アフリカの富の実現:共栄のためのインクルーシブビジネスの構築

s.
s.
Empowered lives.
Resilient nations.
アフリカの富の実現
Realizing Africa’s Wealth
共栄のためのインクルーシブビジネスの構築
Building Inclusive Businesses for Shared Prosperity
国連開発計画(UNDP)
アフリカの包括的な市場の育成プログラム報告書
本報告書について
国連開発計画(UNDP)の「アフリカの包括的な市場の育成
プログラム(African Facility for Inclusive Markets: AFIM)
」
の 主 導、 調 整、 資 金 に よ っ て 作 成 さ れ ま し た。AFIMは、
UNDPアフリカ局の民間セクターによる包括的な市場の育
成を目指した地域プログラムです。その目的は、アフリカ全
域で貧困者を重視した包括的な市場の構築を支援することに
より、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた進展
を加速させることです。AFIMは地域経済共同体(RECs)、
各国政府、UNDPの各国事務所、その他のステークホルダー
の人材育成に取り組み、アフリカにおける包括的な市場の構
築とインクルーシブビジネスの育成を支援しています。この
プログラムでは、民間セクター主導、市場主導で貧困削減、
環境の持続可能性、紛争から復興、およびジェンダー平等な
どを推進・解決するために、知識の共有、金融サービスへの
アクセス、成功事例の広報活動を推進しています。
www.undp.org/africa/privatesector
本報告書に関する調査はUNDPの「包括的な市場の育成
(GIM) プ ロ グ ラ ム 」 か ら 支 援 を 受 け て 実 施 さ れ ま し た。
GIMはインクルーシブビジネス研究に関する専門知識を生
かして、概念的なコンセプトのアドバイスとフィードバック
を提供しました。2006年に開始されたGIMは、UNDPが主
導する世界中の関係者が参加する研究・アドボカシーのため
のプログラムであり、世界各国におけるインクルーシブなビ
ジネスモデル構築への理解、実現、促進を行い、それによっ
て世界の低所得層の人々に新たな機会とより良い暮らしをも
たらすことをも目的としています。本報告書のために実施し
た調査では、GIMのこれまでの研究によって培われた経験
と蓄積された成功事例を活用しています。世界各国の研究者
と協力して、GIMはインクルーシブビジネスに関する166
の詳細なケーススタディを実施し、数々の国、地域、世界全
体 に 関 す る 報 告 書 を 発 行 し て き ま し た。 そ の な か に は
「Creating Value for All: Strategies for Doing Business
with the Poor(貧困層を対象にしたビジネス戦略:すべて
の 人 々 の た め に 価 値 を 創 造 す る )」 と「The MDGs:
Everyone’s Business(ミレニアム開発目標(MDGs):全
ての人々のビジネス)」が含まれます。
【謝辞】本報告書をまとめるにあたり、助言と協力を頂いた関
係者:UNDPアフリカ局戦略諮問ユニット。African Union
Commission, African Development Bank, NEPAD Comprehensive Africa Agriculture Development
Programの代表からなる諮問委員会。Alliance for a Green
Revolution in Africa、Ashley Insight、Business Fights
Poverty、Business Unity South Africa、Gordon
Institute of Business Studies、NEPAD Business
Foundation、Pan African Agribusiness & AgroIndustry Consortium、Southern Africa Trust、
TechnoServe。
アフリカの富の実現
Realizing Africa’s Wealth
共栄のためのインクルーシブビジネスの構築
Building Inclusive Businesses for Shared Prosperity
UNDP「アフリカの包括的な市場の育成プログラム」報告書
2
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
はじめに
ババカー・シセ
国連開発計画(UNDP)
アフリカ局 副局長
読者の皆様
過去10年間、アフリカは力強い経済成長を見せてきま
私たちの調査では、官民によるいっそうの連携と協調が、
した。実際のところ、世界でもっとも成長著しい国のいく
エコシステムのさまざまな関係者をまとめるのに必要であ
つかはアフリカにあり、現在の世界の不透明な経済情勢に
ることを示しています。企業と起業家には、インクルーシ
もかかわらず、成長は拡大しています。こうしたことが新
ブビジネスを実施し、拡大させるために、情報、インセン
たな楽観主義を生み、アフリカでの貧困削減に寄与してい
ティブ、投資、および実施サポートが必要です。個々の貢
ますが、アフリカでの飛躍的な経済の進歩は、すべての人々
献は、他の関係者の貢献と統合されると、大きなものにな
に繁栄をもたらしているわけではありません。包括的な市
ります。
場の開発の重要な要素であるインクルーシブビジネスは、
低所得者層をバリューチェーンに組み入れることにより、
さらに重要なこととして、私たちはさらに行動を起こす
経済成長の恩恵を直接彼らに届ける有望なアプローチです。
必要があります!インクルーシブビジネスの推進者として
若い起業家と革新者が必要です。インクルーシブビジネス
本報告書にある事例研究が示すのは、あらゆるタイプ・
の仲介者、支援者、資金提供者としての役割を担う組織が
規模の企業や起業家の革新と起業家精神が、アフリカの最
必要です。また、インクルーシブビジネスの可能性を実現
大の富、すなわちそこに居住する、若く、そして増加して
するために、民間セクター、アフリカ連合、地域経済共同
いる人々を顕在化させることにより、ビジネスと人間開発
体、政府、開発機関・銀行、市民社会組織、研究機関、お
を促進できるということです。この報告書は、インクルー
よび財団によるいっそうの協調も必要です。
シブビジネスの状況だけでなく、私たちが「エコシステム」
と呼ぶインクルーシブビジネスを支援する構造について理
この点に関し、UNDPアフリカ局は「アフリカの包括
解してもらうことも目指しています。
的な市場の育成プログラム(AFIM)
」を通じて重要な役
割を担ってきました。AFIMは、地域レベル、国家レベル
UNDPによるこれまでの研究は、貧困削減とミレニア
で公共セクターと民間セクターをとりまとめる役割を担い、
ム開発目標(MDGs)の達成にインクルーシブビジネス
包括的な市場の開発を進めています。まとめるならば、イ
が寄与する可能性を示してきました。本報告書では、起業
ンクルーシブビジネスは貧困を繁栄に変えることができ、
家と企業の挑戦を支援する、他の関係者が果たす重要な役
それによって、包括的な成長と持続可能な開発に寄与する
割についても明らかにしています。そして、本報告書は、
ことを可能にします。本報告書が、読者の皆様がアフリカ
アフリカにおけるインクルーシブビジネスへの現在の支援
でのインクルーシブビジネスのいっそうの促進に向けて行
の構造を明らかにする最初のステップです。アフリカの富
動を起こすための情報提供ときっかけづくりになることを
を実現するために、インクルーシブビジネスを現実的に普
願っています。
及させるために必要なさまざまな関係者とその役割につい
て明確にしています。
ババカー・シセ
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
3
目 次
「インクルーシブビジネスのエコシステム」
(P.9参照)
の構図は、本報告書の骨子です。第1章では、サハラ以南
アフリカの低所得層をバリューチェーンに組み入れている
ビジネスの事例を概観します。こうしたビジネスを支える
エコシステムの4つの機能として、情報、インセンティブ、
投資、および実施サポートがあります。第2章から第5章
では、これらの4つの機能それぞれについて課題を特定し、
これまでの成果を明らかにし、さらなる支援の可能性につ
いて、詳しくとり上げます。最終章では、インクルーシブ
ビジネスのエコシステムをどのように構築すべきか、提案
を行います。
1
2
3
本報告書について
傾向と展望
情報の提供
インセンティブの創出
12 ページ
30 ページ
38 ページ
要約
事例研究
6ページ
8ページ
事例研究
事例研究
ロクシタン
Ecotact
Aspen Pharmacare
13 ページ
31 ページ
39 ページ
インタビュー
インタビュー
インタビュー
サグン・サクセナ氏
ダニエル・アンヌローズ氏
リバン・エガル氏
CEO, Mozambique
34 ページ
CleanStar
23 ページ
4
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
CEO, Manobi
CEO, First Somali Bank
(モガディシュ)
45 ページ
ム
報
情
資
ム
エ
テ
投
コ
ス
シ
シ
ス
コ
テ
エ
インクルーシブ
ビジネス
ム
テ
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施
ス
ブ
ス
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ム
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シ
ィ
シ
実
テ
コ
ン
ポ
セ
ー
ン
ト
イ
エ
4
5
6
投資の実現
実施サポート
48 ページ
56 ページ
インクルーシブビジネス
のエコシステムの構築
62 ページ
事例研究
事例研究
GADCO
モンデリーズ
事例研究
49 ページ
57 ページ
M-Pesa
63 ページ
インタビュー
インタビュー
ジェームズ・ムワンギ氏
ゲリー・ヴァン・デン・ホーテン氏
CEO, Equity Bank(ケニア)
55 ページ
SABMillerアフリカ
企業開発部長
61 ページ
インタビュー
ヘラード・クッツェー氏
Absa Consumer Banking
インクルーシブ・バンキング
戦略イニシアティブ主任
68 ページ
付録
71 ページ
注釈
72 ページ
略語
74 ページ
事例研究
76 ページ
参考情報
100 ページ
参考文献
105 ページ
謝辞
106 ページ
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
5
本報告書について
本報告書は、サハラ以南アフリカのインクルーシブビジ
本調査は厳密な実証的アプローチに基づいています。こ
ネスと、この地域のインクルーシブビジネスの支援システ
れまでのUNDPの調査・研究で得た知見をベースにして、
ム――本報告書内で「エコシステム」と呼ぶもの――をと
低所得市場で企業や組織が直面する一般的な制約と、そう
り上げたUNDPによる初の調査結果です。本報告書では、
した制約に対処するための解決策、そして、企業や組織が
4つの方法で調査を行っています。
得られる一般的な支援策について理解することから始めて
います1。こうした枠組みを背景に、サハラ以南アフリカ
・ 事 例 研 究:2008年 か ら2012年 に か け て 発 表 さ れ た、
のインクルーシブビジネスとその支援機関を特徴づけるパ
サハラ以南アフリカの16か国における43件の詳細な
ターンを明らかにするために、すべてのデータを分析しま
ケーススタディを分析しました。その要約は巻末の付録
した。特に、調査チームはインクルーシブビジネスの構築
で参照できます。
に関連した課題、既存の支援構造の限界、支援構造を改善
しうる手段について、理解するよう努めました。調査結果
・面接調査:2012年の5月から10月にかけて、地元企業
について、諮問委員会のメンバーがその内容について議論
と開発支援機関のほか、関連する専門家に対して、合計
し、審査を行いました(諮問委員のリストについては巻末
30回の面接調査を実施しました。
を参照)
。本報告書の対象はサハラ以南アフリカとしてい
ます。
・アンケート調査:サハラ以南アフリカで活動を行ってい
る600の開発支援機関に関するデータベースをとりまと
サハラ以南アフリカ全域にわたるインクルーシブビジネ
め、オンライン調査を実施した結果、100件の回答を得
スの支援機能について、幅広い情報を得るのは困難な作業
ました。主な開発支援機関の連絡先については、巻末の
でした。本報告書は包括的であるよりも、インクルーシブ
付録に掲載しています。
ビジネスへの地域的な支援を調査、理解、改善する継続的
なプロセスの第一歩となることを目指しました。そのため、
・文献調査:サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネ
サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスの支援に取
スに関する既存の文献について、分析を行いました。
り組むさまざまな分野の関係者間のコミュニケーションと
連携に資すると考えています。
6
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
図1:
サハラ以南アフリカの国々と地域経済共同体(RECs)
チュニジア
モロッコ
サハラ以南アフリカ
アルジェリア
サハラ以南
アフリカ
エリトリア
リビア
エジプト
ソマリア
モーリタニア
マリ
ニジェール
チャド
ブルキナ
ファソ
コート
ジボワール
カーボ
ヴェルデ
セネガル
ガーナ
ガンビア
トーゴ
ギニアビサウ
ギニア
ジブチ
スーダン
ナイジェリア
中央アフリカ
南スーダン
コンゴ
民主共和国
エチオピア
ケニア
ルワンダ
タンザニア
ベナン
ウガンダ
ブルンジ
セーシェル
マラウイ
アンゴラ
シエラレオネ
コモロ
ザンビア
リベリア
サントメ・
プリンシペ
ナミビア
モーリシャス
ボツワナ
カメルーン
赤道ギニア
マダガスカル
南アフリカ
モザンビーク
ガボン
ジンバブエ
コンゴ
スワジランド
レソト
東南部アフリカ共同市場(COMESA)
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)
東アフリカ共同体(EAC)
政府間開発機構(IGAD)
中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)
南部アフリカ開発共同体(SADC)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
7
要約:
アフリカの富の実現
― 共栄のためのインクルーシブ
ビジネスの構築
アフリカの富は、そこに居住する人々です。彼らは若く、またその数も増加しており、常
に社会参加や雇用の機会を求めています。これらの人々をビジネスに参加させることができ
るならば、民間セクターは、彼らの持っている潜在力を顕在化させることができます。イン
クルーシブビジネスは低所得層の人々をバリューチェーンに組み込むことで、こうした人々
の基礎となるさまざまな機会を生み出します。これまでもアフリカでは、
さまざまなイノベー
ションや起業家精神に基づいたインクルーシブビジネスが実施されてきました。しかし、ア
フリカのビジネス環境には数多くの制約があるため、多くの場合、より大きな規模で展開す
るまでには至っていません。適切な情報やインセンティブを提供し、投資やビジネスの実施
を後押しするような支援型のエコシステムが整備されれば、より大きな影響力を持ったイン
クルーシブビジネスが増えると考えられます。
本報告書は、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシ
ブビジネスの現状と、インクルーシブビジネスのアプロー
チを推し進めている企業と起業家を支えるエコシステムに
サハラ以南アフリカは成長を続けているが、
すべての人がその恩恵を受けているわけではない
ついて説明し、また、これらの企業と起業家が、より多く
サハラ以南アフリカは、現在世界の中で最も急速に成長
の、より強力なインクルーシブビジネスを構築することを
している地域のひとつです。市場環境は依然として厳しい
可能にする、これらのエコシステム強化のための有望な機
ところが多いものの、規制上の枠組みや資本へのアクセス
会を明らかにするものです。
は改善しつつあり、経済成長に弾みがついています。しか
し、この成長の恩恵を受けないまま、基本的な物資やサー
インクルーシブビジネスの原動力となっているのは企業
ビスへのアクセス、あるいは雇用や定期的収入の機会も持
ですが、それを取り巻くエコシステムを発展させようとす
たない人々が依然として数多く存在しています。
るならば、社会のすべての関係者が起業家精神を持つこと
が必要です。現在、地域の支援機関はあまり存在していな
いため、それらが構築されれば、インクルーシブビジネス
の発展に大いに資することになるでしょう。インクルーシ
ブビジネスのエコシステムを構築することで、アフリカの
富が実現され、共栄が可能となります。
インクルーシブビジネスは利益を生み、
潜在力を解き放つ
インクルーシブビジネスは、低所得層の人々を、消費者、
生産者として、あるいは、労働者、起業家としてなど、さ
まざまな立場でバリューチェーンに組み込みます。そうす
ることで、インクルーシブビジネスは低所得層に成長の恩
恵を直接に届けることができます。これは決して慈善事業
ではありません。
インクルーシブビジネスによって、これまで市場から排
除されていた人々が市場に参加することができるようにな
り、その結果、利益と長期的な成長の恩恵も受けられるよ
うになります。
8
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
図2:
ム
エ
インクルーシブビジネスのエコシステムの構図
テ
コ
報
コ
テ
資
情
ム
エ
ス
シ
ス
シ
投
インクルーシブ
ビジネス
ム
テ
エ
ム
コ
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ブ
ス
ス
施
ィ
シ
実
テ
コ
サ
ン
ポ
セ
ー
ン
ト
イ
エ
インクルーシブビジネスは、すべての人に恩恵が
及ぶグリーンな成長をもたらすための具体的な手段
れらはUNDPの「GIM(包括的な市場の育成)
」プログラ
ムに示されており、オンライン・データベースからアクセ
スが可能です5。
インクルーシブビジネスは、低所得層の人々に、所得、
基本的なモノとサービス、選択肢へのアクセス機会を提供
します。しかも、インクルーシブビジネスは、資源を保全
し、環境を保護する「グリーン」な事業活動である場合が
多く、サハラ以南アフリカにおける主要な例では、このパ
インクルーシブビジネスにはそれを支援する
エコシステムが必要
ラダイムシフトが実現されただけでなく、さまざまな利害
インクルーシブビジネスが低所得層に特有な厳しい市場
関係者にとって、利益とメリットが生まれていることも明
条件に打ち勝つためには、インクルーシブビジネスを支え
らかになっています。例えば、「M-Pesa」の電子マネー・
る環境が必要です。「インクルーシブビジネスのエコシス
サービスはケニアだけで1500万人が利用しており、同様
テム」とは、インクルーシブビジネスが成功し、より大き
の電子マネー・サービスにより地方の住民を含めたアフリ
な影響力を持つことを可能にする、それぞれの関係者が相
カ大陸の何百万もの人々が金融サービスへアクセスできる
互に連結されたネットワークを意味します6。インクルー
ようになっています 。「Equity Bank」は、ケニア、ウガ
シブビジネスのエコシステムの構図(図2)は、
インクルー
ンダ、タンザニア、ルワンダ、南スーダンの800万人の顧
シブビジネスを支えるために必要とされる4つの基本的機
客に銀行業務および与信サービスを提供しています3。南
能を表しています。
2
アフリカの「SAB Miller」はザンビア、ジンバブエ、南スー
ダン、ウガンダ、モザンビーク、タンザニアの5万以上の
小規模農家より原材料を調達しています4。
・情報は、事業者が低所得市場で事業展開するために必要
な認識、知識、技術、ノウハウを提供します。
また、地域の起業家たちもすばらしい変化を作り出して
・インセンティブは、ポジティブな外部要因を提供し、事
います。Nancy Abeiderrahmaneは、ほぼゼロの状態か
業コストを削減することで、事業者に低所得層向けビジ
らモーリタニアに酪農業を興しました。現在、
「Tiviski
ネスを行う動機付けとなります。
Dairy」は1000以上の遊牧民からラクダのミルクを調達
しています。ケニアでは、David Kuriaが衛生サービスを
提 供 す る 社 会 事 業 と し て「Ecotact」 を 創 設 し ま し た。
・投資は、低所得市場への参入を可能にする金融支援を事
業者に提供します。
EcotactのIkotoilet(Ecotactのトイレ設備)は、現在5
万人近いスラム居住者に衛生的なトイレを提供しています。
・実施サポートは、インクルーシブビジネスが多様でダイ
Johan WasserfalとJan Kitshoffによって設立された南ア
ナミックな環境の中で機能するよう、物流、取引、マー
フリカの「Eduloan」は、同社の顧客ベースの「潜在能
ケティング、コミュニケーション、マイクロビジネスの
力を引き出す」ことを目標とし、これまでに高等教育を受
支援サービスを提供します。
ける学生60万人以上に教育ローンを提供しています。こ
うしたインクルーシブビジネスの例は他にも多数あり、こ
企業、政府、開発関係機関、市民社会組織(CSO)、研
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
9
究機関、その他の仲介機関はすべて、この構図の中の4つ
など、潜在的に有用性の高い地域の支援機関の数は、すべ
の機能それぞれの強化に貢献できます。この報告書では、
てのレベルで大部分において不十分な状況です。地域の支
インクルーシブビジネスの環境をより良いものとするため
援機関が設立されれば、インクルーシブビジネスの設立は
に、それぞれの主体がイノベーションと起業家精神を発揮
はるかにスムーズなものになると考えられます。また、す
するよう求めています。また、インクルーシブビジネスに
でに設立された企業が低所得市場へと参入する際のコスト
対する投資が貧困の削減と持続可能な発展という点で十分
削減にも大いに役立つと考えられます。
な成果を上げられることを明らかにしています。
中小企業がアフリカのインクルーシブビジネスを
推進し、経済を力強くリードする
エコシステムの構築が高い将来性を示す
インクルーシブビジネスを育成するエコシステムを構築
することは簡単なことではありません。さまざまな機能が
現在、アフリカにはインクルーシブビジネスの事例が数多
お互いに補完し合わなければならず、さまざまな参加者が
く存在しています。成功している事例はどの分野にも見られ
その実現のために協力しなければなりません。企業はイン
ますが、大部分は、農業ビジネス、エネルギー、金融サービス、
クルーシブビジネス推進の原動力ではありますが、企業努
情報通信技術(ICT)分野に集中しています。また、注目を
力を可能にし、その企業努力を支援するためには、多国籍
集めるのは大企業による低所得コミュニティでの活動ですが、
組織から地域の市民社会組織(CSO)に至るまで、すべ
実際には、
成功例の大部分を占めているのは中小企業(micro,
てのレベルで、イノベーションと起業家精神が発揮される
small and medium-sized enterprises: MSME)です。
ことが必要となります。個々の関係者の行動が効果的であ
るためには、関係者の連携や協力が重要です。低所得市場
持続的な経済成長を達成し、しっかりとしたガバナンス・
で真の意味での自由競争が行われるには、インクルーシブ
システムの見られる国では、相対的に多くのインクルーシ
ビジネスのエコシステムが「協力的な起業家精神」によっ
ブビジネスが存在しています。特に南アフリカとケニアは
て構築されることがベースとなります。
インクルーシブビジネス分野のリーダーとして台頭してき
ており、事業者は充実したエコシステムから恩恵を受けて
インクルーシブビジネスのエコシステム構築には、エコ
います。
システム構築のための取り組みが特に大きな力を発揮して
きました。これらの取り組みは、複数のレベルにおける多
様なエコシステム参加者を連携させ、個々の参加者の行動
より多くの地域の支援機関が必要
が他の参加者の行動に基づいて行われ、互いの行動を強化
一般的に、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブ
アティブ」
(The Competitive African Cotton Initiative:
ビジネスへの支援で圧倒的に大きな役割を果たしているの
COMPACI)は、農業ビジネス、繊維メーカー、開発関係
は国際機関ですが、国際レベルでこうしたアプローチが開
機関、小規模の綿農家をまとめ上げ、持続可能で包括的な
発され、強力に推進されていることを踏まえれば、決して
綿の供給チェーンを構築しました。
ケニアの
「金融セクター
驚くべきことではありません。特に官民の開発関係機関は、
深化イニシアティブ」
(Financial Sector Deepening
資金提供、研究の実施、認識の向上、現場レベルでの支援
Initiative)は、低所得層の金融サービスへのアクセスを
の提供を通じて、インクルーシブビジネスを推し進めてき
改善するために、さまざまな政府機関、銀行、小規模金融
ました。しかし、ほとんどの国では、参加者が推し進める
機関、教育および研究機関とともに動いています。
「アフ
するようになっています。
「アフリカ綿競争力強化イニシ
地域のエコシステムは出現し始めたばかりです。各国政府
も、誰もが恩恵に浴する成長をもたらすインクルーシブビ
Photo: Ashden Awards
ジネスの持つ潜在力についての認識を一段と強めており、
その結果生まれる社会的かつ環境的なメリットに対して報
いる方法を模索しています。ビジネススクールやシンクタ
ンクは、こうした新しい概念の社会的普及に努めており、
地域機関は新しいソリューションについての研究や開発を
進めています。企業サイドも、直面するであろう課題を認
識し、小規模事業者や生産者の能力開発を支援する目的等
で、起業家精神を促進したり、新しい組織を分社化したり
するなど、支援環境を自分たちで整える努力を続けていま
す。
とはいえ、市場調査会社、信用調査会社、バリューチェー
ンの促進組織、新規事業支援組織、ベンチャーキャピタル
10
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
夜、照明を使って読書をする少女。
「アフリカに光を」
(Lighting Africa)は、
何百万もの
アフリカの人々に最新の照明機器へのアクセスを提供しました。
リカに光を」(Lighting Africa)というプログラムでは、
ブビジネスが成功するための情報を収集し、詳しく分析す
照明機器メーカーが自社の製品の質のチェックを受け、そ
ることが期待されています。またインクルーシブビジネス・
の証明を受けるプラットフォームとなっており、複数の国
モデルに関する情報を集めて共有し、インクルーシブビジネ
において、製品の販売状況を改善して、低所得の消費者の
ス・アプローチを提唱することが可能です。また、現在の、
照明へのアクセスの強化に取り組んでいます。これらの例
そして将来の起業家およびリーダーを教育し、訓練すること
は、エコシステム構築のための取り組みがインクルーシブ
もできます。さらに、インクルーシブビジネスがどれほど包
ビジネスを成長させる、非常に有望なアプローチであるこ
括的で、どのような結果が生じているかをより正確に測定す
とを明らかにしています。
る手法を開発することで、政策決定者や影響力のある投資
家に対して必要なデータを提供することも期待されています。
すべての参加者はインクルーシブビジネスのエコ
システムの改善に貢献できる
仲介機関は、インクルーシブビジネスの成功事例を特定
企業および起業家は、新しいビジネスアプローチへの投
整を行うほか、機能的なバリューチェーンを組織して標準
資、定量的・定性的な市場調査の実施、革新的なサービス
化を進めて、市場調査の共同プラットフォームを創設し、
および製品を手頃な価格で市場に提供するテストの実施、
生産者と製品のマッチングを支援することも可能です。ま
技術的スキルの構築、低所得コミュニティをバリュー
た、仲介機関は、関係者が必要とする支援を仲介し、イン
チェーンに組み込む際の戦略の実現、他の企業をサポート
クルーシブビジネスが成長できる場を創設できます。
し、社会に明示することで、さらなるインクルーシブビジ
ネスの参入を促すことができます。さまざまな関係者の調
する物流およびその他のサービスの提供などを通して、率
先して包括的戦略を実施することができます。企業と起業
インクルーシブビジネスを推進している企業および起業
家は市場調査を行い、革新的なビジネスモデルを開発する
家自身も、支援的なエコシステムを開発し、推進することが
ことで、ベンチャー・ビジネスの初期段階で協力すること
必要です。企業と起業家は、各種支援に影響を受けるので
ができます。また、低所得層に属する人々が経営する非公
はなく、支援を管理し、効果的なソリューションを協力して
式の企業からモノまたはサービスを購入し、原材料やその
作り上げるため、政府やその他の支援機関との対話を進め
他の消耗品の現地調達を増加させることで、インクルーシ
ることで、自分たちが直面するチャレンジを透明化させ、エ
ブビジネスを導入することができます。
コシステムの構築を達成することができます。実際、企業と
起業家はエコシステム全体の起業家となる必要があります。
政府は、インクルーシブビジネスのための環境を整備し、
インセンティブを提供することで、大きな支援的役割を果
たすことができます。政府は規制を撤廃し、経済活動を行
いやすいルールを制定することができ、インフラ、情報、
行動要請
教育に投資することができます。また、企業の社会的およ
インクルーシブビジネスのアプローチを推し進めるには、
び環境的な貢献を評価したり、低所得コミュニティをバ
すべての主体が革新性と起業家精神を持つ必要があります。
リューチェーンに組み込んでいる企業から優先的に調達を
また、協力と連携を可能にする仕組みも必要です。そのた
行うなど、インクルーシブビジネスを促進する直接的なイ
め、この報告書では、個々の関係者に対する提案に加えて、
ンセンティブを設けることができます。
インクルーシブビジネスのエコシステム構築を目指した、
より広い支援的な仕組みを構築するよう求めます。
開発関係機関は、公的、民間を問わず、現在不足してい
る、地域の支援機関の創設を促進し、成功事例を記録・分
・インクルーシブビジネスのエコシステム構築に特化した、
析して、その結果を共有するとともに、官民の対話を進め
新しいエコシステム構築のための取り組みが、国家レベ
ることができます。さらに、政府の支援政策の策定を支援
ルおよび地域レベルで開発される必要があります。
するなど、インクルーシブビジネスのアプローチを加速さ
せることが可能です。
・エコシステム構築を支援する地域レベルおよび国家レベ
ルの金融制度の策定が必要です。
市民社会組織(CSO)は、地域の起業家によるインクルー
シブビジネスの立ち上げを支援することが可能です。市民
・インクルーシブビジネスと市場に関する中核的研究拠点
社会組織は企業が低所得層にアクセスするための仲介役と
を地域および国家レベルで創設し、インクルーシブビジ
なるとともに、低所得層の利益を守るための監視役となる
ネスのアプローチについての知識を集約・共有する必要
ことでインクルーシブビジネスの発展を支援できますが、
があります。
何よりも重要な役割は、インクルーシブビジネスに対する
認識を向上させ、低所得層の能力を強化することです。
私たちが協力すれば、アフリカの富、つまりアフリカの
人々とその潜在能力を顕在化させ、その結果もたらされる
研究機関には、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシ
繁栄を共有することが可能です。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
11
1
傾向と展望
インクルーシブビジネスは、企業や低所得層の人々に機会を提供します。ロクシタン
は、ブルキナファソの1万5000人の女性からシアバターを調達しています。これは、
企業の商業的な成功を促しつつ、低所得者のニーズに積極的に応えている数多くの企業
の一例です。またこの事例は、インクルーシブビジネスを育成する中で、各主体がエコ
システムのいかに多様なレベルで関与できるかを示しています。
本章では、インクルーシブビジネスのエコシステムの概念、および本報告書の基本的
な枠組みであるエコシステムの構図について説明します。そして、アフリカにおけるイ
ンクルーシブビジネスのエコシステムの傾向を、国、分野、主体別に紹介します。
12
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo: @YamPhoto
インクルーシブビジネスは
国や分野によって極めて多
様ですが、いくつかの傾向
が現れ始めています
事例研究:ロクシタン
ロクシタンは、大きな成功を収めている多国籍の化粧
品会社であり、天然の原料を使用した高級な商品を提供
していることで世界的に知られています。何十年もの間、
この企業の商品を代表する原料のひとつがシアバターで
す。ロクシタンの創設者オリビエ・ボーサン(Olivier
Baussan)氏は、1982年にブルキナファソを旅した後、
現地コミュニティを支援しつつ自社製品の原料としてシ
アバターを調達することを約束しました。しかし、女性
たちから直接シアバターを調達することは困難であるこ
とがわかりました。伝統的な知識を守るため、女性たち
は職人的な現地の方法でシアバターを生産していました
が、この方法は輸送や品質管理の面で課題があり、フラ
ンスに到着する頃には、品質が欧州の基準を満たさない
ような状態になっていることがしばしばあったのです。
長年にわたって、ロクシタンは合計1万5000人の会員
を擁する5つの現地の協同組合と強固な関係を築いてきま
した。同社はこれらの協同組合の設立と強化に協力すると
ともに、現地女性たちの能力開発を支援しました。この2
つの取り組みは、カナダの市民社会組織である「国際問題
協 力 セ ン タ ー」
(Centre d’Etude et de Cooperation
Internationale: CECI)との協力により進められました。
さらにロクシタンは、現地で包装・物流システムを導入し、
出荷工程で品質が劣化することのないようにしました。ま
た、同社は2009年より、仕入れ先にオーガニック&フェア
トレード認証を取得してもらう取り組みを開始しました。
さらに、協同組合は自らのエコシステムを構築する方法を
学びました。例えば、ある協同組合は、オランダの市民社
会組織ICCOによる研修、ドイツの開発機関GIZによる改
良型の(より環境に優しい方法でシアバターの生産を可能
Photo: @YamPhoto
ブルキナファソで協同組合の
育成を行うロクシタン
改良型の過熱機器により、シアの実の加工に必要な薪が少なくてす
むか、全く必要なくなります。ロクシタンは、生産者がこうした設
備を入手できるようにするため、環境基金の設立に協力しました
にする)加熱機器の提供、オランダの開発機関SNVによる
戦略的助言、およびスイス開発協力庁によるシア資源保護
に関する支援を受けています。
こうした取り組みにより、ロクシタンは生産段階を改
善し、現在では非常に高品質な約100種類のシアバター
化粧品を提供しています。その代表例が、同社のベスト
セラー商品であるシアバターハンドクリームで、世界各
地の2000以上の店舗で3秒に1個のペースで売れてい
ます。ロクシタンがブルキナファソで確立したビジネス
モデルにより、現地でシアバターを生産する女性たちは、
シアバターの取引から直接利益を得ています。
2012年、ロクシタンはブルキナファソから500トン以上
のシアバターを購入しました。これにより、協同組合とそ
の会員におよそ120万ドルの収入がもたらされ、
2%のフェ
アトレード奨励金が地域のプロジェクトに投資されました。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
13
1
傾 向 と 展 望
サハラ以南アフリカは急速に
成長しているが、
利益の配分は不平等
サハラ以南アフリカの多くの地域における経済的展望は、
ドルと、世界経済危機の間も比較的堅調に推移しました10。
急速に好転しつつあります。2013年、アフリカ大陸全体の
実際、2005年以降、アフリカに向けられる投資額は援助
GDP成長率は5.4%に達する見込みであり、同大陸は世界で
額を上回っています。他地域で暮らすアフリカ大陸出身者
最も急速に成長している地域のひとつとなっています7。図
は、重要な資本源となりつつあり、彼らからの送金は増え
3に示した通り、サハラ以南アフリカの南スーダンを除くす
続け、2012年には500億ドル近くに達しました。
べての国は、2007年から2012年にかけてプラスの経済成
長を遂げています8。過去10年間に世界で最も急速に成長し
こうした傾向も手伝って、世帯収入は増加しています。ア
た10か国のうち6か国がアフリカ諸国であり、この傾向は
フリカ大 陸における消 費 者 支出は、2020年までに1兆
今後も中・短期的に続くことが予想されます9。
4000億ドルに達する見込みであり、これは2008年から
5200億ドルの増加となります11。低所得市場が、この支出
また、図4からわかる通り、資本もアフリカ大陸に流入
の大部分を占めています。2007年、アフリカで1年当たり
しています。過去10年間にわたって、アフリカ大陸に向
の収入が3000ドルに満たない人々の総支出は、
「購買力平
けた海外直接投資は着実に増加しており、2008年には
価」
(purchasing power parity: PPP)ベースで推定4290
734億ドルに達しました。この数字は2011年には544億
億ドルでした12。
図3:
アフリカ各国のGDP成長率(2007~2012年)
実質GDP成長率
2007~2012年の
サハラ以南
アフリカ全域
チュニジア
平均年率
5.20
–27.00to0.00
モロッコ
0.00to0.75
0.75to1.50
アルジェリア
リビア
エリトリア 2.32
エジプト
ジプチ
ソマリア
カーボベルデ 5.52
モーリアニア
ニジェール
チャド
ナイジェリア
7.05
南
スーダン
中央アフリカ
2.97
コート
ジボワール
ギニア 2.83
トーゴ 3.68
シエラレオ 8.20
ベナン 3.63
リベリア 7.98
5.25to6.00
エチオピア
9.25
–26.77
6.00to6.75
6.75to7.50
4.42
コンゴ
民主共和国
2.24
ギニアビサウ 2.57
4.50to5.25
ケニア
ガーナ 8.24
ブルキナ ファソ 5.32
3.75to4.50
スーダン
3.78
ガンビア 4.04
サントメ・ プリンシペ 4.83
7.50to8.25
ウガンダ 6.44
6.07
タンザニア
ルワンダ 7.39
8.25to9.00
ブルンジ 4.25
9.00to9.75
6.77
マラウイ 6.99
アンゴラ
8.83
ザンビア
セイシェル 4.04
6.49
ナミビア
3.96
コモロ 1.67
ボツワナ
3.16
カメルーン 3.29
赤道ギニア 8.28
ガボン 4.30
コンゴ共和国 4.76
南
アフリカ
2.71
モーリシャス 4.35
マダガスカル 2.23
モザンビーク 7.06
ジンバブエ 1.35
出典:国際通貨基金(IMF)
14
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
2.25to3.00
3.00to3.75
マリ 2.97
6.09
セネガル 3.52
1.50to2.25
スワジランド 1.06
レソト 4.64
図4:
アフリカへの資本流入(2000~2012年)
海外直接投資 単位:100億米ドル
政府開発援助 送金 外部からの資本流入総額(右軸)
単位:
GDPに占める割合(%)
80
12
70
11
60
10
50
40
9
30
8
20
7
10
6
0
1
00
0
00
2
2
3
00
2
00
2
2
5
00
4
00
2
2
2
6
00
2
7
00
2
8
00
2
9
00
1
01
0
01
2
2
2
01
2
出典:「アフリカ経済見通し2012」
(アフリカ開発銀行(AfDB)
、経済協力開発機構(OECD)
、国連開発計画(UNDP)
、国連アフリカ経済委員会(UNECA))
チャンスを渇望する若年層の増加
サハラ以南アフリカの総人口は約8億人です。アフリカ
低所得者とは?
大陸に暮らす人々の平均年齢は、世界の全地域の中で最も
サハラ以南アフリカには8億を超える人々が暮らしています。
低くなっています。2015年までに、アフリカの人口の
2008年の世界銀行のデータによると、極度の貧困を表す国際基
13
75%が30歳未満となります 。さらに、2045年までには、
準である「1日当たり1.25ドル未満」(PPPベース)で暮らす人
若者の数は2倍になると予想されています14。増加する若
は全体の47.5%でした。同様に、もうひとつの国際的な貧困基
年層は、消費者、生産者、被雇用者、起業家として大きな
準である「1日当たり2ドル未満」で暮らす人は68.8%でした。
潜在力を秘めています。
また、ほぼすべてのアフリカ人(97%)が、低所得市場の定義
として「世界資源研究所」
(World Resources Institute: WRI)
それにもかかわらず、若年層の大半は、極度の貧困、飢餓、
と「国際金融公社」
(International Finance Corporation: IFC)
病気、失業など、生活に関わる基本的な問題に苦しんでいます。
により使用されている基準である「1日当たりの収入8ドル未満」
・サハラ以南アフリカの人口の半数近くが、1日当たり
の層に分類されます26。確かに、「低い」とみなされる収入の正
1.25ドル未満(PPPベース)の収入で暮らしています15。
・サハラ以南アフリカで暮らす約2億3900万人が栄養不
確な水準はつねに恣意的であり、
「1日当たり2ドル」が意味す
るものは、小規模農家と都市部の労働者とでは異なります。
良です 。
16
・2009年に5歳未満児死亡率が出生児1000人当たり100人
本報告書では「低所得者」について、特定の所得水準によって
以上だった世界中の31か国中、30か国がサハラ以南アフリ
定義づけるのではなく、正規市場やより大きなバリューチェーン
カの国でした 。世界全体の平均寿命が69.2歳であるのに
に関与するうえで大きな課題に直面している人々という理解に基
対し、サハラ以南アフリカ全体の平均寿命は52.5歳です18。
づいて定義づけています。大部分の低所得者は、主に非正規市場
17
・2010年、アフリカの総労働人口3億8200万人中、正
で取引を行います。彼らには、正規市場にアクセスするための法
規雇用されている人はわずか1億700万人でした19。労
的文書、金融サービス、教育、技能、情報がありません。このた
働年齢人口の3分の2が、自給農業、非正規自営業、ま
め企業は、正規の方法で彼らと関与することが困難です。インク
たは家族の仕事の手伝いなど、不安定な非正規雇用に就
ルーシブビジネスの進展をめぐる課題の多くは、こうした正規・
いています20。若者はアフリカの労働者の3分の1以上
非正規のギャップの克服に関わるものです。
を占めていますが、2009年のアフリカ大陸全体の若年
低所得層は、都市部と農村部のどちらにも存在します。サハラ以南
失業率は約12%でした21。
・アフリカの成人人口の約38%、つまり1億5300万人の
アフリカの人口の約70%が農村部に暮らしており、農村部では貧困率
成人が、日常生活に必要な基本的な読み書き・計算技能
がより高くなっています27。都市部にも、市場環境が欠如しているた
を習得していません。アフリカの成人非識字人口の
めに企業の手が届きづらい貧困地区があります。市場を求める小規模
60%以上を女性が占めています 。アフリカの若者の
農家、所得機会を求める零細起業家、子どものための栄養と医療を
識字率は72%で23、世界最低となっています。アフリ
求める母親、仕事を求める若い女性といった人々は皆、バリューチェー
カに暮らす3100万人以上の子ども(そのほとんどが女
ンに組み込まれることで恩恵を受けることができます。したがって、
22
本報告書の主要テーマは、十分なサービスを受けていない人々、失
子)が学校に通っていません 。
24
業している人々、または能力を十分に生かせない仕事に就いている
人間開発のその他の主要分野にも、大きな課題が立ちは
人々など、これまで従来の市場から排除されていた人々、いわゆる低
だかっています。安全な飲料水を利用できる人は人口のわ
所得層の人々が、正式なビジネス・エコシステムに組み込まれること
ずか66%、衛生的なトイレを利用できる人はわずか40%、
により、さまざまな機会を手にすることができるという点にあります。
電力を利用できる人はわずか30%となっています 。
25
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
15
1
傾 向 と 展 望
インクルーシブビジネスは
利益と社会的価値を生む
インクルーシブビジネスとは?
包括的な成長とは?
