の特徴と旅行者の好みとの関係
Huse and Evangelho (2006) では、FSC 利用者と LCC 旅行者の2つの比較を行っていたが、本研
究では、個別旅行者、ツアーパック旅行者、フリーパック旅行者の3つの比較を行う。
まずは、対象者に5段階評価で回答してもらった項目それぞれについて、3タイプの旅行者の平均
に差が出るかどうかを1元配置の分散分析によって検定を行う。検定では、
「帰無仮説 H0:3つのタ
イプの平均は等しい」を検定する。結果は以下の通りである。
項目
F値
有意確率
価格が安い
1.680
.192
出発時間・ホテルが自由
9.176
.000
豪華さ・高級さ
1.316
.273
安心・安全
.281
.756
手続きが簡単
.165
.848
13.950
.000
.729
.485
14.202
.000
.384
.682
旅行中の予定が自由
特典がある
案内人がいる
ベストシーズン中
この結果から、「出発時間・ホテルが自由」、「旅行中の予定が自由」、「案内人がいる」の3つの項目
は有意確率5%で棄却され、それぞれの項目について、3つのタイプで平均に差があることがわかっ
た。これをもとに、どのタイプとどのタイプに差があるのかを、すべてのタイプの組み合わせにおい
て「帰無仮説 H0 :2つのタイプの平均は等しい」の検定を行い、多重比較をして調べる。
ところで、平均を比較する際の前提は、3つのタイプ間で分散が等しいことである。よって、それ
ぞれの項目について、等分散性があるかを確かめる必要がある。そこで、ルビーンの検定を用いて、
「帰無仮説 H0 :3つのタイプで分散は等しい」の検定を行った。結果は以下の通りである。
25
項目
ルビーン統計量
有意確率
.730
.484
6.531
.002
豪華さ・高級さ
.517
.598
安心・安全
.828
.440
手続きが簡単
3.255
.043
旅行中の予定が自由
6.564
.002
特典がある
1.155
.319
案内人がいる
2.177
.119
ベストシーズン中
0.005
.995
価格が安い
出発時間・ホテルが自由
この結果より、「出発時間・ホテルが自由」、「手続きが簡単」、「旅行中の予定が自由」の3つの項目
は、有意水準5%で棄却されているので、等分散性が成り立っていないことがわかった。1元配置の
分散分析の結果と、等分散性の検定の結果をもとに、「出発時間・ホテルが自由」、「旅行中の予定が
自由」の2つの項目にはタムハーンの検定を、「案内人がいる」の項目にはボンフェローニの検定を
用いて、多重比較を行った。結果は以下の通りである。
項目
タイプの組み合わせ
出発時間・ホテルが自由
旅行中の予定が自由
案内人がいる
平均値の差
有意確率
個別*ツアー
.987
.053
個別*フリー
.155
.537
ツアー*フリー
-832
.113
個別*ツアー
1.209
.018
個別*フリー
.131
.664
ツアー*フリー
-1.077
.034
個別*ツアー
-1.887
.000
個別*フリー
-.564
.034
ツアー*フリー
1.323
.001
「出発時間・ホテルが自由」の項目は、有意水準5%で帰無仮説は棄却できなかったものの、有意
水準を10%まで引き上げれば、個別旅行者とツアーパック旅行者の組み合わせで帰無仮説を棄却す
ることができ、2つのタイプの平均に差があると判断できる。平均値の大きさが、個別旅行者>ツ
アーパック旅行者となっていることから、「個別旅行者はツアーパック旅行者よりも、出発時間・ホ
26
テルを自由に選べることを重要であると考えている」ことがわかった。
「旅行中の予定が自由」の項目は、個別旅行者とツアーパック旅行者、ツアーパック旅行者とフ
リーパック旅行者の2つの組み合わせにおいて、有意水準5%で帰無仮説を棄却できた。平均値の
大きさが、個別旅行者>フリーパック旅行者>ツアーパック旅行者となっており、個別旅行者とフ
リーパック旅行者の間に差は見られないことから、「個別旅行者とフリーパック旅行者の2タイプは
ツアーパック旅行者よりも、旅行中の予定が自由であることを重要であると考えている」ことがわ
