すべての社員にとって働きやすい職場環境の実現

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すべての社員にとって働きやすい職場環境の実現
当社が社会からの信頼と期待に応えて、新しい価値創造を実現する企業として成長し続けるためには、
多様な価値観や生き方、考え方を持った人材が集まり、互いを認め、自由闊達に議論し、
協働する柔軟な風土・文化を育むことが大切です。そして、主役である社員一人ひとりが、
仕事(=WORK)
と私生活(=LIFE)をバランスよく両立させ、持てる力を最大限に発揮して、
「良い仕事」をたゆみなく生み出す企業へと変革をしていきたいと考えています。
多様な人材の活躍
仕事と私生活のバランスの取れた社員
生産性の向上
魅力ある職場
多様な価値観
事業領域の
拡大
WORK LIFE
BALANCE
未来のあるべき姿
仕事の見直し・再設計
市場・顧客の
多様化
真の
グローバル化
会社文化の改革
労働力
人口減少
価値観の
多様化
社員の意識改革
自己啓発の
必要性
低い
労働生産性
DIVERSITY
多 様な人 材 の 活 用
メンタル
ヘルス
現 在
男性中心
日本人中心
仕事人間、私生活・家庭を顧みない社員
効率の悪い働き方
長時間労働
画一的な価値観
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三井物産のCSR活動
Society
社
DIVERSITY
三井物産の目指す
ダイバーシティ
グローバル総合力企業を目指す当社は、
ダイバーシティ
(多様性)への取り組みを組織変革とパフォーマンス向
WORK LIFE
BALANCE
会
三井物産の目指す
ワーク・ライフ・バランス
当社は「良い仕事」を生み出すには、担い手である
社員一人ひとりが、会社と生活をバランスよく両立させ、
上のための重要な企業戦略と考え、推進しています。 生き生きと安心して働くことのできる職場環境づくりが
当社では、性別 、国籍を含め、
さまざまな価値観 、考
大切であると考えています。
え方やライフスタイルを持つ多様な人材が仕事をしてい
社員、そしてその家族・家庭にはそれぞれのライフス
ます。私たちは、その多 様な価 値 観やバックグラウンド
テージや取り巻く環境に伴い、家庭人、社会人として欠
を持つ社員が、性別やライフスタイルによらず、能力や個
かせない役割があります。生活にちなんだ多様な要請
性を発揮できる職場づくりを目指し、体制・制度の整備
や課 題と仕 事を両 立させることのできる職 場 づくりに
とともに、多様性を受け入れ尊重する風土・文化づくり
向けてさまざまな施策を進めています。
に向けた改革に力を注いでいます。
多様な働き方支援「AND」
社員の意識改革・会社風土改革
2006年12月にスタートした「AND」※ は、Work and
さまざまな考え方やライフスタイルを持つ社員一人ひ
Family、Work and Learning など、
どちらか 一方を選ぶ
とりが 持てる力を最大限に発揮できるようにするには、
“OR ”ではなく、両立させることのできる“AND ”の働き
制 度や体 制の変 革とともに、社員の意 識 改 革 、そして
方を尊重する、多様な働き方の支援施策です。2005年
会社の風土・文化の改革が不可欠です。
10月に発足した「ダイバーシティ推進室」が中心となって、
多様性を受け入れる風土・文化の醸成に向けて、
さま
「良い仕事」を生み出すための環境づくり「AND」を展
ざまな施策、活動を進めています。
多様化推進・両立支援に関する情報の提供
開しています。
●
「AND」は、
ダイバーシティと、
ワーク・ライフ・バランス
・ダイバーシティ推進室ホームページ「多様な働き方
を柱として、未来のあるべき姿に向かって社員の意識
支援AND」の運営
改革と会社の風土・文化の改革を進めていきます。全
・育児・介護の諸 制 度を分かりやすくまとめたハンド
社員が自らの 働き方 、生き方 、そして会 社の 在り方を
ブックの配布
考え、実践していく取り組みです。
・社内報「MBK LIFE」でのダイバーシティ特集
※AND:Advancing New and Diversified work styles
(2006年9・10月号、11・12月号)
・各種研修、座談会の実施
ダイバーシティ推進室ホームページ
「多様な働き方支援AND」
育児・介護の諸制度ハンドブック
女性社員向けキャリアプラン・ライフプランを考えるための講演会
