青年期における学校段階の移行と新友人との友人関係

青年期における学校段階の移行と新友人との友人関係
―新友人に求める理想と現実およびそのズレの検討―
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富 永 幹 人・田 中 あゆみ
・
1. 問題と目的
論したり難しい話をすることを避け、 明るく気軽に会
話でき、 お互いに傷つけ合うことがないように距離を
青年期の友人関係は、 青年を支えたり、 親からの自
置く、 といった特徴をあげている。 また、 高垣
立を促したりする役割を持ち、 青年の成長とともに変
() は、 現代青年の友人関係について、 個々の青
化していく関係である。 青年期における第2次性徴な
年自身は友人との親密で内面を開示するような関わり
どに伴う急激な心身の変化や親からの独立は、 不安や
を求めているにもかかわらず、 もしこれを友人に実際
恐れを伴い、 そのために青年には悩みや考えを語り合
に求めれば茶化されたり馬鹿にされたりしてしまうだ
う同世代の友人が必要なってくると考えられる。 従っ
ろうという恐れを持ち、 結果的に関わりを避けて、 自
て、 このような青年期の親からの独立や自律性の獲得
分をさらけ出さなくなると論じている。 しかし、 岡田
の過程を理解するために、 その過程でどのような友人
() によれば、 このような友人関係を取っている
関係の発達的変化が起こるのか、 これまでさまざまな
青年自身が、 必ずしも自分の友人関係に満足している
研究が行われてきた。 落合・佐藤 () の同性の友
わけではない可能性がある。 また、 吉岡 () は、
人との付き合い方に関する研究では、 中学生では 「浅
中学生、 高校生を対象に、 友人関係の理想と現実のズ
く広く関わるつきあい方」、 高校生では 「深く狭く関
レを検討した結果、 特に自己開示において理想と現実
わるつきあい方」 が多く見られるという結果が得られ、
のズレが大きいことを明らかにしている。
中学生から大学生にかけて次第に内面に目が向き、 悩
むようになるとされている。
一方、 こうした対人関係の希薄化の議論に対して、
浅野 () は、 現代の青年は、 多くの友人関係のチャ
また、 友人関係は、 生き生きとした学校生活を送る
ネルを持ち、 状況に応じて、 それぞれの関係を選択的
上で重要なものであり、 青年の生活に大きな影響力を
に使い分けていると指摘している。 さらに、 和田
持つと言える。 青年期は、 友人を強く希求する時期で
() は、 古くからの友人 (旧友人) と新しい友人
あるとともに、 友人関係に関する悩みが増える時期で
(新友人) との関わりのありようを検討し、 大学入学
あるとも言われる。 友人関係は、 青年にとってストレ
約6ヶ月後の調査では、 旧友人の方が新友人より親密
ス源ともなり、 悩みを分かち合うはずの友人関係によっ
で関係満足度が高く、 新友人に対しては身近な友人と
てより一層悩みが深くなったり、 別の悩みとなること
しての期待が現れることを明らかにしている。 女性は
も考えられる。 青年にとって、 外面的にはうまくいっ
男性よりも相互依存や自己開示という心理的なものを
ているように見えても、 内面的には満足感を得られて
望むが、 それを新友人との間に築くにはかなりの時間
いないという友人関係も少なくないようである。 松元
を要するので、 男性に比べ、 物理的距離が大きくなっ
() は、 現代青年の交友関係について、 真剣に議
ても、 旧友人と自己開示や相互依存などの心理的な関
富
永
幹
人・田
係を維持し続ける。 そして、 新友人は、 旧友人ほど親
中
あゆみ
の異同についても検討することとする。
密ではなく、 また身近にいる友人であるため、 「情報」
「協力」 「共行動」 をより求めるとしている。
2. 方法
青年期には、 心理的離乳といった発達的な移行に加
えて、 小学校から中学校へ、 中学校から高校へ、 高校
調査対象
から大学へと、 学校段階を進めていくに従って現実的
私立女子中学校1年生名、 私立女子大学1年生
な環境面でも移行を経験することになり、 折り重なる
名を対象とした。 調査時期は年月であった。
移行の危機を青年は経験する。 これを克服することは
調査内容
個人の人間的成長につながるが (山本・ワップナー,
吉岡 () の友人関係測定尺度 (項目) を使用
)、 青年期という発達段階を考えるなら、 そこで
した。 新友人に対する友人関係の理想と現実について、
