環境保全部 - 北海道環境科学研究センター

地下水硝酸汚染に係わる汚染源簡易判定について
環境保全部
環境科学部
三上英敏
高田雅之
地利用概況を把握した。次に、ヘキサダイアグラ
ムによる汚染源特定をより精度を上げて行うため
に、化学肥料に多く含まれる硫酸イオンについて
詳細に検討し、そのδ34S 値も判別に活用すること
を試みた。また、窒素安定同位体法による汚染源
特定について、実測データをもとに検討し、最終
的には、道内の地下水硝酸汚染に対する汚染源簡
易特定の手順を示すことを目的としている。
1. はじめに
浅層地下水の硝酸性窒素汚染については、1999
年に環境庁が、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素を、
要監視項目から環境基準項目とし、基準値を
10mg/L として対策を強化してきている 1),2)。その
主な汚染源は、これまでの多くの知見から、生活
系排水、家畜排泄物及び畑地の過剰な施肥である
ことがわかっている 3)。生活に密着していること
や、面的な負荷源もあることから、対策が困難で
あり、未だに、基準超過井戸が多数あるのが現状
である。
地下水の硝酸性窒素汚染の対策を講じるために
は、まず、汚染源を特定することが重要である。
これまでの多くの知見から、汚染されている地域
を、面的にあるいは季節的に詳細に水質変動を把
握し、土地利用を調査することで、その汚染源を
特定する方法が多くの地域で検討され報告されて
いる 1),2),4),5),6)。
地下水の硝酸性窒素汚染における汚染源特定の
手法は、具体的には、ヘキサダイアグラム、トリ
リニアダイアグラム、窒素安定同位体法、濃度相
関マトリックスの各水質図表を、周辺土地利用と
合わせて考察することによって行われるのが一般
的である 3)。近年では、それに加えて、硝酸性窒
素の酸素同位体比を活用する手法 7)や、硫安系肥
料による影響の観点から、硫酸塩硫黄安定同位体
比を活用する手法も行われたりしている 6)。
これまでの様々な知見や調査事例を参照し、汚
染されている地域の詳細調査を実施すれば、詳し
い動態や汚染源を解明することができる。しかし
ながら、それは、調査や解析に、それなりの費用
と労力がかかることも必須である。そこで、本研
究では、単独の汚染井戸を調査すると同時に、概
略的に周囲の土地利用を眺めるだけで、新規の調
査だとしても、簡易的に汚染源をおおまかに特定
する手順について整理することを試みた。単独試
料による汚染源簡易判別では、たとえ精度を上げ
られたとしても、詳細な流域調査による汚染源特
定のレベルには至らないかもしれないが、現場レ
ベルのおおまかな汚染源判定や、詳細調査を実施
する予備段階では、非常に有効であると思われる。
具体的には、まず、統計解析のために、全道 9
支庁管内の 92 地点で地下水調査を行い、水質と土
2. 調査方法
全道 9 支庁管内(渡島、胆振、空知、上川、留
萌、宗谷、十勝、釧路、網走)において、92 点の
地下水調査を実施し、試料を収集した。
分析項目は、硝酸性窒素(NO3-N)、亜硝酸性窒
素(NO2-N)、アンモニア性窒素(NH4-N)、硫酸イ
オン(SO42-)
、塩化物イオン(Cl-)、重炭酸イオン
(HCO3-)
、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオ
ン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウム
イオン(Mg2+)である。また、そのうち、68 検体
で、全溶存性窒素(DN)とそのδ15N 値を項目に加
えた。また、14 検体において、硫酸イオンδ34S
値も項目に加えた。
土地利用については、すべての調査地点におい
て、目視レベルで、地形図と照らし合わせながら、
周囲の森林、畑地、家畜飼育、市街化等の状況を
把握した。
3. 結果と考察
3.1 ヘキサダイアグラムによる汚染源解析
ヘキサダイアグラムを使用すると、主要イオン
の組成が視覚的に理解でき、周辺汚染源と対比す
ることによって、硫酸塩を含む化学肥料の汚染か、
それ以外の肥料、家畜排泄物および生活系等の汚
染かが、概略で判断できる。
ヘキサダイアグラムの形状は、細かく検討する
と、様々な水質に分類できるため単純ではないが
2)
、代表的な例として、図 1 に、本調査における、
汚染源が家畜排泄物タイプと化学肥料タイプに単
純化できるそのヘキサダイアグラムについて、未
汚染のものとともに例示した。家畜排泄物由来と
化学肥料由来について、ともに右下の濃度(NO3+SO42-)が高くなるような形になることは共通し
ているが、その両者の主な判別基準は、SO42-の割
1
合が NO3-(NO3-N)の割合に比較してどうかという
問題である。それは、簡単に考えると、それぞれ
A)
4
B)
汚染井戸
NO3-N 濃度 40mg/L
家畜タイプの例
3
2
1
0
1
Na+ +K+
2
3
4 [meq/L]
Cl-
Ca2+
4
汚染井戸
NO3-N 濃度 15 mg/L
畑作タイプの例
3
2
1
0
Na+ +K+
HCO3-
Mg2+
の汚染源の特徴が、表 1 に示すように、SO42-の差
として反映されているということである。
SO42-
2
3
4 [meq/L]
HCO3-
4
3
2
1
0
Ca2+
SO42-
Mg2+
未汚染井戸
NO3-N 濃度 0.29 mg/L
Na+ +K+
Cl-
Ca2+
NO3-
1
C)
1
2
3
Cl-
HCO3-
Mg2+ SO42- NO3-
NO3-
図 1 特徴的な3パターンのヘキサダイアグラム
表1
また、「ほとんど畑地」の判別率は 60%、「ほと
んど家畜飼育もしくは宅地」の判別率は 77%であ
った。
図 2 には、その判別関数を 0 と置いた、
「ほとん
ど畑地」と「ほとんど家畜飼育もしくは宅地」を
判別するときの NO3-N 濃度と SO42-濃度の関係図を
示した。その図は、NO3-N 濃度に対する SO42-濃度
の変化は少なく、ほとんど、SO42-濃度によって、
判別が可能であることを示していた。すなわち、
動物系排泄物の影響では、地下水中の NO3-N 濃度
が増加しても、SO42-濃度の増加にはあまり反映さ
れず、一方で、地下水中にある一定以上の SO42-濃
度が存在する場合、動物系排泄物以外の起源が存
在することを示し、たいていの場合、硫酸塩化学
肥料によるものと考えることができる 1)。
おもな窒素汚染源の水質的特徴 8)
(全イオン当量に対する割合)
SO42-
Cl-
Na+
K+
浄化槽排水
低
高
高
低
化学肥料(硫酸塩)
高
低
低
高
堆肥・家畜排泄物
低
高
高
高
HCO3-
高
そこで、全 92 データの内、NO3-N 濃度が 1mg/L
以上の高濃度である 84 データを対象に、周囲の環
境が、
「ほとんど畑地」と「ほとんど家畜飼育もし
くは宅地」である群を抽出した。その結果、前者
は 30 データ、後者は 24 データ抽出された。また、
化学肥料の多くは硫酸塩を含有していることから、
「ほとんど畑地」では多かれ少なかれ硫酸塩を含
有する化学肥料を施肥していると推定した。図 1
のヘキサダイアグラムの A)タイプ「ほとんど家畜
飼育もしくは宅地」と、B)タイプ「ほとんど畑地」
を区分する、NO3-N 濃度と SO42-濃度の関係式を決
めるために、NO3-N 濃度と SO42-濃度を説明変数と
して判別分析を実施した結果、下の様な判別関数
を得た。なお、明らかに塩分泉や海水により SO42濃度が高くなっていると思われた 2 データを除い
て解析を行った。
2.0
1.8
SO4 2 –濃度 [meq/L]
1.6
1.4
畑作タイプ
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
家畜飼育及び宅地タイプ
0.2
0.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
NO3-N濃度 [meq/L]
Z = -0.1483 CNO3 + 1.5991 CSO4 - 1.1207
図 2 判別分析から得られた、畑作タイプと家畜
飼育及び宅地タイプの NO3-N と SO42-濃度の判
別境界図
ただし、CNO3 と CSO4 は、NO3-N と SO42-の濃度[meq/L]
2
4 [meq/L]
このような状況から、SO42-濃度がある一定以上
であれば、硫酸塩化学肥料の施肥影響を判別でき
る可能性を秘めていることがわかった。そこで、
判別を単純化するために、SO42-濃度のみにて、再
び判別分析を行った。その結果、次のような判別
関数を得た。
に値を持つものもあるが、大方、海水や塩分泉、
一部の硫黄泉とは区別が可能である。ヘキサダイ
アグラムによる水質解析をする際、同時に、硫酸
塩δ34S の調査も行っておくと有力な判断手段と
なりうる。
3.3 窒素安定同位体比(δ15N)の利用
本研究では、全溶存窒素(DN)としてのδ15N 値
を測定した。全試料で DN のほとんどが NO3-N 濃度
であり、測定されたδ15N 値は、NO3-N のその値を
示している。
δ15N 値は、脱窒などに伴う同位体分別の問題も
若干あるが、NO3-N 汚染の起源を大方反映する。
「ほ
とんど畑地」と「ほとんど家畜飼育もしくは宅地」
に分類される NO3-N 濃度 1mg/L 以上のデータ群の
内、δ15N 値の分析値がある、前者 22 データと後
者 16 データにおいて、化学肥料、家畜排泄物およ
び下水のδ15N 値の文献値とともに、図 3 に示した
その結果、地下水のδ15N 値は、全道レベルで、ほ
ぼ文献値に対応し、有用な判断材料となりうるこ
とがわかった。両者のδ15N 値の境界値を決定する
ために、判別分析を行った。
その結果、
「ほとんど畑地」の判別率は 91%、
「ほ
とんど家畜飼育と宅地」の判別率は 75%と高く、
その境界値は、8.0‰と得た。平田 9)は、沖縄県宮
古島や香川県試験地などの観測結果から、無機化
学肥料施肥由来と動物排泄物由来とを分ける目安
は 7~8‰程度であると推定しており、今回の我々
の判別分析の解析とほぼ一致した。
Z = 1.5614 CSO4 -1.1943
そして、「ほとんど畑地」の判別率は 60%、「ほ
とんど家畜飼育もしくは宅地」の判別率は 82%で
あった。
この判別関数を 0 とおいた関係式は、 “CSO4 =
0.77 meq/L” となり、ヘキサダイアグラムを描
いた時、右下の SO42-と NO3-N の部分が、CSO4>0.77meq
となった時、硫酸塩を含む化学肥料の影響が大き
いと概略判別可能となる。
3.2 δ34S 値の応用
ヘキサダイアグラムを描き、土地利用を調査す
ることによって、大方、硫酸塩化学肥料もしくは
それ以外である動物排泄物等による影響かが判断
できる。しかし、地下水 SO42-濃度の上昇には、ま
れに、海水、塩分泉、硫黄泉等の影響がある場合
があり、その様な時には、その判別方法は活用で
きない。そこで、SO42-濃度の上昇が見られた場合、
それが化学肥料由来であることを判定するために、
δ34S 値を活用することを検討してみた。表 2 には、
各種のδ34S の実測値について示した。
化学肥料のδ34S の範囲は、おおよそ、-3~9 ‰
であった。また、硫黄泉の一部では、その範囲内
表 2 各種の SO42-のδ34S 値 8)
試料
δ 34S-SO42[‰]
化学肥料
複合肥料 A
複合肥料 B
複合肥料 C
複合肥料 D
複合肥料 E
複合肥料 F
硫安
0.6
9.2
1.2
1.1
2.6
-3.2
-1.8
海水
21.9
塩分泉 1
塩分泉 2
66.4
24.5
硫黄泉 1
硫黄泉 2
硫黄泉 3
21.2
18.5
4.4
図 3
3
畑作タイプと家畜飼育もしくは宅地タイプに
おける地下水δ15N 値の分布
排水, Vol.42, p403-412, 2000.
