ネット社会と人権 - NIT情報技術推進ネットワーク

インターネット社会と人権
~なにげない投稿から起きるトラブル~
NIT 情報技術推進ネットワーク㈱
スマートフォンの普及で、あらゆる世代が「投稿」出来る環境を手に入れた。
テレビのニュース番組でも、画面の下に、視聴者のコメントが表示される番組
が増えてきた。 参加型番組に投稿するということは、情報共有サービスに記録
を残すということになる。 LINEをはじめとする、無料通話アプリもSNS
に属する。無料通話サービスと情報共有サービスの機能を持っているのだから、
設定を間違えて使用すると、情報が拡散することとなる。子どもが、自分のス
マートフォンを買ってもらえず、保護者のスマートフォンを一緒に使っている
家庭もある。親はSNSを使用していなくても、子どもが投稿すると、端末情
報や相手の電話帳データから親の投稿と誤解される場合もあるのだから、仕組
みを知らずに利用すると、安易な投稿から、思わぬトラブルに巻き込まれてし
まう事となる。
*投稿はデジタルタツゥー
SNSにコメントを投稿することと、E メールを使うことが、区別できていな
い人もいる。E メールは送信先の相手とのやり取りで、特に携帯メールといわれ
る i–mode や ezWeb、SoftBank は記録が何年もネット上に残る事はない。携帯電
話会社の管理下にあり、安全性も高い。 一方、Twitter や Facebook のようなS
NSは、コメントや画像が、多くの人の端末に残り続ける場合もある。非公開
のコメントを覗き見るアプリも存在する。 家族の写真を投稿するということは、
世界中が見るかもしれないところに、プライベートな写真を貼り付けるという
ことだ。 今は可愛い我が子の幼い写真かも知れないが、やがて成長し就職、結
婚という時期を迎えるその時、過去の記録から我が子がトラブルに見舞われる
かも知れないのだ。 可愛いからと投稿した子どもの画像が、不審者の目に触れ、
ストーカー被害や連れ去り被害に遭っている。ネットは日本国内だけに留まら
ない。どんな被害に遭うか、想像を遥かに超える事例は次々と起きているのだ
から、親が我が子の人権侵害を起こさないよう意識しておきたい。
投稿が原因で、面接にすら呼ばれない学生もいる。名前で検索さえすれば、応
募者の生い立ちや、生活状況は見えてしまうのだから、企業も当然、採用審査
や社員評価の参考にし易い。希望する就職先がネット上のコメントを参考にし
ていない場合でも、「○○社に就活中!」とわかるようなコメントを投稿して
しまうと、他のコメントを第三者に探され、就活先に通報されてしまうのだ。
職場の愚痴、人を傷付けるコメント、ネット上に書き込んだいじめは、結局、
自分に返ってくる。書かれた方ではなく、書き込んだ投稿者に返ってくるのが
ネットいじめなのだ。
過敏に反応せず、反論しないことも、自分を守る対策になる。
*動画サイトで起きる性格の変化
ネットサービスのひとつに、無料動画サービスがある。 最近のテレビ離れも
あり、YouTube など動画サイトを観る人が増えてきた。そこで、YouTube など、
動画サイトの仕組みを理解しなければいけない。最近、子どもたちに聞き取り
をすると、多くの子どもは、テレビを録画して観ているという。コマーシャル
もニュースも観ていない。ということは、動画サイトで興味のある動画だけを
検索して観て、テレビも好きな番組だけを観ているという事だ。コマーシャル
もスキップして観ていない。ニュースはネットで見るからと、新聞やニュース
番組も見ないでいる。結果、情報は偏ってしまっている。昔のように、録画が
自由にできず、家族とテレビを観るしか方法がなかった頃は、ニュースの話題
やコマーシャルの話題で、家族が同じ情報を共有出来たのだが、家族と別々に、
自分の興味のあるものしか観ない生活は、人格をも変えてしまう。「ドローン
少年」と呼ばれた少年のように、ネット上の人達におだてられ、投稿を繰り返
す子どもは後を絶たない状況になってしまった。
*ネット社会の今だからこそ、アナログな体験が必要
今の子ども達を見て、便利すぎる生活だと大人は思うかもしれないが、不便
と便利の違いを体験していない世代には、判断基準がない。大人の思う様な危
機感を持つことすら出来ないでいる。アナログ世代が、不便さを伝えなければ、
危険に遭遇しても気付くことが出来ない。リスクを伝え、機械ではなく、自分
自身で判断して行動出来る様、アナログな体験が必要なのだ。アナログもデジ
タルも、双方とも理解して使いこなせなければ、自分を守ることすら出来ない。
凶悪な犯罪や不可解な事件が増えているのは、ネットによる偏った情報と、
視覚的な影響が大きい。我が子に少しずつ歪が出ていても、家族すら、気付い
ていないのではないだろうか。今一度、家庭での会話が子どもの成長に、どれ
ほど大切かを考えて欲しい。
注:SNS(ソーシャル、ネットワーキング、サービス)
インターネット上の交流を通じて、個人と個人をつなぐサービス。