『葉っぱのフレディ』で、生命を尊重する心を育む

5
『葉っぱのフレディ』で、生命を尊重する心を育む
(5年)
(レオ・バスカーリア作 童話屋)
《 ね ら い 自 分 た ち の 生 活 の 中 に あ っ た 、「 命 の 活 躍 」
を見いだすことによって生命を尊重する態度を養う》
3 − (2 )
( 1)
資料のあらすじ
葉っぱのフレディは、冬になって、自分が落葉しなければならなくな
っ た こ と を 知 る 。そ こ で 、自 分 自 身 が 今 ま で 生 き て き た 意 味 を 問 い 返 す 。
夏には、人間たちに木陰を作ってあげたり、秋には、鮮やかに紅葉して
みんなの目を楽しませたりしたことなど。自分が活躍することで楽しさ
や充実感を味わえたことや、落葉してからも木に自分の命が受け継がれ
ることに気づいて、これまでの生涯を納得していくという話である。
子どもたちが日常生活の中で、働くことに汗したり、勉強や遊びに熱
中している自分自身を振り返り、生命の尊さを実感できる資料である。
( 2)
指導のポイント
ポイント 1(主題のとらえ方)
生命尊重の授業といえば、人間や動植物の死を扱うことによって、自
らの生命を大事にしていこうとする指導になりがちである。大部分の子
どもたちにとっては身近でなく、実感を持った学習へと発展していかな
い。そこで、この授業では、生きることによって楽しさが生まれ、周り
の も の と の 和 や か な 関 わ り 合 い も 生 ま れ て い く こ と 。 そ こ に は 、「 命 の
活躍」がある。命の活躍、頑張りといったものの見方に気づかせること
によって、生命を大切にする心の育ちを願いたい。
ポイント
活動
活動
活動
2(活動の位置づけ)
1
・ 日 常 生 活 を 題 材 に 、子 ど も た ち に 俳 句 を 創 作 さ せ 、「 命 」
2
を感じるという視点で並べ替えさせていく。 (導入)
・自分の顔写真入りのシートに、自分の「命の活躍」とい
3
う視点で、コメントを書き添える
(展開後段)
・資料で学んだ新しい視点で、再度、俳句を並べ替えてみ
る
(終末)
( 3) 指 導 の 実 際
始 業 の あ い さ つ も そ こ そ こ に 、「 命 は ・ ・ ・ 」 に 続 く 言 葉 を 考 え さ せ た 。 数 名 の 子
どもたちに指名しながら答えさせていく。子どもたちは、
【大事】 【誰もが持っている】
【世界で一番大事】 【一つ】
などと、答え始めた。命に対する5年生なりの認識であろう。そこで、事前に作らせ
て お い た 俳 句 を 提 示 し た 。( 季 語 な ど の 制 約 は な く 、 子 ど も た ち の 日 常 の 場 面 を 題 材
に自由に作らせたもので、特に「命」をテーマにしてはいない)
6 つ の 俳 句 を 、「 命 を 感 じ る 」 と い う 視 点 で 、 三 段 階 に 並 べ て い っ た 。
発問・指示
過程
T
命は?
準
備
C 一つ
C 誰もが持っている
○命についての子どもたちの一般 子 ど も
導
入
C
教師の支援と児童の反応
大事
①飼っていた大切な犬死んじ
ゃった
②友達と外に飛び出す昼休み
的な認識を出させた後、事前に た ち が
作らせておいた俳句6つを紹介 作 っ た
する
俳句
③サッカーでリフティングや
り 16 回
④休み時間うえちゃんとネタ
さがし
⑤私の夢かなえるために勉強
する
⑥草花に話しかけると風そよ
ぐ
T
6 つ の 俳 句 を「 命 を 感 じ る 」 ○ 6 つ の 俳 句 を 「 命 を 感 じ る 」 と
というものから順に並べて
いう視点で順に並べ替えさる
みよう (活動1)
T
前 に 出 て 自 由 に 並 べ て ご ら ○子どもたちが並べ替えた順番
ん
強く感じる ①飼っていた・・
⑥草花に・・
感じる
⑤私の夢・・
③サッカーで・・
感じない
④休み時間・・
②友達と・・
導 入 で の 活 動 が 一 段 落 し た と こ ろ で 、 B G M を か け な が ら 、『 葉 っ ぱ の フ レ デ ィ 』
を朗読し、資料の世界へと入っていった。
T
命のよさは、どんなところ C
にありますか
C
C
展
開
前
C
みんなを生かしてくれる
楽しさを味わわせてくれる
命はつながっている
BGM
挿
絵
生きる楽しさを周りに広げて
いくところ
段
T
生活の中で、自分の命が活
躍してるのはどんな時です
か
展
開 T
後
段
シートに書き込んでみてく
ださい (活動2)
シート
展 開 後 段 で は 、 資 料 で 学 ん だ 、 新 し い 見 方 で 、「 自 分 の 命 の 活 躍 」 に つ い て 振 り 返
らせた。
T
生活の中で、自分の命が活躍しているのはどんな時ですか
C
C
C
進んで勉強を頑張っているとき
部活を一生懸命しているとき
友だちと仲良く遊んでいるとき
C
C
家の仕事の手伝いをしているとき
みんなを笑わせるために、ネタ探しをしているとき
子 ど も た ち は 、そ れ ぞ れ の 振 り 返 り を 、自 分 の 顔 写 真 入 り の シ ー ト に 書 き 込 ん で い た 。
終 末 で は 、「 命 の 活 躍 」 と い う 視 点 か ら 、 あ ら た め て 導 入 で 使 用 し た 俳 句 を 見 直 す
という活動を行った。
【どの俳句にも命の活躍がある】
【すべて上に上げた方がいい】
といった意見が出され、子どもたちの手で黒板の上の方に横一列に貼り直されていっ
た。
T
あらためて、俳句を見てど C
うですか(活動3)
命が活躍しているのはどれも
同じだと思う
終 T
順序を変えてみたいものが C
ありますか
全部、命が活躍しているから
上にした方がいい
末 T
「命」に対する見方がずい
ぶん変わったね。
( 4)
考
俳
句
察
「命は大切なもの」といった一面的な見方を広げたい。その思いでこの授業に取り
組 ん だ 。『 葉 っ ぱ の フ レ デ ィ 』 と い う 絵 本 を 資 料 と し て 使 用 し た こ と 。 ま た 、 俳 句 を
使った活動を行ったことで、子どもたちの日常生活の中から「命の尊さ」に迫ること
ができた。
授業後のある児童の感想である。
「生命を受けた時から旅が始まる」
「命は楽しさをつくり出す」
「5の2にいることは幸せなことだ」と今の自分を見つめ直している。まさに「命」
の見方が広がった感想だといえる。