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「新産業構造ビジョン」
~第4次産業革命をリードする日本の戦略~
平成28年8月
経済産業省
アベノミクス成長戦略は、今、どこにいるのか?
長年の構造改革のタブーへの切り込み
(電力・農業・医療等での岩盤規制改革、
国家戦略特区)
旧3本の矢により、円高、高い法人税、
TPPの妥結遅れ等の6重苦は解消の方向へ。
史上最高水準の雇用状況・企業収益
しかし、民間の動きはいまだ力強さを欠く
1
先進国共通の課題
「長期停滞」(Secular Stagnation)
需要面:新たな需要創出の欠如
供給面:生産性の長期伸び悩み
今、求められるもの(成長戦略第二ステージの課題)
イノベーションの社会実装による
・ 潜在需要を開花させる新たな製品・サービスの創出
・ 生産性革命
最大の鍵は「第四次産業革命」
(IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット)
2
「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)
 IoT・ビッグデータ・人工知能等による変革は、従来にないスピードとインパクトで進行
 民間が時機を失うことなく的確な投資を行い、また、国がそれを促し加速するためのルー
ルの整備・変更を遅滞なく講じていくためには、羅針盤となる官民共有のビジョンが必要
 ① IoT・ビッグデータ・人工知能がもたらす変革の姿や時期(産業構造、就業構造、経
済社会システムの変革)、②ビジネスチャンスの可能性、③官民が行うべき対応(規制
制度改革、研究開発・設備・人材投資等)、について時間軸を明確にしながら検討
 産業構造審議会に「新産業構造部会」(部会長伊藤元重東京大学教授)を立ち上
げ(平成27年8月)、関係省庁と一体となって「新産業構造ビジョン」の策定に向けた検
討を進めてきた。
 平成28年4月27日に中間整理。
参加省庁
内閣府、公正取引委員会、金融庁、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省
3
新産業構造部会 委員 (2015年8月時点)
新産業構造部会 委員
部会長 伊藤 元重
伊佐山 元
石戸 奈々子
金丸 恭文
佐藤 康博
志賀 俊之
橘 フクシマ 咲江
土居 丈朗
冨山 和彦
長嶋 由紀子
中西 宏明
南場 智子
松尾 豊
宮島 香澄
村井 純
東京大学大学院 経済学研究科教授
株式会社WiL 共同創業者CEO
NPO法人CANVAS理事長 慶應義塾大学准教授
フューチャーアーキテクト株式会社 代表取締役会長
株式会社みずほフィナンシャルグループ 社長、全国銀行協会 会長
日産自動車株式会社 取締役副会長、株式会社産業革新機構 代表取締役会長CEO
G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長
慶應義塾大学 経済学部教授
株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO
株式会社リクルートホールディングス 執行役員
株式会社日立製作所 取締役 代表執行役 執行役会長兼CEO
株式会社ディー・エヌ・エー 取締役会長
東京大学大学院 工学系研究科准教授
日本テレビ放送網株式会社 報道局 解説委員
慶應義塾大学 環境情報学部長
4
新産業構造部会 ゲスト
安宅和人
程 近智
西川 徹
逢見直人
岡島博司
大橋 弘
ヤフー株式会社 CSO (第2回~第8回、フォローアップ会議(以下「FU会議」)
アクセンチュア株式会社 取締役会長(第3回、FU会議)
株式会社プリファード・ネットワークス 代表取締役社長(第4回、FU会議)
日本労働組合総連合会事務局長(第5回)
トヨタリサーチインスティテュート エグゼクティブリエゾンオフィサー(第6回、FU会議)
東京大学大学院 経済学研究科教授(第7回)
Gill. A. Pratt
Vijay Kumar
Daniela Rus
神成 淳司
高橋 政代
矢野 和男
TOYOTA Research Institute CEO(FU会議)
ペンシルベニア大学 工学応用科学部 学部長 (FU会議)
MITコンピューター科学人工知能研究所 所長 (FU会議)
慶應義塾大学環境情報学部准教授/医学部准教授/内閣官房副政府CIO(FU会議)
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発PJリーダー(FU会議)
日立製作所 研究開発グループ 技師長 (FU会議)
5
1.今、何が起こっているのか?
6
今、何が起こっているのか?① ~技術のブレークスルー~
 実社会のあらゆる事業・情報が、データ化・ネットワークを通じて自由にやりとり可能に(IoT)
 集まった大量のデータを分析し、新たな価値を生む形で利用可能に(ビッグデータ)
 機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断が可能に(人工知能(AI))
 多様かつ複雑な作業についても自動化が可能に(ロボット)
→ これまで実現不可能と思われていた社会の実現が可能に。
これに伴い、産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性。
データ量の増加
世界のデータ量は
2年ごとに倍増。
処理性能の向上
AIの非連続的進化
ハードウェアの性能は、
指数関数的に進化。
ディープラーニング等
によりAI技術が
非連続的に発展。
7
技術(共通基盤技術×産業コア技術)×関連データ
技術
共通基盤技術
(人工知能、
IoT、ロボット)
関連データ
様々な財・サービス
金融技術
購買・商流データ、
金融市場データ
取引・決済データによる与信、
ロボアドバイザー(資産運用)等
医薬品開発技術
健康医療データ
個別化医薬品、
個別化健康・美容サービス 等
生物データ
新規創薬、新種作物、先端材料製造、
バイオエネルギー 等
エネルギー負荷機器
制御技術
顧客データ
エネルギーデマンドレスポンス、
見守りサービス 等
生産管理技術
事故・ヒヤリハットデータ
異常・予兆の早期検知等による安全性・
生産性向上、保険・格付けの高度化 等
バイオインフォマティクス
ゲノム編集
8
今、何が起こっているのか?② ~第4次産業革命~
 この技術のブレークスルーは、
① 大量生産・画一的サービスから、個々のニーズに合わせたカスタマイズ生産・サービスへ
(個別化医療、即時オーダーメイド服、各人の理解度に合わせた教育)
② 社会に眠っている資産と、個々のニーズを、コストゼロでマッチング(Uber、Airbnb等)
③ 人間の役割、認識・学習機能のサポートや代替(自動走行、ドローン施工管理・配送)
④ 新たなサービスの創出、製品やモノのサービス化(設備売り切りから、センサーデータを
活用した稼働・保全・保険サービスへ)、データ共有によるサプライチェーン全体での効
率性の飛躍的向上(生産設備と物流・発送・決済システムの統合)を可能にする
⑤ 第4次産業革命の技術は全ての産業における革新のための共通の基盤技術であり、
様々な各分野における技術革新・ビジネスモデルと結びつくことで、全く新たなニーズの充
足が可能に(ゲノム編集技術×バイオデータ=新規創薬、新種作物、バイオエネルギー等)
第1次産業革命
動力を獲得
(蒸気機関)
第2次産業革命
動力が革新
(電力・モーター)
第3次産業革命
自動化が進む
(コンピュータ)
第4次産業革命
自律的な最適化が可能に
(大量の情報を基に人工知能が
自ら考えて最適な行動を取る)
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例 サービス産業化の取組事例①
具体的事例 ①ものづくり革新・産業保安・流通・小売
(米:Boeing
)
(米:Boeing)
 Boeingは製品・機器売りからデータ解析サービスを提供、運航管理サービスまで幅広く
利益を得られるビジネスモデルを構築。
 また、自社のセキュリティシステム構築・運用に係るノウハウを基に、サイバーセキュリティソ
リューション事業にも進出。
• Alaska Airなどの航空会社とデータ解析技術
を共同開発。リアルタイムに最適な燃料消費、
天候条件に応じた最適な航路計算ができるシ
ステムを航空会社等に提供。
• セキュリティアウトソーシングの分野に参入しビジ
ネスを拡大。コンサルタントやエンジニアなど約
1000人の体制で、 米国国防総省をはじめ、
政府機関や大企業などへソリューションを提供
し、年率5%の売り上げ成長を実現。
(Boeing社の描くサイバーセキュリティの未来)
(出所:Boeing Web)
10
具体的事例 ①ものづくり革新・産業保安・流通・小売
(独:Industrie 4.0)
サプライチェーン全体を機器・製品レベルでネットーワーク化し、設計・生産から小売・保守までの
全体で効率化することを目指して、産官学共同のアクションプランを2012年に発表。
ー 政府(連邦経済エネルギー省、連邦教育研究省)は、総額3.5億ユーロ以上を助成
ー 運営組織には、ドイツ内外の主要企業(シーメンス、SAP、ボッシュ、ダイムラー、ABB等)
が参加
(インダストリー4.0で目指す自律生産システムのイメージ)
稼働率に余裕のある工場で部品を増産
ドイツ製設備
(稼働率高)
部品
部品
メーカーB
部品
部品
メーカーA
国際標準化された通信規格
製品
需要を予測の上、
予め生産された
出来たての製品を
直ちに出荷
完成品
メーカー
ドイツ製
設備
ドイツ製設備
(稼働率
低)
○通信規格の国際標準化
○サプライチェーンや顧客との間で、
リアルタイムにデータを共有・分析
○設備稼働率平準化、多品種少量生産、
異常の早期発見、需要予測などが可能に
顧客
ドイツの2つの狙い
① 国内製造業の輸出競争力強化
大量の需要発生!
