基本管理会計⑦

資本コストの算出
• 資本コストとは?
設備投資に必要な資金を調達するのに必要なコスト
基本管理会計⑦
社債・借入金 " 支払利息
株式 " 配当(+キャピタル・ゲイン:株価値上がり益)
設備投資意思決定計算!
• 採用する投資案は資本コストを上回る利益をもたらすもので
なければならない。
資本コスト<設備投資による利益率 " 実行
資本コスト>設備投資による利益率 " 棄却
資本コストの算出
資本コストの算出
• 加重平均資本コスト(WACC)算出式
• 加重平均資本コスト(WACC)
• 負債の資本コスト
負債による調達額をB,資本による調達額をSとし,
それぞれの支払額をk,法人税をtとしたとき,
負債の資本コスト率=税引前支払利子率!(1"法人税率)
加重平均コスト(WACC)は下記のように算出される。
支払利息,社債利息は税務会計上,損金扱いのため,負債による
WACC =
資金調達は節税効果がある(後段で取り上げる)。
• 自己資本の資本コスト
資本コスト率=支払配当率(キャピタルゲインを含む)
•
留保利益の資本コスト
資本コストの算出
S+B
kb(1" t)+
S
S+B
ks
• 図で考える。
資産
機会原価としての資本コストを計上する。
B
負債
借入金・社債利息
B
(税引後)
純資産
インカム・ゲイン
S
キャピタル・ゲイン
kb(1" t)
ks
設備投資計画におけるリスク評価
• 設例を解いてみましょう。
• 解答の導き方
負債
資産
B:30%
純資産
S:70%
•
kb(1" t)
10%!(1" 40%)
ks
12%
設例の解答
①回収期間の短縮や回収期間法の適用
回収期間を短縮してリスクを織り込む(5年"3年)
②高い割引率の適用
リスクの高いプロジェクトには高い割引率を適用
WACC=(3/10)!0.1(1-0.4)+(7/10)!0.12
= 0.3 ! 0.06 + 0.7 ! 0.12
③期待値による計算
④ディシジョン・ツリーを書く
=0.018 + 0.084
=0.102
• 設備投資意思決定における伝統的なリスク評価の方法
WACC:10.2%
設備投資計画におけるリスク評価
設備投資計画におけるリスク評価
• 期待値による計算のケース
• ディシジョン・ツリーで考える場合
200億円の投資によって,
A案(3年後):
A案 3年
好景気 270億円(60%),不景気 160億円(40%)
B案(5年後):
好景気 300億円(70%),不景気 180億円(30%)
資本コストを5%としたときの正味現在価値で投資意思決定を行う。
+ =226
200億円
160(0.4)= 64
投資
300(0.7)= 210
• A案(270!0.6+160!0.4)/(1.05)" 200 = "5
5
• B案(300!0.7+180!0.3)/(1.05)" 200 = 7
リアル・オプションの意義と概要
"これを組み入れた投資計算をリアル・オプションという。
• リアル・オプションの種類
①延期オプション
事業に必要な最低限の投資を行ったうえで,将来の状況を
見通せるようになってから更なる投資の可否を決定する。
②拡張オプション
拡張NPV=NPV+リアル・オプションの価値
投資後,事業が有利になる見通しがある場合
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
リアル・オプションの意義と概要
•
現金流入額と流出額(=キャッシュ・フロー)に関する
投資後,事業が不利になる見通しがある場合
段階的に事業を進めていき,十分な見通しが立つ場合にのみ
次のステップに入れるオプション
設備投資の意思決定計算において必要とする情報
"投資案を採用することで新たに発生すると予想される
③縮小オプション
⑤段階オプション
207億円
②モンテカルロ・シミュレーションを用いて評価
正味現在価値
事業撤退を選択肢に入れる場合
現在価値
①金融オプションの評価方法を実物資産に適用
環境変化などを考慮した投資案の評価を行った場合の
④撤退オプション
195億円
• リアル・オプションの計算方法
• 拡張正味現在価値
• リアル・オプションの種類
180(0.3)= 54
現在価値
リアル・オプションの意義と概要
経営環境は激しく変化し,実際に全てのシナリオを投資案に
組み込むのは難しい。動態的な状況の中で多様な選択肢を持つ。
+ =264
B案 5年
3
• リアル・オプションとは
270(0.6)=162
情報である。
•
しかしながら,設備投資案の採用により年々得られる
税引後キャッシュ・インフローの増分と,
会計上の税引後当期純利益の増分は,通常一致しない。
☞減価償却費などの非現金支出費用が影響を及ぼす。
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
法人税などによるキャッシュ・フローの変化
会計上の損益計算
現金支出費用
製品売上収入
(売上高)
税引後
企業内部に
法人税
減価償却費
<CIF>
<COF>
製品売上収入
減価償却費
製品売上収入
(売上高)
税引後
法人税
CIF利益
<COF>
<CIF>
税引後
利益
法人税
利益
CIF
残るCF
<COF>
税率
税率
タックス・シールド:減価償却費による法人税節約額
税引後純現金流入額=(製品売上収入"現金支出費用)!
税引後純現金流入額=
(1 " 法人税率)+ 減価償却費! 法人税率
(製品売上収入"現金支出費用)!(1"法人税率)
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
•
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
例題を考えてみましょう。
問1:法人税を考慮しない場合(続き)
④投資終了時(5年度末)における固定資産の売却収入:
問1:法人税を考慮しない場合
新設備Xへの投資案を採用すれば,新たに生じることになる
CF項目は以下のようになる。
①設備Xへの初期投資額 100,000千円
6,000千円
•
以上から,毎年生じるCFは下図のようになる。
現時点
②と③ 投資案から生じる年々の経済効果
採用後
採用前
差額
製品売上高
325,000千円
210,000千円
115,000千円
現金支出費用
170,000千円
90,000千円
80,000千円
支出
減価償却費
53,000千円
35,000千円
18,000千円
NETCF
問2:法人税を考慮する場合
1年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
6,000
収入
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
(設備投資による増加分)
現金支出費用
現金支出費用
<COF>
製品売上収入
キャッシュ・フロー
(設備投資による増加分)
(設備投資による増加分)
現金支出費用
税引後
利益
法人税
利益
会計上の損益計算
キャッシュ・フロー
(設備投資による増加分)
減価償却費による法人税節約額
115,000
115,000
115,000
115,000
115,000
100,000
80,000
80,000
80,000
80,000
80,000
-100,000
35,000
35,000
35,000
35,000
41,000
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
以上から,毎年生じるキャッシュ・フローは下図のようになる。
①設備Xへの初期投資額 100,000千円
②∼④ 現時点
税引後売上収入:115,000千円 !(1 " 0.5)=57,500千円
税引後現金支出費用:
80,000千円 !(1 " 0.5)=40,000千円
2,000
6,000
収入
減価償却費による法人税節約額:
18,000千円 ! 0.5 = 9,000千円
⑤投資終了時における固定資産の売却収入:6,000千円
⑥設備売却損による法人税節約額:
4,000千円 ! 0.5=2,000千円
1年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
9,000
9,000
9,000
9,000
9,000
57,500
57,500
57,500
57,500
57,500
支出
100,000
40,000
40,000
40,000
40,000
40,000
NETCF
-100,000
26,500
26,500
26,500
26,500
34,500
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
•
問3:正味現在価値の計算
"問2で求めたCFを5%の資本コスト率で割引計算し,
正味現在価値を求める。
1年度末から5年度末のCFの現在価値は120,997.1千円と求め
られるので,正味現在価値は20,997.1千円となる。