No.106 - 東京都社会福祉協議会

2014 年 12 月発行
か が や き
No.106
竹ノ塚福祉園(幸運だるまちゃん)
町田美術工芸館 ( 作業風景)
町田美術工芸館 ( 施設外観)
INDEX
第9回東京大集会………………………………2
最近の児童施設分科会の動向と今後…………8
お祭り紹介………………………………………4
利用者支援研究会 学習会「摂食嚥下・ソフト食」研修報告……9
強度行動障害研修、今後に向けての抱負……5
リレーコラム「神様に最も近い人たち」
… ……10
施設紹介「竹の塚福祉園」
… ……………………6
編集後記…………………………………………10
施設紹介「町田市美術工芸館」
… ………………7
●発行者 知的発達障害部会 部会長 山下 望 ●編集 知的発達障害部会 広報委員会
●発行所 〒 162-8953 東京都新宿区神楽河岸 1-1 TEL 03-3268-7174 FAX 03-3268-0635
●東社協ホームページ(http://www.tcsw.tvac.or.jp/)からもご覧いただけます。
第 9 回 東京大集会
「意思決定支援に基づいた暮らしの確保」
○日 時 平成 26 年 9 月 8 日
(月)12:00 ~ 16:00
○会 場 文京学院大学仁愛ホール
今回は利用者、家族、施設職員が参加しやすい
むところを決められないのか、自分の住むところ
ように平日に開催した。会場には昨年以上に沢山
は自分で決めたいという気持ち、地域の中での暮
の参加者が集まった。
らしにくさ、制度の中での不便さがあり困ったと
はじめに東京大集会実行委員長の山下望氏(東
きには助けてほしいという本音を、勇気を持って
社協知的発達障害部会部会長)より大会挨拶と趣
発表された。最後に日本ダウン症協会石丸研氏よ
旨が説明された。続いて柴田洋弥氏(東京都発達
り自己紹介・仕事紹介があり、仕事で得た収入で
障害支援協会政策顧問)より「意思決定支援に基
購入する楽しみやグループホームでの暮らしを紹
づいた暮らしの確保」
をテーマに講演がなされた。
介。介護者とのかかわり方や将来の夢など生き生
平成18年の第1回東京大集会は自立支援法に対
きと語った。発表されたお一人お一人が今の社会
する疑問から始まった。平成22年の大集会から
への疑問や生き生きとした生活の様子など、思い
は意思決定支援の大切さを訴え、それをきっかけ
を込めた語りに私たちも心強く感じられ、また後
に知的障害者の権利を見直す制度改革が訴えられ
へ続く方々への力強いアドバイスになった。
るようになってきた。親亡き後の住まい問題に限
次に柴田氏をコーディネーターに各議員や障害
らず都内には暮らしの場が足りないなか、入所施
者団体の代表者を交えた意見発表がされた。発言
設で虐待等が発覚している。施設運営や経営者側
順に自由民主党都議会議員野島善司氏。今後は社
の考え方等に課題がある。都内の施設が足りない
会モデルとして障害者支援区分を考えていくこと
問題は虐待さえも解決できない深刻な問題になっ
が望ましく、また障害者差別禁止条例については
てきていると提起された。また成年後見制度にも
国の方向性を見定めてから各自治体で対応してい
落とし穴があり、この制度で代理権を中心とした
き、実効性の高い条例が作られなければならない
支援をする後見類型を利用してしまうと当事者が
とのこと。公明党都議会議員中山信行氏。東京の
権利を行使する機会が減ってしまう恐れがある。
特性である土地取得が厳しく入所施設の作りにく
保佐類型、補助類型の利用も願うがまだまだ課題
さがハード面の課題であり、ソフト面では虐待防
が残っていることをあげられた。
止や意思決定支援の実現のためにも人材確保や質
次に当事者の方たちからの意見表明がされた。
