ヨーロッパ系言語教育部門

ヨーロッパ系言語教育部門
ヨーロッパ系言語教育部門ではドイツ語とフランス語の授業を行っています。必修の初修外国語科目と
学士力発展科目等の選択科目との組み合わせで、初級文法から会話、講読まで幅広く、継続して学ぶこ
とができます。
大学における外国語学習の意義は、狭義の言語能力・実践的語学能力の習得にとどまりません。その
言語を含み、その言語の背後に広がる文化・社会・歴史について本格的に学ぶ力を身に付けることこそが
たいせつなのです。本学のドイツ語・フランス語担当教員は、それぞれの言語圏の文化や思想の専門家で
す。語学学習の先に広がる知の世界への冒険に旅立つ学生諸君をしっかりサポートします。
ドイツ語
ドイツ語は英語の祖先です。英語は、長い時間をかけて、フランス語
の影響で変化を続け、今の姿になりました。その間、ドイツ語は、あま
り変わることなく今日に至りました。だから、ドイツ語を学ぶと、特に文
法に関しては、英語の謎が解けます。また、英語と比べて、ドイツ語は
発音と綴りの関係を覚えやすい言葉です。基本はローマ字式の発音だ
からです。ですから、今まで英語を学んできたみなさんにとっては、学びやすく、興味深い言語であると言え
るでしょう。英語についての理解を深めたい人にもお薦めできます。
不幸な歴史もありました。日本同様、ドイツもまた、前世紀前半には近隣諸国を侵略し、多くの犠牲者を出
しました。しかし、1960 年代以降、自国の罪と正面から向き合い、国際社会の信頼を回復し、今ではEUの中
心となっています。日本では英米のルールこそが国際スタンダードであると思われがちですが、たとえばアメ
リカは貧富の差の拡大と戦争によって行き詰っています。私たちは、今こそ、英米とは一線を画した社会的
価値を模索するドイツに注目すべきなのではないでしょうか。
日本で暮らす人間にとって、今日のドイツでもっとも注目に値するのは、その脱原発政策でしょう。ドイツ
はすべての原子力発電所を順次 2022 年までに停止し、廃炉とすることを決めました。他方、この間、風力と
太陽光による発電量を爆発的に増加させてきました。ドイツでは、消費電力における再生可能エネルギーに
由来する電力の占める割合を 2050 年までに 80%にまで高めることになっています。
脱原発政策以外にも、ドイツには注目すべき文化がたくさんあります。
バッハ、モーツァルト、ベートーベン、シューマン、ブラームス、みなドイツ
語を話していました。本場ドイツで、彼らの音楽を聴いてみたくありませ
んか?それほど絵画に詳しくなくても、パウル・クレー、エゴン・シーレ、
グスタフ・クリムトなどの名前を聞いたことはありませんか?では、グリ
ム、カント、ヘーゲル、ニーチェ、カフカ、フロイト、マルクスは? まだ知ら
なくても構いません。ドイツ語圏の文化は驚くほど豊かです。ドイツ語を
学べば、誰でもこの世界に遊ぶことができます。
フランス語
英語(米語)が第一の「世界語」であるとすれば、フランス語が第二の「世界語」
であることは間違いのないところです。例えば、オリンピックでの表彰式を思い浮
かべてください。そこでは、開催国の言葉や英語とともにフランス語のアナウンス
を聞くことができるでしょう。また、国連での公式印刷物は、少なくとも英語とフラン
ス語で書かれることが義務付けられているのです。これらのことは、母語あるいは
公用語として、世界33カ国と3地域がフランス語に対して特別な地位を与えてい
ることの表れなのですが、しかし世界の言語人口という点から見れば、フランス語
を日常的に使用する人口はせいぜい我が国の人口と同じ程度なのです。
従って、フランス語を学ぶ意義は、必ずしも現下の言語人口の優勢にあるのではありません。フランス語
を、ひいてはフランス文化を学ぶことは、ヨーロッパ文化を学ぶことだと言っても決して過言ではありませ
ん。フランス語が中世ヨーロッパにおいて共通語であったラテン語を直接の母体としている言語の一つであ
るということ、それから、フランス語で書かれた文学が、そしてフランスという国家が、ヨーロッパの歴史の中
で果たしてきた重要な役割を想起すれば、フランス語がなぜ今なお世界の高等教育機関で教養語として重
要な地位を占めているのか分かるはずです。因みに言えば、第一次大戦後のヴェルサイユ条約で英語が
併用されるまでは、ヨーロッパのすべての外交条約はフランス語で書かれていたのです。このようなフラン
ス語を学ぶことで、アメリカ文化の圧倒的な影響下にある現代日本人である我々は、アメリカ文化とは相当
な隔たりのあるフランス=ヨーロッパ文化に触れることになり、はじめて真の「複眼」を養うことができるので
す。このことを我々フランス語担当者は最も重要なことであると考えています。そしてまた、フランス語学習
は日本語や英語など既知の言語を一層深く、また別の角度から考察する機会ともなり得ると考えていま
す。
もう一つ。日本人がフランスについて一般的に持っているグルメのフ
ァッションだのといったイメージとは別に、フランスがヨーロッパ随一の
農業国であるという事実(彼らにとっては命の糧とも言える小麦の生産
高はヨーロッパ随一です)、また、映画を発明し、新幹線よりも早くて乗
り心地がよいという T.G.V(テー・ジェー・ヴェー)を開発した科学技術国
であることを付け加えておきます。