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育児・介護関連施策
その他の両立支援施策
育児・介護を巡るさまざまなニーズの変化や要請を、
私生活と仕事との両立の在り方は多様であり、それ
社員からの意見聴取も含めて、積極的にくみ上げながら、
らの必要性に応えて、各種の支援策を強化しました。
逐次、具体的な施策を実施しています。
●「配偶者の転勤による退職者の再雇用制度」の新設
●
配偶者の転勤により退職を余儀なくされる社員に対し、
育児休業の一部有給化
有給で取得できることにより、育児休業をより取得し
再就職の門戸を開くものです。
やすい環境となりました。
● カフェテリアプランの導入
●
さまざまな福利厚生メニューを社員それぞれのニーズ
育児休業の対象者要件緩和
配偶者が常態として子を養育できる場合(専業主婦
やライフプランに合わせて活用できる選択型の福利
等)
も取得可能としました。
厚生制度を導入しました。
● その他の制度運用改善
●
・育 児 時 間 、時 間 外 勤 務 免 除・制 限の 適 用期 間を
女 性 社 員 同 士の 情 報 交 換の 場として「 女 性ネット
延長しました。
ワークの会」や、女 性 医 師による面 談 、アドバイスを
・妊娠休暇の半日単位取得 、介護休業の分割取得
受けられる「女性医療相談室」を設置しました。
女性社員への支援策の充実
を導入しました。
●
スムーズな復職の支援
多様な働き方支援の取り組み
休 職 前と復 職 前の面 談 、休 業中のケアなど休 業 不
安の解消とスムーズな復職を支援します。
●
当社本店内に託児所開設(2008年4月予定)
育児休暇をとって
サービス事業部
アウトソーシング事業室
古山 彰
ダイバーシティ推進室では、
ダイバーシティやワーク・ライフ・
仕事、家庭、社会、自分のバラ
バランスの考え方、会社の両立支援制度などの説明会や
ンスをとるように常に意識していま
参加者との意見交換会を実施。また、キャリアプラン、
ライフ
したが、育児休業の一部が有給化
プランに関する講演会などを開催し、仕事との向き合い方、
され、男性社員も取得しやすくなっ
仕 事と私 生 活の在り方などへの気 付きや見 直しの機 会を
たのを知り、次女の出産後に家事・子育てにより積極的に
提供しています。
参加しようと思い、育児休業を取得しました。取得に際しては、
社員それぞれのライフスタイルや生活環境においての悩
同制度に対する上司の理解や担当しているプロジェクトの
みや課題を共有し、今後の
メンバーのサポートがあり、復帰後もスムーズに職場に戻る
多様な働き方の支援策へ
ことができました。消費者 起点のサービス事業構 築を推進
生かしていくため、
このよう
する組織に属しているので、育児 休業中の経験により視野
な活動を本店はじめ、国内
が広がり、新しい発想が出てきたことが、復帰後の仕事にも
十分役立っています。
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ワーク・ライフ・バランスなどについての説明を
聞く関西支社社員
支社・支店でも順次実施し
ています。
三井物産のCSR活動
Society
社
会
ワ ー ク A N D ラ イ フ 応 援 週 間
社員一人ひとりが自らの働き方、生き方、そして会社の在り方を考える機会をつくるために、初めての試みとして、
2007年2月19日∼23日を「ワークANDライフ応援週間」と設定し、
ダイバーシティやワーク・ライフ・バランスに関連したさまざまなプログラムを実施しました。
■ ワークANDライフ応援週間プログラム
2/
19(月)
ダイバーシティ推進委員長・人事総務部長とコミュニケーションランチ
[ 当社におけるダイバーシティについて]
2/
21(水)
慶應義塾大学大学院教授 高橋俊介氏 講演会
[ 自分らしいキャリアをつくる]
アクティブ・
トーク・ウェンズデー
[ 松原亘子社外取締役を囲んで ]
キャリアフォーラム&立食懇親会
[ 先輩女性の経験談を聞こう!]
2/
20(火)
22(木)
2/
23(金)
2/
人事総務部長とコミュニケーションランチ
[ 商社マンのワーク・ライフ・バランスについて]
ワークライフコンサルタント パク・ジョアン・スックチャ氏 講演会
激変時代のワーク・ライフ・バランス
─働き方の変革と個の付加価値向上に向けて─
講演会「自分らしいキャリアをつくる」
社員座談会
[ 男性の育児・家事参加を考える ─育児休業を取る男性をどう思いますか?─ ]
パネルディスカッション&立食懇親会
[ 商社は男の職場か?]
