PJ1-3-1 薬剤師リカレント教育プログラムの構築に関する

PJ1−3−1 薬剤師リカレント教育プログラムの構築に関する実践的研究
1)はじめに
これまで、多くの大学、団体が薬剤師リカレント教育を実施してきたが、薬剤師のニーズや地域住民の
ニーズを抽出、整理、分析して地域社会の健康向上に関するリカレント教育プログラムを構築したものは
ない。薬剤師はセルフメディケーションの推進に大きな責任を持つことが期待されており、両者のニーズ
を考慮しながら教育プログラムを構築することは重要である。また現在、福山市薬剤師会と福山大学薬学
部が共催して「福山市薬剤師会シリーズ研修会」を月 2 回開催し、基礎から臨床にいたるまでさまざまな
テーマで講演を行っている。より有用な研修会へと発展させるためには、薬剤師のニーズ調査とその分析
が必要である。そこで本研究は、以下を目的として検討を行う。②に関しては、平成 21 年度以降に実施
する予定である。
① アンケート調査およびワークショップを開催して、「薬剤師の地域社会の健康向上に対応するための
ニーズ」、「地域住民の健康管理に対するニーズ」を調査、整理、分析し、薬剤師の地域社会の健康
向上に対応するためのリカレント教育プログラムを構築する。
② 「薬剤師が考える薬剤師リカレント教育に関するニーズ」についても同様のワークショップを開催し、
薬剤師のニーズに応じた薬剤師リカレント教育プログラムを構築する。
2)薬剤師の地域社会の健康向上に対応するためのニーズ調査
【方法】
平成 20 年 10 月 7 日に福山市薬剤師会シリーズ研修会にて第 1 回ワークショップを開催した。はじ
めに KJ 法を用いて、病院及び薬局に従事する薬剤師が感じる「健康相談に対応する際の問題点」
の抽出と整理を行った。次に、平成 20 年 10 月 21 日に第 2 回ワークショップを開催し、2 次元展開
法による問題解決の優先順位の決定を行った。2 回のワークショップにはのべ 70 名の薬剤師が参加
した(写真 1、2)。
写真 2 全体討論
写真 1 スモールグルー
プディスカッション
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【結果】
はじめに KJ 法を用いて病院及び薬局に従事する薬剤師による健康相談の対応における問題点の抽
出と整理を行った結果、処方薬、一般薬、またこれらの副作用、漢方薬、健康食品をはじめ、医療用具等
(血圧計、リハビリの靴、サポーター等、お薬以外)、病院での検査値、持病、食事、運動、医療&介護制
度など、通常、薬剤師が有しなければならない 薬 の知識以外に様々な知識が必要であることが明らか
となった(写真 3)。特に、健康食品において、そのものの作用や薬との相互作用など、詳細な知識も必要
なことが併せて明らかとなった。また、2 次元展開法によって、これら問題の緊急度、重要度を検討した結
果、健康食品、サプリメント、生活習慣、運動・食事指導の知識の習得が最優先事項であることが明らかと
なった(写真 4、図 1)。またこれに次いで臨床検査値をはじめとした病態に関する知識、さらには健康を
維持するための医療用健康機器の知識の習得も必要事項として挙げられた。その対応策では特にメー
カーやインターネット等による情報の共有化等の必要性が挙げられたものの、その情報源の複雑化によ
る正確な情報の共有が難しい現状も明らかとなった(写真 4、図 1)。
写真 3 健康相談の対応における問題点(KJ 法によるプロダクトの作成)
写真 4 健康相談の対応における問題点と対応策(二次元展開法による優先順位の決定)
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A グループ
臨床検
査値
健康食品との
相互作用
食事、生活
指導
生活習慣
重要度
重要度
服用方法
漢方薬
医薬品
以外の
知識
B グループ
モチベー
ションづくり
副作用の説明
適応外処方
臨床検査値
サプリメント・摂
取量の上限・相
互作用
医療制度
コミュニケー
ション
マスコミによる
情報の混乱
病態
病理の基礎
医薬品
の分類
医療機器の
情報
緊急度
緊急度
C グループ
図 1 二次元展開法による優先順位の決定とそ
運動指導
食事
の対応策(写真 4 を電子ファイル化したもの)
重要度
最優先課題の対応策としては、メーカーやイ
サプリメント
医療用具
適正使用
ン ターネット等による情報の共有化があげられ
OTC
たが、正確な情報をどのようにして共有するの
臨床検査値
かが大きな検討課題として残った。
長期服用
緊急度
【考察】
我が国の薬剤師のセルフメディケーションに果たす役割は、平成 14 年に成立した「健康増進法」で「医
薬品の適正使用や健康づくりに関する相談、情報提供」などの役割が求められている。特にプライマリー
ヘルスケアに関する相談、情報提供が重要視されている。すなわち、薬剤師は来局した消費者に「薬物
による治療はいらない」、「一般用医薬品を勧める」又は「受診を勧める」の選択に助言するという欧米先
進国の薬局と同じような業務が課されることになっている。薬剤師の役割のひとつは医薬品の販売であり、
医療用医薬品に関しては処方箋薬の安全性の確認と処方箋に基づいた正確な調剤と適正使用の推進
を行うことである。一方、一般用医薬品に関しては、セルフメディケーションの助言に加え、「一般用医薬
品を使用する」ことになった消費者に、調剤や販売に伴う服薬指導やアフターヘルスケアにいたるまでの
助言を行わなければならない。また近年,病気の予防に対する国民の意識が高まるのに伴い,いわゆる
健康食品の使用が一般化しつつある.したがって、一般用医薬品から健康食品にいたるまで、その適正
使用において、薬剤師が最初から最後まで、すべてに関与し、責任をもたなければならない現状にある。
このような背景の下、はじめに KJ 法を用いた病院及び薬局に従事する薬剤師による地域住民の健康
意識に関する問題点の抽出を行った結果、特に健康食品・サプリメントにおいて、そのものの作用また薬
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との相互作用など詳細な知識もまた必要なことが明らかとなった。また、2 次元展開法によるこれら問題の
緊急度、重要度を検討した結果、これらの知識の習得が最優先事項であることが明らかとなった。そこで
薬剤師の住民に対するこの結果を基に健康に関する意識調査アンケートを作成し、福山市ビッグローズ
で開催されたびんご産業市場のお薬相談コーナーにアンケートブースを設け実施した(PJ 1−2−1 地
域住民の健康に関する意識調査)。本研究で明らかとなった、薬剤師自身が考えるリカレント教育として
のニーズが高かった「健康食品の相談」は、一般住民のアンケート調査では処方薬、その副作用に
次ぐ 3 番目に挙げられ(PJ 1−2−1 地域住民の健康に関する意識調査)、薬剤師自身が考えるリカレ
ント教育のニーズは一般住民の関心の高さとマッチしていることが明らかとなった。今後、地域薬剤
師は、薬の情報提供はもとより、健康食品について適切に患者に対応できる体制を早急に構築し、
健康食品の適正使用に積極的に関与していくことの重要性が薬剤師側−地域住民の両視点から改
めて強く示唆された。薬剤師が地域住民に積極的に問いかけることで地域住民の健康食品に関す
る知識も是正され、「かかりつけ薬局」をはじめとした薬剤師の職能を発揮していくことにつながるもの
と考えられる。
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