かった。
「案内人がいる」の項目は、すべての組み合わせにおいて、有意水準5%で帰無仮説を棄却でき
た。平均値の大きさが、ツアーパック旅行者>フリーパック旅行者>個別旅行者となっており、フ
リーパック旅行者と個別旅行者間の差が、ツアーパックとの差に比べて小さいことから、「個別旅行
者フリーパック旅行者の2タイプはツアーパック旅行者よりも、旅行先で案内してくれる人がいるこ
とを重要でないと考えている」ことがわかった。
同様の検定を旅行形態だけでなく、性別や行き先などの、旅行者や旅行内容の特性別でも比較を
行った。比較を行った組み合わせ、有意な差が出た項目、平均値の大きさの大小関係をまとめると以
下の通りである。
組み合わせ
差が出た項目
平均値の大小関係
男*女
安心・安全
男<女
.044
国内*海外
安心・安全
国内<海外
.021
案内人がいる
国内<海外
.000
ベストシーズン中
∼20 代,30 代,40 代< 50 代∼
∼20 代*30 代*40 代*50 代∼
有意確率
.001,.002,.005
この結果から、
「女性は男性よりも、安全性を重要であると考えている」こと、
「海外旅行者は国内
旅行者よりも、安心・安全であること、旅行先で案内してくれることを重要であると考えている」こ
と、「50代∼の人は他の世代の人よりも、ベストシーズン中であることを重要だと考えている」こ
とがわかった。
3.4
結論
因子分析の結果、レジャー旅行者のタイプには、「利便性重視」型、「自由さ重視」型、「高級さ重
視」型の3タイプが存在することがわかった。Huse and Evangelho (2006) で分析されたビジネス旅
27
行者のタイプには、
「贅沢嗜好」型と「ノンフリル嗜好」型が存在した。この2つを比較してみると、
まず、「高級さ重視」型と「贅沢嗜好」型は、高級なものへの重要度が高く、価格の安さへの重要度
は低いという点で共通していると考えられる。そして、
「自由さ重視」型と「ノンフリル嗜好」型は、
案内人や機内サービスなど、付加価値的なものへの重要度が低いという点で共通していると考えら
れる。また、ビジネス旅行者の分析ではタイプとして考慮されず、特に名前をつけられていなかった
グループ2の項目は、利便性に関する項目が多く存在している。このグループの性質については詳し
く述べられていなかったが、「利便性重視」型との共通性があるものと考えられる。
以上のことより、レジャー旅行者市場とビジネス旅行者市場は、区別されて考えられているもの
の、その市場における潜在的な消費者のタイプには共通する点が多く、同一の市場であるように思え
る。にも関わらず、その市場が区別されているのは、予算などの制約が存在することの影響からと考
えられる。もしも、何の制約もなければ、レジャー旅行者とビジネス旅行者の間で、その選択に差が
出ないものと思われる。
また、旅行形態間の一元配置の分散分析の結果、「個別旅行者はツアーパック旅行者よりも、出発
時間・ホテルを自由に選べることを重要であると考えている」こと、「個別旅行者とフリーパック旅
行者の2タイプはツアーパック旅行者よりも、旅行中の予定が自由であることを重要であると考えて
いる」こと、「個別旅行者フリーパック旅行者の2タイプはツアーパック旅行者よりも、旅行先で案
内してくれる人がいることを重要でないと考えている」ことの3つがわかった。ここで、「旅行先で
案内してくれる人がいること」が、旅行者の自由な行動に制約を与えるものと考えるならば、この結
果から、個別旅行者は旅行中の予定や、交通手段、宿泊先において、自由であることをとても重視し
ているといえる。この旅行代理店などを通さずに予約を行っている個別旅行者を、今後パック旅行の
新たな顧客として取り込むには、自由さをアピールした商品が一番効果的であると考えられる。
そして、その他の特性での分析の結果、「女性は男性よりも、安全性を重要であると考えている」
こと、「海外旅行者は国内旅行者よりも、安心・安全であること、旅行先で案内してくれることを重
要であると考えている」こと、
「50 代∼の人は他の世代の人よりも、ベストシーズン中であることを