インクルーシブビジネスは、アフリカの増加する人口、
特に若年層に機会をもたらし、この地域の隠れた富を解放
します。インクルーシブビジネスは、開発課題を解決する
ことによって価値を生み出すことができます。革新的なビ
ジネスアプローチは、低所得者を消費者、生産者、被雇用
者、起業家といったさまざまな立場でバリューチェーンに
組み込みます。さらに、インクルーシブビジネスは、これ
まで市場から排除されていた人々を市場に参加させること
により、利益と長期的成長のための強い基盤を構築します。
一方、低所得者は、収入増の機会を与えられるとともに、
基本的な財、サービス、その他の選択肢を手に入れること
ができます。そして、インクルーシブビジネスはしばしば、
資源を節約し、環境を保護するグリーンなビジネス慣行を
ともないます。したがってインクルーシブビジネスは、包
括的で環境に優しい成長の実現に向けた具体的な解決策と
インクルーシブビジネスは低所得者を、需要面では顧
客として、また供給面では被雇用者、生産者、起業家
として、バリューチェーン内のさまざまな過程に組み
込みます。インクルーシブビジネスは、相互の利益の
ために、ビジネスと貧しい人々を結びつけます。
包括的な成長とは、公正さ、平等な正義、政治的多様
性を促す環境で、より多くの人々、国、地域に持続可
能で社会経済的な機会を幅広く与えつつ、社会的弱者
を保護する経済成長を意味します。これはまさにイン
クルーシブビジネスが目指すものです。
出典:
「Creating Value for All」国連開発計画(2008年)
Briefing Notes for AfDB’s Long-Term Strategy、および Briefing Note 6: Inclusive Growth
Agenda、アフリカ開発銀行(2012年)
なり得るのです。
アフリカには、このようなパラダイムシフトの実現が可
能であり、さまざまなステークホルダーにとって有益であ
るということを示す多くのよい事例があります。例えば、
携帯電話を介した電子マネーサービス「M-Pesa」は、ケ
ニアだけで1500万人に利用されており、同様の電子マ
インクルーシブビジネスは潜在力を解放する
ネー・サービスにより、農村部を含むアフリカ大陸全体に
低所得者は、顧客、生産者、被雇用者、起業家として、
暮らす数百万人が金融サービスを利用できるようになりま
ビジネスのバリューチェーンの中でさまざまな役割を果た
した 。「Equity Bank」は、ケニア、ウガンダ、タンザ
すことができます。
彼らはしばしば、
複数の役割でバリュー
ニア、ルワンダ、南スーダンの顧客800万人に預貯金・信
チェーンに組み込まれます。正式なバリューチェーンへの
28
用サービスを提供しています 。南アフリカのビール会社
アクセスを手に入れることで、人々は自らの潜在力を十分
「SAB Miller」は、ザンビア、ジンバブエ、南スーダン、
に生かしながら、自らの選択を表明し、自らの才能を最大
ウガンダ、モザンビーク、タンザニアの約5万の小規模農
限に発揮して、より良い生活のために財やサービスを手に
家から原料を調達しています 。
入れられるようになります。
現地の起業家たちも、大きな変化をもたらしています。
顧客として、低所得者は自らの生活と生産性を向上させ
Nancy Abeiderrahmane氏は「Tiviski Dairy」を設立し、
る財やサービスを手に入れることで恩恵を受け、企業は市
ほぼゼロの状態からモーリタニアの酪農業界を興しました。
場を拡大することができます。例えば「ToughStuff」は、
現在この会社は、1000以上の遊牧民からラクダのミルク
電力を利用できないコミュニティで太陽電池式のランプを
を調達しています。ケニアでは、David Kuria氏が衛生サー
販売しています。また、マイクロフランチャイズ型の流通
ビスを提供する社会事業「Ecotact」を設立し、同社のト
モデルで、
現地の起業家を活用しています。さらに、クリー
イレ設備「Ikotoilet」は現在、スラムに暮らす5万近く
ンな再生可能エネルギーを使用したToughStuffの製品に
の人々に使用されています。顧客の「潜在力の解放」を目
は、灯油や電池などの他の選択肢に比べて、健康面・環境
的としてJohan Wasserfal氏とJan Kitshoff氏が設立した
面で大きなメリットがあります。
29
30
南アフリカの「Eduloan」は、高等教育を受ける60万人以
上の高卒以上の学生に教育ローンを提供してきました。さ
生産者として、小規模農家や小規模製造業者は、安定し
らにソマリアでも、起業家精神が再び成長しつつあります。
た買い手を見つけ、企業の新たな調達先となることができ
起業家のLiban Egal氏は、内戦後初の銀行だけでなく、印
ます。また、インクルーシブビジネスは生産者に技能を移
刷会社、市場調査会社、および携帯電話を介した電子マネー
転し、雇用を生み出し、生産性を向上させます。例えば、
サービスも設立しました(第3章のインタビュー参照)
。
世界的なビール会社の「ハイネケン」と「SAB Miller」は、
この他にも数多くのインクルーシブビジネスの事例が、
どちらも過去数十年間にわたり、生産の現地化を着実に進
UNDPの「包括的な市場の育成(GIM)プログラム」によっ
めています。東西アフリカの何千もの小規模農家が、ビー
て確認されています31。
ルの生産に必要なキャッサバ、大麦、ソルガム、ホップを
これらの企業に供給しています。
16
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photos:Adam Rogers(UNCDF)
このマダガスカルの店主やタンザニアの職人のように、起業家として、またはこのタンザニアの保健・医療施設に
集まった人々のように、患者や顧客として、低所得者はさまざまな立場でビジネスに参加しています
被雇用者や起業家として、低所得者は労働力の供給源と
インクルーシブビジネスは、しばしば低所得者を複数の
なるとともに、地元に関する情報やコネクションを企業に
立場でバリューチェーンに組み込みます。例えば、調理用
提供します。特に雇用と収入機会を求めているアフリカの
コンロ製造企業の「Toyola」は、バリューチェーン全体
多くの若い起業家たちは、収入増と新たな技能取得の恩恵
で低所得者に門戸を開いています。このガーナの企業は、
を受けることができます。その一例として、南アフリカの
自国内で現地の職人200人と契約を結んで調理用コンロを
大手携帯電話会社「Vodacom」は、国全域に9万を超え
製造し、販売業者は地元市場でコンロを販売して10%の
る携帯電話ショップを展開しました。起業家たちが、低所
手数料を得ます。また、最も貧しい人々もこの製品を購入
得コミュニティにおいてこの通信サービス直販店を経営し
できるよう、同社は時にバーター(物々交換)融資を行っ
ています32。
ています。
図5:
低所得者の役割別アフリカのGIM(包括的な市場の育成)事例の数(計43件)
消費者
24
生産者
16
被雇用者
起業家
13
12
サハラ以南アフリカのGIM事例研究43件の分析(詳細については巻末を参照)
注:低所得者は、ビジネスのバリューチェーンに複数の役割で組み込まれる場合がある。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
17
1
傾 向 と 展 望
インクルーシブビジネスはさまざまな主体によっ
て推進される
インクルーシブビジネスを推進する主体は、中小企業か
ら大企業、地元企業から多国籍企業、非営利組織から営利
組織まで、多岐にわたります。商業目的と社会的な目的の
バランスはビジネス主体によって異なり、小さな非営利組
織が大きな多国籍企業には真似ができないような方法で新
たなモデルを試行するといったことも多々あります。しか
し全体的に見て、すべてのインクルーシブビジネスを定義
づける特徴は、商業目的と開発上の目的が補完的であると
いうことです。
インクルーシブビジネスはすべてのビジネスの
基本である「価値の創造」に根ざしている
ビジネスは、人々の暮らしをよりよくすることにより、
価値を生み出します。サハラ以南アフリカが持つ最大の未
開発資源は人です。人々がその潜在力を発揮できるよう支
援することで、ビジネスはアフリカが持つ富を活性化し、
共栄を実現することができます。表1は、インクルーシブ
ビジネスが企業、低所得者、およびエコシステム内のその
他の主体に提供できる付加価値をまとめたものです。
表1:
インクルーシブビジネスが各主体にもたらす恩恵
企業にとっての付加価値
低所得者にとっての付加価値
その他のエコシステム関係者に
とっての付加価値
新たな市場の確立:低所得市場における ニーズの充足:人々は食料と栄養、エネ 政府は、社会的な目的を達成するために
高成長、および掘り起こされるニーズに ルギー、清潔な水と衛生設備、住宅、金 民間投資を活用し、特に若者の雇用創出、
よってもたらされる機会が、長期的な利 融サービスなど、必要とする財・サービ 所得増加、基本的な財・サービスへのア
益と増収に結びつく。
スを手に入れることができる。
クセス改善を実現することができる。
サプライチェーンの強化:小規模農家や 収入の増加:仕事を見つけて収入を増や 開発関係機関は、資金援助が終了した後
製造業者の開拓により、企業は新たなサ し、生活を改善することができる。低所 も継続できる持続可能なソリューション
プライチェーンへのアクセスを手に入れ 得者向けの低価格の設定は、低所得者の につなげることができる。
ることができる。
購買力増加につながる。
ブランド価値の向上:具体的な社会貢献 生産性の強化:電気、金融サービス、保 市民社会組織は、対象とする低所得層の
により、企業の評判やブランド価値が高 健・医療サービス、電気通信、情報、技 人々にさまざまな機会をもたらすことが
まり、地元での事業許可が得やすくなる。術へのアクセス、能力開発の結果、生産 できる。
性が高まる。
従業員の確保と動機づけ:社会的に貢献 選択肢の拡大:正規市場に組み込まれる 研究機関は、企業と連携することにより、
することにより、従業員にやる気を持た ことにより、新たな選択肢と、自ら決断 資金提供を受けることが可能になる。
せ、才能ある人材を集めることができる。を下す能力を手に入れることができる。
イノベーションの推進:低所得市場にお 自信の確立:選択肢が増えることで、 仲介機関は、仲介する関係者に具体的な
ける挑戦は、既存市場でも適用可能なイ 人々は自信を獲得し、自らの人生をコン 成果を提供することにより、自らの価値
ノベーションを推進する。
トロールしているという気持ちを手に入 を高めることができる。
れることができる。
出典:
「Creating Value for All」国連開発計画(2008年)
18
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
インクルーシブビジネスは、どのようにMDGs達成に貢献できるか
「ミレニアム開発目標」(Millennium Development
Goals: MDGs)は、多岐にわたる挑戦をともなう「人
5 ミレニアム開発目標5:
妊産婦の健康状態の改善
間開発」という概念を具体的な実行を促す目標へと変換
ケ ニ ア で は、
「Child and Family Wellness
し、人々の生活の改善を測る包括的な枠組みを国連機関
(CFW)
」の66か所の店舗、小規模薬局、および診療所
にもたらしています。2015年までの目標達成を目指し
が、低所得層に安全な医薬品と保健・医療を提供してい
ており、目標の多くにおいて進展が見られるものの、多
ます。CFWはフランチャイズ方式で運営されており、
くのアフリカ諸国では達成までにまだかなりの道のりが
財団が看護師を採用して定期的に研修を行うとともに、
残されています。民間セクターはMDGsの達成に向け
製品とサービスの品質管理を行っています。2012年、
て重要な役割を果たすことができます。実際、以下に示
CFWは約40万人の患者や顧客に利用され、妊婦や母親
す「包括的な市場の育成」事例からもわかるとおり、イ
たちは、保健・医療の恩恵を受け、蚊帳などを購入でき
ンクルーシブビジネスは8つの目標それぞれに貢献する
るようになりました。
ことが可能です。
1 ミレニアム開発目標1:
極度の貧困と飢餓の撲滅
6 ミレニアム開発目標6:
HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん
延防止
綿のフェアトレードは、西・中央アフリカで
タンザニアの繊維会社「A to Z Texitiles」は、長持ち
194の生産者組織に所属する農民2万3000人の収入を
する殺虫剤処理済の蚊帳を生産するため、日本の化学会
増加させ、2005年から2006年までに520万ドル以上
社「住友化学」との合弁事業を設立しました。この蚊帳は
の収入を生み出しました。これは、従来よりも約260万
アフリカやその他の地域で広く提供され、マラリアの予防
ドル増となる額です。
に役立っています。両社の共同工場の生産能力は年間
3000万個で、2011年には7500人を雇用しました。
2 ミレニアム開発目標2:
普遍的な初等教育の達成
ウガンダでは「Association of Private Water
7 ミレニアム開発目標7:
環境の持続可能性を確保
Operators」の加盟企業が、50万人にきれいな水を供
セネガルの企業「Du Vent, de L’Eau pour
給しています。これは住民、特に若い女性が、水汲みに
la Vie(VEV)」は、風力ポンプを使って地下水を汲み
時間を費やす必要がなくなり、学校の勉強により集中で
上げ、それを地元の女性たちが販売しています。このビ
きるようになることを意味します。
ジネスにより、きれいな水へのアクセスが改善され、女
性が水汲みに費やす時間が削減されます。
3 ミレニアム開発目標3:
ジェンダー平等の推進と女性の地位向上
多国籍の化粧品会社「ロクシタン」は、2011
8 ミレニアム開発目標8:
開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
年にブルキナファソの農村部に暮らす約1万5000人の
ブルキナファソでは「Inova」という企業が、
女性に、シアバターの販売による合計120万ドルの収入
携帯電話を介した電子マネーサービスを6万人に提供し、
をもたらしました。さらに同社は、女性たちによる協同
人々が安全かつ低コストの取引を実現できるよう環境を
組合の設立を支援するとともに、彼女たちに研修の機会
整えています。これにより時間の節約と取引のセキュリ
や環境に優しい生産手法、少額融資を提供することに
ティ向上が実現しました。
よって、女性の地位向上を図っています。
さまざまな企業がどのように8つのMDGsに貢献し
4 ミレニアム開発目標4:
ているのか、またそれらの企業を他の主体がどのように
乳幼児死亡率の削減
支援しているのかを示す他の事例については、UNDP
マリでは、市民社会組織の「Pesi-Net」が地
の「 包 括 的 な 市 場 の 育 成 」 報 告 書「The MDGs:
元の看護師たちを対象に、子どもの体重を量り、その情
Everyone’s Business(ミレニアム開発目標(MDGs)
:
報をメールで医師に伝えるよう研修を行い、乳幼児死亡
全ての人々のビジネス)
」をご覧ください。
率の削減に貢献しました。低体重の子どもがいる場合、
看護師はその子どもの健康を改善する方法についての情
2015年を目前に控え、国際社会はすでに「ポスト
報を受け取ります。この単純な方法によって、乳幼児死
2015開発アジェンダ」の枠組みの策定を進めています。
亡数の半数以上を削減することが可能です。
新たな枠組み作りのための協議プロセスとその実施のい
ずれにおいても、民間セクターが重要な役割を果たすと
いうことについては、広く合意が形成されています33。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
19
1
傾 向 と 展 望
インクルーシブビジネスの
エコシステムは規模と影響の拡大
を可能にする
インクルーシブビジネスは、困難な環境のもと実施され
アフリカにおけるインクルーシブビジネスの潜在力を生
ます。2008年の「包括的な市場の育成」
(GIM)の調査で
かすために、これらの障害を克服するようなエコシステム
再確認されたように(下記コラム参照)
、低所得市場は、市
が必要とされています。
場に必要な条件の多くを欠いています。信頼できるマー
ケット情報はしばしば存在せず、規制は多くの場合不十分
インクルーシブビジネスのエコシステムは、インクルー
で、物理的なインフラも多くの市場で不十分です。低所得
シブビジネスが成功し、影響力を生み、規模を拡大するう
者は生産的な形でバリューチェーンに参加するために必要
えで役立つ行動をする、相互接続的・相互依存的な参加者
な知識や技術を最初は持たず、金融サービスへのアクセス
のネットワークで構成されます34。こうしたエコシステム
も多くの場合、非常に限られていす。これらの条件がない、
には、企業、政府、開発関係機関、市民社会組織、研究機
または不足している場合、企業はそのギャップを自ら埋め
関、仲介機関など、さまざまな主体が含まれます。
なければならないため、取引コストがかさみます。アフリ
カにおけるインクルーシブビジネスの試みは大きな可能性
を秘めているにもかかわらず、しばしば大きな障害が存在
します。
「包括的な市場の育成」(GIM)プログラムからの考察
2006年以来、UNDPのGIMプログラムは、インクルー
欧州新興国と中央アジアに関する報告書「Business
シブビジネスのアプローチについての考察と広報に努め
Solutions to Poverty」
(2010年)では、インクルー
てきました。50の事例の分析に基づき、このプログラム
シブビジネスの支援に必要な条件、そして企業が使用す
の最初の報告書「貧困層を対象にしたビジネス戦略 ―
るモデルと必要な支援の種類は、地域によって大きく異
すべての人々のために価値を創造する」
(Creating Value
なるということが明らかになりました。欧州新興国と中
for All – Strategies for Doing Business with the
央アジア諸国のほとんどはかつて社会主義体制下にあっ
Poor)
(2008年)は、企業が低所得者をビジネスパー
たため、インフラは比較的充実しているものの、起業家
トナーとする際に主に5つの市場の障害(マーケット情
文化は乏しいという環境にあり、起業家の創造力によっ
報の欠如、経済活動を促進しない規制環境、劣悪な物理
てインフラ不足を補う必要があるサハラ以南アフリカと
的インフラ、知識とスキルの不足、金融サービスへの限
は状況が全く異なります。
られたアクセス)に直面するということを明らかにしま
した。またこの報告書では、これらの障害を克服するた
本報告書ではGIMプログラムを基盤として、インク
めの5つの戦略(製品やプロセスの低所得市場への適応、
ルーシブビジネスのアプローチを促進する、地域固有の
障害を克服するための投資、低所得層の人々の人的活用、
具体的なソリューションを模索しています。
他の主体との資源や能力の結集、政府との対話)も示し
ています。これらの戦略は、企業がインクルーシブビジ
援が必要となるということを示しています。
これらの考察に基づき、GIMプログラムの二番目の
Photo:UNCDF
ネスを確立するためには、しばしば他の主体の協力と支
報告書「ミレニアム開発目標(MDGs):全ての人々の
ビジネス」
(The MDGs:Everyone’s Business)
(2010
年)は、さまざまな事業体(多国籍企業、大手国内企業、
中小企業、市民社会組織)が、8つの目標それぞれに貢
献できるということを強調しました。またこの報告書で
は、他の主体、特に政策立案機関、研究・アドボカシー
機関、金融機関などが、いかに支援を提供できるかとい
うことについても説明しています。
20
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
GIMの使命は、インクルーシブビジネス・モデルと、それがこのニジェール
の男性のような何百万人もの人々にもたらす影響を明らかにすることです
図6:
サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネス・エコシステムの機能の欠如
0
10
20
30
40
50
%
インセンティブ
投資
非常に大きく欠如
している
情報
大きく欠如している
少し欠如している
実施サポート
全く欠如していない
出典:アフリカの100の開発支援機関を対象としたアンケート調査
UNDPは「包括的な市場の開発」(IMD)をどのように支援しているのか
Photo:Adam Rogers/UNCDF
農家や中小企業(非正規ビジネスや小規模な家族経営ビ
ジネスを含む)の生産性向上と参加を促すことを目的と
した全体的なアプローチです。したがってIMDの実施は、
小規模農家や中小企業のための機会を拡大しつつ、その
能力を開発する統合的なバリューチェーンとビジネス分
野の強化をともないます。
UNDPのIMD戦略は、中小企業が成長し、貧困削減
に貢献できるようにすることを目指す「民間セクター育
成」
(Private Sector Development: PSD)と、先進国、
後進国を問わない多国籍企業から中小企業までのさまざ
まな企業間で途上国の開発に向けたパートナーシップを育
成する「民間セクター連携」
(Private Sector Engagement:
PSE)とを組み合わせたものです。
IMDは、3つのレベルで実施されます。まずミクロ
レベルでは、小規模な生産者と取引業者の能力構築と、
「包括的な市場の開発」
(IMD)は、インクルーシブビジネスのエコシス
テムを構築することにより、小規模農家や中小企業に機会をもたらします
重点部門のバリューチェーンへの支援が行われます。中
間レベルでは、バリューチェーンの連携が強化され、官
民の対話と協力が促進されます。マクロレベルでは、市
「包括的な市場の開発」
(Inclusive Market Development:
場インフラの開発が支援され、包括的な経済成長に向け
IMD)とは、生産者、消費者、起業家、被雇用者として、
たセクター別の施策が推進されます。IMDは、インク
貧しい人々やその他の市場から排除されてきた人々の選
ルーシブビジネスのエコシステムを活性化および強化す
択肢と機会を拡大するような市場の開発を意味します。
ることにより、インクルーシブビジネスを支援している
IMDは、政府、主要な企業、およびその他の開発関係
のです。
主体との連携により、供給者・流通業者としての小規模
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
21
1
傾 向 と 展 望
図7:
報
情
資
ム
エ
テ
投
コ
ス
シ
シ
ス
コ
テ
エ
ム
インクルーシブビジネスのエコシステムの構図
インクルーシブ
ビジネス
ム
テ
サ
施
ス
シ
テ
ム
コ
ブ
ス
エ
ィ
シ
実
テ
コ
ン
ポ
セ
ー
ン
ト
イ
エ
4種類のインクルーシブビジネス支援
起業家は、ビジネスを開始・実施するため、4つのビジ
インセンティブはビジネスの推進力です。アフリカでは
ネス促進機能が特に必要です。まずは、ビジネスチャンス
ビジネスを行うためのコストが、特に低所得・非正規市場
や市場の特徴についての情報を必要とします。また起業家
では高くなりがちです。各種の規制は不十分であり、業務
は、ビジネス活動に関与する理由となる商業的なインセン
管理プロセスは大きな負担となります。ビジネス活動にと
ティブを必要とします。さらに、金融投資を必要とします。
もなう社会的・環境的な負の影響がビジネスコストに含め
最後に起業家は、技術的な実施サポートを必要とします。
られることはほとんどなく、良い影響に対して金銭的報酬
図6に示した通り、100の開発支援機関を対象に行ったア
が与えられることも通常ありません。ビジネス環境を改善
ンケート調査では、アフリカのインクルーシブビジネスのエ
して、低所得者の市場参加を促し、社会的・環境的メリッ
コシステムにおける各機能の欠如は非常に大きいというこ
トに報酬を与えることにより、社会問題を解決するビジネ
とが明らかになりました。回答者の半数以上が、4つのカテ
スを模索・実施するよう起業家へのインセンティブを拡大
ゴリーのすべてにおいて、大きい欠如または非常に大きい
させることができます。この分野では、公共政策が重要な
欠如があると答えており、これらのカテゴリーのいずれにも
役割を果たしますが、民間企業の方針や官民連携も影響を
欠如がないと考えている回答者はほとんどいませんでした。
及ぼすことができます。
最も大きな改善が求められるのは「投資」で、回答者の半
数以上が「非常に大きな欠如がある」と回答しています。
投資はビジネスの燃料となります。アフリカへの資本流
入は増加していますが、債務やリスクキャピタルはまだ不
情報と関連知識はビジネス活動の基盤となります。しか
十分であるか、現地のニーズに十分に適合していません。
し、データを収集し、ビジネスに活用することは、低所得
一般にインクルーシブビジネス・プロジェクトは、すでに
市場においてはしばしば大きな課題となります。信頼でき
確立された資金調達の枠組みを採用するのが難しい場合が
る市場データはないことが多く、コンサルティング会社や
あります。なぜなら、インクルーシブビジネス・プロジェ
調査機関なども多くの場合、存在しません。さらにアフリ
クトは、収支が見合うまでに時間がかかる場合があり、リ
カでは、インクルーシブビジネスがどのように機能するか
スクが大きく、不安定であるとみなされがちだからです。
ということについての情報が、現地の企業や起業家には入
官民の開発関係機関は、こうした課題に取り組むためのイ
手困難です。学術機関や、コンサルティング会社、シンク
ンパクト・インベストメント(次頁のコラム参照)のメカ
タンク、市場調査機関、ならびに開発支援機関とその民間
ニズムを作っています。また、銀行は、中小企業へのサー
セクタープログラムは、この分野で重要な役割を果たすこ
ビス提供を強化しています。そして、起業家や生産者に直
とができます。
接マイクロファイナンスを提供することにより、インクルー
シブビジネスの資金調達ニーズを緩和することが可能です。
22
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
インタビュー
Sagun Saxena
CEO, CleanStar Mozambique
「CleanStar Mozambique」 は、 食 料・
エネルギーを扱い、森林保護を行う企業です。
Photo: Sagun Saxena
サグン・サクセナ氏
同社はモザンビークの小規模農家と協力して、輸入食料・木
実施サポートは、インクルーシブビジネス・モデルを現
実のものとするための支援をします。ビジネスを実行する
ためには、効率的な取引システム、流通・調達経路、マー
ケティング・通信サービス、小規模ビジネスに向けた支援
が必要とされます。低所得層では多くの場合、これらのサー
ビスはまずは市民社会組織、開発支援機関、その他の仲介
機関によって提供されます。
炭に代わる食品やエネルギー作物を生産し、都市中心部で加
工・販売しています。
起業家がサハラ以南アフリカにおいてインクルーシブビジネ
スを立ち上げるうえで、どのような課題があるとお考えです
か?
アフリカの都市部の低所得層の消費パターンに関する信頼
できる市場データがほとんどないため、私たちのようなイン
これらの機能が一体化して、持続可能な開発と商業的な
成功をもたらすビジネスに向けて、起業家を後押しします。
本報告書では、これらの機能を図7のような「インクルー
シブビジネスのエコシステムの構図」にまとめています。
インパクト・インベストメントとは?
インパクト・インベストメントとは、投資へのリター
ンだけでなく、社会的・環境的なよい影響がもたらさ
れることを目的とした、企業、組織、基金に向けた投
資です。インパクト・インベストメントは、さまざま
な資産において行われ、プライベート・エクイティ、
ベンチャー・キャピタル、債務に含みます。革新的な
モデルを持つがゆえに、困難な市場環境に直面するこ
とが多く、採算が取れるまでに比較的長い時間のかか
ることが多いインクルーシブビジネスにとって、イン
パクト・インベストメントは重要です。
クルーシブビジネス事業者が、市場ニーズを把握して戦略を
立てることが困難な状況です。そのため、私たちは自ら現地
での市場調査・分析を行うために大きな投資をしなければな
りません。
「私たちは自ら現地
での市場調査・分
析を行うために大
きな投資をしなけ
ればなりません」
また、農産物の仕入れ先
である小規模農家の間では
正式な取引活動が行われて
いないため、当社は取引の
ための基本的な物理的イン
フラ、また金融インフラの
構築にも投資しなければな
りません。
ビジネスの運営に関しても、モザンビークでは会計や法令
遵守といった分野が十分に発達していません。そして、木炭
の流通のような非正規の経済活動を正規のインクルーシブビ
ジネス・モデルに移行させるための明確な規定(例えば、付
加価値税に関する規則など)がありません。
課題の中に、投資についてのお話はありませんでしたが、イ
ンクルーシブビジネスへの資金供給は十分なのでしょうか?
ビジネスの包括化によって複雑さが増すのではなく、リス
クを削減できるということを実証できる、説得力のあるベン
チャー事業は資金を得ることができます。概念の実証は、ビ
ジネスモデルの正当性を立証し、実施能力を実証することに
より、リスクに対する認識を調整するうえで有益です。多く
のインクルーシブビジネスの起業家たちは、金融機関との取
引実績がないので、金融機関の資本を利用するのに苦労しま
す。開発援助による資金調達は、新規ビジネスにとって致命
Photo:Adam Rogers(UNCDF)
的な遅延と依存を生む場合があります。
インパクト・インベストメントは、従来の投資ノウハウと社会
的な目的を結合させます。このマダガスカルの女性たちは、個
人的・社会的な目的を達成するために、自分たちの貯蓄と融資
グループのための経理処理を行っています
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
23
1
傾 向 と 展 望
すべての社会的な主体はインクルーシブビジネス
のエコシステムを強化することができる
という6つに分類します。もちろん、ひとつの主体にひと
インクルーシブビジネスのエコシステムは、さまざまな
など、複合的な主体も多く見られます。しかしこの分類は、
タスクを共有するネットワークの中で協働するさまざまな
アフリカにおけるインクルーシブビジネスのエコシステム
主体で構成されています。私たちはこれらの主体を、企業、
内の主な特徴を明らかにするうえで有益であり、この報告
政府、開発関係機関、市民社会組織、研究機関、仲介機関
書による提言の基盤となり得るものです。
つの分類が単純に当てはまるわけではなく、現実には、仲
介サービスを行う企業や調査サービスを行う市民社会組織
表2:
インクルーシブビジネスのエコシステムの主体とそれが各機能に果たす役割の例
主体
含まれる組織
各機能において果たす役割の例
情報
企業
多国籍企業、大手企業、 市場調査の実施、コ
国 有 企 業、 中 小 企 業、 ンサルティングサー
新規事業と起業家、社 ビスの提供
会事業、市場調査会社、
コンサルティング会社、
金融機関およびマイク
ロ フ ァ イ ナ ン ス 機 関、
投資家
政府
インセンティブ
投資
自主的な規制・基準・ ベンチャー・キャピ
認証、良好なコーポ タ ル と プ ラ イ ベ ー
レートガバナンス
ト・エクイティの提
供
国 家 政 府、 公 共 機 関、 経 済 デ ー タ の 公 表、 法的・規制的枠組み
地 域 経 済 共 同 体 適切な識別システム の構築、インクルー
(REC)、国際機関
の提供、データの収 シブビジネスからの
集
調達、社会的・環境
への良い影響に対す
る見返り
記号
実施サポート
物流およびマーケ
ティング・サービス、
支払いシステム、金
融インフラ(信用登
録を含む)の提供
投資に対する保証の
提供
企業と公共サービス
との連携の実現、イ
ンフラの改善、良質
な教育と研修プログ
ラムの提供、小規模
ビジネス支援機関の
設立、ビジネス・イン
キュベーターの育成
開発関係機関
二国間・多国間公共開
発関係機関、民間財団
成功事例の文書化と
分析、官民連携の促
進、インクルーシブ
ビジネスを促進する
政策について政府へ
の助言
国の戦略や支援にお
けるインクルーシブ
ビジネス・アプロー
チの推進
長期間にわたる資本
の提供
技術支援、助言サー
ビス、能力開発支援
市民社会組織
市 民 社 会 組 織、NGO、 低所得層に関する市
NPO
場調査、インクルー
シブビジネス・アプ
ローチの促進
低所得層の利害の番
人としての役割
低所得層の金融サー
ビスへのアクセスの
促進
低所得層の意識向上
と能力開発支援
研究機関
大 学、 シ ン ク タ ン ク、 インクルーシブビジ
研究機関
ネスに関する知識の
生 成 と 普 及、 知 的
リーダーシップ、イ
ンクルーシブビジネ
スに関する議論への
影響
ビジネスモデル構築 新たな投資手段の有
の た め の 情 報 提 供、 効性の評価
インセンティブシス
テムの評価、提言の
実施
インクルーシブビジ
ネス実施のための情
報提供
仲介機関
ビジネス団体、基準設 エ コ シ ス テ ム の 機
定機関、テーマ別組織、 能・主体間の連携の
メディア
促進、関係者間の情
報 共 有、 ア ド ボ カ
シー
基準の設定・監視・
評価
インフラ改善のため 企業間における実績
の 資 金 の 共 同 出 資、 の共有
研究への投資
以下の各章では、これらの主体のひとつに特に関連のある
ものについて、該当する記号を表示します。これにより、
各主体に的を絞って報告書を読み進めることができます。
24
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
サハラ以南アフリカにおける
インクルーシブビジネスの傾向
サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブビジネスの
エコシステムについての調査で、関与する事業体の種類、
支援を提供する主体の種類、およびビジネス活動が行われ
る国や部門に関して、いくつかの傾向が明らかになってい
図8:
サハラ以南アフリカで実施されている
インクルーシブビジネスの内訳(組織形態別)
ます。大企業は規模の面でいくつかの目覚ましい成果を挙
げていますが、インクルーシブビジネスの主な所有者は中
小企業です。支援サービスは現在、主として国際機関によ
中小企業 195
り提供されていますが、現地の支援ネットワークも出現し
大企業 62
つつあります。そして、インクルーシブビジネスの機会は、
さまざまな分野に存在しています。
中小企業はインクルーシブビジネスの強力な推進役
多国籍企業が実施しているインクルーシブビジネスに注
目が集まりがちですが、実はサハラ以南アフリカのインク
ルーシブビジネスの多くは中小企業によって実施されてい
合計
400
ます。図8に示した通り、我々が行った400件の事例研究
のうち、半数近くが中小企業により実施されています35。
アフリカ各国内の大企業も、自らのバリューチェーンに低
所得者を意図的に組み込み始めています。ケニアに1500
万人の顧客を持つ「M-Pesa」の印象的な事例が示すように、
大企業や多国籍企業には短期間で規模拡大を実現すること
のできる能力があります。市民社会組織は、従来はあまり
市場を基盤としていなかったものの、貧困緩和にとって重
要性の高い保健・医療や教育などの分野において、最も革
新的なビジネスモデルの一部を担っています。協同組合も
市民社会組織 55
多国籍企業(外資系)57
また、特に生産者をバリューチェーンに組み込む際に重要
な役割を果たしています。
協同組合 18
主な支援提供者は国際機関だが、現地主体も出現
しつつある
国際機関、特に開発関係機関、インパクト・インベスター、
多国籍企業(開発途上国)13
出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計
市民社会組織は、サハラ以南アフリカにおけるインクルー
シブビジネス設立の推進力となっています。これらの組織
は、起業家への資金提供や技術支援に直接関与しています
が、連携の枠組みや能力開発サービスなど、インクルーシ
ブビジネスのエコシステムのその他の要素への資金提供や
実施も担っています。インクルーシブビジネスに関する調
査の多くは、国際的な研究機関やコンサルティング会社に
よって実施され、国際的な市民社会組織、ビジネス団体、
開発関係機関、大学は、研修、調査、情報交換を実施して
います。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
25
1
傾 向 と 展 望
世界的にこうした傾向が見られるのは当然のことです。
インクルーシブビジネスの概念は、C.K. Prahalad氏や
Stuart Hart氏などの著作により、最初に米国で注目を集
インクルーシブビジネスのエコシステムは、経済
発展にともなって発達する
めました36。その後、インクルーシブビジネスの概念はビ
サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスの展望に
ジネスと開発の両方に対する戦略的なアプローチと捉えら
は、大きな偏りが存在します。この地域では経済発展、ガ
れ、開発関係機関と多国籍企業に強い影響を与えました。
バナンス、歴史の面で大きな差異が存在することを考えれ
これと対照的に、多くの開発途上国においては、
インクルー
ば、これは驚くに値しません。概して、これまでの証拠か
シブビジネスの概念はまだ馴染みがないか、十分に理解さ
らわかることは、国の経済発展やガバナンス能力の水準と、
れていません。
その国のインクルーシブビジネスのエコシステムの状態に
は相関関係があるということです。図9は、我々のデータ
したがって開発途上国の人々は、インクルーシブビジネ
ベースにあるインクルーシブビジネスの事例400件を国別
ス・モデルの価値をあまり認識していません。インクルー
に分類したものです。3分の1以上が、インクルーシブビ
シブビジネスを認識するプロセスはいくつかの形態で進ん
ジネス・アプローチを採用・奨励してきた南アフリカまた
でいます。途上国政府は市場を基盤としたアプローチのメ
はケニアの事例で、残りの事例のほとんどは、経済が安定
リットを次第に認識しつつあり、政策や各種プログラムを
的であり、かつ成長期にある他の国々の事例です。確実な
通じて、このアプローチを促進する方法を模索しています。
経済発展やガバナンスとインクルーシブビジネスの間に関
「包括的アフリカ農業開発プログラム」
(Comprehensive
連性があるのは当然のことです。なぜなら、主流のビジネ
Africa Agriculture Development Programme: CAADP)
スを促進する要因は、低所得層のビジネスも促進するから
などのマルチステークホルダー型の取り組みは、インク
です。大きな経済発展は、インクルーシブビジネスを構築
ルーシブビジネスを促進する調整・共同推進の枠組みを構
することのできる主体を多く生み出します。同様に、イン
築しています。開発途上国のインクルーシブビジネスのエ
クルーシブビジネス活動の増加は、これらの活動を支援す
コシステムの整備は各種政策と並行して整備が進んでおり、
る主体が増加することを意味します。
現在、ビジネススクールによる調査・研修プログラム、商
業銀行の金融サービス、現地のインパクト・インベスター
や育成機関により提供される投資と技術支援などが進んで
います。現地のマイクロファイナンス機関は、低所得の消
費者や生産者に資金提供を行っています。しかし、市場調
査機関、コンサルティング会社、インキュベーター、信用
図9:
サハラ以南アフリカで実施されている
インクルーシブビジネスの内訳(国別)
南アフリカ
サハラ以南アフリカ全体
機関、経営者教育機関等、現地におけるインクルーシブビ
タンザニア
インクルーシブビジネスのエコシステムは近年発達して
きてはいるものの、現地の起業家たちがビジネスベースの
69
ガーナ
調査会社、格付け機関、認証機関、バリューチェーン促進
ジネスの仲介機関は依然として大きく不足しています。
73
ケニア
35
33
31
ウガンダ
28
セネガル
18
ナイジェリア
18
マダガスカル
13
9
アプローチを通じて、大規模に開発課題に取り組めるよう
マリ
エチオピア
8
にするには、より強固なエコシステムが必要です。本報告
ブルキナファソ
8
ルワンダ
7
ザンビア
6
書の最終章に示す提言では、エコシステムを強化するため
に各主体にできることを指摘しています。
ナミビア
6
カメルーン
5
マラウイ
4
リベリア
出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計
26
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
5
モザンビーク
3
アンゴラ
3
ガンビア
4
スーダン
3
モーリタニア
2
ジンバブエ
1
スワジランド
1
シエラレオネ
1
ニジェール
1
ソマリア
1
コートジボワール
1
コンゴ民主共和国
1
ボツワナ
1
ベナン
1
南アフリカは、アフリカで最も経済発展が進んだ国であ
り、ひとり当たりGDPは購買力平価ベースで1万1000ド
ルで、金融・法律・通信・エネルギー・輸送部門はよく発
インクルーシブビジネスは、農業、エネルギー、
金融サービス、情報通信技術分野に集中
達し、効率的な物流システムを支える近代的な商業インフ
アフリカのほとんどすべてのビジネス分野が、低所得者
ラが整っています。同国の政策「ブラック・エコノミック・
がビジネスパートナーと成りうる機会をもたらします。し
エンパワーメント」
(Black Economic Empowerment: BEE)
かし、
「包括的な市場の育成」
(GIM)プログラムによる
は、優先調達により、アパルトヘイト政策のもとで困難に
43件の詳細な事例分析からは、低所得者をどう組み込む
直面していた人々をビジネスに組み込む強い動機を企業に
かはビジネス分野によって異なることが明らかになってい
与えました。その結果、コンサルティング会社、市場調査
ます(図10)
。消費財、エネルギー、金融、保健・医療、
機関、研究機関、その他の組織からなるエコシステムが発
住宅・建設、情報通信技術、水・衛生などの部野は、貧し
展しました。またケニアも、非正規市場の重要性を明確化
い人々を主に顧客としてビジネスに組み込んでいます。ア
したことも手伝って、主流な商業活動に低所得者を組み入
フリカに暮らす低所得者のほとんどは、少なくとも何らか
れることにおいて大きな前進を遂げています。この国では、
の形で農業分野の労働に従事しており、この分野では、イ
経済発展と人間開発の双方を実現することを目的とする総
ンクルーシブビジネス・モデルはこれらの人々に生産者と
合的な政策である「ビジョン2030」、ならびに「金融部
しての機会をもたらします。またすべてのビジネス分野の
門深化イニシアティブ」などの政策(第6章参照)により、
インクルーシブビジネスは、低所得層が被雇用者や起業家
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築に成功して
としての役割を果たす機会を生み出します。農業とエネル
います。
ギー分野は、4つの役割(消費者、生産者、起業家、被雇
用者)すべてにおいて、低所得者に機会をもたらす可能性
その対極にあるのが、長年にわたり内戦や政治的混乱の
が最も大きい分野です。
続いているソマリア、コンゴ民主共和国、スーダンなどの
国々です。これらの国では、正規な市場ですら未発達で、
確かに、人々の生活への大きな影響はいくつかのビジネ
インクルーシブビジネスのアプローチを極めて困難にして
ス分野からもたらされる場合もあります。例えば、情報通
います。しかし、このような困難な状況にあっても、なん
信技術と移動通信の利用により、何百万人もの低所得の消
とか発展し、地元住民に大きな恩恵をもたらしているビジ
費者や起業家の生活が改善されました。特定のビジネス分
ネスもあります。例えば、紛争が続くスーダンのダルフー
野は、他よりもインクルーシブビジネス活動が盛んで、図
ル地方では、鍛冶屋が協同組合を設立して、地元市場向け
11からもわかる通り、400件の事例によると、アフリカ
の工具を生産し、多くの雇用を生み出しています。ソマリ
においてインクルーシブビジネスの割合が最も高い部野は、
アでは、Liban Egal氏が「First Somali Bank」を設立し
農業、エネルギー、金融サービス、情報通信技術となって
ました(第3章のインタビュー参照)。
います。
図10:
ビジネス分野および低所得層の役割別に見る
インクルーシブビジネスの可能性
消費者
低所得者の役割
生産者
起業家
被雇用者
農業・林業
消費財
エネルギー
金融サービス
保健・医療
住宅・建設
情報通信技術
廃棄物
水・衛生
出典:
「包括的な市場の育成」イニシアティブによるサハラ以南アフリカの43件の事例の分析より
高い可能性
中程度の可能性
低い可能性
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
27
1
傾 向 と 展 望
図11:
サハラ以南アフリカで実施されているインクルーシブビジネスの内訳(分野別)
農業・林業 106
水・衛生 26
廃棄物 15
観光 12
情報通信技術 44
合計
400
住宅・建設 11
消費財 22
保健・医療 27
教育 5
金融サービス 47
エネルギー 77
鉱業 8
出典:サハラ以南アフリカの400件の事例をもとに集計
農業は、今もアフリカの現役労働者約60%の生計手段
セスポイント(主に南アフリカの黒人居住区で取引を行う
となっており、アフリカ全体のGDPの34%を占めていま
非正規の金融事業者)からなるネットワークを構築しまし
す37。世界銀行によると、農業分野は、他の分野に由来す
た。携帯電話を介した電子マネーサービスにより、何百万
るGDP成長よりも、極度に貧しい人々の収入を増やすには、
もの人々が金融システムへのアクセスを得ました。ある報
はるかに効果的である場合が多いとされています38。農業
告によると、サハラ以南アフリカに暮らす成人の16%が、
では、小規模農家を生産者としてサプライチェーンにうま
過去12か月間に携帯電話を使って支払いや送金、現金の
く組み込めるということが、多くの事例で示されています。
受け取りを行っています40。しかし、サハラ以南アフリカ
ケニアの「Nakumatt」や南アフリカの「Shoprite」な
の成人人口4億600万人のうちの80%が、2009年末時点
どの現地小売業者は、生鮮品の地元調達の割合を増やして
で銀行サービスを利用できない状態にありました41。
います。他の事業体は小規模農家に情報を提供し、新たな
市場を開拓しながら農家の生産性向上を支援しています。
情報通信技術分野は、低所得層を金融サービス、情報、
例えば、国際的な市民社会組織である「IDE」は、アフリ
市場に結び付け、その生活を改善する主な推進力となって
カ全域の農家に低コストの灌漑システムを提供しています。
います。データサービス・プロバイダー「Esoko」は、携
そして、低所得の消費者に栄養の高い食品を提供している
帯電話を通じて市場価格、取引情報、気象警報を配信して
企業もあります。例えば、新興企業の「GADCO」は、手
います。これは小規模農家が、どの作物をいつ植えるべき
ごろな価格で米をガーナの地元市場で販売しています。
か、また自分たちの農産物に高い価格をつけてくれるのは
どの市場かということを判断する際に役立ちます。同社は
低所得世帯は、収入の約7%をエネルギーに費やしてお
すでにアフリカ16か国で事業を展開しています。また、
39
り、アフリカ全体で合計266億ドルの市場となっています 。
電話による融資やこれに関連したサービスは、大規模なフ
家庭用ソーラーシステムや環境に配慮した調理用コンロな
ランチャイズシステムの一部として、現地の起業家によっ
どのオフグリッド・ソリューションは、遠隔地に暮らす人々
て小規模農家に提供される例も多いです。
にもクリーンなエネルギーを提供します。多くの場合、地
元の起業家がこれらの製品の製造、販売、修理を行います。
「Toyola Energy」は、ガーナでエネルギー効率の良い調
インクルーシブビジネスの事例が多い分野では、支援機
関を巻き込んだ、よりレベルの高いエコシステムが発達す
理用コンロを製造・販売しています。「EDF」はマリで小
る傾向があります。近年確立されたさまざまな取り組みが、
規模なエネルギー網を構築しました。
農業分野のバリューチェーンのさまざまな段階で各主体を
結び付け、小規模農家の市場への参入を支援しています。
28
近年、消費者や小規模起業家の金融サービスへのアクセ
近年、多くの投資家や投資ファンドが、低所得世帯のため
スは大きく改善されました。マイクロファイナンス機関に
のエネルギー・ソリューションの開発を支援しています。
よるサービス提供に加えて、従来型の銀行もオンラインバ
また、多くの国が、貧困層への金融機会の提供と携帯電話
ンキングにより低所得市場への参入を進めています。例え
を基盤としたソリューションの普及を目指した新たな政策
ば南アフリカでは、「Standard Bank」が1万か所のアク
を実施しています。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
インクルーシブビジネスの
エコシステムについての
さらなる考察
インクルーシブビジネス・モデルは、アフリカの急速な
成長を低所得層の機会へと転換する大いなる可能性を秘め
ています。関係する多くの主体が、インクルーシブビジネ
スの成功と成長を可能にするエコシステムの構築に貢献す
ることができます。以下の4つの章では、インクルーシブ
ビジネスのエコシステムの4つの機能(情報、インセンティ
ブ、投資、実施サポート)のそれぞれについてさらに詳し
く考察します。各章は同じ構成になっており(図12)、まず、
各機能に関連する課題を明らかにし、次にこれまでに見ら
れる成果を分析します。最後に、さらなる機会を明らかに
します。
図12:
インクルーシブビジネスのエコシステムの各機能についてのさらなる考察:各章の構成
報
コ
第
資
2
投
章
:
:
章
情
4
エ
成果
第
シ
ス
テ
ム
課題
さらなる機会
インクルーシブ
ム
施
テ
実
ス
章
シ
コ
ム
エ
ブ
テ
ィ
5
テ
ス
第
シ
ン
:
セ
コ
ン
エ
イ
サ
:
ポ
章
ー
3
ト
第
ビジネス
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
29
2
情報の提供
信頼できる情報の取得は、あらゆるビジネスの開始と運営における基盤であるととも
に、低所得層を対象に活動する組織にとって大きな課題ともなります。ケニアのスラム
居住者に衛生サービスを提供している「Ecotact」の例を見てみましょう。実行可能な
ビジネスプランを策定するために、この社会企業は低所得層の市場規模はどの程度か、
人々のニーズや嗜好はどのようなものかなどのいくつかの疑問に対する答えを見つけな
ければなりませんでした。市場の可能性を確信した後、
さらに同社は、
「衛生」
というテー
マそのものについての意思決定者の認識も変えなければなりませんでした。本章では、
このような事例に基づき、情報が調査を通じてどのように生み出され、アドボカシーを
通じてどのように共有されるかということについて考察します。
30
調査は、インクルーシブビジネスの成功に必要な知
アドボカシーは、インクルーシブビジネス・アプロー
識基盤を構築します。調査には、市場戦略の策定を可
チをすべての社会的ステークホルダーに奨励し、成功事
能にする定量的・定性的な市場データ、ならびにイン
例を共有します。これにより、インクルーシブビジネス
クルーシブビジネスを確立するために必要なプロセス
に関する重要なノウハウを広め、関係者の能力を開発し、
や新しい製品についての情報が含まれます。
インクルーシブビジネスの実施を支援します。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
写真:Louis Jouve(Esoko)2012年
Esokoは、小規模農家に情報を提
供し、より良いビジネス判断を下
すことに貢献しています
Photos:Kamau Kuria
事例研究:Ecotact
Ecotactは、都市居住者に清潔な衛生設備を提供しています。同社は、確実なサービ
スを提供するため、ターゲット層の調査から始めました
衛生に対する認識を変える
2007年 に ケ ニ ア で 設 立 さ れ た 社 会 企 業Ecotactは、
生設備「Ikotoilet」を建設し、4万8000人以上に利用さ
衛生設備を提供する革新的で持続可能なアプローチを推
れています。Ikotoiletは各地域の起業家によって運営され
進しています。ケニアの人口4100万人のうちの40%以
ており、トイレの使用には6米セント相当、温水シャワー
上が、適切な衛生設備を利用できない状態にあります42。
の使用には12米セント相当の料金を課しています。
ナイロビ郊外にあるキベラなどのスラムでは、住民の大
多数が最低限の衛生設備を利用することができません。
Ecotactは、
「Water and Sanitation for the Urban
汲み取り便所の数も不十分で、大雨の時期にはあふれて
Poor(WSUP)
」という組織と提携して、ケニアの都市
しまうことがあります。公共トイレもわずかながらあり
部と都市周辺部の衛生状態についての調査を実施し、
ますが、大抵は行きづらい場所にあり、非衛生的で、プ
人々のニーズや期待についての極めて重要な情報を得ま
ライバシーや安全性も確保されていません。ケニアで発
した。この情報をもとにIkotoiletの設計が行われ、現
生している病気の約30%が衛生不備に関連するもので、
地の人々のニーズに合った設備が作られました。さらに、
毎年何千人もの子どもが下痢性疾患で命を落としていま
地方自治体や中央政府と同社が共同で行ったアドボカ
す43。
シーは、衛生についての認識を高め、政策立案者や地方
住民のそれまでの衛生に対する考えを変革するうえで役
衛生サービスへの膨大な需要に応えるために、Ecotact
立ちました。
はこの5年間で、主に都市部のスラムに60の近代的な衛
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
31
2
情 報 の 提 供
図13:
アフリカの情報通信普及率(2005~2013年)
70%
固定電話契約者数
携帯電話契約者数
60%
モバイルブロードバンド契約者数
有線ブロードバンド契約者数
50%
K
3
40%
30%
20%
10%
0%
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
20
12
20
13
20
出典:ITUウェブサイト(www.itu.int/ITU-D/ict/statistics/at_glance/keytelecom.html)
課題
小規模なインクルーシブビジネスであっても、その実現
通信環境の不備は、今日のビジネス環境においては特に
には大量の情報が必要となります。これは全体的な構想段
大きな課題です。「モバイル革命」はアフリカにも到達し、
階から始まって、その後、既存のビジネスモデルやソリュー
携帯電話の普及率は2000年の2%未満から2013年には
ションについての詳細な情報、市場データ、ビジネスに採
60%超にまで急上昇しました(図13)44。しかし、大量
用できる可能性のある慣行や製品についての技術的な情報
な情報への迅速なアクセスを可能にするインターネット接
などが必要になります。これらの情報はさまざまな情報源
続率は、アフリカでは、2011年末時点で推定13.5%にと
から得られるものであり、すべての情報があるかどうかは、
どまっています45。モバイルブロードバンド契約者数は増
地域によって状況が異なるためわかりません。しかし明ら
加しており、今後数年間で情報をめぐる状況が劇的に変わ
かに、通信環境がよくないため、アフリカにおける情報入
ることは間違いありません46。
手は困難で、低所得市場に関したデータ自体も限られてい
ます。
企業も、低所得市場に関する情報の入手に困難を感じて
います。ほとんどのアフリカ諸国では、有効なマクロ、お
よびミクロ経済データの作成と蓄積が不十分で、入手可能
なデータであっても、古いか、なかなか入手できない状態
にあります47。ビジネスの設立を成功させるためには、企
業は、ターゲット層の特徴、市場環境、経済動向など、参
入を目指す市場についての具体的な最新の情報を必要とす
るので、この状況は問題です。
32
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Louis Jouve(Esoko)
アフリカの小規模農家に情報を
届ける「Esoko」
「Esoko」は、アフリカ16か国の小規模農家を対
象とした、携帯電話のメッセージサービスです。同
社は最新の市場価格をリアルタイムで農家に知らせ、
古い情報による農家の機会損失を回避します。確か
な情報を手に入れるため、同社は、各地の市場価格
を収集する大勢のエージェントを雇っています。ま
た、農家はEsokoを介して取引を行うこともできま
す。そして、企業はこれらの情報を活用して農作物
の生産レベルを把握し、農家から直接作物を購入す
Esokoは、市場価格や生産レベルなどの数々の最新情報を、小規模農家や
彼らから農作物を購入する企業の手元に届けています
ることができます。
出典:Esokoウェブサイト(www.esoko.com)
成果
インクルーシブビジネス・アプローチに重点を置いた調
査やアドボカシーは、主として大学、開発関係機関、財団
アフリカの低所得市場の規模を分析する調査は少ない
「世界資源研究所」
(WRI)と「国際金融公社」
(IFC)は、
などの国際機関によって行われています。しかし、詳細な
2007年の報告書「次なる40億人」
(The Next 4 Billion)の
技術的な情報は現地の団体によって提供される場合も多々
中で、国、地域、分野別に新興市場の規模を初めて明らかに
あります。農業研究機関は農業慣行に関するノウハウを提
しました48。この報告書は、110か国(うち22か国がアフリカ
供し、情報通信技術関連の機関は新しい携帯電話ベースの
諸国)を対象とした国民所得と消費に関する調査に基づいて
アプリケーションや関連技術を開発し、現地の大学はバ
います。特定の分野については、より詳細な調査が実施され
リューチェーンの特徴や製品の機能性の評価をすることが
ま し た。 主 に「 英 国 国 際 開 発 省 」
(Department for
可能です。影響力のある現地カウンターパートとしてアフ
International Development: DFID)から資金提供を受けた
リカでもビジネススクールが出現しつつあり、インパクト・
「FinMark Trust」のイニシアティブ「FinScope」が、需要と
インベストメントや社会起業家精神などの国際的な概念を
供給の両面からアフリカ14か国の金融サービスを調査しまし
現地で広めています。
た。ケープタウン大学は、南アフリカの農村部と都市周辺部
でファイナンシャル・ダイアリー調査を実施し、低所得層に
通信時間の代わりにデータを
収集する「Jana」
「Jana」はボストンに拠点を置く企業で、企業や
団体が携帯電話を通じてターゲット層と直接つなが
ることを可能にする会社です。調査に協力した現地
のターゲット層の人々には、報酬として携帯電話の
通信時間が与えられます。同社は、携帯通信会社
232社と提携しており、通信時間を大口で購入して、
それをエンドユーザーにプレミアとして与えること
で、調査への回答、データの提供、時には商品の購
入を促します。このモデルにより、Janaは、85か
国(うち8か国がアフリカ諸国)に急速に事業を拡
Photo:Alec Babala
大しました。出典:Jana ウェブページ(www.jana.com)
おける収入と支出の追跡調査を行いました49。しかし、これま
でのところ、こうした取り組みはいまだ散発的で、アフリカの
低所得市場の全体像を明らかにするまでには至っていません。
低所得市場に特化した市場調査会社は少ない
アフリカ市場に重点を置いている市場調査会社の大半は、
南アフリカを拠点としています。例えば、
「Field Africa」と
「Eighty20」は南アフリカを拠点とする調査機関であり、低
所得層に関するデータを収集し、定量的・定性的な調査を
行っています。ケニア、タンザニア、ナイジェリア、ウガンダ、
エチオピアで活動する「Consumer Insight」も、アフリカ
の消費者に関する市場調査を行っていますが、低所得市場
に特化してはいません。
「Research Africa」はウガンダとオ
ランダを拠点とする市場調査機関であり、社会的影響を与
えるビジネスに重点を置いています。しかし、ほとんどのサ
ハラ以南アフリカ諸国では、ビジネスデータを収集しようと
する企業は市民社会組織の力を借りざるを得ません。
携帯のアプリケーションはデータ収集の巨大なチャンス
Janaの 調 査 に 参 加 し
た人は、プレミアとし
て携帯電話の通信時間
を取得します
携帯電話を活用することによって、企業はターゲット層
に対して情報提供を直接求めたり、生産者や消費者に情報
共有を働きかけたりすることができます。
「Esoko」
や
「Jana」
など、多くのサービスがこうした機会を提供しています。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
33
2
情 報 の 提 供
インタビュー
Daniel Annerose
CEO, Manobi
アフリカ最大手のデータプロバイダーのひとつ
である「Manobi」は、10年前にセネガルで設
立され、その後、マリ、コートジボワール、ブルキナファソ、ニ
ジェール、ベナンに事業を拡大しました。同社のサービスは主に
小規模農家を対象としていますが、水や衛生設備、自治体のサー
ビス提供の質、保健と環境、子どもの保護など、その他の部門に
Photo:Daniel Annerose
ダニエル・アンヌローズ氏
インクルーシブビジネスの概念を広める
「Business Action for Africa」
「Business Action for Africa」は、企業、ビジ
ネス団体、開発関係者のネットワークです。会員は、
アドボカシー、行動、知識の共有でアフリカの開発
を支援するべく、このネットワークに参加していま
す。例えば、この団体の最近の報告書「新しいアフ
リカ:ビジネスとアフリカにとっての新たな機会」
(The New Africa: Emerging Opportunities for
Business and Africa)では、ビジネス界やその他
も拡大しつつあります。
の部門の主要な人々が、ビジネス基盤の整備がどの
アフリカにおけるデータや市場情報の入手に関する現状をどのよ
を共有しています。
うに評価していますか?