特に友人関係が重要な役割を果たすと言えるだろう。
それぞれ 「非常に当てはまる」 から 「全然当てはまら
しかしながら、 この友人関係にも、 学校段階という環
ない」 までの4件法で回答を求めた。 具体的な教示内
境面での移行を考えれば、 旧知の友人だけでなく、 新
容は、 理想については 「あなたが入学する前、 新しい
しい環境で初めて出会う新友人という存在がある。 青
友人とどのような友人関係をつくりたいと思っていま
年は新しい友人との関係に対しては何を期待し、 どの
したか」、 現実については 「新しい友人との日ごろの
ような関係をつくっていくのであろうか。 和田
付き合いについて、 以下の質問にどれくらい当てはま
() が指摘するように、 新友人には 「情報」 「協力」
りますか」 とした。
「共行動」 といった比較的表面的なものを求めている
としても、 それに満足しているのだろうか。 このよう
3. 結果
な新しい友人関係の形成における理想 (期待) と現実
について取り扱っている研究は見当たらないが、 こう
した移行をめぐって当事者がどのような情緒を経験し
() 友人関係測定尺度の下位尺度
先行研究に倣って5因子に分け、 因子Ⅰ 「自己開示・
ているのかを明らかにしていくことは、 移行に伴う危
信頼」 (項目1・3・6・・・・・
・)、
機を理解し、 その援助を考える上で有益であると思わ
因子Ⅱ 「深い関与・関心」 (項目2・7・・)、 因
れる。
子Ⅲ (項目4・・・・)、 因子Ⅳ 「親密」 (項
ところで、 これまでの友人関係に関する研究の多く
目8・
・
・
・)、 因子Ⅴ 「切磋琢磨」 (項目5・
で性差があることが報告されている。 たとえば、 アー
9・・) とした。 各下位尺度についてクロンバッ
ガイルとヘンダーソン () は、 女子は深いレベル
クのα係数を算出したところ、 α=
∼
という値
の自己開示や愛着、 援助を伴う親密で信頼できる関係
が得られた。 各下位尺度ごとに∑ (個々の項目得点)
に価値を置くのに対し、 男子は単に 「楽しいこと」 に
/項目数を求めたものを、 下位尺度得点とした。
価値を置くとしており、 こうした報告は、 女子の友人
関係は、 男子と比べて強い情緒的つながりを求める傾
向があることを示していると思われる。
以上より、 本研究では、 特に青年期の女子を対象と
() 友人関係測定尺度の各項目の得点
友人関係測定尺度の 「理想」 「現実」 について各項
目の平均値を求めた。 その結果を , に示す。
して、 新友人に対してどのような理想を持っているの
新友人との関係に期待するもの (理想) について、
か、 また現実にはどのような友人関係を構築している
大学生では、 「. 共通の思い出をたくさん作る」、
のか、 そして、 新友人に対する理想と現実にはどのよ
「. 心を許すことができる」、 「. 考えたことや感
うなズレが生じているのかについて検討する。 また、
じたことを正直に話すことができる」 などが高い値
青年期においても、 青年期前期と青年期後期とでは、
以上) を示した。 これに対して、 中学生では、
(
発達や友人関係に求めるものも異なってくることが考
「1. 何でも話し合うことができる」、 「. 共通の思
えられるため、 中学生と大学生を調査の対象とし、 そ
い出をたくさん作る」、 「
. 相談し合うことができる」
青年期における学校段階の移行と新友人との友人関係
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富
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幹
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中
あゆみ
(
)=
<
、 Ⅴ:(
)=
<
)。
などが高い値 (
以上) を示した。
一方、 現実の友人関係については、 大学生では、
「2. まじめな話ができる」、 「. 相談し合うことが
Ⅱ、 Ⅴでは大学生の得点が高く、 Ⅳでは中学生の得点
が高いことが示された。
できる」 などが高い値 (
以上) を示した。 これに
現実の友人関係に関しては、 「Ⅳ:親密」 において
対して、 中学生では、 「1. 何でも話し合うことがで
のみ有意な差が見られ、 「Ⅰ:自己開示・信頼」、 「Ⅲ:
きる」、 「6. 自分のことをよくわかってくれる」、 「
.