の向上が必要である。知的障害の分野においても
まず東京都知的発達障害者育成会本人部会ゆうあ
地域包括ケアの視点で地域の状態を把握すること
い会運営委員田口麻弥子氏から、
「わたしのくら
が重要である。日本共産党都議会議員和泉なおみ
し」と題しグループホームでの生活と仕事につい
氏。都の予算について都と懇談を設けている、住
て語られた。体調について自己管理をしているこ
まいの確保・基盤については数値目標が曖昧で足
と、将来は働いている地域での生活を望んでおり、
支えられている地域の中で、親が高齢になっても
自分自身自立をして生活をしていきたいという力
強い発表がされた。次に東社協本人部会委員代表
棚網友美氏・中田佳恵氏からは今後のくらしにつ
いて語られた。一人暮らしやグループホームで暮
らしたいが希望の場所に行けない。なぜ自分で住
りないのが現状である、運営が困難なところも多
入れを断られる
く、都独自の加算引きあげが本来の形ではないか。
ケ ー ス が あ る。
またサービス等利用計画の相談支援の制度につい
気軽に相談でき
ての整備の必要性も表明した。民主党都議会議員
サポートしても
斉藤あつし氏。相談支援事業について単価が低く
らえるシステム
事業所が厳しい状況がある、障害者の意思決定に
が必要。③支援
ついて重く受け止められていないのではないか、
者の確保ために
インフラ整備では福祉事業も一緒に組み込まれて
も福祉職員の給与水準引き上げが必要との表明を
いくことが大事で、障害者福祉を全体の意識の中
された。最後は日本ダウン症協会事務所相談員明
に入れていくことが大切である。
知恵氏。ダウン症協会では、ひとりの人間にダウ
ン症という症状があるというだけの事なので、
「ダ
ウン症の人」という呼び方から「ダウン症のある
人」へと呼び方を変えたことにふれた上で、「暮
らしたいところで暮らせる支援を」をテーマとし
た。障害が軽度の方は、年金等の収入が少なく工
賃を含めてもぎりぎりの生活を余儀なくされてい
る現状があり、人として暮らしたいところで暮ら
せるような支援を訴えた。
各団体の代表から意見表明がされた。東京都知
意見発表の部のまとめとして柴田氏より各関係
的障害者育成会副理事長原木慶子氏。
「どこで・
者の方々への謝辞とともに、権利を侵害せず、意
誰と・どんな暮らしをするのか」
。
暮らしを考える。
思決定支援を遂行できるような成年後見制度に変
これは等しく平等であり、
権利である。過去に
「こ
えていく必要性と、一人ひとりがそれぞれにあっ
の子には言ってもわからない」
という時代があり、
た暮らしができるような法整備、設備等の環境整
躾と言う体罰が行われていたり、家庭から外には
備をしていく必要があると語られた。
出さないという歴史もあった。現在では虐待防止
そして最後に各団体の代表、当事者の方たちが
法が施行され、差別解消法の法整備の中で意思決
登壇し、東京施保連常任代表幹事、白土一郎氏よ
定支援が脚光を浴びており、そのための相談支援
り大会アピール文が読み上げられ拍手をもって採
者の確保が重要である。東京都知的障害児・者入
択された。東京都知的障害者育成会理事長上原明
所施設保護者会連絡協議会常任幹事真名子保則
子氏より、地域に住む障害者の理解がこれからは
氏。「人間らしく住みたい・住まわせたい」をテー
必要になってくる。また地域の中で親は何ができ
マに諸障害者関連法や福祉環境の整備がされてい
るのか、これからは障害のある人もない人も住み
る中、施設利用者に対する重大な権利侵害が後を
やすい街を作っていく必要があると、これからの
絶たない。障害者権利条約以前に憲法では好きな
期待をこめた閉会の挨拶がされ第9回の東京大集
場所に住む権利が保障されているにもかかわら
会を終えた。
ず、守られていない実態が依然としてあることに