ファシリテーター:リスカーレ・コンサルティング代表 湯本壬喜枝氏
パネリスト:当社社員5名
パネルディスカッション「商社は男の職場か?」
慶應義塾大学大学院教授であり、人事コンサルタント
応援週間最後のイベントとして、男女合わせて5名の
としてもご活躍中の高橋俊介氏を迎えて講演会を行い
社員によるパネルディスカッションを開催しました。
ました。今なぜキャリア自律が重要なのか、従来のキャ
忙しい時間帯にもかかわらず106名の社員が聴講す
リアに関する誤解をご説明いただくとともに、幸せなキャ
る中で「男女に実力の差はあるのか」
「女性の実力発揮
リアの条件として、内なる「動機」を能力発揮に結びつ
のために必要なこと」
「職場における情報の共有化や
けること、
自分の価値観から仕事の意味を確認すること、
コミュニケーションの重要性」
私生活と仕事のバランスとインテグレーションを図ること
「女性管理職について」など、
などを、分かりやすい例を交えお話しいただきました。
さまざまな観点から興味深
参加者にとって、
自身の働き方や生き方をあらためて見
い議 論 が 活 発に展 開され
直す良い機会となりました。
ファシリテーターの湯本氏と社員パネリスト
キャリアフォーラム「先輩女性の経験談を聞こう!」
当社のさまざまな分野で活躍する女性中堅社員5名
の経験を聞くフォーラムを開催しました。登壇者からは、
苦労話や信条、経験に裏打ちされた味のある提言など、
ました。
プログラム参加者の声
エネルギー第二業務部
人事総務室
手嶋 慶子
「アクティブ・
トーク・ウェンズデー」では当
社初の女性社外取締役である松原取締役
後輩女性への力強いメッセージが披露され、終了後の
と直接お話をさせていただき、働く女性の
懇親会では、担当する仕事や資格、年齢を超えた女性
見本となる方だと実感するとともに、
もっと多くの女性社員と
社員同士の情報交換や交流の輪が広がりました。
語らう場があればいいと感じました。
また、2つの講演を聴講しましたが、本当に発想の転換ともな
るたくさんのキーワードがあり、
このような会が今後も定期的に
あれば、
ワーク・ライフ・バランスが少しずつ社員に浸透してい
くと思います。最終日のパネルディスカッションも興味深かった
です。立場が違えば感じ方も異なるのは当然。でも大切なのは、
経験談や後輩女性社員へ
メッセージを送る先輩女性社員
一体感を持って業務に取り組める環境づくりだと思いました。
38
Topics
社会とともにダイバーシティの推進
当社は資本提携するサクセスアカデミーを通して保育事業を展開し、女性が働きやすい環境の整備に
努めています。2007年9月25日に開催されたステークホルダーダイアログでは、
保育事業に関連するステークホルダー 5名が、当社の果たすべき役割などを議論しました。
㈱サクセスアカデミーの事業概要
本社・神奈川県藤沢市。89年設立。病院内保育室の運営
から事業を開始する。2005年4月には三井物産が30%出資。
保育士750人を擁し、病院内保育室や認可保育園、保育所、
学童保育など、首都圏を中心に100カ所の施設を運営して
いる。中でも病院内保育室については国立・私立大学病院
などで 80カ所を運営し、業界ナンバーワンの実績を誇る。
近年は直営の認可保育所や川崎市などにおける公設民営
型の保育所の運営も手がけている。社会的な少子化対策の
盛り上がりや看 護 師の 待 遇
改 善、アウトソーシング化の
流れを背景に、ここ1、2年で
急速に売上を伸ばしており、
2007年度は18億円の売上を
見込んでいる。
社会のダイバーシティ推進に向けて
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サクセスアカデミーが運営を委託されて
いる川崎市立塚越保育園
新しい形の保育園運営を行っています。委託して感じた
氏:初めに、三井物産がサクセスアカデミーと資本 提
ことは、園の雰囲気が非常に明るく、保育士さんがきび
携を行った理由を教えてください。
きびしていて、利用者への対応がいいということです。
近藤:当社サービス事業部は、2005年4月にサクセスア
保護者も非常に協力的で、民営化した感想を聞いてみ
カデミーに30%出資し、社員を一人出向させています。
たところ、
「思っていた以上に保 育 内 容が 素 晴らしく、
資本提携の背景には、
「ダイバーシティの推進」という大
安心して子供を預けられる」という答えが返ってきました。
きなミッションがあります。当事業部ではこれまで、人材ビ
企業は今後、保育分野における新しい大きな力になる
ジネスや教育ビジネスを事業領域としてきました。人材
だろうと期待しています。
派遣事業を通しては、
ライフスタイルに合わせた多様な
氏:高い評価をいただいているようですが、サクセス
働き方を紹介し、人材紹介事業では、女性の社会進出
アカデミーとして保育施設の運営にあたって留意され
を促進するために転職活動を支援しています。保育事
ている点は何でしょうか。
業を展開するサクセスアカデミーへの出資と事業運営
