Oyster Research Institute News No.29 2014.3 かき き 研究所 ニュース 写真提供:Mr. Tristan Hugh-Jones, Loch Ryan Oyster Fishery Co., Ltd. INDEX 2 ●第 5 回国際かきシンポジウム(IOS5)に参加して 研究所長 高橋計介 8 ●第 5 回国際かきシンポジウムに参加して 北海道大学大学院水産科学研究院 准教授 笠井久会 th 9 ●The 5 International Oyster Symposium(IOS5)に参加して 株式会社渡辺オイスター研究所 三木恵美子 10 ●第 5 回国際かきシンポジウム 総務部 森 真弓 13 ●カキとノロウイルス−その後− 研究所長 高橋計介 18 ●マレーシア・トレンガヌ大学を訪問して 理事長 森 勝義 25 ●報告 「かきフォーラム・イン・舞鶴」 32 ●平成 24 年度研究助成による研究報告 37 ●世界かき学会会員数 ●世界のかき養殖場 アイルランド 総務部 森 真弓 Oyster Research Institute News No.29 第5回国際かきシンポジウム(IOS5)に参加して * 研究所長 高橋計介 1.はじめに 性を重視した活動を行う団体としても機能するため かき研究所の事業には、研究事業と社会貢献事業 には、支部を設けて地域別に取り上げる課題の決定 の 2 つの大きな柱があります。そのうちの社会貢献 や活動を展開する方がよいと考えられます。具体的 事業における最も大きな項目として「世界かき学会 には、アメリカ、ヨーロッパ・アフリカ、アジア・ (World Oyster Society, 以下 WOS と省略する)の運 オセアニア、中国、そして日本の 5 つの支部を設け、 営」があり、当研究所の森理事長が初代の学会長に それぞれが支部長の下で支部の方針に基づいて活動 就任されています。2005 年 7 月に森理事長の呼びか していくことになりました。運営委員会では、各支 けによって開催された第 1 回国際かきシンポジウム 部の支部長あるいは支部代表者が支部の目標と運営 (以下 IOS と呼ぶ、東京ビッグサイトにおいて開催) 方針を説明しました。 の際に、かき産業の発展、かき研究の推進の必要性・ 運営委員会のもう 1 つの議題は、2015 年に予定さ 重要性の観点から本学会の設立が決まりました。そ れる次のシンポジウム、IOS6 の開催地の決定です。 の 後、IOS は 2 年 ご と に 開 催 さ れ る こ と に な り、 開催を希望する国は複数ありましたが、開催への熱 2013 年 12 月 10 日から 13 日まで、ベトナム社会主 意や地域性等を考慮してアメリカ合衆国が最終候補 義 共 和 国 の 最 大 の 都 市、 ホ ー チ ミ ン 市 の Saigon 地となりました。運営委員の Kahren Dowcett 氏が Exhibition and Convention Centre(SECC)におい アメリカ支部を代表して開催の目的や組織体制等の て第 5 回国際かきシンポジウム(IOS5)が開催され 概要を説明し、参加者からの質疑や意見を受けた後、 ました。今回は、世界養殖学会(World Aquaculture 2015 年 10 月にアメリカ合衆国・マサチューセッツ Society, WAS)が主催する Asian-Pacific Aquaculture 州のケープコッドで開催されることが決定しました。 2013(APA13)との共同開催の形で行われました。 委員会終了後、SECC 近くのベトナム料理専門店 私はかき研究所の関係者ならびに WOS の運営委員 に 移 動 し ま し た。 そ こ で か き 研 究 所 主 催 に よ る として、また発表者として参加してきたので報告い Welcome party が開かれ、美味しい料理を味わいな たします。 がら楽しく交歓することができました。 2.IOS5・WOS 運営委員会(12 月 11 日開催) 3.IOS5・口頭発表1日目(12 月 12 日) この日は 17 時から WOS の運営委員会が開かれま この日は午前 8 時 30 分から IOS5 の口頭発表がは した。通常、運営委員会は会長等の役員および運営 じまりました。最初に、 森会長の Opening Address (開 委員の参加によるクローズドな会合ですが、今回は 会の辞)があり、会員数の増加や多くの国々に会員 森会長の意向により、特別に一般会員の参加も認め がいること等、最近の WOS の状況についてお話を るオープンな委員会として行われました。それは されました。 WOS の組織体制の大幅な変更とその理由を一般会員 最初のセッションは、Hatchery and Genetics と題 にも説明した方がよいと会長が考えられたからです。 され、4 題の講演がありました。まず、中国海洋大 WOS は会員が年々増加し、現在 600 名近くに達する 学の Qi Li 氏が中国におけるカキ類養殖の現状を解説 など、その活動は世界的に認知されてきています。 しました。中国では 20 種類以上のカキ類が養殖され *東北大学大学院農学研究科准教授 2 このことをさらに発展させるとともに、今後は地域 かき研究所 ニュース No.29 ていると言われるが、分類学上の混乱があり、まだ が、養殖品種としては魅力的なものです。つまり、 確定していません。マガキ Crassostrea gigas をはじ 交配することによって元の種類には現れていない新 C. hongkongensis、 めとする 4 種類のカキ (C. ariakensis、 しい形質を引き出すことができるかも知れないから C. tailienwhanesis )が主に養殖されていて、カキ類 です。例えば、成長が良くかつ味も良くなるとか。 を含めた貝類養殖は 1,150 万トンにも上り、全養殖の 今回の研究は、まず二倍体のハイブリッドを作ると 74%を占めるなど中国での主要水産物であることが ころからはじめ、三倍体も作出しました。いろいろ 紹介されました。さらに、近年のカキ生産は量から な組み合わせの成長率や生残率を評価したところ、 質への転換、特に遺伝的な面での改良がはかられて GH の 組 み 合 わ せ( 雌 が マ ガ キ で、 雄 が おり、例えばマガキの選抜育種プログラムが行われ、 hongkongensis の組み合わせ)は成長率や生残率が 成果が挙がっていることが報告されました。 よくない等、興味深い結果でした。 2 つめの講演も中国からで、Xiangyun Wu 氏が行 4 つめはフランスの Pierre Boudry 氏の講演で、フ いました。彼は、Qi Li 氏が挙げた 4 種類のカキに加 ランスにおけるマガキの集団遺伝学的解析に関する えて別の 3 種類のカキ(日本でも知られるイワガキ C. ものでした。皆さんご存知の通り、マガキは日本で nippona 、クマモトオイスターとしてアメリカで有名 のカキの代表的な種類であり、本来は日本を含む東 になったシカメガキ C. sikamea 、そして C. iredalei ) アジアにのみ生息しています。かつてのフランスに が中国南部を中心に養殖されていることを紹介した おいて、在来種のヨーロッパヒラガキ(いわゆるフ 後、中国南部の海南省におけるカキ類の分類学上の ランスガキ)が病気により壊滅的な被害を被ったこ 混乱を正した話をしました。具体的には地元で知ら とから、日本のマガキを種ガキとして大量に輸入し れていたカキの品種のうちの 2 種類について、様々 たことはよく知られています。しかし、それ以外の な遺伝学的解析を実施し、1 つは C. zhanjiangensis 、 ルートからフランスに入ったマガキもいたようなの もう 1 つは C. dianbaiensis という新種であることを です。そこで現在フランスに存在するマガキの系統 特定しました。私はこの発表を聞き、目的が非常に を遺伝子解析により明らかにしようとする中々面白 明確でわかりやすいことや、大量の試料を複数の遺 い研究でした。結果を見ると、日本からの種ガキの 伝学的な手法を用いて多面的に解析したこと等、地 他に、アメリカ合衆国やカナダを経由してフランス 味ながらとてもいい研究だと思いました。先の Li 氏 に移入された系統があることがわかりました。また、 のお話にもありましたが、中国におけるカキ類の分 北米大陸からのマガキには直接フランスに入ったも 類学上の混乱は著しく、数年前までは 35 種類以上も のと、オランダを経由して入ったものがあることも 挙げられていました。最近はこれらの種を同定する わかりました。これらの系統群の間で様々な形質に 研究が進んでいます。種を明らかにするということ 違いがあるとすると、現在の日本のマガキとの間に は、学問にとって重要なだけではなく、食品として も違いがあるかもしれません。もしかしたら、日本 のカキを考えた時にも大変に重要なことなのです。 のマガキの古い形質は、フランスの系統の方により 例えば、何という種がどこからどのように出荷され 多く残っているかも知れないな、などと思いながら ているのか、安全面や衛生面の対策はどうとられて 話を聞きました。 いるのか等を追跡する(トレーサビリティー)こと 2 つめのセッション、Health(カキの健康)に移っ が可能になります。本研究は、第 5 回国際かきシン て、5 題の講演がありました。最初は、韓国・済州 ポジウム若手研究者賞の第 2 位を受賞しました。 大学の Kwang-Sik Choi 氏による基調講演で、韓国に 3 つめの講演も中国からで、Yuenhuan Zhang 氏 おけるカキ疾病の現状についてでした。生産量の増 がマガキと C. hongkongensis とのハイブリッドを作 加と関係があるのか、ここ 30 年ほどで急激にカキの 出した話をしました。生物多様性を考えると自然に 病気の問題が顕在化してきたとのお話でした。具体 存在しない種類を作ることはあまり賛成できません 例としては、雌のカキに異常卵塊を引き起こす寄生 3 Oyster Research Institute News No.29 4 虫性疾病のことが取り上げられました。最近では、 の連絡から確定診断、稚ガキの死亡状況の把握、メ マガキだけでなくスミノエガキやアサリにも異常卵 ディア対応の仕方、他の要所関係者への情報の周知 塊 が 発 生 し て い る と の こ と で す。 興 味 深 い の は、 の仕方、対策会議の立ち上げの方式等、大量死が発 PCR によって寄生虫(Marteilioides sp. )遺伝子の有 生した場合に対応する組織体制やその運営について、 無を調べると雄のカキから高率で検出されるそうで、 具体例を示しながら説明されました。幸い、日本で 病気の症状がでない雄がキャリアとなって寄生虫の は OsHV-1 µVar による POMS の発生はありません。 生き残りに寄与しているのかも知れません。 今回の発表は、将来の疾病発生に備えて、あるいは 2 つめはニュージーランドの Norman Ragg 氏の講 他の疾病対策として大変参考となるものでした。 演で、現在大きな問題となっているカキヘルペスウ 3 つめのセッションは、Health(カキの健康)の続 イルス高病原性変異株(OsHV-1 µVar)に対するカ きで生体防御機能に関する話が含まれていました。 キの生存性を向上させるため、カキの高温ストレス 1 つめの講演は、中国の Zhang Yang 氏で、マガ 耐性を調べた研究の報告でした。ニュージーランド キ血球による異物貪食を促進する血リンパタンパク では南北で大きな温度差があり、稚ガキの生残に違 に関するものでした。今回は、遺伝子の発現解析と いがあるようです。今回はウイルスに感染した稚ガ ともに、プロテオミクスという解析された遺伝子の キを高水温に曝し、生残率を調べました。32℃の高 情報に基づいてマガキの血リンパで発現しているタ 水温でも稚ガキは約半数が生存することがわかりま ンパクを網羅的に調べることで貪食を促進するタン した。 パクを同定しようという試みです。2012 年の 9 月に、 3 つめもニュージーランドから Mark Camara 氏の マガキは全ゲノムが解読されました。今後はゲノム 講演で、やはり OsHV-1 µVar に関するものでした。 情報を利用した新たな解析が数多く行われるでしょ ニュージーラン ド で は 2010 年 秋 に 初 め て OsHV-1 うから、とても楽しみです。 µVar に よ る マ ガ キ 稚 貝 の 大 量 死(Pacific oyster このセッションの 2 つめと 4 つめは私の講演で、 mortality syndrome、POMS)が発生して以来、カ どちらもマガキの血球に関する話題でした。前の演 キ産業を揺るがす大きな問題となっています。この 題の内容は、血球における異物の貪食のためには、 ことは、前回の IOS4 でも多く取り上げてられていま 血球と異物が結合する必要がありますが、どんな分 した。今回の発表は、OsHV-1 µVar による死亡を軽 子(受容体)を介して結合するのか、カキ類の血球 減させる養殖場での戦略のいくつかについて述べた では明らかではない点が数多くあります。今回、私 ものでした。 はパン酵母を異物として用い、酵母の表面を酵素や 4 つめ、5 つめの講演も OsHV-1 µVar に関する情 薬品で処理することで表面に出ている多糖の種類を 報ですが、今度はオーストラリアからの報告でした。 変えたものを 3 種類用意し、血球の貪食能に違いが まずは Peter Kube 氏が OsHV-1 µVar による POMS 出るかを調べた結果を報告しました。 の発生についての現状と OsHV-1 µVar の感染に対し 後の演題の内容も前の演題と少し関連しています。 て遺伝的に耐性をもった系統群の作出についての取 血球を含む細胞が何かの基質や別の細胞と接着する 組みについて発表しました。耐性系統の作出は 2011 ためには、活性化と呼ばれる反応の起こることが必 年から始まっているそうで、現在は実験的な養殖が 要です。活性化によって、球形だった細胞が変形し 行われています。この問題に限らず、耐病性育種は て仮足を伸ばし、他のものと接着できるようになり とても重要な課題です。しかし、日本でこれを行う ます。この反応にはタンパクをリン酸化する PKC と には人工種苗を得る孵化場の整備が不可欠で、現状 いう酵素が働くことが重要です。今回、私はマガキ では困難です。 血球に刺激を与えて PKC の活性化を調べました。ま 次 は、Wayne O' Connor 氏 の 講 演 で、OsHV-1 た、血球は異物の表面に接着した後、たくさんの血 µVar による POMS 発生ヒストリーの解説と、発生 球が集まって凝集塊を作ります。この現象にも PKC かき研究所 ニュース No.29 が関与していることを報告しました。 