(工場の国内回帰、中小企業の生産性向上)
② ドイツ生産技術で世界の工場を席巻
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例 自動運転・隊列走行の取組事例
具体的事例 ①ものづくり革新・産業保安・流通・小売
(米:Daimler)
(米:Daimler)
○Daimlerは、米国ネバダ州で世界で初めて自律走行トラックの認可を得る。
高速道路において安全な車間距離を維持するための自動走行機能を搭載、
ドライバーは座席を離れてはいけないことが条件。
ダイムラーの自律
走行トラック
○ドライバー不足などの課題を抱える中、大手物流業者は、隊列走行や幹線に
おける共同輸送への関心あり。
運転・センサデバイスの配置
3台隊列走行時の燃費向上の見込み
創出される価値
○ドライバー不足対策や労働環境の改善
○積載率向上による物流効率化、隊列走行による燃費向上
出所:Daimler web; Freightliner; CARJAM TV.COM
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具体的事例 ①ものづくり革新・産業保安・流通・小売
(米:Amazon)
 Amazonはドローンによる商品配送“Amazon Prime Air”の実現を目指し、飛行テ
ストを実施。
 顧客の購入履歴の分析を活用した地域単位での物流システムの最適化と併せて活用
することで注文から配達までの時間を30分以内とすることを目指す。
• Amazon CEOのJeff Bezosは2013年12月、ド
ローンによる商品配送技術を公開した。このサービス
は“Amazon Prime Air”と呼ばれ、ドローンで注文
を受けた商品を配送する。商品重量は5ポンドまでで、
配達時間は30分以内。配送距離は配送センターか
ら10マイル以内をカバーする。
• 2015年3月にFAAから飛行テスト許可が出されてい
る。条件は400フィート以下、日中で視野の範囲内
でのテストのみ。
• Amazonは、高度500フィート以下400フィートまで
の空間は、ドローン立ち入り禁止区域とし、有人航空
機との接触を避ける。 400フィート以下の空域をド
ローンの性能により、4つの空域に分離飛行すること
を提案している。
(出所:Amazon Web)
(出所:NASA Web)
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例 供給効率性と保安力向上の両立②
具体的事例 ①ものづくり革新・産業保安・流通・小売
(日:NEC・アズビル等)
(日:NEC・アズビル等)
 NEC・アズビル等は、プラント内で既に蓄積されている様々な数値(温度、圧力、流量
等)を解析し、現在のデータと比較することによって、プラントの異常の検知や未来の変
動の予測を行うシステムを開発。
 人間が気付かない変化を感知できる点、複雑な設定が不要な点等、極めて有用性が
高い。
異常・予兆検知システム
アラーム受信
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有力分野における変革の方向性(イメージ)①
ものづくり革新・産業保安・流通・小売
・大量生産工場を用いて即時対応・オーダーメイド生産が可能に。
・製造・物流・販売をデータで連携させることでムダゼロ・リードタイムゼロが可能に。
・ドローンを用いた物流も本格化。
・プラントの常時監視により、異常・予兆の早期検知、適切なアラームが可能に
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具体的事例 ②金融(Fintech)
(米:On Deck)
 2007年設立の小規模事業者向けのビジネスローン業者。3から24ヶ月の期間で5千
ドルから25万ドルを貸し付けるターム・ローンと、2万ドルまでのクレジット・ラインが主な提
供ローンで、2015年時点で、4万以上の事業者に30億ドル以上のローンを実行。
 自 社 開 発 の オ ン ラ イ ン 会 計 ソ フ ト と 個 人 資 産 管 理 ( Private Finance
Management)に加えネット上の評判や財務情報等の法人属性といった情報を組
み合わせて評価し、自動的にローン申し込みを審査(24時間以内にターム・ローンは
返答)する審査アルゴリズムを開発。 2014年にスペインの大手銀行グループBBVAと、
2015年にはJPモルガンと提携し、中小事業者向けの審査アルゴリズムを提供。
創業から8年で融資額が30億ドルに到達
(出所: OnDeck website; NewYorkTimes; CrunchBase)
オンライン申請を(自動)審査して判断を下す
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具体的事例 ②金融(Fintech)
(日:マネーフォワード)
 BtoBでは、会計管理や請求書情報、給与情報等を結びつけて中小企業のバック
オフィス業務を効率化するクラウドサービス(MFクラウド)を提供。ユーザー数50万超。
 蓄積されたデータを金融機関と共有し、資金調達を支援するサービスも開始予定。
 BtoCでは、銀行口座やクレジットカードなどを登録することで、家計の収入・支出を自
動で記録する全自動の「家計簿アプリ」を提供。350万人がダウンロード。
 銀行の入出金やクレジットカード履歴をもとに、食費や光熱費などのカテゴリに自動で分
類して家計簿を作成。
(出所: マネーフォワード社 HP)
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具体的事例
例 カスタマイズ保険商品の例①
②金融(Fintech)
(米:Metromile)
(米:Metromile)
 従来の自動車保険は、年齢や職業、過去の事故履歴と言ったドライバーの属性に基づ
いて一律に保険料が設定される。
 Metromileは、同様の属性を持つドライバーでも実際の運転頻度によって実際のリスク
量が異なることに着目。
 実際の走行距離をリアルタイムで把握できるデバイスを自動車に設置することで、走行
距離に応じて従量的に保険料が上昇する自動車保険を提供。
 また、従来、UBERのドライバーは、顧客を乗せていない時は無保険状態であったが、
UBERとの連携により無保険状態を解消できるサービスを提供。
(出所:metromile Web, Scrum Ventures IoT for Consumer レポート )
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例 ECサイト事業者による包括的な金融サービス提供の例①
具体的事例
②金融(Fintech)
(中:アリババ)
(中:アリババ)
 アリババはBtoB向けEコマース(企業間電子取引)から事業領域を拡大し、現在で
は、BtoC・CtoCのオンライン取引プラットフォームや決済サービス、クラウドコンピューティ
ングサービス等を提供。
・アリババが提供する主なサービス
阿里巴巴(Alibaba.com)
→BtoB電子商取引
天猫(Tモール)
→BtoCオンラインショッピングモール
淘宝網(taobao)
→CtoCマーケットプレイス
支付宝(Alipay)
→オンライン決済サービスの提供
阿里雲
→クラウドコンピューティングサービスの開発
(出所: Alibaba社 HP)
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具体的事例 ②金融(Fintech)
(参考)分散型台帳、ブロックチェーン技術による革新の可能性
(ブロックチェーン)
 コスト面やセキュリティ面、拡張性等で分散型台帳、ブロックチェーン技術がブレイクス
ルーとなる可能性が指摘されている。
(出所)産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 第2回 「株式会社野村リサーチアンドアドバイザリー 小川様 御提出資料」
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具体的事例 ②金融(Fintech)
(参考)分散型台帳、ブロックチェーンの応用可能性
(ブロックチェーン)
 現在の主たる用途はビットコイン等の仮想通貨だが、米・NASDAQが未公開株の取引
に活用するなど、他の金融領域での活用が行われている他、金融以外の分野での応
用可能性も指摘されている。
(出所)産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会) 第5回 「株式会社orb 妹尾様 御提出資料」
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有力分野における変革の方向性(イメージ)②
金融(Fintech)
・ネット上での少額の決済・送金や、データに基づく迅速な与信審査が可能となり、従来
困難だった決済・送金や資金調達等が可能に。
・会社の経営状況や企業会計、家計のリアルタイムでの見える化により、効率的な企業
のバックオフィス業務や家計管理が可能に。
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具体的事例 ③健康・医療・介護
(米:Fitbit、日:FiNC)
 様々な健康データを組み合わせて分析することで、各個人の健康リスクに見合ったサービ
スの提供や受診勧奨を行うことが可能に(例:活動量に基づく個々人に最適な運動
プランの提示、生活習慣病予防のための食生活のアドバイス)。
 将来的には、個人のライフログなど情報が収集された上、IoTによるモニタリングが進むこと
が見込まれる。
 米Fitbitは、人々の運動や睡眠といった活動
状況、食事、体重などを記録する活動量計
等とネットサービスを開発・販売するメーカー。
心拍計や活動量計により得られたデータをクラ
ウド上で管理し、利用者に歩数や移動距離、
消費カロリーなどを見える化。「fitbitトレー
ナー」では、個々人の活動目標と活動実績に
応じてカスタマイズされたフィットネスプランを提
供。
(出所: Fitbit Web )
 日FiNCは、2016年4月より法人向け健康経営ソリュー
ション「FiNCプラス」を提供開始。ライフログやパーソナル
サーベイを元に、最適な生活習慣改善タスクの提案や専
門家との無料チャット等を提供。法人向けに展開すること
で、従業員更に従業員の家族が利用でき、未病対策の
ポピュレーションアプローチとして浸透中。
 従業員の健康診断データに基づき、FiNCプラスをプラット
フォームに、適切な保健事業の提供及びPDCAサイクルを
実施。コラボヘルスガイドラインとして各企業・各健保に横
展開できるようなプログラムを実証実験を行いながら策定
予定。
 また2016年4月よりソフトバンクとともにIBM Watsonを
活用し、パーソナルコーチを人工知能に置き換えた「パーソ
ナルカラダサポート」を提供
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具体的事例 ③健康・医療・介護
(米:Carilion Clinic)
 バージニア州のCarilion Clinicでは、 IBMが開発した人工知能ワトソン(Watson)
の自然言語処理の技術とデータ分析の能力を使い、特定の病気のリスクを持つ患者を
自動的に探し出すシステムを導入。
 通常の診察行為だけでは見落としがちな「未病」の傾向を事前に発見することで、健康
寿命の長期化が実現可能。また、これに伴う医療費の大幅な削減も期待できる。
心臓病は入院患者がもっとも多い病気の1つであり、
電子カルテを使用していても、詳細な情報が医療メモ
に埋もれてしまうことも少なくないため、Carilion
ClinicはIBMと協力して医療データから心臓病患者
を予測分析する取り組みを実施。
(35万人の患者情報の他に、2,000万件分の医
療メモなどのデータ基に予測分析を行った結果、1年
以内に心臓病を発症する可能性がある患者8,500
人の特定に成功し、85%の精度。その中の3,500
人は従来の分析では見落としていた可能性があると
見られる。)
(出所: IBM Web )
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例 高度なロボット技術の活用の例
具体的事例 ③健康・医療・介護
(日:慶應義塾大学、川崎重工業、トップ等)
(日:慶應義塾大学、川崎重工業、トップ等)
 高度なロボット技術を活用することで、医師が手術野を俯瞰しながら、医師の手足と協
調した医療機器の操作が可能に。
 深部の病変に対して開腹が不要となり、低侵襲の治療を実現。
【機器・システムの概要】
 手術中にリアルタイムで重要な器官を確認するため、広い
視野を高精度に捉える内視鏡に患部を識別可能なセン
サーを搭載。
①手術野を俯瞰する内視鏡(眼)
患部を識別可能な新型センサーを搭載
 ロボット鉗子は直感的な操作により独立して動き、広い動
作範囲と高い把持力で、多様な手術方法に対応可能。
②眼と独立に動くロボット鉗子(手)
広い動作範囲と高い把持力で、多様な手術方法に対応可能
③ロボット鉗子操作装置
直観的な操作で安全かつ微細にロボット鉗子を操作
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有力分野における変革の方向性(イメージ)③
健康・医療・介護
・健康/医療関連データの利活用により、各個人に見合った健康・予防サービスを提供
する事が可能に。
・人工知能により認識・制御機能を向上させた医療・介護ロボットの実装が進み、医
療・介護現場の負担を軽減。
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具体的事例 ④スマートハウス・スマートコミュニティ・エネルギー
例 電気自動車等とエネルギーマネジメントシステムの連携
(日)
■電気自動車等の蓄電能力を活用することで、太陽光などの再生エネルギーの効果的利用が可能に。
■電気自動車等の走行計画と天気予測による太陽光発電量、住宅での電力使用量といった多様な
データを分析することで、省エネルギーを実現することが可能に。