この数年間で、状況は間違いなく大きく改善しています。さま
ざまな技術、ならびにアフリカ大陸の隅々にまで携帯電話の普及
が進んだことによって、さまざまな経済分野に関するデータや市
場情報をリアルタイムで収集・処理することが非常に容易になり
つつあります。
データや情報はインクルーシブビジネスの発展をどのようにして
促すのでしょうか?
当社の場合、個々の農家、農民団体、現場エージェントなど、
いくつかの情報源から情報を収集しています。これらの情報源か
らの情報が巨大なデータベースを作成し、これが、さまざまな用
途で使用されます。農家は当社が開発したアプリケーションを
使って、特定の条件下である作物を育てるにはどれだけの肥料が
必要なのかなどを調べ、その後、
「当社の情報サービス 植えた作物の量、収穫量、価格
によって銀行は、そう などを記録します。当社のアプ
リケーションとデータは、戦略
した情報がない場合よ 的な情報へのアクセス、土地管理、
りもはるかに良い条件 農産物のマーケティング、仕入
れ先との関係構築、生産管理を
で農家に融資を提供す 農家に提供します。
ることができるのです」 情報が可能にすることは農家の
生 産 支 援 だ け で は あ り ま せ ん。
銀行や融資提供者も、データをもとに作物、収穫量、気候条件な
どに関するリアルタイムの情報と具体的な数字を手に入れること
ができます。これによって、銀行や融資提供者は、そうした情報
がない場合よりもはるかに良い条件で農家に融資を提供すること
ができるのです。
ようにアフリカの課題を解決するかについての洞察
出典:Business Action for Africaウェブサイト(www.businessactionforafrica.org)
インクルーシブビジネスのための調査とアドボカシー
は、主に国際機関によって実施されている
インクルーシブビジネスは新しいアプローチであり、ビ
ジネス機会の特定、成功するビジネスモデルの構築、関係
者との協力、成果の把握、成長管理に関して、まだ多くの
疑問が残っています。しかし、いくつかの国際機関がこう
した状況に進展をもたらしています。これらの国際機関に
は、
UNDPの「包括的な市場の育成」
(GIM)プログラムや、
「スウェーデン国際開発協力庁」
(Sida)と「英国国際開
発省」
(DFID)が資金を提供しているプロジェクトである
「Practitioner Hub」
、官民の開発関係機関が支援するコ
ンサルティング、
およびミシガン大学ウィリアム・デヴィッ
ドソン研究所の「Base of the Pyramid」
(BOP)イニシ
アティブ、ハーバード・ケネディスクールの「企業の社会
的責任」
(Corporate Social Responsibility: CSR)イニ
シアティブ、コーネル大学ジョンソン経営大学院の「持続
可能なグローバル企業センター」
(Centre for Sustainable
Global Enterprise)などの大学を拠点としたプログラム
が含まれます。これらの機関による調査の大部分は、サハ
ラ以南アフリカの状況に特化したものではありませんが、
アフリカの多くの事例研究が文書化されています。これら
の機関は、世界で積極的にインクルーシブビジネス・アプ
ローチを提唱している機関でもあります。
リアルタイムの情報によってもたらされた最大の恩恵は何だとお
現地主体は、製品やバリューチェーンのパフォーマンス
情報の収集・処理にかかるコストが大幅に削減されました。基
礎調査や定量的分析を手作業で行うと非常に費用がかかりますし、
処理が終わるころには情報が古くなってしまいます。データや情
報の本質は、それが静的ではなく、動的なものであるということ
です。Manobiのようなシステムにより、私たちは迅速、かつ正
確な方法でチャンスを掴み取ることができます。例えば当社は、
母国であるセネガルで、または世界中のあらゆる場所で、数百万
世帯の市場データを容易に収集することができます。このような
情報は、市場の規模、人々のニーズ、支出パターンなどを理解す
るために不可欠なものです。
大学、現地のサービス提供者、市民社会組織は多くの場
考えですか?
評価を行っている
合、現地でパフォーマンス評価を行うための専門知識を備
えています。
スーダンでは、
国際的な市民社会組織
「Practical
Action」とエルファーシル大学が、ある冷蔵システムの
食品保存性能を評価するための実験を行いました。農業関
連の市民社会組織や公共の調査機関は、バリューチェーン
評価に実績があります。
例えば、
「エチオピア農業変革機関」
(Ethiopian Agriculture Transformation Agency:
EATA)は、同国のヒヨコ豆のバリューチェーンを評価し
て5年間のロードマップを策定しました。このロードマッ
34
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
プにより、
「ペプシコ」「国連世界食糧計画」
(WFP)「米
国国際開発庁」
(USAID)などのプロジェクトパートナーは、
的を絞ったプロジェクト計画を立てることができました。
社会革新を促進する現地のビジネススクール
ケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学、タンザニアのダ
ルエスサラーム大学、南アフリカのウィトワーテルスラン
ド大学などのビジネススクールでは、起業家精神とイノ
製品・技術革新は現地で実現することが可能
ベーションの分野の修士レベルコースを提供しています。
ケニアは製品・技術開発の最先端を行く存在であり、同
その他の大学でも、主として企業幹部向けの認証コースと
国ではすでに低所得市場向けのモバイル・ソリューション
して、インクルーシブビジネスに関する専門性の高い研修
を生み出すIT開発が活発に進められています。IT開発が活
を提供しています。南アフリカのゴードン経営学研究所で
発な地域は、現在、他のいくつかのアフリカ主要都市にも
は「社会起業家認証プログラム」を、ケープタウン大学経
広 が り つ つ あ り、 そ の 例 が、 ダ ル エ ス サ ラ ー ム の
営大学院では「持続可能なビジネスプログラム」を、ウガ
「TANZICT」センター(タンザニア)、キガリの「kLab」
(ル
ンダのカンパラにあるマケレレ大学ビジネススクールでは
ワンダ)、ダカールの「Jokkolabs」(セネガル)です。
マイクロファイナンスの修士課程を提供しています。さら
に、南アフリカのノースウェスト大学やケニアのストラス
農業調査は主に公共機関によって実施されている
モア大学などのビジネススクールは、中小企業のビジネス
各国の農業研究センターは、現地の条件で作物を栽培し、
開発を支援しています。ロックフェラー財団は、いくつか
家畜を管理するための成功事例についての情報を提供して
のアフリカ諸国におけるインパクト・インベストメントに
います。そして、いくつかの国際的な農業研究センターが
ついての調査に資金を提供しています。この調査の目的は、
アフリカに拠点を置いています。国際的に評価の高い「国
政策上の課題について理解し、インパクト・インベストメ
際 農 業 研 究 協 議 グ ル ー プ 」(Consultative Group on
ントの成長を促す国家政策を提案することです。
International Agricultural Research: CGIAR)と関連す
る3つの研究センター(ナイジェリアの「国際熱帯農業研
究所」
、ベナンの「アフリカ・ライス・センター」
、ナイロ
ビの「国際アグロフォレストリー研究センター」
)が、アフ
社会的利益をもたらす新たなビジネスパラダイムにつ
いて、メディアでの議論が進んでいる
CNNの「マーケットプレイス・アフリカ」やBBCの「ア
リカに拠点を置いています。エチオピア農業省の研究部門
フリカ・ビジネスレポート」などのアフリカに焦点を当て
である「エチオピア農業研究機構」は、ペプシコとUSAID
た国際的な報道番組、ならびに「Pan-African Business
のヒヨコ豆調達プロジェクトのための調査を支援して、プ
Magazine」「Africa Investor」「African Business」
ロジェクトに適当な2つの地域を特定しました。また、エ
「African Business Review」
、またはフランス語圏アフリ
チオピア農業研究機構は、農家と緊密に連携し、改良され
カ の「Jeune Afrique」
「Afrique Magazine」
「Afrique
た種の導入による生産性の向上に取り組んでいます。
Expansion」といった地元のビジネス誌は、サハラ以南
アフリカの低所得層が関与するビジネスについて、定期的
Photo:James Quest Photography、Alkira Australia
に報告しています。
開発のためのICTを生み出す「iLabAfrica」
「iLabAfrica」は、ナイロビのストラスモア大学
情報技術学部の研究センターです。ここで実施され
ているプロジェクトは、MDGsの達成とケニアの
経済政策である「ビジョン2030」を実現する情報
通信技術(ICT)イノベーションの先駆けとなるこ
とを目的としています。例えばiLabAfricaは現在、
ICT企業のヒューレット・パッカードの協力のもと、
HIV/エイズの母子感染予防を目的とした南アフリ
カのプログラムに向けて、患者の追跡調査のための
iLabAfricaに集まった若者たちが、教育、保健、テクノ
ロジー分野のプロジェクトを進めています
監視・評価システムの開発を行っています。
出典:iLabAfricaウェブサイト(www.ilabafrica.ac.ke)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
35
2
情 報 の 提 供
さらなる機会
過去10年間に、インクルーシブビジネスの概念そのも
のについては多くの研究がなされてきましたが、サハラ以
南アフリカの状況に特化した考察はこれまでのところ、あ
まり行われていません。詳細な市場情報を必要とする企業
は通常の場合、独力で、あるいは市場調査やサハラ以南ア
フリカ地域を専門としていないパートナーと協力して、調
査を行わざるを得ません。アフリカでは新たなビジネス・
アプローチとして、インクルーシブビジネスに対する関心
が高まっていますが、現地のビジネスリーダーや起業家た
ちの多くにとって、この概念はまだ馴染みがありません。
こうしたギャップに、いくつかの機会が存在します。
国際開発機関や企業は、現地の調査・アドボカシー能力
能力開発を進めることにより、現地起業家によるインク
現地の調査・アドボカシー能力向上の第一歩はすでに踏
現在、サハラ以南アフリカの現地起業家は、社会的目標
の向上を支援することが可能
ルーシブビジネス設立が可能に
み出されています。例えば「ドイツ投資開発公社」
(DEG)
と商業的な目標を結び付ける方法についての指導を得る術
は、サハラ以南アフリカの大学における市場調査能力を向
がほとんどありません。開発関係機関は、現地の大学、商
上するため、ドイツの大手市場調査機関「GfK」と提携を
工会議所、またはビジネス・インキュベーションセンター
結びました。「ロックフェラー財団」は、インパクト・イ
と協力して、この方法に関する情報を提供することが可能
ンベストメントに関する研究を行うための資金を、アフリ
です。国際的なインパクト・インベスターや現地のビジネ
カのさまざまな大学に提供しています。「グーグル」
「メル
ススクールは、現地起業家のための助言・指導プログラム
トウォーターグループ」、およびその他のソフトウェア開
を提供することができます。商工会議所やその他のビジネ
発企業は、現地のIT能力育成を目的に、ケニアをはじめと
ス団体も、セミナーや啓発イベントを実施することが可能
して、大学のIT学部と協力したり、自ら学校や大学を設立
です。
したりしています。世界で最も重要な経営研究者団体であ
る「経営学会」(Academy of Management)は、2013
年1月にヨハネスブルクにおいて、アフリカで初めての会
研究開発コストの共有を促進する枠組み
初期段階の市場調査やパイロット・プロジェクトは多く
合を開催しました。しかし、国際的な研究機関や大学は、
の場合、あまりにコストがかさみ、リスクをともなうもの
現地のパートナーとより一層協力し、さらに強い関係を築
であるため、企業や組織が単独で実施することは困難です。
く余地があるのは明らかです。
企業が連携し、それぞれの目的を説明し、財源をプールし、
共同で調査や変革を進めるようにするための枠組みが求め
さらなる事例を作り出すための成功事例の紹介
られます。
ベンチャーキャピタルの世界で馴染みのある「ア
多くの企業や起業家には、インクルーシブビジネスがど
クセラレーター」「インキュベーター」などの制度を、イ
のような形態をとり得るのかがわかりにくくなっています。
ンクルーシブビジネス開発にも適用することも可能です。
表彰や公的評価を行うことにより、成功したビジネスモデ
ルを紹介し、他の者に対して、先行者に続くよう動機づけ
を行うことができます。いくつかの国際的な表彰がすでに
存在しており、アフリカの事例も評価されています。こうし
た賞には、
「世界ビジネス・デベロップメント賞」
(World
Business and Development Awards)
、
「G20チャレンジ:
革新的なインクルーシブビジネス」
(G-20 Challenge on
Inclusive Business Innovation)
、
「SEEDアワード:持続可
能な開発における起業家精神」
(SEED Awards for
Entrepreneurship in Sustainable Development)などが
あります。
「ビジネス開発ネットワーク」
(BID Network)
や「New Ventures」などのビジネスプラン・コンペも、
資金や技術的な支援を提供しています。政府、政府間組織、
ビジネス団体は、サハラ以南アフリカ地域、もしくは個々
の国に焦点を当てた、このような表彰やビジネスプラン・
コンペを主催するのに適しています。
36
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:@YamPhoto
「ロクシタン」はブルキナファソで、数千の
起 業 家 か ら シ ア バ タ ー を 調 達 し て い ま す。
情報へのアクセスが改善されることにより、
起業家はインクルーシブビジネスを構築し、
新たな市場にアクセスすることが可能にな
ります
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
37
3
インセンティブの
創出
商業的、また政策的なインセンティブは、低所得市場に欠けがちなビジネスの展望を
提供することによって、投資に踏み切る動機をインクルーシブビジネスに与えます。
HIV/エイズ感染者の治療に使われる多くの医薬品を南アフリカで生産している「Aspen
Pharmacare Holdings」の事例は、
このようなインセンティブの重要性を示しています。
同社は、南アフリカ政府による税控除と販売先の保証という明確なインセンティブに促
され、この分野への投資を行いました。インセンティブは、企業主導の施策と公共政策
により生み出されます。
公共政策には、法律や規則、資金提供やビジネス実
企業主導の施策は、企業内の指針を定める施策と、社
行支援などが含まれます。公共政策は、国家政府や開
外のより多くの主体の指針を定め、インクルーシブビジ
発関係機関、または多国間機関によって導入されます。
ネスの推進を促す施策という2つのカテゴリーに分類で
公共政策は、企業がビジネスを実施できるようにさま
きます。社外の主体には、他企業のほかに市民社会組織、
ざまな障壁を取り除いてビジネスを促進する環境を作
仲介機関、官民の開発関係機関、政府が含まれます。基
りだすこと、低所得者が市場に参加できるようにする
準・認証スキームなどが、特にこの企業主導の施策に該
こと、また、低所得者を事業活動に組み込む企業に直
当します。
接的な見返りを提供するという3つの方法によって、
インクルーシブビジネスを促すインセンティブを生み
出します。
38
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Peter Morey
「Aspen Pharmacare」は、税控除と市場の確
保に促されて、抗レトロウイルス薬の生産を始
めました。インセンティブは、低所得市場にあ
りがちな課題を克服しようとする起業家精神を
刺激します
Photos:Peter Morey
事例研究:Aspen Pharmacare
成長を可能にする税優遇措置
Aspen Pharmacareは、南アフリカのポートエリザベスとイーストロンドンに
ある拠点で、高品質かつ手ごろな価格の医薬品を生産しながら、地元住民に雇
用と能力訓練を提供しています
「Aspen Pharmacare Holdings」( 以 下「Aspen
生産する必要性を認識していました。これは一部には、
Pharmacare」
)は、南アフリカのダーバンに本社を置
市民社会組織が10年間にわたり継続的な働きかけを
く大手製薬会社です。同社は、HIV/エイズ、結核、マラ
行ってきた成果でもあります。政府は税優遇措置を実施
リアなど、命に関わる病気の治療に使われる医薬品を手
し、製造工場に投資するようAspen Pharmacareに促
ごろな価格で提供しています。1997年に設立された
しました。さらに政府は、国のHIV/エイズ・プログラ
Aspen Pharmacareは、アフリカ最大の錠剤とカプセル
ムのために大量のARVを同社から購入する準備を整え
の生産メーカーへと成長しました。同社は現在、製品ラ
ました。このような、投資と市場確保の約束により、同
インを多様化し、
ラテンアメリカ、
アジア太平洋地域、
オー
社はいくつかの多国籍な特許保持者から任意ライセンス
ストラリアを含む、世界中の100か国近くで製品を販売
を取得し、さまざまな種類のARVを生産できるように
しています。その過程において、南アフリカ、タンザニア、
なりました。
ケニアの製造工場で数千の雇用を生み出しました。
現在、南アフリカには、無料かつ全国民を対象とした
Aspen Pharmacareの成功は、政府によって提供さ
公共のHIV/エイズ治療プログラムがあります。これは
れたインセンティブがきっかけでした。南アフリカの高
主に、Aspen Pharmacareや他の複数の企業が現地で
いHIV/エイズ感染率を受けて、政府はジェネリックの
生産する安価なジェネリックARVの安定的供給のおか
「抗レトロウイルス薬」(anti-retrovirals: ARV)を現地
げです。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
39
3
インセンティブの創出
図14:
地域別に見た法制度の強度およびビジネス制度の複雑さとコスト
地域、GDP(米ドル換算)、「ビジネスのしやすさ」平均順位
法制度は強く、
ビジネスの制度は簡易で低コスト
法制度は強いが、
強い
ビジネスの制度は複雑で高コスト
OECD高所得国
東欧・中央アジア
43兆8900億ドル(2011年)
/29位
法制度の強度
3兆6240億ドル(2011年)/73位
南アジア
2兆2710億ドル(2011年)
/121位
サハラ以南アフリカ
1兆2630億ドル(2011年)/140位
弱い
東アジア・太平洋地域
ラテンアメリカ・
カリブ地域
9兆3130億ドル(2011年)/86位
中東・北アフリカ
5兆6460億ドル(2011年)/97位
1兆2020億ドル(2010年)/98位
法制度は弱いが、
法制度は弱く、
ビジネスの制度は複雑で高コスト
ビジネスの制度は簡易で低コスト
複雑で高コスト
ビジネス制度の複雑さとコスト
簡易で低コスト
出典:
「Doing Business 2013」世界銀行(2012年)
課題
サハラ以南アフリカでは、ビジネスを行う際の障害の大
低所得者は、法的手続きを行う金銭的余裕のない場合が
きさゆえに、そこでビジネスを開始するインセンティブが
多く、法的な証明書類を入手できないため、または単に正
世界の他の地域に比べて概して低くなりがちです。この地
式な制度を利用する恩恵を理解していないため、非正規市
域の多くの国では、規則や官僚主義がビジネスの設立・運
場を利用することが多くなります53。アフリカでは、労働
営コストを高くしています。サハラ以南アフリカ48か国
者の10人中9人が非正規雇用に就いています54。特に女
のうち、世界銀行の「ビジネスのしやすさ」ランキングで
性や若者は非正規市場以外で働く機会が多くの地域で、あ
上位50か国に入ったのはモーリシャスと南アフリカだけ
まりありません55。2000年には、国民総所得に占める割
で、上位100か国に入ったのはルワンダ、ナミビア、セー
合で見た非正規経済の平均規模が、低いところではアフリ
シェル、ザンビアの4か国のみでした。これ以外の国々は、
カ大陸最大の経済国である南アフリカの30%弱、高いと
ほとんどが最下位グループに入っていました 。つまり、
ころではナイジェリア、タンザニア、ジンバブエの約
これらの国々では、ビジネスの立ち上げ、建設許可の取得、
60%というものでした56。しかしこのような非正規経済は、
不動産の登録、越境取引の実施、税金の支払いに要する手
有益なビジネス連携を構築するうえで障害となります。正
続きが、高コストで非常に官僚的であるということです。
規企業が非正規組織から製品やサービスを調達するのは困
調査データによると、サハラ以南アフリカの経営者は、労
難です。また、銀行やその他の金融機関は、証明文書を提
働時間の5~10%を規制当局への対応に充てています 。
出できない、または財務記録を作成できないクライアント
さらに制度の弱さは、規則が適切に施行されないというこ
へのサービス提供に躊躇します。
50
51
と、また、政権交代がビジネスに大きな影響を及ぼす可能
性があるということを意味しており、これらはビジネスの
基準設定など、企業の方針決定にも、制度的インフラが
不安定さを著しく高める要因となります52。その結果、ア
必要です。しかし認証機関は経済規模の大きな国にしか存
フリカのビジネス制度はあらゆる地域の中で最も困難なも
在しないため、認証手続きはかなり高コストになっていま
のとなっています(図14)。
す。
アフリカ各国における起業に要する時間を見てもわかる
通り、こうした状況は決して均一的なものではありません
(図15)。起業に100日以上かかる国もあれば、ビジネス
設立を容易にする改革を実施した国もあります。例えば、
ルワンダでは起業にかかる日数はわずか3日です。
40
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
図15:
サハラ以南アフリカの主な国における起業に要する日数
161
135
90
84
61
58
5
ダ
ル
ン
ワ
ル
ガ
セ
3
モ
ー
リ
ネ
ャ
ス
ア
6
シ
ベ
ル
6
リ
カ
ダ
ガ
ス
レ
ラ
マ
エ
8
リ
ネ
ナ
12
オ
ー
ク
12
ガ
ー
ザ
ン
ビ
オ
チ
モ
エ
13
シ
ア
15
ピ
ビ
ア
ル
17
ン
ザ
カ
17
ェ
ニ
ジ
リ
フ
南
ア
フ
ア
央
19
ー
カ
ル
22
リ
ー
ワ
ダ
32
ー
ト
ジ
ボ
ン
ガ
ウ
ジ
イ
ナ
33
中
34
ア
ン
ダ
イ
36
ー
ス
ウ
マ
ラ
和
共
主
民
ゴ
ン
コ
国
ナ
ド
ワ
ツ
ボ
ア
チ
ビ
ミ
ナ
ャ
ラ
ア
ゴ
ン
ア
エ
エ
リ
ト
リ
ア
ジ
ン
バ
ブ
ニ
ギ
道
赤
コ
ン
ゴ
共
和
国
39
コ
62
リ
66
ェ
68
出典:
「Doing Business Database」世界銀行(2012年)
成果
アフリカでは、各国政府がビジネス制度を強化する取り
組みを進めるとともに、地域経済共同体(REC)が越境取
多くの国の政府がビジネス環境を改善している
意思決定において加盟国16か国の合意を必要とする「ア
引を促進していることにより、ビジネス環境は全体的には
フリカ商法調整機関」は、2010〜2011年、地域の商法
改善しつつあります。しかし、企業に対して低所得者を事
を統一するための作業を開始しました57。世界銀行による
業活動に組み込むよう促す明確なインセンティブを導入し
と、2005年以降、ビジネス制度の改善が著しかった50か
た政府はまだ少数にとどまっています。ビジネス活動にと
国のうち、最も大きな割合(3分の1)を占めていたのが
もなう社会的な恩恵に報いるための政府調達と「スマート
サハラ以南アフリカでした58。しかし、一般的なビジネス
補助金」は、ある程度導入されています。国際的な開発関
規制や制度を強化するだけでなく、インクルーシブビジネ
係機関は、インクルーシブビジネス開発のための助成金を
スの促進に特化した規則も求められます。
企業に提供することで、より積極的にインセンティブを提
供しています。国際的な炭素排出権市場の発達も、インク
ルーシブビジネスに便宜を与えるメカニズムにつながって
います。
政府はインクルーシブビジネスに市場を開放しつつある
多くの政府は、開発において民間企業が果たす貢献を認
識しており、エネルギー、医療、教育など、これまで国家
が独占してきた市場を開放しつつあります。マリ政府は、
企業側も、社会的な恩恵を製品価格に転嫁するための基
世界銀行の支援を受けて、民間業者によるエネルギーサー
準を他の主体と協力して作成しています。円卓会議や各種
ビスの提供を可能にする規則を作りました。2006年にこ
のプラットフォームが、こうした基準づくりに貢献してい
の規則が導入された直後に、50の小さな業者が小規模な
ます。
エネルギービジネスを運営するためのライセンスを申請、
取得しました。このように、特定の分野に特化した政策が
重要な役割を果たしますこともあります。例えば、ケニア
では制度を改善し、固定価格買い取り制度などのインセン
ティブを導入することによって、再生可能エネルギーと近
代的エネルギーサービス拡大のための投資を呼び込みまし
た。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
41
3
インセンティブの創出
ブラック・エコノミック・エンパワーメント:
南アフリカの不平等に対する取り組み
「Broad-Based Black Economic Empowerment
Act of 2003」
(B-BBEE法)に基づく南アフリカの
黒人経済力強化計画は、南アフリカの経済改革を加
速させるとともに、根強い経済的不平等を是正する
ことを目指す一連の公共政策です。この政策は、所
Photo:Arne Hoel(World Bank)
有権、経営管理、雇用における正当性、優先調達、
事業開発、社会経済開発などの主要な分野で、歴史
的に不利な立場に置かれてきた人々の経済力の強化
を目的としています。すべての国有企業、ならびに
政府からの受注に入札する企業は、B-BBEE法に従
わなければなりません。これを遵守する負担が起業
家精神を抑圧することのないよう、年間売上高が
地域統合は、物流ネットワークの改善と関税の削減を意味します。この
スーダン人女性は、自分の作った綿をより多くの市場で販売することが
できるという恩恵を受けています
500万ランド(2013年3月の為替レートで55万米
ドル)未満の小規模ビジネスは、自動的に「BEE準
拠企業」の資格を与えられます。BEEの実施は任意
地域統合により、一般的なビジネスの環境とインクルー
的なものであり、罰金や法的制裁などの抑圧的手段
シブビジネス特有の環境がともに改善されつつある
で執行されるものではありません。相互のインセン
アフリカでは、
「東南部アフリカ市場共同体」
(Common
ティブ、すなわち各企業がBEE準拠企業である取引
Market for Eastern and Southern Africa: COMESA)
「
、東
業者やサービス提供者を優遇することによって、方
アフリカ共同体」
(East African Community: EAC)
、
「西ア
針遵守が実現します。公認認証機関のネットワーク
フリカ諸国経済共同体」
(Economic Community of West
がBEEの目標に向けた進展を評価し、BEEスコア証
African States: ECOWAS)
、
「南部アフリカ開発共同体」
明書を毎年発行しています。
(Southern African Development Community: SADC)
、
出典:
などの地域経済共同体が、
「アフリカ経済共同体」
(African
「National Black Economic Empowerment Act」(2003年法令53、DTI実施基準)
www.info.gov.za/view/DownloadFileAction?id=68031
Economic Community: AEC)
、のもとで域内貿易の促進と
各種取り組みを連携して行い、地域統合が進んでいます。
Photo:Tedcor
関税の削減、国境での入国・通関時間の短縮、および域内
物流ネットワークの改善により、商業活動の活性化が進みま
した。また、これらの経済共同体は連携し、インクルーシブ
ビジネスと関連性の高いテーマにも取り組んでいます。世界
銀行は、域内貿易障壁を段階的に撤廃することによって、新
たに200億ドルの農産物取引が発生するとともに、全体的な
生産量が拡大して、他の大陸からの輸入への依存度が低下し、
食糧の安全保障が改善されると予測しています59。
国際的な開発関係機関は、インクルーシブビジネスを開
始する企業に大きなインセンティブを与える
この報告書の分析に含まれる事例のほとんどは、資金拠
出国による資金提供や何らかの形の支援を受けています。
開発関係機関は通常、
「チャレンジ基金」や同様の資金拠
出メカニズムを通じて、企業に資金を提供しています(詳
細については第4章参照)
。そして、開発関係機関は、技
Tedcorは同社のトラック運転手たちに起業機会を与えています。BEEの
遵守によって、この廃棄物処理会社は政府からの受注を得ました
術支援の提供や官民対話の促進によって、また、他国での
インクルーシブビジネス支援に用いられた政策介入モデル
についての情報を共有することによって、さらにリスクを
軽減することができます。ビジネスへの資金提供に携わる
「開発金融機関」
(Development finance institutions:
DFI)も、優先債権者の地位を利用して、政治的リスクの
軽減に貢献することができます。
「英国国際開発省」
(DFI)
は、
評価基準の一環として、厳密な環境・社会的基準の遵守を
42
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
小規模農家統合政策に
貢献するCAADP
「包括的アフリカ農業開発プログラム」
(CAADP)は、
WFPの「前進のための食
糧購入」プログラムは、こ
のエチオピア人女性のよう
な農民が自給自足農業から
商業的農業へと移行するた
めの手助けをしています
地域経済共同体と国の円卓会議を通じて、アフリカ
全体の農業生産性向上に取り組んでいます。CAADP
は、
「アフリカ開発のための新パートナーシップ」
(New
Partnership for Africa’s Development: NEPAD)
Photo:Judith Schuler(WFP)
の農業プログラムであり、NEPADは「アフリカ連合」
(African Union: AU)のプログラムです。2003年
にAU総会で設立されたCAADPは、食糧の安全保障
と栄養の改善、および主に農業を基盤とするアフリ
カ経済における所得の拡大に重点を置いています。
CAADPは、農業生産性を少なくとも年間6%向上さ
せること、また、農業分野への公共投資を年間国家
予算の10%にまで増やすことにより、この目標の達
成を目指しています。CAADPは、地域市場の統合を
推進し、これらの市場における現地産品の競争力向
上に努めています。また、CAADPは開発関係機関と
連携も行っています。例えば、米国の「アフリカ成
長機会法」は、CAADPとの連携の結果、アフリカか
ら米国への輸出品を管理する規則を合理化しました。
出典:CAADPウェブサイト(www.nepad-caadp.net)
WFPの「前進のための食糧購入」
「国連世界食糧計画」(WFP)は、「前進のための
食糧購入」プログラムを通じて、小規模農家から直
接、農作物を調達しています。このプログラムでは、
パイロット国21か国の小規模農家に対し、信頼で
きる購入者に農作物を販売し、適正な代価を受け取
る機会を与えています。このプログラムは、2008
年9月に発足して以来、110万人以上の農民を擁す
る約1000の農民団体と連携して進められてきまし
ますます強く求めるようになっており、結果としてインク
た。このうち200以上の農民団体が20万トンを超
ルーシブビジネス・アプローチを間接的に優遇しています。
え る 食 糧 をWFPに 販 売 す る 契 約 を 結 び、11万
政府調達は、インクルーシブビジネスに直接的な恩恵を
組織管理、農業技術、品質管理、収穫後の農作物の
開発途上国では、政府調達が国家予算の大部分を占めて
らの投資は、長期的な食糧の安全保障に直接貢献し
もたらす
おり、GDPの約25~30%に相当します60。低所得者を生
産者や被雇用者として関与させるビジネスを優遇するため
6000以上の農家、倉庫業者、中小規模の貿易会社が、
取り扱いなどについての研修を受けました62。これ
ます。
出典:WFPウェブサイト(www.wfp.org/purchase-progress)
に、この政府調達を活用することができます。BEEプログ
ラムを実施している南アフリカには、アフリカにおいて最
会社「Celtel」
(現在の「airtel」
)が設立したモバイル決済サー
も広範な調達スキームがあります。このスキームでは、す
ビス「Celpay」を利用し、国家再編プログラムの一環とし
べての供給業者は、歴史的に不利な立場に置かれてきた
人々の機会創出にどのように貢献しているかを明示しなけ
て15万人の戦闘員に給料を支払いました。南アフリカでは、
「Amanz’abantu Services」が、東ケープ州の農村部住民
ればなりません。
に給水サービスを提供する政府プロジェクトを落札しまし
政府や開発関係機関は、インクルーシブビジネスが政府
とができ、追加分の代金はスマートカードで支払います。
た。利用者は1日当たり25リットルの水を無料でもらうこ
調達に参加できるよう、その能力強化にも取り組んでいま
す。タンザニアのダルエスサラームでは、自治体が廃棄物
収集と市の清掃サービスに低所得コミュニティを関与させ
自然保護・生態系サービスを優遇する国際政策
気候、海、熱帯雨林が果たす地球の生態系のバランス機
よ う と し て い ま す。 コ ミ ュ ニ テ ィ を 基 盤 と す る 組 織
能は、地球規模でしか維持できません。国連の「クリーン開
(Community-Based Organization: CBO) は 通 常、 廃
発メカニズム」
(Clean Development Mechanism: CDM)
棄物をゴミ廃棄場に運ぶために必要な車両を購入する余裕
は、地球の生態系維持への貢献を優遇する初めてのメカニ
がないため、市がこの作業を引き受けています。さらに市
ズムです。このメカニズムにより、先進工業国の企業は、開
は、CBOの能力強化と資金管理も支援しています。
発途上国において排出削減活動を実施することで、自社の
政府と開発関係機関は主要な購入者となることで、イン
素排出を削減または回収した企業は、炭素取引市場から追
た市場を提供する
コンロ、
南アフリカで「Kuyasa」が実施した設備改良プロジェ
政府や開発関係機関がインクルーシブビジネスからの購
クト、および「ToughStuff」のソーラーランプは、このメカ
入を進めることは、他の潜在的顧客にそのインクルーシブ
ニズムから恩恵を受けた事例のごく一部です。沿岸地域や
ビジネスの品質と信頼性を示す役割を果たします。2004年
熱帯雨林などの生態系を支えたり保護するその他の活動に
にコンゴ民主共和国の紛争が終結した後、政府は携帯電話
ついても、同様のシステムを確立することが可能です61。
排出削減目標の一部を達成することができます。そして、炭
クルーシブビジネスにとってのリスクを削減して安定し
加収入を得ることができます。
「Toyola」が配布した調理用
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
43
インセンティブの創出
Photo:Nic Bothma(Kuyasa)
3
炭素排出削減を優遇する
「ゴールド・スタンダード」
「ゴールド・スタンダード」は、自発的炭素取引市
場と整備された炭素取引市場の両方における質の高
い排出削減プロジェクトに適用される独立基準です。
この基準の目的は、炭素クレジットを適切で検証可
能にするだけでなく、持続可能な開発に測定可能な
貢献を果たすようなものにすることです。ゴールド・
スタンダードは、2003年に「世界自然保護基金」
「SouthSouthNorth」
「Helio International」によっ
て設定されました。追加基準は、再度広範な協議プ
ロセスを経て、
2006年に設定されました。ゴールド・
スタンダードのクレジットで排出量を取引する企業
南アフリカの黒人居住区で太陽熱温水器を提供している「Kuyasa」などの「ゴー
ルド・スタンダード」プロジェクトは、炭素排出量を削減し、さらなる社会的恩
恵を生み出しています
は、認知度の高い認証マークを表示することができ
ます。ゴールド・スタンダードは、二酸化炭素排出
量の削減と排出量取引の監視、報告、検証を行い、
第三者の監査報告を内部調査します。ゴールド・ス
タンダードのプロジェクトはプロセスの信頼性が非
常に高いため、そのクレジットは市場で非常に高く
評価されます。GIMデータベースにある3つのプロ
ジェクト(
「Toyola」
「Kuyasa」
「ToughStuff」
)は、
ゴー
ルド・スタンダード認証を受けています。
出典:ゴールド・スタンダード ウェブサイト(www.cdmgoldstandard.org)
各種基準や認証から企業は成功事例から学ぶことができる
各種の基準や認証システムにより、企業は最低限の技術
的・社会的・環境的な基準を設定、実施することができま
す。有名な「フェアトレード認証」の基準は、包括的な生
産プロセスに見返りを与えるためによく用いられます。
フェアトレード活動の目的は、開発途上国の生産者が自分
たちの製品からより多くの利益を得られるよう支援しつつ、
持続可能性を推進することです。民間の炭素取引市場は、
企業による炭素クレジットの自主的な売買を可能にし、イ
ンクルーシブビジネスを促すさらなるインセンティブを生
市場参加者の活性化により、さらなるインセンティブを生み出す
み出しています67。
者として製品やサービスを利用できるようになります。南
各種基準は、低所得消費者に品質を知らせるためにも使
低所得層の購買力を高めることにより、低所得者は消費
アフリカの社会助成金制度は、年間約130億ドルの現金を
用されます。例えば、ソーラーランプの中には、低所得者が
1700万人の受益者に直接支給しています63。エチオピアで
高い費用で購入したのに、すぐに故障してユーザーを失望さ
は、800万の人々が「生産的セーフティネット・プログラム」
せるものもあります。
「アフリカに光を」
(Lighting Africa)
の恩恵を受けています。このプログラムは、助成金を支給
プログラムの新しい品質保証マークによって、ユーザーはど
するとともに、公共事業プログラムによって雇用機会を提
の製品が信頼できるのか知ることができるようになりました。
供しています 。現金支給は、就学や医療受診など特定の
64
分野を対象として行われる場合もあります。マラウイでは、
女子に対し、学校に通うための助成金が提供されています
。このような現金支給プログラムは、医療や教育など、
65
障壁を減らし、インクルーシブビジネスのインセンティ
ブを強化するテーマ別枠組み
インクルーシブビジネスのインセンティブを強化する枠
特定のサービスの需要を創出する手段になり得ます。
組みは、企業やその他の主体を団結させ、インフラや能力
より直接的な需要拡大に貢献する「スマート補助金」
ます。
「持続可能な樹木作物プログラム」
、
「包括的アフリ
「スマート補助金」は、特定の人々に補助金によって財
カ綿栽培イニシアティブ」
(Competitive African Cotton
やサービスを提供すると同時に、特定の市場を発達させる
Initiative: COMPACI)
、
「アフリカカシューナッツ協会」
メカニズムです66。マリでは、
「家庭エネルギー開発および地
など、いくつかの枠組みが特定のバリューチェーン内にお
開発など、共通の利益を生む財に共同で投資するよう促し
44
方電化局」
(Agency for the Development of Household
いて品質を高め、小規模農家に利益をもたらすために活動
Energy and Rural Electrification : Amader)が、農村
しています。より地理的なアプローチをとっている例として、
地域エネルギーサービス会社により提供されるサービスを
少なくとも2つの主要なサハラ以南アフリカの地域開発グ
拡大するため、最大70%の補助金を提供しています。企
ループが、農業バリューチェーンに官民の投資を呼び込ん
業の利益が20%を超えると、補助金は削減されます。こ
でいます。
「タンザニア南部農業成長回廊」と「ベイラ農
うして政府はエネルギーサービスの市場の構築を支援して
業成長回廊」は、低所得コミュニティの小規模生産者を主
います。「スマート(賢明な)」と呼ばれる所以は、ひとた
流経済に組み込むことを具体的な目標としており、それぞ
び対象の市場が成熟すると自動的に補助金が削減されると
れタンザニアとモザンビークの政府を国際的な投資家や開
いう点にあります。
発関係機関と結び付けるべく活動しています68。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
「フェアトレード・アフリカ」の基準は、このガーナの女性のような農業協同組
合のメンバーが、収入を増やし、生活の質を改善できるよう手助けをしています
インタビュー
リバン・エガル氏
Liban Egal
Photo:Liban Egal
CEO, First Somali Bank(モガディシュ)
2012年5月、リバン・エガル氏はソマリ
ア で、20年 に 及 ぶ 戦 争 後 初 の 銀 行「First
Somali Bank」を開業しました20年以上にわたる海外暮ら
しを経て祖国に戻ってきたこのソマリア人起業家は、父親の
印刷会社の運営を行うとともに、市場調査会社、無線ブロー
ドバンド・プロバイダー、および携帯電話を介した電子マ
Photo:Nathalie Bertrams
ネー・サービスも立ち上げました。
アフリカの農民70万人に基準を与える
「フェアトレード・アフリカ」
2011年、
「フェアトレード・インターナショナル」
ネットワーク傘下の「フェアトレード・アフリカ」
に所属する生産者組織の数は300を超え、前年比で
25%増加しました。2010年には、このグループの
会員、すなわち29か国のアフリカ諸国に暮らす70
万人の農民や労働者は、フェアトレード製品の売上
として合計1億7500万ドルを獲得しました。また、
生産者は1800万ドル以上のフェアトレード奨励金
を受け取り、これはコミュニティのプロジェクトに
投資されました。
ブルキナファソでは2011年、多国籍の化粧品会
社「ロクシタン」が、500トンを超えるシアバター
をフェアトレード価格(現地の通常市場価格の約2
倍)で購入しました。その結果、供給業者組合とそ
の会員である農村部に暮らす女性1万5000人は、
120万ドルの収益を得ました。この収益の約2%が、
相互医療保険プログラムなどのコミュニティ開発プ
ロジェクトに使われました。
出典:
「Annual Review 2011」フェアトレード・アフリカ(2012年)
大企業のライセンス供与は、小企業のインクルーシブビ
ジネス設立を可能にする
「Aspen Pharmacare」は、
「グラクソ・スミスクライン」
「ベーリンガーインゲルハイム」「ブリストル・マイヤーズ
スクイブ」をはじめとするいくつかの大手の世界的製薬会
社 か ら 任 意 ラ イ セ ン ス を 取 得 し ま し た。「A to Z
Textiles」は、殺虫剤処理済の蚊帳を生産するジョイント
ベンチャーの一環として、
「住友化学」から使用料なしの
技術移転を受けました。これらの任意ライセンス契約には、
製品の製造と流通に対する支援が含まれる場合もあります。
アフリカの多くの地域では法制度や規制がビジネスを促進す
る水準に達していないということをよく耳にしますが、ソマ
リアでは規制が一切ないことがビジネスに不確実性をもたら
しているようです。こうした課題にどのように対処していま
すか?