3) 公害研究対策センター:硝酸性窒素による地下
水汚染対策の手引き
4) 山本洋司, 朴光来, 中西康博, 加藤茂, 熊澤
喜久雄:宮古島の地下水中の硝酸態窒素濃度
とδ 15N 値, 日本土壌肥料学雑誌, Vol.66,
p18-26, 1995.
5) 中西康博, 山本洋司, 朴光来, 加藤茂, 熊澤
喜久雄:δ15N 値利用による地下水硝酸起源推
定法の考案と検証, 日本土壌肥料学雑誌,
Vol.66, p544-551, 1995.
6) 野村佳範:窒素および硫黄の安定同位体比を用
いた硝酸性窒素汚染地下水の挙動の解明, 筑
波大学大学院環境科学研究科, 平成 12 年度
修士論文, 2001.
7) 南川雅男,吉岡崇仁:地球化学講座5-生物地
球化学, 培風館, p128-131, 2006.
8) 三上英敏, 高田雅之, 三島啓雄:地下水硝酸汚
染に係わる汚染源簡易判定の手順, 北海道環
境科学研究センター所報, Vol.35, 2009. (in
press)
9) 平田健正:わが国における硝酸性窒素による地
下水汚染の現状と問題点, 水環境学会誌,
Vol.19, p950-955, 1996.
3.4 地下水硝酸汚染の汚染源特定の手順
以上の結果から、単独井戸の水質分析と土地利
用概況から、道内における簡潔な汚染源特定の手
順を総括してみると、下の通りである。
ⅰ
主要アニオン及びカチオン、NO3-N もしくは
DN のδ15N(、SO42-のδ34S)の分析をする。
(依
頼する。)
ⅱ ヘキサダイアグラムを描くとともに、表 3 の
判別マトリックスにより、おおよその汚染源
の把握を行う。
ⅲ 汚染井周辺の土地利用概況から、ⅱの検討結
果と合わせて、汚染源を簡易特定する。
4.
謝辞
地下水試料の採取に当たっては、各支庁地域振
興部環境生活課地域環境係の皆様のご協力を頂き
ました。記して、謝意を表します。
5. 引用
1) 田瀬則雄:硝酸性窒素による地下水汚染, 地下
水技術,Vol.48, p31-44, 2006.
2) 廣畑昌章, 小笹康人, 榮田智志, 藤田一城,
永村哲也, 松下裕, 松岡良三:熊本県にみら
れた硝酸性窒素による地下水汚染, 用水と
表3
水質傾向から判断できる大まかな汚染源の特定 (判別マトリックス)
SO42-濃度
15
δ N
8 ‰を超える
8 ‰を下回る
SO42-濃度が
0.77 meq/L(37mg/L)を下回る
SO42-濃度が
0.77 meq/L(37mg/L)を超える
☆ 硫酸塩肥料の影響が少な
い
☆ 堆肥、家畜排泄物、浄化槽
処理水の影響が大きい。
☆ 硫 酸塩肥料の 影響が大き い。
(ただし、δ34S が-3‰以下と
9‰以上の場合は、その限りで
は無い。)
☆ 堆肥、家畜排泄物、浄化槽処理
水の影響もある。
☆ 硫酸塩肥料のウエートは
大きく無いが、化学肥料全
般の影響は大きい。
☆ 堆肥、家畜排泄物、浄化槽
処理水の影響は少ない。
☆ 化学肥料全般の影響が大きい。
☆ 中でも硫酸塩肥料の影響が大
きい。
(ただし、δ34S が-3‰以
下と 9‰以上の場合は、その限
りでは無い。
)
☆ 堆肥、家畜排泄物、浄化槽処理
水の影響は少ない。
4
北海道内都市域及びバックグラウンド地域におけるPM2.5の測定
環境保全部
1
はじめに
秋山雅行、大塚英幸
定量した。
PM2.5 と呼ばれる粒径 2.5μm 以下の微小粒子は、
呼吸器や循環器系に対し有害性が疑われるとして
3
結果
世界的に注目されており、すでにアメリカでは
各地域の PM2.5 を図 1 に示す。バックグラウンド
1997 年に環境基準が定められ、また、WHO におい
地域での PM2.5 は春を中心に 10μg/m3 程度まで濃
ても指針値が示されている。日本でも 2007 年の東
度が上昇する月が見られるが、全体的に年間の濃
京大気汚染訴訟での和解後に環境省が具体的な規
度変化は小さい。落石、江差間の比較では夏に濃
制基準策定に乗り出している。
度差がほとんど見られないのに対し、特に春には
北海道における PM2.5 の測定は 1999 年度より当
日本海側の江差で濃度が高く、汚染物質の長距離
センターで行っているが、地点数は少なく、道内
輸送の影響が出現しやすい春季における大陸から
全体の把握までには至っていない。また、環境省
の影響の強弱が濃度差に反映したと考えられた。
により暫定マニュアルが示されているが、機器が
都市域では秋から冬にかけて濃度は増加し、季
高価であるためマニュアルに則った測定法の採用
節変化は明確であった。特に旭川、室蘭では夏と
が難しく、測定濃度の精度についての検討も必要
冬の濃度差が著しく、月平均値で 20μg/m3 を超え
とされている。
る濃度を示す月も見られた。バックグラウンド地
広域的な PM2.5 濃度の長期的変動傾向の把握、都
域では冬の濃度上昇が見られないのに対し、都市
市域における評価基準データの確保を目的として、
域で著しい濃度上昇を示していることから、冬季
北海道内バックグラウンド地域及び都市域におい
においては道外からの影響よりも、地域的な発生
て、PM2.5 の長期的な採取を行っているが、今回は、
源が PM2.5 濃度の変動に大きく寄与しているものと
多地点同時採取を行った 2006 年 4 月から 2009 年 3
推察される。
月までの調査結果について報告する。
季節による濃度差を比較するため年度を4季に
分け PM2.5 平均濃度を算出した(春:3∼5 月、夏:6
2
調査方法
2-1
試料採取地点及び採取方法
PM2.5 試料の採取は、都市域として札幌、旭川及
∼8 月、秋:9∼11 月、冬:12∼2 月(但し 3 月は
前年度))。都市域各地点と落石の季節別平均濃度
と対落石濃度比を図 2 に示す。
び室蘭、バックグラウンド地域として江差及び根
都市域各地点ともに春及び冬の濃度が高いこと
室市落石(以下「落石」
)を選定し、吸引流量 20l/min
がわかる。バックグラウンド濃度と考えられる落
の条件下で石英繊維ろ紙上に 2 週間毎または半月
毎に採取した。また、粒子の分級方法としてニー
μg/m3
25
ルインパクターを用いた。なお、江差は試料採取
20
を開始した 2007 年 3 月以降のデータである。
15
2-1
10
分析項目及び分析方法
分析項目は水溶性成分(SO42-、NO3-、Cl-、NH4+、
5
Na+、K+、Mg2+、Ca2+)
、炭素成分(全炭素(T-C)、元
0
素状炭素(E-C)、有機炭素(O-C))で、それぞれ
イオンクロマトグラフィー、CHN コーダーを用いて
2006
4
札幌
旭川
室蘭
落石
江差
10
2007
4
図1
2008
10
4
PM2.5 の経月変動
2009
10 月
石との濃度比を見ると、夏は都市域で2前後の低
変動を図 3 に示す。
い濃度比を示し、濃度の高い春においても濃度比
長距離輸送大気汚染物質の指標とも言える
は夏と大きな差は見られないことから、春の濃度
nss-SO42-濃度は春にやや濃度が高くなる傾向を示
上昇は広域的な現象によるものと予想される。そ
すが季節的な傾向は明確ではなく、また、都市域
れに対し、冬の濃度比は顕著に増加し、特に旭川、
とバックグラウンド地域との濃度差が小さいこと
室蘭では4を超える値が得られた。このことから
が特徴である。それに対し NO3-、E-C 濃度は都市域
も都市域における冬季の濃度上昇は地域的な発生
において冬の濃度が大幅に上昇しており、冬にお
源の寄与が大きいことを示唆するものと考えられ
ける都市域の PM2.5 の濃度上昇は化石燃料の燃焼に
る。
よる影響が大きいと推察される。
札幌では春から秋にかけて対落石濃度比が大き
旭川、室蘭では札幌よりも自動車保有台数が少
く変化していないのに対し、旭川、室蘭では秋に
ないにもかかわらず冬の濃度上昇が著しい原因と
やや高い値を示している。これは旭川では野焼き、
しては旭川では地形が盆地を形成していること、
早期の暖房使用の様相等が影響していると予想さ
この地形により逆転層が形成しやすいこと、冬季
れ、また、室蘭では秋に主風向が南東から北西に
において他の地点よりも気温が低いため燃料使用
変わるが、採取地点北西側に位置する工場地域か
量が増大すること等が挙げられ、また、室蘭では
らの風系に変わることが影響しているものと推察
工場が多数立地していること、夏と冬で主風向が
される。
大きく変化することなど様々な要因が影響してい
24
-
非海塩由来の硫酸(nss-SO )、NO3 、E-C の経月
ratio
μg/m3
μg/m3
6
6
20
15
4
札幌
落石
比
10
2
5
るものと考えられる。
札幌
室蘭
江差
4
旭川
落石
nss-SO42-
2
0
2006
0
0
春
夏
秋
冬
20
3
旭川
落石
比
10
2
0
夏
秋
4
10
2
5
0
図2
夏
秋
2008
4
10
札幌
旭川
室蘭
落石
3
2
室蘭
落石
比
0
春
2007
10
4
6
15
2006
μg/m3
ratio
20
1
4
冬
μg/m3
2
0
0
春
月
10
NO3-
札幌
旭川
室蘭
落石
江差
4
4
5
4
μg/m
5
6
15
2008
10
3
ratio
μg/m3
