とは何か? 生物のシミュレーション

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科学者は神のようになれるか
M.S.(ブルガリア)
教養学部
要旨:
シミュレーション技術の発展のおかげで、将来科学者は人間のシミュレーションができる
可能性が非常に高い。これは事実になったと言う前提に立って、それから、事実になった
前提に立って、人間のシミュレーションはどういう影響を与えるか、特に科学者は神の様
にならないのか、科学的や社会的な事実を解釈しながら検討してみた。
キーワード:シミュレーション、神、創造者、シミュレーション世界
1.初めに:人間をシミュレーションできるようになるまでの道
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シミュレーションとは何か?
まず、シミュレーション、特にコンピュターシミュレーションとは何かを見てみよう。簡
単に言えば、シミュレーションは実際に存在している物理的・性能的・社会的などのシス
テムの挙動をコンピュタープログラムに入れて、模擬することである。
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生物のシミュレーション
生物のシミュレーションをするのは複雑で、まだあまり進んでない。一例を挙げれば、熱
帯魚のシミュレーションがあり、魚はプログラムの中で自由に泳いだり、食物を探したり、
子供を出産したりこともできる。University of Southern California2000 年にサンショウ
ウオを作ったそうだ。コンピュタープログラムに存在しているサンショウウオは泳ぐこと
もできるし地面も歩けると言う。シミュレーションを使って動作、行動などの研究が行わ
れている。注意しておきたいのは、シミュレーションした生物は物質的な世界ではなく、
サイバースペースで存在していてることである。
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脳 シミュレーション
現在、化学者が人間の脳シミュレーションを目指して努力している。これを目指している
チームの一つは IBM and the Swiss Federal Institute of Technology in Lausanne であ
る。彼らは 2005 年6月 5 日にプロジェクトの発足をアナウンスした。しかし、脳のコンピ
ュターシミュレーションを作るのに障害がいくつもある。それは、主に二種類に分けられ
る。すなわち、現在の脳の機能・構造の不明;それから、コンピュターの強力の不足であ
る。
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脳 シミュレーションにある障害:
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1) 脳の複雑さ
簡単に説明したら、脳は中枢神経系の主要部であり、神経細胞、すなわちニューロンで、
構成されている。刺激を受けて興奮し、またほかの細胞に刺激を伝達するニューロンには
軸策と樹状突起が付属し、その突起の包みによって思考・記憶・思想などが行われている。
脳というのは複雑な機構であり、ニューロンの数は 1 兆も超えていて、その中のどの一つ
も周りのニューロンと7000以上の結合がある。科学的な詳細にわたらなくても、科学
は脳の構造をまだ完全に理解できない。当然、脳の研究が進まないと脳のシミュレーショ
ンは可能になる公算が少ない。
2) コンピュターの強力の不足
脳の多数のニューロンをコンピュタープログラムに乗せようとしたら、今なら存在してい
るスーパーコンピュターでもできないだろう。だから、コンピュター技術の進歩がもう一
つの条件になっている。
技術的な問題は科学技術の発展のおかげで将来克服するはずだと科学者は期待している。
生物学もサイバネチックスも発達が速度を増し、脳シミュレーションは可能になる時期は
だんだん近づくと言えよう。
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意識のシミュレーション
しかし、ある学者によると技術
的な障害がなくても、人間の脳の
完全無欠なシミュレーションが
作られるかどうか、疑問だそうで
ある。なぜかというと、私たちの
脳はニューロンの編集にしか過
ぎないものではなく、脳のシミュ
レーションは作られるようにな
っても、その脳は生物の意識を持
つかどうかは不確かというより
も、非常に疑わしい。意識という
のはただ機能のレベルではなく、
精神的な側面から見た脳の特徴
である。どちらかというと、意識
とは何かは説明さえ簡単にはで
きないので、脳の中の、どこに位
置しているのかを見つけてシミ
ュレーションするのは道理に合
わない。その上、意識は人工的に
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構成できるものではないかもしれない。仏教をはじめいろいろな宗教では意識は死を超え
て生き残るものであるとされる。さらに言えば、意識は物質的な性質とあまり関係ないと
われわれに大きい示唆を与える。つまり、意識とはとても微妙な問題なので、シミュレー
ションは絶対できないと広く信じられている。
しかし、逆に、意識はどこから始まるのかという際限のない討論は解決できないので、意
識は何にでも含まれているという前提もある。例えば、動物は意識を持っているか持たな
いのか誰も明確に定義することはできない。だから、脊椎動物から無脊椎動物・微生物に
かけて、デオキシリボ核酸までも意識を持つと推測する学者もいる。したがって、意識の
性質は人間に説明できないし、意識が生じるための条件も人知を超えたものだから、脳シ
ミュレーションの様に極めて精巧なコンピュタープログラムに意識が現れる可能性は高い
と学者は述べている。
しかし、脳シミュレーションはまだできてないので、シミュレーション脳に意識が生じる