ついて例をあげて訴え、誰もが人間らしく命を全
うできる仕組みつくりに英知を集結することを
怠ってはならないと表明された。NPO 法人東京
都自閉症協会成人期プロジェクト運営委員田畑昭
江氏。「障害者一人ひとりの暮らしの場を安心で
きるものに」をテーマ。①居住の場の整備。一人
ひとりの状況にあった場所で納得した生活ができ
る環境つくりを本人と家族の高齢化のためにも早
急に必要。②サービスを受けたくても利用の受け
お祭り紹介
滝乃川学園
「納涼祭」
今年も、毎年恒例の納涼祭が、7月25日に滝
乃川学園の園内で行われました。当日は好天に恵
まれ、焼きそば、フランクフルト、焼き鳥のにお
いと太鼓や音楽に誘われて、たくさんの利用者が
お祭り気分に繰り出しました。地域からは、踊り
の会やアマチュアバンドの方の応援もいただき、
時折、利用者の歌声も混じって、
ワクワクが伝わっ
てきます。縁日風の食べ物に舌鼓を打ち、
利用者、
職員、保護者、近所の子供たちなど、思い思いに
楽しんでいました。
そして、お祭りといえば、お神輿。今年も生活
介護の活動で、木工グループがお手製のお神輿を
作りました。日も落ちて暗くなり、お祭りの提灯
に照らされて、笛の音と共にお神輿が練り歩きま
した。額に汗してわっしょい、わっしょい。納涼
祭の終わりを惜しむ行進でした。
社会福祉法人愛隣会 あゆみ園・目黒恵風寮
「夏祭り」
8月30日土曜日、社会福祉法人愛隣会のいく
つかある施設の中の知的障害者支援をしているあ
ゆみ園と目黒恵風寮による合同の夏祭りが催され
ました。通所施設のあゆみ園が例年催していた行
事に一昨年より入所施設の目黒恵風寮が参加する
ようになり今年は3回目となりました。
今年も合わせて130名の利用者とそのご家族、
法人他施設の利用者、地域住民など多くの方たち
の参加で行われた夏祭り。例年天候に左右される
ことが多く、今年も天候が不順な日が続いている
中での開催となりましたが、幸い雨も午前にはあ
がり開催できました。スタートは毎年恒例となっ
ている近隣高校のチアリーディング部による演技
披露。盆踊りや音楽ライブ、多くの模擬店やゲー
ムコーナー。そして取りを飾る花火大会。短い時
間でしたが多くのボランティアの協力により利用
者の方たちに楽しんでいただけたと思っていま
す。
「強度行動障害研修、今後に向けての抱負」
社会福祉法人 睦月会西東京市生活介護事業所 くろーばー
知的発達部会 強度行動障害支援指導者養成研修特別委員会 代表幹事
竹矢 恒
昨年度、東京都福祉保健局と社会福祉法人正夢
さて、
強度行動障害における支援で大切な点は、
の会の主催で発達障害者相談支援研修と題し、強
「行動」を一致させることではなく、
「本質」を共
度行動障害に関する研修が実施されました。この
有することであると思います。強度行動障害に関
研修は、今年度、知的発達部会で実施予定の連続
する共通概念を共有してはじめて、チームとして
研修の基礎編という位置づけで実施されました。
の専門性が発揮されるのだと思っています。強度
一方、平成25年2月に厚生労働省より発表され
行動障害支援者養成基礎研修の中では、共通の支
た「強度行動障害を有する者等に対する支援者の
援の6つの枠組みが提起されています。これは、
人材育成について」の中で、今後、都道府県地域
強度行動障害を支援する上での本質に当たる部分
生活支援事業において研修事業を実施していくこ
であると思うのでご紹介したいと思います。①構
とが提言されています。
造化された環境②医療との連携③リラックスでき
平成24年10月1日に障害者虐待防止法が施行
る低刺激な環境④一貫した支援の出来るチーム支
され、障害者を虐待から守る体制が保障されまし
援⑤ひとりでできる活動⑥地域で継続的に生活出
