17 i-News December `11 / January `

2分後に彼女はこう付け加えました。「あ
なたがボランティアでお酒の給仕をしてく
れない限りはね」と。最初は彼女のやんわ
りした脅しか冗談だったのですが、私がぜ
ひやってみたいわ、と頷いたとき、ケイが
給仕をしてお酒を作り、そして彼女のとて
も得意な寿司を巻き、私はといえば、この
素敵な店に恩返しをするというプランがで
きたのです。ケイは私に5日間で読むよう
にと4ページの酒の説明書をくれました。
お酒はアルコール度が約18%(ワインよ
り強い)で、温度は冷たい、室温、体温ほ
どか熱くして出されます。試飲は比較でき
るようにすべて同じ温度にしていて、この
店のお酒は冷やしてありました。試飲する
お酒は安いものではありません。値引きし
てもワンボトル21.95ドル、ハーフボトルで
14.95ドルです。コレクター好みの焼酎(ジ
ャパニーズウォッカと呼ばれる蒸留された
飲料)は65ドルです。
毎晩お酒の勉強をしていたとき、「楽し
い!」「どうしてやってみるなんて言っちゃ
ったのかしら」という入り交じった思いが私
の心の中を駆けめぐりました。酒造りの複
雑な課程(ワイン造りよりもビールの醸造
に似ている)を理解し、日本文化の中での
酒の歴史を基本的に理解しようとし、私が
給仕する10種類の酒の微妙な違いを学
んだのです。1つも味見をしたことがないの
に。
かず子さんは最初に試飲で無駄を出さな
いようにと私に教えました。お客が沢山試
飲でき、またひどくびっくりしてグラス一杯
求めたりするほど色んな種類を飲めるこの
ありがたい試飲を想像してみて下さい。1
杯か2杯しか飲まない人もいれば、食べ
物の2倍の容量で食事を減らす人もいま
す。覚えるのが大変だったお酒のうんちく
に興味を持つ人もいますし、ただ「お酒を
注いで」とだけいう人もいます。
私はいつもの土曜日の日課をこなしまし
た。7時半まで寝坊して、それから台所の
掃除や洗濯などの家事をする。クロック
ポットにポットローストを作り、母の家のポ
ーチで食べるトーストしたベーグルを入れ
て、涼しい昼頃母の元へ行く。それから長
い夜に備えて私の足を鍛えなければと思
い、ジムに通う。最後に家に戻ってカンニ
ングペーパーを作り、酒の芸術性につい
ての最後の勉強をする。最も覚えるのが
大変だったのは、精米方法によって分け
られたお酒の4つのランクでした。米の外
側の層は、品質のよい酒ほど多く取り除か
れます。私たちの店では4つのランクのう
ち吟醸、純米、本醸の3種類を出していま
す。(最高ランクの酒は、特有の味のため
稀少で高価です。)
途中、ケイさんの娘や義理の息子、2人の
孫娘達が手伝おうと寄ってくれました。こ
の店には、たいてい2人か4人組の客がい
て、決して12人もが待っているということ
はなく、混み合ってはいないけれどもはや
っていました。私は美味しくてきれいな寿
司や食事が出てくるのを眺めて楽しんで
いました。
そして・・・覚えるひまもないまま、足もおぼ
つかないままその夜が来てしまいました。
でも、私は黒(給仕スタッフの制服の色)
のドレスに日本の傘と橋の金糸の柄の黒
のジャケットを着て、ゴールドのアクセサリ
ーを着けて行きました。ケイさんが意図的
に黒を着ていたかどうかはわかりません
が、黒は、ちょっと暗い明かりの中でそれ
と対照的に顔だけが浮かび上がって見え
る能の舞台をいつも私に思い出させてい
たのです。
出勤に水を差すかのように雨が降ってい
ました。私は12種類のお酒とワインが並
べられたテーブルのある場所の横に立っ
ていました。店内は、その後ろにたくさんの
名酒を冷やす大きな桶を置いて、古い日
本の店のように配置されていました。私は
樽の隣、並んだお酒の後ろに立っていま
した。ひまな時間用にと椅子は置かれて
いましたが。その夜は、10本の瓶が並べ
られていました。プレッシャーのかかる中、
私の手掛かりとなる説明が書かれた小さ
なカンニングペーパーを並んだ酒の後ろ
に置いておきました。客がやってきたとき、
小さなプラスチックのコップに試飲用の酒
を少しだけ注ぎます。気に入ってもらえた
ら、半分ほどの酒を入れてテーブルへ出
します。お酒は伝統的に数口で飲めるほ
どの小さなお猪口に注ぎますが、ここのお