ある面、規制が一切ないことによって、ソマリアでの起業は
非常に容易になっています。たくさんの書類に記入する必要も
なければ、対応しなければならない官僚制度もありませんし、
高額な登録料を支払う必要もありません。一方で、強制力の
ある規則や契約法がないということは、ビジネスが普通に機能
しないということを意味します。例えばFirst Somali Bankは、
債務不履行が発生した場合
「……規制はシンプ に貸付金の返済や契約の実
ルで、かつ市場機能 行を保証できないため、誰に
対しても信用を供与すること
を促進するものでな ができません。正規経済を
発展させる規制の枠組みが
ければなりません」
絶対的に必要ですが、規制は
シンプルで、かつ市場機能を促進するものでなければなりま
せん。あまりに規制が多すぎると、ビジネスは地下に潜ってし
まい、非正規経済が維持されることになります。これは誰の利
益にもなりません。
ビジネス成功のために、法制度や規制に何を求めますか?
現在、政府機能が徐々に立て直されつつあるので、政策立
案者はビジネスがどのように機能するのかということについて
ある程度理解する必要があります。現在ソマリアに戻ろうとし
ている人々は、経済が高度に統制されていたシアド・バーレ時
代にソマリアで働いていた人たちです。新しい枠組みを作らず
に単に古い制度を復活させただけでは、新たな投資が生まれ
る見込みはまずありません。もうひとつ例を挙げましょう。現在、
この国の税率は非常に低い状態にあります。港から物資を輸入
する際、積荷の価格が1000ドルであろうと10万ドルであろう
と、量に応じて税金が課せられます。これはばかげたことであ
り、社会サービスや警察業務などに使えるだけの十分な税金
を政府が徴収できるよう、この制度を改める必要があります。
インクルーシブビジネスへの資金提供を促すうえで有益な政
策は何でしょうか?
機能する行政サ−ビスと社会サービスが必要です。私はイン
クルーシブビジネスの概念を強く支持していますが、この概念
を推進する組織体、すなわちアフリカ全体にまたがる機関や国
際機関、または何らかの国家連合が必要となります。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
45
インセンティブの創出
Photo: Alex Morgan(Rainforest Alliance)
3
さらなる機会
インクルーシブビジネスに特化したインセンティブは、
サハラ以南アフリカ諸国の政府においては、依然として比
較的少ない状態にあります。包括的なかつ社会性のあるイ
ンクルーシブビジネスを優遇する、より多くの、そして有
効な措置を導入することによって、大きくなりがちな低所
レインフォレスト・アライアンスは、持続可能な農業の基準を提供して
います。このガーナの小規模農家は、今では国際市場に、より有利に参
加できるようになりました
得コミュニティでのビジネス運営コストを抑えることがで
きます。これにより、貧困緩和に向けた市場主導型のアプ
ローチをより大きく成長させることができ、ミクロレベル
でインクルーシブビジネスを成長させる方針が具体的な意
味を持つこととなります。
政府は民間セクターのイノベーションを受け入れるべ
き
低所得者を組み込んだ革新的なビジネスモデルを確立し
開発関係機関は、インクルーシブビジネスに対し、さら
ようという企業の取り組みは、政府が営業許可の付与を拒
ルーシブビジネスに関連する活動を活発化するべき
ります。新しいビジネスモデルに対してより柔軟な立場を
に多くの技術的な支援や政策対話の場を提供し、インク
むなど、さまざまな規制などによって抑圧されることがあ
開発関係機関の活動に占めるインクルーシブビジネス・
とること、また民間企業の関与をより積極的に受け入れる
プログラムの割合は非常に小さく、他の活動がインクルー
ことによって、インクルーシブビジネスに対する障壁を大
シブビジネスの阻害要因を生む場合もあります。例えば、
きく削減することができます。
開発関係機関が蚊帳、家族計画用品、または肥料などを無
料で提供することにより、現地市場を弱体化させてしまう
可能性もあります。また開発関係機関は、直接的な資金提
研究機関は包括性の尺度を作ることができる
ビジネスが真に包括的であるかどうか、またどの程度包
供以外の方法で、インクルーシブビジネスにインセンティ
括的なのかを、外部から判断することはしばしば困難です。
ブを与える方法についても検討するべきです。例えば、よ
確かに低所得層のみをターゲットとする企業もありますが、
り良いインクルーシブビジネスに関する政策について地元
その数は多くはありません。多くのビジネスは、低所得層
政府と協議を行う、政府との対話プロセスを主導すること
を対象とした調達、関与、雇用、または提供といった活動
により企業を支援する、テーマ別の枠組み・プログラムの
を、ビジネスの一部として行っています。研究機関は包括
設立と運営を支援する、企業にサービスを提供する現地仲
性の指標や同様のツールを作ることによって、企業の低所
介者を発達させるための資金を提供する、技術的支援を提
得層への貢献に対する認識を高めることができます。
供する、といったことです。これは、既存の国家プログラ
ム(民間セクター開発に重点を置いたプログラムなど)を
世界的なインクルーシブビジネス・プログラムに統合する
ことによっても実現することができます69。
ロビー団体は、インクルーシブビジネスにインセンティ
ブを与える政策転換を提唱することができる
ビジネス団体、市民社会組織、大学は、ビジネス運営の
新たな形についての議論を盛り上げるうえで、主導的な役
政府は、インクルーシブビジネスのインセンティブを主
割を果たすことができます。官民の連携だけでなく、エネ
要な政策に組み込むことができる
ルギー、農業、金融サービス、医療など産業間の分野をま
インクルーシブビジネス・アプローチは、経済開発と人
たがった連携は、特に強力なものとなり得ます。この種の
間開発を結び付けることにより、包括的な成長を実現しま
共同の取り組みは、企業が1社で取り組むよりも新しい経
す。UNDPの「包括的な市場の開発」
(IMD)や多国間ドナー
済価値を生み出すことにつながり、低所得者のニーズを伝
アプローチ「貧困者に益する市場システムの構築」などの
えるうえで、より信頼性があります。
枠組みは、経済開発政策と人間開発政策を意図的に統合す
ることが可能であることを示しています。例えば、包括戦
略は政府調達プロセスに組み込むことも可能です。
46
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Elaine Reinke(WFP)
Photo:Sustainable Fisheries Programme
ウォルマートは、このジンバブエの養殖業者など、持続可能かつ公正な
方法で魚を仕入れるために、市民社会組織の「Sustainable Fisheries
Partnership(持続可能な漁業パートナーシップ)」と連携しています
国連世界食糧計画(WFP)は、現地の監視・評価チームがプロジェクト
の評価を行えるよう、研修を実施しています。現地の評価能力育成は、
各種認証を実現するために不可欠です
企業は、社内および納入業者のインセンティブを生むこ
統一された基準や認証は、関係者の認識を向上させる
企業は、低所得層をビジネスに組み込むインセンティブ
乱を招いています。これらを統合することによって、消費
を含んだ行動規範や戦略を導入することが可能です。例え
者の高い認識を促すことができます。欧州連合では、オー
ば、
「モンデリーズ・インターナショナル(旧クラフトフー
ガニック生産の最低基準を示す統一された認証が導入され
ズ)
・ヨーロッパ」は、2015年までにすべてのコーヒー
ました。いまだ、異なる基準に基づいたさまざまなオーガ
豆を持続可能な方法で仕入れるようにすることを約束しま
ニック製品認証が存在していますが、現在、消費者はこの
した70。この目標を達成するために、同社は現在、小規模
統一された認証マークでオーガニック製品を見分けられる
農家や開発関係機関と緊密に連携し、サプライチェーンの
ようになりました。同様のアプローチにより、公正な製品
改善と農家に対する公正な取引の保証に取り組んでいます。
や倫理的な製品の市場の拡大を促すことができます。コー
2010年には、もうひとつの大手多国籍企業である消費財
ヒー産業の国際的な枠組み「4C Association」と、熱帯
メーカーの「ユニリーバ」が、顧客数を10億人超にまで
雨林の保護に尽力する国際的な市民社会組織「レインフォ
伸ばしつつ、環境フットプリントを半減し、すべての農産
レスト・アライアンス」は、レインフォレスト・アライア
物原料を持続可能な方法で調達するという目標を定めまし
ンスの認証保持者が4Cの承認プロセスを経ずに4Cライセ
た 。この目標を達成するために同社は、環境にやさしい
ンスを取得できるようにしました72。さらに、メディアや
調理用コンロなどの持続可能な製品を活用した、低所得層
標準化機構は、既存の認証に対する認知度向上に貢献する
を対象とするいくつかの革新的なプロジェクトを立ち上げ
ことができます。認知度向上のための共同出資や共同マー
ました。「ウォルマート」は、持続可能な農業を実現する
ケティングは、すべての関係者にとって有益です。
とができる
71
現在、多種多様な認証や取り組みの存在が、消費者の混
取り組みの一環として、100万人の中小規模農家から調達
した10億ドル相当の食品を販売し、100万人の農民を対
象に訓練を行って、同社と契約している中小規模の農作物
求められる開発途上国の監視・認証機関
開発途上国の現地に監視・認証機関が存在しない場合、
生産者の収入を10~15%増加させることを目指していま
監視・認証制度の導入は高コストになります。実際、多く
す。これらのベンチマークは、社内においてイノベーショ
のサハラ以南アフリカ諸国には、二酸化炭素取引、フェア
ンと投資を促すインセンティブを生むとともに、競合他社
トレード、オーガニック生産、その他の基準の遵守を監視
にも同様の取り組みを促します。
することのできる現地機関がありません。監視・認証サー
ビス提供者は、開発途上国でのサービスを拡大する必要が
あります。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
47
4
投資の実現
インクルーシブビジネスではしばしば、経営が安定するまでの大きな初期投資が必要
とされます。地元市場向けの米を栽培するガーナの企業「GADCO」の事例は、イン
クルーシブビジネスの設立に関するこうした障害の存在を示しています。GADCOは
堅実なビジネスモデルを持っていたにもかかわらず、現地で得られる融資の利率があま
りにも高かったため、農場と研修施設を建設するために、外部資本による投資を必要と
しました。インクルーシブビジネスのための資金は、ビジネスを興す組織内から、また
は外部の財源から提供されます。起業家が利用できる資金・財源は、組織形態によって
大きく異なります。
大企業レベルにおいては、通常の場合、法人が持つ
零細企業レベル、特に非正規ビジネスの場合において
財団からの資金を含む内部財源が、助成金、借入金、
は、
マイクロファイナンス機関とバリューチェーン・パー
または株式発行という形式での外部資金調達によって
トナー(例えば農作物の購入者など)がしばしば信用を
補完されます。
供与します。
中小企業レベル(ソーシャルビジネスを含む)にお
いては、商業銀行、開発金融機関、インパクト・イン
ベストメント基金、またはより規模が大きいビジネス
パートナーによって資金が提供されます。
48
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Iggy Bassi(GADCO)
種 か ら 食 品 ま で、 あ ら ゆ る 農 作 物 を 提 供 す る
GADCOの包括的なビジネスモデルは、大きな
投資を必要とします。「ペイシェント・キャピタ
ル」によって、インクルーシブビジネスは長い
資本回収期間と高いリスクに対処することがで
きます
Photos:Iggy Bassi(GADCO)
事例研究:GADCO
小規模農家と連携するための
融資の獲得
GADCOは適切な資金提供パートナーを得たおかげで、地元のブランド米の栽培に
成功し、事業を拡大し続けています
「 世 界 農 業 開 発 会 社 」(Global Agri-Development
ガーナでは、基準貸出の年間利率が30%と非常に高く、
Company: GADCO)は、ガーナを拠点とする総合的
設立時に200万ドル以上の資本が必要であることを考える
な農業食品会社です。同社は、ボルタ州中部地域の小規
と、外部からの支援なしにビジネスを開業することは不可
模農家を農業食品と農産物加工のバリューチェーンに組
能です。このため、GADCOは当初、金銭的・社会的・環
み込むとともに、信頼性のある食品を低価格でアフリカ
境的利益を求める銀行やインパクト・インベスターから財
の消費者に提供することを目指しています。GADCOは、
務支援を受けました。
「アキュメンファンド」が150万ドルの
最初の農産物として米を選び、このモデルの展開を始め
株式投資を行い、
「サミット・キャピタル」と「アフリカ農業
ました。同社はまず、中核となる営利農場を設立し、そ
貿易投資基金」
(Africa Agriculture and Trade Investment
こで地元の小規模生産者を対象に、持続可能な農業の方
Fund: AATIF)も資本を提供しました。AATIFは、ドイツ
法、農機具、収穫量の高い種、肥料、灌漑設備などに関
政 府、
「ドイツ復 興 金 融 公 庫 」
(Kreditanstatlt fur
する研修を行いました。2012年に事業を開始した同社
Wiederaufbau: KfW)
、ドイツ銀行が資金を提供する官民
は、以後5年間で1万1000人以上の農民とその家族を
ファンドであり、インクルーシブビジネスにペイシェント・
巻き込んで、各農家の収入を3倍にすることを目指して
キャピタルを提供しています。さらに、インパクト・イン
います。
ベスターの「Root Capital」はGADCOに調達融資を提供
しており、これによってGADCOは農家に対し、初期投資
にかかる費用を事前に支払うことが可能になりました。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
49
4
投 資 の 実 現
図16:
各国における銀行融資へのアクセス(2006~2010年)
80%
銀行融資やクレジットラインを
与えられている企業の割合(%)
70%
60%
50%
40%
アフリカ諸国
他の地域の国々
30%
20%
10%
0%
国
出典:
「Financing Africa: Through the Crisis and Beyond」アフリカ開発銀行(2011年)
課題
インクルーシブビジネスは、困難な低所得市場に挑み、
ために必要な最低限の情報を銀行に提出することができま
新しいビジネスモデルを試すため、多くの場合、他のビジ
せん。しかし、正規部門の中小企業も同じような課題に直
ネスに比べて投資を獲得するのに苦労します。その結果、
面しています。アフリカでは会計基準が緩いか、全く存在
従来型の銀行や投資家はインクルーシブビジネスを高リス
しません。信用調査機関も存在しないか、あったとしてもあ
クとみなすため、利率が上がり、株式発行による資本の獲
まり機能していません。リスクキャピタルは借入金よりもさ
得も困難となります。したがってインクルーシブビジネス
らに確保が困難です。世界の他の地域とは違い、サハラ以
は、
「ペイシェント・キャピタル」を必要とします。ペイシェ
南アフリカでは、起業支援プログラム、ベンチャーファンド、
ント・キャピタルとは、従来の投資に比べてリスク許容度
プライベート・エクイティ、エンジェル投資家は、資金供給
が高く、収益期待度の低い、比較的長いタイムスパンで投
において非常に小さな役割しか果たしていません75。
資される資本のことです 。こうした忍耐に対する見返り
73
は、未成熟市場での利益の拡大、投資に対する評判の向上、
零細企業は、マイクロファイナンス融資やビジネスパー
ステークホルダーとの関係の強化という形で得られます。
トナーからのバリューチェーン融資を受けることができま
す。他方、大企業は通常、内部資本を活用するか、投資家
債権や信用貸しへのアクセスは、サハラ以南アフリカで
や銀行から資金を調達します。しかし「空白の中間層」
、
特に問題となっています。世界銀行の企業調査によると、
つまり1000ドルから10万ドル程度の資金を必要とする企
アフリカ企業の44.9%が融資へのアクセスを事業活動の
業への投資が不足しています76。このため、多くの有望な
大きな障害とみなしています74。融資やクレジットライン
インクルーシブビジネス構想が実現されずにいます。国際
が与えられている事業体の割合は平均でわずか23.1%と、
金融公社と「McKinsey Global Institute」が実施した調
他地域の開発途上国に比べて著しく低い状態です(図16)。
査によると、アフリカの中小企業における資金調達不足の
総額は、1400~1700億ドルとなっています77。
アフリカの多くの中小企業や零細企業は非正規分野で発
達しているため、法的文書や財務諸表など、融資を受ける
50
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Dr. Wiebe Boer
アフリカの起業家精神を支える
「トニー・エルメル財団」
「トニー・エルメル財団」
(Tony Elumelu Foundation:
TEF)は、ナイジェリアの実業家トニー・O・エルメル
氏によって2010年に設立されたアフリカの非営利組織
です。この財団は、アフリカ全域におけるビジネス・リー
ダーシップと起業家精神の促進を目的としています。
例えば、
「アフリカ市場インターンシップ・プログラム」
(African Markets Internship Programme: AMIP)は、
アフリカや他地域の一流ビジネススクールのMBA生た
ちと、アフリカ全域のアフリカ人が所有する革新的な中
規模ビジネスとの橋渡しをしています。また同財団は、
「TEF」がタンザニアのMtanga Farmsで行っているようなインパクト・インベス
トメントは、社会奉仕と営利事業との隔たりの解消に貢献しています
主要な開発分野において金融・社会・環境面でプラス
の影響をもたらす革新的なアフリカのビジネスに投資
しています。また、アフリカにおけるインパクト・イン
ベストメントの先駆者として、アフリカ全域で農場作り
成果
に取り組むとともに、この分野におけるオピニオンリー
「インパクト・インベストメント」は比較的新しい概念で、
出典:トニー・エルメル財団ウェブサイト(www.tonyelumelufoundation.org)
ダーとしての役割を果たしています。
株式や借入金といった従来型の資金調達手段を社会的目的の
ために用いるものです。これまで、アフリカのインクルーシ
ブビジネス・プロジェクトを支援するインパクト・インベス
ターのほとんどは、国際的な開発金融機関、民間財団、投資
台頭しつつある現地のインパクト・インベスター
アフリカでは新しいタイプの個人富裕層が台頭しつつあ
ファンドでした。しかし、現地のインパクト・インベストメン
ります。こうした人々の多くは、自らの富を祖国のために
ト事情が進展しつつあります。
「チャレンジ基金」は、インク
投資したいと考えています。過去10年間に、著名な実業
ルーシブビジネス・モデルの促進を目的として、助成金を提
家たちが財団を設立し、アフリカの起業家を支援するため
供しています。地元の銀行は中小企業に対する融資を増やし
に多額の寄付を行ってきました。その一例が、「トニー・
ており、マイクロファイナンス機関は零細ビジネスを対象に
エルメル財団」と「ダンゴート財団」です。
サービスを提供しています。また、送金は、この地域の中小
零細企業への資金提供において重要な役割を果たしています。
中小企業への資金提供を拡大している商業銀行
インパクト・インベストメントは社会的な目的と商業的
間で中小企業への貸付金を269%増額し、西・中央アフリカ
例えば、トーゴに拠点を置く「Ecobank」は、この3年
な目的を結び付ける投資手法である
の6か国に対する合計融資残高が6億300万ドルに達しまし
インパクト・インベストメントは、利益を得ながら、定量的
た81。この貸付は必ずしもインクルーシブビジネスを対象と
な社会的・環境的影響を生み出すことを意図して、企業、組織、
したものではありませんが、多くの革新的なビジネスモデル
または基金において行われる投資です 。この投資は、あら
が融資を受けています。例えば、ケニアのリテール銀行
ゆる資産クラスにおいて行われ、プライベート・エクイティや
「Equity Bank」と「K-Rep Bank」は、数千の小規模農家の
ベンチャーキャピタルの他、借入金も含みます。インパクト・
収 入 を 拡 大 さ せ た「 ケ ニ ア 農 産 品 取 引 所 」
(Kenya
78
インベスターには、
ベンチャーキャピタル基金やプライベート・
Agricultural Commodity Exchange: KACE)に資金を提供
エクイティ基金、開発金融機関、財団、機関投資家が含まれ
しました。Equity Bankは農家に信用を供与し、K-Rep Bank
ます。社会的な目的と商業的な目的のバランスは、投資家が
は事業立ち上げ段階における財務保証を提供しています。
持つ背景や使命によって異なります。例えば、財団は金利な
しで資金を提供するかもしれませんが、プライベートエクイ
テクノロジー、特に携帯電話技術によって、アフリカの
ティ基金は利益を期待する傾向があります。インパクト・イ
銀行やその他の金融機関は、規模の経済を促進し、中小企
ンベストメントは、今後15年間にわたって、インクルーシブ
業への貸付金を容易に増やすことができるようになりまし
ビジネスの主要な財源となることが予想されます。コンサル
た。この「規模の経済」により、銀行はリスク閾値を上げ
ティング会社「Dalberg」によると、インパクト・インベスター
ることができ、新たな金融サービスの提供コストを削減す
は、今後5年間に西アフリカだけで32億ドルの投資を予定し
ることができます82。また、ケニアのEquity Bankや南ア
ています 。
「Global Impact Investing Network」が最近実
フリカのStandard Bankが始めたような無店舗バンキン
施した調査によると、99の回答者のうち34%が投資をアフリ
グによって、中小企業や零細起業家向け融資に利用できる
カに集中させていると答えています 。
資本が拡大しつつあります。
79
80
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
51
4
投 資 の 実 現
イノベーションのための資金を提供する
「アフリカ企業チャレンジ基金」
(AECF)
「アフリカ企業チャレンジ基金」(AECF)は、ア
フリカのインクルーシブビジネスを支援するために
創設された基金です。この1億9000万ドル規模の
民 間 基 金 は、「 オ ー ス ト ラ リ ア 国 際 開 発 庁 」
(AusAID)
「デンマーク国際開発庁」
、
(Danida)、
「英
国国際開発省」
(DFID)
「国際農業開発基金」
、
(IFAD)、
「オランダ外務省」(NMFA)、「スウェーデン国際
開発協力庁」(Sida)の支援を受けています。この
基金は、すべてのアフリカ諸国から提案を募り、ひ
とつの賞につき25万ドルから150万ドルの助成金
を提供します。2008年の創設以来、同基金は14度、
提案を募り、アグリビジネス、再生可能エネルギー、
気候変動への適応、農村部の金融サービス、および
メディアと情報といった分野における新たな投資を
Photo:AECF
支援しました。AECFはこれまでに、アフリカ全域
AECFの受益者のひとつである「Mtanga Farms Limited」は、タンザニアの小
規模農家のために、30年間で4つのジャガイモの新種を開発しました
22か国において合計133件のプロジェクトを支援
しています。
出典:AECFウェブサイト(www.aecfafrica.org)
開発関係機関は、チャレンジ基金によってイノベーショ
マイクロファイナンスは、顧客や生産者に金融サービス
チャレンジ基金は、コンペによって民間企業に公的資金
調達ニーズを緩和する
ンを促進する
を与える基金であり、プロジェクトの質や予想されるイン
を提供することにより、インクルーシブビジネスの資金
マイクロファイナンス機関(micro-finance institutions:
パクトに応じて助成金を提供します。チャレンジ基金はビ
MFI)は、平均投資規模50~1000ドル程度の零細企業や
ジネスに対し、特定の社会的および環境的問題に取り組む
個人起業家に重点を置いてサービスを提供しています。
インセンティブを与えます。通常、チャレンジ基金が提供
MFIは、供給業者、消費者、流通業者にこのように資金を
するのはマッチング・グラントで、全投資額の少なくとも
提供することによって、インクルーシブビジネスを間接的
半分を対象となる民間企業が拠出します。公的財源からの
に 支 援 し て い ま す。MFIの ア フ リ カ 向 け 融 資 の 総 額 は
資金獲得はしばしば非常に長いプロセスとなり、事務手続
2011年に72億ドルに達し、融資対象者は合計570万人で
きにかなりの時間と費用がかかる場合があります。しかし、
し た83。 ケ ニ ア で は、 ソ ー ラ ー テ ク ノ ロ ジ ー 企 業 の
このような基金から資金を獲得した事業体は多くの場合、
「ToughStuff」が地元のMFIと連携、マイクロクレジット
別の資金調達も非常に容易になります。
を活用して支払期間を延長することによって、消費者が
ソーラーランプを購入することを可能にしました。
バリューチェーン・プログラムは、ビジネス環境を強化
するバリューチェーンの開発に資金を提供する
開発関係機関は、提供する支援が市場を育成とし、持続
可能であるように、バリューチェーン・アプローチをます
ます重視しています。バリューチェーン・プログラムは、
バリューチェーン上の空白を埋めることにより、民間企業
が持続可能な方法で介入できるよう、仲介し、投資を行い
ます。こうして低所得市場への参入コストを削減すること
により、インクルーシブビジネス事業者に間接的な資金提
供を行っています。
52
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:ASNAPP-Ghana、TRIAS-Ghana
国境を越えたアグリビジネスのための
「AFIMキャタリティック基金」
UNDPの「アフリカの包括的な市場の育成プロ
グラム」
(AFIM)のキャタリティック(触媒)助
成金は、所得や雇用の創出と食糧の安全保障の改善
を通じてMDGsを推進するアグリビジネスおよび
アグロインダストリー分野のバリューチェーン開発
プロジェクトに資金を提供します。NGOは、国境
を越えた、または地域を限定したバリューチェーン
の活性化、民間投資の呼び込み、または地元組織の
支援を担う「プロジェクト推進者」として、助成金
を申請することができます。例えば、「サヘル地域
西アフリカの「ASNAPP玉ねぎプロジェクト」は、2012年に
キャタリティック助成金を受けたプロジェクトのひとつです
玉ねぎ生産性・市場強化プログラム」は、ガーナと
ブルキナファソの2500人の農民やバリューチェー
ン関係者と協力し、玉ねぎ農家の収穫量と生産性の
向上、および収穫後の損失の削減に取り組んでいま
す。このプログラムの参加者は、農業改善について
の研修も受けます。
出典:
「Catalytic Funding for Cross-Border Regional Agri-Food Value Chain Projects」
AFIM(2012年)
イノベーションを促進するモバイル・テクノロジー
送金は、草の根レベルのインクルーシブビジネスにペイ
ひとつである「Equity Bank」と提携し、「M-Kesho」と
世界銀行の推定によると、2011年のサハラ以南アフリ
シェント・キャピタルを提供する
ケニアの「Safaricom」は、アフリカの大手金融機関の
呼ばれる貯蓄・マイクロローン口座を設定しました。この
カ向け送金の合計額は220億ドルで、2014年までに270
プログラムのもと、零細起業家は1ドルから60ドルまで、
億ドルに達する見込みです85。エリトリアやカーボベルデ
30日間の融資を申請することができます。これは、非正
などの国では、送金がGDPの3分の1以上を占めていま
規ビジネスがしばしば直面する資金繰りの問題を克服する
す86。送金は、インクルーシブビジネスを運営する現地の
うえで極めて有効です84。このような手段は、資金調達の
起業家や中小企業にとって、重要な資金源となっています。
隙間を自ら埋めなければならないインクルーシブビジネス
事業者にとって、負担の軽減となります。例えばアグリビ
ジネス企業は、契約栽培農家に種やその他の原材料を掛け
Photo:Tendai Pasipanodya
売りし、収穫後に代金を回収します。
若手起業家を奨励する
「ユース・トゥ・ユース基金」
「ユース・トゥ・ユース基金」は、若者のビジネ
ス設立を助けるために、東部、および西部アフリカ
の青少年団体を対象に資金提供と研修を行っていま
す。この基金は「若年雇用ネットワーク」(Youth
Employment Network: YEN) の プ ロ グ ラ ム で、
国際労働機関(ILO)が主導し、国連、ILO、世界
銀行が共同で実施しています。青少年団体はこのプ
ログラムのチャレンジ基金からの資金提供によって、
青少年協同組合を設立することができます。現在ま
でにこの基金によって、450を超えるビジネスの発
足や支援が実施されました。
出 典:ILOウ ェ ブ サ イ ト(www.ilo.org/public/french/employment/yen/whatwedo/
「ユース・トゥ・ユース基金」は、若者たちが地元のコミュニティ
でプロジェクトを実践し、ビジネスを立ち上げるために必要とする
手段を与えるものです
projects/y2y.htm)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
53
投 資 の 実 現
Photo:Technoserve
4
国際的なNGO「TechnoServe」は、地元企業が業務プロセスを国
際基準に適合させ、投資の受け入れ態勢を整えられるよう支援を行っ
ています
さらなる機会
インパクト・インベスターの間では、サハラ以南アフリ
カにおけるインクルーシブビジネスへの投資に対する関心
が高まっています。いま欠けているものは、この関心と地
元の需要を適切に結び付けるインフラです。
保証基金はインクルーシブビジネスのために民間資金
を活用することができる
融資保証、ポートフォリオ保証、債券保証は、ビジネス
においてよく活用される手法です。政府、開発関係機関、
開発金融機関は、インクルーシブビジネスのために同様の
インパクト・インベスターなどの投資家とビジネスを結
手法を導入することが可能です。インクルーシブビジネス
ますます多くの資金がアフリカに流入し、そのうちのか
なリスクを共有することができます。
び付ける仲介機関の必要性
に各種保証を提供することにより、官民の主体は回避不能
なりの額が社会的な影響を生み出すために配分されている
にもかかわらず、インパクト・インベスターやその他の投
資家は、会計・報告基準を満たし、堅実なビジネスプラン
や有望なビジネスモデルの提供に関する要件をも満たすビ
ジネス投資ファンドを立ち上げることができる
これまでのところ、インパクト・インベストメントは主
ジネスをうまく見いだせずにいます。現地のベンチャー
として開発金融機関、財団、専門的な投資ファンドによっ
キャピタル、インキュベーション機関、エンジェル投資家
て実施されています。インパクト・インベストメントを一
は、投資する価値のあるインクルーシブビジネスの特定に
般の投資銀行や資産運用会社に導入することによって、イ
貢献することができます。これらの機関は、有望なベン
ンクルーシブビジネスに、より多くの資金を呼び込むこと
チャー事業が外部資本を受け入れられるよう事業力を強化
ができます。そうすれば、金銭的利益をそれほど重視しな
し、各種の申請・報告手順の遵守に協力し、商業的、そし
い社会投資家はビジネス開発の初期段階に集中することが
て社会的な影響に対する期待に応えられるよう支援するこ
できるため、新規ビジネスは利益を求める投資家の期待に
とができます。オンライン市場やビジネスプラン・コンペ
応え得る規模の拡大、専門性、潜在的利益を実現すること
は、起業家たちに自らのアイデアを紹介する場を与えます。
ができます。
開発関係機関と市民社会組織はインクルーシブビジネ
社会的影響を測定するために、さらなる支援が必要
開発途上国で成長したビジネスはしばしば、持続可能な
される社会的影響についての確実なデータを必要とします。
ビジネスモデルを構築して、国際基準を満たし、会計や報
しかし、多くのインクルーシブビジネスには、十分な測定・
告に関する投資家の期待に応えるために、研修や助言サー
報告システムを確立する能力がありません。大学、ビジネ
ビスを必要とします。このことを踏まえて、英国国際開発
ススクール、その他の現地のサービス提供者は、社会的影
省(DFID)の「ビジネスイノベーション・ファシリティ」
響の測定方法に関する研修や教育を実施し、必要となるシ
は、 ビ ジ ネ ス に こ の よ う な 支 援 を 提 供 し て い ま す。
ステムを確立できるよう支援することが可能です。
スが投資の受け入れ態勢を整えるための支援ができる
「TechnoServe」は、経営面やその他専門的な助言を提供
する市民社会組織の一例です。投資の受け入れ態勢が整っ
たプロジェクトを求めるインパクト・インベスターの需要
を満たすために、この種の支援がさらに求められます。
54
国際的な資産運用会社や投資銀行はインクルーシブビ
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
インパクト・インベスターは、自らの投資によって達成
Photo:MyC4
インタビュー
Photo:Dr. James Mwangi
ジェームズ・ムワンギ氏
Dr. James Mwangi
CEO, Equity Bank(ケニア)
「Equity Bank」はケニアのリテール銀行
です。超低所得層を中心に800万人以上の
顧客を抱えるこの銀行は、ケニアの銀行の中で最大の顧客基
盤を誇っています。
アフリカのインクルーシブビジネスにとっての資金調達の可
能性について、現状をどのように評価しますか?
「MyC4」は、ナイロビで古着を売るこの女性のようなアフリカの中
小零細企業への個人の投資を可能にするオンライン・プラットフォー
ムです
この10年間で状況は大いに改善されたと考えています。アフ
リカには、有望で持続可能な素晴らしい投資機会がたくさんあ
りますし、その結果、資金調達の可能性も大きく成長しています。
商業的な成功を生み出すことに投資の重点が置かれるべきです。
過去5年間に、チャレンジ基金とインパクト・インベスター
オンライン・プラットフォームはインクルーシブビジネ
がインクルーシブビジネスへの投資のあり方を変えたようで
スに個人の投資を直接導くことができる
す。この点についてどのように解釈しますか?
クラウドソーシング・プラットフォームはすでに、個人
チャレンジ基金とインパクト・インベスターは、アフリカ
における投資に全く新しい側面
「より柔軟な資金 をもたらしました。これらは非
調達方法を考案 常に革新的な方法で銀行を補完
し、特に新たなビジネスモデル
する時が 来たの の試行や検証といった重要なビ
かもしれません」 ジネス段階の支援で、大きな役
割を果たします。チャレンジ基
金とインパクト・インベスターは、インクルーシブビジネス
が機能し、実行可能であるということを証明しています。
投資家から資金を集める機会をさまざまなプロジェクトに
提供しています。オンライン資金調達プラットフォーム
「MyC4」は、過去3年間にアフリカ数か国における1万
1000の小規模ビジネスに2200万ドルの融資を集め、5
万2000件の雇用維持に貢献しました87。また、アフリカ
への投資を検討している個人投資家の多くは社会的目的に
も関心を持っており、このような投資家に的を絞ったプ
ラットフォームを確立することによって、インクルーシブ
ビジネスの資金調達を支援することができます。
Photo:Mary Thibaut
「空白の中間層」を埋めて中小企業の資金調達をより容易に
するために、何をすればよいのでしょうか?
確かに、零細企業と大企業の間に位置する中小企業は資金調
達に苦労しています。この問題は、正規と非正規市場という二
分法の問題と切り離して考えることはできません。非正規市場
と異なり、正規市場はバリューチェーンのエコシステムの中で
発達します。一般的に、非正規市場では、バリューチェーン関
係者の相互の結び付きがはるかに小さいか、あるいは少なくと
も正規市場のような方法で結び付きを活用することができませ
ん。より柔軟な資金調達方法を考案し、
「準正規」市場、すな
わち正規化を遂げつつあるが、あと一押しを必要としているビ
ジネスに向けた橋渡しを始める時が来たのかもしれません。
投資家と起業家を結び付けるために、どのような仲介機関が
必要でしょうか?
「Equity Bank」は、手ごろな融資や保険を提供することにより、イン
クルーシブビジネスの資金調達において低所得層の顧客を支えています
インクルーシブビジネス・モデルの構築支援を得意とする
市民社会組織や公的機関など、より多くの能力開発支援機関
が必要であることは確かです。中小企業の抱える課題のひと
つは、持続可能なビジネスの構築に関するノウハウと専門知
識の不足です。ある企業は他の分野への多様化を考えている
が、この多様化がどのような影響をもたらすかがわからない
のかもしれません。またある企業は、個人事業として開業し
たために、ガバナンス構造が弱いのかもしれません。ある企
業は他の地域に事業を拡大したいと考えているかもしれませ
ん。こうした企業が次のレベルへと迅速に進化できるような
助言サービスが提供されることが重要なのです。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
55
5
実施サポート
たとえ市場の情報が提供され、ビジネスのインセンティブが確保され、ビジネスを促
進する投資が行われたとしても、インクルーシブビジネス推進の鍵は、さまざまな仲介・
支援サービスにあります。例えば、世界最大のカカオ購入企業のひとつである「モンデ
リーズ」は、カカオ生産コミュニティの改善に着手した際、独力では成し得ないビジョ
ンを実現するために、専門知識を持ったパートナーから技術的な支援を受けました。こ
のような事例からもわかる通り、実施サポートには、企業が低所得層をバリューチェー
ンに組み込み、彼らとスムーズに連携できるようにするためのさまざまなサービスが含
まれます。
物流サポートは、低所得層に製品やサービスを届け
マーケティング・コミュニケーションサポートは、低
るため、また低所得者から製品を集めるために不可欠
所得消費者の認識を高め、潜在顧客に製品やサービスの
なものです。
利点を知らせ、それらを使用する際に必要な情報を提供
するのに役立ちます。
取引サポートは、代金の支払いや受取りなどの金銭
取引、およびその取引に必要となる文書化・管理シス
零細企業サポートは、零細事業者がより大きなバ
テムの整備を促進します。
リューチェーンに参画するために必要な基準に自らのビ
ジネスを適合させられるよう支援します。これには、零
細企業の特定、募集、設立、ならびに基準を満たした製
品やサービスを提供するための能力開発が含まれます。
56
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Ben Langdon
モンデリーズは、ガーナの小規模農家からカカ
オを購入しています。同社は、小規模農家に対
する研修の実施と現地の開発計画の策定のため
に、市民社会組織の支援を必要としています
事例研究:モンデリーズ
次世代のカカオ農家を育てる「モンデリーズ」
カカオは、主に開発途上国の小規模農家によって生産
されています。ガーナは世界第2位のカカオ輸出国で、
かし、ガーナのカカオ生産は減少傾向にあります。現在、
同国の人口2500万人のうち、およそ70万人がカカオ農
民で、その平均年齢は約56歳です。カカオの栽培は難
しく、高リスクで、あまり儲からないため、大抵のカカ
オ農民は自分の子どもには違う職業に就くよう勧めます。
大手チョコレートメーカー
「モンデリーズ」
(旧
「クラフト」
)
にとって、カカオの生産量と質の低下は供給面における大
ガーナの農民がカカオ豆を選り分けています。農民たちは研修を受け
ることによって、質の良いカカオを生産できるようになるだけでなく、
コミュニティ派遣員として、自分たちの持つ知識を他の人々に伝える
ことができるようになります
Photo:Mondelēz International
2010年には世界の生産量の23%を占めていました。し
きなリスクです。しかし、
次世代のカカオ農家を育てるには、
単に収穫量を上げ、価格を高くするだけでは不十分です。
よる農民団体の設立にも協力しました。団体設立後は、交
同社は、繁栄し、持続可能なカカオ栽培コミュニティを作
渉力を強化するために農民団体間の提携も進められました。
り出すという目標を設定しました。しかし、この目標を達
成するためにはパートナーが必要でした。2008年、モン
デリーズはUNDPの支援を受けて、7000万ドル強相当の
さらにモンデリーズは、
「ガーナ・カカオ・ボード」
(COCOBOD)とも提携しました。COCOBODは、17
10年計画の取り組み「キャドバリー・カカオ・パートナーシッ
人のコミュニティ派遣員の訓練を行い、管理もしています。
プ」を立ち上げました。この取り組みの目的は、世界の主
これらの派遣員は、カカオ農家を対象に農業研修を行い、
要なカカオ産地のカカオ生産コミュニティを支援すること
フェアトレード認定の取得を支援しています。また彼らは
であり、その最初のターゲットがガーナでした。
各地域で、2~3人の地元のカカオ生産推進役とも協力
しています。この推進役には通常、追って派遣員の任務
モンデリーズは、
3つの経験豊かな市民社会組織(
「CARE」
「ワールド・ビジョン」
「VSO」
)と連携し、最初に100のコミュ
を引き継ぐことができるコミュニティの若者が就きます。
この取り組み開始後の3年間で、参加した100のコミュ
ニティとの連携を進めました。これらの市民社会組織は、こ
ニティで収穫量が20%増加し、550万ドルのフェアトレー
の取り組みのもと、農民団体と協力してコミュニティの行動
ド奨励金がもたらされ、ソーラーパネルや井戸など、200
計画を策定しました。この行動計画は、カカオ生産、インフ
近くの開発プロジェクトが開始されました。
このパートナー
ラ開発、持続可能な環境に関するコミュニティの優先課題を
シップは、2015年までに500のコミュニティに活動を拡大
定めたものです。さらに市民社会組織は、カカオ生産者に
することを目指しています。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
57
5
実 施 サ ポ ー ト
図17:
アフリカの教育ピラミッド(2009年)
学校教育の年数
18
高等教育
16
5%
14
12
19%
高等学校
25%
10
37%
中学校
8
52%
6
4
進学 68%
進学 77%
小学校修了率 67%
小学校
2
総入学率 96%
0
該当する年齢層全体
出典:
「Financing Higher Education in Africa」世界銀行(2010年)
課題
インクルーシブビジネスは、低所得コミュニティで事業
を行っているという事実により定義されます。こうした状
技術と知識
インクルーシブビジネスは多くの場合、低所得層のビジ
況下では、従来型の事業環境と比べて、物理的インフラ、
ネスパートナーの能力不足に対処しなければなりません。
技術と知識、金融インフラなどの市場環境の欠如によって
生産者は特定の生産基準を満たすための技術を持っていな
ビジネスが複雑化し、対象主体との関与が困難となります。
いことが多く、起業家は会計プロセスを備えておらず、多
くの消費者は製品情報を読むことができません。アフリカ
物理的インフラ
の学生のうち、中等教育を修了する者は19%しかおらず、
道路、鉄道、安定したエネルギー源、堅牢な保管施設・
高等教育修了者にいたってはわずか5%です(図17)89。
倉庫、およびその他の物理的な市場インフラの不足により、
サハラ以南アフリカの成人人口の約38%が、日常生活に
低所得コミュニティとの取引コストは増大します。例えば、
必要な基本的な読み書き計算能力を身に付けていません。
サハラ以南アフリカの地方の住民の70%以上が、通年使
また、非識字人口の60%以上が女性です90。国の職業訓
用できる道路から2km以上離れた場所に住んでいます 。
練システムが十分ではないため、事業者は必要な技術を自
88
ら身につけなければなりません。
金融インフラ
サハラ以南アフリカに暮らす人々の大半は、正規の金融
市場に参加していません(図18)
。この地域の成人のうち、
銀行口座を持っている人はわずか24%です91。このため、
金融取引は通常、現金で行われます。しかし現金の取り扱
いは、低所得コミュニティの起業家にとってセキュリティ
上の問題をもたらす可能性があり、会計手続きも複雑にな
ります。こうした状況は、
「Safaricom」の「M-Pesa」や
「Lonestar」などの携帯電話を介した電子マネーサービス
の普及にともない、
変わりつつあります。ある調査によると、
2011年にはアフリカの成人の16%が携帯電話を使って支
払いや送金、現金の受取りを行っています92。
58
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
図18:
アフリカ諸国における低所得層への金融機会の提供の状況
銀行サービスを受けている
金融機関により提供される従来型
の銀行商品
その他の金融サービスを受けている
その他の正規商品(銀行商品や銀行に
よって提供されるもの以外)
非正規の金融サービスを受けている
公認の法的ガバナンスなしに運営される
非正規商品(雇用者に預けた貯蓄など)
金融サービスを受けていない
正規サービスも非正規サービスも
受けていない
100
100
31
19
19
33
44
46
40
33
30
55
52
20
4
8
19
12
20
1
09
09
年
0
20
ダ
ン
ワ
モ
ル
12
年
年
08
20
マ
ラ
ウ
イ
ダ
ン
ガ
ウ
12
20
08
10
20
ア
ニ
年
年
年
09
20
11
20
ブ
バ
ン
ジ
ケ
エ
ア
リ
ェ
ジ
イ
ナ
年
年
20
20
10
10
年
年
ナ
ガ
ー
ト
ソ
レ
20
20
09
11
年
年
ナ
ワ
ツ
ボ
ラ
ジ
ワ
ス
ナ
ミ
ビ
ン
ア
ド
20
20
11
11
年
年
12
20
カ
リ
9
4
ク
14
0
フ
4
ー
19
20
21
ビ
23
24
ン
30
ザ
34
38
年
41
ア
44
62
28
7
09
67
28
7
ニ
7
20
40
27
ザ
18
14
20
6
42
ン
17
7
26
22
タ
15
23
ア
6
40
60
18
ビ
13
ン
3
60
ア
78
80
8
6
南
56
56
ザ
80
37
出典:「Inclusive Business Finance Field Guide 2012: A Handbook on Mobilizing Finance and Investment for MSMEs in Africa.」UNDP(2012年)
成果
市民社会組織(CSO)と開発機関は、アフリカ市場で
活動する企業が受ける実施サポートの大部分を提供してい
ます。政府機関は、小規模農家を対象とした追加の支援を
零細企業支援、マーケティング、コミュニケーションは、
主にCSOや開発機関によって提供されている
CSOや開発機関の多くは、現地コミュニティに深く根
行う場合もあります。しかし一般的に、企業が利用できる現
付いているため、蓄積された信頼と確立されたネットワー
地での実施サポートは依然として限られており、特に物流や
クを活用することができると同時に、地元住民の考え方を
取引に関する支援は乏しいというのが現状です。したがって、
良く理解しています。したがってCSOや開発機関は多く
企業は、例えば、現地CSOのスピンオフや現地の零細起業
の場合、新たなサービスを低所得顧客に知らせたり、生産
家の能力開発などにより、支援のエコシステムを自ら作り出
者や零細起業家の能力を開発したりするうえで、最も望ま
さなければなりません。昨今の携帯電話技術の普及により、
しいパートナーとなります。ガーナのカカオ生産者と協力
このプロセスはいくぶん簡易化され、取引コストの削減とイ
した先述の「モンデリーズ」の事例では、農民団体の設立
ンクルーシブビジネス・プロセスの効率化が進んでいます。
とコミュニティ開発計画の策定をCSOが引き受けました。
インクルーシブビジネスに専門知識を提供する
「ビジネス・イノベーション・ファシリティ」
英国国際開発省(DFID)の「ビジネス・イノベーショ
ン・ファシリティ」
(Business Innovation Facility: BIF)は、
草の根レベルで活動するインクルーシブビジネスに技
術的支援を提供することを目的として、2010年に創設
されました。5か国に現地拠点が設立され、そのうち
の3つ(マラウイ、ナイジェリア、ザンビア)がアフリ
時に零細企業支援は、現地起業家を支えることによって、
インクルーシブビジネスの育成に実質的に貢献します。例
えば「EnterpriseWorks」は、
「Toyola Energy」の創設
者に対してエネルギー効率の良い調理用コンロの生産に関
する研修を実施しました。このプロセスにより、創設者た
ちは会社設立のための技術を手に入れました。現在までに、
Toyolaは10万台を超える調理用コンロを販売し、14万ト
ン以上の二酸化炭素排出を相殺し、現在、300人以上の低
所得者を雇用しています。
を含む、合わせて58のビジネスに集中的に支援を提供
してきました。各拠点のマネージャーはグローバルな
ネットワークを活用して、市場経路の評価、サプライ
チェーンの開発、ビジネスモデルの「ストレステスト」
、
または企業が直面するその他の数多くの障害への取り
組みを行うことのできる技術専門家を見つけることが
できます。このプロセスから学んだ教訓は、インクルー
シブビジネスをテーマとするオンライン・コミュニティ
「Practitioner Hub」で共有されています。
Photo:Karen Smith(DFID BIF)
カにあります。これら3つの拠点は、大企業と小企業
DFIDの「BIF」は、何百もの小
規模事業者や被雇用者に支援を
提供してきました
出典:Practitioner Hubウェブサイト(www.businessinnovationfacility.org)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
59
5
実 施 サ ポ ー ト
生活協同組合の組合員とアグリビジネスの間
の透明性を実現する「SAP」のソフトウェア
「SAP」の「バーチャル・コープ」は、小規模農家
を含む農業サプライチェーンのトレーサビリティー
と効率性を高めます。このドイツのソフトウェア会社
は、
「ドイツ技術協力公社」
(Deutsche Gesellschaft
für Internationale Zusammenarbeit GmbH)と 連
携し、ガーナとブルキナファソでカシューナッツとシ
アバターのバリューチェーンにこのシステムを導入
Photo: Christian Merz, SAP AG
しました。このシステムは小規模農家を、加工会社、
卸売業者、小売業者と結び付けます。このシステム
によりこれまでに約1000トンの農産物が取引され、
1万2000件 の 取 引 が 電 子 的 に 処 理 さ れ ま し た。
7000人以上の小規模農家が透明性の向上と支払い
の迅速化の恩恵を被り、サプライチェーン全体が完
全に追跡可能となりました。
出典:
「African Cashew initiative: cooperation with SAP」GIZ(2012年)
インクルーシブビジネスは、小規模ビジネス支援を行う
低所得者自身も物流・取引サービスの提供において重要
きる
多くのインクルーシブビジネスは、フランチャイジーや
CSOをスピンオフさせたり、育成したりすることがで
な役割を果たしている
2007年に「ロクシタン」は、シアの実をシアバターに
サービス提供者として地元コミュニティの零細起業家を採
加工するブルキナファソ農村部の女性数千人に、シアバ
用しています。インクルーシブビジネスは、こうした地元
ターの生産、一般的な経営管理、簿記、フェアトレード基
住民の能力を構築するためにしばしば初期投資をしなけれ
準 に つ い て の 能 力 構 築 支 援 と 訓 練 を 提 供 す る た め に、
ばなりませんが、
この投資はコスト削減、
地元コミュニティ
「Association Nord et Sud」(南北組合)というCSOを
とのより密接な結び付きやより深い理解という形ですぐに
設立しました。同様に、モーリタニアの「Tiviski」も、牛
報われます。低所得コミュニティでクリーンエネルギー機
飼いが家畜を管理し、獣医サービスを受けられるよう、
器を販売する「ToughStuff」と「Toyola」は、ソーラー
「Tiviski牛乳生産者組合」というCSOを設立しました。
ランプと調理用コンロを販売する零細起業家のネットワー
クを設立しました。
政府機関は時に農業バリューチェーンの確立に関与す
る
モバイル通信と情報通信技術はインクルーシブビジネ
が同社のビジネス運営、研修、カカオ農家の能力構築を担
携帯電話を介した電子マネー・アプリケーションは、送
「モンデリーズ」の事例では、「ガーナ・カカオ・ボード」
スの実施コストを削減する
当する17人の派遣員の管理に必要な専門知識の構築に協
金コストとリスクを削減します。モバイル情報サービスは、
力しました。「エチオピア農業変革機関」は、国内のヒヨ
各種サービスについての情報と提案を低所得顧客に伝え、
コ豆生産の発展を支援し、これは「ペプシコ財団」のヒヨ
小規模農家に天気、価格、マーケティング機会についての
コ豆関連イニシアティブの持続可能性につながっています。
情報を提供し、零細起業家に販促活動について知らせるこ
とができます。
「ケニア農産品取引所」
(Kenya Agricultural
Commodity Exchange: KACE) の イ ニ シ ア テ ィ ブ は、
農家とバイヤーを結び、さまざまな商品についての情報を
中継します。
「e-Soko」も、アフリカ16か国で同様のサー
ビスを提供しています。
60
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
さらなる機会
依然として不十分です。一般的に取引コストは非常に高く、
ビジネスの採算が取れないこともよくあります。多くの場
合、企業は市民社会組織や開発機関の支援に頼らざるを得
ません。しかし、これらの機関は自らの目的や活動基準を
追求するため、支援が困難な場合もあります。より専門的
なビジネス支援制度を構築することにより、ビジネスの実
インタビュー
ゲリー・ヴァン・デン・ホーテン氏
Gerry Van Den Houten
SABMillerアフリカ 企業開発部長
「SABMiller」は世界第2位のビール会社
施ははるかに容易になります。
です。同社は、ジンバブエ、ウガンダ、モ
研究機関は部門横断的なパートナーシップの効果的な
アフリカ全域10万人の農業直接雇用を支えています。
ガバナンス構造について研究するべきである
民間セクター以外のビジネスパートナーはしばしば、ビ
ジネスに不可欠な能力を提供してくれますが、こうした部
門を超えたパートナーシップはビジネスにかなりの複雑性
と管理コストをもたらす場合があります。こうした部門を
超えたパートナーシップの基盤となるガバナンス構造につ
いては、まだあまり理解が進んでいません。こうしたパー
トナーシップの統治方法、ならびに有効な手段やそうでな
い手段について、さらなる研究が必要です。
開発機関と政府は、既存のビジネス開発サービスにおい
てインクルーシブビジネスの主流化を進めるべきである
多くの開発機関と政府はすでに、民間セクタ開発プログラ
ムの伝統的な要素である「ビジネス開発サービス」
(Business
Development Services: BDS)を通じて、中小零細企業への
ビジネス設立支援を提供しています。こうした既存のサービ
スをさらに発展させて、インクルーシブビジネス開発のための
特別な支援を含めることが可能です。そのためには、社会的・
環境的成果を明確に重視することが求められます。
市民社会組織と開発機関は、現地のサービス提供者の構
築を支援することができる
市民社会組織と開発機関は、自らビジネス実施サービス
を提供する代わりに、そうしたサービスを独立的・商業的
方法で提供できるよう現地主体を訓練することに力を入れ
ることができます。サービスを現在提供しているものの、
求められる企業基準に自らのプロセスを適応させることが
難しいと考える市民社会組織から、こうしたサービス企業
Photo:Gerry Van Den Houten
現場レベルでのインクルーシブビジネス実施サポートは
ザンビーク、タンザニアなどの数万人の小規模農家を含む、
仕入れ先である小規模農家との取引や物流をどのように組織
化しているのですか?
