3aB27P 負イオン源内における電子エネルギー分布の解析 Analysis of electron energy distribution in a negative ion source 藤野郁朗1, 畑山明聖1, 井上多加志2 慶大理工1、原子力機構2 Ikuro FUJINO1, Akiyoshi HATAYAMA1, Takashi INOUE2 Keio Univ.1, JAEA2 負イオン生成量を最適化するためには、負イオン源内部における電子エネルギー分布の解析が重要と なる。本研究では、アーク放電型水素負イオン源をモデリングの対象とし、まず負イオン源内部におけ る電子エネルギー分布を求めることが可能となるモンテカルロ・シミュレーションコードの開発を行っ た[1]。次に、開発したコードを利用して、磁場による電子密度・温度への影響などについて検討した。 開発したコードの特徴は 2 点ある。まず、実形状と実磁場配位を考慮した。開発したコードは、カス プ磁場・フィルター磁場・引き出し磁場の有無による電子密度・温度等への影響を検討できるようにな っている。次に、電子エネルギー分布に影響を及ぼすクーロン衝突および非弾性衝突を考慮した。解析 対象の電子同士のクーロン衝突を取り入れたことで、電子エネルギー分布を求められるようになった。 クーロン衝突の取り扱いは、二体衝突モデルに拠った[2]。さらに、電子の生成・消滅に影響するイオン 化や再結合過程などの非弾性衝突反応を考慮した。これにより、イオン化により放出された二次電子も 解析対象に含めることができるようになった。 以上の特徴を考慮したコードを用いて、電子生成(熱電子や二次電子)と電子消滅(再結合や壁損失) が釣り合う事で電子密度が一定になるまで計算した。図 1 に示すように、得られた電子エネルギー分布 は特徴を二点持つ。第一に、ドライバー領域(引き出し側から離れている領域)では電子が多くのエネ ルギー領域にわたり分布しているのに対して、引き出し領域では高エネルギー電子があまり存在しない ことである。これはフィルター磁場により高エネルギー電子が引き出し領域に侵入しにくくなっている ことを示す。 第二に、二領域における低温部分の 電子温度を比較すると、傾きからわ かるように引き出し領域の温度の方 が低くなっている。この理由も、フ ィルター磁場により高エネルギー電 子が引き出し領域に侵入しにくくな っていると考えられる。 [1] I. Fujino, A. Hatayama, N. Takado, and T. Inoue, Rev. Sci. Instrum. 79, 02A510 (2008) [2] T. Takizuka and H. Abe, J. Comput. Phys. 25, 205 (1977). 図 1:ドライバー領域と引き出し領域における 電子エネルギー分布の比較
© Copyright 2024 Paperzz