IMFファクトシート: 世界経済の安定性の促進に向けたIMFの取り組み

世界経済の安定性の促進に向けた IMF の取り組み
国際通貨基金(IMF)は、 安定性を促し危機への脆弱性を軽減するとともに持続的
成長と高い生活水準を促進する、経済・金融部門政策で加盟国に助言を行います。さ
らに、国際通貨制度や国際金融システムの健全性に影響する、世界経済の潮流や動向
を監視するとともに、各国の政策の地域的或いは国際的影響に関する加盟国間の対話
を促します。こうした「サーベイランス」活動に加え、IMF は加盟国の制度的能力の
強化に資する技術支援を行うとともに、国際収支上の危機に直面した際、加盟国によ
る調整を促すための資金を準備します。
世界経済の安定性が何故重要なのか。
経済の安定性の促進は、経済や金融の危機や、経済活動の著しい変化、高インフレ、外国
為替や金融市場の過剰なボラティリティを回避するための方法の一つです。不安定性は、
不確実性を高め、投資意欲の減退を引き起こし、経済成長を妨げ、さらに生活水準を損な
います。ダイナミックな市場経済は、ある程度のボラティリティと漸次的な構造的変化を
必然的に内包しています。生産性と雇用の拡大、そして持続可能な成長を通した生活水準
を改善させる経済の力を損なうことなく自国そして他の国や地域の不安定性を最小化する
ことが、政策当局の課題だといえます。
経済と金融の安定性は、一国のみならず多国間レベルの問題でもあります。最近の金融危
機が示すように、各国・地域の相互連関性が一段と高まっています。脆弱性は、部門や国
境を越えより容易に拡大する可能性があります。
IMF の役割
IMF は、サーベイランス(政策監視)、技術支援、および融資という主な機能を通し、健
全かつ適切な政策の実施で加盟国を支援しています。
サーベイランス: IMF に加盟した全ての国は、国際社会による経済政策と金融部門政策の
精査を受けるという義務に同意しています。IMF は国際通貨制度の監視とともに、加盟 188
カ国の経済・金融の情勢、さらにはその政策をモニターする責務及び権限を有しています。
このサーベイランスとして知られるプロセスは、世界レベル、国・地域レベルで行われま
す。IMF は、加盟国の政策を評価し、その国内や国際収支上の安定性に及ぼしかねないリ
スクを分析することで、加盟国の国内政策が自国の安定性を促進するかを検証します。ま
た必要な政策調整についても助言します。さらに、加盟国の政策が国内の安定性を促進す
る一方で世界経済の安定性にマイナスの影響を及ぼす可能性がある場合、代替政策も提案
します。
加盟国との協議
IMF は、加盟国の経済を通常年に一度行われる全加盟国を対象とした定期協議を通しモニ
タリングしています。経済と金融の状況および政策について IMF スタッフは、加盟国当局
に加え、多くの場合、民間部門、労働組合、学術界、市民社会の代表とも意見交換を行い
コミュニケーション局 ワシントン, D.C. 20431  電話 202-623-7300  ファックス 202-623-6278
ファクトシート URL: http://www.imf.org/external/np/exr/facts/globstab.htm
-2ます。IMF のスタッフは、リスクと脆弱性の検証を行い、財政、金融、金融部門、および
為替レート政策の、加盟国の国内および国際収支、そして世界の安定性への影響を評価し
ます。IMF は、 加盟国との経験を活かし、マクロ経済や金融、国際収支の安定性の促進に
向けた政策について助言を行います。
このような協議の枠組みは IMF 協定第 4 条に、そして最近では「統合されたサーベイラン
ス決定」に定められています。また、以下のような加盟国全体を対象としたイニシアティ
ブの内容が、協議に反映されます。

加盟国の危機に対する脆弱性の体系的な評価 のための作業

金融セクター評価プログラムでは、各国の金融部門の評価を行うとともに、リスク
や脆弱性への政策対応の組み立てを支えます。

基準と規範のイニシアティブは、世界銀行や他の組織との合同のイニシアティブで、
様々な政策分野において、国際的に認められた基準とグッド・プラクティス(良い
慣行)の規範の遵守状況を評価します。
より広範に状況を監視する
IMF は、世界および地域レベルの 情勢も密接にモニタリングします。
世界経済見通し、地域に関する報告書、財政モニター、および国際金融安定性報告書とい
った、 IMF の定期報告書は、世界・地域レベルのマクロ経済や金融の状況を分析していま
す。IMF は、その加盟国が世界に広がっていることから、加盟国の共通の懸念事項につい
て多国間協議を促進するとともに、安定性促進のために必要な諸政策に関する理解の共有
を進めるうえで適したポジションにあります。こういったなか、IMF は 20 カ国・地域先進
及び新興市場国・地域グループと連携し、G20 各国の政策枠組みと、世界経済の均衡ある
持続的な成長との整合性の評価を行っています。
世界危機を踏まえ、IMF はサーベイランスのマンデートのレビューを行いました。加盟国
内での或いは国境を越える金融部門のサーベイランスを向上させ、(波及効果報告書など
により)マクロ経済と金融の動向の相互連関性に対する理解の深化を図るとともに、これ
らに関する議論を広げるべく複数の改革を導入しました。
データ: 金融危機を踏まえ、IMF は加盟国や金融安定理事会をはじめとする他の組織と協
力し、世界の安定性に重要なデータのギャップの解決に努めています。
技術支援: IMF は、健全な経済政策の策定および実施能力の強化において、加盟国を支援
しています。財政、金融、為替レート政策、金融システムの規制と監督、統計システムや
法的枠組みなど、中核的な専門知識分野で助言や研修を行っています。
融資:最善の経済政策をもってしても、不安定性や危機を完全に根絶・回避することは不
可能です。加盟国が国際収支上の危機に陥った場合、IMF は金融支援を行い、根底的なマ
クロ経済上の問題を是正し、国内そして世界の経済の混乱を抑制するとともに、信認、安
定性、成長の回復に資する政策プログラムを支えることができます。IMF は、経済のファ
ンダメンタルズが健全な国に対し、危機予防の観点から予防的な信用枠も提供しています。
この情報は 2016 年 3 月現在のものです。
THIS INFORMATION IS CURRENT AS OF AUGUST 2011