た。同時に施設にも公益通報が義務化されたこと
来る体制。今年度の連続研修には、この本質を参
により、今まで明るみにされなかった様々の不利
加者全員で徹底的に共有して臨みたいと考えま
益が表面化してきた現状もあります。特に強度行
す。
動障害を対象とした虐待事件が多く報告され、虐
6回の連続研修の後、年度末に良好な結果をこ
待による死亡事件も報告されています。昨年の虐
の紙面で報告できることを楽しみにしています。
待死亡事件の報告書の中では、
「行動障害を抑え
また、来年度以降の強度行動障害研修がより良い
るために暴行に至った事」
「当該職員の専門性、
ものとして提供され、支援者のスキルの向上が達
スキルが低かった事」が指摘されました。このよ
成されることで、強度行動障害によって生活が困
うな背景から、専門的なスキルや技術の習得が必
窮されているすべての人々の QOL が向上される
要となり、行政レベルにおいても、現場レベルに
ことを切に願っております。
おいても強度行動障害に関する体系的な研修の運
営が開始されたというのが、昨今の状況です。
今年度、知的発達部会で実施する連続研修は、
都道府県地域生活支援事業における強度行動障害
支援者養成研修とは、別体系のもので、参加者が
持ち寄った支援困難事例を ABC-J 等の評価を通
じ、明確な根拠に基づいた支援を計画、実施しま
す。その経過を計6回の連続研修においてスー
パーバイズを受けるといった内容になっていま
す。
施設紹介
竹の塚福祉園
竹の塚福祉園について
幸運を呼ぶだるまちゃん
足立区にある竹の塚福祉園は、社会福祉法人あ
自主製品では「幸運だるまちゃん」を手がけて
だちの里が運営している施設で平成12年9月に開
います。平成22年度に生まれた「だるまちゃん」
所しました。法人本部と就労継続支援事業等もあ
も今年度はサッカー日本代表サムライブルーバー
る大型の複合施設です。
ジョン、夏にはスイカ Ver. や様々なフルーツに、
当施設では社会経験を楽しく学ぶ活動として、
10月にはハロウィン Ver. とバリエーション豊か
グループ活動、園外・宿泊活動、運動や経験を豊
なに変身しました
かにし利用者の可能性を引き出す活動として、各
この商品には「みんなに幸せを」という思いが
種クラブ活動、フラダンス、スイミング、音楽療
込められ、
日々利用者の皆さんが関わっています。
法等を行なっています。
真剣に作業として取り組まれている方、手を動か
すリハビリ的に関わる方と様々です。もちろん取
り組んでいる利用者の皆さん自身の幸せも含まれ
ています。1つ150円で絶賛発売中、今年の売り
上げは何に化けるか、楽しみに作っています。
意思決定支援への取り組み
現在、ご本人の意思をより反映できるような取
り組みを行っています。中でも、クラブ活動と宿
泊活動では、事前に職員がそれぞれの活動の魅力
をプレゼンテーションにまとめ伝えました。職員
施設写真
は、利用者の目線や表情から集中している様子、
楽しくてワクワクしている様子を見分け、ご本人
暑い日はアロハー
の意見としてご家族に伝えました。気を付けるこ
当施設では、「接遇美化」や「療法専門」等の
とはご本人とご家族の意見を区別して考えるかと
業務を設けています。職員は福祉人である前に社
いう点です。この点を踏まえて支援をすることで
会人です。研修やOJTでマナーを身につけ、支
意思決定支援につながると考えています。
援に活かします。また、スヌーズレン、i-pad 等
(藤波記)
を特徴ある支援を考えています。今回はその1つ
としてアロハデイを紹介します。
支援員はアロハシャツや甚平、半ズボン等、夏
の装いで支援をし、ヤシの木やハイビスカス等で
施設を飾りつけハワイアン音楽を流すことで暑い
季節を楽しみました。夏の時期に5~6回行って