か生じないかまだ確認されてない。けれども、シミュレーションはできても、シミュレー
ション人間は意識を持っているかを確認できなく、前記の疑問にけりをつける見込みはな
いだろう。
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人間のシミュレーション
脳は人体の中で一番複雑な部分になっている。だから、脳シミュレーションへの問題を克
服できるように技術が進んだら、今度、脳だけではなく、人間自身を全体的に創造できる
と思えばよい。コンピュターのラムもスピードも大分進歩したという条件で世界のシミュ
レーションモデルも作れるだろう。コンピュター世界に存在しているシミュレーション人
間は私たち本物とまったく同じように世界を意識して、プゴグラマーによって配置された
限界を通してある意味自由に生活ができるとは言える。
2.神:宗教的な説明
地
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宗教の広がり
宗教
人数
位
世界の人口に占め
る割合
広辞苑を引いたら宗教
1
キリスト教
20 億
33%
の定義は次のようにな
2
イスラム教
13 億
22%
3
ヒンドゥー教
9億
15%
4
仏教
3 億 6000 万
6%
5
儒教・道教
2 億 3000 万
4%
6
無宗教
8 億 5000 万
15%
る:
「神または何らかの超
越的絶対者、あるいは卑
属のものからの分離され
禁忌された神聖なものに
関する信仰・行事。また、
それらの連関的体系。」
世界の中には様々の宗教が存在してあり、信者数は、上にある図のように人々に信仰さ
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れている。一般にキリスト教、イスラム教、仏教は世界宗教とよばれ、人種や民族、文化
圏の枠を超え広範な人々に広まっていて、世界の人口の中で 76%を越えている。
その理由で、上記の宗教の中で、神のない仏教を除いた宗教における神の定義を見てみよ
う。
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神とは何か?
1) アブラハムの宗教における考え方:
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教というアブラハムの宗教は、同一の神を信じている。
それぞれの聖典、即ち旧約聖書・新約聖書・クルアーンは旧約聖書を経典とし、神とは人
間の及ばない知識・力や運命と関連づけられる存在で、人間を含む生命やこの世界そのも
のなどを創り出した存在であるとされることもある。全ての物事の創造行為を行った者と
して、いわゆる造物主、想定される神である。
2)ヒンドゥー教における考え方:
において、神はベーダの神々と共通するものが多いが、中でも三人の神、創造神のブラフ
マー、繁栄神のヴィシュヌ、破壊神のシヴァが本来は一体であるとする考えがある。主要
神格とするその三人と同一するブラフマン神は宇宙の源である。神聖な知性として見られ、
個々人の魂を含む全ての存在に浸透している。その上、多くのヒンドゥー教の神々は一つ
のブラフマンの現われである。つまり、ヒンドゥー教でも、神が人類や世界などを創造し
たと見られる。
Michelangelo, The Creation of Adam
3.科学者は神のようになれるか
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もし脳や人間のシミュレーション・世界のシミュレーションができたら、科学者はシミュ
レーションの生物にとっての神にならないか?
上述の神の定義によるとユダヤ教・キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教における神様
は:1)創造者、2)超越絶対者である。このような想定にあわせて、科学者にも神とい
う用語を適用できるか見てみよう。
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創造者
シミュレーションが可能になったら、コンピュタープログラーマーはこのシミュレーショ
ン世界の創造者であるのは当たり前のことである。しかし、シミュレーションに存在して
いる生物の目から見たら、この事実は明確ではないはずだ。現在私たち自身にとって、人
間を創造した神の性質は知りうる事柄ではないので、同様に、科学者が創造したシミュレ
ーション人間は自分の創造者、即ち本物の人間の私たち、の性質を理解できないと思われ
る。
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超越絶対者
この観念に含まれた意味は、神は全能で、遍在する、人間に想像もできない知識・威力を
持ってる存在である。当然、このような神の性質は人間の目から見たものである。他方、
シミュレーション人間の目から見た人間の性質はどう見られるのか?何よりもまず、人間
によって創造された生命なので、シミュレーション人間の知識・力などは人間と比較でき
ず、私たちのほうが超越した存在である。その上、シミュレーション人間が居住するプロ
グラムは人間に構築されたものなので、無論、人間は環境に自由に変更したり、かってに
シミュレーション人間の生活に干渉したりすることもできるから、遍在している用に唯一
最高の存在の絶対者としてシミュレーション人間に見られるのは当たり前だろう。
論理上の推論では、もし脳シミュレーション、または、人間のシミュレーションができた
ら、もしこのシミュレーション人間が私たちのように知識を持って、プログラムの制限以
内に存在することが認められたら、人間はシミュレーション人間に対して神のような役割
を果たしていると言っても良い。
けれども、このような推論はまた新しい推論を引き起こす。
4.人間シミュレーションに基づいてさらに加わった推論
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私たちの世界はシミュレーションではないか?