種苗が確保できるようになりましたが、まだ輸入の 3 つめは日本の Mamoru Yoshimizu 氏の講演で、 方が上回っている現状です。また、政府の支援は大 OsHV-1 µVar を抑制する作用を持つ細菌をマガキの 学等がもつ知的財産を孵化場や漁民に移行するため 中腸(発表の図をみると、実際は中腸腺か?)から のプログラム作りにも及んでいます。全体を聞いて 単離しようとする試みでした。ウイルスの専門家で まだ発展途上の部分は多いですが、急速に伸びる要 ある Yoshimizu 氏は、サケ科魚類に感染するヘルペ 素を数多く持っているとも感じました。 スウイルスを用いて抑制効果のある細菌の単離を 2 つめもマレーシアからで、Amelia Ng 氏による C. 行った例を紹介しました。 iredalei の生殖過程の研究でした。C. iredalei は南方 1 日 目 の 最 後 の セ ッ シ ョ ン は、Husbandry and 系の種類であり、東南アジアや中国南部において養 Environment(飼育と環境)に関するものでした。 殖の主力となると期待されている種類です。今回は、 1 つめは、アメリカ合衆国の Maria Haws 氏の講演 混合養殖をした貝と天然から採取した貝とを比較し で、ハワイにおけるカキ養殖の現状と将来に関する ながら生殖腺の発達度を調べた研究でした。 ものでした。ハワイのカキの話は今回初めて聞きま 3 つめもマレーシアからで、K. Y. Poi 氏による C. した。養殖されている種類は主にマガキで、三倍体 iredalei と C. belcheri の 2 種類のカキについて、養 も養殖されています。幼生から稚貝の段階ではフラ 殖 環 境 下 で の 成 長 と 生 残 を 調 べ た も の で す。C. プシー式の育成が導入されています。ハワイは一大 belcheri もマレーシアでの重要種ですが、天然の集 観光地ですからカキの需要は相当大きいものでしょ 団は縮小しているため、養殖の発展が望まれていま う。今後の発展が期待されます。 す。今回は、特定の養殖場での成長や生残を測定す 初 日 最 後 の 講 演 は、 オ ー ス ト ラ リ ア の Aneita るとともに、水質測定を行いました。捕食者や付着 Browning 氏で、タスマニアにおけるカキ養殖場の管 生物の影響も調べた、丁寧な研究でした。 理の問題でした。タスマニアでは、2013 年 4 月には 4 つめはベトナムの Binh Thuy Dang 氏の講演で、 じめてノロウイルスによる大規模食中毒を出しまし ベトナム中部および北部におけるカキ類の集団遺伝 た。安全性を確認した上で出荷を再開するのが当然 学的研究でした。前日に発表された中国の事例もそ ですが、そのためには適切な管理指針が必要です。 うですが、ベトナムでもカキ類の分類は大きく混乱 それが red and green tape 方式です。養殖場の水管 しているとのことでした。適切な養殖を行うために 理等に適切な注意を払いながら、危険な時は出荷を は、正確な種の同定が不可欠ですので、ベトナムで 止めたことを、そして安全になれば速やかにそのこ も重点的に研究されています。結果をみると、これ とを世に知らしめるシステムが重要です。 までもベトナムにおける重要種と考えられてきた C. rivularis が、確かな種として存在することが確認さ 4.IOS5・口頭発表2日目(12 月 13 日) れたとともに、遺伝的に大きな変異を持つ集団がベ トナムの広い範囲に分布することがわかりました。 2 日目は Husbandry and Environment の続きで、 次のセッションも Husbandry and Environment の 基調講演者としてマレーシアの Aileen Tan 氏のお話 続きであり、IOS におけるこの分野の重要性が理解 から始まりました。内容は、マレーシアにおけるカ できました。 キ養殖の推進で、特に政府のサポートを取り上げて 2 日目の 5 つめの講演は、基調講演としてアメリ いました。1980 年代以前は、天然のカキを採るだけ カ合衆国の Kahren Dowcett 氏が行いました。内容 で地元での消費ばかりであったマレーシアのカキ産 は、カキの生息環境(さらに広い意味での沿岸環境) 業ですが、1988 年に始まった国際機関による大きな を守るための取り組みとして、自然科学一辺倒とは 支援をきっかけとしてマレーシアのカキ養殖は本格 違う視点で訴えることの重要性を説くものでした。 化しました。最近では政府の支援により良質な人工 現代アートとコラボレーションしてカキを護る重要 5 Oyster Research Institute News No.29 性を訴える取り組み、また子供たちへの啓蒙の方法 ち収穫後のカキの利用についてです。最初に基調講 として劇を取り入れること等、新しい試みは大変興 演者として、日本の Mitsugu Watanabe 氏がカキ肉 味深いものでした。 エキスに含まれる有効成分、特に高い抗酸化作用を 6 つめはオーストラリアの Mitchell Burrows 氏の 持つ新しい成分について話をされました。これまで 講演で、カキ養殖の諸問題の解決策の 1 つとして海 もいくつもの有効成分を見いだしている講演者です 藻との混合養殖を試みたものでした。地元の New が、今回も人の健康に対するカキ成分の貢献につい South Wales 州産の 2 種類の海藻との養殖が有効で ての講演でした。 あったとのことでした。 次は日本の Hisae Kasai 氏の講演で、ノロウイル 7 つめはベルギー(ベトナムで活動中)の Nancy スの抑制な作用を示す細菌をカキの中腸(腺?)か Nevejan 氏の講演で、ベトナム中部におけるカキ類 ら単離するものでした。ネコカリシウイルスを代替 の種苗生産についてでした。内容は、ヨーロッパと ウイルスとして用い、中腸腺から単離した細菌の抗 ベトナムとのプロジェクトによるベトナムでのカキ ウイルス活性を調べました。数は少ないですが、有 生産の発展と問題点についてでした。ベトナムはも 効な細菌株を見いだし、 その 1 つとして Vibrio neptunis ともと貝類養殖のポテンシャルは高い国でした。例 を同定しました。その細菌の産生する有効な成分の えば、ハマグリの仲間である Meretrix meretrix や 候補として亜鉛型プロテアーゼを見いだしました。 アカガイの仲間である Anadara granosa 等の生産量 カキ体内からノロウイルスを除去するのに有効な手 は非常に多いものです。しかし、カキ類の養殖は遅 段が見いだせない現状では、このような微生物学的 れていました。種苗生産のためには 3 つの大きな問 防除は重要な方法になり得ると考えられます。 題がありました。現在は、その問題を解決する方向 最後のセッションの 3 つめの講演は日本の Yumiko に進み、種苗生産が進んでいます。全体としてはよ Yoshiki 氏のもので、石川県七尾湾周辺のマガキおよ い方向であるが、問題点があることも指摘されまし びムラサキイガイのいくつかの成分の年間変動を調 た。1 つは、 自国のマーケットがまだまだ小さいこと、 べた報告でした。グルタミン酸、グリコーゲン、ビ 環境汚染に対策がとられていないこと、学問のレベ タミン B12 等の多くの成分について調べました。 ルが不十分なこと等です。最後の教育に関しては、 4 つめも日本からで、Atsushi Takeda 氏のカキ肉 プロジェクトが動いており、すでに博士、修士も輩 エキスに含まれる成分の脳に対する有効性の報告で 出しているとのことでした。 した。マウスを使った実験で、抗酸化作用を有する 次は、香港の Ginger Ko 氏による講演で、カキ幼 E6 という成分が高ストレス活性を誘起することや、 生に対する海洋酸性化の影響を評価したものでした。 動かない時間を減少させる等の効果が認められました。 3 種類のカキ幼生をそれぞれ 3 種類の pH(8.1、7.7、 7.4) IOS5 の最後の発表は、ベトナムの Phung Bay 氏 の海水に曝した時の影響をストレスタンパク遺伝子 によるホーチミン市におけるカキ養殖とマーケティ の発現を調べました。結果は、いずれの pH におい ングの実態についての講演でした。カキ養殖はロー ても死亡率は変化なかったが、pH7.4 では生理障害 コストの一方、高い経済性を有することから多くの が出ることを明らかにしました。これは、実験が丹 人々が参入したいと考えているが、ホーチミン市の 念に行われたとてもよい研究であると評価しました。 大きな人口から考えるとカキの消費は非常に少ない 9 つめはアメリカ合衆国の Perry Raso 氏によるカ ことがカキ産業の発展を阻害する問題点であること キ養殖場と販売店に関するビジネスモデルの話でし が述べられました。カキが相対的に高価なこと、衛 た。講演者は養殖場とレストランを経営しています。 生状態がよくないことが原因のようです。また、種 その他、種苗の販売をはじめ、他の貝類の養殖との 苗が決定的に足りないことや沿岸の汚染が大きな問 組み合わせ野菜作り等、様々なプランが示されました。 題であることも示されました。 IOS5 の最後のセッションは Post Harvest、すなわ 6 かき研究所 ニュース No.29 5.IOS5・ポスター発表 らに高くなったと思います。発表数は少し減少しま したが、多種多様な研究課題が取り上げられ、本シ IOS5 ではこれまでの IOS と同様に、口頭発表とと ンポジウムの趣旨によく合っていると思っています。 もにポスター発表も行われました。カキ類を研究課 場所柄のせいか、ヨーロッパからの参加が少なかっ 題としたポスターは 25 題が発表され、日本からも 4 たのはやむを得ませんが、日本からの参加はまだま 題の発表がありました。会場では、APA13 の別のセッ だ淋しい状況なのは大変残念でした。日本からの参 ションで発表されたカキ類以外の貝類の研究を含む 加者が少ないことは毎回書いている気がします。本 Molluscs(軟体動物)のパートで提示されていました。 シンポジウムは、動物としてのカキやカキ産業の様々 全体を通して、若手研究者によるレベルの高いポス な側面を統合的に取り上げることが大きな目的だと ターが多いと感じました。 私は考えています。したがって、カキに関すること 一 例 を 挙 げ ま す と、 渡 辺 オ イ ス タ ー 研 究 所 の なら内容もレベルも様々に何でも発表して良いのだ Emiko Miki 氏の発表は、2 型糖尿病患者におけるカ と思っています。言い方を変えれば、カキに関わり キ肉エキスのセレン供給効果と血清コレステロール があればどなたでも参加できるシンポジウムなので 量の低下の関係を調べたものですが、データがとて す。実際、 海外からの参加者は多様性に富んでいます。 もクリアーで説得力があるとともに、実用的な側面 カキに関わるいろいろな人たちの話を聞き、あるい での意義も大きくすぐれた発表であると評価しまし は交流することが本シンポジウムの大きな意義と た。事実、第 5 回国際かきシンポジウム若手研究者 な っ て い ま す。 こ の 原 稿 を 読 ん で 下 さ る 皆 さ ん、 賞の第 1 位を受賞しました。今後ともよい研究を続 2015 年 10 月に開催されるアメリカ合衆国の IOS6 に けられることを期待します。その他の皆さんの研究 是非ご参加ください。必ずプラスになると思います。 発表も大変興味深い内容でした。2 年後の IOS6 を楽 しみにしています。 6.おわりに 今回の会場である SECC は大変に大きく立派でし た。また、共同開催である APA13 が 18 以上のセッ ションを同時開催するとともに、水産用医薬品、養 殖飼料、添加物、養殖資材等、様々な商品の展示会 も同時に行われていたのでとても全貌はわかりませ んが、中々の盛会であったと思います。東南アジア 諸国では水産増養殖はとても重要な産業であること を改めて感じました。また展示会場には、渡辺オイ スター研究所の渡辺社長と社員の皆さん、そして旨 い!牡蠣屋(有名な牡蠣類の通販サイトです)を運 営され、三陸産カキの復興プロジェクトを進めてこ られたアイリンクの齋藤社長のご尽力で WOS のブー スも開かれていました。渡辺社長は先に紹介した WOS の日本支部長に就任されており、これからもよ ろしくお願いいたしたいと思います。 研究発表の内容については、前回の IOS4 よりもさ 7 Oyster Research Institute News No.29 第 5 回国際かきシンポジウムに参加して 北海道大学大学院水産科学研究院 准教授 笠井久会 今 回 5 回 目 を 迎 え た 国 際 か き シ ン ポ ジ ウ ム が、 れている一方で疾病による被害も報告されています。 2013 年 (平成 25 年)12 月 10 日~ 13 日ベトナム国ホー 新興感染症として Ostreid herpesvirus 1(OsHV-1) チミン市において、アジア太平洋養殖会議(APA13) µvar がかき養殖に深刻な被害を与えていますが、 との共催で開催されました。ベトナムは 3200km を ニュージーランドにおける対応策が紹介され大変興 超える海岸線を有し、その地理的特徴を活用し古く 味深く拝聴しました。本疾病に対し抵抗性を有する から漁業、養殖業、水産加工業が発達し、かきの養 かきの選抜育種についても研究されつつあり、今後 殖も盛んに行われています。このような地で国際シ の成果が期待されます。私自身は、カキ消化管から ンポジウムが開催されたことは誠に喜ばしく、本シ 分離された抗ウイルス物質産生細菌に関する発表を ンポジウム開催に向けてご尽力されました森会長を 行いました。ノロウイルス代替ネコカリシウイルス はじめ関係各位に深く感謝申し上げます。 に対し、高い抗ウイルス活性を示す細菌が見いださ シンポジウムに先立ち 12 月 11 日の夕刻に運営委 れ、抗ウイルス物質を精製し同定を試みたところ、 員会が開催され、地区毎の支部長職の設置、地域別 金属プロテアーゼの可能性が高いという結果が得ら 5 支部体制の導入等について議論されました。何れ れました。本物質は、ウイルスを不活化する一方で の議案も世界かき学会が永続的に発展するために必 細胞毒性は低く、本菌の利用について今後も検討を 要な措置であり、拍手をもって承認されました。運 進めていきたいと考えているところです。 営委員会終了後は、会場近隣のレストラン Tib にて 第 6 回国際かきシンポジウムを担当される Kahren ウェルカムパーティーが開催されました。森会長の Dowcett 氏からは、米国ケープコッドにおいてかき ご挨拶に続き Lawrence Kitt 博士のご発声で乾杯を をはじめとする水産物が地域文化に溶け込んでいる 行い、和やかな雰囲気のもとで歓談が進みました。 様を紹介頂きました(写真)。