北海道立食品加工研究セ ンター報告 No.82009[ノ ー ト] 39 絶対値評価 ソフ トウ ェ アを利用 したナチ ュ ラルチ ー ズの香 り評価 奥村幸広,河 野慎 一 ,清 水英樹,熊 林義晃 Flavor Analysis of Natural CheeseUsing an electronic nose and "Asmell2" Software Yukihiro Okumura,Shinichi Kono,Hideki Shirnizu,Yoshiteru Kumabayashi Natural cheeseflavor was evaluated using the electronic nose FF-l and Asmell2. To evaluate the flavor strength of cheeses,a smell index was used. The smell index of cheese head space vapor was correlated with sensory evaluation.To evaluate the quality of some cheeseflavors, Asmell2 software was used in "User Mode". Standard smell compoundswere selectedfrom typical cheese-fravoredcomponents. We concludedthat Asmell2 analysismakes it possibleto objectively distinguish various cheeseflavors. 食品 の 品質 にお い て,「香 り」 は嗜好性 を左 右す る重 カマ ンベ ー ル, お よび試作 したプ ロピオ ン酸菌チ= ズ の 要な項 目として広 く認識 されて い る。食品の香 り評価法 6 種 類 を使用 した。試料 よ り2 g の 切片 を調製 して無 臭 バ ッグに封入 し, バ ッグ内に薄 く広げた. バ ッグに超 高 として,官 能評価 の重要性 は広 く認知 されて い るが,優 秀なパ ネラーの育成,測 定点数 の制限,客 観性や再現性 などの課題か ら食品業界へ の負担が大 きく,機 器分析に 純度窒素 ガス 2 L を 加 えて密封 し, 室 温で 1 時 間静置 さ せ ヘ ッ ドスペ ー スガス を調製 した そ の後, ヘ ッドスペ ー よる香 りの客観 的評価技術 が求 め られて い る 当 セ ン ターでは,従 来 の香気成分分析機器 と異 なる原理 に基づ スガス を新 たな無臭バ ッグに移 し, 測 定 に供 した。 ( 2 ) に お い識別装置 と測定 シー クエ ンス く 「にお い識別装置」 を利用 して,官 能評価の代替 とな におい識 別装置は 「 F F ‐1 」( 島津製作所) を 使用 した. る香 りの客観的評価 について検討 を進め きてた.近 年, にお い識別装置 の定量性 ・再現性 を更に向上 させ ること 本装置は, 香 気成分に対 して反応性の異 なる 6 個 のセ ン を目的 とした「 絶対値表現 ソフ トAsmel1 2」 が開発 され, 解析能力 の大幅な改善が期待 されて い るが,食 品分野に おける利用はまだ少 ない。 そ の理由 として,食 品分野 に マ ッチ した標 準物質 の選定事例 ならびに選定手法に関す る情報の蓄積が少 ないこ とが挙 げ られる.こ こでは,食 品分野 の香 り評価 に対す る標準物質 の選定手法 につい て 検討す ることを目的 として,ナ チュラルチ ー ズ をモ デル とした香 り評価 を試みたので報告す る. 1,実 験方法 (1)供 試試料お よび前処理 供試試料 として,市 販 されてい る道産ナチュラルチ ー ズか らゴー ダ,シ ュー ブル,ラ クレッ ト,ル ブ ロ シ ョン. サ と香気成分捕集管 を装備 した ものである. 