サプリメントから見た現代日本社会 - econ.keio.ac.jp

サプリメントから見た現代日本社会
20311257
経済学部3年7組
佐竹 和夫
2006.2.4
指導教授 鈴木晃仁
2
【要約】
サプリメントは「食品」であり、
「医薬品」とは異なり、予防医学として私た
ちの生活に深いかかわりを持っている。現在日本はサプリメントブームである。
その原因として、厚生労働省の定める制度・法律の改正による市場の拡大が考
えられる。サプリメントブームによって浮き彫りにされた問題として、私たち
の食に関する健康リスクの認識の低さがある。現代日本社会に生きる私たちの
サプリメント摂取リスクに対する認識を高め、クオリティオブライフを向上し
ていくべきである。
―目次―
I.
II.
はじめに
サプリメントとは
1. 語源・定義
2. 種類
3. 医薬品との違い
4. 必要性・有効性
5. 日米のサプリメントの位置づけ
III. 国内サプリメントブーム(国内サプリメント市場)の起因
1. 主要的起因
2. サプリメント市場の展開
3. 国民意識の変化
IV. サプリメントブームの問題・課題
1. 誇大広告
2. 企業のリスク説明不足
3. 過剰摂取
4. 医療現場での利用消極的
V.
まとめ −サプリメントブームから見た現代日本社会の考察―
VI. 資料
VII. 参考文献
3
【Ⅰ.はじめに】
今日、日本ではサプリメントが絶大なブームにある。薬局やコンビニエンス
ストアなどの店頭には多種多様なサプリメントが並び、雑誌にはサプリメント
の摂取を勧める特集が毎月のように掲載されている。サプリメントは低価格で
健康を維持・促進できるということが功を奏し、健康機能食品として老若男女
幅広い世代の間で発売以来人気を呼んでいる。しかし、このような「自分で自
分向きのサプリメントを選び、日々不足しがちな栄養を補う」という、
「健康を
自己管理する」時代はつい最近始まったもので、一昔前には予想できなかった
意識である。以下では、サプリメントの定義、必要性・有効性、サプリメント
ブームの起源。また、なぜ国内においてサプリメント市場が拡大したのか、急
成長を遂げたサプリメント市場に盲点は無いのか。最後には、そこから見えて
くる私たちの暮らす現代日本社会について考察したいと思う。
【Ⅱ.サプリメントとは】
(1)語源・定義
日本でいう「サプリメント」という言葉は、アメリカの「ダイエタリー・
サプリメント」
(Dietary Supplement)を略したもので、いわゆる「栄養補助
食品」あるいは「健康補助食品」といわれるものを指す。supplement という
英語をそのまま訳せば、追加とか補遺(もれているものを拾い補うこと)と
いう意味で、類語の complement という言葉が、不足や欠乏に関係なく追加
するのに対して、
「補充」の意味が含まれている。つまりダイエタリー・サプ
リメントとは、本来、日常の食事で不足する栄養分を補うもの、ということ
になる。1
(2)種類
サプリメントの種類は、目的別に大きく3つに分類される。
① ビタミン、ミネラル、ファイバー(食物繊維)、乳酸菌、プロテイン、
レチシン、EPA・DHA、コラーゲン、コンドロイチンなどの、栄養欠
損補充を目的とした「ベース・サプリメント」。
② イソフラボン、黒大豆、ローヤルゼリー、青汁、プロポリス、発芽玄
米、クロレラ、高麗ニンジン、アロエ、深海ザメエキス、ビール酵母
などの、健康維持・増進を目的とした「ヘルス・サプリメント」、
日本サプリメント協会 『サプリメント健康バイブル』、東京:小学館、2004年、12
頁。
1
4
③
イチョウ葉、エキナセア、トウガラシ、セントジョーンズワート、バ
レリアン、マリアアザミ、ノコギリヤシ、キャッツクロー、マカなど
改善目的の「オプショナル・サプリメント」がある。
(3)医薬品とサプリメントの違い
日本の法律では、人が口から摂取するものは「食品」か「医薬品」の
どちらかに分類される。
(4)サプリメントの必要性・有効性
現代社会で生きる私たちがサプリメントを摂取する必要性は大きく分
けて3つある。
① 現代人の食生活は、「カロリー過剰・微量栄養素不足」に陥っている。
私たち日本人の食生活は著しく欧米化している。戦後、欧米から入って
きた食品が私たちの食生活(食文化)に与えた影響は大きい。たとえば、
欧米から入ってきた食品として、ハンバーガーやフライドポテトなどのフ
ァーストフード、スナック菓子などがあり、全体的に高カロリーな食品が
多い。また、戦後、日本が高度経済成長を成し遂げる中で、勤務時間の延
長、昼夜問わない勤務などの普及に伴い、24 時間営業のコンビニエンスト
アや深夜営業を行う飲食店が増えた。それによって、カップラーメンなど
のインスタント食品を食べたり、深夜に食事をするという、高カロリーな
食習慣が根付いてしまった。このように私たちは昔に比べて高カロリーな