このように国際かきシ 途中、新たに支部長に就任された先生方などのご挨 拶があり、皆さまの素晴らしいスピーチで会場がさ らに盛り上がることとなりました。 12 日から 13 日にかけて、基調講演や一般講演が 行われました。本シンポジウムは、かきの養殖の歴 史や手法、生理学、病理・疫学、遺伝学に至る幅広 い内容の演題から成るのが特徴的でした。プログラ ムのとおり今回も 15 の国と地域から様々な分野で活 躍している研究者が参加され、有意義な発表と討論 8 が 行 わ れ ま し た。 基 調 講 演 で は、 済 州 大 学 校 の ンポジウムは、 研究対象としての「かき」のみならず、 Kwang-Sik Choi 博士、マレーシア科技大学の Shau 生産から文化振興に至るまでを網羅する間口の広さ Hwai Aileen Tan 博士、リビングアーツインスティ が特徴と感じます。分野を超えた研究者の交流が世 テュートの Kahren Dowcett 氏、渡辺オイスター研 界かき学会の発展を支えるものと強く認識しました。 究所の渡辺 貢博士がかき養殖の振興策、かきの疾 最後に、本シンポジウムを運営されました Wayne 病、新規生理活性物質、かきの文化的な価値に関す O'Connor 博士をはじめ森勝義会長ほか皆さまの心温 る講演をされました。かき養殖は世界的に広く行わ まる対応に対し、改めて感謝申し上げます。 かき研究所 ニュース No.29 The 5th International Oyster Symposium(IOS5)に参加して 株式会社渡辺オイスター研究所 三木恵美子 2013 年(平成 25 年)12 月 10 日~ 13 日、ベトナム・ ホーチミン市にて開催された第 5 回国際かきシンポ ジウムに参加させて頂きました。 ホーチミン市内にはいくつもの運河が通っており、 に貴重な経験となりました。 また、本シンポジウムでは「Relationship between selenium supplementation by oyster extract and reduction of the serum cholesterol in type 2 diabetic 会場である Saigon Exhibition & Convention Centre patients.」との題で、牡蠣は LDL コレステロールを のすぐ近くでも、かつての市民生活の基盤であった 低下させ、ヒトの健康に寄与できる食品であること サイゴン川をはじめとする運河を見ることができま をポスター発表させていただき、若手研究者賞を頂 した。 戴することができました。 世界より様々な分野で活躍している研究者が参加 この度の受賞は偏に、ご指導いただいた渡辺貢博 されたこのシンポジウムでは、基調講演をはじめと 士をはじめ、千葉仁志博士、王 慧芳博士、世界か する牡蠣に関する素晴らしい講演・発表と活発な討 き学会の皆様、また学会発表にあたり様々なご尽力 論が行われ、会場は、高温多湿のベトナムの気温を を下さった皆様のおかげと思っております。 も越えると感じるほどの熱気に包まれていました。 11 日 の 夜 に 行 わ れ た Steering Committee で は、 これからも渡辺オイスター研究所は、世界中の人々 の幸せに貢献するために、ヒトの健康に対する牡蠣 会長挨拶、5 支部体制での新出発となる各支部長に の機能性の探求、牡蠣の付加価値を高める研究を推 よる挨拶と各支部の特色の紹介等が行われました。 進してまいります。 会長、各支部長を中心とした新体制での出発となる 最後に、本掲載の機会を下さいました森勝義会長 今回のシンポジウムに、日本支部の一員として参加 をはじめ、かき研究所の皆様に厚く御礼を申し上げ させて頂けたことを大変に嬉しく思いました。 ます。 また、Welcome Party では、アメリカ元大統領も 来店されたレストランにて美味しいベトナム料理を 頂きながら、世界の研究者の方々と交流をさせて頂 くこともできました。 さらに、今回、ポスター発表とともに World Oyster Society(WOS)のブース展示にも参加をさせて頂き ました。IOS5 と同時に開催されておりました APA13 に参加されていた多くの方々にも、ブースをご訪問 頂き、WOS のビジョン、使命、目標はもちろん、会 長である森先生の寄稿“Let the sea live. Let us live 右側が筆者 with the sea.” 、株式会社アイリンク様の三陸産カキ の東日本大震災から復興への取り組み、そして日本 支部が掲げる牡蠣の「For human health」に関する 研究を多くの方に知って頂くことができました。自 分自身の英語力不足を痛感しながらも、WOS を多く の方々にご紹介できたことは、自身にとっても大変 9 Oyster Research Institute News No.29 第 5 回国際かきシンポジウム 総務部 森 真弓 2013 年 12 月 10 日から 13 日までベトナムホーチ ミン市で行われた第 5 回国際かきシンポジウム (IOS5)について、私が世界かき学会(WOS)事務 局員として参加した感想、印象について書かせて頂 きます。 今回 IOS5 は、世界養殖学会アジア太平洋支部が運 営するアジア・太平洋養殖会議(APA13)との共催 で 行 わ れ ま し た。 会 場 と な っ た Saigon Exhibition and Convention Centre(SECC、写真 1)は 2008 年 写真 3 設立、地下 1 階地上 3 階延べ面積約 31,000m2 と大規 模な国際展示場です。トレードショー(写真 2)や 湿気と多くの出迎えの地元市民の熱気も加わり、大 APA13 のセッションと共に、IOS5 は 12、13 日の日 変暑かったのを覚えています。 程で、口頭発表 34 題、ポスター発表 25 題(写真 3) が行われました。 SECC はホーチミン市の 7 区にあり、この地区は 中心街の南に位置することからサイゴンサウスとも 呼ばれています。APA13 のオフィシャルホテルで あった ibis Saigon South にもその呼び名が付けられ ています。また、地元の富裕層が居を構えているこ とでも有名なエリアです。観光地として有名なサイ ゴン大教会、中央郵便局、ベンタイン市場などがあ る中心街 1 区からはタクシーで 15 分程の距離です。 また、1 区に比べると人の行き交いやバイクなどの 交通量は多くないものの、横断歩道を渡る時は全く 写真 1 スピードを落とさず直進してくるバイクと車に戦々 恐々としながら渡りきらなくてはなりません。特に バイクの迫り来る勢いは想像以上でした。私も一度 危ない場面に遭遇してしまい、地元の人に付いて渡 るのが最も賢明だと実感しました。 10 日は午前中に参加登録と下見を兼ねて会場に行 きました。今回 WOS は、APA13 のプログラム責任 者で WOS 運営委員の Wayne O'Connor 氏(オース トラリア)からの提案で展示ブースを出しました(写 写真 2 10 真 4) 。この話が届いたのがシンポジウムの約 1 ヶ月 前で、大変慌ただしい中準備に追われることとなり さて、現地には 9 日夜に到着しましたが、気温は ましたが、株式会社渡辺オイスター研究所様、株式 恐らく 25 度以上はあったのではないかと思います。 会社アイリンク様に企画・展示設営をお願いし、間 かき研究所 ニュース No.29 性が示されました。その他第 6 回国際かきシンポジ ウム(IOS6)開催地、会長・支部長・運営委員の任 期制について話し合われました。IOS6 は 2015 年ア メリカマサチューセッツ州ケープコッドでの開催が 決定し、今後 Dowcett 氏を中心とした現地実行委員 会の下、 準備が進められていくことになります。また、 役員の任期制については 2 年・再任も可能と決まり ました(写真 6) 。 写真 4 に合わせることができました。展示は、① WOS の 紹介、② Human Health 分野の研究成果の紹介、③ 東日本大震災からの復興の歩み、から構成しました。 下 見 を 終 え た 後、WOS 運 営 委 員 の Tom Lewis 氏 (オーストラリア)と Kahren Dowcett 氏(アメリカ) 、 第 2 回国際かきシンポジウムから毎回参加頂いてい 写真 6 る Larry Kitt 氏(タイを拠点にベトナムやマレーシ ア等のカキ養殖を技術指導されている)など、主要 会員の方々とお会いしました。 運営委員会終了後、会場向かいのベトナム料理店 Tib に移動してウェルカムパーティーが開かれまし 11 日は 17 時から当学会会員も参加して運営委員 た。北海道大学の笠井久会氏に司会を務めて頂き、 会、続いてウェルカムパーティーが行われました。 前述の Kitt 氏の乾杯で会場は大いに盛り上がりまし 事務局としてはこれらの準備に多くの時間を割きま た。同氏は、2009 年に台湾で開催した IOS3 時に、 したので、無事に成功させることができ安堵しまし ベトナム国立第 3 水産養殖研究所研究員 Phung Bay た。運営委員会では、事務局で準備した方針集を出 氏と共にベトナムでの IOS 開催を提案しました。そ 席者に配布しました(写真 5)。ここには 2013 年 1 月 の 後 も Ghent University( ベ ル ギ ー) の Nancy Nevejan 氏、Universiti Sains Malaysia の Aileen Tan Shau Hwai 氏、元北海道大学大学院教授の吉水 守氏、長崎大学産学官連携戦略本部の永田保夫氏他 参加者の方々のスピーチもあって、会場は終始アッ トホームな雰囲気となりました(写真 7) 。 写真 5 に発足した 5 支部の各支部長による活動方針を中心 に、支部別会員数などを掲載しました。方針集に沿っ て各支部長・支部長代理が活動方針を述べ、今後地 域別のニーズに合った活動を進めていく上での方向 写真 7 11 Oyster Research Institute News No.29 Tib はベトナム中部地方を代表するフエ料理のレ 挨拶と IOS5 会場内の様子です。会場は、SECC の中 ストランで、料理も上品で大変美味しく好評でした。 でも最も大きいホールの 1 つを使用しました。13 日 この店の選定・予約に際しては、ドンズー日本語学 の午前中には WOS の展示ブースを訪れた際、会員 校に勤務されている伊藤晴彦氏に何度もお店や周辺 の Sultan Qaboos University( オ マ ー ン ) の Said に足を運んで頂きました。この学校はホーチミン市 Mohamed Al Barwani 氏にお会いしました。2011 年 内で最大規模の日本語学校です。2012 年 5 月にグエ に同氏が WOS に入会した時から森会長はオマーン ンドックホエ校長が来日された際、森会長がお会い でのカキ養殖に大きな関心を寄せていましたので、 したことがきっかけとなり今回大変お世話になりま 有意義な意見交換ができました。 した。ホエ校長、伊藤氏にこの誌面を借りて改めて 御礼申し上げます。 初めての IOS への参加が規模の大きい WAS との 共催でしたので、IOS だけではなくトレードショー パーティー当日ハプニングもありました。事前に 会場や WAS のレセプションパーティーなど他の国 出席者に Google Map で検索した SECC と Tib の位 際会議の運営について様々な角度から見ることがで 置関係を示す地図を送っていたのですが、実際は地 き、大変貴重な経験となりました。 図とは全くの逆方向にお店がありました。当日午後 また、多くの WOS 会員の方々と直接お会いでき に Bay 氏の案内で下見に行って初めて気が付きまし たことも大きな刺激となりました。ここではその中 た。パーティーのみに出席する会員がいることを把 で も Wayne O'Connor 氏 と Aileen Tan Shau Hwai 握していたため、直前に急きょ地図に表示された場 氏のお 2 人について触れたいと思います。O'Connor 所へ行ってみると、そこは何もなくただ整地された 氏とは、WAS との各種調整や IOS5 の運営から細か だけでした。数名が地図を見て来たので、迎えに行っ い事項に至るまで数えきれない程メールでやり取り て良かったと胸をなで下しました。今となってはほ を行いました。直前まで急な変更などに追われ大変 ろ苦い思い出です。 お忙しかったにもかかわらず、事務局からの再三の 12、13 日は 4 つのセッションに分かれて発表があ 疑問や要望に 1 つ 1 つ懇切丁寧に応えて頂きました。 りました。写真 8、9 は、12 日の森会長による開会 同氏のご協力ご助言なくして今回のスムーズな運営・ 進行は成し得ませんでした。また、Aileen 氏は早い 時期から IOS5 への協力の申し出があり、今回も研究 室の学生 3 名と参加して下さいました。また、かき 研究所ニュースに写真を提供頂いたりと日頃より WOS の活動にご協力頂いています。過去参加された IOS の写真を見てお 2 人の容姿は知っていましたの で、会場でお見かけして私の方から声を掛けること 写真 8 ができました。一方で、英語で自分の言いたいこと を伝えるのが想像以上に大変だったこと、実際に幾 度も言葉に詰まったり、逆に聞き漏らしてしまった こともありましたので、それらの反省を踏まえ今後 に活かしたいと思います。 最後になりましたが、Wayne O'Connor 氏はじめ、 発表者、参加者の方々、そして全ての会員の方々に 事務局の一員として心より御礼申し上げます。 写真 9 12 かき研究所 ニュース No.29 カキとノロウイルス-その後- 研究所長 高橋計介 1.はじめに なったのです。 室賀先生は、2004 年の記事を以下のように締めく 本年 1 月、ノロウイルスによる大規模な食中毒事 くられています。 「基本的な点に立ち返り、マガキに 案が全国各地で発生し、大きな社会問題となったこ おけるウイルスの取り込み機構、取り込まれたウイ とは記憶に新しいところだと思います。望ましくは ルスの存在場所、存在状態、および排出機構を、も ないことですが、最近では、ノロウイルスによる食 うすこし詳細に検討する必要があろう。」。この文章 中毒や急性胃腸炎の流行は珍しくなくなっています。 をご覧になればおわかりの通り、カキにおけるノロ 今回の食中毒事案では学校給食における調理従事者 ウイルス取り込みのしくみ、体の中での正確な蓄積 からの汚染等、ヒトを介したノロウイルス汚染が主 場所、そして体に蓄積されたノロウイルスをうまく な原因であり、カキは原因食品ではありませんでし 排出できるのかどうかなどは、2004 年の時点では明 た。しかし、2006 年 11 月のノロウイルス胃腸炎の らかとなっていませんでした。