猪口は、サワークリームやドレッシングを入
れるようなプラスチックの入れものです。
他に良かったことは、私が食べ物のため
に働いているとケイさんが決めつけていた
ことでした。(笑)ケイさんが寿司やカクテ
ルを作っている間は彼女の夫のウォルタ
ーが料理をしています。彼は自己紹介を
して、私が食べ方を覚えるられるように、
温かくて塩気のある枝豆の小皿を持って
きてくれました。枝豆はさやに入った日本
の豆です。噛んでさやを割るときに外側の
塩で味がついた豆をかみだします。ピーナ
ツを茹でて食べる南部のやり方を思い出
しました。私はありがたく床に豆を2個飛ば
しました。楽しいことです。
そのあとケイさんが、新しい私のお気に入
りの冷たくて香ばしい軽いドレッシングの
かかったきゅうりと蟹かまぼこサラダの前
菜を持ってきてくれました。夕方お客さん
が減ったので、ケイさんが、私の好きなポ
ークカツと私のお気に入りの野菜用の魔
法のソースである醤油味のソースがかか
った、うすい天ぷらの衣のついた挽肉コロ
ッケを出してくれました。そうですね、「魔
法」は私の解釈ですが、口の中で野菜と
混ざったときの何とも言えない味を表すこ
とばは他に見つかりません。ケイは11月の
第2土曜の次の酒の味見会のために私を
おだててくれたのでした。私は今や、酒の
知識に磨きがかかり、もっと「感情をこめ
て」お客と交わり楽しませる用意ができて
いますから。
私はその夜出されたすべてのお酒を味わ
う機会を与えられました。その夜の最後
まで、飲むのは最小限にして、甘口か辛
口かといった味を発見することを楽しみま
した。たった1つだけ私が苦手だったお酒
は、日本で作られた物でした。残りはカリフ
ォルニア産でした。その味については、興
味のない読者を飽きさせないように下記
に記しています。テイスティングを開催し
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たことでケイさんのワインが売れたので、私も
嬉しく思いました。
2時間のディナータイムテイスティングの手
伝いは終わり、ケイさんは、ふじのりんごワイ
ンの小さいボトルを持ち帰り用に包んでくれま
した。私が寝る前に日本のお猪口でそのワイ
ンを飲んだとき、鮮やかな楽しい思い出を思
い出させてくれるでしょう。外は土砂降りで、
酒の専門家のふりをした私のつつましい冒険
で私の足はへとへとでした。一日を終えたの
は夜の8時でした。素晴らしい日でした。
10月の酒とワインリスト
* 大関 辛口 イーストとは違う麹菌で作られた辛口吟醸
酒。芳醇、でも私はワインの方が好き。辛口
の酒はあまり好きではない。
* 鬼ころし 「悪魔ごろし」の意味。「なめらか」と書かれ
てあるが、私は他の酒より粗いと思う。もし聞
かれたら、ウイスキーの「ジャックダニエル」
を「クラウンロイヤル」と比べたようなものだろ
うと言える。これは唯一日本の京都で作られ
たものだ。初期の文献には「蛇を殺すほど強
い」とあった。
* 焼酎 プレミアム
醸造過程でアルコールを加えた辛口の酒
* 梅酒 チェリーとアーモンドの味のするとても美味し
い「すもものような」ワイン
* ハナフル-ツ酒 フルーツの香りがするとても素敵な、軽くて
なめらかなワイン。フルーツ味のワインはアメ
リカでも定番。私が飲んだフルーツワインは
柑橘類か他の果物(ぶどうのタンニンを除い
た)で作られていて、ずっと軽くなめらかで中
間の味覚のワインと似ている。アルコール含
有量が2倍で飲んだ人を酔わせるので注意
が必要。
* ライチ これは飲んでいない。お客さんが「奇抜で、ミ
ントの味のような」と
* 白桃 極上。女性に1番のお勧め。きわめて桃味
* ふじりんご
良好でとてもりんごっぽく軽い
* にごり酒 濾過されていないので、ミルクのように白っ
ぽく見える。高級品、においは軽く、よりお米
らしい味で甘い。男性、通の人向き。
* スターリングキャッスルレッド ぶどうとラズベリ-、チェリ-を混ぜたカリフォ
ルニアの赤ワイン。イタリア料理に合うキャン
ティやサングリアのような芳醇な味。
* スターリングキャッスルリースリング 夜用の私のお気に入り。柑橘や梨の香りがし
て素敵。持ち帰り用のベストセラ-。
訳:宮崎千代子(Chiyoko Miyazaki)