金子 氏:法定を上回る人員配置を行うなど、十二分に
の支援も、
こうした流れの一環で行いました。もちろん、
気を使っています。ただ、毎日2,000人以上のお子さん
保育事業にビジネスチャンスを見出したこともあります。
をお預かりしているわけですから、事故が皆無というこ
氏:サクセスアカデミーに保育園の運営を委託されて
とはあり得ません。そこで、事故が起こった時の職員の
いる川崎市では、同社の事業をどう評価していますか。
対応について情報を集約する体制を備えるとともに、各
長嶋 氏:2007年4月から、市内の塚越保育園で、サク
保育所から上がってきた、事故につながる可能性のあ
セスアカデミーに指定管理者として運営を委託し、保護
る「ヒヤリハット」事 例 ※をデータベース化して共 有し、
者と管理者、行政の三者で運営方針を議論しながら、
現場支援に活用しています。
※ヒヤリハット事例:ヒヤリとしたり、ハッとするなど、事故寸前の危険な事例。
三井物産のCSR活動
Society
社
事業拡大に三井物産のリソースを活用
会
長嶋 氏:川崎市は、2007年7月に「保育基本 5カ年計画」
氏:この事業をスタートしたのは、
まだ 特定事業管理
を策 定しました。認 可 保 育 所を整 備し、駅の近くに小
制度( P.22 参照)が 導入される前ですね。仮に今から
規 模 保 育 所を約 1 0カ所 設 置 するなどの 施 策により、
こういう事業を始めると想定した場合 、CSR 推進部は
2011年度までに保育の受け入れ枠を2,600人増やす
どんな点をチェックしますか?
計画です。小規模保育所については、運営者に対する
山本(CSR推進部長)
:特定事業では、公共性が高い
規制枠を取り払い、幅広く応募を呼びかけていきたいと
事業に参入したり補助金制度を使用する場合などに、
考えています。三井物産にも、小回りのきいた保育所の
事 業のプロセスやその透 明 性をチェックします。また、
運営への参加や、企業内保育所の設置を通して就労
子供の健康を含めた安全、安心への取り組みや、
これ
支援に協力していただければありがたいです。
が 徹 底されるような社 員 教 育の 実 施など、
さまざまな
氏:三井物産、サクセスアカデミーの今後の抱負を聞
リスクへ の 対 応 状 況も確 認します。それ から、当 社と
かせてください。
してどんな役割を果たせるかという点も審議することに
金子 氏:今後、川崎市のように意欲的な施策を打ち出
なります。
す自治体が増えてくるでしょう。当社でも、
こうした自治
氏:三井物産はどんな役割を果たしているのですか。
体に積極的に協力していきたいと思っています。
近藤:サクセスアカデミーは病 院 内 保 育 所を数 多く手
近藤:サービス産業の担い手は「人」です。事業が急成
がけています。当社も多岐にわたる病院向けサービス
長する中で、首都圏では保育士の確保が難しい状況
を提供しているので、他のサービスとパッケージ化して
にあり、保育士の育成から手がける必要があるかもし
営業活動を行うことで、お客様にさまざまな付加価値を
れません。2008年4月には当社内に託児所ができます
提供できるようになったと思います。また、受託先の拡大
が、
この運営もサクセスアカデミーに委託する予定です。
にも貢献できたのではないかと自負しています。
今後は、企業向け託児所の開設もサポートしていきた
金子 氏:出向 社員の方に営 業 先を開 拓していただい
いと思っています。
たり、営業部に取引先を紹介していただいたりして、業
山 本:この 事 業は、
まさしく当社 が 進めようとしている
務がかなり拡大しました。デベロッパーやゼネコンと提
ダイバーシティを社会的に広く推進することにつながり、
携して新規物件への保育所設置の提案も行っていま
「本業を通じた CSR」といえます。事業が 拡大すると社
すが、
こうした施設では、単に保育所をつくればいいと
会からの期待も大きくなりますから、ステークホルダーに
いうものではなく、企画提案能力も問われます。ここにも
対し積極的に情報開示をしていくことも大切でしょう。
三井物産のリソースが生きています。
氏:ダイバーシティという観点から高く評価できる「良い
事業が拡大する中でサービスの質をどう維持するか
仕事」だと思います。課題は、需要が増える中で質の良
いサービスをどうやって継続的に提供していくかです。
氏:今後、三井物産やサクセスアカデミーに期待する
スタッフ不足から質が低下することなどないよう、
トレー
ことは何ですか。
ニングにはさらに力を入れていただきたいと思います。
司会 麗澤大学大学院
国際経済研究科 教授
川崎市健康福祉局
こども施策推進部 こども計画課 課長
㈱サクセスアカデミー
取締役 経営企画室 室長
三井物産 サービス事業部
ヒューマンリソース事業室 室長
巌氏
長嶋 和人 氏
金子 亮一 氏
近藤 安徳
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