2007
4
冬
季節別 PM2.5 大気中濃度及び対落石比
1
0
2006
2007
4
月
10
図3
nss-SO4 、NO3-、E-C 濃度の経月変動
2-
(nss-SO4 、NO3-:2006 年 4 月∼2008 年 3 月
2-
E-C:2006 年 4 月∼2007 年 3 月)
月
PM2.5 濃度中のディーゼル車寄与の推定
であるとの結果が得られている。ディーゼル車か
図 4 に札幌、旭川、室蘭、落石の PM2.5 濃度と E-C
ら排出される粒子が微小粒径主体であることは先
濃度の分布図を示す(2006 年度)が、いずれの都
にも述べたが、このことから PM2.5 濃度に対するデ
市測定点においても両者の相関が良く PM2.5 濃度
ィーゼル車の寄与についても E-C 濃度からの試算
の変動に化石燃料の燃焼が寄与している状況が伺
が可能と考えられることから、E-C 濃度の 2 倍をデ
えたが、落石では相関が見られず、それ以外の発
ィーゼル車の寄与として寄与割合の推定を試みた。
4
その結果、札幌市におけるディーゼル車の寄与
生源寄与が大きいことが示唆された。
PM2.5 濃度に影響する化石燃料の燃焼由来の代表
は春∼夏で 25%程度、秋∼冬で 40%程度、年間で
的なものとしてディーゼル車からの排気ガスが挙
は約 30%と推定され、冬季における寄与の増加が
げられる。発生源の寄与濃度を算出するために
伺えた。これは、冬季において逆転層が生じやす
は発生源情報の入手が不可欠であるが、PM2.5 に関
いなどの気象条件や積雪による渋滞発生などの道
する発生源データの整備は全国的にも十分とはい
路状況の変化などが寄与を増加させた一因と考え
えない状況にある。しかし、化石燃焼由来の粒子
られる。しかしながら、秋∼冬においては暖房に
状物質の粒径分布は微小側にピークがあることは
よる化石燃料使用量の増加など他の発生源の影響
以前から知られており、SPM に関する発生源情報も
も考えられるが、これらに関しては PM2.5 に関する
PM2.5 の大まかな発生源寄与の推定を行なううえで
発生源情報は十分ではなく、寄与率の算出に関し
は有用な情報であるといえる。
てはこれら発生源情報の充実が PM2.5 対策を施す上
そこで 1999 年度に千歳市において行なった SPM
で必要不可欠である。
調査結果を基に PM2.5 のディーゼル車の寄与につい
て推定を試みた。千歳市の産業形態は札幌市と類
似しており、札幌市の推定には十分適応すると考
えられる。SPM 濃度に対するディーゼル車の寄与に
ついては、E-C 濃度を基に CMB 法を用いて算出して
5
まとめ
今回の調査結果から次の知見が得られた。
・ 年平均値(PM2.5)は都市域 10∼15μg/m3、清浄
地域 5∼8μg/m3 であった。
いるが、1999 年度の調査における千歳市の結果で
・ 都市域の PM2.5 濃度の変動は春、夏はバックグ
は、ディーゼル車の寄与濃度は E-C 濃度の約 2 倍
ラウンド濃度の影響が大きいが、冬は都市域内
自体の影響が増加していた。
μg/m3
25
3
μg/m
25
y = 4.0971x + 3.4913
R2 = 0.7317
20
20
10
札幌
5
0
0
0
2
4
E-C
μg/m3
μg/m3
PM2.5
0
室蘭
4
40%)程度と推定される。
6
の適切性、マニュアルに則した E-C 分析体制の確
4
0
0
2
3
μg/m3
今後の課題としては、現在採用している採取法
2
E-C
2
E-C
8
5
1
1
落石
15
0
・ ディーゼル車の寄与率は札幌で 30%(25∼
10
y = 7.2624x + 1.0497
2
R = 0.9255
10
る。
旭川
μg/m3
PM2.5
20
風向の変化等が影響しているものと推測され
10
5
25
暖房使用の開始時期、野焼き(霜対策等)、主
15
PM2.5
PM2.5
15
・ 旭川、室蘭では秋にも濃度上昇がみられた。
y = 5.577x + 0.6349
2
R = 0.7378
3
4
μg/m3
保、発生源情報の収集、道内全体を把握するため
y = 3.3848x + 4.5146
R2 = 0.2394
0
0.5
E-C
の測定地点の拡充などが挙げられるが、特に発生
1
μg/m3
源情報の収集は発生源寄与を算出する上で重要
な項目であることから、今後の優先課題として取
図4
PM2.5 と E-C 濃度散布図(2006 年度)
り組んでいくことが必要と考えられる。
流跡線解析時における最適なパラメータ選定に関する検討
環境保全部
丹羽
忍
大塚英幸
秋山
雅行
1
はじめに
汚染物質等の発生領域を推定する解析手法と
して空気塊の流入経路を推定する流跡線解析が
多く用いられている。流跡線解析の際には、高度
の設定や計算モデル、領域の設定など、研究者は
自由に設定できるが、その設定の違いでどの程度
解析結果に違いがでるのか、検証した例は少な
い。以上のような背景のもと、本研究では国立環
境研究所地球環境研究センターのトラジェクト
リ解析ツール(METEX)を用いて、過去にハイボリ
ュームサンプラにより大気中浮遊じんの採取を
行った 1997 年度から 2003 年度までの根室市落石
地球環境モニタリングステーション(以下、落石
という。:145°30′E、43°09′N、海抜約 50m)
の空気塊由来について、様々な条件設定での解析
を行い、最適な流跡線解析条件や注意点について
の検討を行った。
図1
3
領域区分図
結果と考察
3-1 スタート地点の設定高度別流跡線の違い
スタート地点の高度を500m、800m、1200m及び
1500mに設定した場合の代表領域の出現数の違い
を図1示す。
2 解析方法
流跡線解析には国立環境研究所地球環境研究
解析対象は、落石を起点して72時間前までさか
のぼった後方流跡線とした。METEXでは1時間ごと
に空気塊の位置が計算されるので1本の後方流跡
線は73点のポイントデータ(以下、「流跡点」と
いう。)からなる。計算開始時間を比較する試料
の試料採取日の9:00、21:00(JST)とした。流
跡線の評価にあたっては、秋山ら1) の方法と同様
の領域区分(Ⅰ:ロシア側、Ⅱ:中国・朝鮮半島、
日本、Ⅲ:太平洋側、Ⅳ:カムチャッカ半島側の
4領域。図1参照。)及び代表領域決定方法(流
跡線の存在割合が5割以上を代表領域とする。)
を用いて、
(1) スタート地点の設定高度別流跡線の違い
(2) 流入経路における鉛直方向を考慮にいれ
た場合の濃度評価
等についての検討を行った。
160
120
該当試料数
センターで開発した、METEX(Meteorological
Data Explorer)を利用した。気象データには米国
環境予測センター(NCEP)、計算モデルは三次元
モデルを用いた。
領域Ⅰ
領域Ⅱ
領域Ⅲ
領域Ⅳ
80
40
0
500m
800m
1200m
1500m
設定高度
図1 設定高度別にみた代表領域出現数
設定高度が低くなるにつれ、代表領域が領域Ⅱ
の試料数が減り、その他の領域の試料数が増える
傾向があった。
これは、高度1500mでは偏西風の影響を地表付
近より反映されているが、地表面に近くなるほど
空気塊が地表からの摩擦や熱等の影響を受け領
域が分散されている可能性を示唆するものであ
る。このことから、発生源の影響を評価する際に
は地表付近の空気塊の動きをより反映されるよ
うに低い高度でのスタート高さに設定すること
が重要と考えられた。
なお、領域の認定には2本の流跡線の72時間前
まで1時間ごとに計算される流跡点すべて(73点/
本×2本=146点)に汎用データベースソフトを使
用して領域認定をさせ、そのうち73点(5割)を
超える試料を代表領域とするプログラムを作成
し計算させている。過去に秋山ら1) は設定高度
1500mにおいて、1試料につき2本の流跡線の1
日前、2日前、3日前の空気塊の存在領域を用い
て代表領域に区分しており、その比較をした結果
を表1に示す。全体では、一致率は、251/369≒
68%であったが、どちらも不能した試料を除外す
ると、一致率は240/293≒82%であった。
一致しない試料が認められる要因としては、過
去の分類方法が代表点3点のみを用いて決定し
ていることと考えられる。このことから、評価の
際は今回のように経路全体を評価対象とするこ
とが望ましいと考えられる。
図2
非海塩由来の硫酸イオン(nss-SO42-)及び金属
成分(Al,V)の平均濃度を算出した結果を表1に
示す。また、表3に領域別鉛直方向別試料数を示
す。
nss-SO4
2-
(μg/m3 )
本研究による分類結果
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
不能
計
Ⅰ
84
22
2
1
9
118
Ⅱ
6
103
5
0
7
121
Ⅲ
0
5
24
4
4
37
Ⅳ
1
2
5
29
4
41
不能
14
22
1
4
11
52
計
105
154
37
38
35
369
Al
(μg/m3 )
V
(ng/ m3 )
試料数
鉛直方向別の各成分濃度との比較
流跡線解析を行った際には水平方向の結果が
