D09 14 歳、女性。アトピー性皮膚炎・夜尿症・腹痛

D09
14 歳、女性。アトピー性皮膚炎・夜尿症・腹痛
14 歳、女性(中学 3 年生)
。身長 160 ㎝、体重 50 ㎏。痩せて色白。弛緩した肉付きではな
く、しまった感じ。
<主訴>
アトピー性皮膚炎
両肘内側、顔面(眼周囲)
、背中の発赤・痒み。肘内側は局面・苔癬化・淡紅色、眼周囲は
赤く乾燥のため落屑あり。背中は小発赤が点在。いずれも痒みのため掻き崩すと表面に少
量のベトベトした浸出液が出る。夏に顕著な悪化あり。アレルギーは他にも花粉症あり
夜尿症
2/3 の失敗率。つまり、ひと月のうち約 20 日は失敗している。もらす尿は少量。一晩に一
回のみ。通年。
腹痛
臍の周囲の痛み。空腹時、疲れたとき、学校帰りなど発症するタイミングは不定。カイロ
を当てるとよいこともあるが効かない場合もある。
<併用薬>
ステロイド軟膏
<全身症状>
寒熱:冷え症
二便:大便:2~3 日/行。玄米食で良好
小便:1日 5~6 行。
飲食:食欲:平
飲水:平
全身:疲倦乏力(-)
、容易感冒(-)
睡眠:良好
心神;良好
汗:顔面・背中に自汗あり。手掌足心も発汗しやすい。黄汗あり。
頭:頭痛なし
胸腹:臍腹痛(上記)
目・耳・鼻:目赤・鼻閉しやすい。
経行:月経周期不定。月経痛あり。
面:面色は白く、少し上気して赤味を帯びる。
舌:舌質微紅、舌苔微白
<処方>
症状は多岐にわたる。このような場合、個々の症状を追いかけずに基本体質を正確に把握
し、それを治療することで道が開けることも多い。
この場合、望診上は痩せ型・色白・やや上気した顔色、それに加えて汗が出やすく、痛症
1
(頭痛・腹痛・四肢痛のいずれか)あり。これらより桂枝剤の適合と判断。臍腹痛および
便秘と夜尿は中空臓器の過緊張(虚労裏急)によるものと判断。そこで小建中湯を基本に
用いることにする。黄汗及びアトピー(以下AD)があることから黄耆が、更にそのアト
ピーが夏季に悪化することから苦参・荊芥が必要と判断。
処方 1)黄耆建中湯+消風散 14 日分投与。
処方 2)太乙膏
<結果>
ADの痒み(↓)
、ステロイド軟膏の使用量半分でコントロール可。ただし汗をかいた時は
痒み増悪(特に背中・おしり)
。夜尿失敗率 2/3 から 1/3 に改善。臍腹痛(-)。黄汗(+)
。
そこでかゆみ止めとして苦参・荊芥を増量する。
処方 2)黄耆建中湯+消風散+苦荊散 14 日分投与。
痒み横ばい。ただし、夜尿失敗率 2/14。
処方 3)黄耆建中湯+消風散+苦荊散 14 日分投与。
痒み(↓)
、夜尿失敗率 5/14。臍腹痛(-)
その後、処方 3)を継続服用し三か月後、三つの症状は略治状態。折を見て漸減。
2