カキがノロウイルス 大流行とそれに伴って発生したカキに対する風評被 食中毒の原因食品とされてから長い時間が経過して 害以来、 「ノロウイルス胃腸炎の原因食品=カキ」の いた時期なのにもかかわらずです。これらのことは イメージは一般消費者に定着していると思われます。 本当に重要な事柄です。私は文献調査を始めるまで このことは、たとえ他の要因がきっかけであっても、 は、当然明らかになっているものだと安易に考えて ノロウイルス胃腸炎の流行が起こればカキと結びつ いました。しかし実際は、明らかとはなっていない けられて、カキの生産や販売が大きな打撃を受ける ことが数多くありました。私はこの事実を知った時、 可能性を示唆しています。 ノロウイルスの存在はカキの養殖にとって相当厄介 以前、元東北大学教授の室賀清邦先生と私は「カ なものになると思いました。悪い予感は当たり、ノ キとノロウイルス(SRSV) 」と題する記事を書きま ロウイルスは本当に厄介なものとなっています。今 した(かき研究所ニュース、No.13、9-21、2004) 。ま 回の記事では、カキとノロウイルスとの様々な事柄 た、同様の内容を総説として日本水産学会誌に投稿 について、2004 年以前の知見を簡単に整理した後、 しました(室賀・高橋、2005) 。当時、私はノロウイ その後に明らかになった知見を新たに紹介するとと ルスそのものについて、あるいはノロウイルスとカ もに、重要だけれども明らかになっていない事柄を キの関わりについて浅い知識しかありませんでした 確認しておきたいと思います。 ので、総説を書くにあたっては室賀先生のご指導を 仰ぎながら 2003 年までに発行された国内外の文献を できるかぎり調べました。たくさんある論文や研究 報告をすべて網羅できたとは言いませんが、8 〜 9 割 は読んだと思います。文献調査を開始した当初は記 2.ノロウイルスとカキとの関係を知るための重要 事項とそれらに関して 2004 年までに明らかと なっていたこと 述内容を追うのに精一杯だったのですが、ある程度 前で述べたように 2005 年の総説執筆の準備段階 読み進めるのにつれて、カキとノロウイルスの研究 で、ノロウイルスとカキとの関係を知るための重要 を行う上で解明するべき重要な事項が明確になって 事項、そしてカキの体からノロウイルスを除去する いきました。つまり、文献調査は、重要な事項の解 ための重要事項を選び出すことができました。2004 明がどの程度進んでいるのかを確かめていく作業と 年までの知見について、Q&A 式に整理してみたいと 13 Oyster Research Institute News No.29 思います。 ルスが無傷で感染力を保ったままなのか、分解を 受けて感染力を失っているのか、RT-PCR での検 (疑問 1)ノロウイルスはカキの体のどこに存在する 出の段階では判断がつかないのです。比較的短い のか?また、どういう状態(フリーなのか、何か ウイルス遺伝子の断片でも残っていれば、RT-PCR と結合しているのかなど)で存在するのか? によって検出が可能です。次の疑問で明らかなよ (回答 1)いろいろな組織から検出されるが、特に消 うに、完全に分解されることはないと考えられま 化盲嚢部(胃とその周囲を取り巻く中腸腺を合わ すが、カキの体内でノロウイルスが何の作用も受 せたもの)に局在しています。存在の仕方につい けていないとも思われません。しかし、証拠があ ては明らかではないが、消化盲嚢部は複雑な構造 りません。 なので、物理的に排除されにくく滞留しているの ではないかと推測されます。 若干の補足説明をします。ノロウイルスの検出 (疑問 5)ノロウイルスの感染性はカキの体内でどの 程度保持されているのか? については、ノロウイルスを増殖させ得る培養細 (回答 5)カキを原因とする食中毒が発生することか 胞株が見つかっていないため、ウイルスを直接検 ら、感染性が保持されているのは間違いありませ 出することはできず、逆転写ポリメラーゼ連鎖反 ん。しかし、その程度は明らかではありません。 応法(RT-PCR 法)と呼ばれる遺伝子断片を検出 する手法が用いられています。回答の中で述べた 見解は、カキの体を組織ごとに分けて抽出液を調 (疑問 6)ノロウイルスをカキの体内から浄化できる のか? 製して RT-PCR を行った結果、消化盲嚢部から最 (回答 6)ノロウイルスについて直接調べた知見はあ も多くのノロウイルス遺伝子断片が検出されたと りませんが、他のウイルスを用いた試験の結果か いう結果に基づいています。 ら類推すると、時間をかければ浄化は可能である と考えられます。 (疑問 2)ノロウイルスは、外界からカキの体内にど のように取り込まれるのか? 若干の補足をします。前にも挙げた通りノロウ イルスは人為的に増殖させることができないため、 (回答 2)不明です。消化盲嚢部に局在することから、 2004 年時点ではカキによるノロウイルス取り込み 餌料と一緒に入るのではないかと推察されます。 実験を自由に行うことが難しい状況でした。そこ で代替ウイルスを用いた浄化実験が多く行われま (疑問 3)海の中でノロウイルスはどのように存在し ているのか? した。ヒトポリオウイルスやネコカリシウイルス 等が代表的な代替ウイルスです。これらのウイル (回答 3)これも不明です。カキの餌料となる植物プ スは完全ではないものの、かなりの高率で除去さ ランクトンや微生物の塊などの浮遊有機物に結合 れることが明らかになっていました。なお、最近 している可能性があります。 は遺伝子組み換え技術によってノロウイルス中空 粒子というものが作られるようになり、ウイルス (疑問 4)ノロウイルスはカキの体内で分解されない のか? (回答 4)これについては、全く知見がありません。 14 の取り込み実験については大きく進展しています。 ノロウイルス中空粒子とは、ノロウイルスの遺伝 子に基づいて人工的に作られたウイルス様粒子で 簡単に補足します。2004 年時点でも現在でも状 す。形状、大きさ、そして外殻のタンパク等はノ 況は同じなのですが、ノロウイルス検出法につい ロウイルスと全く同じですが、中に RNA が入っ て前の事項で述べたように、ノロウイルスに関し ていないので感染することはありません。代替ウ ては培養ができないため、カキの体内にあるウイ イルスを用いるよりも、本当のノロウイルスに近 かき研究所 ニュース No.29 い挙動を示すと考えられ、後の章で示すようにこ れを使っていろいろな事実が判明しました。 (疑問 1)ノロウイルスは、カキの何かと結合して存 在するのか? (新たな回答 1)2006 年になって、カキの消化盲嚢部 (疑問 7)ノロウイルスを浄化できるとすれば、どう いうしくみによるものなのか? にある中腸腺の消化細胞の表面にヒトの A 型抗原 によく似た抗原が存在し、これとノロウイルスが (回答 7)しくみについては不明です。しかし、消化 特異的に結合していることが報告されました(Le 盲嚢部という消化器官からの除去するための具体 guyader et al., 2006 ほか) 。この観察結果は複数の 的な方策としては、カキの代謝を上昇させるよう 研究者からほとんど同時に示されました。この論 な処理、例えば高水温におくとか、餌料をたくさ 文にあるさらに重要な発見は、ノロウイルス陽性 ん与えるとかによって、消化盲嚢や排泄を促進す 反応が胃の周辺結合組織にある血球の中にも認め るのが効果的ではないかと考えられます。 られたことです。これは、ノロウイルスが消化管 の表面から血球へと移行し、体の奥深くに運ばれ 主な事項を挙げるとこのようになります。明らか ていることを示します。血球へ移行するしくみの になっていない項目が多いことに驚かされますが、 全容はまだ明らかではありませんが、この現象は 一方で「現在はわからないけれど、まもなく明らか 後で示すノロウイルス除去の困難さと深く関連し になるだろう」あるいは「現在はよい方法がないけ ていると考えられます。また、ここでみられた血 れど、近い将来確立されるだろう」というような、 球によるウイルスの運搬は、ネコカリシウイルス 楽観的な見方が 2004 年当時には支配的であったよう を用いた宮城県の研究でも確認されています(山 に感じられます。 木ら、2006) 。 さらに、ウイルスの型によって別の組織結合性 3.重要事項に関する 2004 年以降の知見 を示すことが明らかとなりました(Maalouf et al., 2010 ほ か ) 。 高 い 病 原 性 を 持 ち、 日 本 に お け る 前の総説記事が執筆された同じ頃、つまり 2003 〜 2006 年の大流行を引き起こしたことで知られる 2004 年頃、ヒトにおけるノロウイルス感染のしくみ GII.4 型は、消化盲嚢部よりも鰓や外套膜の繊毛に について進展がありました。改めて言うことでもあ 多く結合していました。その結合は、シアル酸と りませんが、ノロウイルスはヒトの病原性ウイルス いう糖を含む血液型抗原とは異なる糖鎖に特異的 であり、 カキに感染するものではありません。そして、 に結合したものでした。カキ組織へのノロウイル ヒトの体内でも小腸の特定の部位にのみ感染します。 スの結合についてすべてが明らかとなったわけで この感染のしくみは現在でもわかっていません。い はありませんが、糖鎖構造を介した特異的なもの ずれにせよ、ノロウイルスが感染するためには小腸 であることが示された意義は大きいと考えられま のその部位に留まり、細胞と接着する必要がありま す。この事項について広く知見を網羅した総説が す。この接着反応において、血液型抗原(A 型、B 型、 出されています(Le guyader et al., 2013) 。 O 型を決めている細胞表面の糖鎖構造です)が関与 していることが示唆されました。現在では、ノロウ イルスの遺伝子型やクラスターによって、血液型抗 (疑問 3)海の中でノロウイルスはどのように存在し ているのか? 原を認識・接着できない例が知られていますが、ノ (新たな回答 3)プランクトンに相当する大きさの有 ロウイルスの受容体(の 1 つ)がわかったことの意 機物と結合しているケースもあるが、フリーで海 義はとても大きいことです。この血液型抗原に関連 水中に存在するノロウイルスも相当数あると考え して、カキでも大きな発見がありました。 られる結果が得られました(Gentry et al., 2009) 。 そして、ウイルスの存在様式の違いには、ウイル 15 Oyster Research Institute News No.29 スの型や季節等が関係している可能性があります。 らかではありません。したがって、今の段階では ノロウイルスの粒子は直径 40/1,000,000mm と大変 除去のための効果的な方策はないと考えられます。 小さく、単独ではカキの鰓を素通りしてしまう大 カキの体内から除去されにくいウイルスはノロ きさです。そこで、何かの浮遊有機物と結合して ウイルスだけではなく、ヒト A 型肝炎ウイルス、 大きな塊となり、カキの鰓に捕捉されて餌料とし ロタウイルスなどがあります(McLeod et al., 2009 て取り込まれるのだろうと推測されていました。 ほか)。これらのウイルスが除去されにくいのは、 しかし、前項で示したように、ノロウイルスは鰓 おそらくノロウイルスの場合と共通するしくみに の繊毛に対して特異的に結合することがわかりま よると思われます。どのウイルスでもよいから、 したので、海水中にフリーの状態で存在しても、 除去されない理由を明らかにできれば、ノロウイ 鰓と結合することで事実上濃縮されている可能性 ルスの問題も解決するかもしれません。 があります。 (疑問 6)ノロウイルスをカキの体内から浄化できる のか? 16 4.おわりに 以上みてきたように、2004 年の時点で明らかでは (新たな回答 6)一度カキの体内に取り込まれたウイ なかった重要な事項のいくつかが、良い意味であれ ルスを除去することは、きわめて困難です。ウイ 悪い意味であれ明らかにされてきた一方で、2014 年 ルス数を減らせるケースはありますが、完全に浄 になってもいまだに未解明のものもあることがわか 化はできません(Ueki et al., 2007 ほか多数) 。大 りました。特に、ノロウイルスの取り込み機構や分 変残念な結果ですが、これが現実です。2004 年頃 解機構の解明はほとんど進展していません。取り込 までに行われた代替ウイルスを用いた実験におい み機構を知ることは「ノロウイルスを取り込ませな て、高い除去効率を示す結果が得られていたこと い方策」を知ることにつながり、ノロウイルスフリー は前に述べた通りです。そこで大いに期待された のカキを生産するための基盤となります。是非とも のですが、本物のヒトノロウイルスを用いた飼育 研究を進めなければなりません。最近の動向をみる 実験では、カキ体内からノロウイルスはほとんど と、取り込み機構の問題を含めノロウイルスフリー 除去できませんでした。高水温による代謝促進も カキ生産のための基礎研究が大変難しい局面である 試みられましたが、特に改善は認められませんで ことは理解できますが、私を含め世界のカキ研究者 した。ノロウイルスが除去されにくい理由は明ら がもっと努力をしなければなりません。 かではありません。しかし、2 つの理由が推定で 先に述べたように、最初の総説記事が掲載された きます。1 つは、前の事項でみた細胞上の受容体 2 年後の 2006 年にカキの風評被害が起こってしまい や糖鎖に対するノロウイルスの特異的な結合です。 ました。この風評被害の後は皆さんもご承知の通り、 例えば、ノロウイルスがカキ中腸腺の内腔にただ 何が原因であってもノロウイルスの話題が出ると必 滞留しているのであれば、洗い流すことも不可能 ずカキが引き合いに出されるようになりました。そ ではないでしょう。しかし、細胞としっかり結合 れは半分正しく、半分間違っています。すなわち、 している場合、これをはずして押し流すことは難 カキはいつでもノロウイルス食中毒の原因食品では しいです。もう 1 つは、ノロウイルスが血球によっ ありません。しかし、毎年カキを原因とするノロウ て体の深所に運ばれることです。カキの胃や中腸 イルス食中毒は出ています。最近の大流行を引き起 腺等の周囲は結合組織で構成されていますが、ノ こしている直接の原因はカキではありませんが、残 ロウイルスを取り込んだ血球はそれら結合組織の 念ながらカキは今もノロウイルス食中毒の原因食品 中に入り込んでいました。この血球の行動は、ど であり続けています。つまり、カキからノロウイル ういう目的で行われているのか、現在のところ明 スを除去する、あるいはカキにノロウイルスを取り かき研究所 ニュース No.29 込ませないようにする、それらを実現しないかぎり 「ノロウイルス胃腸炎の原因食品=カキ」というイ 技術・学術政策研究所の HP で、どなたでもご覧に なれます。 メージも実態もなくならないでしょう。 なお、本記事をお読みになった方の中には、ノロ ウイルス食中毒やノロウイルス胃腸炎の全容を詳し 5.