重要視される傾向にあるが、空気塊は鉛直方向に
も変化していることから、流入経路における鉛直
方向の出現の違いによる成分濃度評価を試みた。
評価の際には流跡線のスタート高さを500mと
し、鉛直方向別の区分には高度1500m以上の流跡
点が40点を超える場合とそれ以下で区分した(図
2)。
領域
領域
領域
領域
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
総平
均
L
1.69
2.95
1.42
1.23
H
1.43
1.89
1.12
1.78
all
1.60
2.76
1.40
1.25
L
0.16
0.47
0.14
0.13
H
0.27
0.31
0.22
0.16
all
0.20
0.44
0.14
0.13
L
1.11
3.12
1.52
1.01
H
1.04
2.00
4.97
1.55
all
1.09
2.92
1.79
1.03
表2
表1 設定高度 1500m での文献1と
の解析結果の比較
3-2
鉛直方向区分の手法
1.83
0.26
1.75
領域別鉛直方向別大気中平均濃度
領域
領域
領域
領域
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
総数
L
80
87
49
56
H
42
19
4
3
122
106
53
59
all
H:
L:
表3
340
高度1500m 以上の流跡点が40 点を超える
高度1500m 以上の流跡点が40 点以下
領域別鉛直方向別試料数
表3より、領域Ⅲ及び領域Ⅳは設定領域500m
において空気塊が1500mを超えるような事例は他
の領域に比べて少ないことがわかる。
また表2より、領域Ⅱは他の領域よりもすべて
4
まとめ
の指標において平均濃度が高く、特に低高度の場
合には濃度が高い傾向があるという結果を得ら
れた。
本研究では以下の知見が得られた。
流跡線解析の際には、水平方向の結果だけでな
く鉛直方向の動きも考慮することが重要である
ことが示唆された。
チャッカ半島側(領域Ⅳ)では、他の領域
に比較して相対的に低高度で流入する。
(2) 水平方向による区分に加え、鉛直方向区分
を加味した成分濃度の比較では、中国・韓
(1) 落石からみた太平洋側(領域Ⅲ)及びカム
3-3 他の解析ツール手法との比較
流跡線解析ツールにはMETEXの他、NOAAのホー
ムページで公開されているHYSPRIT Model2) がよ
く利用されている。
解析ツールの違いによる流跡線の状況を見る
ため、設定高度1500mで2000年7月24日12:00(JST)
の落石上空の後方流跡線を例として図3に示す。
国・日本側(領域Ⅱ)から流入する空気塊
の影響は特に低高度での影響が顕著であ
り、鉛直方向区分の有用性が示唆された。
今後は、流跡線を用いて鉛直方向区分方法につ
いて更に研究を進めとともに流跡線長さの特
性やアジア大陸と日本の影響の区分手法等に
ついて、検討することが必要と考えられる。
METEX
文献
NOAA
1)秋山ら、清浄地域におけるエアロゾル中の水溶性成
分−長距離輸送の影響評価−北海道環境科学研究セン
ター所報,33,19-26(2007)
2)HYSPLIT(Hybrid Single-Particle Lagrangian Integrated
Trajectory) Model:NOAA/Air Resources Labolatory,
http://www.arl.noaa.gov/ready/open/hysplit4.html
図3 落石上空 1500mおける NOAA 及び
METEX の後方流跡線
解析結果は厳密には一致せず、特定の汚染発生
源を解明する精度ではないものの、ある程度の方
向や地域の解明には有効であることが確認でき
た。
ディーゼルエンジンにおける未規制物質の排出特性
環境保全部
芥川智子
1 はじめに
揮発性有機化合物(VOC)は、人の健康への影響が
田原るり子
秋山雅行
表 1 試験モード(C1 モード)
モード
懸念される粒子状物質や光化学オキシダントの原因の
一つとも考えられており、中でもベンゼンやホルムア
ルデヒドなどは有害大気汚染物質のうち健康リスクが
酒井茂克
エンジン
回転
1
2
3
4
5
定格回転(
1600rpm)
トルク(%) 100
75
50
6
7
中間回転
(
1100rpm)
10
100
75
8
アイドル
(800rpm)
50
0
高い優先取組物質として大気汚染防止法に基づき大気
環境モニタリング調査が実施されている。これらの物
2-2 試料採取及び分析方法
質は、自動車からの寄与が指摘されているにもかかわ
らず、排出特性に関する研究例が少なく、測定方法も
調査対象物質及び試料採取・分析方法を表 2 に示す。
試料採取・分析方法は「排出ガス中の指定物質の測定
充分に確立されていないのが実情である。
方法マニュアル」、「有害大気汚染物質測定方法マニュ
現在、自動車からの排出ガス規制値は大気汚染防止
アル」
(環境庁)及び「JIS K0303(排ガス中のホルム
法に基づき逐次強化されているが、新車に対する規制
アルデヒドの分析方法)」に準拠して行った。
項目でもガソリン車が一酸化炭素(CO)
、非メタン炭
化水素(NMHC)、窒素酸化物(NOx)の3項目、デ
表 2 調査対象物質及び試料採取・分析方法
ィーゼル車ではこれらに粒子状物質( PM)を加えた4
項目にとどまっている。一方、公道走行の自動車に起
物 質 名
1,3-ブタジエン
因する大気汚染物質の低減化が進む中で、オフロード
ベンゼン
エンジンを搭載した機械からの排出寄与は一層増加す
ると見られ、将来の大気環境保全の観点からもオフロ
トルエン
エチルベンゼン
ードエンジンの排出ガス低減化が急務となっている。
キシレン
スチレン
本研究では、単気筒型ディーゼルエンジンを用いて、
採取方法
分析方法
バッグ
GC/MS
固相カートリッ
ジ(DNPH)
HPLC
1,3,5-トリメチルベンゼン
ホルムアルデヒド
排ガス中のホルムアルデヒドやベンゼンなどの VOC
類、及び粒子状物質に含まれるベンゾ(a)ピレンなど自
動車排ガス未規制 12 物質について、環境測定で採用さ
アセトアルデヒド
アクロレイン
ベンズアルデヒド
れている手法を応用した排ガスの採取方法及び分析方
法を試みるとともに、その排出特性を検討したので報
ベンゾ(a)ピレン
告する。
2
調査方法
2-1 実験装置および方法
実験にはコモンレール燃料噴射系を備えた単気筒・
四サイクルの直噴式ディーゼル機関(Nissan Diesal
PE-6)(北海道大学大学院工学研究科)を用いた。排出
ガスの試料採取には小型希釈トンネルを用い、希釈率
は約 10 倍とした。試験モードはオフロードエンジンの
運転モードとして標準化されている C1 モード( 8 モー
ド)で実施した。表1に C1 モードを示す。本来、排出
ガス試験の際には、試験で得られた結果が規制値の範
囲内であるかを判定するが、今回は未規制物質の採取
方法及び分析方法の検討が目的であるため、各モード
の試験をアルデヒド類は 6 回、その他の VOC は 3∼5
回、ベンゾ(a)ピレンは 1∼2 回行い、排出ガスの排出
傾向を確認した。
3
石英繊維ろ紙
HPLC
GC/MS
結果及び考察
図 1 にディーゼル C1 モードの各負荷条件における
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、
1,3-ブタジエン、
ベンゼン、トルエンの排出濃度を示す。
アルデヒド類は各モードの試料間のばらつきが小さ
く安定した結果が得られた。ホルムアルデヒドは全試
料で検出され、アセトアルデヒドも 1 条件を除き検出
された。
1,3-ブタジエンは試料間でばらつきが大きいケ
ースが見られたが、試料採取時間を長く取り試料を平
均化させること、試料採取から分析までの時間を短縮
することでばらつきが低減することが確認された。ま
た、ベンゼンは全ての試料で検出され、ばらつきも小
さく安定していた。ベンゾ(a)ピレンは全ての試料で検
出されたが、今回の調査では試料数が少ないことから
再現性を確認するまでには至らなかった。
各試験条件による結果を見ると、定格回転速度の
1600rpm では、全ての物質で負荷の減少とともに排出
して排ガスの採取及び分析を試みた結果、一部、試料
採取の条件や排出ガスの保存性などに留意することで、
濃度が増加する傾向が見られた。特に 10%負荷時にお
本分析法が概ね適用できることが確認された。エンジ
ける排出濃度の増加が顕著であった。中間回転速度の
ンの運転はC1 モードで行ったが、負荷の低下に伴い
1100rpm ではいずれも排出レベルは低く、ほとんどの
排出量が増大し、特にホルムアルデヒド、アセトアル
場合 1600rpm よりも低い排出濃度であった。アイドリ
ング(800rpm)ではホルムアルデヒド、アセトアルデ
デヒドの排出が顕著であること、また、アイドリング
時にこれら以外の物質も比較的多く排出される傾向が
ヒドが 40ppm 前後排出されており、
他の物質も比較的
見られ、未規制物質による環境への負荷が大きいこと
高濃度となっていた。全ての物質でアイドリング時の