本来、SABMillerのような企業が非正規経済に属する仕入
れ先と取引をするのは容易なことではありません。また、離
「場所によっては商
業的 農 家が 全く存
在しないこともあり
ま す が、そ の 場 合、
当社は時に専門的な
農業サービスプロバ
イダーの手を借りて、
『指導的農民』を特
定します」
れた場所からこうした取引
を行うことは絶対に不可能
で、現場における永久的な
プレゼンスが必要です。で
すから、いくつか微調整を
施した末に「ハブアンドス
ポーク」モデルを編み出し
ました。細部は地域によっ
て異なりますが、一貫した
原則が存在します。それは、
ひとりの商業的農家がハブ
の中心となって、約100人
の小規模農家と協力すると
いうものです。この商業的農家は、当社と小規模生産者との
間の仲介者としての役割を果たします。場所によっては商業
的農家が全く存在しないこともありますが、その場合、当社
は時に専門的な農業サービス提供者の手を借りて、「指導的
農家」を特定します。
御社は小規模農家に研修や支援を提供していますか?
商業的農家は当社のビジネスに刺激を受けます。そして彼
らが、小規模農家に収穫量の拡大や新種のテストなどについ
ての研修や支援を提供します。
御社は小規模農家への資金提供に関与していますか?
を分離独立させることも可能です。
取引レベルでは、SABMillerの相手は主に普通銀行です。
政府は一般的なビジネス環境を改善することにより、イ
すので、彼らへの融資や信用に関してより良い条件を獲得す
ンクルーシブビジネスの実施を促進することができる
道路や物流システムの改善は、輸送コストの削減に貢献
当社は、個々の小規模農家よりも大きな影響力を持っていま
ることができます。しかし、金融は当社の本業ではありませ
んので、それ以上の関与はしていません。
し、低所得コミュニティ、特に農村地域への参入をより容
易にします。一般的な教育や職業訓練の改善は、社員の能
力開発や意識向上に取り組む企業の負担を減らします。
携帯電話ベースの情報通信技術に関しては、大きな支援
機会が未開拓のまま残されている
これには、大企業のICTシステムに統合可能な小規模ビジ
ネスの倉庫管理・会計システムが含まれます。数多くのICT
ソリューションを自由に使えるようになれば、小規模ビジネ
スは在庫を管理し、物品や資金の流れを追跡し、より効率的
な計画を立て、他者と情報を交換することが可能になります。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
61
6
インクルーシブ
ビジネスの
エコシステムの構築
低所得市場への進出、またはインクルーシブビジネスの設立を考えているアフリカの
起業家や企業は、さまざまな支援を利用することができます。インクルーシブビジネス・
アプローチの気運が高まるなか、国際主体により提供される支援を補完する現地の支援
プログラムが出現しつつあります。起業家や企業は今こそ、こうしたチャンスをつかみ、
低所得層の収入、商品とサービス、選択へのアクセスを生む収益性の高いビジネスを生
み出すべきです。
同時に、現在のインクルーシブビジネス支援の状況
エコシステムを構築することで、インクルーシブビジ
にはムラがあり、インクルーシブビジネスの成長とそ
ネスのエコシステムを構成するさまざまな主体の結合が
の影響力の強化のために改善すべき点が数多くありま
可能になります。各主体は、それぞれ独自の能力を生か
す。
「M-Pesa」による携帯電話を介した電子マネー・
して、ビジネスを成功に導くエコシステムの構築に貢献
サービスは、アフリカにおけるインクルーシブビジネ
することができます。本章の後半で、具体的な行動につ
スの代表例ですが、右頁の事例研究からもわかる通り、
いての提言を示します。
南アフリカでは同じような成功には至っていません。
インクルーシブビジネス・エコシステムの違いが、ケ
ニアではM-Pesaの成功を後押しし、南アフリカでは
成長を阻害しているようです。
62
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo:Jake Lyell(BRAC)
畑仕事をするリベリアの女性。
インクルーシブビジネスのエ
コシステムの構築により、彼
女の畑の収穫量は大幅に増加
しました
事例研究:M-Pesa
ケニアと南アフリカの「M-Pesa」
「M-Pesa」は、携帯電話を介した電子送金システム
です。ケニアの大手モバイルネットワーク・オペレーター
である「Safaricom」は、「ボーダフォン・グループ」
と英国国際開発省(DFID)からの資金提供を受けて
M-Pesaの技術を開発し、2007年にサービスを開始し
ました。このサービスはたちまちケニアの金融サービス
Photo:M-Pesa
市場で大きなシェアを獲得し、2011年には契約者数が
1500万人に達しました。その後、タンザニアとアフガ
ニスタンでも各国版のM-Pesaサービスが開始され、成
功をおさめています。
「Safaricom」は、ブランドと市場を確立するために、追加の通信時間
や各種サービスなどの特典をM-Pesaの顧客に提供しています
しかし南アフリカでは、M-Pesaはこれらの国々のよ
うな成功を遂げることができませんでした。2010年、
また、南アフリカでは犯罪率が高いため、非正規小売
ボーダフォンは大手金融機関「Nedbank」と連携し、
業者は犯罪者の標的となることを恐れ、現金や預金の引
南アフリカにM-Pesaシステムを導入しました。2国間
出 所 と な り た が り ま せ ん。 さ ら に、 南 ア フ リ カ 版
における違いをもたらした要因のひとつは、両国の規制
M-Pesaは、ケニアのそれとは異なり、外部からの資金
環境の違いです。南アフリカの顧客登録と流通業者承認
提供や支援を受けていません。そのため、検証や現地の
に関する規則は、ケニアに比べてはるかに厳格です。そ
ニーズと環境への適応を進める余裕がありませんでした。
の結果、M-Pesaのサービスは、ケニアでは何万もの非
正規業者のネットワークを通じてほぼ普遍的に利用可能
南アフリカでは2012年末現在、正規の銀行サービス
であるのに対して、南アフリカでは主に数百の「ボーダ
を 利 用 で き て い な い と さ れ る 推 定1200万 人 の う ち、
コム」正規代理店とNedbankの支店や現金支払機でし
M-Pesaに契約している人は、わずか120万人にとど
か利用することができません。このため、南アフリカの
まっています。
ほとんどの低所得コミュニティ、特に農村地域では、
M-Pesaへのアクセスが物理的に困難となっているので
す。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
63
6
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築
図19:
インクルーシブビジネスのエコシステムには各機能を結合する働きが必要
ム
エ
テ
コ
報
コ
テ
資
情
ム
エ
ス
シ
ス
シ
投
インクルーシブ
ム
テ
サ
ス
施
シ
テ
ム
コ
ス
ブ
ィ
シ
エ
テ
コ
実
エ
ン
ポ
ー
ト
セ
ン
イ
ビジネス
エコシステムの構築が
各機能の結合を実現する
多くの専門家の意見では、「調整」がインクルーシブビ
エコシステム構築による効果を示す3つの事例
近年、いくつかのインクルーシブビジネスのエコシステ
ジネスのエコシステムの構築における中心的課題です。イ
ムの構築が進められ、そのいくつかは大きな成果を上げて
ンクルーシブビジネスを促進する条件を整えるためには、
います。これらの取り組みは、低所得者を取り入れたエコ
4つの支援機能のすべてが揃っていなければなりません。
システムの構築における長年の研究と経験に基づいており、
これらの機能を同時に発達させるためには、何らかの方法
その中でも特筆すべきものが「貧困者に益する市場システ
で各主体の活動を調整する必要があります。しかし、調整
ムの構築」とバリューチェーン・アプローチです93。表3
自体にも費用がかかります。したがって何らかの主体が、
では、異なる国の異なる部門における3つの取り組みを紹
パズルのすべてのピースをひとつにまとめる「結合組織」
介しています。
の役割を果たさなければなりません。開発関係機関は、包
括的な市場の開発に取り組むなかでこの必要性を認識し、
こうした調整機能の開発に投資し始めています。
・「 ケ ニ ア 金 融 部 門 深 化 イ ニ シ ア テ ィ ブ 」(Kenyan
Financial Sector Deepening Initiative: FSD)は、特
Photo:Ashden Awards
に低所得者を対象に、金融サービスへのアクセス拡大を
目指しています。この取り組みは、さまざまな政府機関、
銀行、マイクロファイナンス機関、金融サービスの非正
規提供者、教育・研究機関との協力により、金融市場に
お け る 正 規・ 準 正 規 包 括 率 を、2006年 の26 % か ら
2009年には40%にまで改善することに貢献しました。
(Lighting Africa)
・ガーナとケニアの「アフリカに光を」
プログラムは、照明器具の品質保証マーク、製品とサー
ビス提供者のデータベース、会員企業への技術支援、調
査、政策対話を提供することにより、照明器具の市場条
件を改善しています。その結果、2500社を超える企業
がウェブサイトを通じて会員登録し、2012年4月まで
に ア フ リ カ の250万 人 の 人 々 に 照 明 器 具 が 提 供 さ れ、
「アフリカに光を」は、起業家や消費者の利益のために、「Barefoot Power」
のような企業に対し、市場拡大のためのさまざまな支援を提供しています
64
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
1900万人の人々を対象に消費者教育キャンペーンが実
施されました。
・
「アフリカ綿栽培競争力強化イニシアティブ」
(COMPACI)
資金の大部分は、研究やプロジェクト開発のために活用
は、アフリカ6か国で、小規模な綿栽培農家や協同組合
されます。この研究やプロジェクト開発には、革新的な資
を、アグリビジネスや繊維会社、開発関係機関、市民社
金調達モデルの開発も含まれます。「アフリカに光を」は、
会組織、政府と結び付け、持続可能な綿産業のバリュー
輸入業者や販売業者のための貿易金融と資金提供モデルを
チェーンの構築に取り組んでいます。この取り組みでは、
確立しました。COMPACIは、小規模農家が持続可能な農
サハラ以南アフリカの240万人の人々を支援しており、
業慣行に切り替えることができるよう、少額融資を提供し
中には綿生産のみで純利益が45%増加した人もいます。
ています。これらの取り組みは、商業金融と競合するよう
な融資や助成金を提供するのではなく、
「アフリカに光を」
これら3つの取り組みはすべて、インクルーシブビジネ
の事例で見られるように、業界基準を確立してビジネスの
スを促進するエコシステムの構築において大きな成果を上
信用度を高めるといった方法などにより、資金調達を支援
げており、その結果、多くの低所得者が生産者、消費者、
します。
被雇用者、起業家として、より大きなバリューチェーンに
組み込まれました。表3は、「インクルーシブビジネスの
これらの取り組みが果たす重要な役割のひとつは、新た
エコシステムの構図」の機能ごとに、各取り組み内容をま
な仲介機関を設立する、または既存の組織内における実行
とめたものです。
支援能力を強化することです。FSDは、保険会社による家
畜保険商品の開発を支援し、マイクロファイナンス機関が
エコシステム構築の成功要因
銀行としての地位を獲得できるよう協力しました。また、
前述の3つの取り組み内容は異なりますが、共通するパ
少額貯蓄商品に関する研修を実施する「MicroSave」の
ターンがいくつか見られます。
ような仲介機関の能力開発にもあたりました。「アフリカ
に光を」は、情報共有プラットフォームと品質保証プロセ
3つの取り組みはすべて、厳密に実態に基づいています。
スを設立しました。また、照明器具の購入資金を融資する
市場の状況や既存のエコシステムに足りない機能に関する
ためのマイクロファイナンス商品の提供方法について、マ
現地調査を踏まえたうえで、イニシアティブの全体設計や
イクロファイナンス機関に対し、研修を実施しています。
個々の活動が決定されています。この情報は、オンライン・
COMPACIは、その認証基準の遵守を徹底するために、契
データベースを通じて、または一定の基準として体系化さ
約綿生産パートナーに対し、持続可能な農業に必要とされ
れた形で、一般に公開されています。例えば、「アフリカ
る研修の機会と資源を農家に提供するよう求めています。
に光を」のデータベースには照明器具を提供している
3000社が登録されています。FSDは、「FinAccess」の
3つの取り組みはすべて、このような包括的なアプロー
調査を公表しています。COMPACIは、成功事例に基づい
チを通じて、目覚ましい成功を遂げています。わずか2、
た持続可能な綿生産の基準を確立しました。
3年の間に、何百万もの低所得世帯の生活に影響を及ぼし、
計画よりもはるかに早く目標を達成しました。これらの取
これら3つの取り組みでは、こうした実態に基づき、情
り組みは、インクルーシブを支援するエコシステムの構築
報提供と関係者間の対話の機会を設定することを通じ、さ
が大規模なインクルーシブビジネスの実現を可能にし、多
まざまなレベルで政策立案者と緊密に連携して、政策決定
くの人々に所得・雇用・消費の機会をもたらすことによっ
を支援しています。FSDは、ケニアの各省庁や規制当局と
て包括的な経済成長を達成することができるということを
協力し、COMPACIは、綿産業の戦略に対する影響力を持
示す明確な証拠なのです。
つ た め に、
「包括的アフリカ農業開発プログラム」
(Comprehensive Africa Agriculture Development
このように、エコシステムの構築がインクルーシブビジ
Programme: CAADP)の枠組みのもとで活動しています。
ネスのエコシステムをひとつにまとめる結合機能を生むこ
そして「アフリカに光を」は、国連「クリーン開発メカニ
とは明らかです。
ズム」(CDM)理事会に対し、クリーンなオフグリッド
照明によるクレジット(排出削減量)取引の方法論と「ア
フリカに光を」の品質保証枠組みを厳密に整合させるよう
働きかけました。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
65
6
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築
ケニア金融部門深化イニシアティブ
(Kenya Financial Sector Deepening Initiative: FSD)
表3:
3つのエコシステム構築の
取り組みの比較
66
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
分野
金融サービス
国
ケニア
開始年
2005年
内容
ケニアの金融市場の開発支援と貧困層への金融機会等の提供
を目的とした独立信託。さまざまな分野の60の組織からなる
ネットワークとの連携によって、この目的を追求している。
支援機関
・ケニア政府
・開発関係機関(AFD、DFID、Sida、世界銀行、ビル&メリ
ンダ・ゲイツ財団)
インセン テ ィ ブ
・ケニア政府に対し、同国のビジネス環境を強化する方法に
ついて助言を行った。情報を提供し、マルチステークホル
ダー協議を促進。
・ノンバンクに銀行チャネルを開放する政策オプションにつ
いての分析を委託することによってケニア中央銀行を支援
した。この分析結果はステークホルダー作業部会で提示さ
れた。
・
「SACCO規制当局」
(SACCO Societies Regulatory Authority:
SASRA)の設立を支援し、
「準正規の貯蓄信用協同組合」
(Semiformal Savings and Credit Cooperatives:
SACCOs)を正規化。
・信用調査所の設立と管理に関する規則について助言を提供。
情報
「FinAccess」調査を実施。需要調査では、貧困層への金融機
会の提供の現状と傾向を把握。供給調査では、付随的な金融
サービス分野の地理的範囲と市場規模についての最新情報を
毎年提供。
投資
・プロジェクトや調査のための資金を提供。
・中小企業のためのサプライチェーン金融商品を開発するた
め、銀行と連携。
実施サポ ー ト
・家畜保険商品などの商品開発のため、専門的な支援を提供。
・金融機関が銀行としての地位を獲得できるよう協力。
・マイクロファイナンス機関に対して研修やさまざまな支援
を提供する「MicroSave」などの仲介機関の能力を開発する。
また、商業銀行やコミュニティ基盤の組織など、サービス
を提供するリテール金融機関とも協力。
・
「 金 融 教 育・ 消 費 者 保 護 パ ー ト ナ ー シ ッ プ 」
(Financial
Education and Consumer Protection Partnership:
FEPP)を通じて、金融リテラシーの向上に貢献。
成果
・正規・準正規金融市場への参加率が、2006年の26%から
2009年には40%に改善された。
・ケニアにおいて金融サービスから完全に疎外されている人
の割合は、南アフリカを除くアフリカ諸国の中で最も低い。
出典
FSDウェブサイト(www.fsdkenya.org)
、および年次報告書
アフリカに光を(Lighting Africa)
包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ
(Comprehensive Africa Cotton Industry Initiative: COMPACI)
エネルギー
農業
ケニア、ガーナ。現在、タンザニア、エチオピア、セネガル、
マリに拡大中。
サハラ以南アフリカ6か国(ベナン、ブルキナファソ、コート
ジボワール、マラウイ、モザンビーク、ザンビア)
。
2005年
2008年
アフリカにおいて安全で手ごろな価格の最新オフグリッド照明
システムの持続可能な市場を構築するために、民間セクターを
活用している。
アフリカの小規模な綿栽培農家が、自らの経済状態を改善する
持続可能な農業を実施できるよう支援。
「コットン・メイド・
イン・アフリカ」
(Cotton made in Africa: CmiA)製品の購
入者は、認証ラベルを使用するためにライセンス料を支払う。
IFC、世界銀行
Trade Foundation、BMZ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団
・8か国におけるオフグリッド照明ソリューションへの政策・
規制の障壁を明らかにし、代替となる政策提言を実施。研究
成果について、政府やその他の分野の要人と議論を実施。こ
の議論の結果、2か国がオフグリッド照明に関する政策を改
正。
・オフグリッド照明を農村部のエネルギー・電化プログラムに
組み込むために、アフリカ4か国の政府と直接協力。
・国連CDM理事会に対し、そのクリーンなオフグリッド照明
によるクレジット(排出削減量)取引の方法論と「アフリカ
に光を」の品質保証枠組みを厳密に整合させるよう説得。
「包括的アフリカ農業開発プログラム」
(Comprehensive
Africa Agriculture Development Programme: CAADP)の
枠組みの中で活動し、綿農業の開発を通じた貧困緩和について、
アフリカ諸国の政府に助言。
・業界が情報に基づいて決断を下せるように、市場調査を実施
し、流通ネットワークを分析し、市場動向を評価。
・サービスを宣伝し、ビジネスチャンスを特定するためのオン
ライン・プラットフォームを提供。
フォーカスグループ・インタビューやサプライチェーンに沿っ
た定量的調査を活用して、中立的な研究機関による独立したプ
ロジェクト監視・評価を手配。
・生産能力向上のため、貿易金融機関を設立。
・輸入業者や販売業者が、増加する需要に見合う安定して、持
続可能な商品供給を行えるようにするための資金供給制度を
設立。
・小規模農家が開業時の生産に必要な資金を調達できるよう、
少額融資を提供。
・地域の検証機関を強化するための投資を実施。
・製品の品質と性能を保証する生産者品質保証マークを導入し
た。ナイロビ大学の研究室と協力して、製品テスト、品質評
価、
テスト結果の分析に関する研修を実施。セネガルのダカー
ルに、初歩的なスクリーニングを実施するための低コストの
試験センターを設立。
・会員企業に、製品デザイン、定期的な製品導入実験、技術的
な能力開発、企業間取引の機会、地元流通業者への仲介など
の支援と助言を有料で提供。
・消費者金融について、マイクロファイナンス機関に対して研
修を実施。
「アフリカに光を」の品質保証制度により、マイ
クロファイナンス機関は融資の安全性を向上。
・ケニアとガーナで、消費者教育キャンペーンを実施。現在ま
でに合わせて1000回の村落フォーラムが実施された。
・特徴的な赤いラベルのCmiA認証の管理とマーケティングを
実施。
・契約綿生産パートナーは、持続可能な綿栽培を実施するため
に必要な研修と資源を農家に提供。
・第三者機関(現在は「EcoCert」と「AfriCert」)が、CmiA
要件の遵守を実現するため、農家と契約綿生産パートナーの
監査を実施。
・小売業パートナーが必要な綿を必要な時に入手できるよう、
紡績工場や繊維メーカーのネットワークへの容易なアクセス
を提供。
・2500社以上の企業がウェブサイトで会員登録。
・2012年4月までに、アフリカの250万の人々に照明器具が
提供された。
・1900万人を対象に、消費者教育キャンペーンが実施された。
・7つのマイクロファイナンス機関が、LAの品質テストに合
格したオフグリッド照明器具を購入するための少額融資を消
費者に提供。ケニアでは、ソーラーランタンを購入する消費
者に、41万1000ドルの資金供給と融資が提供された。
・COMPACIは、契約農家の数と綿実生産量の急増を報告して
おり、価格も史上最高水準。
・サハラ以南アフリカの240万人の人々を支援しており、中に
は綿生産のみで純利益が45%増加した人もいる。
・当初は民間企業がこの取り組みに必要な資金の3分の1を提
供していたが、その割合は2015年までに50%に増加する見
込み。
「アフリカに光を」ウェブサイト(www.lightingafrica.org)
、
および年次報告書
「COMPACI」ウェブサイト(www.compaci.org)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
67
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築
インタビュー
ヘラード・クッツェー氏
Gerhard Coetzee
Absa Consumer Banking
インクルーシブ・バンキング戦略イニシア
ティブ主任
プレトリア大学
アフリカ・インクルーシブ・バンキング・センター所長
「バークレイズ銀行」の子会社である「Absa Group Limited」
(Absa)は、南アフリカ最大の金融サービスグループのひとつ
です。そのインクルーシブ・バンキング部門は、低所得顧客に
的を絞ったサービスを提供しています。
現在のインクルーシブビジネスの支援環境において欠けている
ものは何だとお考えですか?
さまざまなレベルでの支援が必要です。制度・政策レベルでは、
今よりもはるかにインクルーシブビジネスを促進する状況を作り
出す必要があります。例えば、小規模ビジネスに事業を外注しよ
うとすると、そうした小規模ビジネスを登録するためにおよそ150
段階もの手続きが必要となります。これではあまりに複雑すぎます。
産業レベルでは、適切な研修・教育支援が不可欠です。ほと
んどの大企業は、技術革新と投資によって自らこの課題を乗り
越えます。しかし、インクルーシブビジネスを実行したくても、
そうした課題に対処する能力を持たない中小規模のビジネスに
とって問題となっているのです。
企業レベルでは、「アメ」が重要です。Absaのような大企業
の場合でも、少額の助成金がインクルーシブビジネスのきっか
けとなることもあります。なぜなら、インクルーシブビジネス
に投資するよう上層部を説得するうえでそれが役立つからです。
そのおかげで私は、Absa内ではるかに収益性の高い他のビジネ
スモデルと対抗することなく事業に着手することができ、実例
を示すことができるわけです。そしてこれがひとたび機能すれ
ば、私は根拠をもって競争を始めることができるのです。
インクルーシブのエコシステム構築の成功事例とはどのような
ものでしょうか?
インクルーシブビジネスを実施しようとする企業が自ら支援
を求めることが重要であり、その逆ではいけません。例えば
「Equity Bank」は、新たなビジネスラインを生み出すために、
助成金をうまく活用しています。同行はモバイルバンキング事
業の構築を開始した際、このテーマに関心を持っていた「ビル&
メリンダ・ゲイツ財団」にプロジェクトの提案を行いました。こ
のように、企業は支援を活用することで方向性を見失うのでは
なく、自らが何を必要としているのかを正確に把握したうえで、
支援システムを活用しなければなりません。
どのような支援が提供される機会があるでしょうか?
企業はお互いから学ぶために、もっと積極的に情報共有を行
う必要があります。仲介機関は、情報の開放を促進することが
できます。現在、競争があまりに重視され、連携が軽視されが
ちです。インクルーシブビジネスとそのエコシステムを構築す
るために、企業はもっと連携し、競争を後回しにする必要があ
ります。仲介機関は、事例研究の共有やノウハウの交換を行う
フォーラムなどの開催によって、
「連携した競争」を促す雰囲気
作りに貢献することができます。
68
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Photo: Gerhard Coetzee
6
誰もが貢献可能
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築は複雑な
作業ですが、低所得層における持続的な雇用創出、成長、
および生活条件の改善といった形で見返りが得られます。
インクルーシブビジネスの成功を実現するうえで、「情報」
「インセンティブ」
「投資」
「実施サポート」という4つの
支援機能が重要であるということが明らかになっています。
表4は、これまでの各章で特定されたインクルーシブビジ
ネスのエコシステム構築における貢献機会を主体別にまと
めたものです。アフリカでインクルーシブビジネスのエコ
システムを構築するためには、企業だけでなくすべての社
会的主体において、起業家精神と革新的ソリューションが
求められます。
インクルーシブビジネスを推進する企業や起業家は、以
下の方法によって、エコシステム開発の具体化と推進にも
関わる必要があり、このプロセスを促進することが可能で
す。
・自らの課題を公表すること。結局のところ、支援環境は
起業家や企業の実際のニーズに応えるものでなければな
りません。問題点や失敗、成功やその要因についてオー
プンに話すことにより、学習文化が促され、支援機関に
不可欠な情報が提供されます。
・支援の影響を受けるのではなく、支援を管理すること。
支援の影響を受ける危険性は、特に新興企業や社会事業
において顕著ですが、大企業であっても支援機関の優先
事項やプログラムが意思決定に影響を及ぼす場合があり
ます。しかし、ビジネスは経済的な意味をなし、真の価
値を生み出してこそ持続可能なものとなります。した
がって企業や起業家は、自らが必要とする具体的支援に
ついて積極的な姿勢で臨むべきです。
・効果的なソリューションをともに生み出すために、政府
やその他の支援機関との対話を行うこと。インクルーシ
ブビジネスの事業者だけが、支援政策やプログラムが実
際に役立つか、または市場に好ましくない歪みをもたら
すかを見極めることができます。ソリューションの構築
に関わることで、この深い判断力をインクルーシブビジ
ネスのエコシステムの構築プロセスに直接活かすことが
できます。
実際に企業や起業家は、革新的なビジネスモデルを生み
出すだけでなく、それを取り巻くエコシステムを組織化し、
具体化する「エコシステム起業家」とならなければなりま
せん。
表4:
主体および機能別に見たエコシステム構築への貢献機会
主体
情報
インセンティブ
投資
実施サポート
インクルーシブビジネス投
資基金を立ち上げる。
・支援サービスを提供する
零細企業や小企業を分離
独立させる。
・低所得層におけるビジネ
スを促進するICTシステム
を開発する。
出張サービスなど、公的機
関が民間企業と協力できる
ようにするための枠組みを
作る。
企業
・低所得市場に特化した市場調査
・非正規市場との連携を可能にす
サービスを提供する。
るインセンティブを設定する(調
・データ収集のためのモバイルア
達方針など)。
プリケーションを開発・提供する。 ・低所得者層を取り込む事業に見
・インクルーシブビジネスの現地
返りを与える基準を設定・施行
での開発を可能にするため、技
する。
術ライセンスを提供する。
政府
・市場データ(世帯調査データな
ど)への民間企業のアクセスを
可能にする。
・公的研究機関(農業研究機関な
ど)の民間企業との協力を奨励
する。
・インクルーシブビジネスの推進
に対する表彰制度を確立する。
・インクルーシブビジネスを促進
する政策により、これを促進す
る環境を構築する。新たな市場
を生み出すため、「スマート補助
金」を活用する。
・「インクルーシブ調達」など、イ
ンクルーシブビジネスの主要な
調 達 者 と し て の 役 割 を 果 た し、
供給業者の能力を開発する。ご
み収集などのサービスの外注を
通じてインクルーシブビジネス
の構築を促す。
投資家のリスクを軽減する
保証基金を設立し、インク
ルーシブビジネスにより多
くの資本を呼び込む。
開発関係機関
・市場調査、およびインクルーシ
ブビジネス・モデルとエコシス
テム開発に関する調査に資金を
提供する。
・開発途上国の調査・助言サービ
スの開発を支援する。
・「インクルーシブ調達」など、イ
ンクルーシブビジネスの主要調
達者としての役割を果たし、供
給業者の能力を強化する。
・基準の策定または市場インフラ
への投資により、各主体が連携
するための枠組みに資金を提供
するとともにその促進を行う。
・専門的な助言や政策対話の場を
提供することを通じて、インク
ルーシブビジネスを支援する。
・現地の監視・認証機関の育成を
支援する。
インキュベーターやベン
・チャレンジ基金や同様の
チャー・キャピタル基金など、
資 金 提 供 プ ロ グ ラ ム を、
現地仲介機関を構築する。
現場レベルの技術支援と
結び付ける。
・現地のマーケティングや
物流などのインクルーシ
ブビジネスを支援する
サービスの設立に関して、
起業家を支援する。
市民社会組織
・市場調査サービスを行うための
現地起業家の能力を強化する。
・低所得コミュニティにおける市
場調査を促進する。
基準・認証システムの開発と導入
を支援する。
小規模・零細ビジネスの投
現地のマーケティングや物
資受け入れ能力を強化する。 流などのインクルーシブビ
ジネス支援するサービスの
設立に関して、起業家を支
援する。
研究機関
・インクルーシブビジネスの仕組
みと、それをどう支援できるか
について、地域に特化したノウ
ハウを構築する。
・管理者教育と合わせ、インクルー
シブビジネスや起業についての
研修を実施する。
・業 績 評 価 な ど に お い て イ ン ク
ルーシブビジネス事業者に協力
する。
インセンティブの目標を正しく設
定できるよう、より良い包括性評
価尺度を作る。
社会的影響の測定において、 分 野 を 超 え た パ ー ト ナ ー
インクルーシブビジネスを
シップの効果的なガバナン
支援する。
ス構造について考察する。
仲介機関
・各主体間においてインクルーシ
ブビジネスを推進する。
・複数の企業が研究コストを共有
できるようにするための枠組み
を確立する。
・各種認証の標準化を促進するマ
ルチステークホルダー・プラッ
トフォームを確立する。
インクルーシブビジネスを促進す
る政策を提唱するロビー団体を結
成する。
ペイシェント・キャピタル
とインクルーシブビジネス
の仲介役となる。
既存サービスの透明性を高
める。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
69
6
インクルーシブビジネスのエコシステムの構築
行動要請
何百万人もの若いアフリカの人々の活力を活かして、イ
ンクルーシブビジネス・アプローチをさらに前進させ、ア
フリカの富を実現するためには、すべての主体がより深く
連携し、調整を進めなければなりません。インクルーシブ
ビジネスのエコシステム構築の取り組みの成功事例では、
主体間の調整によって、エコシステムの成果が迅速に得ら
れるということが示されています。この「結合機能」を生
み出すためには、資金の提供と情報の共有が極めて重要で
す。これまでに学んだ教訓から得られたいくつかの追加的
提言を以下に示します。
・包括的な市場の創出とインクルーシブビジネスの促進を
目的とした、インクルーシブビジネスのエコシステム構
築のための新たな取り組みが、国・地域レベルで実行さ
れるべきです。これらの取り組みは、新たな市場の創出
に関わるさまざまな関係者を調整し、インクルーシブビ
ジネスを推進する起業家や企業に直接的な支援を提供す
るものでなければなりません。
・エコシステムの構築を支援する地域・国レベルの金融支
援制度が必要です。これらの制度は、インクルーシブビ
ジネスに直接資金を提供するのではなく、大規模にイン
クルーシブビジネスのエコシステムを構築するための調
整・情報提供・資金提供を進めるために必要な資源を提
供します。これには、インクルーシブビジネスのための
インキュベーター、研究プログラム、投資ファンド、ビ
ジネス開発サービスなどが含まれます。
・インクルーシブビジネスと市場に関する中核的研究拠点
は、国・地域レベルでインクルーシブビジネス・アプロー
チについての知識を構築・共有することが必要です。こ
のような拠点は、特に、既存のエコシステム構築の取り
組みについての研究を行い、成功した例を文書化し、新
たな取り組みの養成・調整役を務めることができます。
「ポスト2015開発アジェンダ」の枠組みは、民間企業
に対し、コアビジネスを通じて、開発目標に貢献するよう
求めます。しかし、インクルーシブビジネスのエコシステ
ムがなければ、企業がこの期待に応えることは難しいで
しょう。そのため、すべての社会的主体が、インクルーシ
ブビジネスを促す適切な環境作りと、アフリカの最大の富
の源である、若く、多くの人々の活力を活かして、それぞ
れの役割を果たさなければならないのです。
70
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
付 録
Photo: @YamPhoto
注 釈
1. これらの見識については、次の出
版 物 に 詳 述 さ れ て い ま す。
「Creating Value for All(貧困層
を 対 象にしたビ ジ ネ ス 戦 略 )
」
UNDP(2008年 )
「The MDGs:
Everyone’s Business(ミレニア
ム開発目標:全ての人々のビジネ
ス)
」UNDP(2010年)
2. 包括的な市場の育成プログラムの
事例一覧からの例については、脚
注で個別に詳述されたり引用され
たりしていません。要約について
は、事例研究の付録を参照してく
ださい。
3. Equity Bank Group
(エクイティ・
バンク・グループ)ウェブサイト
www.equitybankgroup.com
4.「実施サポート」
(第5章)のイン
タビューを参照してください。
5. GIMウェブサイト
www.growinginclusivemarkets.
org
6. 出典:
「Tackling Barriers to Scale
- From Inclusive Business
Models to Inclusive Business
Ecosystems(拡大への障壁と闘
う—インクルーシブビジネス・モ
デルからインクルーシブビジネス
のエコシステムへ)
」クリスティー
ナ・グラドル、ベス・ジェンキン
ス(Christina Gradl and Beth
Jenkins)
(2011年)
7.「African Economic outlook
2012(アフリカ経済見通し 2012
年 版 )
」AfDB、OECD、UNDP、
UNECA(2012年)
8. 前掲書
9.「World Economic outlook
2012(世界経済見通し 2012年
版)
」IMF(2012年)
10.「African Economic outlook
2012( ア フ リ カ 経 済 見 通 し
2012年 版 )
」AfDB、OECD、
UNDP、UNECA(2012年)
11.「Lions on the move - the
progress and potential of
African economies(動くライオ
ン—アフリカ経済の進展と可能
性)
」McKinsey Global Institute
(マッキンゼー・グローバル・イ
ンスティテュート)
(2010年)
12. これらは22か国での世帯調査に
基 づ い て 算 出 し ま し た。
「The
Next 4 Billion. Market Size and
Business Strategy at the Base
of the Pyramid( 次 な る40 億
人—ピラミッドの底辺(BOP)の
市場規模とビジネス戦略)
」IFCお
よびWRI(2007年)を参照して
ください。
13.「African Economic outlook
2 012 : P r o m o t i n g Y o u t h
Employment(アフリカ経済見通
し 2012年版:若年雇用の促進)
」
AfDB、OECD、UNDP、UNECA
(2012年)
14. 前掲書
72
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
15.「Africa Human Development
Report 2012 - Towards a
Food Secure Future(アフリカ
人間開発報告書 2012:食糧が安
定確保される未来に向けて)
」
UNDP(2012年)
16. State of Food Insecurity in the
World 2012(世界の食料不安の
現状 2012年版)
」国連食糧農業
機関(FAO)
、国際農業開発基金
(IFAD)
、世 界 食 糧 計 画(WFP)
(2012年)
17.「Levels & Trends in Child
Mortality(子どもの死亡に関す
る年間報告書)
」IGME(2010年)
18.「Africa Development Indicators
Factoids 2011 - Ten Facts
about Sub-Saharan Africa
Compared with the World(ア
フリカ開発指標の疑似事実
2011——世界と比較した場合の
サハラ以南アフリカの10の真実)
」
世界銀行(2011年)
19.「Africa at work - Job creation
and inclusive growth(アフリカ
の雇用—雇用の創出と包括的な成
長)
」McKinsey Global Institute
(マッキンゼー・グローバル・イ
ンスティテュート)
(2012年)
20. 前掲書
21.「Regional overview: Youth in
Africa(地域概要:アフリカの若
者)
」国連(2011年)
22.「Education for All Global
Monitoring Report 2010(万人
のための教育:グローバル・モニ
タ リ ン グ・ レ ポ ー ト 2010)
」
UNESCO(2010年)
23.「Adult and Youth literacy:
Gl obal Trends in Gender
Parity(成人・若年識字率:ジェ
ンダーパリティの世界的動向)
」
ユネスコ統 計 研 究 所(2010年 )
、
UISファクトシートNo. 3、2010
年9月。
24.「Education for All Global
Monitoring Report 2010(万人
のための教育:グローバル・モニ
タ リ ン グ・ レ ポ ー ト 2010)
」
UNESCO(2010年)
25.「Scaling Up Renewable Energy
In Africa(アフリカでの再生可能
エネルギーの拡大)
」国連工業開発
機関によるエネルギーデータ
(2009年)
、12th Ordinary Session
of the Assembly of Heads of
States and Governments of
the African Union(アフリカ連
合の国・政府の代表者による第
12回常会)
、エチオピア、アディ
スアベバ。AfDB、AUC、UNDP、
UNECAによる水と衛生設備に関
するデータ(2012年)
。Assessing
Progress in Africa Towards the
Mill ennium D e v el opment
Goals(ミレニアム開発目標の達
成に向けてアフリカの進捗状況を
評価する)
。
26.「The Next 4 Billion(次なる40
40.「Financial Inclusion in sub-
27.「World Development Report
41.「Global Topics: Inside Africa
億人)
」WRIおよびIFC(2008年)
。
所得水準に関するすべてのデータ
は、世界銀行のPovCalデータベー
スから引用しました。
http://iresearch.worldbank.
org/PovcalNet/index.htm?1
2012(世界開発報告 2012)
」世
界銀行(2011年)
Saharan Africa(サハラ以南アフ
リカの金 融 包 摂 )
」Bill and
Melinda Gates Foundation(ビ
ル&メリンダ・ゲイツ財団)およ
び 世 界 銀 行(2012年 )
。Findex
Notes No 04
(グローバル・トピックス:イン
サ イ ド・ ア フ リ カ )
」Roland
Berger Strategy Consultants
(ローランド・ベルガー)
(2012年)
28. 包括的な市場の育成プログラムの
事例一覧からの例については、脚
注で個別に詳述されたり引用され
たりしていません。要約について
は、事例研究の付録を参照してく
ださい。
29. Equity Bank Group
(エクイティ・
バンク・グループ)ウェブサイト
www.equitybankgroup.com
42. USAidのデータに基づく。
43. Kenya’s Ministry of Public
health and Sanitation( ケ ニ ア
公衆衛生省)のデータによる。
www.publichealth.go.ke
44.「 Comparativ e IC T Sec t or
Performance Review
2009/2010(ICTセクターの業績
比較評価2009/2010)
」Research
ICT Africa(リサーチICTアフリカ)
エンリコ・カランドロ、アリソン・
ギルワルド、ムフォ・モヨ、クリ
ス ト フ・ ス ト ー ク(Enrico
Calandro, Allison Gillwald,
Mpho Moyo, and Christoph
Stork)
(2010年)
30.「実施サポート」
(第5章)のイン
タビューを参照してください。
31. GIMイニシアティブのオンライ
ン・ケース・データベース(www.
growinginclusivemarkets.org)
を参照してください。
32.「Bop L earning L ab South
Africa(BOPラーニング・ラボ・
サ ウ ス・ ア フリ カ )
」
(2008年 )
「Low Income does not mean
no income(低所得とは無収入
のことではない)
」ファクトシート
33.「 P o s t - 2 0 1 5 M i l l e n n i u m
Development Goals - What
role for business?(ポストミレ
ニアム開発目標—ビジネスの役割
は?)
」ODI(2012年)
45. 国際電気通信連合ウェブサイト www.itu.org
46. 前掲書
47.「Doing business in post-conflict
and fragile states: Challenges
and risks(紛争後の脆弱な国家で
の ビ ジ ネ ス: 課 題 と リ ス ク )
」
DBSA(2011年)
。Development
Planning Division Working
Paper No. 23
(デベロップメント・
プランニング・ディヴィジョン・
ワーキングペーパーNo.23)
。
34.「Tackling Barriers to Scale -
From Inclusive Business
Models to Inclusive Business
Ecosystems(拡大への障壁と闘
う—インクルーシブビジネス・モ
デルからインクルーシブビジネス
のエコシステムへ)
」クリスティー
ナ・グラドル、ベス・ジェンキン
ス(Christina Gradl and Beth
Jenkins)
(2011年)
35. 包括的な文献調査により400の例
を特定しました。
36.「The Fortune at the Bottom of
the Pyramid(ピラミッドの底辺
(BOP)における富)
」C・K・プ
ラハラドおよびスチュアート・ハー
ト(C.K. Prahalad and Stuart
Hart)
(2001年)
。
「The Fortune at
the Bottom of the Pyramid(ピ
ラミッドの底辺(BOP)における
富)
」C・K・ プ ラ ハ ラ ド(C.K.