■また、多数の電気自動車等が、コミュニティ内のエネルギーマネジメントシステムと連携することで、需要
家側のエネルギーリソースを地域の電力需給の最適化に活用することが可能に。
横浜スマートシティプロジェクトでの取組
(1)太陽光発電システムの電力を、EVに搭載した
蓄電池に充電したり、逆に蓄電池から住宅に電力
を供給したりするV2Hシステムを開発し、戸建て住
宅に設置
(2)CEMS(Community Energy
Management System)と連携したデマンドレス
ポンスに対応する蓄電池と太陽光発電システムを
利用した充電スタンドのEMSを開発し、EVシェアリ
ングで実証
(出所:JAPAN SMART CITY PORTAL(新エネルギー導入促進協議会運営)より)
(3)EVを活用したDRの電力需要調整の実証
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具体的事例 ④スマートハウス・スマートコミュニティ・エネルギー
(米:Google、Apple、Amazon)
 ユーザーとのインタフェースを獲得し、様々な機器やサービスの情報を一元的に集約することによって、
新たな付加価値を創出するプラットフォーマーが登場する可能性。
Apple(米)
Google/NEST(米)
On Hub
[出所:Apple website]
 Googleは人工知能を搭載したスマートサーモスタットメー
カーNESTを2014年に買収。
 室内の状況やユーザーの行動パターンを感知・学習し、空
調や照明等のスマート機器を最適に自動制御するとともに、
電力会社からの遠隔制御により、需要を直接制御するこ
とも可能であり、高いDR効果を実現。
 さらに、NESTに蓄積される家の中の情報やユーザー行動
の情報を活用した新たなサービス事業の展開も検討。
 また、Wi-Fiルータである「On Hub」を2015年に発売
(日本未発売)。将来的に家庭内のIoTデバイスのハブ
となる可能性。
[出所:みずほ銀行説明資料、Google website]
 Appleはスマートハウスの規格
である「Homekit」を公開。
 Homekitに対応した製品を、
iphone、Apple TV等のiOS
機器から遠隔制御が可能。
 既にPhilipsやInsteonなどが、
Homekit対応製品として販売
されている。
Amazon(米)
※ 日本では未発売
 Amazonは音声認識人工知
能デバイス「Amazon Echo」
を販売。天気等を音声で質問
できる他、買い物リストの作成
も可能。
 また、トイレットペーパー等の日
用品をボタンを押すだけで購入
可能な「Amazon Dash
[出所:Amazon website]
Button」も展開。
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具体的事例 ④スマートハウス・スマートコミュニティ・エネルギー
(米:AllSeenAlliance、日:エコネットコンソーシアム)
■また、スマートハウスの実現に向けて機器同士の連携を図るため、様々な事業者が参画するコンソーシ
アムの取組が各国で進展。
AllSeen Alliance(米)
[出所:Qualcomm説明資料]
 Qualcomm等が中心となったAllSeen Allianceは、複
数のデバイスやアプリが相互連携して繋がるためのフレーム
ワーク「AllJoyn」を展開。
 デバイス共通の基本的な機能と、機器間連携を実現させ
るサービスフレームワークから構成され、オープンソースソフト
ウェアとして公開。メーカー等は、これらを使って容易に機器
やアプリを開発することが可能。
 既に複数の製品が販売され、windows10も対応。
エコーネットコンソーシアム(日)
[出所:エコーネットコンソーシアム説明資料]
 我が国では、家電メーカーが中心となって構成されるエコー
ネットコンソーシアムにおいて、HEMSと機器の間の標準的
な通信規格である、「ECHONET-Lite」を策定。
 異なるメーカーの機器がHEMSと相互に接続する状況を
想定して、機器間の相互接続性を担保するための取組を
推進。
 ECHONET-Liteは、 エアコンや蓄電池を含む100種類
以上に対応し、21種類・20社より対応製品が販売されて
いる。
29
有力分野における変革の方向性(イメージ)④
スマートハウス・スマートコミュニティ・エネルギー
・地域の特性に応じて需要側も含めた総合的なエネルギー需給管理を行うスマートコ
ミュニティが実現。
・エネルギーデータにとどまらず、家庭内・コミュニティ内の多様なデータを取得・利活用す
ることで多様なサービスが可能に。
30
具体的事例 ⑤農業
(日:北海道大学、ヤンマー等)
 ヤンマー、北海道大学、岩見沢市等でコンソーシアムを構築し、自律走行型ロボットト
ラクターを用いた農作業の無人化を実証。
 省力化効果や作業精度等について検証するとともに、リスクアセスメントに基づく安全性
の評価を実施。
・耕耘整地を無人で、施肥播種を有人で行う
有人ー無人協調作業を実施。
・2台を1人で操作することで、限られた作期
の中で1人当たりの作業可能な面積が拡大
し、大規模化が可能。
・経験のないオペレーターや新規就農者でも作
業が可能となることから、担い手育成、雇用機
会の創出に寄与。
31
具体的事例
⑤農業
例 収穫ロボットの導入による収穫作業の自動化
(日:パナソニック、大阪府立大学)
(日:パナソニック株式会社、大阪府立大学)
 トマトなど果菜類の生産作業は目視で判断しながら行うものが多く、収穫・出荷作業につい
ては、機械化が進んでおらず、労働集約的作業となっている。
 また、集荷場において裂開果の果汁が、他のトマトに付着し、カビが生えるなど課題となって
いる。
 このような課題を解決すべくパナソニック株式会社は、「トマト収穫ロボット」を開発し、収穫
作業の自動化を目指している。
○開発する技術の特徴
①高精度3Dセンサによって、距離情報と色彩情報を一
括で取得することで3次元立体情報を把握。房状態を解
析し、房なりの画像から個々のトマトの収穫に必要な位置、
向きを認識し、収穫順を算出。
②果梗を支える部分と収穫する部分を別構造とすることで
ダメージを与えず、正確に収穫。
期待される効果
 大規模農場におけるトマト収穫作業の省人化
を実現。
③裂開果判定機能を収穫ロボットに搭載し、早い段階で
選別をすることにより高品質のトマトのみを出荷する。また、
収穫量や裂開果数などを無線通信技術によりトマトトレー
サビリティに必要なデータを蓄積。
 これまで行っていない夜間収穫を実現。
 良品質トマトへの裂開果の果汁付着によるカビ
発生を回避。
32
例 生産管理による農作物の安定供給
具体的事例
⑤農業
(日:早和果樹園、富士通)
(日:早和果樹園、富士通株式会社)
 早和果樹園では、富士通株式会社が提供している食・農クラウド「Akisai」を導入し、みか
ん生産における適期作業を支援するための記録蓄積と活用のための仕組みを構築。
 そこで蓄積されたデータを分析し、最適な営農情報を提供することで、高品質みかんの安定
生産を実現。
• センサーやスマートフォンを
活用して、様々なデータを
収集し、データセンターに
蓄積。
• 樹木全てに固体がわかる
番号札を付与し、1本単
位の生育状況を集計して、
傾向を把握。
• 蓄積したデータから、生産
に関する規則性や兆候を
発見し、次期生産活動に
反映。
園地に設置したセンサーで、
気温・降水量・土壌温度など
のデータを一定間隔で収集
スマートフォンのアプリケー
ションに作業履歴や園地見回
りの際の気づき・異常を登録
(出所)早和果樹園HP
33
例 生産と販売の一貫化による消費者ニーズの還元と農作物の安定供給
具体的事例
⑤農業
(日:アイ・アグリ)
(日:アイ・アグリ)
 合同会社アイ・アグリは農家の需要に基づいた生産と流通事業者の安定的な農作物の供
給を両立させるため、農家の栽培計画・収穫予測と、流通業者の販売計画のマッチングを提
供。
<栽培記録データ>
農家A
農家B
農家C
データ入力・閲覧
圃場
作物
品種
作業内容
作業時間
作業者
肥料/農薬
原価
データ入力・閲覧
ビッグデータ化
作物
収量
価格
時期
過去実績
卸売市場
安全・安心の提供
流通業者
<出荷計画・
販売計画データ>
システムは無料提供される
<メリット>
農業者:栽培記録・原価管理が可能、需要に基づき
栽培計画が立てられる。
流通業:安定した量・品質・価格での販売が可能
販売計画に基づき契約
小売・外食
消費者
地域商社
<課題>
・地域の複数の農家の参加を促すため、卸売市場など
がシステムを導入し、地域で利用を進める必要がある。
34
有力分野における変革の姿(イメージ)⑤
農業
・ロボットや自動走行システム等の導入による省力化や人工知能による生産現場の暗
黙知の形式知化を通じた更なる生産性の向上。
・ICTの活用により、生産・加工・物流・販売の連携が可能になり、トレーサビリティの確
保等を通じた高度な品質管理が実現。
・販売実績等のデータの利活用等を通じ、多様な消費者ニーズ対応した農作物の提
供が可能に。
35
具体的事例 ⑥観光
(日:Wi2、アクセンチュア)
 ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)とアクセンチュアは、個人事業主や中小企業向けに、
訪日外国人の日本での行動情報を把握する分析ツール「インバウンド・レーダー」
(Inbound Radar)の提供を開始
 訪日外国人の行動データを可視化することで、より効果的なマーケティングが可能に
Wi2が提供する訪日外国人向けの無料
Wi-Fiアプリ「TRAVEL JAPAN Wi-Fi
(TJW)」の利用者の位置情報を統計的に
処理
自社の店舗等の周辺に、「どの言語を話す外
国人」が、「どのくらいの人数が滞在しているの
か」について、日次で更新される位置情報に
基づいて、マップ上に可視化
リアルな情報に基づく効果的なプロモーション
施策の立案を中小事業者でも安価に実現
可能
※TJWは2014年12月からサービス提供が
開始されているが、すでに世界中で
100万人以上がアプリをダウンロード
(出所: 両社プレスリリースより)
36
具体的事例 ⑥観光
(米:Airbnb)
 世界中の宿泊設備や住宅の空き部屋の情報を、旅行等で一時的な宿泊場所を求め
るユーザーとマッチング。 2015年10月現在、190カ国以上にサービスが広がり、ユー
ザー登録は数百万人、150万件超の空き部屋情報が登録されており、使用者数はの
べ4,000万人超。
 2015年6月までに累計で23億ドルを調達し、企業価値は255億ドルと言われる。
基本的なビジネス/マッチング・システム
掲載
検索
予約
成立
宿泊先
予約時に
候補を
先払い
検索 (+3%手数料)
旅行者
Airbnb
ホスト
宿泊
物件情報
*を掲載
予約を
承諾
支払
(-10%
手数料)
相互
評価
相互に
事後
レビュー
(出所:Airbnb website; Juggernaut Blog; CrunchBase)
37
例 ホテル業務の省人化・省力化①
具体的事例
⑥観光
(米:スターウッド・ホテル&リゾート・チェーン)
(米:スターウッド・ホテル&リゾート・チェーン)
 スターウッド・ホテル&リゾート・チェーンでは、2014年11月より、ロイヤルティ・プログラム
(SPG)の一部として、スマホを活用した「Bluetooth鍵」システムを導入
 フロントに寄らずに済むという宿泊客の利便性だけでなく、ホテル側も従業員の作業を
削減可能
ホテルを予約するとスマホのアプリのインス
トールを促され、会員登録しておくと、チェッ
クインの約24時間前には、アプリに部屋番
号と「Bluetooth鍵」が送信される。
ホテルに着いたら、そのまま客室まで進み、
ドアの前でアプリを起動すれば、Bluetooth
鍵が作動してドアが開錠
2014年11月より、10ホテルでサービスを
開始
開発は大手鍵メーカー、Assa Abloy社が
担当
(出所: WIREDより)
38
例 ホテル業務の省人化・省力化②
具体的事例
⑥観光
(日:変なホテル)
(日:変なホテル(ハウステンボス))
 接客するメインスタッフがロボットという先進技術を駆使したホテル(昨年7月17日開
業)。
 宿泊客の快適さと高い生産性の両立を目指したローコスト運営に取り組み。
<特色>
 3台の受付ロボット(ヒト型・恐竜型、日英対応)、2台のポーターロボット、清掃ロボットなどを導入。
ロボットスタッフにより効率的にサポート。(人間スタッフは10人以下、問題が起きた場合などに備え
る)
 チェックイン/アウトはセルフサービスで待ち時間のストレスを軽減。部屋の鍵は顔認識システムを導入
し、キーレス滞在を実現。
 室内の設備は手元のタブレットで一括操作が可能。
<結果>
従来型の同規模ホテルに比べ、人件費を1/3~1/4に抑制、光熱費を半分まで抑制すること
ができ、ローコストな運営
出所:ITmedia http://www.itmedia.co.jp/
lifestyle/articles/1501/27/news152.html
受付にはヒューマノイド型ロボット
ポーターロボットやロッカーロボット、清掃ロボットなども導入
39
有力分野における変革の姿(イメージ)⑥
観光
・観光客の行動データを収集・活用し、個々人の趣味・嗜好に合致するカスタマイズされた観
光体験を提供。
・シェアリングやマッチングサービスの広がりにより、宿泊先や移動における観光客の選択肢が
拡大するとともに、個人もサービス提供者として観光産業に参画。
40
2.第4次産業革命による社会の変革と
産業構造の転換
41
産業構造の変遷
100%
その他
80%
60%
輸送用機械
鉄鋼
40%
電気機械
非鉄金属
20%
木材、紙パルプ
産業の区別自体が変化
産業構造の変遷
石油・石炭
化学
繊維・衣服
0%
1955年
1980年
出所:経済産業省「工業統計調査」
(注)数値は、製造業出荷額に各製造業(中分類)が占める割合
2010年
産業構造の変化
就業構造の変化
42
第4次産業革命における競争優位の鍵①
第4次産業革命においては、「リアルデータ」を生み出し続ける顧客との接点の獲得が、新たな競争優位
の鍵となる(BtoC,BtoBともに)。