が示唆された。
排出濃度は定格回転速度(1600rpm)の 10%負荷時よ
今回は単気筒エンジンを用いた結果であるが、本調
りは低いが、中・高負荷時に比べるとかなり高い結果
が得られた。
査と平行して産総研で多気筒エンジンを用いた調査も
実施されており、今後の未規制物質の排出特性につい
ての基礎的資料として有用であると考える。
4
まとめ
今回調査した未規制物質は排ガスの成分濃度として
本研究は、エネルギー総合工学研究所が経済産業省資源エ
は微量であるため、試料採取及び分析が難しいとされ
てきた。今回、環境測定で採用されている手法を応用
ネルギー方の予算で行った「オフロードエンジンから排出さ
れる未規制物質測定法の標準化に関する調査研究」における
成果の一部である。
1,3-C4H6
Formaldehyde
10
80
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
60
ppm
ppm
1600rpm
40
1600rpm
5
20
0
0
0
20
40
60
80
0
100
20
負荷(%)
40
60
負荷(
%)
80
100
Benzene
Acetoaldehyde
4
80
ppm
60
ppm
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
1600rpm
40
1600rpm
2
20
0
0
0
20
40
60
負荷(%)
80
0
100
20
40
60
80
100
負荷(%)
Toluene
Acrolein
2
2.5
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
1.5
ppm
800rpm
(アイドリング)
1100rpm
2
ppm
1600rpm
1600rpm
1
1
0.5
0
0
0
20
40
60
負荷(%)
80
100
0
20
40
60
負荷(%)
80
図 1 ディーゼル C1 モードの各負荷条件における各物質の排出濃度
100
油による環境汚染事故における油種判定に関する研究
環境保全部
○田原
るり子、尾原 裕昌*、永洞 真一郎、大塚 英幸
*現所属 石狩支庁地域振興部環境生活課
1 はじめに
に適応可能ではないことも演者らが行った調査に
わたしたちが住む社会では、人を含めた「もの」
の移動が非常に活発で、この移動によってわたし
おいてわかっており
4)GC
を補完する測定法が望
まれる。
たちの生活は支えられているといっても過言では
一方、分光測定は試料に含まれる物質の分子構
ない。この「もの」の流れを担っている船舶や車
造固有のパターンを示し、物質の量に比例した強
など移動手段の多くは石油を燃料としている。ま
度を示すことから、広い分野において定性及び定
た、石油は暖房や発電などの燃料としても利用さ
量分析に用いられている。このうち、溶液試料の
れており、現代社会において、石油は必要不可欠
紫外線−可視光吸収スペクトル(以下「吸収スペ
のものである。その一方で、石油が流出し周辺環
クトル」とする)や蛍光スペクトルは、溶媒の影
境を汚染する事故も起こっている。特に大規模輸
響を受けるため、各物質の同定が可能になるよう
送を担っている大型船舶による事故においては、
な鋭敏なスペクトルは示さないが、試料の「見た
平成9年に日本海沖で起こったナホトカ号による
目」を客観的に表現することや、試料中の物質を
重油流出事故のように、汚染の規模や被害が甚大
グループ化して把握することができるため、演者
なものになることがある。石油は非常に複雑な組
らは、分光測定は石油の油種特定に非常に有用で
成を持ち、更に遮光・密閉されていない開放系に
あると考えている。
おいては温度や光の影響を受け常に性状が変化す
さらに、各石油燃料は原油を蒸留・精製して製
る。そのため、
石油の流出事故が起きた場合には、
品化されていることから、各油種において構成物
流出前後での組成が一致せず油種特定を含めた原
質の分子量分布がそれぞれの範囲にあることが期
因究明が非常に困難となることがある。
待できる。
環境中にある流出油の油種特定については、
「油
そこで、演者らは環境に流出した石油の油種特
汚染対策ガイドライン」1)で、ガスクロマトグラ
定を有効に行うために、石油の主成分で分光法に
フ-水素イオン化検出(以下「GC-FID」とする)
よる測定が不可能な飽和炭化水素を GC-MS で、
法による全石油系炭化水素(TPH)試験が示され
そのほかの成分を分光測定で分析するほか、紫外
ている。この方法は、流出油の GC-FID クロマト
領域に吸収を持つ構成物質の分子量分布を測定し、
グラムパターンから流出油の油種判定を行うもの
データベース作成を行っている。本報告では、現
で、流出油に他の物質が混入していない場合、非
在まで収集したデータによって得られた各油種の
常に有効な方法である。しかしながら、FID は選
特徴について報告を行う。
択性の乏しい検出器であり妨害物質の影響を受け
2 方法
やすい。
流出油の油種特定については、検出器に選択性
2.1 調査対象試料
の高い質量分析計を用いたガスクロマトグラフ-
調査対象とした試料は、ガソリン、灯油、軽油、
質量分析計(以下「GC-MS」とする)を用いた報
A 重油、C 重油、廃油、再生油及び使用済みの潤
告があり、GC-MS も油種特定に有効な測定法で
滑油で、このうち石油はガソリンを除いて暖房や
2), 3)。しかしながら、GC
ボイラーにおいて熱源として使用されているもの
あることが示されている
を用いて油種特定を行う場合、対象物質を個々に
を対象とした。
測定するため、構成物質全体を把握することは難
しい。更にこれらの報告で示された各油種の炭化
水素組成については、必ずしも全ての流出油試料
2.2 吸収スペクトル測定
石油を原料とする燃料(以下「石油燃料」とす
表1
分子量分布の測定条件
0.12
Shodex GPC KF 402 HQ
カラム
0.1
(排除限界分子量 5000)
吸光度
0.08
0.06
カラム温度
40 °C
0.04
溶離液
テトラヒドロフラン
0.02
流量
0.3 mL / min
0
240
300
360
420
480
540
600
波長(nm)
図1
灯油の吸収スペクトル
検
出
器
UV
254 nm
250 ∼ 400 nm
DAD
バンド巾
7nm
ルを測定した。試料は測定波長での吸光度が 0.03
程度になるようにジクロロメタンで調製し、励起
波長 240 ∼ 500 nm、蛍光波長 250 ∼ 600 nm の範
囲で測定を行った。
灯油の 3DFl スペクトルを図2に示す。石油燃
図2
灯油の 3DFl スペクトル
る)のうち、重質油は色をもっており、流出が起
きた際、最初ににおいと色を手がかりに事故の場
所や規模を把握することが予想される。その「色」
は非常に感覚的なものであり、色調を正確に表現
することは難しい。そこで、石油燃料の「色」を
データとして得るために、吸収スペクトル法によ
り石油の「色」を測定した。試料はジクロロメタ
ンで希釈し、波長範囲 240 nm ∼ 600 nm の範囲で
測定を行った。
図1に灯油の吸収スペクトルを示す。270 nm
付近に吸収ピークが見られた。この吸収ピークは
ガソリンの吸収スペクトルでも見られたが、重質
油や潤滑油では見られなかったことから、軽質油
特有のピークであると考えられる。
2.3
三次元蛍光スペクトル
石油燃料の構成物質である芳香族炭化水素の中
には、蛍光を発するものがある。一般的に、蛍光
物質分子内の共役系が長くなるほど吸光及び発光
領域が長波長に移動する。三次元蛍光スペクトル
(以下「3DFl スペクトル」とする)は蛍光分子
の励起スペクトルと蛍光スペクトルを同時に測定
することから、蛍光分子を同定する際には非常に
有用な分光法である。そこで、石油燃料中の全て
の蛍光物質を「蛍光物質群」として捉え、その特
徴を把握するために、石油燃料の 3DFl スペクト
図3
ガソリン及び C 重油の
GPC クロマトグラム
上:ガソリン
下:C 重油
表2
分子量分布クロマトグラムによる各油種の特徴
油種
溶出時間
吸収波長範囲
極大吸収
ガソリン
9.5 ∼ 10.2 min
∼ 300 nm 付近
(10 min, 270 nm)付近
灯油
8.7 ∼ 10.2 min
∼ 320 nm 付近
(9.5 min, 270 nm)付近
(9.7 min, 270 nm)付近
軽油
8.5 ∼ 10.2 min
∼ 300 nm 付近
(9.5 min, 260 nm)付近
A 重油
8.5 ∼ 10.2 min
∼ 310 nm 付近
(9.7 min, 270 nm)付近
C 重油
6.2 ∼ 10.2 min
∼ 350 nm 付近
(7.4 min, 260 nm)付近
(9.7 min, 260 nm)付近
潤滑油系*
−
−
−
*潤滑油系:廃油、再生油及び使用済み潤滑油
料が重質になるにつれ、発光領域が広くなり、ま
グラムを示すことから、大まかな油種の特定が可
た、極大発光波長もガソリンが 290 nm 付近であ
能であることがわかった。