引用文献: く知りたいと思った方もいらっしゃると思います。 室賀・高橋(2004) :かき研究所ニュース 13: 9-23. ノロウイルスに関する書籍や文章は巷にあふれてい 室賀・高橋(2005) :日本水産学会誌 71: 535-541. ますが、内容が部分的であったり、難しすぎたり、 Le Guyader et al.(2006): Emerg. Infect. Dis. 12: 逆に易しすぎたりして、これ 1 つを読めば十分とい 931-936. うものが中々見つかりません。私が調べた中でお薦 山木ら(2006): 日本食品微生物学会誌 23: 21-26. めできるのは、文部科学省直轄の科学技術・学術政 Maalouf et al.(2010): Appl. Environ. Microbiol. 76: 策研究所の研究官である重茂浩美博士の「ノロウイ 5621-5630. ルスによる食中毒・感染症 —我が国における発生 Le Guyader et al.(2013): Clin. Virol. 41: 3-18. 状況とその対策について−」(重茂、2008)です。こ Gentry at al.(2009): Appl. Environ. Microbiol. 75: れは「難しすぎず、易しすぎず、科学的でありなが らわかりやすく、内容が網羅的かつ整理されて」い 5474-5480. Ueki et al.(2007): Appl. Environ. Microbiol. 73: て大変わかりやすいものです。発表から 5 〜 6 年を 経過していますので、統計データの部分が少し古く 5698-5701. McLeod et al.(2009): J. Appl. Microbiol. 107: 1809- なっていますが、傾向としては現在も同様ですから 十分参考になります。是非、ご一読ください。科学 1818. 重茂(2008) :科学技術動向 7月号:10-23. 〈裏表紙〉シリーズ「世界のかき養殖場」アイルランド 写真説明 ヨーロッパヒラガキ養殖の準備ができた 満水の池(夏季) カキを収穫するけた網(幅約 2m) 養殖池から収穫される稚仔貝 ムラサキイガイの殻に付着した種ガキは 海に撒かれ、3 年で成貝に育つ 収穫されたカキは荷揚げされた後、浜辺で分別・等級付けされる 空から見た21個のヨーロッパヒラガキの養殖。 ひとつの池の面積は約625㎡(25m×25m) 深さは1.6mあり、容積は1000㎥(1000トン) 17 Oyster Research Institute News No.29 マレーシア・トレンガヌ大学を訪問して 理事長 森 勝義 はじめに 森」をコンセプトにしたとのことであった。実際、 機内の窓から見下ろすと、空港建物はアブラヤシの 2013 年 3 月、 マ レ ー シ ア・ ト レ ン ガ ヌ 大 学 群生に囲まれていた。そして、確かに、建物の中に (Universiti Malaysia Terengganu)の海洋バイオテ も森があった(写真 1)。この写真の左右にはエアロ クノロジー研究所(Institut Bioteknologi Marin)か トレインが見える。空港内(写真 2)をぶらぶらし ら 招 待 講 演 の 依 頼 状 が 届 い た。Prof. Dr. Mohd Effendy Abd Wahid という長い名前を持つ所長から であったが、現地では単に Effendy だけで通用する。 これは名字に相当するものではないが、教官や職員 だけでなく学生達も「Effendy 教授」という呼び方を する。明らかに姓でもないのに役職名を付けて呼ぶ ことに違和感を覚えた筆者は、これについて彼に直 接聞いたところ、イスラム教を信奉するマレー人の 名前には必ず親の名前の一部が後に付き、日本でい う姓とか氏の概念がない。それ故、単なる呼び名に 写真 1 過ぎない Effendy に役職名を付けて呼ぶことが通例 だとのこと。もっともこれは他のマレーシア人(中 国系、 インド系など)には当てはまらないそうである。 マレーシアは多民族からなり、複数宗教を持つ国で あるから、民族・宗教によって異なる氏名法が存在 するという。 実は、彼とその家族には前年 12 月初めに東京の八 王子市で会っており、その際に「近いうちに是非マ レーシアを訪問して欲しい」と誘われていた。それ が具体化して 5 月 11 日(土)、成田空港 10:30 発の 写真 2 マレーシア航空に搭乗した。この会社の飛行機を利 ながら 2 時間半以上の待ち時間を過ごしたが、行き 用するのは初めてだったが、機内サービスの良さに 交う各国の人達の見慣れない容姿や民族衣装に目を 満足しているうちにクアラルンプール空港に 16:45 奪われることもしばしばで、全く退屈しなかった。 (現地時間)に到着した。 19:25 発の国内便に乗り換えてクアラトレンガヌ 空港には 20:25 に到着した。海洋バイオテクノロジー クアラルンプール空港経由でクアラトレンガヌへ クアラルンプール空港はセランゴール州のセパ (Sepang)にあり、建物は日本の建築家、黒川紀章 氏の設計によるもので、 「森の中の空港、空港の中の 18 研究所の Mr. Marwan が我々夫婦を出迎え、Primula Beach Resort Hotel へのチェックインを手伝ってく れた。このホテルは、南シナ海に面したバトゥ・ブル・ ビーチ(Pantal Batu Buruk)の一角にあった。 かき研究所 ニュース No.29 新鋭の機器類が多く設置されていたが、まだ十分に マレーシア・トレンガヌ大学への表敬訪問 稼働しているようには見えなかった。研究所の歴史 クアラトレンガヌ 2 日目の午前、 前述の Mr. Marwan が浅く、これらの機器を使いこなすことが出来る人 の案内でマレーシア・トレンガヌ大学へ向かった。 材がまだそれほど多くは育っていないとのことだっ 日曜日にも拘らず構内に学生の姿が多数見られた。 た。中東からの留学生が旧式の機器を用いて、慣れ 筆 者 と 同 様、 講 演 を 依 頼 さ れ た フ ラ ン ス の ない手つきでパラフィン切片を作っている様子が印 Universite de Bretagne-Sud の Assoc. Prof. 象的だった。運営面はともかくとして、教育研究面 Chrystele Dufau とともに副学長室を表敬訪問した。 では解決すべき課題が多く横たわっているように感 マレーシアの国立大学の学長は王族名誉職のため、 じられた。しかし、注目すべき業績も出てきており、 学内では副学長(Vice Chancellor)が実質的な学長 これについては後述する。 で あ る。 副 学 長 で あ る Prof. Emeritus Dato’Dr. 今回の大学訪問にあたって、E メールによる懇切 Ibrahim bin Komoo はたまたま出張中で不在のため、 丁寧な対応をして頂いた当研究所の Atikah 嬢と玄関 副学長補佐を務める 2 人の教授が応対してくれた(写 ホールで記念撮影した(写真 5)。しばらく雑談をし 真 3) 。 写 真 の 左 か ら、Prof. Madya Dr. Anuar 写真 3 写真 5 Hassan, Prof. Dr. Noor Azhar bin Mohamed Shazili, たが、彼女は本学の卒業生とのことで、きれいな英 Assoc. Prof. C. Dufau および筆者である。 Prof. Noor 語を話すなかなかの才媛であった。 Azhar は 学 術・ 国 際 化 担 当 の Deputy of Vice Chancellor であり、副学長に次ぐ立場にある。 次に、同構内にある Prof. Effendy の研究所を表敬 訪問した(写真 4)。その後、所内を案内された。最 海洋バイオテクノロジー研究所の業績 当研究所で得られた業績の中で、筆者が注目して い る も の に 熱 シ ョ ッ ク タ ン パ ク 質(Heat Shock Protein, HSP)に関する研究がある。HSP は細胞が 熱などのストレスを受けると発現量が増して、その 細胞を保護・修復する機能を持つタンパク質であり、 疾病に対する生体防御物質として知られている。分 子量によって呼び方が異なり、この研究の担当者の Assoc. Prof. Dr. Yeong Yik Sung が扱っているもの は分子量 70kDa の HSP70 である。これは HSP の中 でも熱ストレスによる発現量が最大のものである。 写真 4 彼はこの研究をカナダのダルハウジー大学から出向 19 Oyster Research Institute News No.29 いている客員教授と共同で行っており、将来的には いう 173 ページのカラー刷りの印刷物を刊行してい 水産養殖分野への産業的応用を考えているという。2 る。大学の教材として刊行されたものだが、彼女の 人だけで街へ出て、食事をしながら、いろいろと意 多年にわたる研究の集大成でもあるとのことだった。 見交換できたことは楽しい思い出の 1 つである。 この研究所には海産生物用の孵化施設(写真 8)が 熱帯水産養殖研究所における情報交換 Dr. Yeong Yik Sung と の 昼 食 後、 大 学 に 戻 り、 Prof. Emeritus Dr. Mohd Azmi bin Ambax(写真 6) 写真 8 併設されており、そこでマレー半島東海岸の天然ガ キに直に触れることができた。カキはまだ当研究所 の主要な研究対象とはなっていないが、たまたま昨 写真 6 日この大学近くの海岸の岩から採集されたので、ご 覧頂ければ嬉しいと言って見せてくれた。筆者のた が 所 長 を 務 め る 熱 帯 水 産 養 殖 研 究 所(Institute of めにわざわざ用意してくれたことは容易に推察でき、 Tropical Aquaculture, AKUATROP)の研究者達と 関係者のご配慮に感謝したい。 情報交換を行なった。この研究所は 2004 年に設立さ れ、熱帯水域の重要養殖対象種の増養殖技術と疾病 こ れ ら の カ キ は 通 称 hooded oyster と 呼 ば れ る Saccostrea cucullata であると考えられる(写真 9)。 対策に関する基礎並びに応用の研究を行なっている とのことであった。つい最近まで、当研究所の所長 を務めた Prof. Emeritus Dr. Faizah binti Shaharom (写真 7)もわざわざこの集まりに出席し、水産養殖 写真 9 一見天然のマガキ Crassostrea gigas に似ているが、 貝殻縁辺部が小鈍鋸歯状になっていることでマガキ 写真 7 れる C. iredalei もこの付近の沿岸に生息しており、 事情について貴重な情報を提供してくれた。彼女は かつて(1988-1993)、西海岸に運ばれ養殖試験に供 特 に 淡 水 魚 の 寄 生 虫 の 権 威 で、2012 年 に ”Fish されたことがあるが、成功しなかったという。 Parasites of Lake Kenyir, Peninsular Malaysia” と 20 と区別できる。なお、いわゆる slipper oyster と呼ば かき研究所 ニュース No.29 講演会当日 3 日目(2013 年 5 月 13 日)の朝 8:30 から 13:00 ま で、 “Biotech Talk Series 11/2013”( 写 真 10) と 称する講演会が開かれた。日本の大学でいわゆる合 同講義と呼ばれ る も の で あ る。 表 1 は 3 月 下 旬 に 写真 11 に、女性の座席は頭のスカーフの有無で明確に区別 されていることが筆者にとって興味深かった。 筆 者 の 講 演 タ イ ト ル は“Cultural State and Perspective of the Cosmopolitan Miyagi Oysters Crassostrea gigas ”であった。講演内容は、カキに まつわる歴史的人物の逸話、海産物としてのカキの 写真 10 表1 重要性、カキの生物学的分類と地理的分布、宮城ガ キの産業・貿易上の重要性、宮城ガキの生物特性か ら見た生産上の利点と弱点、生息環境の人為的富栄 養化が宮城ガキの代謝に及ぼす影響等であった。さ らに、主要生産国のカキ養殖技術について実際の現 場の写真を使って説明するとともに、世界かき学会 (WOS) の ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 し て あ る“The President's Message”の中の次の 2 つの文を出席者 全員へ配布した。 1)International Environmental Conservation Activity Based on“Warning from the Earth” Atikah から送られてきた時間割であるが、当日は何 Given through Edible Oysters(Proposal) . の説明もなく第 2 講演者と第 3 講演者が入れ替わっ 2)Infection with the new variant of oyster た。正式な講義であるので、受講生には単位が与え herpesvirus (OsHV-1μVar) specific for られるとのことだった。学生だけでなく、教官や職 Crassostrea gigas : Its global expansion from 員も加わり、参加人数は計 100 名ほどだった。写真 France. 11 には階段教室の一部が写っているが、演壇から向 講演会の終了後、学生や教職員達とともに講義室 かって右側にはスカーフで頭を覆っている女性達だ の外に設けられたテーブルで昼食のサービスを受け けが陣取っていた。その集団の近くには男性は一人 た。気温は 30℃を超えているという場所での食事で もいない。スカーフの色彩は多様で、中には模様が ある。これは筆者にとって苦痛そのものだったが、 入ったものもある。彼女たちはイスラム教を信奉す 驚いたことに彼らの顔には食事後でさえも汗がほと る集団である。そして、左側には男性陣に混じって、 んど見られなかった。筆者と違い、彼らの体はこの 非イスラム教のためにスカーフで頭を覆う必要のな 程度の気温には完全に順応できているからだろうと い中国系やインド系の女性達が見られた。このよう 感心した。 21 Oyster Research Institute News No.29 市内見物とディナーパーティー 昼食後、Mr. Marwan が我々夫婦をクリスタル・ モスク(写真 12、13、14)へ連れて行ってくれた。 写真 15 写真 12 写真 16 民族衣装やイスラム美術品などが展示されていた。 写真 13 市内見物後、大学主催のディナーパーティーがあ り、前日出張中であった副学長(写真 17 の左)をは じめ、2 人の副学長補佐等(写真 18)と会食した。 