デジタルカメラで簡単意匠写真 有限会社ワッソパテントサービス 近藤 奈々絵 意匠写真の撮影では、 ワンカット、 ワンカットが美しく撮れていれば良いわけではありません。 図面の代用であるため、意匠図面の作図条件に準じて撮影されていなければなりません。 そのため通常のサンプル商品の撮影とは違う点にも注意を払う必要があります。 注意すべきは以下のような点です。 ・各写真が同一の縮尺であること ・写真の隅々までピントがあっていて、 クリアであること ・形状が特定出来ること (黒つぶれ、白飛びしていないこと) ・写り込みや歪み、パースがきつく出て、物品の形状を特定の妨げにならないこと 弊社の意匠写真の作成手順をご案内致します。 撮影 撮影後レタッチしますが、元の写真が奇麗に 撮影されていることは仕上がりにも影響して きます。 撮影準備から各工程で注意して作業をしな ければなりません。 カメラ、 ライト、背景、 レフ板と撮影する物品 を配置します。 撮影する物の大きさや材質によって、配置は 適宜変えています。 注意点は、周りの物やライトの写り込み、歪み、パースが出るのを最小限に抑えることです。 また撮影には必ず三脚を使用して、 リモートコントロールで撮影しています。 これは手ぶれを防ぐためです。 撮影で注意しておけば、 レタッチ作業がずいぶん楽になります。 配置出来たら撮影を開始しますが、 同一カットでピント面だけを変えた写真を複数撮影します。 これは、一回の撮影で全面にピントのあった写真を撮影することが出来ないので、被写界深度の 深い、全面にピントのあった画像を合成で作成する ためです。 詳しい方法は、 レタッチの項目でご説明します。 撮影は、EOS Utilityを使用してPCのモニターを 見ながらリモート撮影しています。 これで、 カメラで見るより大きいモニターでしっかりと ピントが合っている場所を確認しながら、手ぶれしな い撮影が可能となっています。 撮影機材 弊社で使用している撮影機材の一部をご紹介いたします。 カメラ・レンズ Canon Eos 5D Canon Eos 7D Canon Eos 1 物品に合わせて、 レンズの種類も変えています。 単焦点、望遠、ティルト・シフトレンズがあります。 ライト 600Wのモノブロックストロボにディフューザーをつけて2台設置。 高感度スレーブセンサーを搭載しているため、光ムラのない写真 が撮影出来ます。 またストロボをそのまま当てたダイレクトな光だと陰影が強すぎたり 光の写り込みがひどくなるため、ディフューザーを使用し、 さらに撮 影する物によっては天井にバウンスさせています。 その他 三脚、 ディフューズボックス、背景布、 レフ板、透明のアクリルブロック、回転台、釣り糸 など レタッチ Adobe photoshop・Lightroom 使用 意匠写真では、全面にピントのあったパンフォーカス写真であることが必要となります。 photoshopでは、ピント面を変えて撮影した複数枚の写真を合成してパンフォーカスの写真が 容易に作成できます。 手順 photoshopで作業します。 数枚ある同一カットの撮影画像ををphotoshopでレイヤーとして読み込みます。 複数枚の写真の読み込みを手作業でのコピー&ペーストの繰り返しをしていては手間がかかって しかたありません。一気に読み込む方法をご紹介しておきます。 全ての画像を開いておいて ファイル→ スクリプト→ ファイルをレイヤーとして読み込み...→ 開いてるファイルを追加→ OK これで、ピント面の違う複数枚の写真がレイヤーに重なって開いた状態になりました。 ここでもう一手間。 実はピント面を変えると、若干ではありますが、写る大きさも違ってくるのです。そのため、事前に ピッタリ大きさも位置も同じになるように調整しておく必要があります。 必要なレイヤーを全て選択してから、 「編集」→「レイヤーを自動整列」を選択。 これで大きさも位置も同じになり、合成の下準備が完了です。 ここからレイヤーを自動合成します。 編集メニュー → レイヤーを自動合成 → 画像をスタック を実行。 全ての画像を選択しておいて 編集→ レイヤーを自動合成→ 画像をスタック→ OK ここでは「シームレスなトーンとカラー」にチェックを入れます。 微妙に違う各写真の露出や色などもコントロールして違和感なく つなぎ合わせてくれるからです。 実行後はピントがあった部分が残った各レイヤーに別れた状態ができます。 保存すれば、全面にピントのあった画像の出来上がりです。 ここからLightroomでの作業です。 保存した画像をLightroomに読み込みます。 露光量、 コントラスト、ハイライト、 シャドウ、白レベル、黒レベル、 ノイズを調整します。 暗すぎる部分、明るす ぎる部分をなくしつつ、 画像が明瞭になるよう に注意して調整。 ノイズの調整は拡大部分を 見ながら調整します。 強くしすぎると画像がボケて しまいます。 調整がすんだら、書き出しします。 ここまでの作業を6面図、斜視図、他の必要なカット分繰り返し行います。 ここからphotoshopにもどります。 各カットの下準備がすんだら、photoshopで新規ファイルを作成。 Lightroomで調整がすんだ各カットを横150mm×縦113mの範囲に収まるサイズにして配置 していきます。 左のような配置で作業しています。 作業しながら整合をチェックするのに 適しています。 物品以外が写っていてはいけないので、パスで物品を切り抜きます。 切り抜いた画像の歪み、パースを補正して、 さらに6面図が整合するように変形ツールを使用して 加工します。 韓国などのように写真であっても対称のカットが図面のように完全一致することを要求される 場合は、 より注意して形状を合わせる必要があります。 不要なタグ、マーク等をレタッチで除去すれば出来上がりです。 納品は各カット毎に切り分けたJPEGデータになります。
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