Prahalad)
(2004年)
48.「The Next 4 Billion. Market
Size and Business Strategy at
the Base of the Pyramid(次な
る40 億 人 —ピ ラミッドの 底 辺
(BOP)の市場規模とビジネス戦
略)
」WRIおよびIFC(2007年)
49. Financial Diaries( フ ァ イ ナ ン
シャル・ダイアリーズ)ウェブサ
イト
www.financialdiaries.com
50.「Doing Business 2013: Doing
Business in a More
Transparent World( ビ ジ ネ ス
環境の現状2013:ビジネス環境
における透明性強化)
」世界銀行
(2012年)
51.「Africa’s Private Sector: What’s
Wrong with the Business
Environment and What to Do
About It( アフリカの 民 間 セク
ター:ビジネス環境の課題と対策)
」
CGAD(2009年)
37.「Agriculture for Development
(開発のための農業)
:World
Development Report( 世 界 開
発報告)
」
。世界銀行(2008年)
38. 前掲書
39.「The Next 4 Billion. Market
Size and Business Strategy at
the Base of the Pyramid(次な
る40 億 人 —ピ ラミッドの 底 辺
(BOP)の市場規模とビジネス戦
略)
」WRIおよびIFC(2008年)
。
52.「Doing business in post-conflict
and fragile states: Challenges
and risks(紛争後の脆弱な国家で
の ビ ジ ネ ス: 課 題 と リ ス ク )
」
DBSA(2011年)
。Development
Planning Division Working
Paper No. 23(デベロップメン
ト・プランニング・ディヴィジョン・
ワーキングペーパーNo.23)
。
53.「Making the Law Work for
Everyone(法をすべての人々の
ために機能させる)
」UNDPおよ
びUN Rule of law(国連ルール・
オ ブ・ ロ ー)
、Commission on
legal Empowerment of the
Poor(コミッション・オブ・リー
ガル・エンパワーメント・オブ・ザ・
プア)
(2008年)
62.国連世界食糧計画
Purchase for Progress(前進の
ための食糧購入)プログラムの
ウェブサイト
w w w . w f p . o r g / p u r c h a s e progress/overview
63. South African Social Security
Agency(南アフリカ社会保障局)
のウェブサイト
www.sassa.gov.za
64.「Cash Transfers Literature
Review(送金に関する文献のレ
ビュー)
」DFID(2011年)
65.「Schooling, Income, and Sexual
Behavior: The Design,
Implementation, and ShortT erm Impac t s o f a CC T
Programme for Schooling in
Malawi(学校教育、所得、性行動:
マラウィの学校教育のためのCCT
プログラムの設計、実施、短期的
影響)
」サラ・ベアード、エフラム・
チウワ、クレイグ・マッキントッ
シュ、バーク、オズラー(Sarah
Baird, Ephraim Chirwa, Craig
McIntosh and Berk Özler)
(2010
年)
。www.iza.org/conference_
files/riskonomics2009/4990.
pdf
54.「Africa at work - Job creation
and inclusive growth(アフリカ
の雇用—雇用の創出と包括的な成
長 )McKinsey Global Institute
(マッキンゼー・グローバル・イ
ンスティテュート)
(2012年)
55.「The informal economy in
Africa: Promoting transition to
formality: Challenges and
strategies(アフリカのインフォー
マル経済:フォーマル経済への移
行を促す:課題と戦略)
」
ILO
(2009
年)
66.「Towards 'smart' subsidies in
agriculture? Lessons from
recent experience in Malawi
(
「スマートな」農業補助金へ? マラウィでの最近の経験からの教
訓)
」
。ODI(2008年)
56.「The Impact of Globalization
on the Informal Sector in
Africa(アフリカのインフォーマ
ルセクターにグローバリゼーショ
ンがもたらす影響)
」ECA(国連
ア フリ カ 経 済 委 員 会Economic
and Social Policy Division( エ
コノミック・アンド・ソーシャル・
ポ リ シ ー・ デ ィ ヴ ィ ジ ョ ン )
)
、
IZA(Institute for the Study of
Labor( イ ン ス テ ィ テ ュ ート・
フォー・ザ・スタディ・オブ・レ
イバー)
(2006年)
57.「Doing Business 2013: Doing
Business in a More Transparent
World( ビ ジ ネ ス 環 境 の 現 状
2013:ビジネス環境における透
明性強化)
」世界銀行(2012年)
67. 自発的炭素取引市場の概観につい
ては、WWF(2008年)
。Making
Sense of the Voluntary Carbon
Market - A Comparison of
Carbon offset Standard(自発的
炭素取引市場を機能させる—カー
ボンオフセット基準の比較)を参
照してください。
68. SAGCOTウェブサイト
www.sagcot.coお よ びwww.
beiracorridor.com
69.「Bertelsmann International
Stiftung(ベルテルスマン・スティ
フトゥング )およびUN Global
Compact(国連グローバルコン
パクト)
(2011年)
。
「Partners in
Development - How Donors
can better engage the private
sector for development in
LDCs(開発支援機関―援助国は、
LDCの開発に民間セクターの関与
をどのように深化させることがで
きるか)
」
58. 前掲書
59.「Africa can help feed Africa -
Removing barriers to regional
trade in food staples(アフリカ
によるアフリカのための食料生産
の可能性—主食の域内貿易に対す
る障 壁 を 取り除く)
」世 界 銀 行
(2012年)
60.「Sustainable Public Procurement
( 持 続 可 能 な 公 共 調 達 )UN
Procurement Capacity
Development Centre(国連プロ
キュメント・キャパシティ・デベ
ロップメント・センター)
、UNDP
(2012年)
70. Mondelez International(モンデ
61.「 M a r k e t s f o r E c o s y s t e m
性ウェブサイト
www.unilever.com/sustainableliving/ourapproach/
oursustainabilitystrategy
Services -A Potential Tool for
Multilateral Environmental
Agreements(エコシステムサー
ビスのための市場—多国間環境協
定のための有望なツール)
」IISD
(2006年)
リーズ・インターナショナル)のウェ
ブサイトwww.kraftfoodscompany.
com/eu/en/Responsibility/
sustainability/index.aspx
71. Unilever(ユニリーバ)持続可能
72.「 Promoting standards for
responsible investment in
value chains(バリューチェーン
への責任投資のための基準の促
進)
」UNCTAD(2011年)
,HighLevel Development Working
Group
(ハイレベル開発作業部会)
へのG20報告書。
73.「Patient Capital for an Africa
That Can't Wait(アフリカへの
一刻も早いペイシェント・キャピ
タルを)トーマス・L・フリードマ
ン(Thomas L. Friedman)
(2007
年)
」ニューヨークタイムズ(2007
年4月20日)
。
74. 世界銀行企業調査。
www.enterprisesurveys.org
75.「Financing SMEs in a context
of strong information
asymmetry. Private Sector &
Development(1)
(情報の非対
称性が強い場合の中小企業への
融資。民間セクターと開発(1)
」
。
83. Mix Market(ミックス・マーケッ
ト)ウェブサイト
w w w .mixmark e t .or g /mfi/
region/Africa
84.「How we made it in Africa(私
たちがアフリカで成功したわけ)
」
ウェブサイト
www.howwemadeitinafrica.
com/mobile-banking-movingbeyond-just-providingtransactional-services/4705/
85. 世界銀行
(2012年)
「Remittances
。
Flows in 2011- an Update
(2011年の送金フロー—改訂版)
。
Migration and Development
Brief(移住と開発ブリーフ)
」
86. IFADウェブサイト
www.ifad.org/remittances/
maps/africa.htm
87. MyC4ウェブサイト
www.myc4.com
88.「D oing busine s s in p o s t -
conflict and fragile states:
Challenges and risks(紛争後の
脆弱な国家でのビジネス:課題と
リ ス ク )
」
。Development
Planning Division Working
Paper No. 23(デベロップメン
ト・プランニング・ディヴィジョン・
ワーキングペーパーNo.23)
76. Global Development Advisors
(グローバル・デベロップメント・
アドバ イザ ース )
(2011年 )
。
Impact investing in West Africa
(西アフリカのインパクト・インベ
ストメント)
。
77.「Two Trillion and Counting:
Assessing the credit gap for
micro, small and medium-sized
enterprises in the developing
world(2兆と集計:開発途上地
域の零細・中小企業のクレジット・
ギャップ評価)
。
78. G l o b a l I m p a c t I n v e s t i n g
Network(グローバル・インパ
クト・インベストメント・ネット
ワーク)ウェブサイト
www.thegiin.org
89.「Education at a Glance( 図 表
でみる教育)
」OECD(2011年)
90.「Education for All(すべての人
のための教育)
」UNESCO(2010
年)
91.「Measuring Financial Inclusion:
The Global Findex Database
(金融包摂の測定:グローバル・
フィンデックス・データベース)
」
。
Polic y R esearch W orking
Paper 6025(政策研究ワーキン
グ ペ ー パ ー6025)
。世界銀行
(2012年)
79.「Dalberg Global Development
Advisors(ダ ルバーグ・グロー
バル・デベロップメント・アドバ
イザース)
」
(2011年)
。
「Impact
investing in West Africa(西ア
フリカのインパクト・インベスト
メント)
」
。
92. 前掲書、2。
93. Making Markets Work for the
Poor(貧困者層に資する市場開
発)
(M4P)アプローチについて
の 詳 細 は、DFIDお よ びSDCの
2008年 刊行A Synthesis of the
Making Markets work for the
Poor(M4P)Approach( 貧 困
者 層 に 資 す る 市 場 開 発(M4P)
アプローチの統合)を含む、一連
の刊行物などを参照してください。
80. G l o b a l I m p a c t I n v e s t i n g
Network(グローバル・インパ
クト・インベストメント・ネット
ワ ー ク ) お よ び「Perspectives
on Progress - The Impact
Investor Survey(進歩に関する
見通し―インパクト・インベスト
メント調査)
」
。JP Morgan(J・.P・
モルガン)
(2012年)
81. ア ー ノ ル ド・ エ ク ペ(Arnold
EKPE)
、Ecobank(エコバンク)
CEO、
テミトペ・オシコヤ教授(Dr.
T e m i t o p e O S H I K O Y A )、
Ecobank( エ コ バ ン ク )Senior
Policy Adviser(上級政策アドバ
イザー)へのインタビュー。
82. ジ ェー ム ズ・ムワン ギ(James
Mwangi)
、Equity Bank(エクイ
ティ・バンク)CEOへのインタ
ビュー。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
73
略 語
略語
AFD
AATIF
Absa
ACA
AEC
AECF
AECID
AFIM
AMADER
ARV
AU
AusAid
B2B
BEE
BID Network
BMZ
BOP
CAADP
CARE
CBO
CDM
CECI
CFW
74
正式名称と訳
French Development Agency
フランス開発庁
Africa Agriculture and Trade Investment
Fund
アフリカ農業貿易投資基金
Absa Group Limited
アブサグループ
African Cashew Alliance
アフリカカシューナッツ協会
African Economic Community
アフリカ経済共同体
Africa Enterprise Challenge Fund
アフリカ企業チャレンジファンド
Spanish Agency for International
Development Cooperation
スペイン国際開発協力庁
African Facility for Inclusive Markets
アフリカ包括的市場ファシリティ
Malian Agency for the Development of
Household Energy and Rural
Electrification
マリ地方電化家庭エネルギー開発局
anti-retrovirals
抗レトロウイルス薬
African Union
アフリカ連合
Australian Agency for International
Development
オーストラリア国際開発庁
Business to Business
企業間取引
Black Economic Empowerment
黒人経済権限付与計画
Business in Development Network
ビジネス開発ネットワーク
German Federal Ministry for Economic
Cooperation and Development
ドイツ連邦経済協力開発省
Bottom of the Pyramid
所得ピラミッドの最下層
Comprehensive Africa Agriculture
Development Programme
包括的アフリカ農業開発プログラム
Cooperative for Assistance and Relief
Everywhere
国際ケア機構(地球規模の支援及び救援組合)
community-based organizations
コミュニティを基盤とする組織
Clean Development Mechanism
クリーン開発メカニズム
CSO Centre d’Etude et de Coopération
Internationale
カナダ国際問題協力センター
Child and Family Wellness
チャイルド・アンド・ファミリー・ウェルネ
ス(子どもと家族の健康)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
略語
CGIAR
COCOBOD
COMESA
COMPACI
CSO
CSR
DADTCO
Danida
DEG
DFI
DFID
EAC
ECOWAS
EDF
EIAR
FEPP
FSD
GADCO
GDP
GfK
GIM
GIZ
HIV/AIDS
正式名称と訳
Consultative Group on International
Agricultural Research
国際農業研究協議グループ
Ghana Cocoa Board
ガーナ・カカオ・ボード
Common Market for Eastern and
Southern Africa
東南部アフリカ市場共同体
Comprehensive African Cotton Initiative
包括的アフリカ綿栽培イニシアティブ
civil society organization
市民社会組織
corporate social responsibility
企業の社会的責任
Dutch Agricultural Development and
Trading Company
オランダ農業開発貿易会社
Danish International Development
Agency
デンマーク国際開発庁
German Investment and Development
Corporation
ドイツ投資開発公社(DEG)
development finance institution
開発金融機関
U.K. Department for International
Development
英国国際開発省
East African Community
東アフリカ共同体
Economic Community of West African
States
西アフリカ諸国経済共同体
Electricité de France
フランス電力会社
Ethiopian Institute for Agricultural
Research
エチオピア農業研究機構
Financial Education and Consumer
Protection Partnership
金融教育・消費者保護パートナーシップ
Kenya Financial Sector Deepening
Initiative
ケニア金融部門深化イニシアティブ
Global Agri-Development Company
世界農業開発会社
Gross Domestic Product
国内総生産
Society for Consumer Research
消費者調査会社(GfK)
Growing Inclusive Markets
包括的な市場の育成
German Society for International
Cooperation
ドイツ国際協力公社
Human Immunodeficiency Virus/Acquired
immune deficiency syndrome
ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群
略語
ICCO
ICT
iDE
IFAD
IFC
IFPRI
IISD
IITA
ILO
IMD
IT
ITFC
KACE
LA
MDG
MFI
M4P
MNC
MSME
NMFA
OHADA
PSE
REC
RESCO
正式名称と訳
Interchurch organization for development
cooperation
開発協力のための宗派間組織
information and communications
technology
情報通信技術
International Development Enterprises
国際開発エンタープライズ
International Fund for Agricultural
Development
国際農業開発基金
International Finance Corporation
国際金融公社
International Food Policy Research
Institute
国際食糧政策研究所
International Institute for Sustainable
Development
持続可能な開発に関する国際研究所
International Institute of Tropical
Agriculture
国際熱帯農業研究所
International Labour Organisation
国際労働機関
Inclusive Market Development
包括的な市場の開発
Information Technology
情報技術
Integrated Tamale Fruit Company
タマレ総合果実会社
Kenya Agricultural Commodity Exchange
Ltd.
ケニア農産品取引所
Lighting Africa
アフリカに光を
Millennium Development Goals
ミレニアム開発目標
micro-finance institutions
マイクロファイナンス機関
Making Markets Work for the Poor
貧困者に益する市場システムの構築
multinational company
多国籍企業
micro, small and medium-sized
enterprises
中小零細企業
Netherlands Ministry of Foreign Affairs
オランダ外務省
Organization for the Harmonization of
Business Law in Africa
アフリカ商法調整機関
private sector engagement
民間部門の参画
regional economic communities
地域経済共同体
Rural Energy Services Companies
農村地域エネルギーサービス会社
略語
SACCO
SADC
SAGCOT
SASRA
Sida
SME
SNV
UNCTAD
UNDP
USAID
VEV
VSO
WFP
WRI
WSUP
WWF
YEN
正式名称と訳
Savings and Credit Cooperative
Organisation
貯蓄信用協同組合
Southern African Development
Community
南部アフリカ開発共同体
Southern Agricultural Growth Corridor of
Tanzania
タンザニア南部農業成長回廊
SACCO Societies Regulatory Authority
SACCO規制当局
Swedish International Development
Cooperation Agency
スウェーデン国際開発協力庁
small and medium enterprises
中小企業
Dutch Development Agency
SNV(オランダ開発機構)
United Nations Conference on Trade and
Development
国連貿易開発会議
United Nations Development Programme
国連開発計画
United States Agency for International
Development
米国国際開発庁
Senegalese company Du Vent, de L’Eau
pour la Vie
セネガル企業「生活のための風と水」
Voluntary Service Overseas
ボランタリー・サービス・オーバーシーズ
World Food Programme
国連世界食糧計画
World Resources Institute
世界資源研究所
Water and Sanitation for the Urban Poor
都市部貧困層のための水と衛生
World Wide Fund for Nature
世界自然保護基金
Youth Employment Network
若年雇用ネットワーク
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
75
事例研究
企業名
国
企業形態
分野
執筆年
Adina for life(アディナ・フォー・ライフ)
セネガル
中小企業
農林業
2010年
Amanz’abantu(アマンザバンツ)
南アフリカ
中小企業
水と衛生設備
2008年
Aspen Pharmacare(アスペン・ファーマケア)
南アフリカ
多国籍企業(途上国) 医療
2008年
Association of Private Water Operators( ア
ウガンダ
中小企業
水と衛生設備
2008年
Barclays(バークレイズ)
ガーナ
多国籍企業(外資系) 金融サービス
2008年
BRAC
リベリア
市民社会組織
2012年
Cadbury Cocoa Partnership(キャドバリー・
ガーナ
多国籍企業(外資系) 農林業
2012年
Cashew Producers(カシュー・プロデューサーズ) ギニア
中小企業
2008年
Celtel(セルテル)およびCelpay(セルペイ)
コンゴ民主共和国
多国籍企業(途上国) ICT
2008年
Chaka Group(チャカ・グループ)
セネガル
中小企業
ICT
2008年
Du vent, de l’Eau pour la Vie(ドゥ・ヴァン・
セネガル
中小企業
水と衛生設備
2010年
Dunavant(デュナバント)
ザンビア
多国籍企業(外資系) 農林業
2012年
Ecotact(エコタクト)
ケニア
市民社会組織
2010年
EDF(フランス電力公社)
マリ
多国籍企業(外資系) エネルギー
2008年
Edu-loan(エデュローン)
南アフリカ
中小企業
金融サービス
2008年
The El-Fashir Blacksmiths Cooperative(エル・
スーダン
市民社会組織
消費財
2010年
Esoko(エソコ)
ガーナ
市民社会組織
ICT
2010年
Ethiopian Honey and Beeswax Producers
エチオピア
市民社会組織
農林業
2012年
Fair Trade Cotton(フェア・トレード・コットン) マリ
市民社会組織
農林業
2008年
GADCO(世界農業開発会社)
ガーナ
中小企業
農林業
2012年
Inova(イノヴァ)
ブルキナファソ
中小企業
金融サービス
2012年
Integrated Tamale Fruit Company(インテグ
ガーナ
中小企業
農林業
2008年
K-REP Bank(Kレプ・バンク)
ケニア
大企業
金融サービス
2008年
Kenya Agricultural Commodity Exchange
ケニア
市民社会組織
農林業
2010年
Kuyasa(クヤサ)
南アフリカ
市民社会組織
エネルギー
2010年
L’occitane(ロクシタン)
ブルキナファソ
多国籍企業(外資系) 農林業
2012年
Lonestar(ローンスター)
リベリア
中小企業
ICT
2012年
MAP International(MAPインターナショナル)
ウガンダ
中小企業
金融サービス
2010年
Mobah Rural Horizons(モバー・ルーラル・ホ
ナイジェリア
中小企業
消費財
2010年
ソシエーション・オブ・プライベート・ウォーター・
オペレーターズ)
カカオ・パートナーシップ)
およびUSAID(米国国際開発庁)
デロ・ポー・ラ・ヴィ)
ファーシル・ブラックスミス・コーポラティブ)
金融サービス
農林業
水と衛生設備
およびPractical Action(プラクティカル・アク
ション)
and Exporters Association(エチオピアン・ハ
ニー・アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・
アンド・エクスポーターズ・アソシエーション)
レイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー)
Limited(ケニア・アグリカルチュラル・コモディ
ティ・エクスチェンジ・リミテッド)
ライズンズ)
76
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
企業名
国
企業形態
分野
執筆年
Moladi(モラディ)
南アフリカ
中小企業
住宅・建設
2010年
Mondi Recycling(モンディ・リサイクリング)
南アフリカ
多国籍企業(外資系) 廃棄物
2010年
Olam(オーラム)
ナイジェリア
多国籍企業(外資系) 農林業
2010年
PepsiCo(ペプシコ)
エチオピア
多国籍企業(外資系) 農林業
2012年
Pésinet(ペシネット)
マリ
市民社会組織
医療
2008年
RMBおよびNedbank(ネッドバンク)
南アフリカ
大企業
金融サービス
2008年
Safaricom(サファリコム)によるM-Pesa(Mペサ) ケニア
多国籍企業(外資系) ICT
2008年
Sanofi(サノフィ)
サハラ以南アフリカ
多国籍企業(外資系) 医療
2008年
Tedcor(テッドコア)
南アフリカ
中小企業
廃棄物
2010年
The Sustainable Healthcare Foundation( サ
ケニア
市民社会組織
医療
2008年
Tiviski Dairy(ティビスキー・デイリー)
モーリタニア
中小企業
農林業
2008年
ToughStuff(タフスタッフ)
ケニア
中小企業
エネルギー
2012年
Toyola(トヨラ)
ガーナ
中小企業
エネルギー
2010年
VidaGás(ヴィダガス)
モザンビーク
市民社会組織
エネルギー
2008年
スティナブル・ヘルスケア・ファウンデーション)
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
77
事 例 研 究
Adina for Life(アディナ・フォー・ライフ)
企業形態
分野
国
中小企業
セネガル
ア
ディナ・フォー・ライフは2004年に設立
アディナの創業資金は、大部分が民間資本とベ
されたジョイントベンチャーで、文化的伝
ンチャーキャピタリストから提供されました。また、
農林業
支援機能
投資
実施サポート
統のある健康飲料を北米市場に販売しています。
多国籍農業コンサルタント、
「アグリビジネス・イ
在外セネガル人のマルゲット・ウェイド・マルシャ
ン・サスティナブル・ナチュラル・アフリカン・
ン 氏 は、 セ ネ ガ ル 文 化 の 重 要 な 象 徴 で あ る、
プランツ」
(Agribusiness in Sustainable Natural
Bissap(ビサップ)と呼ばれるハイビスカスドリ
African Plants: ASNAPP)と、セネガル大統領夫
ンクが消えつつあることを知り、この構想を思い
人が主導する非営利団体、
「アソシエーション・エ
つきました。彼女は、飲料業界の起業家グレッグ・
デュケーション・サンテ」
(Association Education
ステルテンポールさんと手を組み、セネガルで飲
Santé: AES)も支援を行っており、両団体は助言
用のハイビスカスの花を栽培する「クオリティ・バ
とモニタリングを行いました。AESは、事業の初
イオロジカル・アグリカルチュラル・コーポラティブ」
期段階で同協同組合に研修も実施しました。
(Quality Biological Agricultural Cooperative:
QABCOO)とフェアトレード契約を結びました。
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
この協同組合に加入している527人は、その大半
が女性であり、所得が8倍に増加し、能力構築か
ら恩恵を受けました。アディナは、同様のビジネ
スモデルを、エチオピア、グアテマラ、インド、
執筆年
2010年
インドネシアでも実施しています。
Amanz’abantu(アマンザバンツ)
企業形態
国
中小企業
分野
南アフリカ
水と衛生設備
支援機能
インセンティブ
実施サポート
南
アフリカのイースタンケープ州では、多く
しています。アマンザバンツは、設計と建築、配水・
の人が飲料水と衛生設備を利用できず、数
衛生事業において、環境上健全な慣行に従ってい
時間歩いて非衛生的な川の水を汲みに行かなけれ
ます。
ばなりませんでした。
1990年代後半、南アフリカ政府は、サービス
ホサ語とンデベレ語、ズールー語で「人々のた
提供への需要に対する官民パートナーシップによ
めの水」を意味するアマンザバンツは、イースタ
るソリューションを導入しました。南アフリカ水
ンケープ州の都市周辺や農村のコミュニティで不
問題・森林省が対応した「建設・運営・訓練・譲渡」
足しているこれらのサービスを補うために、1997
(Build, Operate, Train, Transfer: BoTT)プロ
年に民間企業として設立されました。同社は国際
グラムが、アマンザバンツ設立の下地を作りまし
的な品質基準を満たす水を供給し、個人がスマー
た。
トカード技術を利用したスタンドパイプにアクセ
スできる場所にパイプで配水します。自宅から
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
ウスマン・モロー
(Ousmane Moreau)
執筆年
2008年
78
200メートル以内に安全な水が供給されることに
より、住民の生活は変わりました。アマンザバン
ツは、地元の労働力を利用して、雇用を創出し、
雇用に適した技能を教授し、水道・衛生システム
の設計・建設のあらゆる側面について訓練を実施
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Aspen Pharmacare(アスペン・ファーマケア)
国
南アフリカ
企業形態
多国籍企業(途上国)
南
アフリカは、世界でもっともHIV/エイズ罹
アスペンは、南アフリカでのジェネリック薬の
患率が高い国のひとつですが、2001年まで、
開発において組織支援を受けました。南アフリカ政
府は、
市民社会団体からの圧力を受けて、
ジェネリッ
ほとんどの感染者にとって、抗レトロウイルス
クARV薬の製造の必要性を認識し、
「戦略的投資プ
(ARV)薬は高価すぎて手が届きませんでした。
分野
医療
支援機能
インセンティブ
ログラム」
(Strategic Investment Programme:
SIP)に定められた税制上の優遇措置を利用して、
「アスペン・ファーマケア・ホールディングス」
アスペンがジェネリックARV薬の製造施設に投資
(Aspen Pharmacare Holdings Ltd.: アスペン)
は、ダーバンに本社を置く大手製薬会社であり、
できるようにしました。その投資と南アフリカに
南アフリカの公共セクターによる、誰もが無料で
おけるARV薬の大規模プログラムへの期待に基づ
受けられるHIV/エイズ治療プログラム向けに、安
き、アスペンは多種多様なARV薬を生産するため
価なジェネリックARV薬を供給しています。また、
に、特許権を持つ多数の多国籍企業から任意ライ
結核、マラリアなどの他の生命に関わる疾病の治
センスを取得しています。
療のために、安価な医薬品も供給しています。同
社は、スティーブン・サード氏によって1997年
コートニー・スプレイグ
(Courtenay Sprague)
スチュ・ウールマン
(Stu Woolman)
に設立されました。小規模で始まった同社は、現
在ではアフリカ最大の医薬品メーカーに成長して
います。
著者
執筆年
2008年
Association of Private Water Operators
s (アソシエーション・オブ・プライベート・ウォーター・オペレーターズ)
国
ウガンダ
企業形態
中小企業
ウ
ガンダでは、人口の85%以上が農村地域に
創業資金の大部分は、
「貧困活動基金」(Poverty
暮らしています。そうした地域は、しばし
Action Fund: PAF)から拠出され、さらにウガ
ば水供給が不十分で、貧困が悪化し、疾病の蔓延
ンダ政府や他の援助国からも資金供与がありまし
につながるような状況です。
た。1999年に実施された「ウガンダ国家水政策」
(Ugandan National Water Policy)は、改革の
2003年、ウガンダは、水に対する農村のニー
ための政策枠組みを提供しました。APWOは、加
ズに応えるための官民パートナーシップを考案し
入を認めるための認定マニュアルを策定しました。
ました。政府が用地を探し、井戸を掘り、コミュ
APWO加入者は、GIZとウガンダ政府が提供する
ニティに土地の購入を促し、敷設に補助金を拠出
技術訓練、管理研修を受けます。
分野
水と衛生設備
支援機能
インセンティブ
投資
実施サポート
します。「アソシエーション・オブ・プライベート・
(APWO)の傘下
ウォーター・オペレ-ターズ」
で運営する民間の給水業者は、配水と安全点検を
行い、利益を確保します。一方、コミュニティの
水道委員会は、その資産を所有し料金と方針を定
めます。2011年、ウガンダ全土の74の小さな町で、
3万5000人が民間の給水業者による給水施設に
接続しました。
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ
(Diane Ndutu Kanyagla)
執筆年
2008年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
79
事 例 研 究
Barclays(バークレイズ)
企業形態
国
多国籍企業(外資系)
分野
ガーナ
ICT
支援機能
情報
実施サポート
ス
小規模企業金融などの他のサービスを販売します。
ス(Susu)は、アフリカで300年以上の歴
史を持つ金融サービスで、貯蓄預金を行う
インフォーマルな制度です。集金人は、毎日また
バークレイズは、潜在的なエンドユーザーを、
は 毎 週、 所 定 の 金 額 を 集 め ま す。 ガ ー ナ で は
財務管理と保険を対象にしたミーティングや講習
4000人のスス集金人が活動しており、毎日200
会に招待することで、「スス・コレクターズ・イニ
人から850人の顧客にサービスを提供しています。
シアティブ」
(Susu Collectors Initiative)につ
いての認識を向上させています。また、延滞管理、
2005年、
「ガーナ・バークレイズ銀行」
(Barclays
金融債権、リスク管理について、スス集金人に研
Bank of Ghana)は、ススによる集金を利用して、
修も行っています。
ガーナの小規模商人や零細起業家向けのマイクロ
ファイナンスの拡大に着手しました。集金人は、
バークレイズの支店に安全にお金を預けることが
でき、利息を得られます。代わりに、バークレイ
著者
ロバート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
ズは集金人の既存顧客を顧客として獲得し、集金
人のノウハウと顧客との信頼関係から恩恵を得ら
れます。このプログラムにより、銀行はそのネッ
トワークを拡大することなく、キャッシュフロー
執筆年
2008年
を増やすことができます。同社は、集金人を通じて、
BRAC
企業形態
国
市民社会組織
分野
リベリア
金融サービス
支援機能
インセンティブ
投資
リ
ベリアは、14年におよぶ内戦が2003年に
供しています。
終結してから、物的資本と人的資本の両方
の再建で重大な問題に直面しています。正式に就
BRACは、リベリア外務省と連携し、定款を発
労 し て い る の は、 国 民 の わ ず か15 % で あ り、
行して、マイクロフィナンス会社の登録を可能に
68%が貧困線以下で暮らしています。
しました。BRACは、
「BRACキヴァ」
(BRAC-Kiva)
や「家族のオンライン安全機関」(FOSI)、
「英国
BRACは、1972年にバングラデシュで設立され
国際開発省」(DFID)、「キヴァ」(KIVA)、「ソロ
たNGOで、リベリアでは2008年に活動を開始し
ス経済開発基金」(SEDF)などの他の援助機関か
ました。小規模企業への融資だけでなく、一般的
ら資金を獲得しました。
には小規模な事業を行う女性に対して、マイクロ
ファイナンスを提供します。また、農業投入物と
無料の講習会を提供することで、小規模農業従事
者の農業活動を支援します。担保を要求せず、有
著者
アルフレッド・K・ターウェイ・
トワラ(Alfred K TarwayTwalla)
利な利率で100ドルから500ドルの小口融資を実
施します。同団体は、リベリアの15の郡のうち7
つの郡に30か所のマイクロファイナンスの窓口を
開設して、約300人のリベリア人を雇用し、約2
執筆年
2012年
80
万5000人の低所得者にマイクロフィナンスを提
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Cadbury Cocoa Partnership
(キャドバリー・カカオ・パートナーシップ)
国
ガーナ
企業形態
多国籍企業(外資系)
2
012年、 カ カ オ は ガ ー ナ の 総 輸 出 収 入 の
るためにカカオ農家と密接に連携するよう研修を
22.5%を占めていました。しかし、低い生産
行います。また、同パートナーシップは、仲間同
性、農業投入物と融資へのアクセスの欠如などの
士のメンタリングや意識向上プログラムによって、
障害が、カカオの持続的な生産を脅かしています。
若者のカカオ農業への関心を引き出そうと働きか
けています。
分野
農林業
支援機能
情報
投資
実施サポート
キャドバリー・カカオ・パートナーシップは、
同パートナーシップは、政策レベル、実施レベル、
「モンデリーズ・インターナショナル」
(Mondelēz
International)
(元キャドバリー/クラフト)、
「ガー
コミュニティレベルで働きかけるパートナーとの
ナ・ コ コ・ ボ ー ド 」(Ghana Cocoa Board)
強固なネットワークから恩恵を得ています。モン
(COCOBOD)、UNDP、「ワールド・ビジョン」
デリーズ・インターナショナルは3000万英国ポ
(World Vision)、「ケア・インターナショナル」
ンドの実施資金を拠出し、パートナーの調整を
(CARE International)などのパートナーによって、
行っています。UNDPは、プログラムの展開を拡
2008年に設立されました。同パートナーシップは、
大するために、戦略的・技術的助言を提供してい
現在、7つの地区の209のコミュニティに利益を
ます。COCOBODは、技術サポート、研究開発、
もたらしています。各コミュニティで地元のまと
施策を後押しします。ケア・インターナショナル
め役を選び出して、定期的な収穫、殺虫剤の散布、
などのNGOは、コミュニティレベルで、能力構
フェアトレード認証のほか、運営情報の交換など
築とコミュニティ開発計画形成への支援に取り組
を促す農村共同体の形成を通じて、生産を拡大す
んでいます。
執筆年
2012年
Cashew Producers(カシュー・プロデューサーズ)および
USAID(米国国際開発庁)
国
ギニア
企業形態
中小企業
2
著者
ロバート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
008年、ギニアでは約5000トンのカシュー
同パートナーシップは、米国USAIDとSPCIA―
ナッツが生産されました。肥沃な土壌と気
地元の農業支援・輸出組織―とクラフト・フーズ
候条件が高品質のカシューの大規模栽培に適して
からの100万ドルの資金提供を受けて開始されま
いるにもかかわらず、ギニアの生産高は期待され
した。ギニア政府は輸出税を適用しないことで、
るよりもずっと少ない量です。市場開発のための
この部門の成長に寄与しています。SPCIAは、活
政府による支援、資金供給、調整がないために、
動を調整して情報を共有するための農業従事者に
この部門の可能性が十分に引き出されていません。
よる協同組合の設立を支援しています。また、他
分野
農林業
支援機能
インセンティブ
投資
実施サポート
のNGOと協力して、重要な技術訓練も実施して
2004年以降、
「グローバル・デベロップメント・
います。
ア ラ イ ア ン ス・ パ ー ト ナ ー シ ッ プ 」(Global
Development Alliance Partnership)―ギニア
の い く つ か の カ シ ュ ー 協 同 組 合、 ギ ニ ア 政 府、
USAID、多国籍食品企業の「クラフト・フーズ」
(Kraft Foods)が参加―が、ギニア人農業従事者
によるカシューの生産と販売を支援しています。
老朽化したカシューのプランテーション農園が修
復され、種子品質が改良されて、多くの農業従事
者が訓練による恩恵を受けました。
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
ウスマン・モロー
(Ousmane Moreau)
執筆年
2008年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
81
事 例 研 究
Celtel(セルテル)およびCelpay(セルペイ)
企業形態
国
多国籍企業(途上国)
分野
コンゴ民主共和国
ICT
支援機能
情報
投資
実施サポート
コ
ン ゴ 民 主 共 和 国(Democratic Republic
ンフラの欠如から孤立していたコミュニティ間で
of Congo: DRC)の電気通信業界は、長ら
の情報交換を可能にしました。
くインフラの欠如と破綻した経済に悩まされ、長
年の内戦に妨げられて、開発が進んでいませんで
セルテルDRCは、親会社から強力な財政支援を
した。「セルテル・インターナショナル」(Celtel
受けていて、政治指導者とも強固な関係を築いて
International)
(2010年に「バーティ・エアテル」
います。2003年に可決された、電気通信業に一
(Bharti Airtel)に買収され、現在の商標は「エ
段と明確な枠組みを提供する法律からも恩恵を受
ア テ ル 」(Airtel)) が、2000年 にDRC市 場 に 参
けました。セルテルは、意欲溢れる若手従業員と
入しました。市場を取り巻くのは、貧困の蔓延、
経験を積んだ管理職を対象にした研修プログラム
人的能力の劣化、政情不安でした。潜在的な顧客
に投資しています。
基盤は小さく、そこまで届ける機会も限られてい
ました。こうした障害にもかかわらず、セルテルは、
同国で200万人以上の顧客を獲得しました。また、
著者
フアナ・デ・カトー
(Juana de Catheu)
同社はモバイル・バンキングシステムとして、セ
ルペイ―現在は「ファーストランド」
(FirstRand)
金融グループが所有―を設立しました。セルテル
は地元経済に現金を注入し、何百もの直接雇用と
執筆年
2008年
何千もの間接雇用を創出し、これまでは内戦とイ
Chaka Group(チャカ・グループ)
企業形態
国
中小企業
分野
セネガル
ICT
支援機能
実施サポート
セ
ネガルの貧困に悩む多くの世帯が、国外移
ています。同社は、顧客や代理人に、高齢の顧客
住者からの送金に依存していますが、送金
に対する現金宅配払いも実施すると謳っています。
は必ずしも簡単にできるわけではありません。
マネー・エクスプレスは、国立銀行から村の小
チャカ・グループの事業を代表する旗艦会社、
規模貯蓄機関にいたる金融機関からなるネット
「マネー・エクスプレス」(Money Express)は、
ワークと協力しています。
「セネガル・ハウジング・
西アフリカ諸国への安価で便利な送金手段を提供
バンク」(Senegalese Housing Bank)は、大き
します。1994年にセネガル人起業家、メイサ・
なセネガル人社会のある国すべてで営業している
デゴネ・ンゴマ(Meissa Deguene Ngoma)が
ため、特に重要なパートナーです。マネー・エク
設立したマネー・エクスプレスは、農村地域でも
スプレスは研修にも重点を置いています。
都市部でも営業しており、村にある小規模銀行の
複数のネットワークと提携しています。同じ部門
での既存の大手競合他社より、マネー・エクスプ
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
ウスマン・モロー
(Ousmane Moreau)
執筆年
2008年
82
レスを利用する方が安価に送金できます。また、
同社による送金サービスは、既存銀行を利用する
のに必要な身分証明書を持たない顧客も利用でき、
完全な現金での取引と口座振替のどちらか、ある
いは両方を組み合わせた送金オプションを提供し
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Du vent, de l’Eau pour la Vie(ドゥ・ヴァン・デロ・ポー・ラ・ヴィ)
国
セネガル
企業形態
中小企業
給
水は、セネガル農村地域の重要課題です。
地部品を調達するとともに、新しいポンプの製造
こうした地域に暮らす人々は、古くからあ
とコミュニティの用地への設置を続けています。
る井戸の水に依存していますが、そうした井戸は、
ポンプによって、庭での耕作による所得、健康状
ときに頼りなく、主に女性にとって大変な骨折り
態の改善、水汲みに要する時間の短縮など、数々
になります。
の 恩 恵 が コ ミ ュ ニ テ ィ に も た ら さ れ て い ま す。
分野
水と衛生設備
支援機能
インセンティブ
投資
実施サポート
660人から1100人の雇用も創出されました。
この問題を解決するために、1981年から1991
年にかけて、資金が枯渇するまで、イタリアの援助
セネガル政府は、LVIAプロジェクトを継続する
機関、
「レイ・ボランティアーズ・インターナショ
許可を与え、インドから輸入せざるをえなかった
ナ ル・ ア ソ シ エ ー シ ョ ン 」(Lay Volunteers
ポンプの部品について、VEVに減税措置を講じま
International Association)(LVIA) が、 セ ネ ガ
した。同社は、途上国の小規模エネルギービジネ
ルの130の村に、風力を利用した給水ポンプを設
スを支援するNGO、「エコ」(E+Co)から初期の
置しました。同機関に雇用されていた地元の男性、
融資を受けました。VEVは、カトリック教会の国
ミッチェル・タイン(Michel Tine)が、その後、
際的慈善団体、「カリタス」
(Caritas)から経営
Du vent, de l'Eau pour la Vie(Wind, Water
指導も受けました。
for Lifeという意味)という名称の企業を設立して、
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
事業を引き継ぎました。同社は、ポンプのメンテ
ナンスと修理を行い、ポンプを新設する際には現
執筆年
2010年
Dunavant(デュナバント)
国
ザンビア
企業形態
多国籍企業(外資系)
ザ
ンビアの綿工業は、およそ35万人の小規模
リカの同種のイニシアティブと比べて、大幅に安
農業従事者に生計手段を提供していますが、
価なものでした。予備段階の結果から、このプロ
こうした農業従事者の生産性は、つねにマラリア
ジェクトを拡大すれば、ザンビアの綿農家世帯に
の脅威にさらされています。
大きな経済的恩恵と健康上のメリットがもたらさ
分野
農林業
支援機能
投資
実施サポート
れると考えられます。
デュナバント・ザンビアは綿を扱う多国籍商社
で、小規模農業従事者から実綿を購入し、リント
ナショナル・マラリア・コントロール・センターは、
布に加工して世界中に販売しています。5つの州
プロジェクトのためのロジスティクス支援、機材、
の15万人以上の小規模農業従事者と取り引きして
臨時スタッフを提供します。ビル&メリンダ・ゲ
います。公衆衛生のためのセクターを越えた相乗
イツ財団は資金を供与します。
効果を築くために、
「ナショナル・マラリア・コント
ロール・センター」
(National Malaria Control
Centre)とデュナバント・ザンビアは、4万戸の
きわめて貧しい綿農家世帯を対象に、大規模なマ
ラリア予防プログラムを実施しました。そうした
世帯でのマラリア発生率は半減し、デュナバント
著者
アンドレア・ロサーノ
(Andrea Lozano)
は農業従事者との結び付きを深め、綿の生産高が
上昇しました。同プログラムは、サハラ以南アフ
執筆年
2012年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
83
事 例 研 究
Ecotact(エコタクト)
企業形態
分野
国
市民社会組織
ケニア
ケ
ニアでは、人口の40%以上が満足のいく衛
ワブ財団」(Schwab Foundation)、「国際ロー
生設備を利用できず、都市のスラム街では
タ リ ー」
(Rotary International)
、 オ ラ ン ダ 政 府、
水と衛生設備
支援機能
「イースト・アフリカ・ブリュワリー」
(East Africa
さらにひどい状況です。
情報
投資
Breweries Limited)
「
、サファリコム」
(Safaricom)
か ら 資 金 提 供 を 受 け ま し た。 エ コ タ ク ト は、
エコタクトは2007年、ケニアの都市設計家、
「デイヴィッド・クリア」(David Kuria)によっ
「ウォーター・アンド・サニテーション・フォー・ジ・
て設立されました。同社は、ケニアの都市のスラ
アーバン・プア」
(Water and Sanitation for the
ム街に60の多機能「イコトイレット」
(Ikotoilets)
Urban Poor:WSUP)と連携して、ケニアの都
市部と都市周辺地域の衛生設備に関する調査を実
(別名「トイレット・モール」(toilet malls))を
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
設置しました。1日に4万8000人以上が利用し
施しています。そうした調査は、設計の基礎を築き、
ています。これらの設備は財政的に自己完結して
地元のニーズを確実に考慮することになります。
おり、利用者が少額の利用料を支払い、零細起業
地方政府と中央政府によるアドボカシーへの取り
家が商用スペースを借り、イコトイレットの施設
組み、それに同社自体がその成功に寄与してきま
への広告も収入源になります。イコトイレットは、
した。エコタクトは、NGOと協力して地域に働
革新的な水の保全対策を利用しています。
きかけ、良い衛生状態と適切な廃棄物処理の重要
性についてコミュニティを教育しています。
エコタクトは財政支援を受けずに設立されまし
執筆年
2010年
たが、その後、
「アショカ財団」(Ashoka)、
「シュ
EDF(フランス電力公社)
企業形態
国
多国籍企業(外資系)
分野
マリ
エネルギー
支援機能
情報
投資
実施サポート
マ
リで電気を利用できるのは人口のわずか
です。
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
で、農村地域の電化について実行可能性を総合的