食事をしているが、それら食品は高いカロリーに見合っただけのビタミ
ン・ミネラルを含有していない。そのため、私たちの食生活は、「カロリ
ー過剰・微量栄養素不足」に陥っているのだ。ビタミンやミネラルなどの
栄養素が不足していると、カロリーの代謝がうまく行かず、余剰カロリー
が体脂肪となって体内に蓄積されてしまい、肥満や生活習慣病を引き起こ
す原因とされている。したがって、私たちは日ごろの食事に配慮するとと
もに、サプリメントなどの健康機能食品を摂取して不足しがちな栄養素を
補う必要があると言える。2
② 近ごろの食べ物は、栄養の力量が落ちている。
…調査の日本食品標準成分表によると、
「ニンジン 100g 中のビタミンの
含有量は、1950 年には 1 万 3500IU(国際単位)だが、30 年後の 82 年に
は 3 分の 1 の 4050IU にまで落ち込んでいる」ことが分かっている。3なぜ
日本サプリメント協会 『サプリメント健康バイブル』、東京:小学館、2004年、17
頁。
3日本サプリメント協会 『サプリメント健康バイブル』、東京:小学館、2004年、18
頁。
2
5
野菜の栄養素がこんなにも非力になってしまったのだろうか。出荷効率を
優先した化学肥料の使用や、見た目を良くするため色や形の品種改良、収
穫されてから食卓に乗るまでの時間が長いことや、店頭での販売期間を延
ばすため熟す前に果実や野菜を収穫・出荷してしまうことなどが、栄養価
を低下させる原因と考えられている。つまり、本来優先するべき栄養素の
充実・保持や食品の安全管理が軽視され、出荷効率や販売効率・売上げ利
益を優先した物流システムを構築した結果、食材の栄養価が失われてしま
ったのだ。したがって、私たちは野菜や果実を食べるだけでなく、サプリ
メントなどの健康機能食品で栄養素を補充する必要があると言える。
③ 劣悪な環境やストレスは、ビタミン・ミネラルをたくさん消費する。
今日、私たちは劣悪な環境下で生活している。地球の温暖化による紫外
線の影響・ダイオキシンや排気ガスなどの有害な環境に対し、私たちの身
体は有害物質を解毒し健康な身体を維持するために、多くの栄養素を必要
としている。また、解毒が必要な有害物質には、現代食品に多く含まれて
いる食品添加物もある。さらに、私たち日本人は、バブル崩壊後の長い不
況の中で、多くの将来への不安を抱え生活してきた。また、不況に伴い、
厳しい成果主義が浸透した労働環境下で働く私たちは、たくさんのストレ
スを抱え生活している。このように、劣悪な環境下で生活している私たち
の体内には、多くの有害物質やストレスが蓄積されていて、それらを解毒・
解消するのに、今まで以上の栄養素が必要となっている。4
(5)日米のサプリメントの位置づけの比較
アメリカ
日本
サプリメントの位置づけ
「食品」と「医薬品」の中間
「食品」
市場の規模
約2兆円規模
約 5669 億円規模(H15)
サプリメントに関する法律
栄養補助食品健康教育法 特定保健用食品制度(通
(DSHEA 法)
称、トクホ):1991年
製品ラベル・広告での「効 以前:情報開示不可
トクホに限り、記載可
果・効能」の記載可否
DSHEA 法施行後:科学的 ※細かい表現規則有り
論拠あれば、記載可
医療現場での利用
積極的
消極的
役割
予防(セルフメディケーショ 予防の意識高まりつつあ
ン)
る
参考資料:資料6
日本サプリメント協会 『サプリメント健康バイブル』、東京:小学館、2004年、19
頁。
4
6
【Ⅲ.国内サプリメントブームの起因】
(1)制度の確立・法の改正
厚生労働省は 1991 年特定保健用食品制度を導入した。この導入に至っ
た背景には、国民全体の医療費は年々増大し、その増加し続ける医療費
を抑えるためには、予防医学に力をいれる必要があった。つまり、予防
医学を国民に広める政策として健康を増進する法律を確立したと考えら
れる。
新しい制度ができたり、法律改正により新たに許認可が認められたり、
規制が緩和されたりしたことで、市場は拡大する。たとえば、改正道路
交通法(2005 年 6 月成立)により、違法駐車取り締まりの民間委託が可能に
なり、新たに民間企業が参入した。駐車違反を避けるため駐車場のニーズが
高まり、駐車場業界の競争が激しくなった。このように法律改正は市場に大き
く影響を与えるケースがある。
健康ブームを引き起こしたと考えられるものには、
①2001 年の特定保険機能食品に関する制度の確立、2003 年の食品安全基
本法、健康増進法の施行。
②健康基準になる新しい指標(BMI など)がつくられたことが挙げられる。
☆特定保険用食品制度(トクホ)とは☆
平成3年7月「栄養改善法施行規則の一部を改正する省令」(厚生省
令第41号)により導入された表示許可・承認の制度で、従来から栄養
改善法第12条及び第15条に基づく特別用途食品の一つとして定義づ