重要だと考えている」ことの3つがわかった。
1つ目の「女性は男性よりも、安全性を重要であると考えている」という結果は、男女間で有意
な差が見られたものの、ともに平均値が 4(やや重要である)を越えていることから、どちらも安全
性を重要視していると考えられる。その中でも、女性の方がより保守的であるというだけのもので
ある。
2つ目の「個別旅行者とフリーパック旅行者の2タイプはツアーパック旅行者よりも、旅行中の予
定が自由であることを重要であると考えている」という結果は、国内は普段生活をしていてよく知っ
28
ている分もともとの安心感が高いことや、海外情勢への不安などが影響していることで、旅行者の安
心・安全への重要度が高まっていると考えられる。ただし、旅行先への訪問回数で比較を行っても、
初めて行く人と2回目以上の人の間には差がみられなかったことから、知らない土地へ行くことへの
不安が安全性への重要度を高めているわけではないといえる。
3つ目の「50代∼の人は他の世代の人よりも、ベストシーズン中であることを重要だと考えてい
る」という結果は、「ベストシーズン」=「旅行がしやすい時期」であることから、50代∼の人は
他の世代の人よりも、快適さを重視しているといえる。
29
第 4 章 まとめ
レジャー旅行者にはどのようなタイプが存在するのか。また、レジャー旅行者の選択する旅行形
態と、その好みにはどのような関係があるのか。本論文はこの2つについて分析を行うことで、レ
ジャー旅行者の異質性を分析した。
まず、レジャー旅行者のタイプを導出し、Huse and Evangelho (2006) の導出したビジネス旅行者
のタイプとの比較を行った。しかし、分析結果を通じて、両者には共通する点が多く、同一の旅行者
市場としてみなせる可能性が高いことがわかった。それにも関わらず、その市場が区別されているの
は、ビジネス旅行者に予算や時間など様々な制約があることが影響していると考えられる。この点に
ついての分析をするには、レジャー旅行者に対して制約がある場合の選択についての調査を行うか、
ビジネス旅行者に対して制約のない場合の選択について調査を行う必要があるが、今回はその調査
を行っていないため、分析をすることができなかった。
次に、レジャー旅行者の選択する旅行形態と好みとの関係についての分析を行った。その結果、個
別旅行者が旅行の交通手段、宿泊先、旅行中の行動予定などに関して、自由さを非常に重視している
ことがわかった。この自由さを重視するがゆえに、宿泊施設や交通手段の利用時間、旅行中の行動が
ある程度制限されているパッケージツアーを選択していないものと考えられる。しかし、今回調査し
たデータの半数は個別旅行者であったため、パッケージツアーの新規顧客となりうる人は、市場に多
く存在すると推測できる。この個別旅行者を獲得するには、まず、彼らの重視している自由さアピー
ルするようなパッケージツアーを販売することが一番効果的であると考える。
31
参考文献
[1] C.Huse, and F. Evangelho (2006) “Investigating business traveller heterogeneity: Low-cost vs
full-service airline users?” Transportation Research, Part E, 43(3), pp. 259–268.
[2] 石村貞夫, 石村光資郎 (2007) 『入門はじめての多変量解析』, 東京図書.
[3] 石村貞夫, 石村光資郎 (2008) 『入門はじめての分散分析と多重比較』, 東京図書.
[4] 石村貞夫, デズモンド・アレン (1997)『すぐわかる統計用語』, 東京図書.
[5] 内田治 (2007) 『すぐわかる SPSS によるアンケートの多変量解析』, 東京図書.
[6] 石村貞夫 (2002) 『SPSS による分散分析と多重比較の手順』, 東京図書.
[7] 石村貞夫 (2001) 『SPSS によるカテゴリカルデータ分析の手順』, 東京図書.
[8] 酒井隆 (2003) 『実務入門 図解 アンケート調査と統計解析がわかる本』, 東京図書.