おり、利用者と共に盛り上がっています。
アロハデイ
施設紹介
町田市美術工芸館
町田市美術工芸館のあゆみ
高めています。
町田市美術工芸館(以下 美術工芸館)は、就
「モノづくり」は、表彰メダル(全日本障害者・
労継続支援 B 型のサービスを提供しており、利用
高齢者フライングディスク競技大会)
、キャンド
者の年齢層は10代から80代までと幅広く、男性
ル、布製品、アクセサリー、季節製品とバラエティ
24名、女性34名の合計58名(定員60名)が現在
に富んだ製品作りを行っています。利用者の高齢
通所しています。
化を含め、様々な障がいの特性に合わせた作業が
施設の歴史はとても古く、始まりは昭和46年
提供できるよう工夫しています。
にまで遡ります。町田初の福祉作業所、
「町田福
祉作業所」として開設されました。昭和49年か
イベント・行事
らハイストーン(石膏)を使った干支づくりが開
お祭り好きの利用者が多いので、美術工芸館は
始され、初代である「白兎」は成人式の記念品と
1年間を通してイベント盛りだくさんです。特に
して配布されました。昭和50年に名称が「町田
お祭りは所属町内会の協力も得て、地域の活性化
市美術工芸館」と改められ、平成17年には指定
に貢献しています。その他にクラブ活動、スポー
管理制度により「社会福祉法人 まちだ育成会」
ツ大会、一泊旅行、施設内宿泊訓練など、書きき
の運営となりました。現在も干支づくりは継続さ
れないほどの行事・イベントがぎっしり詰め込ま
れており、新生児の出産祝い記念品として配布さ
れています。
れています。
町田市美術工芸館の今後のこと
利用者の毎日の作業
現在、美術工芸館は利用者の高齢化問題に直面
現在、美術工芸館の作業は「干支づくり」と「モ
しています。それは、ここが長く愛されてきたか
ノづくり」の大きく二つに分かれています。
らこそ起こる問題です。
生産活動を継続しながら、
「干支づくり」は昭和49年から続く美術工芸品づ
生活介護的なサービスも充実させていくと、どう
くりです。干支づくりの作業工程は、干支の型に
しても工賃の維持が困難となってしまいます。自
ハイストーンを流し込み成形する「型入れ」
、成
分の力でお金を稼ぐことの大切さと同時に、仕事
形された干支にドウサ液を塗る「ドウサ塗り」
、
以外の満足度も実感してもらえるよう今後のサー
仕上げの色を付ける「色塗り」の3工程あり、工
ビス向上を目指していきます。
程ごとに担当のご利用者が作業し、日々習熟度を
細かな作業も真剣に
なごやかに楽しくとりくみます
最近の児童施設分科会の動向と今後
児童施設分科会 代表幹事 内山 敏(友愛学園児童部)
平成24年の改正児童福祉法の施行から2年半
「障害児相談支援」
が経過しました。改めて見えてきた課題を2点に
障害児通所支援のサービス利用には平成27年
絞り、報告します。
3月までに計画相談の実施が前提となっていま
す。平成25年12月末現在で厚労省が示した進捗
「大人としての暮らしの場」
率では、児童福祉法分について東京都は14.7%
入所施設においては、昭和42年に児童福祉法
で47都道府県中、下から8番目でした。区市町
に設けられた在所延長の条項が廃止されました。
村によって取り組み状況に大きな差が生じている
このことにより入所施設は、完全な通過型施設と
ことが伝えられていますが、障害児相談支援事業
して位置づけられました。現に入所している大人
所の不足、計画相談の仕組みや運用自体に課題が
の方の福祉が損なわれないようにと平成30年3
あるためとも考えられます。また、いわゆるセル
月まで経過措置が執られることになりましたが、
フプランについての問題も指摘がされているとこ
東社協児童施設分科会の会員施設の多くは、数名
ろです。
の大人の方が継続入所されているのみという状況