けられていたが、平成13年4月、保健機能食品制度の創設に伴って、
「食品衛生法施行規則等の一部を改正する省令」(厚生労働省令第43
号)により、新たに食品衛生法第7条に基づく安全性及び効果の審査が
行われることになった。5
(2)企業の市場参入
企業の市場参入理由はいくつかあるが、サプリメント市場への企業の
参入や市場の急成長の背景には、厚生労働省のお墨付きで新市場の拡大
に乗り出せる、という利点が最大の参入要因だった。糖尿病や心疾患な
どの生活習慣病やアレルギー体質など、現代病が大きな問題になるにつ
れ、機能性健康食品であるサプリメントが大いに注目されている。現代
財団法人日本健康・栄養食品協会 『特定保健用食品のガイド(入門編)』、東京:
(財)日本健康・栄養食品協会、2003年3頁。
5
7
病による医療費の増大に頭を痛める厚生労働省は、その効果の認定に積
極的な姿勢だ。実際、1991 年特定保健用食品制度が施行されて以来、今
日まで特定保健用食品の承認・許可品目数は着々と増加傾向にあること
が、厚生労働省のトクホ認可に対する積極的な姿勢を裏付けている。ま
た、今後の更なる市場拡大も期待できるとあることも、企業のサプリメ
ント市場参入を後押ししている。
つぎに、サプリメントの生産性や収益率を考えてみる。生産過程にお
いての利点・市場参入する上での利点・市場の拡大がもたらすものにつ
いて述べているドキュメントをここに引用する。
サプリメントの開発についてはノウハウが必要な半面、化学、生薬
成分が中心とあって原価率は低い。ヒット商品を生み出すことがで
きればかなりの利益が得られるとあって、取り組む企業の開発意欲
は盛んである。開発力では大手企業が有利だが、ノウハウや特許を
武器に、ベンチャー企業が急成長を遂げるケースも多くある。つま
り、成長期にあり確固とは市場が形成されていない業界なのだが、
それは開発に携わるエンジニアにとっても同じこと。技術力を武器
にホームランを狙いやすい分野といえる。また、サプリメント市場
が急拡大するにつれ、人材ニーズも着実に伸びてきている。リクナ
ビNEXTでは「サプリメント」「健康食品」「栄養」などをキーワ
ードに検索すると、求人情報を得ることができる。6
実際に、リクナビ NEXT とリクナビで「サプリメント」
「健康食品」の
2つのキーワードで検索してみた。この表から、サプリメント市場拡
大により、サプリメントに関する人材ニーズが生まれていることが分
かる。
「求人件数(H18.2.3 現在)」
サプリメント
健康食品
リクナビ NEXT
19 件
37 件
リクナビ
2件
133 件
(それぞれのサイトで検索し得た件数をもとに算出)
6
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03500.jsp?p=fjf051
8
以下に、企業の市場参入の理由を羅列する。
①生活習慣病の増加に伴い積極的に許可・承認していこうとする政府の姿勢
②生活習慣病予防に対する健康補助食品への高まるニーズ
③生産過程において、原価率が安いこと
④まだ市場が完全に確立されていないため、大手メーカーだけでなく、ノウハ
ウや技術を特許にベンチャー企業でも市場に参入し大きく成長できる可能性
があること
以上のような理由・利点が相まったことで、企業の積極的な市場参入がなされ
ている。
(3)国民意識の変化
BMI のような新しい指標ができ、健康基準が変わると、いままで肥満で
なかったひとが肥満に分類されてしまうといった事態が起こる。そうす
ると、国民の肥満に対する意識も変化する。たとえば、ダイエットをし
てやせなければといった、健康を維持もしくは改善するための自己対策
をしなければいけない感じを抱いてしまう。そして、健康を自己管理す
るという意識が増えてきた。
【Ⅳ.サプリメントブームの問題・課題】
健康補助食品に関する規制の緩和後、サプリメント市場は急成長し今後も堅
調に拡大し続けると期待されている一方で、急成長をしたが故に、サプリメン
トの安全確認や企業販売の規制、消費者に対する安全保持などの法的・制度的
整備が間に合っていない現状が見受けられる。その問題となっている具体例を
いくつか挙げる。
(1)誇大広告
「特定保健機能食品は健康の維持・増進の効果等に関連する「許可表示」
を謳うことが、厚生労働省より許可、承認された食品であり、その広告
にあっては、法令を遵守し、消費者に正確な情報を伝達することが当然
である」7とされているが、市販されているトクホの広告の中には、許可
表示を逸脱した表現や、効果について誇大な表現をしているものが数多
くあるのが現状だ。こうした誇大広告は、消費者にトクホの効果を誤認
7
財団法人日本健康・栄養食品協会 『特定保健用食品のあり方4』、東京:(財)
日本健康・栄養食品協会、2004年、61頁。
9