各 試料 よ り 調製 したヘ ッ ドスペ ー スガスは, にお い識別装置 に供 し, サ ンプ リング時間を 6 秒 , 1 8 秒 , 6 0 秒 とし, ドライパ ー ジ 6 0 ℃, デ ソー プション2 5 0 ℃で測定 を行 った ( 3 ) 絶 対値評価 ソフ トウェア 解析手法 として, 絶 対値表現 ソフ トウェア 「 ASMELL 2 」 ( 島津製作所) を 使用 した。評価 モ ー ドとして, メー カー指定 の標準 ガスセ ッ ト( 表1 ) を 用 いる 「ス タンダー ドモー ド」 と, 測 定者が標準 ガスセ ッ トを設定す るユ ー ザ ーモー ドを使用 した。ユ ーザ ーモ ー ドでは, チ ーズの 香気成分組成 を考慮 した標準 ガスセ ッ ト ( 表2 ) を 用 い た. 香 りの評価 につい ては, 香 りの強 さの指標 として臭 気指数による表現 を検 討 した. 臭 気指数は, 悪 臭防止法 事業名 : 一 般試験研究 課題名 : 「新規 にお い解析 システム」 を利用 した食品の香 り評価技術 の 開発 奥村他 ・絶対値評価 ソフ トによる食品の香 り評価 40 に よって 定義 され るにおい の 強 さで あ り, 下 式 に よって 表 され る. N=10Log(D/T) 気濃 度 (臭気 の あ る気 体 を 気指 数,D/T:臭 無臭 の空 気 で希釈 し,臭 い が感 じられ な くなった希釈 倍 轟理腋暉 N:臭 数) さ らに,香 りの特 徴 の 評価 と して,標 準 ガス に対 す る臭 気寄与 パ ター ンにつ い て検 討 した。 H2S(1,3,10ppm) ダイ レク ト 硫黄系 CH3SH(rppm) 捕集管 ア ンモ ニ ア NH3(3,10,30ppm) ダイ レク ト ア ミン系 NMeS(1ppm) 捕集管 エ ステ ル 系 BuOAc(1ppm) 捕集管 芳香族 Toluene(3ppm) 捕集管 モー ド 標準臭気名 成分お よび濃度 短鎖脂 肪 酸 酢 酸 (1,10ppm) 中鎖 脂肪 酸 カ プ ロ ン 酸 (lppm) ア ミン系 集管 MeOH(lppm) 捕 捕 集管 集管 鰈当畑釈 捕 鰈ミト ーКH BuOAc(lppm) 鰈ハ“ト 集管 トー ー中ハト 捕 鰈釈擦 有機 系 集管 NMe3(lppm) ヘ キ サ ン (lppm) アル コー ル 捕 イ レク ト 鵬K ざ燿 エ ス テル 系 ダ 図 1 ス タンダー ドモー ドによる臭気指数評価 冊訃 怖腋 嘲 表 2 ユ ーザ ーモー ドの標準 ガスセッ ト ミー て ハレR 硫化水素 ミ ヽI Hハ モー ド エ、らヽい 成分お よび濃度 饉 ハヽ ﹁日ヽ 標 準臭気名 ハm、 ′日ヽハヽ は︱ ﹁ 表 1 ス タンダ ー ドモ ー ドの標準 ガスセ ッ ト 図 2 ス タ ンダ ー ドモ ー ドによ る香 り評価 2.結 果及 び 考察 絶対 値評価 ソフ トの ス タ ン ダー ドモ ー ドを用 いて ,ナ チ ユ ラ ルチ ー ズの香 り評価 を試 み た.臭 気 指 数 を利用 し 一 ― ゴーダ ラクレット ー ー E「ルブロシヨン シエーブル ー プロピオン酸 ー カマンベール た香 りの 強度評価 は,一 般 的 なチ ー ズの種類 と香 りの 強 さの 関係 との相 関が 高 か った (図 1).標 準 ガス に対 す る臭気 寄与 パ ター ンで は, カ マ ンベ ー ルの ア ンモ ニ アに 次 に,ユ ー ザ ー モ ー ドで の香 り評価 を試 み た。ユ ー ザ ー モ ー ドで は,市販 チ ー ズ フ レー バ ー の香 気組 成 を もとに, 対 す る臭 気 寄 与 が 高 い こ とが 特 徴 的 に 表 現 され て い た 短鎖 お よび中鎖脂肪 酸 ,ア ル コー ル,有 機系 を標 準 ガス ンモ ニ ア は,に お い 識別装 置 の捕 集管 に捕 集 と して選択 した。