ロンドン協定の現状 (London Agreement) 2014 年 10 月 1 日現在 〔概要〕 ロンドン協定はヨーロッパ特許条約(EPC)第 65 条(ヨーロッパ特許の翻訳)に関す る協定であり、2008 年 5 月 1 日に発効しました。この協定は特許権者がヨーロッパ特 許を締約国の公用語に翻訳する負担を軽減するために設けられたものです。 この協定が設けられたことにより、ヨーロッパ特許出願を英語で行い、英語でヨーロ ッパ特許が付与された場合、ヨーロッパ特許庁の公用語(英語、フランス語、ドイツ 語)の1つと共通の公用語を持つ英国、フランス、ドイツ等において当該ヨーロッパ特 許を有効化する際、これらの国の公用語に翻訳する必要がなくなりました。 また、英語でヨーロッパ特許が付与された場合には、ヨーロッパ特許庁の公用語の 1つと共通の公用語を持たないフィンランド、オランダ、ハンガリー等においても当該 ヨーロッパ特許を有効化する際、これらの国の公用語に翻訳する必要がなくなりまし た。 ロンドン協定の発効から 6 年 5 カ月が経過し、この協定のメンバー国も増えてヨーロ ッパ特許条約締約国 38 カ国のうち半数を超える 20 カ国が加入するに至りました (2014 年 10 月 1 日現在)。そこで、ロンドン協定メンバー国における翻訳免除の状況 について現状をお伝えします。 <目 次> 1. ヨーロッパ特許の締約国における有効化とロンドン協定 2. ロンドン協定における翻訳免除の形態 3. ヨーロッパ特許条約締約国とロンドン協定メンバー国 4. ロンドン協定メンバー国における翻訳免除の状況 「別紙」 ヨーロッパ特許条約(EPC)締約国の公用語 -------------------------------------------------------------------(注)本件記事は、2013 年9月に掲載しました「ロンドン協定の現状」を更新するとともに、 内容を一部修正及び追加したものです。 *英語を公用語の 1 つとしているアイルランド(IE)は、ロンドン協定に加入する前から特許法 を改正し、2012 年 9 月 3 日以降ヨーロッパ特許がフランス語又はドイツ語で付与された場合で も明細書の英語への翻訳文の提出を出願人に求めていませんでした。 しかし、その後アイルランドは 2014 年 3 月 1 日にロンドン協定に加入し、ロンドン協定第 1 条(1)が適用され、フランス語又はドイツ語で付与された場合でも以前と同様、英語への翻訳 を求めていません。 1 〔詳細〕 1.締約国におけるヨーロッパ特許の有効化とロンドン協定 (1)締約国におけるヨーロッパ特許の有効化 ヨーロッパ特許庁により付与されたヨーロッパ特許を特許権者が指定した締約国で 有効な特許とするためには、当該締約国の国内法に規定された手続を取ることが必 要であり、当該ヨーロッパ特許の言語(英語、フランス語又はドイツ語)が当該締約国 の公用語でない場合、締約国は特許権者に当該締約国の公用語による翻訳文を提 出するように求めることができます(EPC第65条(1))。 上記規定に基づき、特許権者はヨーロッパ特許を取得した後、ヨーロッパ特許(明 細書、請求の範囲及び図面中の文言)を特許権者が指定した締約国の公用語に翻 訳し、当該締約国の特許庁等の国内官庁に提出しなければなりません。 (2)ロンドン協定とは ロンドン協定(注1)はヨーロッパ特許条約(EPC)第65条(ヨーロッパ特許の翻訳)に 関する協定であり、2008年5月1日に発効しました。この協定は特許権者がヨーロッ パ特許を締約国の公用語に翻訳する負担を軽減するために設けられたものです。 2014年10月1日現在、ヨーロッパ特許条約締約国38カ国のうちロンドン協定に加 入している国(以下、「メンバー国」と記す)は20カ国です。 (注1)ロンドン協定の正式名称は“Agreement on the application of Article 65E PC on the Grant of European Patents”(ヨーロッパ特許の付与に係るヨーロッパ特 許条約第65条の出願に関する協定)。 2.ロンドン協定における翻訳免除の形態 ロンドン協定の規定により、ヨーロッパ特許の有効化に際し、メンバー国の公用語 に翻訳する要件が以下のように免除されます。 (1)ロンドン協定第1条(1) ヨーロッパ特許庁の公用語の1つと共通の公用語を持つ当協定のメンバー国は、 ヨーロッパ特許を当該国の公用語に翻訳する要件を免除します。 例えば、ヨーロッパ特許庁の公用語の1つである英語で特許が付与された場合、 英国、フランス、ドイツ等においてヨーロッパ特許を有効化するときには、ヨーロッパ特 許をこれらの国の公用語に翻訳する必要はありません。 2 なお、クレームについては、英語でヨーロッパ特許が付与された場合、特許付与時 に出願人がフランス語及びドイツ語による翻訳を提出し、ヨーロッパ特許明細書に掲 載されます。 (2)ロンドン協定第1条(2) ヨーロッパ特許庁の公用語の1つと共通の公用語を持たない当協定のメンバー国 は、ヨーロッパ特許が、当該国が予め定めたヨーロッパ特許庁の公用語で付与されて いる場合、又は当該言語に翻訳され提出されている場合、当該国の公用語に翻訳す る要件を免除します。 例えば、フィンランド、オランダ、ハンガリー等、ヨーロッパ特許庁の公用語(英語、 フランス語、ドイツ語)のいずれも公用語でないメンバー国の場合、ヨーロッパ特許が、 これらメンバー国が予め定めたヨーロッパ特許庁の公用語である英語で付与されて いる場合、又は英語に翻訳され提出されている場合、当該国の公用語に翻訳する必 要はありません。 また、ラトヴィア、リトアニア、スロヴェニア等の場合、ヨーロッパ特許庁の公用語(英 語、フランス語、ドイツ語)のいずれもこれらの国の公用語ではありませんが、ヨーロッ パ特許が付与された言語がヨーロッパ特許庁の公用語のいずれであっても、これらの 国の公用語に翻訳する必要はありません。 (3)ロンドン協定第1条(3) ロンドン協定第1条(2)が適用されるメンバー国は、クレームについて当該国の 公用語への翻訳を求めることができます。 (4)ロンドン協定に加入していない国における翻訳の要件 ロンドン協定に加入していないヨーロッパ特許条約(EPC)締約国においてヨーロ ッパ特許を有効化するときには、ヨーロッパ特許をこれらの国の公用語に翻訳し提出 しなければなりません。 〇ヨーロッパ特許条約締約国の公用語は「別紙」をご参照ください。 「別紙1」は、ロンドン協定に加入しているEPC締約国の公用語 「別紙2」は、ロンドン協定に加入していないEPC締約国の公用語 3 3.ヨーロッパ特許条約締約国とロンドン協定メンバー国 ロンドン協定 メンバー国 ロンドン協定 非メンバー国 (1)ロンドン協定に加入しているEPC締約国(2014年10月1日現在) アルバニア(AL)、クロアチア(HR)、デンマーク(DK)、フィンランド(FI)、 フランス(FR)、ドイツ(DE)、ハンガリー(HU)、アイスランド(IS)、 アイルランド(IE)、ラトヴィア(LV)、リヒテンシュタイン(LI)、リトアニア(LT)、 ルクセンブルグ(LU)、旧ユーゴースラヴィア共和国マケドニア(MK)、 モナコ(MC)、オランダ(NL)、スロヴェニア(SI)、スウェーデン(SE)、 スイス(CH)、英国(GB) (20カ国) (2)ロンドン協定に加入していないEPC締約国(2014年10月1日現在) オーストリア(AT)、ベルギー(BE)、ブルガリア(BG)、 キプロス(CY)、チェコ(CZ)、エストニア(EE)、ギリシャ(GR)、イタリア(IT)、 マルタ(MT)、ノルウエー(NO)、ポーランド(PL)、ポルトガル(PT) ルーマニア(RO)、サンマリノ(SM)、セルビア(RS)、スロヴァキア(SK)、 スペイン(ES)、トルコ(TR) (18カ国) 4 4.ロンドン協定メンバー国における翻訳免除の状況 ロンドン協定が適用される各メンバー国の翻訳免除の状況を以下に示します。な お、クレームについては、ヨーロッパ特許付与時に出願人が提出した英語、フランス 語及びドイツ語による翻訳がヨーロッパ特許明細書(European Patent Specifica tion)に掲載されます。 (1)ロンドン協定第1条(1)適用国 以下の国は、ヨーロッパ特許庁の公用語(英語、フランス語、ドイツ語)の1つと共通 の公用語を持っているため、ヨーロッパ特許の翻訳文を提出する必要はありません。 <ヨーロッパ特許の翻訳文が不要の国(2014年10月1日現在)> フランス(FR)、ドイツ(DE)、英国(GB)、アイルランド(IE)、スイス(CH)、 リヒテンシュタイン(LI)、ルクセンブルグ(LU)、モナコ(MC) (2)ロンドン協定第1条(2)適用国 以下の国は、ヨーロッパ特許庁の公用語(英語、フランス語、ドイツ語)の1つと共通 の公用語を持っていませんが、ヨーロッパ特許が、これらの国が予め定めたヨーロッ パ特許庁の公用語で付与されている場合、又は当該言語に翻訳され提出されている 場合には、これらの国の公用語に翻訳する必要はありません。 ただし、これらの国は、クレームについて当該国の公用語への翻訳を求めるこ とができます。 <ロンドン協定第1条(2)適用国の翻訳要件(2014年10月1日現在)> (a)ヨーロッパ特許が英語で付与されている場合は翻訳不要である国(注2) ・アルバニア(AL) ・クロアチア(HR) クレームについてはアルバニア語の翻訳を提出 クレームについてはクロアチア語の翻訳を提出 ・デンマーク(DK) ・フィンランド(FI) ・ハンガリー(HU) ・アイスランド(IS) ・オランダ(NL) ・スウェーデン(SE) クレームについてはデンマーク語の翻訳を提出 クレームについてはフィンランド語の翻訳を提出 クレームについてはハンガリー語の翻訳を提出 クレームについてはアイスランド語の翻訳を提出 クレームについてはオランダ語の翻訳を提出 クレームについてはスウェーデン語の翻訳を提出 5 (b)ヨーロッパ特許が英語、フランス語、ドイツ語のいずれであっても翻訳不要の国 (2014年10月1日現在) ・ラトヴィア(LV) ・リトアニア(LT) ・マケドニア(MK) クレームについてはラトヴィア語の翻訳を提出 クレームについてはリトアニア語の翻訳を提出 クレームについてはマケドニア語の翻訳を提出 (旧ユーゴースラヴィア共和国) ・スロヴェニア(SI) クレームについてはスロヴェニア語の翻訳を提出 (注2)ヨーロッパ特許がフランス語又はドイツ語で付与されている場合には、英語の翻訳を提 出しなければなりません。