[9] 広瀬隆雄の新興国投資レポート http://plaza.rakuten.co.jp/isbrics/
[10] 外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
33
*旅行に
旅行に関するアンケート
するアンケート*
アンケート*
筑波大学第三学群社会工学類 4年 當摩真弓
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
このアンケートは、みなさんの旅行の選び方に関する調査を行うものです。ここでの
「旅行」
旅行」とは、1泊以上の
泊以上の宿泊を
宿泊を伴う(仕事ではなく
仕事ではなく)
ではなく)プライベートな
プライベートな旅行をさします。
回答する際には、最近の
最近の行かれた旅行
れた旅行を
旅行を思い出しながらお答えください。
アンケートの結果は統計的に処理をし、個人が特定されることはありません。また、
本調査以外の目的には使用せず、データの管理には十分に配慮いたします。
※本調査は卒業研究のためのもので、****コーヒーショップとは無関係です。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
[Ⅰ]旅行で利用するホテルや交通手段を予約したときのことについてお聞きします。
以下、該当するものの数字に、○をつけてお答えください。
1
旅行の情報の得るために最も多く利用したものは何ですか?
1.インターネット
2.代理店などのパンフレット
3.新聞・雑誌などの広告
2
4.その他(具体的に:
)
予約をした時期はいつごろですか?
1.出発日の前日~9日前
2.出発日の10日前~30日前
3.出発日の1ヶ月以上前
3
予約はどのような方法で行いましたか?
1.すべて個別に調べ、自分で予約した
2.ホテル・交通手段をまとめて予約できるパックツアー(旅行中
旅行中の
旅行中の予定が
予定が決め
られているもの)を探し、代理店などを利用して予約した
られているもの
3.ホテル・交通手段をまとめて予約できるパックツアー(旅行中
旅行中の
旅行中の予定は
予定はフリ
ーのもの)を探し、代理店などを利用して予約した
のもの
[Ⅱ]旅行の内容についてお聞きします。
以下、該当するものの数字・該当する箇所に、○をつけてお答えください。
1
旅行の行き先はどちらでしたか?
1.国内 → ( 北海道 ・ 東北 ・ 関東甲信越 ・
東海 ・
近畿 ・ 北陸 ・ 中国 ・ 四国 ・ 九州 ・ 沖縄 )
2.海外 → ( 北米 ・
中南米 ・ ハワイ ・
グアム/サイパン
アジア ・
2
ヨーロッパ ・
・
中近東/アフリカ/トルコ )
その場所に行くのは何度目でしたか?
1.初めて
3
・ オセアニア
2.2,3回目
3.4回目以上
旅行先までの主な交通手段は何を利用しましたか?
1.飛行機
2.電車
3.バス
4.車
5.船
4
旅行の期間はどのくらいでしたか?
1.2、3日間
2.4~6日間
4.10~14日間
5
5.15~30日間
6.31日間以上
旅行に一緒に行ったのはどなたでしたか?
1.自分一人
2.友人・知人
4.先輩(上司)
・後輩(部下)
6
3.7~9日間
3.家族・親戚
5.その他(具体的に:
)
※5
5 で「1.自分一人」
自分一人」以外に
以外に○をつけた方
をつけた方のみにお聞きします
のみ
旅行には何人で行きましたか?
1.2~4人
2.5~10人
3.11人以上
[Ⅲ]旅行の時に、重要だと思うことについてお聞きします。
以下の項目それぞれについて、最
最も当てはまる箇所の数字に○をつけてください。
てはまる
重要
やや重要 どちらとも あまり 重要でない
いえない 重要でない
料金が安い
5
4
3
2
1
出発時間・ホテル等が自由に選べる
5
4
3
2
1
豪華さ・高級さがある
5
4
3
2
1
安心・安全である
5
4
3
2
1
手続きが簡単である
5
4
3
2
1
旅行中の予定を自由に決められる
5
4
3
2
1
特典(ポイント付与・割引等)がある
5
4
3
2
1
旅行先で案内してくれる人がいる
5
4
3
2
1
旅行先がベストシーズン中である
5
4
3
2
1
[Ⅳ]以下、該当するものの数字に○をつけておこたえください。
1
あなたの性別についてお答えください。
1.男
2
2・女
あなたの年齢についてお答えください。
1.19歳以下
4.40~49歳
3
2.20~29歳
5.50~59歳
3.30~39歳
6.60歳以上
旅行に行く頻度についてお答えください。
1.一ヶ月に1回以上
3.半年に1回
2.二、三ヶ月に1回
4.一年に1回
5.二、三年に1回以下
------------------------------------- アンケートは以上です。ご協力ありがとうございました。