もし学者に世界シミュレーションができたら、自然に次のような質問が出されるだろう。
つまり、「従って、私の世界もシミュレーションではないか。」おそらく肯定の答えが来る
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だろう。信じ難しい観念であるが、 Nick Bostron, Hilary
Putnam など多くの学者は世
界の原理について熟慮して、私たちの世界はシミュレーションだという可能性が非常に高
いとする。確かに、宗教上の教義によると、
世界や人間などは神に創造された。つまり、
誰かが故意に私たちを創造したと断言する。
この誰かは学者みたいな存在であり、存在し
た世界は実際にシミュレーション世界である
とすれば、宗教が言っているのとほとんど矛
盾しない。言い換えれば、神様というのは私
たちを創った超越の宇宙人文明の科学者みた
いな存在ではないだろうか。
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造物主の神に対しての推測
造物主について数えられないほど疑問が出て
くる。例えば:
―どのぐらい私たちを超越するのか?知識に
制限があるのか?というのは、シミュレーシ
ョン人間にとって、私たちは超越絶対者であ
るが、周知の事実、人間の能力は無制限ではない。
―実物の世界は私たちの世界と違うか?
―どうしてシミュレーションを創ったのか?
―いつまで私たちの世界お支えるのか?等
- 我々の創造者もシミュレーション人間ではないか?その場合、誰が私たちの創造者を創
ったのか?従って,シミュレーション世界はいくつぐらいあるのか?
— 他のシミュレーション世界がいると言う前提に立って、我々の世界と関係あるか,それ
からどんな関係なのか?他のシミュレーション世界と連絡できるか?
— 人間の創造者は私たちと同様にシミュレーションだったら,神は誰に創られたかと言う
疑問が残っている。どこかで終わりがあり,最初のシミュレーションを創造した存在がい
るはずだ。しかし,その超越絶対者は私たちが存在するのを知っているか?等
5.結論:私の意見:
人間のシミュレーションが可能になったら、科学者は我々を創造した神のようになるのは
当然なのでると思う。しかし、シミュレーションができたら、我々の世界もシミュレーシ
ョン世界だと言う可能性が非常に高くなる。このような推測に従い、何となく人生は価値
を失うように感じさせないだろうか。人間は本物ではなく、目的のないゲーム等として創
造されたと思ったら生活の視点がかわり,多くの人々は実際に真面目ではなくなり,ゲー
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ムにようにギャンブルの生活し始めがちである。
けれども、我々の世界はシミュレーションだっても、ではなくても、それは日常生活に影
響を及ばないと思う。どうしてかと言うと,まず,人間はシミュレーションだと言う前提
は確認できないから。それから,世界はシミュレーションだっても、目的のない世界では
なく、今と同じように、誰でも自分の目的を見つけて生活をしなければならないからであ
る。
*2 頁の写真は見えるために紫に染めたニューロン
参考文献:
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Simulated Reality: http://en.wikipedia.org/wiki/Simulated_reality
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“ Are you living in a computer simulation”, Nick Bostrom, Department of
Philosophy, Oxford University
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Brain Simulation: http://www.cybernetics.demon.co.uk/brainsim.html
z
BMI – Brain Mind Institute - http://bluebrainproject.epfl.ch/
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New Scientist on-line magazine:
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn2701
http://www.newscientisttech.com/channel/tech/mg18625036.100.html
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Are we living in a simulated reaity ?
http://novaspivack.typepad.com/nova_spivacks_weblog/2003/08/are_we_living_i.html
z
”What we still don't know.", Sir Martin Rees:
http://www.channel4.com/science/microsites/W/what_we_still_dont_know/arewereal.h
tml
z
“Computable
Universes
and
Algorithmic
Theory
Schmidhuber's
http://www.idsia.ch/~juergen/computeruniverse.html
of
Everything”,
Jürgen