短鎖脂 肪酸 は,捕 集管 との 親和性 が低 い ため , ダ イ レク ト測 定 デ ー タを用 い,他 の標準 ガス は (図 2)ア され に くい 成分 で あ り,従 来 の測 定方法 で は評価 が 困難 で あ ったが ,「ASMELL」 に よる評価 で は改 善 され てい る こ とが 確 認 で きた。 ア ンモ ニ ア以外 の標 準物 質 に対 す る臭気 寄与 パ ター ンは,測 定 したチ ー ズ 間 で の パ ター ン の差 は小 さ く,香 りの特徴 を表現 す るには,標 準物 質 を チ ー ズ に適 した もの に変更 す る必 要 が あ る こ とが 示 唆 さ れ た. 捕 集管測 定 デ ー タを使用 した。 中鎖脂 肪 酸 につ いて は, ー 直鎖脂肪 酸 の主 鎖 長 とセ ンサ パ タ ンの 関連性 を確 認す るため,C4(酪 酸 ),C6(カ プ ロ ン酸 ),C8(カ プ リル酸 ), C10(カ プ リ ン酸 )に つ い て標 準 ガス を調 製 し,セ ンサ パ ター ンを確 認 した。 そ の 結 果,中 鎖 脂肪酸 群 は主 鎖 長 にか か わ らず類 似 した 出カ パ ター ンを示 した。す なわ ち, C4∼ C10の 直 鎖 脂肪 酸 で は,セ ンサ パ ター ンと して カ ル ボ ン酸 に起 因す る要 素が支 配 的 であ る こ とが確 認 され 北海道立食品加工研究 セ ンター報告 No.82009 た。 この 結果 よ り,中 鎖 脂肪酸 の標 準 ガス と して は,濃 度調製 が 容易 な C6(カ プ ロ ン酸 )を 用 い る こ とと した. ナチ ュ ラ ルチ ー ズ か ら調製 した ヘ ッ ドス ペ ー ス ガス に 対 して,ユ ー ザ ー モ ー ドに よる解析 を行 った結 果,短 鎖 及 び中鎖 脂肪 酸,ア ル コー ル及 び炭 化水 素 に対 す る臭気 寄与 につ いて,各 チ ー ズ 間で の 差 が 明確 とな った (図 3). 特 に, ゴ ー ダ, シ ェ ー ブルな どのセ ミハ ー ド系 チ ー ズ に つ い て は,脂 肪 酸 の 臭気 寄与 が他 のチ ー ズ に比 べ て大 き く,一般 的 に評価 され るチ ー ズの香 りと相 関が高 か った. 41 以上の結果か ら,ナ チ ュ ラルチ ーズの香 り評価 には, ナチ ュ ラルチ ー ズの香 り構成 に出来す る標 準 ガスセ ッ ト を用 い ることで,香 りの特徴 を適切 に表現 で きる ことが 示唆 された。本報では,異 なる種類のチ ーズに対する評 価 を検討 したが,同種チ ーズ 内での香 り評価 について も, 各チ ー ズの香気成分 をもとに標 準 ガスセ ッ トを選抜する ことによって,客 観的な香 り評価が可能であると考 え ら れている. 3.要 約 におい識別装置 と絶対値評価 ソフ トウェアを用 いて, ナチ ュ ラルチ ー ズの香 りの特徴 の客観的評価 を試みた. 冊仲怖眠 暉 香 りの強さの表現 として臭気指数を用 い ることによって, 官能評価 と相関 の高 い評価が可能 となった。香 りの特徴 については,チ ー ズの香気組成に基づ く標準 ガスセ ッ ト を用 い ることで,異 なる種類のチー ズに対す る香 りの特 徴 を客観的に表現する ことが可能 となった。 鰈墾撫 採ミI Πハヽ ト 鰈ミト ーKH ラクレット 瞑ハ″卜 ― 聞爆製謳 〓 陽爆製 謳熙 図3 ュ ゴ ーダ ー ザ ー モ ー ドに よ る 香 り評 価 書 ルブロション ー プロピォン酸 ー シェーブル ー カマンベール
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