顧客接点の獲得による①大量の「リアルデータ」の取得、利活用と、それを②企画・開発にフィードバックし、
「強み」を活かした製品・サービスの高付加価値化、その結果としての更なる「リアルデータ」の取得という
好循環のビジネスモデルを如何に構築するかが重要。
今後のグローバルな産業構造変革の中では、こうした企業・産業が新たな顧客ニーズを顕在化させながら
大きく成長する可能性 →(A)顧客接点を活かした好循環
付加価値
「データ」の利活用が
進む好循環
好循環の形成
ビジネスモデルの
高度化
更なる
「データ」取得
「データ」を基本とする
ビジネスモデル構築
②製品・サービス
の差別化
(マスカスタマイズ、
ブランド化等)
企画・開発
①顧客価値確保の
長期化(サービス
化、システム化・プ
ラットフォーム化)
製造・制作
流通・サービス
「データ」を取得
・利活用
バリューチェーン
43
第4次産業革命における競争優位の鍵②
前述のとおり、顧客接点の獲得を通じた大量の「リアルデータ」の取得が競争優位を生み出す上で重要。
しかし、例えば部素材産業であって大量の「リアルデータ」を生み出す顧客接点を有していない事業者や
事業規模が限定される中小企業等をはじめ、個社単独では必要十分な「データ」を獲得できない場合
には、企業・組織を超えて協調領域・競争領域を明確にした戦略的な連携が必要。
→(B)顧客接点を有する事業者との戦略的連携等
またこうした事業者であっても一部には、第4次産業革命で重要性が増加する基礎的な部素材・ソフト等
を抑えることで、競争優位を獲得する動きも限定的ながら存在。
※ただし、絶えず陳腐化圧力に晒されるため、常に新陳代謝を行う等の不断の価値向上が必要
[イメージ]
(上流)
戦略的な連携
(下流)
(顧客接点)
(機能性繊維)
(有機EL材料)
(高機能センサー)
(サプライチェーン)
(顧客)
44
第4次産業革命における競争優位の鍵③
第4次産業革命での競争環境の変化により、これまでは自社の有する競争優位が及ばなかった別の
事業領域でも、「リアルデータ」と自らの「強み」を結びつけ新たに競争優位を確立できる可能性が拡大。
そのため、これまでは把握・対応しきれなかった顧客ニーズの実現を目指して他の事業領域に進出し、
新たな事業領域の組み合わせによる事業展開を行う動きも顕在化。
→(C)顧客ニーズを起点とした新たな市場・産業群の形成
顧客ニーズを起点として
他の事業領域に進出
経済合理性が働く
範囲・組み合わせが変化
例)・情報サービス → 自動車産業
(ソフトからハードの取り込み)
・流通・小売(EC) → 旅行仲介
(他分野サービスの付加)
45
産業構造変革の姿
顧客接点に近く「顧客接点を活かした好循環(前述A)」の形成によるインパクトが大きいと期待される
産業群(③、④、⑤、⑥)及びこれらの産業群との間で「顧客接点を有する事業者との戦略的連携等
(前述B)」を行う産業群(上記に加えて②)が成長していく可能性。
その一方で、既存の産業間の垣根の低下が進展し、世界経済に潜む社会的・構造的課題等も踏まえた
「顧客ニーズを起点とした新たな市場・産業群(前述C)」へと再編成される可能性。
46
第4次産業革命によって実現される社会ニーズ
 AI等の技術革新・データ利活用により、今までは対応しきれなかった「社会的・構造的
課題=顧客の真のニーズ」に対応可能に。
 グローバルに広がるこの新たなフロンティアを誰が発掘・獲得するかの競争へ。
我が国そして世界が抱える
社会的・構造的課題






少子高齢化
地方経済・コミュニティの疲弊
エネルギー・環境制約
食糧問題
水問題
その他
安全に移動する
移動時間を有効活用する
スマートに暮らす
健康を維持し、
高齢者を支える
安心・安全に過ごす
効果的に学ぶ
スマートに手に入れる
便利なインフラを使う
娯楽を楽しむ
効率的にシェアする
簡単に借りる、資産運用する
47
「移動」に関連する産業群の広がりと雇用影響
 社会ニーズに対応する新たなバリューチェーン・産業群が次々と出現する可能性。
 例えば、自動走行技術やドローン技術の進展を軸に、新たなサービス・製品が生まれ、
様々な産業・雇用に影響を与えていく。
新たに
生まれる
機能・価値
2018年~
2030年頃
⑥自動車保険
価格の低減
⑧無人交
通サービス
⑤車内時間
活用サービス
④24h無人
産業利用
②ドローン
無人物流
(一部)
②ドローン
荷物配送
①隊列走行
レベル2/3:部分自動走
行(運転者の支援* )
関連
産業
(例)
⑨シェアリング
サービスの拡大
*運転中に、運転以外にどの
ような作業が許容されるかに
応じて、③広告や⑤車内時
間活用サービスが立ち上がる。
⑦24h無人物
流(含公道)
(教養・娯楽)
③広告
④24h無人
産業利用
①隊列走行
②ドローン無
人物流拡充
レベル4:完全自動走行**
(高速等限定空間)
**人手を介さずに可能と
なる作業の範囲拡大に
応じて、様々な産業での
無人化が進展
⑩完全自動
自家用車
⑥自動車保険
価格の低減
⑤車内時間
活用サービス
(教養・娯楽)
…
③広告
①隊列走行
レベル4:完全自動走行(一
般/高速等)
農林水産、食料品、卸売、・・・等
情報サービス、広告、損害保険、 ・・・等
…
製造(自動車・同附属品、ドローン)、自動車整備、道路旅客運送、
道路貨物運送、小売、情報通信、・・・等
雇用
影響
(例)
•
①②物流業等の労
働需給の改善
【貨物自動車運転者の
求人超過約4万】
•
④物流業だけでなく農業等幅
広い産業で労働需給の改善
•
⑦⑧⑨運転関連における大幅
な雇用構造の変化
•
③⑤⑥新たなサービス創造に
よる雇用の創出
•
③⑤⑨新たなサービス創造によ
る、更なる雇用の創出
…
48
幅広い「移動」ニーズの充足に向けた複数の経路
 従来の業種別産業から、社会ニーズに合わせた産業に変革される可能性。
(例:自動車製造業→移動スマートサービス業)
 これに伴い、同業同士の再編から、全く別の産業との再編の可能性も。結果、産業構造の大幅な転換へ。
事業主体
従来の
再編の軸
現在
○自動車製造
移動
○ドローン製造
手段
提供者 ○情報サービス
○交通事業
ヒトの
移動
(バス・タクシー等)
○シェアリング
事業者
モノの
移動
○物流事業
(トラック・鉄道・
ドローン等)
2018年~
2030年頃
第4次産業革命
における再編の軸
①段階的に自動走行レベルを
上げていく漸進的アプローチ
完全自動走行自動車・ドローン
②完全自動走行の実現を
優先する破壊的アプローチ
限定空間の無人
交通サービス
無人交通サービス
代
替
ライドシェアリング
隊列走行
更なるシェアリング拡充
無人トラック
補
完
ラストワンマイル
配送ドローン
自動で、
安全に
自由に
安価に
「移動」
完全無人物流
幹線輸送ドローン
※官民ITS構想・ロードマップ2015において、試用時期は2020年代後半以降とされている。
49
「移動」将来像の広がりと社会への影響(光と影)
 産業・雇用の影響の広がりと同時に、国内外で様々な社会への影響が生ずる。
個人
○移動困難者の解消
【「買物弱者」700万人、免許非保有者約4千万人】
○離島等における生活必需品流通の改善
【全部離島の人口31.9万人】
国内
○一般道や高速での円滑な交通の流れが実現し、
CO2等の環境負担が減少
【渋滞により年間33億人・時間、10兆円の経済損失】
【国内運輸部門のCO2排出量2.2億トン(全体の
17%】
○交通事故が減り、より安全に移動
○災害時の物資輸送等の緊急対応が迅速化
○通勤時間の有効活用により、働き方が自由に
●交通システムやドローン官制システムがデータ接合
されて統合管理されることで、不具合時のリスクの
規模が飛躍的に増大
●雇用構造の変化に伴い、新たなスキル習得の必
要性、場合によっては労働移動の必要性が拡大
●労働市場、雇用制度、社会保障制度等の在り
方を取り巻く環境も変化
○【免許非保有者約60億人】
○【交通部門は世界エネルギー消費量103兆Btu(全体
の20%)】
【事故死亡者4117人(2015年)】
【事故による経済的損失額は6.3兆円(2009年)】
【自動車通勤平均所要時間は片道約20分前後】
海外
社会
○【事故死亡者125万人】
【経済的損失は千億ドル超(特に新興国でGNPの12%の損失)】
出所:第3回新産業構造部会 アクセンチュア程氏プレゼン資料、日本自動車工業界「豊かな車社会の実現に向けて」、内閣府「平成25年度 交通事故の状況及び交通安全
施策の現況」、経済産業省「買物弱者等に関する報告書」、国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」、国土交通省「基礎的な交通実体調査結果」 、国土交通省
「離島の現状について」、U.S. EIA、
50
3.第4次産業革命による就業構造転換
51
第4次産業革命の「仕事・労働」への影響についての論説
 第4次産業革命が「仕事・労働」に与える影響(特にAI・ロボットが雇用を代替するこ
と)については、楽観論者と悲観論者の双方が存在。
楽観論
ロボットやAIの進歩により人間の職が奪われるのではないかという懸念があ
るが、杞憂である。どんな職にも自動化できない曖昧な作業があり、ロボッ
トなどによる労働代替には限界がある。いたずらにロボットの脅威を語るより
は具体的な仕事の中身を考え、人的資本への投資(教育)を改善するほ
うが生産的である。
(David Autor (2014),“Polanyi’s Paradox and the Shape of
Employment Growth” )
IBMの「ワトソン」はさまざまな仕事ができるが、人間に「代わる」ものではな
い。人間に「使われる」ものだからだ。ワトソンはロボットの“仕事仲間”のよう
な存在である。テクノロジーは、仕事を“逆転”させることもある。注意深く見ま
わせば、新しい創造的な仕事があちこちで出てきている。数年前にはな
かったような仕事が、いまではたくさんある。
(J. P. Gownder,The Future Of Jobs, 2025: Working Side
By Side With Robots)
インダストリー4.0により、製造業においてもソフト開発やIT技術のコンピテン
シーを持つ人材への需要が高まり、今後10年間でドイツの製造業全体で
は39万人(+6%)の雇用拡大が見込まれる。主な領域は、機械関連
(9.5万人)、食品・飲料(5万人)、自動車(1.5万人)。
(BCG (2015), “Industry 4.0 – The Future of Productivity
and Growth in Manufacturing Industries” )
人工知能が職業をどのように変えていくか、社会の変化とあわせて段階的に
モデリングしていかなければ、明確な答えは見えてこないが、少なくとも、新た
なテクノロジーは単に仕事を奪うものではない。雇用が増えるケース、新た
な仕事が生まれるケースがいくつもある。
(石山洸 、2030Work Style(リクルートマネジメントソリューションズ 組
織行動研究所 2030Work Style Project))
悲観論
今後の10~20年程度で、米国の総雇用者の47%の仕事がコンピューター
によって自動化される危険性が高い
(Carl Benedikt Frey† and Michael A. Osborne(2013),“THE
FUTURE OF EMPLOYMENT”)
※「47%」という数字は、業務を高い確率(66%以上)でコンピュータが代替
できる職種に就業している人数を推計し、それが就業者数全体に占める割合。
今後の10~20年程度で、日本人の労働人口の49%がついている職業が
人工知能やロボットで代替される(野村総合研究所(2015))
※手法については、上記のOsborne教授と基本的には同様
テクノロジー失業の恐れは現実に迫っており、技術革新の結果、高いスキルを
持つ労働者に対する相対的な需要が高まる一方で、スキルの低い労働者に
対する需要は減少し、場合によっては途絶えている。労働需要の二極化現
象が発生する。(Erik Brynjolfsson and Andrew McAfee, “Race
Against the Machine”)
人間が機械に代替され、それがサービス部門に流れることによって賃金水準が
大きく下がり、貯蓄不足により資本蓄積が低下するので経済全体の算出水
準が下がる。それを回避するためには、貯蓄率の引き上げ、特に課税を通じた
再分配の仕組みが重要となる。(Benzell “Robots Are Us: Some
Economics of Human Replacement”)
52
第4次産業革命における「仕事の内容」の変化
 第4次産業革命により新たに立ち上がるIoTやAIに関する市場は、世界規模で今後大きく拡大。日本
企業がグローバル競争に打ち勝ち当該市場を獲得すれば、新たな「仕事・労働」の創出が可能。
 このためには、ビジネスを創出するプロセスが、IoT・ビッグデータ・ロボット・AI等の技術を前提としたものに
大きく変化していくことに対して、日本企業が先んじて対応していくことが必要。
IoTが付加する経済価値*(兆ドル;グローバルベース)
ものづくり革新
3.9
流通・小売・物流
2.3
金融
年平均成長率:
14.2%
40
0.2
4.6
0.9
86.9
12
0.6
(2025年時点のIoTの経済価値)
その他
60
0.9
公共サービス(含む行政)
製造
80
0.9
教育サービス
※ モビリティ(自動走行等)
卸売・小売
100
1.0
スマートハウス、スマートコミュニ…
農業
運輸
1.3
医療・健康
メディア・コンテンツ
人工知能関連市場規模*(兆円;国内)
年平均成長率:
43.8%
15
23.0
20
3.7
3
5
5
2015年
2020年
0
30
2030年
* 2013-2022でIoTが創出する経済価値(IoTサプライヤーの売上増加だけでなく、IoTを導入する企業において、オペレーション効率化等を通じて実現されるコスト削減効果や
マーケティング高度化に伴う売上増加等のユーザー型の経済効果も含めた全体的な効果)の累計
** 人工知能を活用した機器、システム等の国内市場規模
出所:Cisco, McKinsey, E&Y レポートを基に経済産業省分類・統合
53
第4次産業革命において増加していく「ミドルスキルの仕事(ボリュームゾーン)」の例
