3/5~3/16 エジプト訪問レポート 2010/03/23 ナイルデルタにおける 防風林の蒸発抑制の効果検証 ~予備調査~ 地球学類 3年 清水達輝 1、調査対象地 調査対象地はエジプトの北部に位置するナイルデ ルタの中の南西部にある富田農園。緯度・経度は大体 N30°30.667’ ・E30°48.401’の地点。 こちらの農園の所有者の富田さん(現地の方)はこ のプロジェクトに非常に協力的な方で、防風林のサン プルも快く提供していただきました。 右の地図は研究対象地の位置。Google Earth より。 調査対象地の富田農園は El Birigat にあり、周辺は 広大な農園が広がり、住宅地のようなものは何もなく、 寝泊りできる施設は見当たらなかった。ナイル川を渡 った、富田農園から東に車で 30 分ぐらいのところに 町があり、食料などはここで手に入ると思われる。 富田さんが暮らしている ASHMUN という町にあ る家は、この圃場から約 25km ほど離れており、移動 に多少の時間がかかる。 3/5~3/16 エジプト訪問レポート 2、調査期間 調査期間はエジプト滞在中の 3/5~3/16 のうち、3/14 の現地時間で 9 時ごろから 16 時ご ろまでの約7時間。( 移動含む ) 3、調査内容 調査内容としては、まず調査対象木である Casuarina の調査対象エリアの選定。 富田農園にはいくつかのエリアに Casuarina がまとまって生えている。後に樹液流速を測 定する測器を取り付けることを考えて、AC 電源がとれるエリアで、比較的サンプル数の多 いエリアを選定した。写真はそのエリアにある Casuarina の写真。サンプル数は12本。 12本のサンプルの写真( 富田農園にて撮影。) サ ン プ ル 12 左端 真ん中 サンプル 1 右端 1 ページ目の調査対象地を拡大したもの 3/5~3/16 エジプト訪問レポート 前ページの Google Earth 地図中、黄色い丸の中にサンプルが 1 から 12 まで順に並んでい る。非常に密集しているため、ここではサンプル 1 と 12 のみ表示した。 赤いラインは電線で、 電柱は概ね地図上のマークの位置にあり、サンプル 1 までおよそ 30m 弱である。サップフローセンサーを取り付ける際、おそらくこの電柱から AC 電源を取るこ とになる。 オレンジの四角は民家で、農夫が住んでいる。 次に、そのエリア内の12本のサンプルの胸高直径( DBH )と GPS 情報と高さを測った。 DBH はメジャーで地上から約 1.3m の高さの外周を測ってから算出し、高さは三角測量 を用いて測定した。 さらに辺材面積の測定のために胸高直径の異なる2本のサンプルに対して成長錐によるコ アサンプルの採取を行った。 12本のサンプルに右から順にサンプル番号1~12として、幹の外周・胸高直径(DBH)・ 観測点からサンプルまでの距離 L・観測点から木の頂点を見上げた角度θ・高さ H・GPS 情報を下の表にまとめた。 幹の外周(cm) DBH(cm) L(cm) 角度θ 高さ H(m) GPS 1 156 24.8 715 35 10.2 N30°30.667' E30°48.401' 2 180 28.7 900 33 13.9 N30°30.667' E30°48.401' 3 136 21.7 740 34 11 N30°30.666' E30°48.405' 4 260 41.4 870 36 6.3 N30°30.668' E30°48.403' 5 212 33.8 1080 34 16 N30°30.667' E30°48.406' 6 87 13.9 880 42 9.8 N30°30.669' E30°48.408' 7 92 14.6 850 39 10.5 N30°30.666' E30°48.409' 8 135 21.5 814 32 13 N30°30.665' E30°48.409' 9 202 32.2 730 37 5.5 N30°30.664' E30°48.411' 10 160 25.5 840 35 12 N30°30.665' E30°48.412' 11 162 25.8 970 37 12.9 N30°30.666' E30°48.412' 12 171 27.2 1140 38 14.6 N30°30.666' E30°48.414' 3/5~3/16 エジプト訪問レポート DBH の頻度分布と平均値を以下に示す。 