させてしまう可能性がある。
(2)リスク説明不足
消費者の健康の維持・促進よりも収益性を優先する企業は、トクホの
安全性や必要性ばかりを誇張し、トクホを服用する上での危険性や注意
点についての説明が不足しがちである。過剰な広告 実際の栄養バラン
スはそんなに悪くはない。しかし、企業は、現代社会が生み出した問題
をサプリメントがあたかも解決してくれるかのように宣伝している。
(3)過剰摂取
サプリメントを過剰摂取してしまい過剰症になる消費者が急増してい
る。原因は、消費者が自分の不足している栄養素を勝手に解釈し不必要
なトクホを服用してしまったり、健康に過敏になって規定されている量
以上のトクホを摂取することで、過剰摂取の状態に陥るとされている。
たとえば、特定健康機能食品は国が許可している成分とはいえ、場合に
よっては摂取することで、リスクが大きくなることもある。妊娠中にビ
タミン A を一定量以上摂取すると胎児の催奇形リスクが高まってしまう。
最近では女性ホルモンの働きに似たイソフラボンの一日の摂取量の上限
が新たに決められた。摂取しすぎると乳がんのリスクを逆に高めてしま
う恐れがあるからである。これは、トクホの専門家や医師などのアドバ
イスを受けることなしに気軽に購入できてしまうという販売方法が原因
と考えられる。
(4)偏った知識
自分の健康維持・促進に配慮し、
「食生活を見直し、サプリメントで日
ごろ不足しがちな栄養素を補う」という習慣は、私たちの生活意識に根
付こうとしている。しかしながら、
(3)で前述したように、専門家や医
師に相談することなくトクホが購入できてしまうという現状では、健康
を維持・促進できるどころか、健康を損ねてしまうという問題を引き起
こしかねない。
(5)医療現場での利用消極的
第Ⅱ章の「サプリメントとは」内の(5)
「日米のサプリメントの位置
づけ」で前述したとおり、日本はアメリカに比べて、医療現場でのサプ
リメントなどの健康補助食品の利用が消極的であることが分かっている。
国民の健康維持・促進を確実に行うには、医療現場においてサプリメン
トの必要性・効用性を認知してもらい、医学的治療と共に病気の予防手
段として積極的にサプリメントを利用するべきである。
10
【Ⅴ.まとめ】
現在の日本におけるサプリメントブームが起きた主要原因は、法律改正であ
ると考えられる。法律改正により、新たに許認可が認められたり、規制が緩和
されたりしたことで、市場が拡大した。企業は拡大した市場に消費者を引き込
むために、様々なメディアを通し新たなブームを作ってきたといえる。
忙しい現代社会にサプリメントは食品であるので、食べるだけでよく、手軽
であるので、忙しい現代人の自己健康管理の方法として普及してきている。サ
プリメントによる自己管理の対極として医療を受ける行為があるが、受動的で
あり、自分の健康をしっかり管理できている感は少ない。医療を受けるのは普
通、病気にかかってからが一般的であるが、サプリメントは予防医学としての
役割が大きい。自分で病気にかかるリスクを管理することは、他人に頼り面倒
を見てもらうことを嫌う世代の人たちにとって求められている。
サプリメントは好きなときに食べられるのでタイムコストがかからないとい
った利点がある。病院にいくと医療費もかかるが、時間もかかってしまう。日
本では、患者が病院を自由に選べるので、人気がある病院はいつも満員で、長
時間待たされてしまう。
過剰な広告 実際の栄養バランスはそんなに悪くはない。しかし、企業は、
現代社会が生み出した問題をサプリメントがあたかも解決してくれるかのよう
に宣伝している。
また、特定健康機能食品は国が許可している成分とはいえ、場合によっては
摂取することで、リスクが大きくなることもある。妊娠中にビタミン A を一定
量以上摂取すると胎児の催奇形リスクが高まってしまう。最近では女性ホルモ
ンの働きに似たイソフラボンの一日の摂取量の上限が新たに決められた。摂取
しすぎると乳がんのリスクを逆に高めてしまう恐れがあるからである。
サプリメントは私たちの病気にかかるリスクを減らし、より生き生きとした
生活が送れるようにし、クオリティオブライフを向上させてくれるといえる。
しかし、食べ、体内に取り込むことにはリスクがあることを良く認識した上で、
選択すべきである。私たちとって食べるという行為は極めて日常的であるがゆ
えに、BSE 問題のように、問題が表面化して初めてリスクを考える機会が生じる
可能性がある。
11
【Ⅵ.参考資料】
(資料1)
栄養バランスの推移
www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyu/report15/h15text2_3.pdf
(資料2)
推定市場規模の推移
年度
(億円)
1997
1314.5
1999
2269.3
2001
4120.6
2003
5668.8