児童の相談支援は、子どもの発達支援の側面と
にあります。
子育てを支える家族支援の側面が密接に重なりあ
昨年、都内民間施設4カ所と都外の独占施設2
います。児童施設分科会では、8月末を提出期限
カ所の計6施設の平成21年度から24年度までの
として会員である児童発達支援センターと児童発
4年間の入所児童の退所状況を調査しました。4
達支援事業所を対象に障害児相談支援に関する進
年間で148名の子どもたちが大人の生活の場へ巣
捗状況アンケート調査を実施しました。事業所数
立っていきました。このうち、41.2%にあたる
は20カ所程度ですが、半年後に迫った中での具
61名が他県の施設やグループホームに移って
体的状況や意見を取り上げ、結果を集約して実効
いったという現実があります。遠くは北海道であ
性ある計画相談が進められていくよう、11月に
り、福岡県でありといった状況にもあります。
東京都との意見交換の場を設けていただきまし
地域移行が昨今はキーワードになっています
た。
が、児童期に入所せざるを得なかった子どもたち
の地域は、生まれ育った地元であり、少なくとも
東京都内であろうと考えます。第9回東京大集会
は、意思決定支援に基づいた暮らしの確保をテー
マに開催されましたが、児童施設分科会としても
部会と一体となって都民である子どもたちが大人
になっても東京都で生活していけるように行政へ
の働きかけを継続していかなければと考えていま
す。
利用者支援研究会 学習会「摂食嚥下・ソフト食」研修報告
楽しく、美味しく 知的障害者に対する食事支援
~食べる機能の障害の着目点と対応~
栄養調理スタッフ会 代表幹事
社会福祉法人あだちの里 綾瀬ひまわり園
平成26年6月14日(土)全理連ビルにおいて
「摂食嚥下について」
研修を実施しました。
講師は、
障害児・者の摂食嚥下で著名な日本大学歯学部教
授植田耕一郎氏にお願い致しました。
摂食嚥下の研修は、今までにも多く取り組んで
きましたが、今回は知的障害児・者(以下、知的
障害者という。)の咀嚼嚥下機能や特徴的な食べ
方、咀嚼・嚥下機能の維持・増進するための考え
方などを中心とした内容をお話していただきまし
た。
知的障害者に対する食事支援は、個人差が大き
く、十人十色の支援方法があります。そのために
は、支援者として食事支援の大切さとその支援ス
キルを理解することが重要とのことです。
日本の障害者の推移は、少子高齢化が進み、介
護保険の対象者は増加しているにもかかわらず、
障害者は増加し、特に、知的障害者の増加が顕著
です。更に、医療の発展に伴い、障害者が脳卒中、
認知症、誤嚥性肺炎など高齢者に多くみられる疾
患になるケースが増加しています。
このような状況を踏まえた上、まず、摂食機能
のメカニズムについて学びました。摂食機能はそ
の人の本能ではなく、ご本人や支援者が機能を獲
得していくものとのことです。例として、オオカ
ミ少年のお話をされました。
「オオカミに育てら
れた子供が人間社会に戻り、何も食べられなかっ
たが、最終的には四つん這いで生肉を美味しそう
に食べた。」生育する過程において機能を獲得し
ていくということが分かります。つまり、段階を
踏んでいけばいつでも機能は獲得できるというこ
とです。
また、東京都リハビリテーション病院での長年
の取組みを紹介して下さいながら、摂食嚥下障害
に対する考え方や取り組む姿勢について学びまし
た。平均寿命が延び、病後の健康保持が大変重要
となり、「摂食嚥下」が注目されるようになりま
した。
丸山 峰子
植田氏は知的障害者と深く関わってこられたの
で、具体的な事例を挙げお話をしてくださり、大
変分かりやすい内容でした。特に、食事の視点に
捉われず、食事行為以外の行動・活動での変化を
見落とさないようにすることなど支援のあり方、
