はやりの農業女子どこまで 官主導だが、企業の胎動も

2016年2月
はやりの農業女子どこまで
官主導だが、企業の胎動も
農業女子プロジェクトという言
葉を耳にするようになってきた。農
水省が推進しているもので「農業で
働く若い女性」を増やそうという試
みだ。
農水省経営局就農・女性課が取り
仕切る。民間企業とも連携した所謂
「農業ビジネス」振興策。農水省主導で行われているが、
「~女子」といったネーミン
グや補助金を受け取らない事業。背景には、若い女性の間にじわりと、農業への関心が
広がりつつあることもある。
農業女子プロジェクトの出現は「女性の活躍」を言い始めた野田民主党政権時代から
の政策の一環。それを第二次安倍政権が事実上引き継いだ。指導的地位に占める女性の
割合を増やして「女性の活躍」を推進すると打ち出している。
同種の女性活躍推進策としては、すでに国土交通省自動車局が「トラガール(女性ト
ラックドライバー)促進プロジェクトサイト」を開設した。全日本トラック協会などと
連携し、周知・広報を進めている。
他にも同省の旧建設省系セクションが推進する建設土木関係で働く女性、
「ドボジョ
(土木系女子)
」という言葉が広がり始めている(日本建設業連合会は『けんせつ小町』
というネーミングを後押ししている)
。
こうした「官製・女性活用推進」の動きが農水省にも反映され始めたという一面があ
る。
農業界では「農家の嫁」問題が指摘されてきた。妻・母・義理の娘をこなした過重労
働が指摘されてきた。新規農業従事者の 4 人に 1 人が女性で、全体での女性の割合は約
4 割にも上る。農業における女性の役割は高い。
それなのに、女性の地位は低い。各地の農協としては原則として 1 世帯1人しか正組
合員を認めないので、自然と世帯主の男性に決まるのが通例である。農水省もこれを是
正しようと、
「家族経営協定」
(経営方針などを家族間の話し合いに基づいて取り決める)
締結を推進するなどしてきた。だが、やはり改善は進んでいるとはいえない。
農業女子に光が当たるのはそうした現状の打破として期待されている。また、単に農
水省が旗を振っているというのにはとどまらない。企業も敏感にビジネスに取り入れて
始めている。
たとえば、ダイハツ工業。
「古い価値観を捨て、新たな付加価値を-」ダイハツが開発したピンクやオレンジな
どのカラフルな色彩に包まれた『農業女子パック』という名の軽トラックである。
休憩や着替えのスペースなどを備えた仮設トイレや、白いトラクター、ハンドブレイ
キやエンジンなどを工夫改良した草刈り機なども開発されている。これらは従来男性用
だったものを女性ユーザーの視点を取り入れて改良したものである。
農業女子プロジェクトへの参加メンバーは昨年 12 月時点で役 400 人。メンバーと企
業のコラボは、旅行大手のHISとの「福島への1泊 2 日エコツアー」
、日本サブウェ
イと「農産物を生かしたサンドウィッチ」
、ローソンとの「はちみつデザート」などに
実を結んでいる。
農業女子プロジェクトメンバーのマスコミ対応も、農家の女性からはかなり違う。お
洒落な服を着て、綺麗な化粧をして・・・。古い農家からはこうした「農業女子」を甘
いと軽蔑する眼差しも少なくない。しかし、彼女たちが自由に伸び伸びと活躍出来る状
況が農業が普通の産業になるための第一歩と言えないだろうか。
「農業女子」というキャッチコピーの生みの親は(株)博報堂に勤務する「広告女子」
である勝又多喜子さんだ。勝又さんは2012年から2014年までの2年間農水省に
出向していた。農業関係の会議に参加した時のことだが、女性農業者たちがお洒落や子
育て、よもやま話といった女性特有の悩みや世間話をするのを見て「農業女子」を思い
ついた。女性農業者が知恵を出し、企業が資金を出し、新しい商品やサービスを生み出
す、というプロジェクトが考案されたのだ。
農水省の担当部局によると、農業大学校や農業高校に女性の姿が見られるようになっ
たが、まだまだこれから感もあると言う。だが、女性パワーが何か変えそうな雰囲気は
できつつある。
(ソクラ編集部
www.socra.net )