共通」 においては有意傾向が見られた (Ⅰ:(
)=
相談し合うことができる」 などが高い値 (
以上)
<
、 Ⅱ:(
)=
、 Ⅲ:(
)=
を示した。
、 Ⅳ:(
)=
<
、 Ⅴ:
<
(
)=
)。 Ⅳでは中学生の得点が高いこと
() 友人関係測定尺度の下位尺度得点の学校段階比
が示された。
較
友人関係測定尺度の各下位尺度得点について、 学校
段階による比較を、 分散分析を用いて行った (
、 . )。
() 友人関係の理想と現実のズレについての分析
友人関係における理想と現実のズレについて分析を
するために、 友人関係測定尺度の各下位尺度ごとに、
理想の友人関係に関しては、 「Ⅱ:深い関与・関心」、
∑ (個々の項目の理想−現実)/項目数によって求め
「Ⅳ:親密」、 「Ⅴ:切磋琢磨」 において有意な差が見
た値を、 友人関係の理想と現実のズレ得点とした。
ら れ た ( Ⅰ : (
)=
、 Ⅱ : (
)=
この 友人関係の理想と現実のズレ得点について、
、 Ⅳ : <
、 Ⅲ : (
)=
学校段階による比較を、 分散分析を用いて行ったとこ
ろ、 「Ⅱ:深い関与・関心」、 「Ⅲ:共通」、 「Ⅳ:親密」
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
において有意な差が見られ、 「Ⅴ:切磋琢磨」 では有
意傾向が見られた (Ⅰ:(
)=
、 Ⅱ:
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、 Ⅲ : (
、 Ⅳ:(
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<
、 Ⅴ:(
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)。 Ⅱでは中学生の方がズレが大きく、 Ⅲ、
Ⅳでは大学生の方がズレが大きいことが示された。
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青年期における学校段階の移行と新友人との友人関係
4. 考察
していたが、 中学生は
と低めの得点であった。 こ
の項目は 「理想の友人関係」 においても大学生の得点
() 新友人に求める理想の友人関係について
は
と高く、 中学生は
と低かった。 このことか
新友人との友人関係に求める理想に関しては、 友人
ら、 大学生は新友人に対して深い内容の相談をする関
関係尺度の 「Ⅱ:深い関与・関心」 と 「Ⅴ:切磋琢磨」
係を求め、 実際に現実でもそのような関係を築いてい
の因子においては大学生が中学生よりも得点が高く、
るが、 中学生は大学生に比べるとまじめな話をする関
「Ⅳ:親密」 の因子においては、 中学生が大学生より
係は新友人に期待しておらず、 相談し合う関係を築い
も得点が高かった。 このことから、 中学生は新友人と
てはいるが、 まじめで深い内容の話はしていないと言
の関係に親密さを強く求めるが、 大学生にもなるとよ
える。 さらに、 「. プレゼントをくれる」 では、 大
り深い関わりやお互いを高め合うような関係を、 新友
学生の得点が
であったのに対して、 中学生の得点
人との関係に期待することが示された。 中学生くらい
は
と高めであった。 中学生の時期には、 まだ十分
の時期には、 友人関係で孤立することは大きな不安で
に深い自己開示をし合うような関係を築くには難しさ
あり、 日ごろ行動を共にする友人を見つけることの意
があり、 それ以前に友人関係で嫌われることや浮いて
味は大きい。 一方で大学生くらいの時期になると、 よ
しまうことを恐れる傾向があると思われるが、 友人関
り深い関わりを友人関係に求めるようになる。 そのよ
係における親密性についても、 深い話をし合うという
うなそれぞれの発達段階における心性が、 今回の結果
よりは、 「プレゼント」 のような形のあるもの、 目に
からも読み取ることができると思われる。
見えるモノのやりとりによって、 それを深めたり確か
項目別に見た場合、 「. 共通の思い出をたくさん
めたりする傾向があるように思われる。
作る」 が、 大学生・中学生のどちらでも比較的高い値
以上より、 中学生は大学生よりも新友人との関係に
を示した。 吉岡 () の調査でも、 この項目の女子