写真 17 写真 14 強い日差しを反射して輝くクリスタルが荘厳な雰囲 気を醸し出していた。モスクの内部に入ると中央に は大きなドームがあり、その天井から吊り下げられ た豪華なシャンデリアが特に目立った(写真 15) 。し かし、それ以外はガランとした広い空間だけという 印象だった。次に案内されたトレンガヌ州立博物館 (写真 16)はマレーシア最古の博物館と言われ、各 22 写真 18 かき研究所 ニュース No.29 Prof. Effendy の家族全員はもちろんこと、彼が所長 では、東南アジア最大の水力発電用ダムが作ったマ を務める海洋バイオテクノロジー研究所の職員たち レーシア最大の湖である。我々夫婦はこのような予 も同席した。副学長の専門は人文地理学で、その関 備知識を一通り聞いてから、2 人の案内役(写真 20) 連の国際学会等へ出席するために、何度か訪日して いるとのことで、世界のカキ産業に果たした宮城県 産種ガキの重要な役割についても蘊蓄を傾けて語っ ていた。 帰国日当日にケニル湖へ 帰 国 日 の 早 朝、 既 述 の“Fish Parasites of Lake Kenyir, Peninsular Malaysia”の舞台となったケニル 湖(Lake Kenyir)という巨大な湖へ、Mr. Maruwan 写真 20 の案内により大学の運転手付の乗用車で向かうこと になった。ホテルから 50km 以上の距離があり、山 とともに大学がチャーターしたモーターボートで湖 道であったが、1 時間足らずで到着した。ケニル湖 上遊覧と相成った。写真の左が Mr. Julius、右が Mr. の駐車場には同大学の Mr. Julius が運転するもう 1 Marwan である。 台の公用車(4 輪駆動の SUV)が既に到着しており、 ボートは湖上に点在する島々を巡って行ったが、 その理由を聞くと、車の故障・事故等で帰国便に遅 所々に宿泊施設(写真 21)や遊歩道を備えた島々が れることがあってはいけないので、予備用と追加し あった。写真 22 と 23 は、遊歩道の途中に設けられ たとのことだった。誠に有難い Prof. Effendy ら大学 た茶屋の風景である。ここではハーブ茶の無料サー 執行部のご配慮だったのである。 ビスが受けられた。写真 24 は観光名所のなっている 写真 19 は駐車場近くに設置されてあったケニル湖 滝の 1 つである。湖上に水没樹木の一部が突き出た 光景に時々出合うと、ケニル湖が人造湖であること に改めて納得させられた。 空港へ向かう途中、昼食をとるために立ち寄った 食堂で、ケニル湖産の養殖魚を使った料理(写真 25) を食べてみた。魚肉自体は淡泊な味であったが、と にかく辛かったことを覚えている。 写真 19 の概略を示す表示板だが、その構造が如何に複雑な 湖であるかがよくわかる。これは水力発電用ダムが 1985 年に完成してできた人造湖で、340 の島々、14 の滝、さらに多数の早瀬からなり、総面積は 26 万ヘ クタールだという。案内役の Mr. Marwan 達の説明 写真 21 23 Oyster Research Institute News No.29 おわりに 脱稿に当たり、マレーシアにおけるカキ産業につ いて触れておきたい。養殖、加工ともにこれからと いう状況下にあり、特に半島部の東海岸に位置して 南シナ海に面するこの大学のカキ養殖の研究現場は 遠く離れたボルネオ島にあるが、まだほとんど業績 が出ていないらしい。一方、西海岸に位置してイン ド洋に浮かぶペナン島の Universiti Sains Malaysia 写真 22 の Dr. Shau-Hwai(Aileen)Tan のグループは主に熱 帯カキの Crassostrea iredalei について、生物学と養 殖技術に関する研究を行っている。彼女らの業績は、 世界かき学会(WOS)主催の IOS4 と IOS5 で計 5 題 が発表されている。 前述したように、過去にはマレーシアの東海岸か ら西海岸へ養殖試験用のカキが移植されたという歴 史もあることから、東西の両大学が協力してマレー シアのカキ産業の振興に役立つような研究交流を積 極的に行って欲しいと筆者は強く願っている。その 写真 23 意味で、今回の筆者の招待講演が何らかのきっかけ になれば幸いである。 2012 年夏のアメリカ出張時に体調を崩してしまっ たために、その後しばらくは海外へ出かけることを 控え、専ら療養に勤めていたが、やっと体調が少し 回復してきたところで、今回の招待講演の依頼を受 けた。その回復を自分自身に促す動機づけとして、 今回のマレーシア出張はタイミング的に良かったと 思っている。 筆者にとって初めてのマレーシア訪問だったが、 写真 24 スケジュール通りにすべてが順調に運んだだけでな く、Prof. Effendy ほか大学当局から予想以上の手厚 いご配慮を頂いたおかげで、有意義で楽しい数々の 思い出を作ることができた。ご関係の方々に深謝申 し上げます。 写真 25 24 かき研究所 ニュース No.29 報告「かきフォーラム・イン・舞鶴」 総務部 森 真弓 平成 26 年 2 月 1 日(土)、当研究所主催による「か 鶴湾産のカキの知名度が低いということが第 21 回ま きフォーラム・イン・舞鶴」が舞鶴市政記念館ホー いづる魚祭り会場でのアンケートから読み取れまし ルにて開催されました。赤穂市、佐渡市に続き 3 度 た。平成 18 年から行われている「舞鶴かき丼キャン 目となった今回は、この時期としては異例ともいえ ペーン」による観光 PR やカキの消費拡大の取組み る好天に恵まれ、非常に多くの方々に来場頂きまし がなされている同市でフォーラムを開催することは、 た(写真 1) 。舞鶴市の歴史的建造物である 12 棟の 多くの方々にカキの魅力をより一層知って頂き、舞 鶴湾産カキの知名度向上や地産地消を喚起しカキ養 殖業の振興に繋げることができると考えました。 フォーラムの告知は B2 ポスター 200 枚を舞鶴市水 産課や舞鶴牡蠣組合等通じて市内各所に掲示し、京 都府水産課には近隣の宮津市・京丹後市・伊根町な ど広範囲に案内していただきました。舞鶴市の広報 誌「広報まいづる」新年号にも予告記事が掲載され、 市内 370 の自治会にはチラシ 3600 枚が市の広報物と 写真 1 一緒に回覧されました。そのほか『集合広告チラシ』 の新聞折込や「舞鶴かき丼キャンペーン」参加店に 赤れんが倉庫群のうち、8 棟が平成 20 年 6 月に国の ポスター掲示を依頼するなど市民へ周知を図りまし 重要文化財に指定されました。会場となった赤れん た。写真 3、4 はポスター掲示の一例(市役所内市民 が 2 号棟、通称舞鶴市政記念館は明治 35 年に旧海軍 の兵器廠倉庫として建設されました。ホールの壁も 煉瓦のままで明治後期のレトロで重厚な雰囲気が感 じられます(写真 2)。 写真 3 写真 2 さて、本フォーラム開催の背景について簡単に触 れておきます。舞鶴市では毎年「まいづる魚祭り」 が開催され、地元産海産物は豊富です。しかし、舞 写真 4 25 Oyster Research Institute News No.29 ホールと「舞鶴かき丼キャンペーン」参加店の店頭) 外では三倍体ガキが主流になってきているが、それ フォーラムは舞鶴市役所の松岡恵美さんの司会進 ぞれの国の食文化に根差してカキの利用法は異なる 行により定刻 13 時半に開会しました(写真 5)。 ため、地域特性に合ったカキ養殖を行っていくこと が好ましいと話しました。 また、カキが昔からいかに人類に好まれた海洋生 物であるかということについて貝塚を例に紹介しま した。アイルランドには長さ 700m、奥行きが 300m、 高さが 15m ほどの貝塚があり、デンマークなどの他 のヨーロッパ地域にもこのような大規模な貝塚の存 在が広く知られています。日本においてこのような 貝塚が作られたのは縄文時代と言われ、全部で 2,500 写真 5 まず、当研究所森理事長が主催者挨拶を行い、今 ほどあります。 次に、栄養面からみたカキについて解説しました。 エキスアミノ酸中の呈味関連アミノ酸をまとめ上げ、 回は地元市民やカキ生産者にとどまらず、宮津市に カキの美味しさをうまく引き出すのがグリコーゲン ある京都府立海洋高等学校の生徒や佐賀県有明海の であり、オーケストラで言うならば指揮者と言えま かき生産者、京都大学に留学中のブラジル人研究者 す。また、カキの重要産業種 6 種の分布を世界地図 などの参加を大変嬉しく思うと話しました。また、 で示し、マガキが世界各地に広く分布している理由 当研究所は設立から 52 年が経ち、近年はかきフォー として海外への輸出に耐え得る非常に丈夫な種であ ラムや世界かき学会など社会貢献事業に重点を置い ることを強調しました。実際に宮城県産マガキが大 ており、このフォーラムが地域社会貢献の一助とな 正時代から昭和 50 年代初め頃までは船便で仙台港か ることを期待しますと述べ挨拶としました。 らアメリカの太平洋岸に、その後は昭和 40 年に初め 引き続き、森理事長による「海を生かし、海に生 きる」と題した基調講演が行われました(写真 6) 。 てフランスへ空輸され、今ではアフリカにまで広が るほどのコスモポリタンガキとなりました。理事長 の試算によれば世界のカキの半分以上がマガキ単一 種で占められているということです。また、舞鶴湾 でも養殖されているイワガキや九州有明海のスミノ エガキなどはマガキに次ぐコスモポリタンガキにな り得るのではという考えも示しました。 続いて、4 名の方々による講演となります。 1 人目は、日本クリニック株式会社中央研究所松 田芳和所長が「カキと健康 カキのパワーを検証す 写真 6 しました(写真 7)。日本クリニック株式会社はカキ まず、カキ養殖の歴史について、世界的には 4 世 から抽出したエキスを濃縮したものを健康食品とし 紀の末頃の帝政ローマ時代に地中海のナポリ近郊で て製造・販売しており、舞鶴市に隣接する宮津市に 始まり、日本では天文年間(1532 年~ 1555 年)に 工場があります。 広島で垂下式養殖が始まったという記録が残ってい 26 る」と題してカキの栄養素とその働きについて講演 まず、江戸時代初期の文献、 「日用食性」 (1643 年) るということです。この垂下式養殖法を継続する一 や「増補日用食性」 (1690 年) 、 また同時代末期の「日 方で、最近ではシングルシード(一粒種)ガキや海 養食鑑」 (1820 年)に酒毒を消し、夫人の気血(漢 かき研究所 ニュース No.29 要があると強調しました。 最後に、軽度アルコール性肝障害や女性の更年期 症状に対するカキ肉エキスの有効性について摂取前 と摂取後の値を比較し、改善効果が見られたという 実験結果を示しました。 参加者の中には熱心にメモを取る姿が見られ、健 康に関心を持つ中高年層の方々は改めてカキの魅力 に気づかされたようでした。 写真 7 2 人目は舞鶴牡蠣組合の河畑浩司氏が舞鶴のカキ 生産について講演しました(写真 8)。まず、舞鶴湾 方の用語で東洋医学的にみた生命力の源)を治める などといったカキの効用についての記載があること を紹介し、これらの文献の記載内容が自社の研究に おいても実証済みであると話しました。 カキは 5 大栄養素である炭水化物(糖質) 、タンパ ク質、脂質、ビタミン、ミネラルがバランス良く含 まれている食品であることは広く知られています。 炭水化物にはグリコーゲンが、タンパク質にはアミ ノ酸やタウリンが、微量ミネラルには亜鉛と銅が非 写真 8 常に多く含まれていることについて図を用いて詳し く解説しました。グリコーゲンの基本構造はデンプ におけるカキ養殖は昭和 7 年に京都府水産講習所が ンと類似しているものの、吸収時はデンプンと異な 宮津湾で垂下式養殖試験を行ったのが始まりであり、 りゆっくり穏やかであるという特徴を持っています。 昭和 10 年まで宮城及び広島県産の種ガキを使い、舞 筋肉や肝臓に蓄えられ、エネルギーが必要となった 鶴湾でも養殖試験を行っていたと話しました。昭和 時に素早くブドウ糖となり消費されます。また、脳 15 年から 18 年頃には初めて吉田地区で嵯峨根貞一 の活性化にも欠かせない栄養素です。タウリンは肝 さんがカキ養殖に取り組み、戦後の昭和 24、5 年頃 臓での解毒作用や心臓の働きを助けるなどといった から同地区で 2、3 のグループがマガキ養殖に取り組 重要な働きをします。特に必須の栄養素ではありま んだということです。平成 24 年 3 月時点で舞鶴湾で せんが、日常生活の中でストレスが大きいと激しく は 11 ヶ所の海域で 57 の経営体がマガキの養殖を行っ 消耗するので、タウリンを多く含むカキを食べるこ ています。現在舞鶴湾では約 350 台の筏を用いて垂 とによって補給できると述べました。そして、亜鉛 下式養殖が行われていますが、近年では FRP 製の筏 については骨の成長・傷や組織の再生といった細胞 も増えているということです。 そしてマガキは 1 分裂の促進や味覚や臭覚の維持、ホルモンの合成、 年の育成期間を経て 12 月~ 3 月に出荷され、一方イ 免疫機能の維持、酸化抑制、記憶の維持など多岐に ワガキは 3 ~ 4 年育成し、5 月~ 8 月に出荷される わたる機能を持っています。亜鉛は生ガキを筆頭に と加えました。 特に動物性食品に多く含まれています。動物性食品 を食べないベジタリアンが亜鉛不足であるとか、現 代においても男女共にミネラル不足に陥っていると いう問題も指摘されており、特にストレス過多の人、 お酒をよく飲む人などは積極的に亜鉛を摂取する必 最後に、舞鶴湾におけるカキ養殖の課題と取組み について次の 3 点から話しました。 (1)舞鶴湾産のカキの知名度向上 舞鶴湾のカキ養殖の歴史は古く、水産関係者の間 では産地として名が通っているにも拘わらず、市民 27 Oyster Research Institute News No.29 にはあまり広く知られていないという状況にありま ほのぼの屋は障害のある人がプロから学びながら す。一般社団法人舞鶴市水産協会が「第 21 回まいづ 働き、経済的な自立を実現する施設として注目を集 る魚まつり」 (平成 22 年 10 月)の会場で実施したア めています。糸井氏は料理人として 40 年余りカキと ンケート結果によると、ある一定期間に購入した舞 付き合ってこられました。その出会いは最初に就職 鶴産水産物としてカキは下位に位置しています。し された三重県志摩観光ホテルでの的矢カキでした。 かし、舞鶴産水産物を選んだ理由としては味、鮮度 まず、「無菌ガキ」の生みの親であり、世に送り出し の他に舞鶴産であることが大きいことも併せて分 た功労者である佐藤忠勇氏が確立したカキの浄化法 かっており、カキ=舞鶴産を結びつけることによっ について紹介しました。海から収穫したカキを浄化 て購入者が増えることが期待できると話しました。 する浄化槽の海水は紫外線殺菌された無菌の海水で そして、知名度向上のための取組みとして舞鶴かき すが、この装置を日本で初めて発明したのが佐藤氏 グルメキャンペーン協議会が平成 18 年から行ってい です。