に研究しました。同社の活動は、法律上、規制上、
ルン・クラ(Yeelen Kura)は、「フランス電力
財政上有利な条件で進められ、「マリ地方電化家
会社」(Electricite de France: EDF)、オランダ
庭エネルギー開発局」(Malian Agency for the
のエネルギー企業の「ヌオン」(Nuon)、フラン
Development of Household Energy:
スのエネルギー企業「トタル」(Total)がマリで
AMADER)の監督を受けました。プログラム資
運営する農村エネルギーサービス企業で、「フラ
金は、オランダ政府、世界銀行、それにEDF自体
ンス・環境エネルギー管理庁」(French Agency
が拠出し、現地子会社に研修プログラムと機械設
for the Environment and Energy Efficiency)
備も提供しています。
住宅用太陽光設備と、ディーゼル発電機で供給さ
れる小規模・低電圧の村のマイクロネットワーク
を利用しており、発展―生活水準の向上、新たな
所得創出活動、医療と教育の質の向上―にかなり
執筆年
2008年
84
EDFのマリでの活動が始まったのは1990年代
コラエ・クルンバ(Koraye Kurumba)とイー
の支援を受けています。両社の低コストの電気は、
著者
人の顧客にサービスを提供しています。
17%であり、農村地域ではもっと少ないの
の影響を与えてきました。このモデルは、3000
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Edu-loan(エデュローン)
国
南アフリカ
企業形態
中小企業
ア
分野
金融サービス
確保することができます。
パルトヘイト時代、南アフリカ政府の諸機
関は、同国の大多数への教育の必要性を長
くないがしろにしてきました。現在の新経済では、
エデュローンはリテールバンクからプライム
開発を持続させるために、教育を受けた熟練労働
レートで融資を受け、借り主の授業料を支払いま
者が差し迫って必要になっています。しかし、歴
す。リテールバンクと取り引きする際、エデュロー
史的に不利な状況に置かれていた多くの人々は、
ンは、「フランス開発庁」(AFD)、「国際金融公社、
支援機能
投資
ドイツ投資開発公社」
(DEG)
「スタンダード銀行」
、
中等後教育を受ける費用がなく、従来からあるタ
イプのローンの申請に必要な資格もありません。
(Standard Bank)の保証を受けます。
エデュローンは、中等後教育向けのローンを提
供する営利目的の企業で、過去に不利な状況に置
かれていた申請者に、シンプルな返済オプション
を手頃な利率で提供します。1996年に発足して
以来、エデュローンは60万人近くの学生に、合計
3億ドル以上の融資を行ってきました。ほとんど
のローンに課されるのは、プライムレートに1%
著者
ファリッド・バダシェ
(Farid Baddache)
プラスした利率です。エデュローンは大学に前払
いするために、多くの場合、授業料の10%割引を
執筆年
2008年
The El-Fashir Blacksmiths Cooperative(エル・ファーシル・ブラックスミス・
コーポラティブ)およびPractical Action(プラクティカル・アクション)
国
スーダン
企業形態
市民社会組織
エ
ル・ファーシルの鍛冶工は、スーダンのダ
同組合は、75の作業場を所有・運営しており、そ
ルフールで社会的にもっとも排除されてい
れらはエル・ファーシルの市場の金属加工部門に
る階級で、組織化して恩恵を受けることもなく、
集中しています。彼らが製造する農業用の機械や
最低生存水準で働いています。英国に拠点を置く
道具は、ダルフールとその近隣州に広く流通して
国 際NGO「 プ ラ ク テ ィ カ ル・ ア ク シ ョ ン 」
おり、国連食糧農業機関などの国際機関と多くの
(Practical Action)とのパートナーシップを通じ
分野
消費財
支援機能
実施サポート
契約を結んでいます。
て、エル・ファーシルの鍛冶工は、数々の恩恵に
つながる協同組合を形成しました。
プラクティカル・アクションは、この鍛冶協同
組合にかなりの初期支援を行いました。また、現
1990年 代、 プ ラ ク テ ィ カ ル・ ア ク シ ョ ン は、
在行われている能力構築によって、鍛冶工が自分
ダルフールの鍛冶工に新しい製造技術、原料、経
たちの事業が果たす中核的な機能に対して、より
営慣行を紹介しました。協同組合を構成するとす
大きな責任を負えるようになっています。
ぐ、鍛冶工たちはプラクティカル・アクションから、
さらに金属の調達、契約交渉、完成品の出荷で支
援を受けました。協同組合の加入者は、投入物(金
属と炭)の大量仕入れ、大量注文に応えるための
著者
サメル・アブデルヌール
(Samer Abdelnour)
相互支援、製造とデザインのイノベーションに関
する情報交換から恩恵を得ています。現在、同協
執筆年
2010年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
85
事 例 研 究
Esoko(エソコ)
企業形態
国
市民社会組織
分野
ガーナ
ICT
支援機能
情報
インセンティブ
2
005年にガーナで設立された「エソコ・ネッ
ラートに対応します。農業従事者はより有利な価
トワークス」(Esoko Networks)は、エソ
格で交渉し、より有利に販売できる市場や時間を
コによる携帯電話事業で、農業バリューチェーン
選ぶことができるだけでなく、エソコのこれまで
における取引コストの削減と情報の非対称性の克
の 分 析 力 と 評 判 を 利 用 し て、 契 約 栽 培(out-
服を目的に開発されたモバイル情報システムです。
growers)スキームに参加することもできます。
このシステムによって、小規模農業従事者の交渉
参加した農業従事者は、作物の平均収穫量が10%
力と所得が拡大しています。IT起業家のマーク・
から30%増加しました。
デイヴィスさんが始めた同社は、地元の専門家と
世界的な専門家からなるチームと協力して、携帯
エソコは、「国際金融公社」
(IFC)、「ソロス経
電話によって可能になるサービスを開発しました。
済 開 発 基 金 」(Soros Economic Development
開発の際には、4年間の試験段階で、技術を地元
Fund: SEDF)からの資金提供を受けて、ドナー
市場に合わせて調整しました。エソコに登録した
が資金供与するプロジェクトとして始まりました。
小規模農業従事者は、現在の市場価格、買い手と
著者
オレインカ・デイヴィッド・
ウェスト
(Olayinka David-West)
売 り 手 の 値 段 の マ ッ チ ン グ、 天 気 予 報 の ほ か、
ニュースやヒントなどの週決めの助言サービスを
テキストメッセージで受け取ります。国によって
は、ボイスメッセージでの受信も可能で、農業専
執筆年
2010年
門家がコールセンターに常駐して、データのア
Ethiopian Honey and Beeswax Producers and Exporters Association
(エチオピアン・ハニー・アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・アンド・エクスポーターズ・アソシエーション)
企業形態
国
市民社会組織
分野
エチオピア
農林業
支援機能
インセンティブ
投資
実施サポート
エ
チオピアの蜂蜜・蜜蝋産業は、自然資源に
投入物を信用に基づき提供します。
恵まれているにもかかわらず、開発が進ん
でいません。小規模養蜂家は、養蜂と蜂蜜生産に
伝統技術を使う傾向にあり、その結果、生産性と
品質が不十分なものになっています。
EHBPEAに対して、大きな財政・技術支援があ
り ま す。 援 助 機 関、 特 に「 オ ラ ン ダ 開 発 機 構 」
(Netherlands Development Organization:
SNV)が多額の資金を供与しています。エチオピ
バリューチェーンを開発するために、地元企業
ア政府も援助を行っており、同産業の全国基準を
7社が集まって、協業と拡張のためのプラット
策定し、国際認定を受けられるように支援しまし
フォームとして、2005年にエチオピアン・ハニー・
た。
アンド・ビーワックス・プロデューサーズ・アンド・
エクスポーターズ・アソシエーション(EHBPEA)
を創設しました。さまざまなNGO、政府、研究パー
トナーからの援助を受け、EHBPEAはこの部門の
著者
トフィク・シラジ・フィテ
(Tofik Siraj Fite)
水準を大幅に向上させることができ、国際的な
ニッチ市場への参入につながりました。EHBPEA
は契約栽培スキームも立ち上げて、8000人以上
の小規模養蜂家に、最新の養蜂方法と収穫後の作
執筆年
2012年
86
業に関する講習会を開催し、最新の養蜂箱などの
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Fair Trade Cotton(フェア・トレード・コットン)
国
マリ
企業形態
市民社会組織
綿
花はマリの輸出収入の30%以上を占めてお
しているのは、労働環境が改善され、生産コスト
り、何百万人もの人々の主要な収入源に
を上回る価格が保証される持続可能な開発です。
なっています。マリの農業従事者は、一般的に小
マックス・ハーフェラールとフランスの繊維・農
規模農園で時代遅れの道具を用いて働き、多額の
業開発機関である「ダグリ」(Dagris)は、1990
補助金を受ける富裕国の生産者と競争しています。
年代、国際フェアトレード基準を満たせるかどう
その結果、国際価格の変動と市場の不安定性に対
かを判断するために、マリの小規模綿花農場の評
してきわめて脆弱になっています。
価を始めました。
「マリ・テキスタイル・デベロップ
分野
農林業
支援機能
情報
実施サポート
メント・カンパニー」
(Mali Textile Development
「国際フェアトレードラベル機構」(Fairtrade
Company) は、 こ の プ ロ グ ラ ム の 一 環 と し て、
Labelling Organizations International: FLO)
農業従事者に技術サポートを行っており、生産さ
とそのフランス支部の「マックス・ハーフェラー
れる綿花の品質が向上しています。
ル」(Max Havelaar)は、こうした状況に対処す
るために、フランス、ベルギー、スイス、英国の
多数の衣料品小売業者(フランスの「アルモー
リュックス」(Armor Lux)など)とともにフェ
アトレード・パートナーシップに加わって、マリ
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
および周辺国の所得を引き上げ、綿花生産慣行の
持続可能性を高めることを目指しています。重視
執筆年
2008年
GADCO(世界農業開発会社)
国
ガーナ
企業形態
中小企業
ガ
ーナの農業分野は、労働力の50%以上を雇
事者からの購入を促すデモンストレーション施設
用しており、2010年にはGDPの28%に寄
としても機能しています。このプログラムにより、
与しました。
農業従事者の年間所得が倍増すると見込まれてい
ます。
GADCOはハイブリッド穀物の生産促進、持続
可能なインフラを通じた農産品への付加価値の付
GADCOがこの事業で協力しているパートナー
与、自社ブランドのCOPA穀物製品の売り込みを
には、種子などの農業投入物を供給し、現地で
目 指 す 農 業 食 品 会 社 で す。GADCOは、 そ の
R&Dを行う「シンジェンタ」(Syngenta)や、モ
「COPAコネクト」(COPA Connect)プログラ
デル開発を支援するために厳格な影響評価を行う
ムを通じて、小規模農業従事者をバリューチェー
世界銀行、西アフリカ全域へのCOPAの流通拡大
ンに組み込み、自給自足農業から商業的農業への
を支援する予定の「フィナトレード」
(Finatrade)
移行を後押ししています。GADCOは、農業従事
があります。その他のパートナーには、財政支援・
者から良質な農産物を購入し、農業従事者に供給
技術サポートとともに経営支援も行うチャレン
する改良種などの農業投入物のほか、一般諸経費
ジ・ファンドやNGOがあります。
や機械設備の使用を含む設備支出を賄うための
サービス料を徴収します。小規模農業従事者は、
分野
農林業
支援機能
情報
インセンティブ
投資
実施サポート
著者
ロ
バート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
GADCOの1000ヘクタールの中心農場にある土
地を耕作します。GADCOの農場は、他の農業従
執筆年
2012年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
87
事 例 研 究
Inova(イノヴァ)
企業形態
国
中小企業
分野
ブルキナファソ
金融サービス
支援機能
インセンティブ
ブ
ルキナファソは、国民の43%が国内貧困線
中央銀行としては唯一、銀行以外の機関による電
未満で暮らす低所得国です。同国の金融セ
子送金を認めました。こうした有利な規制環境に
クターは、他の低所得国と比較した場合でも、発
より、新規開業者は「取次店を持たない」銀行業
展が後れたままです。
務を行い、いっそう幅広いサービスを展開するこ
とが可能になりました。
イノヴァは、2007年にブルキナファソで設立
され、モバイル金融サービスを提供しています。
イノヴァが採用しているフランチャイズモデルで
は、個人や既存企業が国内に同社のサービスセン
ターを設立し、消費者が現金の預け入れや引き出
しを行うことができます。約6万人の顧客を抱え
るイノヴァは、2011年に送金、公共料金の支払い、
購買、入出金など、600万ドル相当のモバイル金
著者
ヤーリ・カマラ
(Yarri Kamara)
融サービスの取引を記録しました。
この地域での金融サービスの利用を促進するた
め、「西アフリカ諸国中央銀行」(Central Bank
執筆年
2012年
of West African States: BCEAO) は、 近 代 の
Integrated Tamale Fruit Company
(インテグレイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー)
企業形態
国
中小企業
分野
ガーナ
農林業
支援機能
投資
実施サポート
ガ
ーナの農村地域は、高い貧困率が特徴で、
多くの人が仕事を持っていません。インテ
グレイテッド・タマレ・フルーツ・カンパニー
(ITFC)は、ガーナのサベルグ・ナントン郡で事
業を営んでおり、小規模農業従事者と協力して、
現地市場と輸出市場向けに認証を受けた有機農法
のマンゴーを栽培しています。同社は広大な一区
画の土地を取得するのではなく―これは物理的に
も財政的にも非現実的です―、2001年に創設さ
れ2008年には農業従事者1300人にまで拡大した
契約栽培スキームによって、高い生産高を上げて
います。ITFCは、
農業投入物や技術サービスによっ
て、契約農家に無利子のローンを提供します。農
著者
ロバート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
業従事者は木から実が採れるようになれば、ロー
ンの返済を始めればいいのです。こうした取り決
めにより、同社は高品質の有機マンゴーを確実に
大量に得られ、農業従事者はマンゴー生産による
執筆年
2008年
88
長期的な所得が見込めます。ITFCは、農業従事者
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
に技術サポートも行っています。
K-REP Bank(Kレプ・バンク)
国
ケニア
企業形態
大企業
1
999年に営業を開始したKレプ・バンクは、
恵まれない地域やコミュニティで、Kレプ・バ
ケニア初のマイクロファイナンス銀行でし
ンクは定例グループ会議の間、十分な教育を受け
た。商業成立性を損なうことなく、低所得労働者
ていない顧客に金銭管理・財務管理の研修を実施
に銀行サービスを提供します。同行は、銀行・金
しています。
分野
金融サービス
支援機能
実施サポート
融サービスを基本的人権と考えています。マイク
ロファイナンス、個人向けローン、マイクロファ
イナンス提供者へのホールセール貸し付け、預金・
貯蓄制度、信用状、銀行保証などの多様な商品と
サービスを提供しています。グラミン銀行の「グ
ループ・レンディング」(group-lending)モデル
から発想を得て、Kレプ・バンクのマイクロファ
イナンスは3つのカテゴリーに分かれています。
グループは、民間金融機関からの融資を受ける資
格を得るまで、これらのカテゴリーを進みます。
2007年、同銀行は18万人の貸し主とほぼ同数の
預金者を抱えていました。
執筆年
2008年
Kenya Agricultural Commodity Exchange Limited
(ケニア・アグリカルチュラル・コモディティ・エクスチェンジ・リミテッド)
国
ケニア
企業形態
市民社会組織
サ
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ
(Diane Ndutu Kanyagla)
ハラ以南アフリカの農村地域の小規模農業
事者が、農産物によっては22%から最大150%、
従事者は、市場や市場情報への限られたア
所得が増加しており、同社はウガンダとタンザニ
クセスと、利益の大部分を吸い上げる中間流通業
アでも営業を開始しました。
分野
農林業
支援機能
者への過度の依存が原因で、現地の農業市場や国
際農業市場で、しばしば不利な立場にあります。
投資
KACEは外部からの資金供給や融資を受けずに
設立されましたが、
その後、
USAIDやロックフェラー
1997年、エイドリアン・ムケビ教授が、ケニア
財団などの数々の国際援助組織から資金提供を受
でこうした問題に対処するために、KACEを設立し
けています。こうした資金の大部分が特定のプロ
ました。この中小企業は、さまざまな市場での価
ジェクトに向けられており、能力構築と事業の拡
格と流通状況について最新情報を収集し、そうし
大に利用されています。
た情報を、農業従事者やステークホルダーは、携
帯電話のテキストメッセージサービスや、KACE
の農村情報センター、毎日放送される全国的なラ
ジオ番組を通じて、わずかな手数料で入手するこ
とができます。農業従事者はこのシステムを利用
して、潜在顧客や販売業者からの買い付け申し込
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
みを見たり、自分たちの販売申し込みをしたりす
ることができます。ケニアでは何千人もの農業従
執筆年
2010年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
89
事 例 研 究
Kuyasa(クヤサ)
企業形態
国
市民社会組織
分野
南アフリカ
エネルギー
支援機能
インセンティブ
南
アフリカでは、アパルトヘイト終了後、公
デル上の問題が原因で2年間中断されていました
共住宅に入居した何百万人もの人々が、熱
が、2008年8月に再開され、2010年10月に終
了しました。
効率の悪さによる、金銭面、健康面での大きな負
担を強いられています。
改修工事が行われた住宅の居住者が、このプロ
「クヤサ」(Kuyasa)クリーン開発メカニズム
ジェクトに対して毎月少額の寄付を行う一方、
「南
(CDM)プロジェクトが考案されて、ケープタウ
アフリカ環境観光省」
(South African Department
ン周辺の不法居住者入植地、クヤサにある2309
of Environmental Affairs and Tourism)と州政
戸の低所得者住宅に、ソーラー湯沸かし器、断熱
府 の「 住 宅 省 」(Department of Housing) が、
天井、電球型蛍光灯が設置されました。同プロジェ
プロジェクトに外部資金を提供しました。
ク ト は、 非 営 利 組 織 の「 サ ウ ス サ ウ ス ノ ー ス 」
(SouthSouthNorth) が、 京 都 議 定 書 のCDMの
可能性に気づき、考案しました。このプロジェク
著者
マイケル・ゴールドマン
(Michael Goldman)
トは、既存の低コスト住宅の伝熱能力とエネル
ギー効率の向上を目指しており、再生可能エネル
ギーと省エネ技術を貧困層が利用できるようにす
ることで、エネルギー不足を緩和しようとしまし
執筆年
2010年
た。このプロジェクトは、実施と資金に関するモ
L’occitane(ロクシタン)
企業形態
国
多国籍企業(外資系)
分野
ブルキナファソ
農林業
支援機能
インセンティブ
実施サポート
著者
ヤーリ・カマラ
(Yarri Kamara)
ブ
ルキナファソでは、農村人口の52%が貧困
る費用を支払えるように、毎年、代金の80%を前
生活を送っています。クリームや石鹸とし
払いしています。品質検査のための試験所を用意
て調理や個人衛生に利用されるシアバターの採取
し、もっとも高い品質基準を満たしたシアバター
と加工が収入源の1つです。
にはボーナスを出します。
「ロクシタン」(L’occitane en Provence)は、
ロクシタンは、ブルキナファソでカナダの「国
フランスに本社のある多国籍化粧品メーカーで、
際研究と協力センター」(Centre d’Etude et de
天然成分を主原料とする贅沢な製品で有名です。
Cooperation Internationale: CECI) な ど、 い
1980年代以降、ブルキナファソの女性グループ
くつかの非営利組織と協力して、女性グループに
からシアバターを調達しており、約1万5000人
よる協同組合の組織を支援し、継続的に技術訓練
の女性の経済的自立を支援してきました。同社は
を実施しています。また、協同組合によるフェア
最近、供給者によるフェアトレード、オーガニッ
トレード、オーガニック認証の取得を支援してい
ク認証の取得を後押しし、現在、そのシアバター
ます。
をフェアトレード最低価格で―2011年には500
トン―購入しています。シアバターの協同組合は、
それぞれの売上収入の2%を生産者コミュニティ
の社会開発基金に寄付しています。ロクシタンは、
執筆年
2012年
90
協同組合がシアナッツの栽培、購入、加工にかか
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Lonestar(ローンスター)
国
リベリア
企業形態
中小企業
14
年におよぶ内乱で、リベリアの経済とイン
で、同社の商品に信用を与えました。LCCは、
「エ
フラは荒廃していました。「ローンスター・
コバンク」
(Ecobank)と提携してモバイルバンキ
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ・ コ ー ポ レ ー シ ョ ン 」
ングサービスを確立し、
「リベリア大学」
(University
(Lonestar Communications Corporation: LCC)
of Liberia)を通じて、一般国民に無料のICT講座
は、電気通信の格差の是正を目的に、1999年に設
を実施しています。また、NGOなどの他のパー
立されました。ボイスパッケージ、データパッケージ、
トナーと協力して、さらに進んだ研修を実施し、
ショートメッセージサービス(SMS)のほか、最近
子どもの権利や教育などの重要な目標を表明して
では、モバイルバンキングを含む安価なモバイル
います。
分野
ICT
支援機能
インセンティブ
サービスをリベリア国民に提供しています。加入者
が100万人を超えるLCCは、内戦中に反体制派勢力
によって兵士として徴集され、犯罪に走る恐れの高
い失業中の若い男性グループを対象にして、多くの
雇用機会を提供しています。同社は500人を直接雇
用し、多くの間接雇用を創出しています。
著者
アルフレッド・K・
ターウェイ・トワラ
(Alfred
K Tarway-Twalla)
LCCは、いくつかのパートナーから支援を受け
ています。たとえば財務省は、公務員の給与をロー
ンスターのモバイルマネーを利用して支払うこと
執筆年
2012年
MAP International(MAPインターナショナル)
国
ウガンダ
企業形態
中小企業
ウ
ガンダは、農村地域への金融サービスの拡
を発行してきました。また、ウガンダ全域で26台
大と、金融機関が求める身分証明書の低所
のATMと150台以上のPOS端末装置を運営して
得者への配布のなかで、深刻な問題に直面してい
います。
分野
金融サービス
ます。2006年時点では、人口の90%が銀行口座
を利用していませんでした。
支援機能
インセンティブ
同社は、完全国営銀行の「ポストバンク・ウガ
ンダ」(PostBank Uganda)と契約を交わしてい
2007年、ニューヨークに拠点を置くMAPイン
ます。このパートナーシップは、顧客確保の点で
ターナショナルは、ウガンダでの金融サービスへ
MAPインターナショナルに非常に有益で、その後
のアクセスの改善、経済的エンパワーメント、雇
同社は、ポストバンク・ウガンダのモバイルバン
用の創出、事業の創造を目指して、営業所を設立
キングのインフラを開発しました。
しました。同社は、中央銀行の認可を受けた生体
認証と、消費者、商店主、銀行、サービスプロバ
イダをつなぐバーチャル金融サービスを提供して
います。顧客は、ATM、携帯電話、パソコンなど
の多くのアクセスポイントを利用できます。
著者
エリア・ヒサール
(Eria Hisali)
MAPインターナショナルは、顧客基盤を拡大し
て、営業開始以来、10万枚以上のデビットカード
執筆年
2010年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
91
事 例 研 究
Mobah Rural Horizons(モバー・ルーラル・ホライズンズ)
企業形態
国
中小企業
分野
ナイジェリア
消費財
支援機能
情報
インセンティブ
投資
ニ
造を依頼しています。
ジェールの農村地域では、道路・電力のイ
ンフラが不十分で、流通網に乗る前に農産
物が傷んでしまうため、農業従事者は自分たちの
モバー・ルーラル・ホライズンズは、家族と
商品が低価格になるのを受け入れざるをえません。
UNDPから資金提供を受けたほか、ロレックス賞
の 賞 金、 7 万5000ド ル 相 当 も 投 入 さ れ ま し た。
農 業 従 事 者 の 農 産 物 の 保 存 に 役 立 て よ う と、
同 社 は、「 連 邦 女 性 省 」(Nigeria's Ministry of
「ポット・イン・ポット」
(pot-in-pot)冷却器(「貧
Women's Affairs)などの機関による公的調達か
困層のための冷蔵庫」)が考案されました。地元
ら恩恵を受けており、農村地域の受益者に冷却器
大学の講師であるモハメド・バー・アバー氏は、
が配布されます。同社は、訪れた新しい村ごとに
彼個人の貯蓄を使い、失業中の多数の労働力を利
マーケティングとアドボカシーの取り組みを行い、
用して、最初に1万2000セットの壺を製造しま
映画を使って、同社の技術の有用性について地元
した。それを無料で家庭に配布し、地元の需要を
の農業従事者にピーアールしています。
刺激しました。2000年、彼は販売数を増やすため、
著者
オルウェミモ・オルワソラ
(Oluwemimo Oluwasola)
モバー・ルーラル・ホライズンズを設立しました。
同社は現在、ニジェールとナイジェリアで、食料
を保存する必要のある農業従事者などの利用者に、
年間3万個の冷却器を販売しています。アバーは
執筆年
2010年
新規市場で地元の壺製造者を見つけ出し、壺の製
Moladi(モラディ)
企業形態
国
中小企業
分野
南アフリカ
住宅・建設
支援機能
実施サポート
世
界の開発途上国には、安価な住居に対する
しています。
大きな需要があります。資源、資金、技術
の不足に環境上の問題が合わさり、多くの政府が
モラディは、新しいプロジェクトのたびに建築
この需要を満たすのに苦労しています。
業者に訓練を行います。同社は未熟練労働者に建
設施工と企業経営を訓練するため、南アフリカに
モラディは、建設技術に積極的に関わる独立型
の家族企業で、貧困層への安価な住居の供給とい
う課題への解決策を提供しています。ヘニー・ボー
ツ 氏 が1980年 代 に 南 ア フ リ カ に 設 立 し た モ ラ
ディは、気泡モルタル(砂を混ぜないコンクリー
ト)を注ぎ込むプラスチックパネル製の鋳型とい
う革新的な方法を用います。この建築法では、時
間とコストだけでなく、従来からの建築資材への
著者
ピエール・クッツァー
(Pierre Coetzer)
ニーズも削減しながら、比較的容易に作業ができ
ます。モラディの技術は、南アフリカの建築業界
から反発を受けましたが、アフリカとラテンアメ
リカの途上国16か国で、低価格の公営住宅にこれ
執筆年
2010年
92
まで以上に広く採用されて、多数の雇用を生み出
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
「モラディ・カレッジ」(Moladi College)を設
立するプロセスを進めています。
Mondi Recycling(モンディ・リサイクリング)
国
南アフリカ
企業形態
多国籍企業(外資系)
南
分野
廃棄物
モンディは、国が支援する事業体などから援助
アフリカの廃棄物処理セクターには、炭素
の放出や環境の持続可能性などの問題に取
を 受 け て お り、「 産 業 開 発 公 社 」
(Industrial
り組みながら、現在24.9%という同国の失業率の
Development Corporation: IDC)からは、2005
改善に役立つ可能性があります。
年の買い戻しセンター設立資金の一部として、50
支援機能
インセンティブ
実施サポート
万南アフリカランド(6万6700ドル)の資金供
モンディ・リサイクリングは、
「モンディ・パッケー
与を受けました。買い戻しセンターを運営する多
ジング・サウス・アフリカ」(Mondi Packaging
くの小規模起業家は、南アフリカ貿易産業省から
South Africa)の一部門で、オーナードライバー
金融理解力と経営能力の訓練を受けました。
制度を通じて、回収繊維のサプライチェーンの主
要部分を元従業員にアウトソーシングして、独立
した仕分け・梱包の事業を設立し、買い戻しセン
ターと個人の行商人のネットワークを利用してビ
ジネスを行っています。オーナードライバーの多
くが起業家として成功しており、南アフリカの数
百人の低所得者に生活手段を提供しています。こ
の制度により、40社の小規模企業が設立され、そ
著者
ピエール・クッツァー
(Pierre Coetzer)
れぞれが毎年約107万南アフリカランド(14万
3000ドル)をモンディから得ています。
執筆年
2010年
Olam(オーラム)
国
ナイジェリア
企業形態
多国籍企業(外資系)
ナ
イジェリアの農業セクターは、総労働力の
65%を雇用しています。しかし、市場アク
セスへの障害と生産水準の低さが原因で、GDPの
41.5%を占めるにすぎません。
「オーラム・ナイジェリア・リミテッド」
(Olam
Nigeria Limited)は、出来損ないの生産物、外国
為替取引、市場情報の欠如に関係する問題に対処し
ようと取り組んでいます。同社は当初、カシュー、
カカオ、シアナッツなどの一次産品に重点を置いて
いましたが、その後、生産を加工食品生産へと拡張
ラムはその取り組みから、2011年「アフリカ・ビ
ジネス・アワード・フォー・コーポレート・ソーシャ
ル・レスポンシビリティ」
(Africa Business Award
ジ・イヤー」
(Overall Best Exporter of the Year)
など、いくつもの賞を受賞しています。
オ ー ラ ム は、「 ナ イ ジ ェ リ ア 製 造 業 者 協 会 」
ンバーズ・オブ・コマース・インダストリー・マインズ・
と「ナイジェリアン・アソシエーション・オブ・チェ
アンド・アグリカルチャー」
(Nigerian Association
同社の事業は、農産物のサプライチェーン全体にお
of Chambers of Commerce, Industry, Mines
ジスティックスサービスのネットワークを利用して
カシーに取り組み、インフラ問題と政策の矛盾に対
います。オーラムは、500人の直接雇用、1万人の
支援機能
情報
実施サポート
for Corporate Social Responsibility)と2010年
融資の形式で返済します。また、同社は農業従事者
よび、地元の買い付け代理人、第一次加工施設、ロ
「オーバーオール・ベスト・エクスポーター・オブ・
(Manufacturers Association of Nigeria: MAN)
に研修を行いながら、協同組合の組織を促します。
分野
農林業
間接雇用を創出し、1ヘクタール当たりの農業所得
は、235ドルから1000ドルに増加しました。オー
しました。小規模農業従事者を雇用して、農機具や
農業投入物を提供し、農業従事者はそれらを中期
and Agriculture:NACCIMA)と協力してアドボ
処するようナイジェリア政府に圧力をかけています。
著者
オルウェミモ・オルワソラ
(Oluwemimo Oluwasola)
執筆年
2010年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
93
事 例 研 究
PepsiCo(ペプシコ)
企業形態
国
多国籍企業(外資系)
分野
エチオピア
農林業
支援機能
投資
実施サポート
エ
従事者に影響を及ぼすことです。
チオピアは、世界最大級のヒヨコ豆生産国・
輸出国です。しかし、降雨が当てにならな
いことなどの複数の問題から、ヒヨコ豆は裏作と
ペプシコは、農業従事者に最新の農業技術につ
して作付けされています。
いて講習を実施し、より高品質のヒヨコ豆種子の開
2011年、ペプシコは、WFP、USAID、エチオ
インスティテュート・フォー・アグリカルチュラル・
ピア政府とともに官民パートナーシップを確立し
リサーチ」
(Ethiopian Institute for Agricultural
て、最新の農業慣行の導入、灌漑の改善、多収穫
Research: EIAR)に働きかけました。USAIDは
種の採用により、エチオピアのヒヨコ豆生産高、
技術援助資金を提供するために、このパートナー
輸出高の増大を目指しています。これにより、ヒ
シップに700万ドルの補助金を拠出しました。
発研究を支援するため、USAIDと「エチオピアン・
ヨコ豆を主原料とした多様なペプシ商品を確実か
つ長期的に供給するのに役立ち、同時に、アフリ
カにおけるこうした商品の市場を評価することが
著者
トフィク・シラジ・フィテ
(Tofik Siraj Fite)
可能になります。ペプシコは現在、WFPを通じて
4万人の栄養失調児に届ける目的で、ヒヨコマメ
から作られた経済的で調理不要な補助食品
(RUSF)の開発と生産に取り組んでいます。この
執筆年
2012年
プロジェクトの最終目的は、1万人の小規模農業
Pésinet(ペシネット)
企業形態
国
市民社会組織
分野
マリ
医療
支援機能
投資
実施サポート
マ
リ は 乳 幼 児 の 死 亡 率 が 非 常 に 高 く( 約
策を利用して、2007年にマリでの活動再開に成
10%)、その主な原因には、医療へのアク
功しました。現在まで、ペシネットには800人の
セスが限られていることによる不十分な医療レベ
子どもが登録しています。
ルと診断の遅れなどがあります。
アフリーク・イニシアティブが財政支援、技術
ブリュッセルに拠点を置く「アフリーク・イニ
サポートを実施し、さらにフランスの地方当局か
シアティブ」(Afrique Initiatives)が2002年に
らも寄付が行われました。
「アルカテル・ルーセント」
創設したペシネットは、低所得世帯の子どもの健
康変化を早期に察知するシステムです。母親が、
Mali)という電気通信企業2社が、能力構築と機
ごくわずかな料金でペシネットのサービスに申し
材を支援しています。
込むと、現地代理人が週に2回、その子どもの体
重を測ります。結果は地元の医師に伝えられ、医
師は体重表を調べて、体重が通常よりも低い場合
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
ウスマン・モロー
(Ousmane Moreau)
執筆年
2008年
94
(Alcatel-Lucent)と「オレンジ・マリ」
(Orange
(これは多くの場合、治療の必要性を示します)、
受 診 を 要 請 し ま す。 セ ネ ガ ル で 非 営 利 の ベ ン
チャー企業として設立されたこのプロジェクトは、
当初は財政的に持続不可能な結果になりましたが、
後に戦略的パートナーシップと技術と財務の改善
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
RMBおよびNedbank(ネッドバンク)
国
南アフリカ
企業形態
大企業
低
所得者へのまともな住宅の提供は、南アフ
RMBは、黒人居住区の社会的多様性を促す手頃
リカの大きな懸案事項です。黒人居住区、
な住宅計画に資金を供給しています。ネッドバン
すなわち都市周辺地域にある半インフォーマルな
クは、これまで顧みられなかった市場、すなわち
居住地は、アパルトヘイト下で何十年も放置され
あまりにも貧しいため従来の住宅ローンを利用で
た結果、無秩序に開発され、インフラも不十分な
きないものの、公的な住居支援を受けるには政府
ままでした。
の基準を上回っている人々に、住宅ローンを提供
分野
金融サービス
支援機能
インセンティブ
投資
実施サポート
しています。
「ランド・マーチャント銀行」
(Rand Merchant
Bank: RMB)と「ネッドバンク」
(Nedbank)と
どちらの事業も、顧客に金融に関する講習会を
いう南アフリカの銀行2行が、南アフリカの低所
実施しています。たとえばネッドバンクは、新た
得者住宅市場をターゲットにした革新的な金融商
な借り手に住宅金融と家を所有することによる責
品 を そ れ ぞ れ 開 発 し ま し た。 ど ち ら の 事 業 も
務について啓発します。
2007年に開始され、政府支援を受けて民間セク
「 フ ラ ン ス 開 発 庁 」(French Development
ターが考案した黒人経済エンパワーメント戦略、
Agency: AFD)からの財政支援により、銀行は
「任意金融サービス憲章」(Voluntary Financial
大きな参入障壁―世帯が低所得という点に由来す
Services Charter)を遵守しています。
著者
ファリッド・バダシェ
(Farid Baddache)
るリスク―を克服することができました。
執筆年
2008年
Safaricom(サファリコム)によるM-Pesa(Mペサ)
国
ケニア
企業形態
多国籍企業(外資系)
ケ
ニアでは、人口の7%未満しか正式な銀行
ニア(加入者700万人以上)で大きな成功を収め
口座を所有していません。銀行取引にかか
ています。
分野
ICT
るコストが高い場合もあり、銀行口座の開設は中
所得・高所得層が対象です。
M-Pesaは、
「ボーダフォン・グループ」
(Vodafone
支援機能
インセンティブ
投資
Group Plc)とDFIDから初期資金の援助を受け
M-Pesa(「M」はモバイル、「ペサ」はお金を
ました。このシステムは、取引先登録と銀行窓口
意味するスワヒリ語に由来)は、地元の大手携帯
の新規獲得に柔軟性を与えるケニアの有利な規制
電話事業者のサファリコムによって、低所得層の
環境からも恩恵を受けています。
顧客に金融サービスを利用しやすくするために、
2008年にケニアで創設されたモバイル送金シス
テムです。顧客は取り扱い業者の店舗のほか、スー
パーマーケットやガソリンスタンドなどの販売店
で、バーチャル口座を利用して入出金できるため、
銀行に行く必要がありません。非常に少額の取引
―請求書の支払い、商品やサービスの購入、送金
―ですら、最小コストでテキストメッセージを介
して行うことができます。このシステムは、加入
者が1500万人を超えるケニアと、隣国のタンザ
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
トリザ・ムウェンワ
(Triza Mwendwa)
執筆年
2008年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
95
事 例 研 究
Sanofi(サノフィ)
企業形態
国
多国籍企業(外資系)
分野
サハラ以南アフリカ
医療
支援機能
情報
投資
実施サポート
2
006年、サハラ以南アフリカ全域で、推定
今日まで、サノフィは7500万ドルを睡眠病プ
50万人が睡眠病(アフリカトリパノソーマ
ログラムに寄付しており、同プログラムは2016
症)に感染していました。治療せずに放っておけば、
年まで続けられる予定です。睡眠病に対する政治
ほとんどの場合、死に至る疾病です。
的関心も高まっており、それがもっとも高まった
のは、2005年にアフリカ連合が睡眠病のはびこ
サ ノ フ ィ は ヨ ー ロ ッ パ 最 大 の 製 薬 会 社 で、
る国からの同疾病の根絶を求める決議案を承認し
2001年にWHOと協力して、睡眠病や他の顧み
たときでした。それにより、新たな治療と診断の
られない疾病への対処に乗り出しました。睡眠病
選択肢の研究・開発に多額の投資が行われること
を制御するために、複数の活動―医薬品の寄付、
になりました。
配布プログラムへの補助、治療と診断を改善する
ためのR&D―を組み合わせました。両者のパート
ナーシップの開始以降、15万人以上の患者が治療
を受け、睡眠病の治療を受ける患者数は60%以上
著者
ロバート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
減少しました。報告される新患者数は、2001年
の3万人から2009年には1万人を下回るまでに
減少しました。医師などの医療従事者に、睡眠病
の診断と治療の研修も実施しました。
執筆年
2008年
Tedcor(テッドコア)
企業形態
国
中小企業
分野
南アフリカ
廃棄物
支援機能
投資
実施サポート
南
アフリカの都市部の多くのスラム街には、
めに、テッドコアは中等教育を卒業した黒人起業
地方政府の資金不足から、十分なサービス
家とのみ提携し、財務・経営管理の広範囲にわた
が届いていません。当局は、廃棄物処理などの一
る研修を実施しています。
部のサービスを民営化することで対応してきまし
た。
南アフリカでの事業に対するアファーマティ
ブ・アクションの重要性を考慮して、新進の黒人
テッドコアは、コミュニティベースの営利目的
起業家の支援に重点を置くテッドコアは、銀行
の廃棄物処理会社で、黒人起業家の事業の立ち上
ローンを受け、優遇金利で廃棄物収集車を取得す
げを支援しながら、顧みられてこなかった地域へ
ることができました。
の安価なサービスを提供するために設立されまし
た。実業家のジョン・ホートン氏が1996年に創
業した同社は、コミュニティの請負人に対して、
継続的な財政・事業支援と、公認の研修を実施し、
著者
マイケル・ゴールドマン
(Michael Goldman)
請負人は廃棄物収集車両のオーナードライバーに
なります。テッドコアは、外部委託した南アフリ
カの都市廃棄物管理システムの株式を10%保有し、
120人のコミュニティの請負人のために廃棄物管
執筆年
2010年
96
理会社を設立しました。必要な技能を確保するた
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
The Sustainable Healthcare Foundation
(サスティナブル・ヘルスケア・ファウンデーション)
国
ケニア
企業形態
市民社会組織
ケ
ニアでは、スラム街や農村地域に暮らす多
ケニアに66店、ルワンダに10店の加盟店があり、
くの人々が安価な医薬品や基本医療を利用
300万人以上にサービスを提供しています。
分野
医療
できず、マラリアや下痢などの疾病で苦しみ、命
同ファウンデーションは、フランチャイズ経営
を落としています。
支援機能
実施サポート
者に開業資金、研修、良質の医薬品を支援しながら、
2000年に設立されたサスティナブル・ヘルス
診療所の新規設立に対する政府の認可やその他の
ケア・ファウンデーションは、農村地域と都市の
規制上の要件に対応し、保健省との関係を構築し
スラム街で、
「子どもと家族のための医療」(child
ています。コミュニティのメンバーがサービスに
and family wellness: CFW)を重視した営利目
ついて知り、ニーズを表明するようになることで、
的の零細規模の薬局と診療所を経営しています。
コミュニティへの働きかけが進みます。また、学
フランチャイズ主宰者として営業しており、フラ
術機関と協力して、CFWがケニア国民の健康に
ンチャイズ経営者(コミュニティの医療従事者)
与える影響を評価しています。
を選び、規定を遵守させながら、共通のブランド、
ロジスティクスネットワーク、研修を提供します。
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
CFWの薬局と診療所は、安価な医療へのアクセ
スをもたらす一方、十分な収益を上げて看護師の
フランチャイズ経営者やスタッフに水準以上の給
与を支払っています。同ファウンデーションは、
執筆年
2008年
Tiviski Dairy(ティビスキー・デイリー)
国
モーリタニア
企業形態
中小企業
牧
畜はモーリタニアの重要な文化的伝統で、
クダ乳製品の輸入をヨーロッパ諸国に働きかけて
350万人が遊牧による牧畜業を営んでいま
います。
分野
農林業
す。しかし、そうして生計を立てることがますま
す困難になっています。
ティビスキーは、
「フランス経済協力中央金庫」
支援機能
投資
実施サポート
(Caisse centrale de coopération économique)
1987年、ナンシー・アベイディラハーン氏が
から15万ユーロの初期融資を受けて設立されまし
モーリタニアに設立したティビスキーは、アフリ
た。乳製品への度重なる投資は400万ユーロと推
カ初のラクダ乳業会社です。現在では、国内消費
定され、200万ユーロ(フランス経済協力振興投
向けに牛と山羊の乳も加工しています。遊牧民の
資公社(Proparco)からの50万ユーロ、国際金
家族は家畜の乳を長らく飲んできましたが、都市
融 公 社(IFC) か ら の50万 ユ ー ロ、 地 元 の 銀 行
の食品雑貨店では、容器詰めや加工された新鮮な
GBMからの100万ユーロ)のローンを要した超
ミルクや乳製品を手に入れることはできませんで
高温熱処理(UHT)プラントへの投資も含まれま
した。ティビスキーは、半遊牧生活で最低水準の
す。
所得を得ている家畜所有者から乳を調達し、彼ら
が伝統的な生活様式を維持しながら、所得を得ら
れるようにしています。ティビスキーの乳製品は、
著者
ママドゥ・ガエ
(Mamadou Gaye)
ヨーロッパからの輸入品に取って代わり、モーリ
タニア経済を活性化しています。同社は現在、ラ
執筆年
2008年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
97
事 例 研 究
ToughStuff(タフスタッフ)
企業形態
国
中小企業
分野
ケニア
エネルギー
支援機能
実施サポート
ケ
ニアでは、人口の84%が電力供給網を利用
タフスタッフ製品の迅速な投入は、複数のパー
できません。そのため、生産性が著しい影
トナーシップにより後押しされました。KREPや
響を受け、高価で環境に有害な化石燃料への依存
KADET、「 フ ァ ウ ル・ ケ ニ ア 」(Faulu Kenya)
度が高まり、人々は灯油の燃焼時に発生する煙な
などのマイクロクレジット・グループが、融資担
ど健康上有害なさまざまな物質にさらされます。
当者を通じてローンを実施し、個人が決まった返
済期間でタフスタッフ製品を入手できるようにし
ています。タフスタッフは「ワン・エーカー基金」
「タフスタッフ・イースト・アフリカ」
(ToughStuff
(One Acre Fund)とも協力して、農業従事者に
East Africa)は、「タフスタッフ・インターナショ
ナ ル 」(ToughStuff International) の 子 会 社 で、
ランプパネルと携帯電話用充電器のほか、種子や
ケニアに本社を置き、ケニアやほかの東アフリカ
肥料などの農業投入物を供給し、彼らがより長く
諸国の低所得者へのクリーンで安価なエネルギー
より少ない障害で働けるようにしています。
の提供を目指しています。タフスタッフは、農村
の低所得消費者にソーラーランプ、携帯電話用の
著者
ウィニフレッド・N・カルガ
(Winifred N. Karuga)
ダイアナ・W・キマニ
(Diana W. Kimani)
充電器やバッテリーを販売しています。2010年
の営業開始以来、タフスタッフは、アフリカ最大
の太陽光製品市場の1つであるケニアの市場を大
きく開拓してきました。
執筆年
2012年
Toyola(トヨラ)
企業形態
国
中小企業
分野
ガーナ
エネルギー
支援機能
投資
実施サポート
ガ
ーナでは、33%の世帯が木炭コンロを使用
く、深刻な健康問題の一因にもなります。
ロバート・ダーコ・オセイ
(Robert Darko Osei)
執筆年
2010年
98
創業者のガーナ人起業家、スライ・ワハブ氏と
アーネスト・ケイ氏は、USAIDが支援したプログ
トヨラの調理用コンロは、燃料効率が50%改善
著者
れています。
しています。木炭コンロは高価なだけでな
ラムの下、2002年に「エンタープライズワークス・
するよう陶磁器のライナーで補強されています。
ガーナ」(EnterpriseWorks Ghana)による燃料
通常のコンロよりもクリーンで燃料効率がよく、
効率のよいコンロを生産するための技術訓練を受け
耐久性に優れているうえに、1個7ドルで購入で
た職人グループに属していました。
「クマシ環境技
きます。トヨラは2006年に創業され、2011年ま
術研究所」
(Kumasi Institute of Technology and
でに15万4000個のコンロを生産し、94万人の低
Environment)がビジネスモデルについて助言を
所得者―ほとんどが農村地域で暮らしています―
行い、「エコ」(E+Co)が初期融資を実施したお
の調理に関するニーズに応えてきました。同社は
かげで、同社は最初のトラックを購入することが
そのバリューチェーン上で、全国の300人以上の
できました。さらに、UNEPの「アフリカ村落部
職人に研修と雇用を提供してきました。トヨラは
エ ネ ル ギ ー 事 業 開 発 」(African Rural Energy
顧客が買い求めやすくなるように、掛けで買って、
Enterprise Development: AREED)プログラム
木炭の節約で浮いたお金で3か月以上かけて返済
からも融資を受けて、同社は事業を拡大していま
するオプションも提供しています。今では、トヨ
す。
ラのコンロは、トーゴとブルキナファソでも売ら
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
VidaGás(ヴィダガス)
国
モザンビーク
企業形態
市民社会組織
人
口10万人当たりに医師が3人というモザン
を導入し、遠隔地の医療施設の老朽化したケロシ
ビークでは、農村集落に医療サービスを届
ン冷蔵庫を、液化石油ガス(LPG)冷蔵庫に取り
けることが急務となっています。モザンビーク北
替えました。2011年には350トン以上のLPGが
部では、診療所にとっての大きな問題は、手術用
輸送され、同社は現在、モザンビークの北部4州
の照明とワクチンの冷蔵保存に使う燃料が信頼性
すべてで事業を行っています。スタッフ全員が医
に欠けることです。
療研修と指示を受けます。
こうした燃料サービスの拡大を目的にしたパイ
資金は、当初、シアトルの資金源から集められ、
ロットプロジェクトが、2002年に立ち上げられ
プロジェクトが拡大するにつれて、スコットラン
ました。このプロジェクトのパートナーには、子
ドの「ハンター財団」(Hunter Foundation)や
どもの健康に尽力した元教育大臣のグラサ・マ
オランダ政府の二国間援助機関など、より大きな
シェル氏、シアトルに本拠地のある医療必需品を
パートナーから協力が得られるようになりました。
ミュニティ財団の「地域開発基金」(Fundacao
para o Desenvolvimento da Comunidade:
分野
エネルギー
届けるNGOのVillageReach(ヴィレッジリーチ)
、
モザンビーク保健省、地域開発のニーズに詳しいコ
支援機能
投資
実施サポート
著者
コートニー・スプレイグ
(Courtenay Sprague)
FDC)があり、FDCは改良したコールドチェーン
執筆年
2008年
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
99
参考情報
さまざまな組織がビジネスパートナーとして、低所得層の人々と協働しようとする企業や
起業家を支援しています。本報告書のために実施した事例研究、インタビュー、アンケート
調査のほか、「プラクティショナー・ハブ」(Practitioner Hub)のデータベースから、イン
クルーシブビジネスのエコシステムの4つの機能である情報、インセンティブ、投資、およ
び実施サポートに従事する組織の一覧を、以下に掲載しました。この一覧は、支援を求める
企業への情報提供を目的としたものですが、国家レベルの支援機関については掲載しておら
ず、すべての支援組織を網羅しているわけではありません。
情報
以下の組織は、データの収集、
研究の実施、アドボカシーへ
の関与により、インクルーシ
ブビジネスに関する知識の蓄
積に貢献しています。
アドボカシー
アドボカシーには、あらゆる社会
的ステークホルダーへの、インク
ルーシブビジネス普及の促進が含
まれます。多くの場合、政策立案
者との対話を築き、決定された政
策について社会に情報を提供する
ことも含まれます。
African Women in Business
Initiative(アフリカン・ウーマン・イン・
ビジネス・イニシアティブ)
資金調達を容易にすることにより、
アフリカの女性起業家によるSME
の設立を支援します。
www.afdb.org/en/topics-and-sectors/
initiatives-par tnerships/africanwomen-in-business-initiative
Ashoka(アショカ財団)
インクルーシブビジネス・モデル
を構築する個人の社会起業家に、
財政支援と専門的支援を提供しま
す。
www.ashoka.org
Aspen Network of Development
Entrepreneurs(アスペン・ネットワー
ク・オブ・デベロップメント・アント
レプレナーズ)
資金とノウハウを投資して、新興
市場での起業活動を推進する組織
のグローバルネットワークです。
www.aspeninstitute.org/policy-work/
aspen-network- developmententrepreneurs
100
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Business Action for Africa(ビジネ
ス・アクション・フォー・アフリカ)
企業と開発パートナーのネット
ワークです。アドボカシーを通じ
て、また、パートナーシップを築
いて知識の共有を進めることで、
アフリカの開発を進めます。
www.businessactionforafrica.org
Centre for Enterprise
Development(センター・フォー・
エンタープライズ・デベロップメント)
南アフリカに拠点を置く研究・ア
ドボカシー組織で、現地で得た経
験に基づき、中央政府への政策提
案を打ち出します。
www.cde.org.za
Global Development Alliance( グ
ローバル開発アライアンス)
共同で定めたビジネス目標、開発
目標の実現を目指す官民パート
ナーシップのための、市場を基盤
としたビジネスモデルです。
http://idea.usaid.gov/organization/
gp
Global Impact Investing Network
(グローバル・インパクト・インベスティ
ング・ネットワーク)
インパクト・インベストメントの
規模の拡大と有効性の改善に尽力
するNPOです。
www.globalimpactinvestingnetwork.
