21. マウスNASHモデルFLS ob/obで のDPP4 阻害 薬 Sitagliptinによる肝線維化抑制効果 鳥取大学 医学部 消化器内科 斧山 巧、孝田 雅彦、木科 学、 岡本 敏明、杉原 誉明、徳永 志保、 村脇 義和 【目的】NASH 患者の多くに糖尿病、耐糖能異常が認められる。最近糖 尿病治療薬として DPP 4 阻害薬が広く使用されているが、本薬には肝脂 肪化抑制作用や肝線維化抑制作用が報告されている( Gupta NA et al.: Hepatology 2010 ) 。今回我々は、ヒト NASH に類似した FLS ob/ob マウ スにDPP 4 阻害薬である Sitagliptin を投与し脂肪代謝、線維化の面から その有用性を検討した。 【方法】雄 性 の FLS ob/ob マ ウ ス を コ ン ト ロ ール 群( Con)10 匹、 Sitagliptin 投与群( Sit)10 匹に分けた。Sit 群は生後 12 週齢より胃ゾンデ を用いて経口的に Sitagliptin 2 mg/kg 体重 / 日を 12 週間連日投与し 24 週 齢でと殺した。肝脂肪化を Oil red 染色、肝線維化を Sirius red 染色を用 いて画像解析にて評価した。肝におけるGLUT 4、IRS-1、TGF-β1、 collagen-I、TIMP-1 、CTGF、PPAR-α、TNF-α、MCP- 1 、SREBP1、FAS、MTP の遺伝子発現を realtime PCR にて測定した。 【結果】Con群、Sit群において体重、肝重量、血清コレステロール、中 性脂肪に有意差は認めなかった。Oil red 染色における脂肪化面積率は Con群35. 4 ± 32 . 9 %、Sit群 13 .8 ±8. 68%とSit 群で有意に減少を認め た( P=0.0007 ) 。Sirius red 染色における線維化面積率は Con 群 2 . 61 ± 3.05%、Sit群 0 . 74 ± 1 . 07 %と Sit群で有意に減少を認めた( P=0. 0016) 。 肝 に お け る 線 維 化 関 連 パ ラ メ ータ の 遺 伝 子 発 現 は Con 群 と Sit 群 で collagen-I: 24 . 9 ± 34 . 9 、8 .1 ± 12 .8( P=0. 0098) 、TGF-β1: 2. 4±0. 9、 1.7±0.9( P= 0 . 0014 )、TIMP-1 : 11. 4±13. 1、4. 1±5. 4( P=0. 0036 ) と 有 意 にSit群 で 低 下 し て い た。糖 代 謝 に 関 し て はGLUT 4、IRS 1 mRNA に両群間で有意差を認めなかった。脂質代謝では Con 群と Sit 群で FAS:6.2± 7 .6 、1 . 7 ± 0 .9( P= 0 . 0013)とSit 群において有意に減少し、 PPAR-α:2 . 1 ± 1 .3 、2 . 8 ± 1 .2( P=0. 0095)とSit 群において有意に増 加したことから脂質合成の低下、脂質分解の亢進が認められた。炎症 マ ーカ ーで は Con 群 とSit群 に お い てTNF-α: 4 . 8 ± 4 . 4 、2 . 6 ± 1 . 8 ( P= 0 . 0092 )、MCP- 1:8.1±10 .2 、4. 3±4. 9( P=0. 0456)と そ れ ぞ れ Sit群で有意に減少した。 【結語】DPP 4 阻害薬 Sitagliptinは脂質蓄積を抑制し、更に炎症及び線 維化促進のサイトカインを抑制し、脂肪肝炎での肝線維化を抑制した。
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