参考資料:(財)日本健康・栄養食品協会
推定市場規模の推移(H13現在)
(億円)
6000
5668.8
5000
4120.6
4000
3000
2000
2269.3
1314.5
1000
0
1997
1999
2001
2003 (年度)
12
(資料3)
年度
表示許可・承認品目数の年次推移
品目数
1993
13
1994
23
1995
58
1996
78
1997
100
1998
126
1999
171
2000
222
2001
289
2002
329
2003
398
2004
475
2005
553
参考資料:(財)日本健康・栄養食品協会
表示許可・ 承認品目数の年次推移( H17.12現在)
(品目)
600
500
400
300
200
100
0
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
(年度)
13
(資料4)
国民医療費の推移
(百億
円)
H12
H13
H14
H15
178.13
178.26
174.92
171.82
高血圧
184.2
186.42
194.23
191.14
心筋梗塞
73.39
75.46
69.47
69.54
慢性気管支炎・肺気腫
18.45
18.72
18.31
19.02
肺扁平上皮がん・大腸がん
208.08
214.98
221.56
248.13
糖尿病
110.84
116.7
111.91
114.65
歯周病
255.69
260.41
258.75
253.75
その他
1985.4
2059.03
2045.92
2065.7
3014.18
3109.98
3095.07
3133.75
脳出血・脳梗塞
生活習慣 病
他
総額
国民医療費の推移(H15 年度)
脳出血・脳梗塞
心筋梗塞
肺扁平上皮がん・大腸がん
歯周病
高血圧
慢性気管支炎・肺気腫
糖尿病
その他医療費
参考資料:日本生活習慣病予防協会「国民医療費の概況」より算出
14
(資料5)
日本人の食事摂取基準概要(2005)
1.策定の目的
食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維
持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂
取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の
基準を示すものである。
2.使用期間
使用期間は、2005年4月(平成17年度)から2010年3月(平
成21年度)までの5年間とする。
3.策定方針
1)基本的考え方
食事摂取基準の策定にあたっては、科学的根拠に基づいた策定を行
うことを基本とし、国内外の学術論文並びに入手可能な学術資料を活
用することとした。
食事摂取基準は、3 つの基本的な考え方に基づいて策定されている。
(1)エネルギー及び栄養素の「真」の望ましい摂取量は個人によって
異なり、また個人内においても変動する。そのため、健康の維持・
増進と欠乏症予防にとって「真」の望ましい摂取量は測定するこ
とが非常に困難であるので、望ましい摂取量の算定においても、
活用においても、栄養学のみならず確率論的な考え方が必要であ
ること。
(2)生活習慣病の予防を特に重視し、このことに対応するために、
「摂
取量の範囲」を示し、その範囲に摂取量がある場合には生活習慣
病のリスクが低いとする考え方を導入すること。
(3)それ以上の摂取量になると、過剰摂取による健康障害のリスクが
高くなってくることを明らかにすること。
2)設定指標
食事摂取基準(Dietary Reference Intakes)として、エネルギーに
ついては 1 種類、栄養素については5種類の指標を設定した。
【エネルギー】
○推定エネルギー必要量(estimated energy requirement: EER)
エネルギーの不足のリスク及び過剰のリスクの両者が最も小さくな
る摂取量
【栄養素】
15
健康の維持・増進と欠乏症予防のために、「推定平均必要量」と「推
奨量」の2つの値を設定した。しかし、この2指標を設定することが
できない栄養素については、「目安量」を設定した。また、生活習慣
病の一次予防を専ら目的として食事摂取基準を設定する必要のある栄
養素については、「目標量」を設定した。過剰摂取による健康障害を
未然に防ぐことを目的として「上限量」を設定した。
○推定平均必要量(estimated average requirement: EAR)
特定の集団を対象として測定された必要量から、性・年齢階級別に
日本人の必要量の平均値を推定した。当該性・年齢階級に属する人々
の 50%が必要量を満たすと推定される 1 日の摂取量である。
○推奨量(recommended dietary allowance: RDA)
ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97∼98%)が1日の必
要量を満たすと推定される 1 日の摂取量である。原則として「推定平
均必要量+標準偏差の2倍(2SD)」とした。
○目安量(adequate intake: AI)
推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られ
ない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維
持するのに十分な量である。
○目標量(tentative dietary goal for preventing life-style related
diseases: DG)
生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき
摂取量(または、その範囲)である。
○上限量(tolerable upper intake level: UL)
ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取によ
る健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量である。
図1
推定エネルギー必要量を理解するための模式図
16
習慣的な摂取量が増加するにつれて、不足のリスクが減少するとともに、
過剰のリスクが増加することを示す。両者のリスクがもっとも少なくなる
摂取量が推定エネルギー必要量である。
図2
食事摂取基準の各指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量)を
理解するための模式図
不足のリスクが推定平均必要量では 0.5(50%)あり、推奨量では 0.02
∼0.03(中間値として 0.025)(2∼3%または 2.5%)あることを示す。上
限量以上を摂取した場合には過剰摂取による健康障害が生じる潜在的なリ
スクが存在することを示す。そして、推奨量と上限量とのあいだの摂取量
では、不足のリスク、過剰摂取による健康障害が生じるリスクともにゼロ
(0)に近いことを示す。
目安量については、推定平均必要量ならびに推奨量と一定の関係を持た
ない。しかし、推奨量と目安量を同時に算定することが可能であれば、目
安量は推奨量よりも大きい(図では右方)と考えられるため、参考として
付記した。
目標量については、推奨量または目安量と、現在の摂取量中央値から決
められるため、ここには図示できない。
3)年齢区分
0∼5 か月、6∼11 か月、1∼2 歳、3∼5 歳、6∼7 歳、8∼9 歳、10∼11
歳、12∼14 歳、15∼17 歳、18∼29 歳、30∼49 歳、50∼69 歳、70 歳以
上。
妊婦、授乳婦。
第6次改定からの変更点:学校給食基準との整合性から 6∼8 歳、9∼11
歳を 6∼7 歳,8∼9 歳、10∼11 歳に変更した。
17
4)策定栄養素等
エネルギー、たんぱく質、脂質(総脂質、飽和脂肪酸、n-6 系脂肪酸、
n-3 系脂肪酸、コレステロール)、炭水化物、食物繊維、
水溶性ビタミン:ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB
6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、
ビタミンC
脂溶性ビタミン:ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK
ミネラル:マグネシウム、カルシウム、リン
微量元素:クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨ
ウ素
電解質:ナトリウム、カリウム
4.基本的な活用方法
食事摂取基準の用途は、「摂取量を評価(アセスメント)するため」(表
1)と、「栄養計画(プランニング:栄養指導計画、給食計画等を含む)を
立案するため」(表2)の2つに大別される。
なお、エネルギー摂取量の評価・判定は、BMI(Body Mass Index)を
指標とし、モニタリングは体重を指標にして行う。また、計画においては、
エネルギー摂取量を制限することにより、栄養素の不足を招来させる可能性
が生じてくるため、エネルギー消費量、すなわち身体活動の増加も併せて計
画することが望ましい。
厚生労働省 HP 内「日本人の食事摂取基準(2005年度版)について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2c.html
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(資料6)