るのに対し、C 重油で 360 nm 付近であり、長波
長側への移動が観られた。しかしながら、励起波
3 今後の課題
長はどの油種においても 270 nm 付近でほとんど
今回報告した分光法及び GPC 法は、いずれも
変わらなかった。また、再生油や潤滑油について
試料を希釈するだけで分析に供しており、非常に
は、発光領域は A 重油や C 重油とほぼ同じだった
簡便な方法であるだけではなく、非破壊分析であ
が、蛍光強度が低い傾向が観られた。
るため試料が微量の時には非常に有効な方法であ
3DFl 測定においては、試料が石油燃料か潤滑
る。各測定法は、単独では油種特定に必ずしも有
油かどうか、石油燃料である場合「軽い」のか「重
効ではないものの、飽和炭化水素の GC 分析を含
い」のかという区別は可能であると考えられるが、
めた複数の分析法を組み合わせることで、非常に
測定者の主観に大きく依存するため、より客観的
有効な油種特定が行われると思われる。現段階で、
な解析方法が必要である。
これらの測定法による油種特定は測定者の主観に
2.4 分子量分布測定
大きく依存するため、今後はより客観的な解析方
石油燃料を構成する物質は多岐にわたっており、
法の検討と、石油燃料の流出後の性状変化の基本
その分子量は広範囲にわたって分布している。し
データを得るために、温度や光による試料の変化
かしながら、各石油燃料は蒸留・精製し製品化さ
について検討することが必要である。
れていることから、それぞれの石油燃料の分子量
はそれぞれ特定の範囲の中にあると期待される。
参考文献
そこで、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下
1)中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基
「GPC」とする)により石油燃料試料の分子量分布
準等専門委員会;油汚染対策ガイドライン,
の測定を行った。試料は吸光度が 1.0 を超えない
資料 A
平成 18 年 3 月)
ようにテトラヒドロフランで希釈し、GPC に供し
2)中牟田ら,環境化学,Vol. 11, p 815-826, 2001
た。GPC における測定条件を表1に示す。
3)藤原ら 兵庫県立健康科学研究センター紀要,
ダイオードアレイを検出器とした場合に、特徴
的な GPC クロマトグラムを示したガソリン及び
C 重油のクロマトグラムを図3に、更に各油種の
クロマトグラムの特徴を表2にまとめた。潤滑油
系の試料については、試料によって様々なクロマ
トグラムを示し、特徴付けることができなかった。
GPC クロマトグラムを用いる方法では軽油と
A 重油の区別及び潤滑油系試料の判定が困難では
あるが、ガソリン及び C 重油で特徴的なクロマト
2, 23-27 2005
4)田原ら,環境化学,Vol. 17, p 395-411, 2007
室蘭市における大気中 PCB モニタリング調査結果報告
環境保全部化学物質第二科
1.はじめに
日本安全環境事業株式会社(JESCO)が北海道
○永洞 真一郎 姉崎 克典
区及び白鳥台地区の 3 地点で実施しており、
2008 年度からは東地区及び祝津地区の 2 地点を
室蘭市において PCB 廃棄物処理事業を行う基本
追加して 5 地点での調査を実施している
(図 1)
。
計画が 2004 年(平成 16 年)に環境省から認可
PCB 廃棄物処理施設は、当初の運転開始計画よ
され、2006 年(平成 18 年)に着工した。これ
り遅れたものの、2008 年 5 月 21 日より本格運
に伴い、処理施設が周辺環境に影響を及ぼして
転を開始し、2009 年 2 月までに PCB 液処理量と
いないことを確認するため、
「北海道 PCB 廃棄物
して 48,306kg の処理を行っている 1)。今回我々
処理事業に係る環境モニタリング計画」が処理
は、施設の運転開始からほぼ 1 年を経過したこ
計画に基づいて策定され、北海道、室蘭市及び
とから、これまでの大気モニタリング調査の結
JESCO が連携して、適正な環境モニタリングと
果を総括するとともに、運転開始前と運転開始
発生源監視を行うこととなった。このモニタリ
後の大気中 PCB 濃度の変動に関して統計学的処
ング調査は施設からの排気や排水を調査する排
理による解析を試みたので報告する。
出源モニタリングと、室蘭市内の大気や室蘭港
内の海水および底質を調査する周辺環境モニタ
2.方法
リングからなっている。このうち環境大気モニ
大気中 PCB モニタリングにおけるサンプリン
タリングは、低流量(25L/分)のエアサンプラ
グは、紀本電子工業社製エアサンプラーおよび
ーを用いて 1 ヶ月間の連続採取を年 12 回行う月
新宅機械製作所製エアサンプラーに、捕集材と
別の測定と、中流量(100L/分)のエアサンプラ
して石英繊維ろ紙(QFF)
、ポリウレタンフォー
ーを用いて 1 週間の連続採取を年 4 回行う季節
ム(PUF)および活性炭フェルト(ACF)を装填
別の測定を 2006 年(平成 18 年度)より実施し
し、季節採取においては約 100 L /分、1 ヶ月採
ている。月別の測定は御前水地区測定局1カ所
取においては約 25L /分の吸引速度で約 1000m3
において、季節別の測定は御前水地区、輪西地
採取した。
その後各捕集材を高圧流体抽出
(PLE)
で抽出し、抽出液を多層カラム、HPLC 法による
クリンアップを行った後高分離能ガスクロマト
グラフ/高分解能質量分析計(HRGC/HRMS)を用
いて PCB を含めたダイオキシン類の濃度を測定
した。
3.結果と考察
3.1 季節変動の有意性とその寄与項目
各調査地点における、2006 年度以降の季節調
査の結果を図 2 に示す。この図から、PCB に関
しては夏期に上昇し冬期に低下する傾向がある
図 1 JESCO および測定地点の略図
ように見える。このことから、輪西地区、御前
白鳥台DXN
300
200
100
0
2006
2007
2008
春
夏
秋
TEQ value
(pg-TEQ/m3)
Concentration
(pg/m3)
白鳥台PCB
0.06
0.04
2006
2007
2008
0.02
0
春
冬
夏
秋
御前水DXN
400
300
200
100
0
2006
2007
2008
春
夏
秋
TEQ value
(pg-TEQ/m3)
Concentration
(pg/m3)
御前水PCB
0.06
0.04
0.02
0
2006
2007
2008
春
冬
夏
500
400
300
200
100
0
2006
2007
2008
夏
秋
2006
2007
2008
春
冬
夏
TEQ value
(pg-TEQ/m3)
Concentration
(pg/m3)
2007
2008
秋
0.04
2007
2008
0.02
0
春
冬
TEQ value
(pg-TEQ/m3)
Concentration
(pg/m3)
2007
2008
秋
夏
秋
冬
祝津地区DXN
800
600
400
200
0
夏
冬
0.06
祝津地区PCB
春
秋
東地区DXN
400
300
200
100
0
夏
冬
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
東地区PCB
春
秋
輪西DXN
TEQ value
(pg-TEQ/m3)
Concentration
(pg/m3)
輪西PCB
春
冬
0.06
0.04
2007
2008
0.02
0
冬
春
夏
秋
冬
図 2 大気中の PCB および DXN 濃度の季節変動
水地区および白鳥台地区の 3 地点の調査結果に
p<0.001 で有意であった 3)。このことから、大
関してノンパラメトリックな解析手法であるフ
気中 PCB 濃度の季節変動には気温が影響してい
リードマン検定(Friedman test)と、パラメト
ると考えられた。このことは他の研究者からも
リ ッ クな 解 析手 法 であ る二 元 配置 分散 分 析
指摘されている 4)。
(Twoway analysis of variance)により季節
3.2 運転前後における大気中 PCB 濃度の変化の
変動の有意性の検定を行った 2)。その結果、ど
有無
ちらの手法によっても p<0.05 で有意と判定さ
次に、PCB 廃棄物処理施設の運転前後におけ
れた。一方 PCDD/Fs に関しては季節変動に有意
る大気中 PCB 濃度の影響の有無を、1 ヶ月採取
性は認められなかった。PCB 濃度が有意な季節
調査の結果から検定を試みた。2009 年 2 月期ま
変動を示した理由を解明するため、月別調査に
での 1 ヶ月採取調査の結果を図 3 に示す。この
おける PCB 濃度と各種気象データとの相関係数
図からも夏期の濃度上昇が示唆されるが、この
を解析した結果、
平均気温が最も相関性が高く、
結果を、調査を開始した 2006 年 4 月から 2008
0.1
0.09
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
(□)TEQ VALUE (pg-TEQ/m3).