カキが一日に大量の海水を取り込む性質を上 る「舞鶴かき丼キャンペーン」を紹介しました。 手く活用した浄化法であると言えます。ただし、こ (2)イワガキ養殖への取り組み こで言う「無菌」とは決して菌がゼロではないとい 舞鶴湾では昭和 40 年頃より天然イワガキの漁獲が うことを付け加えました。 始まりましたが、年々その量が減少したことから平 糸井氏は 20 年間志摩観光ホテルに勤務した後、故 成 15 年頃から京都府海洋センターの指導で養殖に取 郷の京都に戻り、オーナーシェフとしてフランス料 り組んでいるというものです。 理店を構えます。ここでも的矢のカキを提供し、生 (3)新しいカキの食べ方 ガキにこだわってこられたそうです。8 年前に「ほ 今年 1 月 25 日から京都府漁業協同組合舞鶴支所の のぼの屋」料理長として舞鶴へ来られてからも前の 隣にカキ小屋をオープンし、土日祝日に予約制で焼 お店の常連がカキを食べに足を運んで下さるそうで、 きガキの提供を開始したことを紹介しました。 こうした地道な努力が今につながっていると実感さ 最後に、これらの取り組みを通して舞鶴市水産課、 京都府農林水産技術センター海洋センター、舞鶴漁 れています。 8 年前、 舞鶴は海産物が豊富であると思っていたが、 業協同組合一丸となって安心・安全で美味しい舞鶴 実際には漁協や舞鶴港とれとれセンターなどを除け 産のマガキ・イワガキを生産し、より多くの方々に ば期待とは大きく異なっていたそうです。スーパー 味わって頂きたいと強く望まれ、講演を終えました。 で舞鶴産カキを見かけるようになったのもここ 1、2 続いて、 舞鶴市内のカフェレストラン「ほのぼの屋」 年とのことです。しかし、このカキも残念なことに 料理長糸井和夫氏による「カキと料理 食の安全・ 加熱用として販売され、生産者が精魂込めて育てた 安心を守る」と題する講演です(写真 9)。 カキが剥き身で出荷されるというのは生産者は無論、 長年カキと付き合ってきたご自身の気持ちとしては 非常に心苦しいことだと話しました。舞鶴湾はカキ 養殖に適した恵まれた条件を備えているにもかかわ らず、加熱用のカキを生産し続けていくだけで良い のだろうかと疑問を投げかけました。生産者のみな らず、舞鶴市、漁業協同組合をはじめとした関係者 が一丸となって生食用カキの生産に取り組んでほし いと訴えました。 最後に、カキを通して自然環境を守ることについ 写真 9 28 て、自然環境の悪化を引き起こしているのは我々人 間であることを一人一人が自覚すること、今は難し かき研究所 ニュース No.29 い状況にある地産地消を目指していける環境作りを が用いられ、最近はそこに生息する生物を指標とす 行っていくことの重要性を述べました。 る考え方が出てきています。その生物を指標生物と 講演の最後を締めくくるのは、高橋研究所長によ いい、環境の変化に鋭敏に反応する生物が持つ成分 る「カキについて疑問に答える Q&A」です(写真 をバイオマーカーといいます。カキは最適な指標生 10) 。日頃から関心が高いカキについての疑問や話題 物とされており、その理由を 2 つ挙げました。1 つ は陸と海の両方の環境をとらえる場所である沿岸に 生息していること、もう 1 つはカキは固着性生物な ので、カキの体に何か変化が生じているということ はその場所の環境が変化したと考えられるからであ る と 説 明 し ま し た。 そ し て 熱 シ ョ ッ ク タ ン パ ク (HSP)、過酸化脂質・グルタチオンペルオキシダー ゼ(GPx) 、リソソームといった近年実用化されてき ているバイオマーカーの事例も併せて紹介しました。 写真 10 最後に、2012 年 9 月にマガキの全ゲノムが解読さ れたことについて触れました。マガキの全遺伝子の を取り上げ、それらに沿って話を進めていきました。 32% がカキあるいは貝に特有の遺伝子であったこと、 その中から以下の 2 つを紹介します。 そして環境ストレスや細菌感染に応答する多数の遺 まず、三陸沿岸を例にあげて貝毒の問題について 伝子群を持つという点が大きな特徴であるというこ 説明しました。貝毒とは毒を持つ渦鞭毛藻というプ とです。まだ解読が完了した段階ですが、今後カキ ランクトンを餌として貝が取り込むことによって毒 の研究の進展に大きな期待を持てると話しました。 化することです。従来三陸沿岸地方は貝毒が比較的 以上で全ての講演を終了しましたが、約 2 時間半 少ない地域ですが、2011 年の震災を境に海洋環境が の間参加者の皆さんが熱心に耳を傾け、写真やメモ 大きく変化したのではないかと関係機関が連携し、 をとる姿が印象的でした(写真 11、12) 。今回は事 調査を継続しています。それは三陸沿岸が昭和 35 年 のチリ地震津波被害を受け、その時に貝毒が発生し たからです。震災後の状況については貝毒プランク トンを含む全てのプランクトンは特に浅い場所にお いて大幅に増加しており、また貝毒プランクトンに 限定すれば、渦鞭毛藻のシスト(胞子)数は震災前 の 10 倍近くに増加しています。これは明らかに海が 変化したことを意味すると述べました。貝毒につい ては、以下のように総括しました。 写真 11 (1)東日本大震災後、貝毒プランクトンの出現密度 が高い状態が継続している。 (2)津波によって海底が撹拌され、大量のシストが 浮遊、発芽したことが原因だと考えられる。 (3)海(湖)の撹拌による貝毒や赤潮の大発生はカ キ養殖にとって大きな問題である。 次に、環境指標生物としてのカキについて解説し ました。環境の変化や良否を知るために様々な指標 写真 12 29 Oyster Research Institute News No.29 前の案内・告知により 155 名という多くの方々にご 業関係者はじめ多くの来場者の方に注目されました。 参加頂きました。 初めて目にする海外の養殖方法に関心を示され、関 講演終了後、出口で来場者プレゼントが手渡され ました。商品は舞鶴市内のかねと食品で加工された 係者同士意見交換される様子も見られました(写真 15) 。 「冷凍かきパック レンジでポン」です。冷凍パック 内の 5 個の殻付カキは舞鶴牡蠣組合より提供され、 加工費用は一般社団法人舞鶴市水産協会にご負担し て頂きました。 また、今回のフォーラムの大きな特徴として次の 2 つが挙げられます。1 つ目は、水産業の将来を担う 京都府立海洋高等学校の生徒 29 名の参加があったこ とです。閉会後に講演者の河畑氏が生徒達に「将来 水産業を目指す人には必要なら知識や技術等指導し 写真 15 ましょう」と語りかけ激励していた姿(写真 13)や 海洋高等学校の女子生徒が高橋研究所長に熱心に質 問している姿(写真 14)が印象的でした。2 つ目は、 ポスター展示は初めての試みでしたが、今後もさ らに多くの世界のかき養殖場をご紹介してゆきます。 さらに、後日京都府立海洋高等学校の生徒の皆さ んよりお礼と感想文が寄せられました。将来水産業 に様々な立場で関わっていくであろう生徒さんたち からこのような前向きな意見・感想を頂き大変嬉し く思います。末尾に一部抜粋してご紹介させて頂き ました。 最後に、企画段階から当日の運営までご支援ご協 力を頂きました、京都府水産事務所、舞鶴市水産課、 写真 13 舞鶴牡蠣組合、京都府漁業協同組合、一般社団法人 舞鶴市水産協会、一般社団法人舞鶴観光協会の皆様 に心より深く御礼申し上げます。 写真 14 世界のかき養殖場の写真をポスター展示したことで す。これまで「かき研究所ニュース」やホームペー ジに掲載してきました写真に解説を加えた大型ポス ター 12 枚を会場後方に展示しました。開場前から漁 30 かき研究所 ニュース No.29 〈京都府立海洋高等学校の皆さんから届いた感想文〉 ◆私 は、正直、カキはノロウイルス等の原因だとい す力を持っているということも聞いて、カキは本 うイメージが強く、栄養が豊富であっても食べる 当に素晴らしい食品だということを改めて感じる のは少し怖いものだな、と感じていました。しか ことができました。 し今回の話を聞いて、カキは私が思っている以上 森 理事長の講義の中で紹介されていた「海を生か に人間にとって良い影響を与えてくれるものであ し、海に生きる」という言葉がとても印象に残っ り、かつ危険性の低いものであるということがわ ています。海という身近なものに無限大の可能性 かったと同時に、なぜここまでカキだけが、ノロ があるということを感じさせられる言葉でとても ウイルスの原因ということに限定されてしまった 感激しました。 のか、疑問に思いました。 ◆私 たちは研究活動の一環としてカキの養殖をして ◆海 洋高校でも、イワガキの養殖をしていますが、 いますが、カキの歴史や垂下式養殖の成り立ちに 垂下するのに、採苗器のホタテガイを直接ロープ ついては詳しく知りませんでした。今回の話を聞 に挟んでいます。しかし、今回実際に見せていた き、カキは世界的にも需要がありとても優れた水 だいたものは、針金で固定してありました。私は、 産資源だと改めて学ぶことができました。その中 垂下時に採苗器がロープから外れ、海に落ちてし でも、カキに水質浄化機能があるという点に驚き まうのが気になっていましたので、今回見せてい でした。私たちのかきフォーラムが終わった後も質 ただいてとても参考になりました。私は、高校を 問を受け付けてくれたのがとても嬉しかったです。 卒業後、水産大学校へ進学し、さらに水産につい ◆私 はカキの歴史について、これまで考えたことな て学びたいと考えています。その中でも、特にヒ ど一度もありませんでした。私は中学生の頃は歴 トに害を及ぼすウイルスや微生物の分野に興味を 史が好きだったので、カキの歴史に関する話を聞 持っています。講演していただいた中に、貝毒に き、カキのことについて、そしてカキを食してい ついてのお話があり、とても興味がわきました。 たローマ時代にも、興味を抱くことができました。 ◆高 橋先生の発表の中で例としてあげられた場所が 他にもノロウイルスとカキの関係についてや、カ 東北の三陸だったことにとても興味がわきました。 キを食す上での知識、地元活性化に向けてなどの 私は、今年度の夏と冬の長期休暇を利用して岩手 様々な話を聞いて私自身、考えを改めることもあ 県の陸前高田市などに行き、ボランティア活動を りました。 しました。沿岸の町だったのでよく三陸沿岸の海 今 回の講演は今後の実習だけでなく、高校卒業後 を見ることができました。海は震災がなかったか の進路にも活かしていきたいと思っております。 のように穏やかでした。海の色も特に目立ったと ころはなく、もう大丈夫だと思っていました。し かし今回の発表内容やニュースなどで得た情報な どを考えるとまだまだなのだなと感じました。海 の中までは見えないのであまり分かりませんでし たが、今回の発表を聞いて、どのようにすれば安 全に漁ができる海に戻るのだろうかと感じました。 ◆カ キはローマ時代から養殖されていたということ を知って、食品として昔から深く根付いていたの だということを実感されられました。また、カキ には多種多様な栄養が含まれていて体の不調を治 海洋高校最寄りの北近畿タンゴ鉄道栗田駅の待合室には、 生徒たちが世話している水槽がたくさん並んでいる 31 Oyster Research Institute News No.29 平成 24 年度研究助成による研究報告 マガキ血球における貪食胞の形成と成熟 東北大学大学院農学研究科 阿部史隆 私は修士論文研究を進めるにあたり、かき研究所 一定面積内にある血球を観察し、FITC の蛍光を発し から研究助成を受けることができました。その結果、 ている貪食胞の数を全貪食胞数とし、同じ面積にあ 下記に示す研究の遂行に対して大きな助けとなりま る血球において pH rodo の蛍光を発している貪食胞 したので、御礼を申し上げるとともに研究内容の概 の数を酸性貪食胞数として計数しました。そして両 略を報告いたします。 者の数を比較して貪食胞の酸性化率をもとめました。 もし、両者の数が同じならば酸性化率は 100%、酸 32 1.マガキ血球における貪食胞内酸性化 性貪食胞数が半分ならば酸性化率は 50%となります。 ヒトの白血球では、細菌などを貪食したのち、貪 このようにして実験のデータを得ていきました。 食胞内が急速に酸性化して殺菌・分解に寄与するこ その結果、マガキ血球に貪食された pH rodo 標識 とが知られています。二枚貝においても、アメリカ 粒子は強い蛍光を発し、貪食胞内の酸性化が認めら ガキ、シドニーイワガキ、そしてヨーロッパイガイ れました。経時的な変化についてみると、形成され の血球で貪食胞内の酸性化は観察されていますが、 た貪食胞の多くは 30 分以内の短い時間で蛍光が強く その酸性化のしくみは明らかではありません。そこ なり、酸性化していると考えられましたが、1 部の で私の研究では、蛍光標識した異物粒子をマガキ血 貪食胞は観察した時間(120 分間)の最後まで明ら 球と合わせて貪食胞を形成させてから、経時的に貪 かな赤色蛍光を示しませんでした。すなわち、すべ 食胞内の酸性化の過程を観察しました。この時標識 ての貪食胞が酸性化をするのではないと考えられま に用いたのは pH によって蛍光の光り方と強度が変 した。酸性化率を算出すると 61.4%でした。この酸 化する pH rodo という蛍光色素です。pH rodo は赤 性化するかしないかという違いは何に起因するのか 色の蛍光を発しますが、中性の pH 7 よりも高いと光 を調べました。1 つでも貪食胞を有する血球の割合 りません。逆に低い pH、つまり酸性になるほど強く を FITC 標識粒子投与区、pH rodo 標識粒子投与区 鮮やかに光ります。血球と異物粒子は最初 pH 8 に近 のそれぞれについて測定した結果、両者に有意差は い平衡塩類溶液の中に置かれるので蛍光は発しませ ありませんでした。一方、貪食によって蛍光陽性を ん。しかし、血球が異物粒子を取り込んで貪食胞を 示す血球 1 細胞あたりの蛍光ビーズ数は、FITC 標識 形成し、その貪食胞内に赤色蛍光が見えるようにな 粒子投与区が 3.5、pH rodo 標識粒子投与区が 2.2 と れば酸性化されたことがわかります。決めた時間ご FITC 標識粒子投与区の方が高くなりました。すなわ とに顕微鏡下で血球を観察し赤色の蛍光が出ている ち、貪食を行う血球では基本的に貪食胞の酸性化が ことを確認するとともに血球の画像をコンピュータ 起こりますが、複数の貪食胞を形成した場合、必ず に取り込み、画像解析ソフトを用いて蛍光強度を測 しもすべての貪食胞が酸性化されるのではないよう 定しました。また、貪食胞の酸性化率を算出するため、 です。つまり、1 つの血球の中に酸性化した貪食胞 pH にあまり関係なく緑色蛍光を発する FITC という とそうでない貪食胞が共存しているわけで、非常に 別の蛍光色素を標識した異物粒子を pH rodo 標識粒 興味深い結果です。