第4次産業革命において増加していく「ミドルスキルの仕事(ボリュームゾーン)」として、現状では4つの類型がその
例として考えられる。
①IoT、AI等を活用したビジネスの企画立案
IoT、AI等の技術革新の波が
様々な産業分野に到来
新たなビジネスの企画立案に対する
必要性が増大
様々な産業分野で、新たなビジネス
の立ち上げが頻発化
<具体的職種イメージ>マス・ビジネスを開発する商品企画・マーケティング、R&D等の上流工程、その具現化を図るIT部門
②データ・サイエンティスト等のハイスキルの仕事のサポート業務
(※)技術革新の進展スピード次第
IoT、AI等の技術革新の波が
様々な産業分野に到来
ビジネスプロセスの変化をオペレーション
レベルに落とし込む橋渡役が必要
ビジネスの創出プロセスがIoT・AI等
を基軸としたものに大きく変化
<具体的職種イメージ>データ・サイエンティスト等を中核としたビジネスの創出プロセスを具現化するオペレーション・スタッフ
③個人のセンスやアイディアを活かしたマスカスタマイゼーション
製造コストの大幅引き下げ
AIやロボット等の
技術の進展
「買い手」のニーズと「売り
手」のセンス・アイディアのマッ
チング精度の向上
ニッチな「買い手」ニーズに対して、魅力
的な商品・サービスを提供できる「売り
手」が大量に発生。これにより、商品・
サービスのアイテム数が激増。
このニーズをグローバルでかき集めること
で、個人レベルでもマネタイズ可能に。
マス・ビジネスから
ニッチ・ビジネスへ
<具体的職種イメージ>ニッチ・ビジネスを開発する商品企画・マーケティング、R&D等の上流工程、その具現化を図るIT部門
④ヒューマン・インタラクション
消費者に直接触れ合うサービス
安心感が購買の決め手となる
商品・サービス
第4次産業革命後も、
「人」の競争優位性が高い
消費者と相対する
ヒューマン・インタラクションとしての機能
<具体的職種イメージ>人が直接対応することがサービスの質・価値の向上につながる高付加価値な営業・販売やサービス業
(高額な金融商品販売における営業、高級レストランの接客、きめ細かな介護、宅配のラストワンマイル、アーティスト 等)
54
就業構造転換のポイント ①
 AIやロボット等の出現により、定型労働に加えて非定型労働においても省人化が進展。人手不足の解
消につながる反面、バックオフィス業務等、我が国の雇用のボリュームゾーンである従来型のミドルスキル
のホワイトカラーの仕事は、大きく減少していく可能性が高い。
 一方、第4次産業革命によるビジネスプロセスの変化は、ミドルスキルも含めて新たな雇用ニーズを生み
出していくため、こうした就業構造の転換に対応した人材育成や、成長分野への労働移動が必要。
第4次産業革命による「仕事の内容」の変化
<上流工程(経営企画・商品企画・マーケティング、R&D)>
• 様々な産業分野で新たなビジネス・市場が拡大するため、ハイスキルの仕事は増加
(職業例)経営戦略策定担当、M&A担当、データ・サイエンティスト、マス・ビジネスを開発する商品企画担当や
マーケッター・研究開発者、その具現化を図るIT技術者
• データ・サイエンティスト等のハイスキルの仕事のサポートとして、ミドルスキルの仕事も増加(※)技術革新の進展スピード次第
(職業例)データ・サイエンティスト等を中核としたビジネスの創出プロセスを具現化するオペレーション・スタッフ
• マスカスタマイゼーションによって、ミドルスキルの仕事も増加
(職業例)ニッチ・ビジネスを開発する商品企画担当やマーケッター・研究開発者、その具現化を図るIT技術者
<製造・調達>
• IoT、ロボット等によって省人化・無人化工場が常識化し、製造に係る仕事は減少
(職業例)製造ラインの工員、検収・検品係員
• IoTを駆使したサプライチェーンの自動化・効率化により、調達に係る仕事は減少
(職業例)企業の調達管理部門、出荷・発送係
55
就業構造転換のポイント ②
第4次産業革命による「仕事の内容」の変化
<営業・販売>
• 顧客データ・ニーズの把握や商品・サービスとのマッチングがAIやビッグデータで効率化・自動化されるため、
付加価値の低い営業・販売に係る仕事は減少
(職業例)低額・定型の保険商品の販売員、スーパーのレジ係
• 安心感が購買の決め手となる商品・サービス等の営業・販売に係る仕事は増加
(職業例)カスタマイズされた高額な保険商品の営業担当、高度なコンサルティング機能が競争優位性の源泉となる
法人営業担当
<サービス>
• AIやロボットによって、低付加価値の単純なサービス(過去のデータからAIによって容易に類推可能/動作
が反復継続型であるためロボットで模倣可能)に係る仕事は減少
(職業例)大衆飲食店の店員、中・低級ホテルの客室係、コールセンター、銀行窓口係、倉庫作業員
• 人が直接対応することがサービスの質・価値の向上につながる高付加価値なサービスに係る仕事は増加
(職業例)高級レストランの接客係、きめ細かな介護、アーティスト
<IT業務>
• 新たなビジネスを生み出すハイスキルはもとより、マスカスタマイゼーションによってミドルスキルの仕事も増加
(職業例)製造業におけるIoTビジネスの開発者、ITセキュリティ担当者
<バックオフィス>
• バックオフィスは、AIやグローバルアウトソースによる代替によって減少
(職業例)経理、給与管理等の人事部門、データ入力係
56
第4次産業革命による就業構造変革の姿(イメージ)
現状放置
目指すべき姿
グローバル市場を獲得し、
質・量ともに十分な仕事
市場喪失し、仕事の量は減り、質も低下
AIやロボット等を創り、新たな
ビジネスのトレンドを創出する仕事
海外に流出
大きく減少
従来型のボリュームゾーンである
低付加価値な製造ラインの工員・
営業販売・バックオフィス等は
AIやロボット等で代替
(例)グローバル企業の経営戦略策定
トップレベルのデータサイエンティスト・研究開発 等
内外から集積
AIやロボット等を使って、共に働く仕事
(例)
・様々なビジネスの企画立案
・データサイエンティスト等のハイスキルの仕事の
サポート業務(ビジネスプロセスの変化をオペレー
ションレベルに落とし込む橋渡役)
・今後激増するカスタマイズ化された商品・サービスの
企画・マーケティング
AIやロボット等と住み分けた仕事
新たな雇用
ニーズに対応
(例)ヒューマン・インタラクション
・人が直接対応することがサービスの質・価値の向上に
つながる高付加価値な営業・販売やサービス
多くの仕事が低賃金化
AI やロボット等に代替されうる仕事
57
4.我が国の基本戦略
58
海外メインプレーヤーのグローバル戦略
ネットから
リアルへ
グーグル
アマゾン
フェイスブック
等
リアルから
ネットへ
GE
シーメンス
ボッシュ
IBM
インテル
等
製造分野
の事例
出所:平成26年度ものづくり基盤技術の振興施策
59
第1幕:バーチャルデータ
第4次産業革命の第1幕(ネット上のデータ競争)では、プラットフォーマーを
海外に握られ、我が国産業(例.ゲーム)は「小作人化」。
<従来>
コンテンツ提供者が収益を確保
<現在>
コンテンツ提供者が「小作人」化
ゲーム
コンテンツ
ゲーム
コンテンツ
アプリ=寡占化
コンテンツの獲得競争
プラットフォーマー
ファミコン
(任天堂)
プレイステーション
(SONY)
XBOX
(MicroSoft) ・・・
App Store
(Apple)
Google Play
(Google)
【スマホ/タブレット】
【ゲーム専用機】
消費者
消費者
60
第2幕:リアルデータ(これからの主戦場)
第2幕は、日本が勝てる可能性のある健康医療、製造現場、
自動走行などリアルな世界のデータを巡る競争へ。
うまく対応すれば、日本でプラットフォームを獲得できる可能性
「協調領域」と「競争領域」を峻別、
事務所・企業・系列の枠を超えてデータを共有・活用する
「プラットフォーム」の形成が鍵。
61
データの利活用のための日本の強み・弱み
強み:ハード面(①⑤)
弱み:ソフト面(②③④)、ハード面とソフト面を一体的に接続する発想と仕組み
データサイクル 星取表
☆強み ★弱み
☆少子高齢化のトップランナー
5
☆自動車などの市場シェア
☆高品質なモノを理解・評価できる
消費者
★3Dプリンタ技術及び活用の限定
☆ロボット、センサ等の世界シェア
1 ☆質の高い教師データ
(現場の暗黙知)
データの
★モバイルOS、デバイスなどの世界
取得
シェア
社会実装
産業化
2 ☆世界最先端の高速データ
4 AI等を用いた
データの
通信網
☆スーパーコンピューター技術
分析
やり取り・通信 ★データセンターの維持管理費
★人工知能技術開発とその活用
実用化
★ソフトウェア製品開発
★数理・医療分野等の基礎研究
★データサイエンティスト、セキュリティ人材等
6
(ビッグデータ化等)
3
☆ローカルなビッグデータ(医療、交通など)
★データ共有、交換の動き
基本サイクル全体を一体的に提供するビジネスモデルを確立
★新たなビジネスを促進する規制制度など
★産業再編の規模、スピード
★個社毎に作り込んだシステムのレガシーコスト化
62
我が国の戦略 ① ~7つの対応方針~
(未来に向けた経済社会システムの再設計)
①データ利活⽤促進に向けた環境整備
•
•
•
•
•
データプラットフォームの構築、データ流通市場の創成
個人データの利活用の促進
セキュリティ技術や人材を生み出すエコシステムの構築
第4次産業革命における知的財産政策の在り方
第4次産業革命に対応した競争政策の在り方
②⼈材育成・獲得、雇⽤システムの柔軟性向上
•
•
•
•
新たなニーズに対応した教育システムの構築
グローバルな人材の獲得
多様な労働参画の促進
労働市場・雇用制度の柔軟性向上
③イノベーション・技術開発の加速化(「Society5.0」)
• オープンイノベーションシステムの構築
• 世界をリードするイノベーション拠点の整備・国家プロジェクトの構築・社会実装の加速(人工知能等)
• 知財マネジメントや国際標準化の戦略的推進
63
我が国の戦略 ② ~7つの対応方針~
(未来に向けた経済社会システムの再設計)
④ファイナンス機能の強化
• リスクマネー供給に向けたエクイティファインナンスの強化
• 第4次産業革命に向けた無形資産投資の活性化
• FinTechを核とした金融・決済機能の高度化
⑤産業構造・就業構造転換の円滑化
• 迅速・果断な意思決定を可能とするガバナンス体制の構築
• 迅速かつ柔軟な事業再生・事業再編等を可能とする制度・環境整備
• 労働市場・雇用制度の柔軟性向上(再掲)
⑥第4次産業革命の中小企業、地域経済への波及
• 中小企業、地域におけるIoT等導入・利活用基盤の構築
⑦第4次産業⾰命に向けた経済社会システムの⾼度化
•
•
•
•
第4次産業革命に対応した規制改革の在り方
データを活用した行政サービスの向上
戦略的な連携等を通じたグローバル展開の強化
第4次産業革命の社会への浸透
64
①データ利活用促進に向けた環境整備
・データプラットフォームの構築、データ流通市場の創成
・個人データの利活用の促進
・セキュリティ技術や人材を生み出すエコシステムの構築
・第4次産業革命における知的財産政策の在り方
・第4次産業革命に対応した競争政策の在り方
65
競争・協調領域の明確化 ~例① 製造現場における協調領域~
【クラウド】
データ連携
②流通
データ連携
③販売
①調達
プラットフォーム化
【エッジ】
競争領域
データ
協調可能
データ
生産現場データ
企業(大企業・中小企業)、組織の壁を
越えて、製造現場がつながるために、どのよう
な現場のデータをどうやって取得し協調してい
くかの峻別が重要
↓
 関連企業が参加する官民のWGを立上
げ(平成27年7月)、モデルケースの作
成や情報の共有、IEC、ISOなどの標準
化の動きへの対応を検討中
【第5回官民対話による総理指示】
• 2020年までに、センサーで集めた現場の
データを、工場や企業の枠を超えて共有・
活用する先進システムを、全国50箇所で
生み出す。
• 製造現場の強みを共有するドイツと協力し、
国際標準化を進める。
(※幅広い製造関連企業が参加)
○制御機器・ネットワーク機器のメーカー (三菱電機や日立製作所等)
○ITベンダー系(富士通やNEC等)
○ユーザー系(三菱重工業、トヨタ自動車、日産自動車等)
○その他、商社、シンクタンク等
66
競争・協調領域の明確化 ~例② 産業保安にかかる協調領域~
 産業保安の取組は多くの企業で共通しており、データ共有の進展・効果に期待ができる。
 コンビナート内の企業連携等により、共有可能なデータの整理、共有の有効性の実証を開始。
 実証結果は新たな規制システムに反映し、IoT等を活用した常時監視を促進。保険開発等も支援。
<実証テーマの例>
<高度な自主保安を実現する規制システム>
① 共通的な機器に関する部品管理
(回転機のパッキン、シーリング 等)
スーパー認定事業所
認定要件(追加)
実証と規制システム・IoT、ビッグデータ等の活用
が有機的に連携 ・高度なリスクアセスメントの実施
・第三者による保安力の評価 等
② 運転状況の常時監視(異常・予兆の早期検知)
・「異常」をアラーム
旧 ・検知時間長
→ 生産への影響大
上限アラーム
定常
状態管理指数
予兆
早期検知
・「いつもと違う」をアラーム
新 ・検知時間短
→ 生産への影響小
認定事業所
認定要件
・保安に係る専門組織の設置
・PDCAの実施
・教育・訓練の徹底 等
保安力に応じた
規制上の優遇措置
・新たな検査手法の容認
・長期連続運転を可能と
する検査頻度の緩和
・設備の軽微変更の
「届出」化の拡大 等
事業所
下限アラーム
時間経過
67
競争・協調領域の明確化 ~例③ 自動走行地図にかかる協調領域~
 自動走行に関連するデータには、様々なデータが存在。
 このうち、3D地図情報等は各社の協調がスケールメリットをもたらす。
 既に、欧州では独の自動車メーカー3社が協同で地図会社の買収を実施。
自動走行関連データ
紐付け
《動的情報(<1sec) 》
ITS先読み情報(周辺車両、
歩行者情報 信号情報等)
《准動的情報(<1min) 》
事故情報、渋滞情報、
狭域気象情報等
《准静的情報(<1hour)》
交通規制情報、道路工事情報、
広域気象情報
《静的情報(<1month)》
路面情報、車線情報、
3次元構造物等
基盤
どこまで協調領域にして、どこから
競争領域にするか?