0-10 (cm) 10-15 15-20 20-25 25-30 30-35 35-40 40-45 平均値(cm) 0 個 2 0 3 4 2 0 1 25.9 2本の木のコアサンプルを採取するのに使用した成長錐と、コアサンプル。コアサンプル の採取を行ったのは、サンプル番号 2 番と 6 番である。成長錐の錐の長さを考慮して、木 の断面の半径の最大が 2 番で、最小が 6 番であった。 http://www.weather.co.jp/index71.html コアサンプルの写真 3/5~3/16 エジプト訪問レポート 4、今後の予定 まず、採取したコアサンプルから辺材面積を明らかにしなければならないため、その方法 を調べる。これについては、同様の研究をしていらっしゃる森林総研(つくば市内)の方にア ポイントを取って、詳しい測定方法を教えていただく予定。 次に、DBH の頻度分布から5cm 毎の階級で、5つの階級に該当するサンプルがあった ので、この5つの階級から一つずつ代表のサンプルを計5つ選び、その5つのサンプルに樹 液流速を測定するサップフローセンサーを設置する。これは恐らく7月のエジプト訪問時に 実施することになる予定。 以上から得られた辺材面積と樹液流速から単木蒸散量を算出し、DBH と蒸散量の間に相 関関係を見出すのがこの研究の目的である。 個人的な観測は以上の通り。以下はエジプト滞在中のスケジュールを示す。 2010/3/5 午後:航空機カイロ着。 2010/3/6 午前:富田農園訪問。富田さんと初顔合わせ。農園内を案内していただく。 午後:カイロ大学にてエジプト滞在中の日程を JICA と打ち合わせ。 2010/3/7 午前:プロジェクトについての日本側とエジプト側の意見交換会議に出席。 午後:機材の買い出し。 2010/3/8 午前:機材の買い出し。 午後:食中毒による腹痛で一日ホテル。観測の予定確認。 2010/3/9 午前:前日の腹痛のためホテル待機。 午後:カイロ大学にある機材の運搬・整理。タンタ移動。 2010/3/10 午前:カフルシェイク移動。 午後:実験圃場である RRTC(Rice Research Training Center)訪問。現地で お世話になる施設の方々と打ち合わせ。 2010/3/11 午前:圃場移動。チャンバー法による蒸発量観測のための準備。 午後:土壌サンプリング。 2010/3/12 2010/3/13 エジプトの休日のため、データ整理と次の日以降の観測の打ち合わせ。 午前:チャンバー法による蒸発量の観測。 午後:カイロ移動。次の日の富田農園での観測の準備。 2010/3/14 富田農園移動。研究対象の防風林 casuarina のサンプルの選定。胸高直径・ 高さ・GPS・コアサンプル採取。カイロ移動後、富田さんと打ち合わせ。 2010/3/15 午前:前日のデータ整理。 午後:使用した測器をカイロ大学に保管・整理。後片付け。 2010/3/16 午前:荷物整理。 午後:航空機カイロ発。 注:エジプトでは昼食を 14~15 時ぐらいに食べるので、 「午後」とは 14~15 時以降を指す。 3/5~3/16 エジプト訪問レポート 5、滞在後記 プロジェクトの一つのテーマである「ナイルデルタにおける防風林の蒸発抑制の効果検 証」というテーマの下で、防風林 Casuarina の単木蒸散量を明らかにするという目的で卒 業研究を進めるための予備観測として、また同研究室の学生の観測の手伝いのため、今回エ ジプトに渡航してまいりました。 現地でのプロジェクト会議では、 エジプト側と日本側の言い分が食い違い観測は難航しま したが、同伴した先生方、現地の RRTC の責任者の方々、富田さん、現地でご指導くださ ったカイロ大学の教授、皆さんのご協力により観測は無事実施することができ、研究を進め る上で非常に重要なデータを採って帰ってくることができました。 日本側・エジプト側ともに複数の大学と JICA の協力で動いている大きなプロジェクトに 自分が携わっているという大きな責任感を改めて実感し、完成度の高い卒業論文を書かなけ ればと身の引き締まる思いでいっぱいです。 今回の滞在中、食虫毒になって同伴の方々には非常に迷惑をかけてしまいました。次回以 降体調管理をしっかりして、より充実した滞在にしたいと考えております。 私がこのような大きなプロジェクトに携わり、 素晴らしい環境の中で卒業研究をさせてい ただいていること、すべての人に感謝したいと思います。
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