考え方の話は、印象に残りました。
「食事は、楽
しく・美味しく」が基本であり、支援者は、利用
者の方がこれしかできないではなく、これならで
きるとの視点を持ち、好きなことや夢中になるこ
とを支援に取り入れていくことが大切であるこ
と。
また、
丸飲みやリハビリテーションのアプロー
チでは、
「なぜそうするのかという理由」
を利用者・
職員・保護者の方々で話すことが大切であること
を学びました。更に、保護者と情報交換する際、
利用者が上手くできなかったことではなく、良
かったこと、出来たことを多く伝え、利用者の行
動を前向きに捉えていくことが大切であることを
学びました。
(ポジティブリポート)
」
最後になりますが、利用者の皆さまがいつまで
も慣れた施設で生活できるよう、様々な職種の職
員が協力し合い、
「この方は幸せなのか?」と問
いながら、常に利用者のことを考えていくことが
大切だと感じました。今後、ますます施設の中で
高齢化が進んでいき、摂食嚥下の知識が必要とさ
れます。今回の研修で学んだことを、利用者支援
に取り入れ生かしていきたいと思います。
Relay
Column
私の主張
神様に最も近い人たち
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社会福祉法人恩賜財団 東京都同胞援護会 指定障害者支援施設さやま園 園長 宮本 浩史
申し訳ないくらいのきっかけで、この仕事につい
全員がそうではない、現実には世渡り上手の方も
て、はや三十数年。崇高な志を持って入職してくる
いるという批判も、ここではあえて受けましょう。
新人に、後ろめたさを感じながら、細々と仕事を続
修道士ジネプロや古来の『福子伝説』として慈し
けています。
んだ例をあげる迄もなく、特別な力や不思議な存在
人生にはターニングポイントがあって、何かが大
であった彼ら。あながち、神様に近い人たちという
きなきっかけになるということがあります。私の場
見方も、アリなのかもしれません。
合はあるご父兄の言葉でした。正確な基礎知識も哲
時にカミサマは気まぐれで、へそを曲げ、私たち
学も持っていなかった当時、この言葉が私を変えま
を試します。無理難題をお示しになることは、カミ
した。
サマからの修行だと思うことにしています。でも、
「宮本さん私はね、この子たちは最も神様に近い
修行や鍛錬が足りないので、いまだにカミサマのお
人たちだと思っているんですよ。
」
気持ちに叶ってはいません。
話の前後は忘れましたが、衝撃を受けました。思
カミサマは、それでも私たちを暖かい笑顔で迎え
いもよらないこの言葉をうまく飲み込むのに、かな
てくれ、明日も来るかと聞いてくれます。ありがた
りの時間がかかりました。
いことです。
嘘をつかない、相手を騙さない、自分に正直など、
カミサマが私を支えているんだなと、改めて思い
純粋でまっすぐな利用者といると、自分のあざとさ
ました。
や計算高さが鼻につきます。
**次回は、澄水園 施設長 小貫 晴信 氏です**
編 集 後 記
秋も終わりにさしかかり、一日一日寒さが増してきます。紅葉前線も南下する季節になって
きました。この時期山に登ると、街で見る紅葉とはまた違った紅葉の凄さに目を見張ります。
きれいな紅葉になる条件の中に「昼夜の気温差が大きい」
「湿度が少なく乾燥している」とい
う必要条件があるそうです。他にも夏の日照条件等が必要なのだとか。山に名所があるのもそ
のせいなのですね。
気温差、乾燥と聞くとそろそろインフルエンザの流行を考えてしまうのが職業病・・。紅葉
狩りをゆっくり楽しむゆとりのある心を忘れず、今年の冬も乗り越えていきたいですね。
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