2月
12月
2009年1月
11月
9月
10月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
12月
2008年1月
11月
9月
10月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
12月
2007年1月
11月
9月
10月
8月
7月
6月
5月
PCBs
DXNs
2006年4月
(◇)PCB CONC. (pg/m3)
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
MONTH
図 3 大気中 PCB および DXN 濃度の月別変動
年 5 月までのデータと、2008 年 6 月から 2009
間の延長が予想される。今後も大気モニタリン
年 2 月までのデータに分け、ノンパラメトリッ
グ調査を継続的に実施し、周辺住民および道民
クな解析手法としてマン-ホイットニー検定
の安全かつ安心な生活の維持に貢献したいと考
(Mann -Whitney test)と、パラメトリックな
えている。
解析手法として二標本t検定(Two sample t
test)により検定を行った 2)。その結果、どち
5.参考文献
らの検定法によっても有意性は認められず、
1) 平成 20 年度北海道 PCB 廃棄物処理事業報告
2009 年 2 月期までの調査において PCB 廃棄物処
理施設の運転による大気中 PCB 濃度への影響は
検出できなかった。
会資料
2) 市原ら,
「バイオサイエンスの統計学」南江
堂(1990)
3) 渡邊ら,
「ビギナーのためのの統計学」共立
4.まとめと今後の方針
2006 年度から 2008 年度までの 3 年間の大気
中 PCB モニタリング調査の結果を統計学的に解
析した結果、大気中 PCB 濃度は有意な季節変動
を示すことが明らかとなり、この変動は気温の
変動と相関性を示した。また、処理施設の運転
開始に伴う大気中 PCB 濃度の有意な変動は認め
られなかった。
2009 年 3 月に開催された第 14 回北海道 PCB
廃棄物処理事業監視円卓会議の中で、PCB 廃棄
物処理施設はその安全性に関して細心の注意の
もとで運転している旨報告があった。当初の予
定では 2014 年度までに処理を完了する計画で
あるが、計画処理量に到達しておらず、第 2 期
施設の着工も延期されていることから、処理期
出版(1990)
4) Stern et al. , Environ. Sci. Technol.
Vol.31, pp36193628(1997)
秋期農村部における大気中のダイオキシン類調査
環境保全部 ○姉崎克典 山口勝透 永洞真一郎
1 はじめに
について検討することが必要である。
1990 年代に我が国においてダイオキシン類に
これらのことを踏まえ、北海道内のある農村地
よる環境汚染と食物等を介しての人体への暴露
域における秋期のダイオキシン類濃度の日間変
が社会問題化したことから、ダイオキシン類対策
動についての実態把握を実施し、原因となる要因
特別措置法(平成 11 年 7 月 16 日法律第 105 号)
や気象条件等と共に総合的な解析を行った。また、
が施行され主に廃棄物焼却施設などの発生源に
PCB についても分析を行い、ダイオキシン類との
対する規制が強化された。このことにより、現在
関連性及び汚染源の推定を行った。
の我が国のダイオキシン類排出量は 1990 年代後
半の 5%以下にまで低下し、それに伴い大気、水
2 調査
質、底質、土壌及び地下水といった環境中におけ
2.1 試料採取
るダイオキシン類についても、同法が定める環境
道央圏の農村地域において、ハイボリュームエ
基準値を超過する例はほとんど観測されなくな
アーサンプラー(紀本電子 Model123V、HV)を
ってきている。北海道においても平成 12 年より
地上 2m に設置し、
捕集材に石英繊維ろ紙
(QFF)
、
北海道内の各地において環境中のダイオキシン
2 個のポリウレタンフォーム(PUF)及び活性炭
類モニタリングが行われており、これまでいずれ
繊 維 フ ェ ル ト ( AF ) を 使 用 し て 、 吸 引 流 量
の環境媒体においても環境基準値を超過する事
700L/min で 2007 年 11 月 6 日から 27 日までの
例は観測されていない。しかしながら大気調査に
21 日間採取を行った。捕集材は毎日午前 10 時に
おいて、一部の地域で秋期(10∼11 月)にダイオ
交換した。サンプリングスパイクは QFF に添加
キシン類濃度が高くなる傾向が認められている。
した。QFF と PUF はそれぞれ高圧流体抽出装置
現在、大気中のダイオキシン類の測定は、ダイオ
(ダイオネクス ASE300、PLE)を用いて、AF
キシン類に係る大気環境調査マニュアルに基づ
は 100mL のアセトンで 20 分間超音波抽出した後、
き年平均値で評価していることから、秋期の濃度
PLE でさらに抽出した。それぞれの抽出液を合わ
によって大気環境基準値である 0.6 pg-TEQ/m3
せ粗抽出液とし、一定量分取後クリーンアップス
を超過することはほぼないと考えられるが、季節
パイクを添加した。次に多層シリカゲルカラムク
的なものとはいえ高濃度となる要因について考
ロマトグラフ操作及び高速液体クロマトグラフ
察し、濃度を低減する方策について検討すること
操作により夾雑物の除去及び PCB(DL-PCB を
が重要である。
含む。)とダイオキシン類のフラクションに分画
大気中のダイオキシン類の季節的な変動につ
し、それぞれ にシリン ジスパイク を添加して
いて調査は多くの研究者や行政機関によって行
20 L のノナン溶液として高分離能ガスクロマト
われている。しかしながら、特定の地域の特定の
グラフ(Aglent6890)-高分解能質量分析計(日
季節における日間の濃度変動について詳細に調
本電子 JSM700D)で分析した。
査検討した例はあまりない。これは、大気中のダ
イオキシン類のサンプリングには大きな労力を
2.2 測定地点の概況
要することがあると考えられる。しかし、他の大
調査地点は田園地帯が広がる平地に位置し、西
気汚染物質同様、ダイオキシン類についても気象
約 3 km に国道があるが、それ以外に目立った幹
要因の変化等に伴い濃度や組成が短期間内に変
線道路はない、平穏な農村地帯である。廃棄物焼
化することは容易に考えられ、これを詳細に評価
却炉等のダイオキシン類の固定発生源としては、
するためには 24 時間サンプリング法に基づき一
半径 10km 以内に一般廃棄物焼却炉と産業廃棄物
定期間連続して調査を行い、周辺環境との関連性
焼却炉があるが、それらの施設のダイオキシン類
表1 ダイオキシン類及びPCB濃度
濃度
PCBs
日付 ダイオキシン類
降水量
mm
pg-TEQ/m 3
pg/m 3
11/6
0.19
82
0
11/7
0.09
76
0
11/8
0.14
65
0
11/9
0.15
50
0
11/10
0.53
110
0
11/11
0.055
63
14
11/12
0.018
33
1
11/13
0.15
67
0
11/14
0.068
60
0
11/15
0.013
31
4
11/16
0.032
45
0
11/17
0.018
39
8
11/18
0.0085
26
9
11/19
0.028
35
4
11/20
0.016
26
9
11/21
0.0078
21
12
11/22
0.0058
31
8
11/23
0.043
50
1
11/24
0.066
55
0
11/25
0.11
90
0
11/26
0.013
34
1
降雪量
cm
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
9
5
2
24
17
0
0
0
0
気温
℃
5.6
5.4
4.1
1
3.4
6.9
6.4
5.7
5.8
-0.9
1.4
5.3
-3.8
-2.3
1.2
-4.7
-2.9
-2
0.4
5.9
2.8
SPM
mg/m 3
22
17.8
9.1
8.7
11.4
3.8
5.6
12.7
22.7
4.4
8.8
9.8
8.6
4.5
5.9
3.5
5.5
9.1
9.1
24.3
17.8
NOx
ppb
20.7
32.4
21.4
29.6
21.5
9.6
15.6
20.9
9.8
7.2
18.7
11.6
1.5
14.1
8.7
3.2
2
20.8
28.1
21.4
8
風速
m/s
3.5
2.5
2.8
2.4
2.4
3.2
3.9
2.9
3.3
4.3
3.3
5
7.9
4.9
6
7.3
9.3
4.2
2.5
3.1
7.4
主風向
NW, ENE
E
ENE
NE,NNE
ENE
ENE
NNE
SE, SSE
WNW
W
SSE
SSE
W
SSE
WNW
W
W
W, SSE
SE, SSE
SSE
WNW, W
の排出濃度や調査地点からの距離から、大気中の
れの日においても最も大きな寄与を示しており、
ダイオキシン類濃度への影響はほとんど無いと
次いで PeCDFs と TeCDDs が同程度で続き、概
考えられる。調査期間中は概ね西方向からの風が
ね低塩素化体のダイオキシン類が高い割合を示
優勢であり風速も強いが、南東及び北東方向が優
した。PCBs では、いずれの日においても概ね
勢の場合もあり、この間は風速はあまり強くなく、 MoCBs(一塩素化体)∼PeCBs(五塩素化体)の
比較的晴天の日が続き、夜間における大気は安定
いわゆる低塩素化体の PCBs で 90%以上の寄与を
傾向にあった。
示していた。この低塩素化体の中における各同族