「日米においてのサプリメントの位置づけ」
1.アメリカのサプリメント事情
サプリメント大国アメリカでは国民の 60∼70%何らかのサプリメントを摂取し
ているとか。アメリカにおいては、この 10 年あまりサプリメント市場は成長し
続け、現在では約 2 兆円規模となっています。なぜ、ここまでのサプリメント
ブームとなっているのでしょうか。
アメリカでは、生活習慣病が増加し、栄養補助食品による積極的な病気の予防、
改善を求める流れが 1975 年ごろから起きていて、政府としても増え続ける国民
医療費をなんとか抑えたい、という意向もあり、約 10 年前、クリントン大統領
が栄養補助食品健康教育法(DSHEA法)に署名しました。その時大統領は
「食事がライフスタイルや寿命に与える影響に国民の関心が高まっている。政
府がサプリメントへの対応を、健康増進のために改めることは時流にかなうも
のだ」と述べています。これがサプリメントブームのはじまりとも言えます。
ちょうど、1990 年代に入り、大量消費世代のベビーブーマーが高齢化を迎え、
また日本と違って公的な医療保険制度が無く民間の高額な保険に加入しなくて
はならないため、少しでも医療費を抑えるための「予防」=セルフメディケー
ションの意識が高まったこともサプリメントブームを加速させているようです。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 栄養補助食品健康教育法(DSHEA法)とは
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - この法律によって、これまで立場が曖昧だったサプリメントが「食品」と「医
薬品」の中間に位置づけられ、科学的論拠が明確であれば、製品ラベルに「効
果・効能」を記載することが認められることになりました。
以前は、製品ラベルに情報は表示されず「何に効くのか」
「どう使えばよいのか」
を消費者が知ることは難しかったのですが、この法律によって「情報開示」さ
れるため数多くの商品から、目的のものを選びやすくなりました。
また、医療の現場でも積極的に利用されるようになり、品質についても厳しく
吟味され、品質の悪いものが淘汰されるという消費者にとってよい環境となっ
ています。
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2.日本のサプリメント事情
日本では、医薬品以外で口から取り入れるものは、サプリメントを含め食品と
して見なされ、薬事法によってラベルや広告などで「効果・効能」を述べるこ
とはできません。そのため「血圧が低下します」とか「血糖値を下げます」と
は言えないのです。
そのため、
「どのくらい摂れば有効なのか」というような情報はメーカーも公表
できませんし、また飲み方も「いつ・どのくらい」というような表示ができな
いので、サプリメントを有効に活用できていない面もあるのではないでしょう
か。
現状では、サプリメントに関する情報源は、テレビや雑誌などのメディアが中
心です。メディアでサプリメントを取り上げるようになったことはよいことな
のですが、やはり流行に左右される世界ですし、メーカーによる関与があるこ
ともしばしば。100%信頼できる情報なのかなと考えてしまいます。
また、医療の現場でも、うまく利用しようという動きがある一方で、頭からサ
プリメントを否定しているお医者さんも少なくなく、なかなか相談しにくいの
が現実です。
それぞれの商品に関しても、医薬品のように審査を受けているわけではないた
め、品質にばらつきがあり、一部では表示されている成分を含んでいない偽商
品や、ごくごく少量しか入ってないものなどもあり問題になりました。
このように、日本のサプリメント事情はまだまだ遅れていると言ってもよいで
しょう。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - トクホ
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - でも、最近、
「血圧が気になる人に」や「血糖値が高めの人に」なんて表現をC
Mなどで耳にすることがありますよね。
それは、1991 年に制定された特定保健用食品制度(通称特保、トクホ)による
もの。身体の生理機能成分を含んでいて、保険の用途に利用され、その食品の
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安全性・有効性・品質についての科学的根拠を示して、国の厳しい審査のもと、
厚生労働大臣が個別に許可する食品です。お茶などの飲料や、ヨーグルトなど
でおなじみではないでしょうか。
それ以外にも「栄養機能食品」は 17 種類のミネラル、ビタミン類(※1)で、
厚生労働省が定めた基準に適合していれば、メーカーの意思でうたうことが出