【第5回官民対話による総理指示】
• 早ければ2018年までに、自動走
行地図を実用化する。
• 本年度中に、自動車メーカーや
地図会社を集めて、企業の枠を
超えて仕様を統一し、国際標準
化提案を行う。
68
データ利活用促進に向けた環境整備
個人データ利活用の促進
•
•
•
•
本人同意取得のためのガイドラインの国際規格化
匿名加工処理のガイドライン策定(各業界毎の認定個人情報保護団体における策定)
健康医療分野等における本人同意を要しない代理機関構想の実現
本人関与の下での個人データ利用の仕組みの検討
セキュリティ技術や人材を生み出すエコシステムの構築
•
•
•
•
サイバーセキュリティ経営ガイドラインの普及
サイバーセキュリティ対策の強化に繋がる技術開発や人材育成の加速
重要インフラ企業におけるセキュリティ対策強化
セキュリティ人材確保対策の強化(国家資格をはじめとしたサイバーセキュリティ人材の育成・確保促進)
第4次産業革命における知的財産政策の在り方
•
•
•
AI創作物、データベース等の新しい情報財や関連技術に関する知的財産保護の在り方の検討
知的財産の協調利用の促進策の構築
新たな著作権システムの構築(一定の柔軟性のある権利制限規定など)
第4次産業革命に対応した競争ルールの在り方の整理
•
プラットフォームへの対応の在り方の整理と新たな措置の検討。
69
②人材育成・獲得、雇用システムの柔軟性向上
・新たなニーズに対応した教育システムの構築
・グローバルな人材の獲得
・多様な労働参画の促進
・労働市場・雇用制度の柔軟性向上
70
⼈材育成・獲得、雇⽤システムの柔軟性向上
世界におけるプログラミング教育 ~義務化の流れ~
 第四次産業革命時に対応した人材を育成するため、世界各国でプログラミング教育が義
務化されている。
 我が国では中学校の技術・家庭科における計測・制御に関する単元と、高等学校情報
科における選択科目にとどまる。
 イスラエル
 2000年より、高校におけるプログラミング教育を必修科目化
 イギリス
 2014年9月より、5歳から16歳に「Computing」としてプログラミン
グ教育を必修科目化
 アメリカ
(出所)Department for Education Web (UK)
 2015年12月10日に、科目構成にコンピューターサイエンスを含む
「Every Student Succeeds Act(全ての児童生徒が成功す
る法律)」が成立。今後、全米でコンピューターサイエンスが必修
科目として実施される。
 フィンランド
 2016年のカリキュラム改訂で7歳から16歳でプログラミング教育を
義務化
(出所)White House Web (USA)
71
永住許可・グリーンカードの国際比較
•
英国では、起業家や所定年収以上の企業雇用者、米国では高額投資家や多国籍企業の管理
職・役員、専門技能者・知的労働者、等を、永住許可取得のカテゴリーとして明示。
•
日本の永住許可は、申請に要する在留期間が米国等に比較して長いことに加え、起業家・投資
家・研究者等、国が求める特定人材が明示されていない。
永住許可申請
に要する在留期間
日本
英国
原則10年
以下は特例で5年
- 「我が国への貢献者」
「高度専門職」
郵送・オンライン
申請
入管窓口
に直接持参
企業からの雇用
永住者に求める人材
必要(自身が経営
①素行善良、
②生計を営むに足る資産・技能、
③日本国利益に合致
者の場合も含む)
(無犯罪、納税、最長在留期間)
原則5年
国外はオンライン
国内は郵送
区分による
投資家等は不要
 起業家・投資家
 所定年収以上の企業雇用者
米国
規程なし
国外はオンライン
国内は郵送
区分による
投資家は不要
 投資家
 多国籍企業の管理職・役員
 専門技能者・知的労働者
韓国
原則5年
新規は不可
更新時は可
必要




グリーンカード
- 一部起業家は3年
- 先端技術分野
博士:1年以上
学士:3年以上
- ポイント制:3年以上
起業家・投資家
先端科学技術分野研究者
専門職種人材
多国籍企業の駐在者
72
労働の流動性の向上
事業ポートフォリオの入れ替えや事業から撤退する際に、最大の障害となっているのは「従業員の処遇」
と言われている。
今後、成長産業・ビジネスへの迅速な労働移動が不可欠であるため、リスクの少ない労働移動の支援
や新陳代謝の活性化を促進する制度の構築等による労働市場の流動性向上が必要ではないか。
【事業の撤退の最大の障害】
n=4,377
回答数
当該部門の従業員の処遇困難
1,379
割合
【M&Aを実施する際の人事・労務について、
懸念される(M&Aの障害になり得る)事項】
31.5%
400
350
仕入先・納入先との関係
765
17.5%
企業イメージ低下のおそれ
700
16.0%
当該事業の人的・歴史的経緯
590
13.5%
200
撤退コストの大きさ
476
10.9%
150
33
0.8%
100
6
0.1%
50
428
9.8%
競合他社が撤退しないから
法律等制度面の経緯
その他
(出所)RIETI森川副所長レポート
『日本企業の構造変化:経営戦略・内部組織・企業行動』
出典:経済産業省 産業構造審議会新産業構造部会(第7回)
n=895
380
274
300
250
150
53
38
0
労働条件の
統合
人員整理が
困難
優秀な人材
の流出
労働組合の
合意が困難
その他
(出所)平成24年度総合調査研究「M&A市場における構成なルール形成に関す
る調査研究」(上場会社と株主の関係等に関する実態調査)
73
③イノベーション・技術開発の加速化
・オープンイノベーションシステムの構築
・世界をリードするイノベーション拠点の整備・国家
プロジェクトの構築・社会実装の加速(人工知能等)
・知財マネジメントや国際標準化の戦略的推進
74
我が国イノベーション・エコシステムの現状(人材)
 研究人材の流動性は非常に低く、組織を超えた人材の活躍が一層求められている。
■平成25年度における組織別研究人材の流動化の状況
企業
大学
約1,200人
研究人材
研究人材
約66.6万人
約200人
約38.9万人
約500人
約7,400人
約15,200人
約5,200人
海外
※国内各組織間の移動については、「研究人材のうち研究者で外部から加わった者」の人数。
※国内大学、国内独法の海外受入、派遣研究者数(中長期)は文部科学省「国際研究開発概況」
出典:経済産業省 産業構造審議会新産業構造部会(第7回)
公的研究
機関等
研究人材
8.6万人
75
我が国イノベーション・エコシステムの現状(資金)
 海外と比較して、企業から大学への研究費の拠出割合、1件当たりの平均共同研究費が少ない等、
「組織」対「組織」の産学連携が進んでいない。
■企業の総研究費に対する
大学への研究費の拠出割合
国
2008年(%)
2012年(%)
日本
0.44
0.46
アメリカ
1.06
0.91
ドイツ
3.65
3.65
イギリス
1.96
1.71
韓国
1.78
1.34
中国
3.99
3.32
出典:OECD「Research and Development Statistics」に基づき経済産業省作成
出典:経済産業省 産業構造審議会新産業構造部会(第7回)
■日本の大学等における
1件当たり共同研究費
海外の大学では、
1件あたり1000万円
以上が一般的
~1000万 1000万円
円未満
以上
6%
4%
~500万円
~100万円
未満
未満
9%
39%
~300万円
未満
日本の大学では、
平均して1件あたり
約200万円程度
43%
76
人工知能研究の体制の整備
 総理指示を受け、「人工知能技術戦略会議」を設置。今年度から、本会議が司令塔となり、その下
で総務省・文部科学省・経済産業省の人工知能(AI)技術の研究開発の3省連携が図られる。
 研究開発目標と産業化のロードマップを策定する(本年度中)。
人工知能技術戦略会議
○AI研究開発・イノベ-ション施策の3省連携の司令塔
(議長、顧問(CSTI)、産業界、学術界、5法人の責任者、3省の局長)
(3省で共同事務局)
研究連携会議(センター長会議)
○研究の総合調整(具体的な研究連携テーマを了解)
情報通信研究機構
(総務省)
CiNetセンター長:柳田 敏雄
理化学研究所
AIPセンター
(文部科学省)
センター長:杉山 将
産業連携会議
協力
産業技術総合研究所
人工知能研究センター
(経済産業省)
○研究開発と産業の連携総合調整(人材育成、標準化・ロード
マップ作成、技術・知財動向分析、規制改革分析等)
タスクフォース
○例えば、ロードマップの策定など、課題ごとにタスクフォースを設置
して具体的に推進
センター長:辻井 潤一
成果の展開
出口分野の省庁/企業等
【第5回官民対話による総理指示】
• 産学官を糾合し、関係省を統括する「人工知能技術戦略会議」を設置。研究開発目標と産業化のロードマップを
策定する(本年度中)。
77
次世代の人工知能研究開発 –研究開発の方向性とPJ例
AIはさまざまな分野と融合する技術。我が国の有する強みを考慮すると、融合を進めるべき分野の柱は次の3つ。
―Manufacturing:高いものづくり力や世界トップの産業用ロボットや自動車と融合し、他の追従を許さない製
造業を実現
―Human Life:日本の高品質なサービス業、医療・介護、物流等と融合し、豊かな生活を提供
―Science / Engineering:世界トップクラスの基礎科学と融合し、科学技術の発展を促進

研究開発の方向性を示し、海外の研究機関・大学から世界最先端の技術・人材を引きつけつつ、ユーザーとなる
官民を巻き込んで研究開発。さらに、研究開発成果を、出口側が有する課題・データと連携させつつ、人材育成、
標準化戦略等の社会実装ツールで全面支援し、確実に出口に繋げる。
AI for
PJで実現する将来像(例)
Manufacturing
例)ティーチングレスの産業用ロボットによる多品種少量生産の作業支援、組み立
て作業時の異常予測等により製造業の生産性を向上
Human Life
例) 消費者行動を解析し多様な業種を支援することで、サービスの高付加価値
化により、生活満足度を向上
Science/Engineering
例) 生命科学、臨床医学、材料工学等において、多様な実験データから仮説や
新たな理論等を自動生成し、基礎研究を加速
(AI × ロボ)
(AI × IoT)
(AI × Big Data)
分野を融合するフラッグシップPJを複数検討予定(例:超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト)
78
④ファイナンス機能の強化
・リスクマネー供給に向けたエクイティファインナンスの強化
・第4次産業革命に向けた無形資産投資の活性化
・FinTechを核とした金融・決済機能の高度化
79
成長投資を通じたイノベーションの創出
 Googleは、直近2年で人工知能・ロボット関連の技術を開発・展開するベンチャーを10社以上買収。
 このように豊富な資金を有する欧米企業は今後の成長の鍵となる技術・先端人材等の獲得を目的とし
た成長投資(M&A・設備投資・研究開発等)を次々に行い、イノベーションの創出を図っている。
【Googleが買収した企業の事例】
会社名
主な製品
買収年月日
SCHAFT (日)
人型ロボット
2013年12月
Industrial Perception
ロボットアーム
2013年12月
Meka Robotics(米)
ロボット
2013年12月
Holomni (米)
ロボット
2013年12月
概 要
東大初のベンチャー企業。米国防総省高等研究計画局(DARPA)主催の
ロボティクスチャレンジで2013年に優勝。
産業用ロボット(ロジスティクス向け、トラックからの自動荷卸し機など)。ロボット
向けOSで有名なWillow Garageからのスピンオフ。
MITコンピュータ科学・人工知能研究所からのスピンオフベンチャー。二足歩行ロ