おそらく世界で初めての知見で 子と同様にマガキの血球に貪食させました。つまり、 はないかと思われます。 かき研究所 ニュース No.29 2.どういうしくみで貪食胞は酸性化するのか? その ATPase 活性を測定しました。次に、先に調べ ヒト白血球では貪食胞が形成されると、複合酵素 た貪食胞酸性化の時に ATPase が働いていることを である液胞型水素イオン -ATPase(V-ATPase)が 確かめるため、V-ATPase 特異阻害剤であるコンカ 貪食胞の膜上で活性化し、貪食胞の外にある水素イ ナマイシン A を添加した状態で pH rodo 標識粒子の オンを次々と貪食胞内に汲み入れます。プロトンポ 貪食実験を行い、蛍光強度の変化を観察しました。 ンプと呼ばれる能動輸送の 1 種です。たくさんの水 これらの実験の結果をみると、V-ATPase 特異阻 素イオンが貪食胞のような狭い空間に入るので、中 害剤の添加により、蛍光強度、蛍光陽性細胞率が低 は酸性に傾きます。私は修士論文の研究で、このよ 下しました。また、分離した貪食胞画分に高い比活 うな反応がマガキ血球でも起こっているのか、すな 性の V-ATPase 活性が認められました。これらのこ わち酸性化に働く V-ATPase がマガキ血球でも活性 とから、マガキ血球の貪食胞においても酸性化には を持っているのかについても検討しました。まず、 V-ATPase が関与すると考えられました。 マガキ血球における V-ATPase を測定しました。血 球全体の活性を調べただけでは貪食胞でプロトンポ 3.平成 24 年度日本水産学会秋季大会への参加 ンプが働いているか明らかではないため、マグネ 平成 24 年 9 月に山口県下関市の水産大学校におい ティックセパレーション法を行いました。それは異 て開催された上記の学会で、今回の研究成果を口頭 物として磁気ビーズを貪食させたのち、血球を緩や 発表しました。講演題目は「マガキ血球における貪 かに壊して貪食胞を含む細胞小器官を集めます。そ 食胞内酸性化」です。発表後の質疑でも活発な討論 れらの懸濁液を磁石つきのカラムに通しました。そ があり、一定の評価は得られたと考えています。指 うすると、磁気ビーズを含む貪食胞だけがカラム内 導教員の高橋先生と相談しながらこれらの成果を研 に留まり、他の小器官は素通りします。カラムの中 究論文にまとめたいと思います。今回のご支援に厚 をよく洗ってから、磁石を離して貪食胞を回収し、 く御礼申し上げます。 マガキ PGRP-S1S による大腸菌の凝集と脱顆粒の誘起 東北大学大学院農学研究科 飯塚真生 1.目的 PGRP が同定されたことから、二枚貝においてもこ 濾過食性の水棲生物である二枚貝は常に環境水中 れらが初期の細菌認識に重要な役割を果たすことが の微生物に曝露されており、微生物による疾病問題 期待される。従ってマガキ PGRP の機能とそれに関 はしばしば水産業に甚大な被害をもたらしている。 連する細菌認識メカニズムを明らかにすることで、 しかし二枚貝における生体防御機構については不明 疾病に強い二枚貝生産など、水産業の発展に繋がる な点が多く、特に効率的な免疫応答の起点となる細 可能性がある。そこで本研究ではマガキ PGRP のう 菌認識に関するメカニズムについてはほとんど明ら ち、鰓や外套膜といった外部と直接接触する組織で かにされていない。ペプチドグリカン認識タンパク 発 現 し、 ま た 抗 菌 ペ プ チ ド 様 ド メ イ ン を 持 つ 質(PGRP)は細菌の侵入を認識して効率的な生体防 CgPGRP-S1S について機能解析を試みた。 御反応を誘起することが一部のモデル生物の研究で 明 ら か に さ れ て お り、 近 年 マ ガ キ か ら も 5 種 の 33 Oyster Research Institute News No.29 2.材料と方法 していることが想定された。脱顆粒を考慮して貪食 まず CgPGRP-S1S の組み換えタンパク質 (rCgPGRP- 率、貪食指数を補正すると、無顆粒球では rCgPGRP- S1S)を用いて精製ペプチドグリカン(PGN)と 5 種 S1S 添加によってむしろ貪食の活性が下がることが の生菌に対する結合特異性、抗菌活性、マガキ血球 考えられた。このことは、CgPGRP-S1S によって凝 に及ぼす影響を in vitro にて検討した。上述の結果 集して物理的に巨大化した菌塊に対し、貪食から包 を踏まえ、Escherichia coli 接種後の CgPGRP-S1S 遺 囲化へと防御の様式を変えて対応した結果を反映し 伝子発現量や顆粒球率の in vivo での変化を観察する ているのかもしれない。E. coli 接種実験では、接種 6 ことにより、マガキ生体内における実際の CgPGRP- 時間後に CgPGRP-S1S 遺伝子発現量の有意な上昇が S1S の機能を検討した。 引き起こされたことから、CgPGRP-S1S は実際にマ ガキ生体内における迅速な細菌認識と防御反応の誘 3.結果と考察 起に関与していることが考えられた。また、顆粒球 結 合 試 験 の 結 果、rCgPGRP-S1S は DAP-type の 率の変動は CgPGRP-S1S 発現量の推移とは正反対の PGN を特異的に認識することが分かった。一方で、生 挙 動 を 示 し た た め、 メ カ ニ ズ ム は 不 明 で あ る が 菌に対する結合試験では DAP-type PGN を有する細 CgPGRP-S1S が血球組成を調節している可能性が考 菌 3 種のうち、結合が確認できたのは E. coli のみで えられた。本研究はマガキにおける PGRP の機能解 あり、E. coli については菌を凝集させる機能も観察 析の最初の研究であり、PGRP を起点とする免疫応 された。抗菌活性は本研究で調べた全ての菌に対し 答カスケードの存在が改めて示唆された。 て認められなかったことから、CgPGRP-S1S は認識 後に他の防御反応を誘起することが考えられた。そ 4.研究成果 こで、他の PGRP で指摘されている細菌に対する貪 ・AQUACULTURE 2013 口頭発表 食の活性化をマガキ血球と E. coli を用いて検討した ・Developmental and Comparative Immunology 43 が、貪食の活性化は認められなかった。しかし E. coli の有無に関わらず、rCgPGRP-S1S 添加後に顆粒 “Involvement of Pacific oyster CgPGRP-S1S in 球の割合が有意に低下したことから、CgPGRP-S1S bacterial recognition, agglutination and は単独で血球に作用して脱顆粒を誘起し、顆粒球内 granulocyte degranulation” (2013.10) の抗菌物質などを放出させることで生体防御に貢献 34 (2014)30–34 へ掲載 かき研究所 ニュース No.29 二枚貝綱カキ上科の分子系統解析および生息環境の変遷の解明 東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻 稲村研吾 1.背景・目的 2.研究方法 現生カキ上科は、ベッコウガキ科とイタボガキ科 日本周辺に生息する種を中心にサンプリングをお に分類される。水産重要種であるだけではなく、化 こなった。系統解析に使用したサンプルは、99% エ 石も多く産出するため、昔から多くの分類学的研究 タ ノ ー ル ま た は − 80 ℃ で 保 存 し CTAB 法 に よ り が行われてきた。しかしながら、カキの仲間は多く DNA の抽出を行った。自ら塩基配列を決定した種に の外部形態を消失しているため、分類が困難であり、 加え、GenBank に登録されている種も利用し、イタ カキ上科の初出時期、両科の出現時期、現生種と化 ヤガイ科およびアコヤガイ科を外群として分子系統 石種の関連など謎が多い。これらの謎を解決するた 解析を行った。最終的に分子系統解析に使用したカ め、分子系統解析により系統に関する有用な枠組み キ上科は、2 科 7 属 19 種(表 1)である。分子系統 を構築することを目的に研究を行った。 樹には様々な進化速度をもつと言われている核およ びミトコンドリア遺伝子マーカーを組み合わせ、最 尤法を用いて分子系統樹を作成した。また、走査型 表1 科 [外群] イタヤガイ科 ウグイスガイ科 [内群] ベッコウガキ科 イタボガキ属 属 種(和名) イタヤガイ属 ヒオウギガイ Argopecten アコヤガイ属 ホンアメリカイタヤ アコヤガイ シロチョウガイ オオベッコウガキ属 ベッコウガキ属 シャコガキ属 オオベッコウガキ ベッコウガキ シャコガキ カキツバタガキ ベニガキ ヒラガキ イタボガキ ヨーロッパヒラガキ コケゴロモガキ トサカガキ マガキ シカメガキ スミノエガキ イワガキ バージニアガキ オハグロガキ ケガキ ニセマガキ イタボガキ科 トサカガキ属 マガキ属 オハグロガキ属 種(学名) (Mimachlamys nobilis ) (Mimachlamys varia ) (Argopecten irradians ) (Pinctada fucata ) (Pinctada maxima) (Pycnodonte taniguchii ) (Neopycnodonte cohlear ) (Hyotissa hyotis ) (Hyotissa imbricata ) (Hyotissa chemnitzi ) (Hyotissa numisma ) (Ostrea denselamellosa ) (Ostrea edulis ) (Ostrea circumpicta ) (Lopha cristagalli ) (Crassostrea gigas ) (Crassostrea sikamea ) (Crassostrea ariakensis ) (Crassostrea nippona ) (Crassostrea virginica ) (Saccostrea mordax ) (Saccostrea kegaki ) (Saccostrea echinata) (Saccostrea cucullata ) 35 Oyster Research Institute News No.29 電子顕微鏡を用いて貝殻内部の微細構造を種ごとに 育児行動、閉殻筋痕、そして貝殻微細構造であり、 観察した。 生息環境と関連のある形質は腸管の走行型、貝殻微 細構造であることが示唆された(図 2) 。 3.結果と考察 カキ上科全体の生息環境の変遷は、現生種の 2 つ 得られた分子系統樹と貝殻内部の微細構造との関 の大きな生息環境である潮間帯および潮下帯のどち 係は図 1 に示す。ベッコウガキ科とイタボガキ科は らから始まったのかは今回の結果からは推定できな それぞれ単系統であることが強く支持された。ベッ かった。しかしながら、イタボガキ科内部では、ト コウガキ科の中では、シャコガキ属が単系統群とな サカガキ属がイタボガキ属とクレードを形成したこ り、ベッコウガキ属とオオベッコウガキ属が姉妹群 となどによって、潮間帯から潮下帯へと進出していっ を形成した。また、イタボガキ科の中ではイタボガ たことが示唆された。 キ属とトサカガキ属、マガキ属とオハグロガキ属が また、貝殻微細構造は系統関係および生息環境の それぞれクレードを形成し、マガキ属とオハグロガ 両方と関連のある有用な形質であり、加えて化石で キ属の単系統性が支持された(図 1)。 もよく保存されていることから、今後、化石種と現 貝殻内部微細構造を観察した結果、ベッコウガキ 科ではハニカム状の胞状構造、イタボガキ科ではマ 生種との系統関係および生息環境の変遷を推定する ための有用なツールとなると考えられる。 ガキ属およびイタボガキ属では空室およびチョーク 今後、カキと近縁とされる目を含めた分子系統解 状構造、トサカガキ属では空室のみ、オハグロガキ 析をおこなうことで、カキ上科出現時の祖先形質の 属では空室がほとんど見られず、チョーク状構造の さらなる情報を増やし、化石においても貝殻微細構 みがそれぞれ確認できた(図 1)。 造などによって系統関係および生息環境の変遷の解 また、他の形質も含めた系統樹との比較によって、 析を進めていく予定である。 系統と関連のある形質は心臓への直腸の貫通の有無、 外群 外群 ベッコウガキ属 シャコガキ属 ベッコウガキ属 シャコガキ属 トサカガキ属 & イタボガキ属 マガキ属 オハグロガキガキ属 図1 36 オハグロガキガキ属 図2 腸管が胃周辺で ループしない 貝殻微細構造中に チョーク状構造を含まない 潮間帯に生息 マガキ属 オオベッコウガキ属 イタボガキ科 イタボガキ属 & トサカガキ属 生息環境と関連する形質 潮下帯以深に生息 オオベッコウガキ属 ベッコウガキ科 (貝殻内部微細構造) 腸管が胃周辺で ループ 貝殻微細構造中に チョーク質物質を含む かき研究所 ニュース No.29 世界かき学会会員数 平成26年3月現在 アメリカ支部 48 カナダ ブラジル 米国 インド 2 インドネシア 38 メキシコ アジア・オセアニア支部 7 1 320 1 4 オーストラリア 162 オマーン 1 韓国 6 シンガポール 2 2 スリランカ 3 ウクライナ 1 タイ 3 英国 7 台湾 67 オランダ 1 ニュージーランド 11 北アイルランド 2 フィリピン スウェーデン 2 ベトナム 35 スコットランド 4 香港 12 チュニジア 7 マーシャル諸島 トルコ 1 マレーシア ナミビア 2 ノルウェー 1 フランス 4 ベルギー 1 南アフリカ 1 ヨーロッパ・アフリカ支部 アイルランド 36 2 1 10 中国支部 36 中国 36 日本支部 148 日本 148 合計 588 会員数内訳・推移 588 中国支部 36 ヨーロッパ・アフリカ支部 36 487 アメリカ支部 48 合計 588 日本支部 148 アジア・ オセアニア支部 246 320 126 2007/12 2009/12 2011/12 2014/12 37 シリーズ「世界のかき養殖場」アイルランド 写真提供:Mr. Tristan Hugh-Jones, Loch Ryan Oyster Fishery Co., Ltd. Copyright(C)Oyster Research Institute All Rights Reserved. かき研究所ニュース Oyster Research Institute News No.29 2014.3 平成26年3月31日 一般財団法人かき研究所 〒981-3217 仙台市泉区実沢字中山南31-5 双葉ビル6階 TEL 022-303-9033 FAX 022-303-9034
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