来るものがあります。例えば、ビタミンEを入れた食品の場合、
「ビタミンEは、
抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養
素です。」ということをうたうことができます。
※1:国が定めている栄養機能食品
亜鉛、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム、ナイアシン、パントテン酸、ビオ
チン、ビタミンA、ビタミンB1、2、6、12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミ
ンE、葉酸
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - これからのサプリメント
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 現在日本では、サプリメントのほとんどが効能をうたうことのできない「食品」
として販売されています。イチョウ葉エキスも、ヨーロッパでは医薬品ですが、
日本では「健康食品」、サプリメントの1つです。
これらの健康食品に効果がないかというとそういうわけでもありません。もち
ろん薬のような強力な治療効果ではありませんが、予防医療としてこれから「サ
プリメント」が重要視されてくるのではないかと思います。
特に、微量栄養素不足は、現代人の病気の90%に影響していると言われてい
ます。どうしても不足してしまう微量栄養素をサプリメントで補う必要性が生
じていると言えます。
「予防は治療に勝る」という言葉がありますが、サプリメ
ントの意義を言い表していますね。
サプリメント・健康食品がメディアで頻繁に取り上げられて、少しづつ予防の
意識も高まってきているようですが、本格的な普及のためには、厚生労働省が
さまざまな基準をどのように定めていくか、同時に、メーカーや政府が有効性
などの情報を提供できる仕組みをどう作っていくかが鍵になるのではないでし
ょうか。
(バイオ薬品メールマガジン 第 4 号より転載)
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(資料7)社会ニュース「過剰摂取の危険性」の例
<大豆イソフラボン>食事以外の摂取量は1日30ミリg程度
大豆に含まれ、女性ホルモンに似た作用のある化学物質「大豆イソフラボン」につ
いて、食品安全委員会新開発食品専門調査会(上野川修一座長)は31日、厚生労
働省の特定保健用食品(特保)として日常の食事とは別に摂取する場合は、1日の
摂取量を30ミリグラム程度に抑えるべきだとする評価書案を大筋でまとめた。ただ
し、「(一般の)大豆食品の安全性を問題にしているわけではない」とし、特保として
上乗せ摂取する場合の評価であることを強調している。
◇取り過ぎに注意…安全委調査会案
大豆イソフラボンは、豆腐や納豆などに含まれる。評価書案によると、乳がんや骨
粗しょう症の予防効果があるといわれる。一方で、乳がん発症や再発のリスクを高
める可能性なども考えられるため、調査会が摂取上限の目安を審議していた。
調査会には、食べ物からの摂取量が平均的な閉経前の日本人女性21人に大豆
イソフラボンを1日約57ミリグラムずつ追加摂取させると、血中の女性ホルモン濃度
が約3割低下したなどの試験結果が提出された。調査会はこのデータなどから、特
保として上乗せ摂取する場合の安全な上限値を57ミリグラムの約半分の約30ミリ
グラムと設定した。【高木昭午】
(毎日新聞) - 2 月 1 日
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【Ⅶ.参考文献】
日本サプリメント協会 『サプリメント健康バイブル』、東京:小学館、20
04。
日経ヘルス 『サプリメント事典2006年版-最新のサプリ、ハーブ、食品成
分、トクホが分かる-』、東京:小学館、2005。
財団法人日本健康・栄養食品協会 『特定保健用食品のあり方4』、東京:(財)
日本健康・栄養食品協会、2004。
財団法人日本健康・栄養食品協会 『特定保健用食品のガイド(入門編)』、
東京:(財)日本健康・栄養食品協会、2003。
Tech 総研;
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03500.jsp?p=fjf051、観覧
日:2006/02/03
元気をあげる;
http://cgi28.plala.or.jp/genki-ag/main/main_2/history.html、観覧日:
2006/02/03
バイオ薬品株式会社
http://blog.livedoor.jp/biopharma/archives/50034540.html、観覧日:
2006/02/03