ボットなど。
多方向に移動可能なロボティック車両の開発。
Bot & Dolly (米)
ロボット型カメラ
2013年12月
ロボットアーム活用の先端的な映像撮影機器。プロジェクションマッピングと連動。
Boston Dynamics(米)
ロボット
2013年12月
MITからのスピンオフ。人型や動物型のロボット製作。
Nest (米)
ホームオートメー
ション
2014年1月
サーモスタットや火災報知器の製造。スマートホームのハブとしての機能。CEOは
初代iPod開発担当のトニー・ファデル氏。
DeepMind Technologies (英)
人工知能
2014年1月
強化学習により各種のビデオゲームの操作を学べる人工知能を開発。
Jetpac (米)
人工知能
2014年8月
ビッグデータ分析、画像処理、機械学習を応用した旅行ガイドアプリケーション。
Vision Factory (英)
人工知能
2014年10月
ディープラーニングによる画像認識システム。
Revolv (米)
ホームオートメー
ション
2014年10月
コネクティッド・ホーム(家庭内のデバイスのリンク)を実現するためのハブとなる
ハードウェアの製造。
Timeful (米)
人工知能
2015年5月
…
出所:CrunchBase
機械学習技術を活用して、ユーザーに最適な行動を提案、学習を深める。
80
資本力が鍵となるテクノロジー系ベンチャーへのM&A投資
 第4次産業革命の鍵となる研究開発は、従来のネット系ベンチャーに比べ、必要な投資額の規模が
大きくなってきている(プログラマー等への人材投資に加えて設備や実機への投資が必要)。
 GoogleやAppleなどのIT系企業は、本業から得られる潤沢なM&Aの原資※を背景に、こうした
テクノロジー系ベンチャーへのM&Aを活発化しており、この厚みが競争上ものをいう。
※M&Aの原資:本業から得られる営業キャッシュフローから、設備投資等の有形固定資産投資額を控除したもの。
知識
集約
人工知能、バイオ、
素材、ロボット、等
必要な投資
規模が増大
出所:SPEEDAより経済産業省分析
低
ネット系
ベンチャー
GAFA
+M
54
Microsoft
25
Alphabet(Google)
13
Amazon.com
3.8
Facebook
4.2
製造業(平均)
東証
一部
非製造・非金融業(平均)
トップ
企業**
参考)トヨタ自動車
5社で、
年約11兆円
(約$990億)
の投資原資
>
カネ(資本集約度)
テクノロジー系
ベンチャー
Apple
高
労働
集約
「M&Aの原資※」の比較(10億ドル;2013-2015年平均)
東証一部トップ
135社**で、
年約10兆円
1.0
0.3
14
** 東証一部上場企業のうち、直近3年の平均売上高が100億ドル以上の企業
(製造業:73社、非製造業・非金融業:62社)
(約$910億)
の投資原資
81
無形資産投資とイノベーション、生産性向上の好循環
第4次産業革命への対応、革新的技術の創出、新技術を活用できる企業組織への変
革等、企業のイノベーションを支える投資として無形資産投資が重要であり※1、アメリカで
は無形資産投資の水準が既に有形資産投資を上回る規模に拡大。
無形固定資産投資額/有形固定資産投資額
無形資産投資/有形固定資産投資の日米比較
1.8
1.6
無形資産投資>有形資産投資
1.4
1.2
アメリカ
1.0
0.8
0.6
日本
0.4
0.2
有形資産投資>無形資産投資
0.0
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
※1:Corradoらの研究では、1990年代から2000年代初頭にかけて、アメリカの生産性上昇率の3分の1が無形資産投資によるものと
推計されている。Corrado, Hulten, Sichel (2005), “Intangible Capital and U.S. Economic Growth.” Review of
Income and Wealth 55, pp.658-660
(グラフ出所)RIETI 「JIPデータベース2013」、 INTAN Invest 「 intangible investment data website Aug.2014」、内閣府「93SNA」、アメリカ商務省「National
Income and Product Accounts Tables Jan.2016」
82
業種の壁を越えて拡大するFinTechサービス
クラウドファンディング・P2Pレンディング
ドングル決済
オンライン・短期少額・自動融資
カード不正利用防止セキュリティ
決済+運転資金融資
モバイル送金
ビットコイン取引所
少額・積立投資
SNSやEコマースのリアルタイム
取引動向を活用した与信・融資
クラウド・自動会計
データアグリゲーション
(家計情報)
従量制自動車保険
ロボアドバイザー
テレマティクス情報サービス
83
⑤産業構造・就業構造転換の円滑化
・迅速・果断な意思決定を可能とするガバナンス体制の構築
・迅速かつ柔軟な事業再生・事業再編等を可能とする制度・
環境整備
・労働市場・雇用制度の柔軟性向上(再掲)
84
欧米企業の事業組替えの実例:①GEの事業領域の変遷
 2000年以前に拡大させてきた金融事業のほかノンコア事業を縮小させ、エネルギー、航
空エンジン部門などを強化。
$180,000m
GEの部門別売上高の推移
$160,000m
$140,000m
$140B
$130B
その他
素材
素材
$120,000m
メディア
メディア
家電・機器
$150B
その他
2007年
プラスチック事
業をSABIC
(サウジ)に売却
メディア
家電・機器
家電・機器
$100,000m
金融
$80,000m
金融
$60,000m
2005年
再保険事業の
大半をスイス・
リーに売却
金融
$20,000m
ヘルスケア
航空機
航空機
航空機
エネルギー
エネルギー
エネルギー
$m
2000
$36B
その他
家電・機器
金融
2016年
家電部門をハ
イアール(中国)
に売却。
輸送
輸送
ヘルスケア
輸送
ヘルスケア
2015年
GEキャピタル
事業から撤退
を表明。金融
事業を順次
売却。
$117B
ヘルスケア
輸送
$40,000m
2011年
NBCユニバーサ
ルをコムキャスト
(米)に売却
2005
$52B
(出典)GE Annual Reportより
2010
航空機
2013年
Avio(伊)の
航空機部門
を買収。
2015年
アルストム(仏)
のエネルギー部
門を買収。
$72B
エネルギー
2015
$92B
85
欧米企業の事業組替えの実例:②Siemensの事業領域の変遷
 将来性や主力部門とのシナジーが低い事業を整理。利益が上がる事業に注力。
Siemensの部門別売上高の推移
€90,000m
€80,000m
€70,000m
€60,000m
€77B
€75B
情報通信
2006年
通信ネットワーク事
業をノキアと合弁
会社を設立して切
り出し
ランプ・LED
金融
2010年
照明子会社オスラ
ムを非連結化。
13年にスピンオフ
その他
その他
情報通信
€50,000m
輸送
2007年
自動車部品事業
を売却
ヘルスケア
2006年
バイエル(独)の診
断薬事業を買収
ランプ・LED
€40,000m
ヘルスケア
工業
工業
€69B
輸送
ヘルスケア
ヘルスケア
工業
2007年
診断機器デード
ベーリング(米)を買
収
€10,000m
2011年
ITサービス部門
をエトス(仏)に
売却
2011年
アレバ(仏)に原
子力事業を売
却
電力
電力
電力
2000
輸送
金融
電力
€m
その他
金融
工業
輸送
€30,000m
€20,000m
€77B
€36B
2005
€42B
2010
(出典)Siemens Annual Reportより
€61B
2015
€66B
86
迅速かつ柔軟な事業再編を可能とする環境整備
 海外における過去10年のM&A上位10件をみると、スピンオフや自社株対価TOBといった多様な
手法を用いた事業再編が行われている。
 例えば、自社株式を対価としたTOBは世界で多く行われているが、日本では現金でのTOBが中心。
世界のTOB金額上位10件(過去10年)
TOBによる
取得比率
(%)
完了
年月
日
買収企業
(所在国)
被買収企業
(所在国)
1
2007/
11/02
RFSホール
ディング(蘭)
ABNアムロホール
ディング(蘭)
98,189
98.80
2
2005/
08/09
ロイヤル・ダッ
チ・ペトロリア
ム(蘭)
シェル・トランス
ポート&トレーディ
ング(英)
74,559
3
2009/
3/26
ロシュ・ホール
ディング(スイ
ス)
ジェネンテック(米)
4
2007/
11/14
リオ・ティント・
カナダ・ホー
ルディング(カ
ナダ)
アルキャン(カナ
ダ)
2006/
08/08
ミッタル・ス
チール(蘭)
アルセロール(ルク
センブルグ)
32,240
2006/
04/19
テレフォニカ
(スペイン)
02(英)
31,659
2005/
06/30
テレコムイタリ
ア(イタリア)
テレコムイタリアモ
バイル(イタリア)
28,821
8
2007/
10/05
投資家グルー
プ(イタリア)
エンデサ(スペイ
ン)
26,438
45.62
9
2011/
04/08
サノフィ・アベ
ンティス(仏)
ジェンザイム(米)
23,898
10
2007/
04/23
イベルドーラ
(スペイン)
スコティッシュ・パ
ワー(英)
22,210
5
6
7
取引金額
(百万ドル)
日本のTOB金額上位10件(過去10年)
対価
友好/
非友好
現金:93
株式:7
非友好
100
現金:0
株式:100
46,695
47.82
37,630
100
(出典)トムソン・ワン及び各社発表資料より経済産業省作成
93.70
完了
年月
日
買収企業
被買収企業
1
2007/
04/16
日本たば
こ産業
ギャラハ・グ
ループ(英)
友好
2
2008/
05/14
武田薬品
工業
現金:100
株式:0
敵対
3
2013/
12/18
4
現金:100
株式:0
友好
現金:29
株式:71
友好
現金:100
株式:0
友好
現金:66
株式:34
友好
現金:100
株式:0
敵対
100
現金:84
その他:16
友好
100
現金:53
株式:47
友好
100
44.65
取引金額
(百万ド
ル)
TOBによ
る取得
比率
対価(%)
友好/
非友好
14,654
100
現金:100
株式:0
友好
ミレニアム・
ファーマシュー
ティカルズ(米)
5,734
100
現金:100
株式:0
友好
三菱東京
UFJ銀行
アユタヤ銀行
(タイ)
5,279
72.01
現金:100
株式:0
友好
2013/
03/26
電通
イージスグルー
プ(英)
4,116
86.37
現金:100
株式:0
友好
5
2010/
06/08
アステラス
製薬
OSIファーマ
シューティカル
ズ(米)
4,031
100
現金:100
株式:0
友好
6
2008/
11/04
三菱東京
UFJ銀行
ユニオンバンク
オブカリフォル
ニア(米)
3,707
38.88
現金:100
株式:0
友好
7
2008/
01/28
エーザイ
MGIファーマ
(米)
3,557
100
現金:100
株式:0
友好
8
2015/
1/13
大塚製薬
アバニアファー
マシューティカ
ルズ(米)
3,427
100
現金:100
株式:0
友好
9
2010/
12/13
日本電信
電話
ディメンション
データ(南アフリ
カ)
3,119
100
現金:100
株式:0
友好
10
2010/
10/06
パナソニッ
ク
パナソニック電
工(日)
3,041
32.16
現金:100
株式:0
友好
87