おいて親密さをより築いていると言えるが、 関係性の
の得点は高い値を示している。 女子は、 男子よりも情
質の面で考えると、 中学生のそれは大学生と比べて必
緒的なつながりを求める傾向があるとされるが、 そう
ずしも深い話をし合うようなものではなく、 モノによっ
したつながりの証しのようなものを作っていこうとす
て関係を確かめ合うような、 言うなればまだ不安定さ
る気持が女子には強く、 その気持は大学生でも中学生
を抱えた関係であるように思われる。
でもそれほど変わらないのだろう。 そうしてつくられ
た思い出は、 卒業などして時間が経ち、 友人と離れる
ことになってからも、 情緒的なつながりの感覚をもた
らしてくれるという期待もあるのかもしれない。
() 新友人に対する理想と現実のズレについて
新友人との友人関係に求める理想と、 新友人との友
人関係の現実とのズレについては、 「Ⅱ:深い関与・
信頼」 「Ⅲ:共通」 「Ⅳ:親密」 において、 大学生と中
() 新友人との現実の友人関係について
学生との間に有意差が認められた。
新友人との友人関係が実際に始まってからの現実の
「Ⅱ:深い関与・信頼」 について見てみると、 中学
友人関係については、 友人関係尺度の 「Ⅳ:親密」 の
生よりも大学生の方が理想と現実のズレが大きいのだ
因子において、 中学生が大学生よりも得点が高かった。
が、 現実については大学生の得点が
、 中学生の得
新友人に対する期待としても、 中学生は大学生よりも
点が
と有意差も見られず、 理想についての大学生
親密さを求める傾向が認められたが、 実際の関係が始
の得点 (
) が、 中学生の得点 (
) よりも有意
まってからも、 やはり親密さを感じられる友人関係を、
に高かったことから、 この結果が生じたことがわかる。
中学生は大学生よりも多く作っていると言える。
つまり、 これから出会う新友人に対して、 中学生より
項目別に見てみると、 「. 相談し合うことができ
も大学生の方が、 深いかかわりや信頼を結ぶことを期
る」 は、 大学生・中学生のどちらでも高い得点を示し
待しているけれども、 実際に新友人との関係が始まっ
ていた。 しかし、 「2. まじめな話ができる」 につい
てみると、 大学生も中学生とそれほど変わらない程度
ては、 大学生は
で、 全項目の中でも高い値を示
にしか深いかかわりや信頼を築けていないということ
富
永
幹
人・田
中
あゆみ
である。 大学生は、 新しい友人関係に期待していたも
クラスという枠組みがなくなることから、 新友人と関
のが現実には得られていないということであり、 フラ
わる機会が限定される。 そのため、 知り合っていく中
ストレーションや失望を感じている可能性があると思
で見えてくる 「共通」 部分を見出すまでに至らず、 浅
われる。 このズレを生み出す要因については検討が必
い関係で終わってしまうということも考えられるだろ
要であるが、 このようなズレは、 大学生が学生生活に
う。 大学生は、 悩みを語り合うなどより深いかかわり
スムーズに入っていくことや学生生活の満足感の高低
を求めているが、 そうした関係の土台となるような、
に関わる問題であり、 このズレにどのように対応して
通じ合える 「共通」 の感覚を新友人との間にもつこと
いくことが必要かの検討も重要になってくると思われ
に、 まずつまづいてしまうのかもしれない。
る。 一方、 これに対して中学生では、 理想の得点
最後に 「Ⅳ:親密」 について見てみると、 理想と現
(
) よりも現実の得点 (
) の方が高く、 新友
実のズレの大きさ (絶対値) では、 やはり大学生の方
人との関係で期待していたよりも実際の方が深いかか
が中学生よりも大きいことがわかる。 理想と現実の得
わりや信頼を築くことができていると言える。 さらに
点はいずれも中学生の方が大学生よりも有意に高かっ
項目別に見ると、 やはりまじめな話をするということ
たが、 大学生の得点で見ると、 理想の得点が
であっ
は現実の関係でできていないけれども、 夢や希望を語
たのに対して現実の得点は
であった。 このことか
り合ったり、 互いに励まし合ったりすることが、 期待
ら、 大学生は新友人にそれほど常に行動を共にするよ
していたよりも現実にはできているようであった。 こ
