社会不安障害(対人恐怖症)の認知行動療法 名古屋市立大学大学院医学

社会不安障害(対人恐怖症)の認知行動療法
名古屋市立大学大学院医学研究科
精神・認知・行動医学分野
古川壽亮
社会不安障害は、対人恐怖症、社会恐怖症とも言われます。他人に見られながら、何かの行
為をする状況、あるいは対人交流を持つ状況で、恥をかく、恥ずかしい思いをするのではな
いかと極度に恐れている状態を言います。正確な診断のためには、このような恐怖に加えて、
 本人はその恐怖が過剰である、または不合理であることを自覚している
 恐怖の対象となった社会状況は回避されるか、または、強い不安・苦痛を感じながら耐
え忍ばれる
 この恐怖や回避のために、社会活動が妨げられるか、本人が著しい苦痛を感じている
ことが必要です。
一般人口中の有病率は、調査によってだいぶ差がありますが、世界各国で 2%から 12%程度の
数字が報告されています。平均発症年齢は 10 台半ばで、「記憶にある限り」から遅くても 30
歳前半までに発症し、変動しながらも慢性に経過することが多い病気です。無治療の場合に
は 1 年後の寛解率は 10%、2 年後で 20%程度(うつ病ならばそれぞれ 70%、85%程度)しかあり
ません。
社会不安障害があると、当人の QOL(生活の質)が低下することは勿論、高等教育、結婚、仕
事といったさまざまな役割機能に障害が見られます。また、無治療で経過すると、うつ病や
アルコール依存を合併することがあります。
社会不安障害には薬物療法と精神療法、とりわけ認知行動療法が有効です。社会不安障害に
対する認知行動療法では、不安をコントロールし、自分に自信をつける考え方が出来るよう
に、練習してゆきます。
 社会不安障害では特に不安が高まったときに注意が過度に自分に集中してしまいがちで
す。そこで注意をコントロールする方法を練習します。
 社会不安障害の人は、
「人からどう思われるか」について、現実以上に過敏な考え方をす
る癖が付いています。あまり不安をあおらない考え方が出来るように、練習します。
 このような準備をした上で、実際にそれまで回避していた状況に段階を踏みながら立ち
向かって、不安感を克服することを学びます。
名古屋市立大学病院こころの医療センターでは、社会不安障害やパニック障害に対するグル
ープ認知行動療法を行っています。受診を希望される方は、代表 052-851-5511 までお電話を
いただき、治療の適否を含めてご相談させていただきますので、初診面接の予約を取ってく
ださい。