⑥第4次産業革命の中小企業、地域経済への波及
・中小企業、地域におけるIoT等導入・利活用基盤の構築
88
中小企業等経営強化法の概要
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」
平成28年5月24日成立
1.背 景
(1)人口減少・少子高齢化の進展や国際競争の激化、人手不足など、中小企業・小規模事
業者・中堅企業(以下「中小企業・小規模事業者等」という。)を取り巻く事業環境は厳しさ
を増しており、足下では生産性が低迷し人材確保や事業の持続的発展に懸念が存在。
(2)こうした中で、中小企業・小規模事業者等が労働の供給制約等を克服し、海外展開等も
含め、将来の成長を果たすべく、生産性の向上(経営力向上)を図ることが必要である。
2.法律の概要
(1)事業分野の特性に応じた支援
-国は、基本方針に基づき、事業分野ごとに経営力向上の方法等を示した「事業分野別指針」を
策定。個別の事業分野に知見のある者から意見を聴くなどして、中小企業・小規模事業者等の
経営力向上に係るベストプラクティスを事業分野別指針に反映させていく(PDCAサイクルを確
立)。
(2)中小企業・小規模事業者等による経営力向上に係る取組の支援
-中小企業・小規模事業者等は、事業分野別指針に沿って、顧客データの分析を通じた商品・
サービスの見直し、ITを活用した財務管理の高度化、人材育成等により経営力を向上して
実施する事業計画(「経営力向上計画」)について、国の認定を得ることができる。認定事業者
は、税制や金融支援等の措置を受けることができる。
-また、支援機関は、国の認定を得て、中小企業・小規模事業者等による経営力向上計画の作
成・実施を支援する。(現行では、商工会議所、商工会、金融機関、士業等が支援機関となっ
ている。)
89
中小企業等経営強化法の概要
経営力向上の事例
サービス業における取組(例)
製造業における取組(例)
売上、予約状況等の情報をタブレット
端末を用いて、各所の従業員にリアルタ
イムで共有。細やかな接客や業務の効
率化による収益向上を実現。
自動化された工作機械を導入しつ
つ、従業員の多能工化を促進し、
一人で管理できる工作機械を増や
し、収益力の向上を実現。
90
中小企業のロボット導入・IT化支援策
【第5回官民対話による総理指示】
1.ロボット導入への支援(導入コスト削減、支援事業者倍増)
●ロボット導入プロセス・スキルの標準化等により、工程を効率化。
●小型汎用ロボット(プラットフォームロボット)の開発。
●今後5年間で、小型汎用ロボットの導入コストを2割以上削減、
導入を支援する事業者(SIer)を3万人に倍増。
2.専門家による支援(IT専門家やスマートものづくり応援隊による支援)
(1) IT専門家による支援
●IT化における最も重大なネックは、リテラシー不足により最初の一歩が踏み出せないこと。
●よろず支援拠点等に配置するIT等専門家を増強。また、専門家派遣の規模を拡大。
(2) スマートものづくり応援隊による支援
●中小企業は、自社の業務をどのように改善し、その際、IoT・ロボット等の新しい技術をどのように活用
していけばよいかが分からないことが多い。
●カイゼンに加え、IoT・ロボット導入も支援出来る人材を育成・派遣し、伴走型で支援。
●今後2年間で、1万社以上の中小企業を専門家が支援し、IT化等のノウハウ伝授。
●この中で、今年度から、「スマートものづくり応援隊」に相談できる拠点の整備を開始
スクールでの研修
IoT・ロボット
生産技術に
+
導入ノウハウ
秀でた企業OB
IoT・ロボット等
+ 現場カイゼン
に知見ある人材
ノウハウ
全国の拠点整備を本年度から開始
スマートものづくり応援隊
・ 企業でのカイゼン活動
・ IoT・ロボット導入支援
拠点で相談受付
中小企業に派遣
91
91
⑦第4次産業革命に向けた経済社会システムの高度化
・第4次産業革命に対応した規制改革の在り方
・データを活用した行政サービスの向上
・戦略的な連携等を通じたグローバル展開の強化
・第4次産業革命の社会への浸透
92
第4次産業革命を勝ち抜く「目標逆算ロードマップ方式」
○ 第4次産業革命下では、急激かつ予見が難しいイノベーションやビジネスモデル変革の可能性がある。
○ 不確実な未来に対応し、国際競争を勝ち抜くためには、長期的な将来像から逆算した規制・行政手続きの
見直しメカニズムの導入等が必要。
目標逆算ロードマップ方式
自動走行の将来像
・交通事故の削減、交通渋滞の緩和、環境負荷の軽減
・様々な産業(物流、移動サービス等)での自動走行技術の活用
1.長期的な将来像を官民で共有
・運転者の負荷軽減、自由時間の確保
未来投資に向けた官民対話における総理発言(2015年11月5日)
2.具体的な目標を中期的な期限を
定めて設定
「2020年オリンピック・パラリンピックでの無人自動走行による移動サービスや、
高速道路での自動運転が可能となるようにする。このため、2017年までに
必要な実証を可能とすることを含め、制度やインフラを整備いたします」
協調領域のロードマップ例
2016年度
Ⅳ.人間工学
Ⅴ.機能安全等
Ⅵ.セキュリティ
Ⅶ.認識技術
国際標準化
ビジネスモデルの明確化
(事業の担い手等)
※データプラット
測量
フォームとしての
可能性も念頭 基盤地図の整備(高速道路は完了)
に、更なる発展
(地図情報の段 地図システム(更新含む)の整備
階的拡大等)に
地図システムを活用した実証試験
留意する。
(出典)自動走行ビジネス検討会「今後の取組方針」(平成28年3月23日)
2020年度
地図整備エリアの段階的拡大
2
)
Ⅷ.判断技術
基盤地図
の仕様
の明確化
2019年度
早ければ2020年頃から
一般道路上での自動走行 レ(ベル
Ⅲ.社会受容性
③ビジネスモデル
3.
① 目標を実現するための必要な全ての要素
(規制改革、事業促進策、民の事業展開
等)のロードマップを作り、
② 短期の具体的改革を実施
Ⅱ.通信
用途
の明確化
2018年度
早ければ2018年頃から
高速道路上での自動走行 レ(ベル2)
Ⅰ.地図
①用途 ②仕様
協調分野
2017年度
93
第4次産業革命の2つのシナリオ
~日本は今、「分かれ目」~
第4次産業革命に対応してスピーディに変革できれば、
社会課題に対応した「潜在需要の掘り起こし」、
人口減少を克服する「生産性革命」実現の
「チャンス」
対応に遅れると、
世界の先行企業の下請け化して、中間層が崩壊する
「ピンチ」
 痛みを伴う転換をするか、安定したジリ貧を取るか
 転換するならスピード勝負
94
産業構造の試算結果
(部門別GDP成長率・従業者数・労働生産性)
部門
①粗原料部門
変革シナリオにおける姿
経済成長に伴い成長。
農林水産、鉱業 等
※2015年度と2030年度の比較
名目GDP成長率(年率)
従業者数
※ ( )内は2015年度の従業者数
現状放置
変革
労働生産性の伸び(年率)
〔現状放置ケースと変革ケースの差〕
現状放置
変革
+0.0%
+2.7%
-81万人 -71万人
(278万人)
+2.4%
②プロセス型製造部門
(中間財等)
規格品生産の効率化と、広く活用される新素材の開発
のプロダクトサイクルを回すことで成長。
-0.3%
+1.9%
+1.3%
③顧客対応型製造部門
マスカスタマイズやサービス化等により新たな価値を創造し、
付加価値が大きく拡大、従業者数の減少幅が縮小。
-58万人 -43万人
(152万人)
+1.9%
+4.1%
+1.2%
④役務・技術提供型
サービス部門
-214万人-117万人
(775万人)
顧客情報を活かしたサービスのシステム化、プラットフォー
ム化の主導的地位を確保し、付加価値が拡大。
+1.0%
+3.4%
-283万人 -48万人
(2026万人)
+1.6%
⑤情報サービス部門
第4次産業革命の中核を担い、成長を牽引する部門と
して、付加価値・従業者数が大きく拡大。
+2.3%
+4.5%
-17万人 +72万人
(641万人)
+1.3%
顧客情報を活かした潜在需要等の顕在化により、ローカ
ルな市場が拡大し、付加価値・従業者数が拡大。
+1.2%
+3.7%
-80万人 +24万人
(654万人)
+1.4%
システム全体の質的な高度化や供給効率の向上、他サービス
との融合による異分野進出により、付加価値が拡大。
+1.6%
+3.8%
-53万人 -7万人
(388万人)
+1.4%
社会保障分野などで、AIやロボット等による効率化が進
むことで、従業者数の伸びが抑制。
+1.7%
+3.0%
+51万人 +28万人
(1421万人)
+1.4%
+1.4%
+3.5%
-735万人 -161万人
(6334万人)
+1.3%
石油製品、銑鉄・粗鋼、化学繊維 等
自動車、通信機器、産業機械 等
建築、卸売、小売、金融 等
情報サービス、対事業所サービス
⑥おもてなし型サービス部門
旅館、飲食、娯楽 等
⑦インフラネットワーク部門
電気、道路運送、電信・電話 等
⑧その他
医療・介護、政府、教育 等
合計
※部門は、産業連関表におけるアクティビティベースの産業分類に対応し、個々の財・サービスの生産活動による分類である。例えば、自動車製造をIT化で
効率化する企業があった場合、自動車製造活動と情報サービス活動に分割され、それぞれの活動が顧客対応型製造部門と情報サービス部門に計上される。
95
職業別の従業者数の変化(伸び率)
変革シナリオにおける姿
職業
①上流工程
経営戦略策定担当、研究開発者
等
②製造・調達
製造ラインの工員、
企業の調達管理部門
等
※2015年度と2030年度の比較
職業別従業者数
現状放置
職業別従業者数(年率)
変革
現状放置
変革
経営・商品企画、マーケティング、R&D等、新たなビ
ジネスを担う中核人材が増加。
-136万人
+96万人
-2.2 %
+1.2 %
AIやロボットによる代替が進み、変革の成否を問わ
ず減少。
-262万人
-297万人
-1.2 %
-1.4 %
③営業販売(低代替確率)
高度なコンサルティング機能が競争力の源泉となる商
品・サービス等の営業販売に係る仕事が増加。
-62万人
+114万人
-1.2 %
+1.7 %
④営業販売(高代替確率)
AI、ビッグデータによる効率化・自動化が進み、変革
の成否を問わず減少。
-62万人
-68万人
-1.3 %
-1.4%
⑤サービス(低代替確率)
人が直接対応することが質・価値の向上につながる
高付加価値なサービスに係る仕事が増加。
-6万人
+179万人
-0.1 %
+1.8 %
⑥サービス(高代替確率)
AI・ロボットによる効率化・自動化が進み、減少。
※現状放置シナリオでは雇用の受け皿になり、微増。
+23万人
-51万人
+0.1 %
-0.3 %
-3万人
+45万人
-0.2 %
+2.1 %
-145万人
-143万人
-0.8 %
-0.8 %
-82万人
-37万人
-1.1 %
-0.5 %
-735万人
-161万人
-0.8 %
-0.2 %
カスタマイズされた高額な保険商品
の営業担当
等
低額・定型の保険商品の販売員、
スーパーのレジ係
等
高級レストランの接客係、
きめ細やかな介護
等
大衆飲食店の店員、コールセンター 等
⑦IT業務
製造業のIoT化やセキュリティ強化など、産業全般でIT
業務への需要が高まり、従事者が増加。
⑧バックオフィス
AIやグローバルアウトソースによる代替が進み、変革の
成否を問わず減少。
製造業におけるIoTビジネスの開発者、
ITセキュリティ担当者
等
経理、給与管理等の人事部門、
データ入力係
等
⑨その他
建設作業員
合計
等
AI・ロボットによる効率化・自動化が進み、減少。
(出所)株式会社野村総合研究所およびオックスフォード大学(Michael A. Osborne博士、Carl Benedikt Frey博士)の、日本の職業におけるコンピュータ化可能確率に関する共同研究成果を用いて経済産業省作成
96