なお、ヨーロッパ特許が英語に翻訳され提出されている場合は、こ れら国の公用語への翻訳は不要です。 2014年10月1日 (IP情報室) ⓒSEIWA PATENT & LAW 6 別 紙 1 ヨーロッパ特許条約(EPC)締約国の公用語 (1)ロンドン協定に加入しているEPC締約国 ・アルバニア(AL)-------------------- アルバニア語 ・クロアチア(HR)--------------------- クロアチア語 ・デンマーク(DK)-------------------- デンマーク語 ・フィンランド(FI)--------------------- フィンランド語 ・フランス(FR)----------------------- フランス語 ・ドイツ(DE)------------------------- ドイツ語 ・ハンガリー(HU)-------------------- ハンガリー語 ・アイスランド(IS)--------------------- アイスランド語 ・アイルランド(IE)-------------------- アイルランド語、英語 ・ラトヴィア(LV)---------------------- ラトヴィア語 ・リヒテンシュタイン(LI)---------------- ドイツ語 ・リトアニア(LT)---------------------- リトアニア語 ・ルクセンブルグ(LU)----------------- ルクセンブルグ語、フランス語、 ドイツ語、 ・マケドニア(MK)-------------------- マケドニア語 (旧ユーゴースラヴィア共和国) ・モナコ(MC)------------------------ フランス語 ・オランダ(NL)----------------------- オランダ語 ・スロヴェニア(SI)--------------------- スロヴェニア語 ・スウェーデン(SE)-------------------- スウェーデン語 ・スイス(CH)------------------------- ドイツ語、フランス語、イタリア語、 ロマンシュ語 ・英国(GB)-------------------------- 英語 2014年10月1日 (IP情報室) ⓒSEIWA PATENT & LAW 7 別 紙 2 ヨーロッパ特許条約(EPC)締約国の公用語 (2)ロンドン協定に加入していないEPC締約国 ・オーストリア(AT)------------------- ドイツ語 ・ベルギー(BE)--------------------- オランダ語、フランス語、ドイツ語 ・ブルガリア(BG)-------------------- ブルガリア語 ・キプロス(CY)--------------------- ギリシャ語、トルコ語 ・チェコ(CZ)------------------------ チェコ語 ・エストニア(EE)--------------------- エストニア語 ・ギリシャ(GR)----------------------- ギリシャ語 ・イタリア(IT)------------------------ イタリア語 ・マルタ(MT)----------------------- マルタ語、英語 ・ノルウエー(NO)-------------------- ノルウェー語 ・ポーランド(PL)--------------------- ポーランド語 ・ポルトガル(PT)--------------------- ポルトガル語 ・ルーマニア(RO)-------------------- ルーマニア語 ・サンマリノ(SM)--------------------・セルビア(RS)---------------------・スロヴァキア(SK)------------------・スペイン(ES)---------------------・トルコ(TR)------------------------ イタリア語 セルビア語 スロヴァキア語 スペイン語 トルコ語 2014年10月1日 (IP情報室) ⓒSEIWA PATENT & LAW 8
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