体の割合は、日のよって異なり、特に MoCBs に
3 結果と考察
ついては 5%以下の日もあれば 40%弱の大きな寄
3.1 濃度レベルと同族体組成
与を示す日もあった。
表 1 に各測定日のダイオキシン類及び PCBs 濃
度、並びに気象パラメーターと SPM 及び NOx
の測定結果を示す。21 日間のダイオキシン類及び
PCBs 濃度の濃度範囲と幾何平均値はそれぞれ
表 2 に各気象パラメーター等との相関を示す。
3.2.1 気温
pg-TEQ/m3、21
一般に PCB は半揮発性であることから、気温
pg/m3 であった。初降雪が観測
が低い場合には土壌等に沈着し、気温の上昇に伴
される 11 月 15 日以前までのダイオキシン類濃度
い大気へ移行し長距離移動すると言われ、特に
の平均は 0.14 pg-TEQ/m3 であり、やや高いレベ
15℃以上になると指数関数的に大気中の濃度が
ルにあった。同族体組成では、ダイオキシン類は
上昇することが知られている。本調査では-4.7∼
概ね PCDDs(TeCDDs∼OCDD)が全体の 10∼
6.9℃の変動幅であったことから、揮発による影響
20%程度であったのに対し、PCDFs(TeCDFs∼
について明確な結論を得ることは困難であった
OCDF)が全体の 20∼60%程度を、DL-PCB が
が、気温が高いほど濃度が高くなる一定の傾向は
10∼60%程度を占め PCDDs に比べ割合の変動幅
認められた(有意水準(p)<0.01)。ダイオキシ
が大きかった。DL-PCB を除くと TeCDFs がいず
ン類についても、気温が高いときほど高い濃度に
0.0058∼0.53
∼110
pg-TEQ/m3、0.042
3.2 気象条件との関係
pg/m3、47
表2 相関マトリクス
PCBs
ダイオキシン類
PCBs
−
0.82 †††
ダイオキシン類
0.82 †††
−
降水量
0.52 †
0.41
降雪量
-0.49 †
-0.29
気温
0.60 ††
0.31
SPM
0.60 ††
0.28
NOx
0.64 ††
0.46 †
風速
-0.70 †††
-0.51 †
†:p<0.05, ††:p<0.01, †††:p<0.001
なりやすい傾向は認められるが、統計的な有意性
イオキシン類及び PCBs が吸着し土壌へ移行する、
を求めることはできなかった(p>0.05)。ダイオ
すなわちウォッシュアウト効果により、大気中の
キシン類は PCB ほど揮発による大気への移動は
ダイオキシン類及び PCBs 濃度が低下したものと
起こりづらい上、気温も低い時期であったことか
推測された。
ら、ダイオキシン類の濃度変動と気温との関連性
は低いものと推測された。
3.3 ケミカルマスバランス法を用いた解析
汚染物質の発生源の環境への影響について統
3.2.2 風
計的に解析するモデルとしてケミカルマスバラ
風速との関係では、ダイオキシン類が p<0.05、
ンス法が提案されている。これは環境中における
PCBs が p<0.001 でいずれも負の相関が認められ
任意の物質の成分の濃度や組成比は、既知の幾つ
た。一般に大気環境汚染物質の濃度は風速が早く
かの発生源からの成分の合計であるという仮定
なるとより拡散が促進されることから低くなる
に基づき、統計学的にその寄与を算出するもので
傾向があるが、今回の調査結果もこれを支持する
ある。本調査において対象としたダイオキシン類
ものであった。
及び PCBs についても幾つかの解析モデル(関数
関係解析によるケミカルマスバランス法)が提案
3.2.3 降水量と降雪量
されていることから、これを用いて特に燃焼発生
図 1 に各日におけるダイオキシン類濃度と降水
源の寄与についての解析を行った。しかしながら、
量及び降雪量の関係を示す。相関分析においては、 ダイオキシン類の異性体情報を基にした解析 1)で
降水量及び降雪量との間に有意な相関関係は認
は、殆どの日において燃焼発生源の寄与が 80%を
められなかった(p>0.05)が、ダイオキシン類濃
超えていた。また、ダイオキシン類濃度と燃焼由
度 が 調 査 期 間 に お け る 幾 何 平 均 値 ( 0.042
来の寄与には特に関連性は認められなかった。一
pg-TEQ/m3)を上回っていた比較的高かった日に
方 PCB の異性体情報を基にした解析 2)では、全
おいては降水及び降雪はほとんど認められず、他
調査期間中で KC300 が 50.7%で最も高い寄与を
方一定以上の降水及び降雪があった日ではダイ
示し、次いで燃焼由来(32.9%)
、KC500(15.4%)
オキシン類濃度が低くなっている傾向が認めら
と続き、KC400 と KC600 の寄与はほとんど認め
れた。これは PCBs においても同様であった。今
られなかった。しかしながら、KC300 と燃焼につ
回の調査期間において降水及び降雪が観測され
いての寄与の最大及び最小は KC300 で 75.8%、
た日は、概ね風速が強い傾向があり大気の拡散が
20.6%、燃焼で 73.7%、9.8%で大きな開きがあっ
促進されていたこと、さらに雨や雪に大気中のダ
た。
(図 2)
20
降水量
降雪量
ダイオキシン類濃度
15
0.5
0.4
0.3
10
0.2
5
0.1
0
0
/6 /7 /8 /9 1 0 1 1 1 2 1 3 1 4 1 5 1 6 1 7 1 8 1 9 2 0 2 1 2 2 2 3 2 4 2 5 2 6
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1/ 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 / 1 1 /
図 1 ダイオキシン類濃度と降水・降雪量の関係
80%
燃焼
60%
KC600
割合
25
100%
0.6
ダイオキシン類濃度 (pg-TEQ/m 3)
降水量 (mm) 降雪量 (cm)
30
KC500
KC400
40%
KC300
20%
0%
11
/ 6 1/ 7 1/ 8 1/ 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18 / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26
1 1 1 11 1 1 11 1 1 1 1 1 1 11 1 1 11 1 1 11 1 1 1 1 1 1 11 1 1 11
図 2 PCB の発生源解析
一方、各測定日の PCBs 濃度にその日の全 KC の
ち、ダイオキシン類濃度が高くなる場合は何らか
寄与率を乗じ、大気中における KC 由来の PCBs
の燃焼発生源が寄与していることが強く示唆さ
の絶対濃度を算出したところ(図 3)
、KC 由来の
れた。
PCBs 濃度は概ね 30 pg/m3 程度であり、特に 11
月 10 日及び 25 日の様に比較的 PCBs 濃度が高か
5 参考文献
った日においても、KC 由来の PCBs 濃度は他の
1)
鈴木貴博,山口晃,茨木剛,大野勝之,村山
測定日と大きな差はなかった。すなわちこれは大
等,澁谷信雄,橋本俊次,柏木宣久:関数関
気中における KC 由来の PCBs の寄与は概ね一定
係解析によるケミカルマスバランス法を用
であり、燃焼由来の PCBs が調査地点のおける
いたダイオキシン類の発生源寄与率推定法
PCB 濃度の変動に大きく寄与していたことを示
に関する検討,環境化学,16,437-448(2006)
している。また、ダイオキシン類が高い日では全
2) 姉崎克典,山口勝透,棗庄輔,岩田理樹,橋
PCBs 濃度と KC 由来の PCBs 濃度が乖離し、逆に
本俊次:統計学的手法を用いるポリ塩化ビフ
ダイオキシン類が低い日では両者がほぼ同程度
ェニルの汚染由来の推定,分析化学,56,
の濃度となる傾向が認められた。これはダイオキ
639-648(2007)
シン類濃度と PCBs における燃焼由来の寄与は密
接に関連していることを示しており、大気中のダ
イオキシン類の変動が燃焼発生源の影響を強く
受けていることが強く示唆された。
0.7
3
PCBs(pg/m )
100
80
0.6
KC source PCBs(predicted)
dioxins(measured)
0.5
0.4
60
0.3
40
0.2
20
3
PCBs(measured)
dioxins(pg-TEQ/m )
120
0.1
0
0
/6 /7 /8 /9 10 1 1 12 1 3 14 1 5 16 17 1 8 1 9 2 0 21 2 2 23 2 4 2 5 2 6
1 1 1 1 11 1 1 1 1/ 11 / 1 1 / 11 / 1 1/ 11 / 1 1/ 1 1 / 1 1/ 11 / 11 / 1 1/ 11 / 1 1 / 11 / 1 1/ 11 /
図 3 KC 由来の PCB 濃度
4 まとめ
農村地域における環境大気の秋期のダイオキ
シン類及び PCBs の日間変動について調査を行っ
た。計 21 日間の調査におけるダイオキシン類濃
度の濃度範囲は 0.0058∼0.53 pg-TEQ/m3 であり、
幾何平均値は 0.042 pg-TEQ/m3 だった。また、全
体的に調査期間中の前半にダイオキシン類濃度
が高い傾向が認められた。ダイオキシン類が高濃
度となる気象的要因としては、①風速が弱いこと、
②降水(降雪)が少ないこと、③大気が安定であ
ること、等が確認された。また、ケミカルマスバ
ランス法による解析から、調査地点の大気中のダ
イオキシン類のほとんどが燃焼発生源由来であ
ったが、PCBs についてはダイオキシン類濃度が
高い時は燃焼発生源由来の寄与が強く、低い場合
はカネクロールの寄与が強くなっていた。すなわ