うな親密さは期待していないが、 実際にはある程度は
うした結果は、 相手からどう思われるかを気にしてし
そのような関係を新友人との間に形成していることが
まうというこの発達段階に顕著な不安から、 当初新友
わかる。 中学生に比べて大学生は、 こうした親密さは
人に対する期待は低く抑えられているけれども、 比較
もう求めなくなってきていると同時に、 大学では授業
的前向きな話題においては、 実際には深いかかわりや
も個人で組むことは入学前から概ね知っているので、
信頼を築くことができていることを示しており、 対人
大学生になると個人で行動し、 常に行動を共にするよ
関係における発達段階的な不安がある一方で、 より深
うなことは期待していないということではないだろう
い関係を築きたいというやはりこの発達段階特有の欲
か。
求の高まりが、 このズレに表されているように思われ
る。 そして、 前向きな話題から始まって、 徐々にまじ
() 総合考察
めな話もする深いかかわりへと進んでいくのであろう。
本研究では、 新友人との関係における理想と現実、
次に 「Ⅲ:共通」 について見てみると、 大学生の方
およびそのズレについて、 発達的側面から検討した。
が中学生よりも理想と現実のズレが大きかった。 大学
中学生では、 先行研究が示すのと同様に、 深い関係は
生、 中学生それぞれの理想と現実の得点も含めて考え
それほど期待せず、 まずは共に行動するような親密さ
ると、 「Ⅱ:深い関与・信頼」 での場合と同様に、 大
を求め、 現実でも概ねそのような関係を築いているこ
学生は新友人との関係で、 期待していたようには趣味
とが示された。 しかしながら、 まじめな話をするには
や考え方などで一致するものを感じられていないこと
至らないながらも、 夢や希望を話し合ったり、 励まし
がわかる。 こうした 「共通」 の感覚はわかり合えると
合ったりするような親密さは、 入学前の期待よりも新
いう感覚を生み、 新しい関係を築く上では重要な要素
友人と持てていることが示された。 一方、 大学生では、
となることが多いと思われる。 高校までは基本的に同
やはり先行研究が示すように、 深いかかわりを新友人
じ地域の者同士が集まり、 個性の違いはあるけれども、
に対しても求めているが、 現実にはそうした関係を期
基本的に通じ合える同じ文化的背景をもっていると言
待していたほどには築けていないことが示された。 そ
える。 しかし大学は、 幅広い地域から学生が集まり、
の要因の一つとして、 考え方などが一致しているといっ
方言はもちろんだが、 何かしらそれまで当たり前だっ
た 「共通」 の感覚をもつことが新友人との関係でまず
たことが、 すぐには通じないということも経験される
できていないという問題があり、 そのために新友人と
ことになる。 また、 大学という環境では、 高校までの
の関係を、 深いかかわりをするところまで深められな
青年期における学校段階の移行と新友人との友人関係
いでいることが考えられた。 「クラス」 という枠組み
がなくなる大学という環境では、 新友人と深く知り合
う機会が限られるため、 そのような機会を意図的につ
くっていくことも大切ではないだろうか。 この点につ
いては、 その要因や対応について、 今後さらに検討が
必要と思われる。
引用文献
アーガイル, ・ヘンダーソン, (著) 吉森護 (編訳)
() 人間関係のルールとスキル 北大路書房
浅野智彦 () 若者の現在 浅野智彦 (編) 検証・若者
の変貌―失われた年の後に― 勁草書房 岡田努 () 現代大学生の認知された友人関係と自己意
識の関連について 教育心理学研究, , 岡田努 () 青年期の友人関係と自己―現代青年の友人
認知と自己の発達―
落合良行・佐藤有耕 () 青年期おける友達との付き合
い方の発達的変化 教育心理学研究, , .
高垣忠一郎 () 自分をつくる 心理科学研究会 (編)
かたりあう青年心理学 青木書店 松元泰儀 () 人間関係の変化・親子関係 青年心理学
概論, 山本多喜司・・ワップナー (編著) () 人生移行の発
達心理学 北大路書房
吉岡和子 () 友人関係の理想と現実のズレ及び自己受
容から捉えた友人関係の満足感 青年心理学研究, ,
.
和田実 () 性、 物理的距離が新旧の同性友人関係に及
ぼす影響 心理学研究, , ,