org
Initiative for Responsible
Development( イ ニ シ ア テ ィ ブ・
フォー・レスポンシブル・デベロップ
メント)
ハーバード大学のイニシアティブ
で、投資家と社会への長期的な価
値の実現を目指す責任投資に関す
る応用研究に従事しています。
http://hausercenter.org/iri
International Business Leaders
Forum(国際ビジネス・リーダーズ・
フォーラム)
独立したグローバルな会員制の協
会で、多数のセクター、市場、課
題を越えて、企業責任と開発につ
いて、ビジネスリーダーシップを
促進、奨励します。
w w w. i b l f. o rg / e n / p ro g ra m m e s /
inclusive-growth/inclusive-businessmodels.aspx
Schwab Foundation for Social
Entrepreneurship(シュワブ財団)
持続可能な社会革新のリーディン
グモデルに光を当て、それを促進
するために、地域レベル、グロー
バルレベルでプラットフォームを
提供します。
www.schwabfound.org/sf/index.htm
World Business Council for
Sustainable Development( 持 続 可
能な発 展のための世 界 経 済 人 会 議 )
(WBCSD)
企 業 のCEOが 主 導 す る 組 織 で、
ステークホルダーと強固な関係を
築き、持続可能な開発のソリュー
ションに資する政策変更を推進し
ます。
www.wbcsd.org
World Economic Forum – New
Vision for Agriculture( 世 界 経 済
フォーラム―農業のための新しい視
点)
官民の関係者を含むこのプラット
フォームは、市場を基盤にしたソ
リューションにより、持続可能な
農業成長を実現するために、共通
の行動指針を考案し、マルチス
テークホルダーの協調を促進する
ことを目指します。
www.weforum.org/issues/
agriculture-and-food-security
賞
これらの賞により、成功事例を紹
介し、効果的なソリューションと
教訓が提供されます。
Ashden Awards(アシュデン賞)
貧困を削減し、人々の生活を向上
させる、環境に優しいエネルギー
ソリューションを奨励します。ア
シュデン賞は、エネルギーパイオ
ニアの事業開発を支援します。
www.ashdenawards.org
The BiD Network(ザ・ビッド・ネッ
トワーク)
このネットワークは、高成長中の
SMEに重点を置き、ウェブプラッ
トフォームを主催して、ビジネス
プラン・コンペ、コミュニティ構
築ツールとコーチングを推進しま
す。
www.bidnetwork.org
G20 Challenge on Inclusive
Business Innovation(G20チャレ ン
ジ・革新的なインクルーシブビジネス)
革新的で規模があり、商業的に実
現可能な方法で、途上国の低所得
層と協働する企業を対象とした国
際コンペです。
www.g20challenge.com/
SEED Awards for Entrepreneurship in
Sustainable Development( 環 境 の
持続可能な開発を目指す活動を支援す
るSEED賞)
社会的利益と環境保全上の利点を
ビジネスモデルに統合する、世界
各地の現地主導の革新的な小規模
企業を支援します。
www.seedinit.org
World Business and Development
Awards(世界ビジネス・デベロップ
メント賞)
International Chamber of
Commerce( 国 際 商 業 会 議 所 )
とUNDPが創設したこの賞は、開
発に寄与する企業を表彰します。
w w w.icc wbo.org/training- andevents/competitions-and-awards/
instituteof-world-business-law/worldbusiness-and-development-awards
インクルーシブビジネスに関する研究
機関
インクルーシブビジネスに関する
研究は、課題、優れたソリューショ
ン、効果的なビジネスモデル、規
模の拡大、成功事例への価値ある
洞察をもたらします。
BoP Knowledge Network(BoPナ
レッジ・ネットワーク)
BoP市 場 で の 包 括 的 な イ ノ ベ ー
ションの開発を促すNPOです。
www.bopinc.org
BoP Learning Lab Southern Africa
(BoPラーニング・ラボ・サザン・アフ
リカ)
アフリカでのインクルーシブビジ
ネスについて、知識を共有する機
会を提供します。
www.bop.org.za/BOP_Lab/Home.
html
Business Call to Action(ビ ジ ネ ス
行動要請)
企業が参加できるプラットフォー
ムのほか、開発への市場志向型ア
プローチのノウハウ、知識、成功
事例を共有する機会を提供します。
www.bcta-initiative.org
Business for Development
Pathfinder
(ビジネス・フォー・デベロッ
プメント・パスファインダー)
アフリカでのインクルーシブビジ
ネスを促進するために、ビジネス
団体やCEOと協力し、インクルー
シブビジネスに関心を持つ企業に
対して、実績の測定や実際的なサ
ポートを提供します。
www.b4dpathfinder.org
Business Fights Poverty(ビジネス・
ファイツ・ポバティ)
企業と開発の専門家によるネット
ワークで、インクルーシブビジネ
スにおける同業者間での取り組み
と知識の共有を促進します。
www.businessfightspoverty.org/
Center for Sustainable Global
Enterprise(Cornell)
(持続可能な世
界企業センター(コーネル大学)
)
インクルーシブビジネスの戦略策
定と実施に重点を置いた、共同応
用研究と企業主催のプロジェクト
に従事しています。
www.johnson.cornell.edu/Center-forSustainable-Global-Enterprise.aspx
Consultative Group to Assist the
Poor(貧困層支援協議グループ)
世界の貧困層による、金融サービ
スへのアクセスの改善に尽力する、
33の開発機関と民間基金からな
る独立の政策研究センターです。
www.cgap.org
Endeva(エンデヴァ)
インクルーシブビジネス・モデル
に関する一般的な情報のほか、分
野別(アグリビジネス、マイクロ
保険、エネルギー、医薬品など)
の情報を用いて、インクルーシブ
ビジネスの推進に尽力する研究コ
ンサルティング機関です。
www.endeva.org
Gordon Institute of Business
Science(ゴードン・インスティテュー
ト・オブ・ビジネス・サイエンス)
(GIBS)
インクルーシブビジネスに関する
研究とリーダーシップ対話を実施
する南アフリカの経営学大学院で
す。
www.gibs.co.za
Harvard CSR Initiative(ハーバード
CSRイニシアティブ)
ODI Private Sector and Markets
(ODIプライベート・セクター・アンド・
マーケット)
企業、政府政策、ビジネス環境の
開発上の影響を研究し、影響を改
善するための経済的インセンティ
ブを検証しています。
www.odi.org.uk/work/programmes/
business-development
Reciprocity(レシプロシティ)
インクルーシブビジネス・モデル
に特化した南アフリカのコンサル
ティング会社で、ビジネス実行と
市場調査サポートも実施していま
す。
www.reciprocity.co.za
UNDP Growing Inclusive Markets
(UNDP包括的な市場の育成)
よりインクルーシブなビジネスモ
デル構築の理解、実現、動機づけ
を目指す研究・アドボカシーのイ
ニシアティブです。
www.growinginclusivemarkets.org
市場調査
低所得市場に関する信頼できる情
報はあまり存在しないため、市場
調査を専門に行う以下の企業が重
要なパートナーになります。
研究、対話、ワークショップ、教
育、および広報・普及活動を通じ
て、企業の社会的責任の効率性に
ついて研究し、その向上を追求し
ています。
Consumer Insight Ltd( コ ン シ ュ ー
マー・インサイト)
Intellecap(インテルキャップ)
www.ciafrica.com/oindex
www.hks.harvard.edu/m-rcbg/CSRI
社会と環境の改善に取り組む、収
益性が高く、持続可能な事業の構
築と拡大を支援する、革新的なビ
ジネスソリューションを提供して
います。
www.intellecap.com
The LSE Co-Creation Lab(ジ・LSE
コークリエーション・ラボ)
主要な学識者、NGO、社会起業家、
企業間のパートナーシップです。
成功を収めているビジネスモデ
ル・イノベーションを通じて、貧
困削減を追求しています。
www.icclab.com
Monitor Inclusive Markets( モ ニ
ター・インクルーシブ・マーケット)
包括的市場の特定、開発、拡大促
進のための投資を重視した
Monitor Group( モ ニ タ ー・ グ
ループ)の専門化した事業部門で、
最近、Deloitte(デロイト)に買
収されました。
www.mim.monitor.com
Next Billion(ネクスト・ビリオン)
インクルーシブビジネスに関心を
持つ個人と組織を対象に、ディス
カッション・フォーラム、知識基
盤、ネットワーキングサイトとし
ての機能を果たすオンラインプ
ラットフォームです。
www.nextbillion.net
ナイロビに拠点を置く、アフリカ
市場専門の市場調査会社です。
Field Africa(フィールド・アフリカ)
南アフリカに本社を置く企業で、
全アフリカ諸国の市場調査を実施
します。
www.fieldafrica.com
FinScope(フィンスコープ)
FinMark Trust(フィンマーク・
トラスト)によるイニシアティブ
で、金融サービスと財務上の問題
について、消費者知覚に関する全
国代表調査を実施し、消費動向と
財務管理についての情報を提供し
ます。
www.finscope.co.za/new/pages/
default.aspx
Initiative for Global Development
(イニシアティブ・フォー・グローバル・
デベロップメント)
会員制のネットワークで、企業の
結び付きを促し、分野を重視する
利益グループについて市場情報を
提供します。
www.igdleaders.org
Jana(ジャナ)
携 帯 電 話 の 通 信 時 間(mobile
airtime)を利用したインセンティ
ブを通じて、新興市場の消費者を
ブランドと結び付ける市場調査会
社です。
www.jana.com
Research Africa(リサーチ・アフリカ)
ウガンダとオランダに拠点を置き、
社会的影響に焦点を当てた市場調
査会社です。
www.researchafrica.com
インセンティブ
イ ン セ ン テ ィ ブ は、 イ ン ク
ルーシブビジネスにより適し
た事業環境を作り、低所得消
費者を対象にした企業に報い、
低所得者が市場に参入できる
ようにする政策と基準を設定
することによって、アフリカ
でのビジネスの推進を支援し
ます。
プラットフォーム
プラットフォームは、企業が他の
ステークホルダー、特に政府との
対話に参加し、連携できる場を形
成します。
African Cashew Initiative(アフリカ
ン・カシュー・イニシアティブ)
カシューナッツの持続可能な生産
のための基準の策定と実施支援を
行う、マルチステークホルダーの
イニシアティブです。
www.aci.org
Alliance for Green Revolution in
Africa(アフリカ緑の革命のための同
盟)
(AGRA)
AGRAのプログラムは、改良種を
供給し、土壌肥沃度を高め、市場
アクセスを向上させ、パートナー
シップを促すことにより、農業セ
クターの開発に重点を置いていま
す。
www.agra-alliance.org
The Comprehensive Africa
Agriculture Development Platform
(ザ・コンプリヘンシブ・アフリカ・ア
グリカルチャー・デベロップメント・
プラットフォーム)
アフリカにおける農業生産性向上
を目的とした、アフリカの人々が
所有し、アフリカの人々が主導す
るイニシアティブです。
www.nepad-caadp.net
Competitive African Cotton
Initiative(コンペティティブ・アフリ
カ ン・ コ ット ン・ イ ニ シ ア テ ィ ブ )
(COMPACI)
環境、経済、社会の持続可能性に
関する基準に従って、サハラ以南
アフリカの綿花生産の向上を促進
しています。
www.compaci.org
Donor Committee for Enterprise
Development(企業開発のためのド
ナー委員会)
途上国の民間セクターの開発を通
じて、経済的機会と自主性を推進
しています。
www.enterprise-development.org
Grow Africa(アフリカの成長)
農業の国家的優先課題に基づき、
アフリカの農業への投資と変革の
加速を模索するパートナーシップ
のプラットフォームです。
www.growafrica.com
Lighting Africa(アフリカに光を)
照明器具を対象にした、製品品質
保証プログラムを考案しました。
www.lightingafrica.org
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
101
参 考 情 報
Making Finance Work for Africa
(ア
フリカで金融セクターを機能させる)
重複を避け、開発効果を最大限に
引き出すために、アフリカ全土で
金融セクターの開発を調整するこ
とによって、アフリカの金融セク
ター開発を支援するイニシアティ
ブです。
www.mfw4a.org
Nepad Business Foundation
(Nepadビジネス基金)
アフリカ全域での経済と社会の持
続可能な開発を促進する、会員制
の基金です。
The International Federation of
Organic Agriculture Movements
(国
際有機農業運動連盟)
(IFOAM)
Youth-to-Youth Fund(ユース・ツー・
ユース・ファンド)
Industrial Development
Corporation(産業開発公社)
www.ifoam.org
w w w. i l o. o rg / p u b l i c / e n g l i s h /
employment/yen/whatwedo/
projects/y2y/y2y.htm
www.idc.co.za
有機農業運動のための世界的な統
括組織です。IFOAMは、IFOAM
基礎基準を策定しました。これに
基づき、官民の基準設定団体が、
より明確な有機基準を考案するこ
とができます。
Rainforest Alliance(レインフォレス
ト・アライアンス)
www.nepadbusinessfoundation.org
特定の社会、経済、環境に関する
持続可能性基準を満たす農園の認
証を行う国際NGOです。
Sustainable Commodity Initiative(サ
スティナブル・コモディティ・イニシ
アティブ)
(SCI)
SA(ソーシャル・アカウンタビリティ
規格)8000
持続可能な開発のための国際研究
所(IISD) と 国 連 貿 易 開 発 会 議
(UNCTAD)の合同イニシアティ
ブで、世界の商品生産と貿易にお
いて、持続可能な慣行が確実に採
用されることを目指しています。
www.idhsustainabletrade.com
Sustainable Trade Initiative( サ ス
ティナブル・トレード・イニシアティブ)
世界における持続可能な生産と消
費の推進という目的と、貧困削減、
環境保全、公正で透明な貿易慣行
の普及などの目標を持って、連携
する主要企業、市民社会団体、お
よび政府を集めています。
www.idhsustainabletrade.com
UNDP African Facility for Inclusive
Markets(UNDPアフリカの包括的な
市場の育成プログラム)
UNDPの地域プログラムで、地域
レベル、大陸レベルでの政策、企
画、パートナーシップによる介入
を通じて、アフリカでの包括的な
市場の育成を支援しています。
www.undp.org/africa/privatesector
基準
基準は、社会と環境への利益に報
いる政策を策定します。
Fairtrade International( フ ェ ア ト
レード・インターナショナル)
国際フェアトレード基準を策定し、
フェアトレードに参加する農業従
事者を支援する25の組織のネッ
トワークです。
www.fairtrade.net
Gold Standard(ゴールド・スタンダー
ド)
高い効果の見込めるカーボンオフ
セット・プロジェクトに資金を動
員する認証制度です。
www.cdmgoldstandard.org
www.rainforest-alliance.org
労働者の権利を促進するとともに、
雇用主によるまともな仕事と労働
条件を保証するための制度に基づ
くアプローチの継続的な実施を可
能にするための国際規格です。
www.sa-intl.org
UTZ Certified(UTZ認証)
持続可能な農業慣行に対する認証
です。農業従事者がより良い農法
を学び、労働環境を改善し、環境
を保全することができるようにし
ます。
www.utzcerti!ed.org
投資
以下の機関は、インクルーシ
ブビジネス・モデルの特有の
ニーズに合う資本とインパク
ト・インベストメントを提供
することにより、ビジネスの
活性化を支援します。
チャレンジ・ファンド
チャレンジ・ファンドとは、企業
などが提出した提案に基づいて、
特定の分野への資金配分を行う融
資メカニズムです。
Africa Enterprise Challenge Fund
(アフリカ企業チャレンジ・ファンド)
(AECF)
AECFは、民間セクターの企業へ
の競争的補助金(5万米ドルから
10万米ドル)を通じて、アフリ
カにおける革新的で新しいビジネ
スモデルを支援するチャレンジ・
ファンドです。
www.aecfafrica.org
COOP Africa Challenge Fund( ア
フリカ協同組合ファシリティー・チャレ
ンジ・ファンド)
アフリカ協同組合ファシリ
ティー・チャレンジ・ファンドは、
協同組合と協同組合を統括する団
体、および他の協同組合支援組織
に補助金を供与します。
w w w. i l o. o rg / p u b l i c / e n g l i s h /
employment/ent/coop/africa/areas/
challenge.htm
102
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
ILO、国連、世界銀行による合同
イ ニ シ ア テ ィ ブ、Youth
Employment Network(若年雇
用ネットワーク)が提供する、青
年団体向けの基金です。資金提供
の目的は、若い起業家による企業
の立ち上げを支援することです。
開発金融組織(DFI)
DFIには、貸付金基金、マイクロ
ファイナンス機関など、さまざま
な組織があり、開発を促進する投
資のために、民間セクターに融資
を行います。
African Development Bank(アフリ
カ開発銀行)
地域の加盟国に投資する民間企業
に、融資、補助金、専門的な支援
を提供します。
CDC(英連邦開発公社)
CDCは、事業の確立を支援する
ことで貧困と闘うことを目的とし
て、アフリカと南アジアの企業に、
直接または仲介者を介して、借入
資本と自己資本を提供します。
www.cdcgroup.com
Development Bank of Southern
Africa(南部アフリカ開発銀行)
物的・社会・経済インフラに資金
を提供することで、持続可能な社
会経済開発を促進する開発金融組
織です。
www.dbsa.org
DEG
長期債券類、エクイティファイナ
ンス、メザニンファイナンス、保
証など、途上国の生活水準を向上
させる民間セクターの投資に資金
を提供します。
www.deginvest.de/EN_Home/About_
DEG/index.jsp
アフリカ全土で経済成長と産業開
発を促進するために設立された、
国家開発金融機関です。南アフリ
カ政府が所有する産業開発公社は、
Economic Development
Ministry(経済開発省)の管理下
にあります。
International Finance Corporation
(国際金融公社)
(IFC)
世界銀行グループの1機関で、主
に、中規模・大規模企業向けに融
資を行い、民間セクターを支援し
ています。
www.ifc.org
Norfund(ノルウェー開発途上国投資
資金)
途上国に収益性の高い持続可能な
企業を設立し、経済成長と貧困削
減を実現できるように育成する投
資会社です。
www.norfund.no
PROPARCO(フランス経済協力振興
投資公社)
新興国と途上国のほか、南半球の
地理的地域に投資を行うフランス
のDFIです。
www.proparco.fr/lang/en/Accue-il_
PROPARCO
USAID Development Credit
Authority(USAID開発信用保証メカ
ニズム)
民間金融機関が行った融資のデ
フォルトについて、50%までを
カバーする部分的信用保証を通じ
て、インクルーシブビジネス・モ
デルに参加する小規模農業従事者
と中小企業の資金へのアクセスを
促します。
w w w. u s a i d . g o v / w h a t - w e - d o /
economic- growth- and-trade/
d e ve l o p m e n t - c re d i t - a u t h o r i t yputting-local-wealth-work
助成金提供団体
西アフリカに重点を置いた開発金
融組織です。
助成金は、ビジネスモデルのいく
つかの段階できわめて重要な資本
となる場合があり、具体的なプロ
ジェクトへの資金として用いられ
ることも多くあります。
Finance for Development( フ ァ イ
ナンス・フォー・デベロップメント)
A frican Grantmakers A f finit y
Group(アフリカン・グラントメイカー
ズ・アフィニティ・グループ)
ECOWAS Bank for Investment and
Development(西アフリカ諸国経済
共同体投資開発銀行)
(EBID)
www.bidc-ebid.org/en/index.php
オランダに拠点を置く企業開発銀
行で、開発途上市場の企業、プロ
ジェクト、金融機関に対して、株
式、融資、保証を提供します。
www.fmo.nl
アフリカでの、より効果的ないっ
そうの助成金の提供を促進します。
また、基金や財団がネットワーク
を作り、助成金の提供に関する情
報を共有し、新たな情報源を構築
するためのフォーラムを提供して
います。
www.africagrantmakers.org
Bill & Melinda Gates Foundation(ビ
ル&メリンダ・ゲイツ財団)
助成金とパートナーシップによっ
て、インクルーシブビジネスの構
築を支援しています。
www.gatesfoundation.org
Innovations Against Poverty( イノ
ベーションズ・アゲインスト・ポバティ)
小 規 模・ 大 規 模 企 業 に、 助 成 金、
財務保証、技術サポートを提供し、
それらの企業によるインクルーシ
ブビジネス・モデルの舵取り、規
模拡大を支援します。
http://businessinnovationfacility.org/
page/about-us-about-innovationsagainst-poverty
Rockefeller Foundation(ロックフェ
ラー財団)
研究を実施し、インパクト・イン
ベストメントやイノベーションを
可能にする環境の創造などをとも
なう開発イニシアティブに、助成
金を供与する大規模財団です。
www.rockefellerfoundation.org
Skoll Foundation(スコール財団)
社会起業家を支援する財団で、資
金提供とパートナーシップによっ
て、イニシアティブを援助してい
ます。
www.skollfoundation.org
The Small Enterprise Foundation
(ザ・
スモール・エンタープライズ・ファウ
ンデーション)
非営利のマイクロファイナンス機
関で、社会から隔絶されている零
細企業にマイクロローンを提供し
ます。
www.sef.co.za
Tony Elumelu Foundation(トニー・
エルメル・ファウンデーション)
起業家に起業資金(借入資本と自
己資本)を提供し、自分のアイデ
アを確実なプロジェクトにできる
よう後押しするBDSsを支援して、
強力な経営陣の下で、財政的に持
続可能な事業の設立を促します。
www.tonyelumelufoundation.org
UNCDF(国連資本開発基金)
世界の後発開発途上国49か国を
対象とした国連の資本投資機関で、
マイクロファイナンスと投資資本
へのアクセスを拡大することによ
り、貧困層とその小規模事業に対
して新たな機会を創出します。
www.uncdf.org
United States African
Development Foundation( ユ ナ イ
テッド・ステイス・アフリカン・デベロッ
プ メ ン ト・ フ ァ ウ ン デ ー シ ョ ン )
(USADF)
アフリカの社会から隔絶され、十
分にサービスを受けていないグ
ループに恩恵をもたらす地域団体
と小規模企業に、最大25万ドル
の助成金を供与します。
インパクト・インベストメントファンド
インクルーシブビジネスを重視す
る以下の投資会社は、多くの場合、
特定の地域、分野、事業規模を対
象としています。
Acumen Fund(アキュメン・ファンド)
低所得消費者に対して、安価な医
療、水、住宅、エネルギー、農業
投入物を提供する初期段階の企業
への債券投資、株式投資を行いま
す。
www.acumenfund.org
African Agricultural Capital( ア フ
リカン・アグリカルチュラル・キャピ
タル)
東アフリカの小規模農業従事者の
生活を改善する高い可能性を持っ
た、商業的に実現可能な中小規模
の農企業に投資を行います。
Grassroots Business Fund(グラス
ルーツ・ビジネス・ファンド)
企業と提携して、課題克服に必要
な長期投資資本とビジネス上の助
言サービスを提供する、営利・非
営利を組み合わせたモデルです。
www.gbfund.org
Leapfrog Investments(リープフロッ
グ・インベストメンツ)
アジアとアフリカの新興消費者へ
の金融サービスを重視する企業に
投資を行う、利益の使途をあらか
じめ定めた基金です。
ww.leapfroginvest.com
LGT Venture Philanthropy(LGTベ
ンチャー・フィランソロピー)
社会と環境に優れた影響を与える
組織を支援する、インパクト・イ
ンベストメント機関です。
www.aac.co.ke/web
www.lgtvp.com
Agri-Vie(アグリ・ヴィ)
Lundin Foundation(ランディン・ファ
ウンデーション)
サハラ以南アフリカの食料と農業
を重視した、民間の株式投資会社
です。
www.agrivie.com/
The Calvert Social Impact
Foundation(ザ・カルバート・ソーシャ
ル・インパクト・ファウンデーション)
安価な融資を実施して、非営利の
マイクロファイナンス機関、フェ
アトレードコーヒー協同組合、社
会的企業の成長資金を提供してい
ます。
www.calvertfoundation.org
Developing World Markets( デ ベ
ロッピング・ワールド・マーケット)
世界規模で、経済と社会の持続可
能な開発を促進している資産運用
管理・投資銀行です。
www.dwmarkets.com
E + Co(エコ)
気候変動と貧困への持続的な解決
策を提供する新設企業とSMEに重
点を置いて、途上国でクリーンエ
ネルギーへの投資を行っています。
www.eandco.net
Emerging Africa Infrastructure
Fund(新興アフリカ諸国インフラスト
ラクチャー基金)
外貨建ての長期融資や商業的条件
でのメザニン型融資を提供して、
民間インフラの建設、開発に資金
を供給するデット・ファンドです。
www.emergingafricafund.com
Grameen Credit Agricole
Foundation(グラミン・クレディ・
アグリコル基金)
マイクロファイナンス機関と社会
的事業に適した融資を促進します。
www.grameen-credit-agricole.org
インクルーシブビジネス・モデル
を構築しているアフリカのSMEに、
直接または仲介機関を通じて投資
を行う基金です。
www.lundinfoundation.org/s/home.
asp
Root Capital(ルート・キャピタル)
非営利の社会投資基金で、小規模
で発展途上の農業ビジネスに対し
て資本を融資し、金融に関する研
修を行い、市場との結び付きを強
化することによって、アフリカと
ラテンアメリカの貧しく環境上脆
弱な地域に農業による繁栄をもた
らします。
www.rootcapital.org
Small Enterprise Assistance Fund
(スモール・エンタープライズ・アシス
タンス・ファンド)
十分にサービスの行き届いていな
い市場の初期段階の企業に対して
投資を行う民間企業です。
www.seaf.com
Soros Economic Development
Fund(ソロス経済開発基金)
未公開株式投資会社とファンド・マ
ネージャー
これらの投資運用会社は、資本を
貯めて、特定の分野(この場合は
インクルーシブビジネス)を対象
に投資を行います。
Actis(アクティス)
新興市場に投資を行い、未公開株、
インフラ、不動産の3つの資産区
分を提供する、未公開株式投資会
社です。
www.act.is
Adlevo Capital(アドレボ・キャピタ
ル)
最新技術を可能にして、社会開発
に好結果を生み出すビジネスモデ
ルに焦点を当て、サハラ以南アフ
リカの民間企業に、株式投資と株
式リンク投資を行います。
www.adlevocapital.com
Advanced Finance & Investment
Group(アドバンスド・ファイナンス
&インベストメント・グループ)
アフリカに重点を置いた未公開株
式運用会社で、金融貢献に留まら
ず、価値付与を重視したアフリカ
の未公開株の専門家が運営する投
資に、現地の資本を投入します。
www.afigfunds.com
Aureos(オレオス)
新興市場の未公開株式投資会社で、
金融サービス、一般的サービス、
建築・工学、製造業、日用消費財、
TMT(電気通信/メディア/IT)な
ど、いくつかの主要投資分野に成
長資金を提供します。
www.aureos.com
Developing Partners International(デ
ベロッピング・パートナーズ・インター
ナショナル)
アフリカの新たに民営化した紛争
後の国・地域に投資を行う、未公
開株式投資会社です。
www.dpi-llp.com
Emerging Capital Partners(エマー
ジング・キャピタル・パートナーズ)
雇用の創出や衰退しつつあるコ
ミュニティの再開発を通じて、貧
困の緩和に取り組む持続可能なビ
ジネスやイニシアティブに投資す
ることで、経済開発を支援する基
金です。
アフリカを重視した未公開株式投
資会社です。制限的競争などが特
徴のビジネス環境や、アフリカの
比較優位性があるか、満たされて
いないニーズがある分野で事業を
展開している企業に投資を行いま
す。
TLG Capital(TLGキャピタル)
Ethos(エトス)
www.sedfny.org
特にサハラ以南アフリカのフロン
ティア市場で、現地の成長資金
(growth capital)を扱うニッチ
金融機関です。社会的利益にかな
う影響をもたらす、収益性の高い
企業に投資します。
www.ecpinvestments.com
南アフリカと、特にサハラ以南ア
フリカの中規模から大規模の企業
に対して長期投資を行う、未公開
株式投資会社です。
www.ethos.co.za/live/index.php
www.tlgcapital.com/home
www.adf.gov
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
103
参 考 情 報
GroFin(グロフィン)
SMEを対象とした金融・開発会社
で、アフリカと中東の成長企業に
ベンチャーキャピタルと事業開発
支援を組み合わせて提供します。
www.grofin.com
Jacana(ジャカナ)
アフリカ全域を対象にした未公開
株式投資会社で、起業家に投資し
て順調なSMEを確立し、持続可能
な財務上、社会上の利益をもたら
します。
www.jacanapartners.com
実施サポート
実施には、ビジネスアイデア
の実現も含まれます。以下の
組織は、助言サービス、物流
サポート、能力開発、融資の
提供を含む、多方面にわたる
サービスを提供することで、
インクルーシブビジネス・モ
デルの立ち上げを支援します。
Accenture Development
Partnerships(アクセンチュア・デベ
ロップメント・パートナーシップ)
組織を強化し、新興市場を構築し
ます。その中から、アクセンチュ
アの中核的スキルと資産を、国際
的な開発セクターに利用できるよ
うにする非営利モデルを採用しま
す。
w w w.accenture.com/us- en/
consulting/internationaldevelopment/Pages/index.aspx
AgDevCo(アフリカ農業開発企業)
ソーシャルベンチャーキャピタル
に投資して、サハラ以南アフリカ
における商業的に実行可能な農業
関連産業への投資機会を創出しま
す。
www.agdevco.com
Agri-ProFocus(アグリプロフォーカ
ス)
オランダにルーツのあるパート
ナーシップで、途上国の小規模農
業従事者による起業活動を奨励し
ます。
www.agri-profocus.nl
The Business Place(ザ・ビジネス・
プレイス)
南部アフリカでの起業活動の奨励
と、持続可能なビジネスの創設を
目指しています。
www.tbp.co.za
Business Growth Initiative(ビジネ
ス・グロース・イニシアティブ)
プロジェクト設計、プロジェクト
評価、調査、テクニカルブリーフ、
ワークショップ、セミナー、パイ
ロット実証プロジェクトを通じて、
直接的、間接的支援を行います。
bgi.usaidallnet.gov
104
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
Business Innovation Facility( ビ ジ
ネス・イノベーション・ファシリティ)
インクルーシブビジネス関連の情
報の共有と、革新的なインクルー
シブビジネス・モデルの構築や規
模拡大を行う企業の支援を目的と
して、オンラインプラットフォー
ム「Practitioner's Hub(プラク
ティショナーズ・ハブ)
」を運営
しています。
www.businessinnovationfacility.ning.
com
CNFA
民間セクターの強化により、途上
国の経済成長を刺激し、農村地域
の生活を向上させることを使命と
しています。
www.cnfa.org
develoPPP.de( デ ベ ロ ッ ピ ー ピ ー
ピー・ドット・ディーイー)
この多国間イニシアティブは、イ
ンクルーシブビジネスを支援する
企業と開発機関の間のパートナー
シップをサポートしています。
www.developpp.de/en/index.html
Development Alternatives
International(デベロップメント・ア
ルタナティブズ・インターナショナル)
社会戦略開発、官民パートナー
シップ、市場動向調査、市場開発、
地元の供給業者の振興を通じて、
民間セクターと非営利財団にサー
ビスを提供する国際開発コンサル
タントです。
www.dai.com
Engineers Against Poverty(エンジ
ニアズ・アゲインスト・ポバティ)
エンジニアリングと国際開発の分
野で活動を行う専門的なNGOで
す。
www.engineersagainstpoverty.org
Enterprise Development Work(エ
ンタープライズ・デベロップメント・
ワーク)
International Development
Enterprise(国際開発エンタープライ
ズ)
(IDE)
非営利の開発機関で、市場主導型
のプロジェクトや灌漑、飲料水供
給、収穫後の加工などの技術を支
援します。
www.ideorg.org
Oxfam International(オックスファ
ム・インターナショナル)
食糧の安全保障と農業に重点を置
く国際NGOで、多くの場合、民
間セクターと協働しています。
www.oxfam.org
Phytotrade(フィトトレード)
会員制の非営利組織で、アフリカ
の農業従事者を国際市場に結び付
け、会員に助言と研修、認証に関
するサポート、人脈作りの機会を
提供します。
www.phytotradeafrica.com
Practical Action(プラクティカル・
アクション)
技術を用いて貧困問題に対処する
国際NGOで、多くの場合、民間
セクターと協働しています。
www.practicalaction.org
Private Enterprise Partnership
Africa(アフリカ民間企業パートナー
シップ)
国際金融公社によるこのイニシア
ティブは、多国間機関、政府、民
間セクターとのパートナーシップ
により、投資環境を改善し、民間
セクターの投資を動員し、アフリ
カの民間企業の競争力を強化する
ためのプログラムと助言サービス
を実施します。
www.ifc.org/Africa
SNV
非営利の国際的な開発機関で、援
助国のクライアントに助言、情報
交換、アドボカシーサービスを提
供しています。
途上国で、ビジネスチャンスを追
求するSME向けの資本(借入資本
と自己資本)と、政治リスク保険
を誘致するのに不可欠な供給源を
引き合わせます。
Technoserve(テクノサーブ)
Imani Development(イマニ・デベ
ロップメント)
http://www.technoserve.org
www.ednaccess.com
従業員が所有する民間の経済開発
コンサルティング会社で、政策立
案者と民間セクターに幅広いサー
ビスを提供します。貿易、民間セ
クター開発、経済成長、地域統合
が専門です。
www.imanidevelopment.com
Innovations for Poverty Action(イ
ノベーションズ・フォー・ポバティ・
アクション)
製品開発などのランダム化比較試
験(RCT)の利用を支援します。
www.poverty-action.org
www.snvworld.org
人々を情報、資本、市場に結び付
けることにより、貧困に対するビ
ジネスソリューションを考案しる
NPOです。
Total Impact Advisors(トータル・
インパクト・アドバイザーズ)
社会的にも財政的にも魅力ある国
際投資の機会を明らかにしたり、
開発したりすることを専門に助言
を行う事務所です。
www.totalimpactadvisors.com
UNDP African Facility for Inclusive
Markets(UNDPアフリカの包括的な
市場の育成プロググラム)
UNDPに よ る 地 域 プ ロ グ ラ ム で、
地域レベルと大陸レベルでの政策、
企画、パートナーシップによる介
入を組み合わせて、アフリカ全域
の包括的な市場の育成を支援しま
す。
www.undp.org/africa/privatesector
UNDP Inclusive Market
Development(UNDP包括的な市場
の開発)
UNDPのGrowing Sustainable
Business(持続可能なビジネス
の育成)イニシアティブから派生
した、この包括的な市場の開発ア
プローチは、企業のコアビジネス
に関して、企業と協力しながら、
開発目標の実現を推進します。
www.undp.org/content/undp/en/
home/ourwork/partners/private_sector/IMD
参考文献
一般的なインクルーシブビジネスとアフリカの開発に関する参考文献は、膨大な数に上り
ます。以下のリストには、参考資料としていくつか重要なものを上げています。サハラ以南
アフリカのインクルーシブビジネスに、特に重点を置いた出版物もいくつかあります。
オンライン出版物に関しては、著者と発行年、タイトルのみを記載して
います。こうした出版物は、一般的な検索エンジンに資料のタイトルを入
力すれば見つかります。
アフリカのインクルーシブ ビジネス
アフリカの開発
Monitor Inclusive Markets(モ
ニター・インクルーシブ・マーケッ
ト)(2011年)
Promise and Progress: MarketBased Solutions to Poverty in
Africa(プロミスとプログレス:
アフリカの貧困に対する市場主導
型ソリューション)
Monitor Group( モ ニ タ ー・ グ
ループ)
アフリカの貧困問題に取り組む、
財政的に持続可能な企業について、
総合的に分析しています。
AfDB、AUC、UNDP、 お よ び
UNECA(国連アフリカ経済委員
会)(2012年)
MDG Report 2012: Assessing
Progress in Africa toward the
Millennium Development
Goals(2012年版国連MDG報告:
ミレニアム開発目標の達成に向け
たアフリカの進捗状況評価)
MDGの達成に向けて、アフリカ
の 進 捗 状 況 を た ど り、 ポ ス ト
2015年開発アジェンダと現在の
MDGから得られた教訓を、最も
適切に取り入れる方法について論
じています。
UNDP(2012年)
Inclusive Business Finance
Field Guide 2012: A
Handbook on Mobilizing
Finance and Investment for
MSMEs in Africa(インクルーシ
ブビジネス・ファイナンス・フィー
ルド・ガイド2012年版:アフリ
カのMSMEへの資金と投資に関す
るハンドブック)
U NDP A f r i c a n Fa c i l i t y fo r
Inclusive Markets(UNDPア フ
リカの包括的な市場の育成プログ
ラム)
MSMEに資金を提供する金融機関
から、インクルーシブビジネスへ
の融資を動員するためのフィール
ド・ガイドです。
UNDP(2012年)
The Roles and Opportunities
for the Private Sector in
Africa’s Agro-Food Industry
(アフリカ農業食品産業の民間セ
クターの役割と機会)
U NDP A f r i c a n Fa c i l i t y fo r
Inclusive Markets(UNDPア フ
リカの包括的な市場の育成プログ
ラム)
アフリカ農業食品産業の民間セク
ターにとっての機会を明らかにし
ています。
AfDB、OECD、UNDP、 お よ び
UNECA(2012年)
African Economic Outlook(ア
フリカ経済見通し)
アフリカの経済・社会・政治的発
展についてモニタリングする年次
報告書です。2012年のテーマは、
若年雇用の促進です。
McKinsey Global Institute(マッ
キンゼー・グローバル・インスティ
テュート)(2010年)
Lions on the move - The
progress and potential of
African economies(動くライオ
ン―アフリカ経済の進展と可能性)
McKinsey Global Institute
(マッキンゼー・グローバル・イ
ンスティテュート)
アフリカの成長が加速した原因を
調査し、企業のビジネスチャンス
を明らかにしています。
Roland Berger Strategy
Consultants(ローランド・ベルガー
戦略コンサルタント)(2012年)
Inside Africa( イ ン サ イ ド・ ア
フリカ)
Roland Berger Strategy
Consultants(ローランド・ベル
ガー戦略コンサルタント)
成長の見通しと機会を含め、セク
ターごとに分析を行っています。
UNDP(2012年)
Africa Human Development
Report 2012 - Towards a
Food Secure Future(アフリカ
人間開発報告書2012:食糧が安
定確保される未来に向けて)
アフリカの人間開発に関する年次
報告書です。
インクルーシブビジネス
クリスティーナ・グラドル、クロー
ディア・クノブロッフ(Christina
Gradl and Claudia Knobloch)
(2010年)
Inclusive Business Guide( イ
ンクルーシブビジネス・ガイド)
Endeva(エンデヴァ)
インクルーシブビジネス・モデル
をどのように構築すればよいのか、
企業が低所得市場により深く関与
するにはどうすればよいのかなど
の概況を提供する入門書です。
クリスティーナ・グラドル、ベス・
ジ ェ ン キ ン ス(Christina Gradl
and Beth Jenkins)(2011年)
Tackling Barriers to Scale(拡
大への障壁と闘う)
Harvard Kennedy School(ハー
バ ー ド・ ケ ネ デ ィ・ ス ク ー ル )
、
CSR Initiative(CSRイニシアティ
ブ)
インクルーシブビジネスのエコシ
ステムと、企業がエコシステムの
中で事業を効果的に強化し、活動
に利用できる3つの構造について
説明しています。
Monitor Inclusive Markets(モ
ニター・インクルーシブ・マーケッ
ト)(2009年)
Emerging Markets, Emerging
Models(エマージング・マーケッ
ト、エマージング・モデル)
Monitor Group( モ ニ タ ー・ グ
ループ)
世界の貧困という課題に取り組む
市場を基盤としたソリューション
の働き、経済的側面、ビジネスモ
デルについて分析した報告書です。
C・K・プラハラド、スチュアート・
L・ ハ ー ト(Prahalad, C.K. and
Stuart L. Hart)(2002年)
The Fortune at the Bottom of
the Pyramid. Strategy +
Business 26, no. 1st quarter
(2002): 14(ピラミッドの底辺
(BoP)における富。戦略プラス
ビジネス26、第1四半期(2002
年)
:14)
貧困と闘う経済・利益志向のアプ
ローチに賛成する議論を展開して
います。
UNDP(2008年)
Creating Value for All:
Strategies for Doing Business
with the Poor(貧困層を対象に
したビジネス戦略:すべての人々
のために価値を創造する)
50の ケ ー ス ス タ デ ィ に 基 づ き、
インクルーシブビジネスを行うベ
ンチャー企業の制約と有望な解決
法を明らかにしています。
UNDP(2010年)
The MDGs: Everyone’s Business
(ミレニアム開発目標:全ての人々の
ビジネス)
MDGに基づく政策立案、調査と
アドボカシー、資金提供、補足的
能力の提供によって、インクルー
シブビジネスを支援する組織に指
針を与えます。
WRI(世界資源研究所)
(2007年)
The Next 4 Billion: Market
Size and Business Strategy at
the Base of the Pyramid(次な
る40 億 人 ― ピ ラ ミ ッ ド の 底 辺
(BoP)の市場規模とビジネス戦
略)
分野別、国別に定量的評価を用い
て、BoP市場の市場機会を測定し
ています。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
105
謝 辞
本報告書作成のためにご尽力くださった多くの方々に、謝意を表します。
諮問委員会
事例研究の執筆者
以下の諮問委員が提供してくれた指針と洞察は、アフリカの包括的な市場
の育成プログラムと本報告書にとって、計り知れないほど貴重なものです。
サハラ以南アフリカのインクルーシブビジネスに関する事例研究は、いく
つかのGIM研究イニシアティブによって作成されました。28の研究につ
いては、2008年と2010年に実施された研究プロジェクトの間に進められ、
15の新しい研究については、本報告書のために実施されました。それぞ
れの寄稿に対して、次の執筆者の方々に謝意を表します。
キャロライン・アシュリー(Caroline Ashley)
、Ashley Insight Ltd(ア
シュリー・インサイト・リミテッド)取締役
マ ー テ ィ ン・ ブ ワ ル ヤ(Martin Bwalya)
、Comprehensive Africa
Agriculture Development Programme(包括的アフリカ農業開発プロ
グラム)
(CAADP)代表
リ ネ ッ ト・ チ ェ ン(Lynette Chen)
、NEPAD Business Foundation
(NEPADビジネス基金)
(NBF)CEO
イッサ・フェイ(Dr. Issa Faye)
、アフリカ開発銀行(AfDB)Development
Research Division(デベロップメント・リサーチ・ディビジョン)マネー
ジャー
ジャメル・グリブ(Djamel Ghrib)
、African Union Commission(ア
フリカ連合委員会)
(AUC)Division Private Sector Investment &
Resource Mobilization(ディヴィジョン・プライベート・セクター・イ
ンベストメント&リソース・モビライゼーション)代表
タ シ ュ ミ ア・ イ シ ュ マ エ ル(Tashmia Ismail)
、Gordon Institute of
Business Studies(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・ス
タディーズ)シニア・レクチャラー、BoPハブマネージャー
ウーリッヒ・クリンス(Ullrich Klins)
、B4D Pathfinder(B4Dパスファ
インダー)
、
Southern Africa Trust(南部アフリカトラスト)研究開発コー
ディネーター
オーガスティン・ランギンテュオ(Dr. Augustine Langyintuo)
、Alliance
for a Green Revolution in Africa( ア フ リ カ 緑 の 革 命 の た め の 同 盟 )
(AGRA)
、Policy and Partnerships(ポリシー・アンド・パートナーシッ
プ)代表
フティ・ムトバ(Futhi Mtoba)
、Business Unity South Africa(南アフ
リカビジネス連合)
(BUSA)代表
ル ー シ ー・ ム チ ョ キ(Lucy Muchoki)
、Pan African Agribusiness &
Agro-Industry Consortium(パン・アフリカン・アグリビジネス&アグ
ロインダストリー・コンソーシアム)
(PanAAC)CEO
フレッド・オガナ(Fred Ogana)
、TechnoServe(テクノサーブ)ケニ
ア所長
ザヒード・トレス・ラーマン(Zahid Torres-Rahman)
、Business Fights
Poverty(ビジネス・ファイツ・ポバティ)ファンディング・ディレクター
OIKOS UNDP YOUNG SCHOLARS DEVELOPMENT ACADEMY
(OIKOS・UNDPヤング・スカラーズ・デベロップメント・アカデミー)
2012年8月12日から17日にナイロビで開催されたOIKOS・UNDPヤン
グ・スカラーズ・デベロップメント・アカデミーのパートナーシップの参
加者は、本報告書に関するアイデアと提言に寄与しました。
106
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
フアナ・デ・カトー(Juana de Catheu)
、
エセック経済商科大学院大学(フ
ランス)
オレインカ・デイヴィッド・ウェスト(Olayinka David-West)、PanAfrican University(パン・アフリカン大学)
、
Lagos Business School(ラ
ゴス・ビジネス・スクール)
(ナイジェリア)
ママドゥ・ガエ(Mamadou Gaye)
、
African Institute of Management(ア
フリカン・インスティテュート・オブ・マネジメント)
、ダカール(セネ
ガル)
マ イ ケ ル・ ゴ ー ル ド マ ン(Michael Goldman)
、Gordon Institute of
Business Science(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・
サイエンス)
(南アフリカ)
エリア・ヒサール(Eria Hisali)
、
Makerere University(マケレレ大学)
(ウ
ガンダ)
ヤーリ・カマラ(Yarri Kamara)
、Initiatives Conseil International(イ
ニシアティブ・コンセイユ・インターナショナル)
(ブルキナファソ)
ダイアン・ヌデゥトゥ・カンヤグラ(Diane Nduta Kanyagia)、(ケニア)
ウィニフレッド・カルガ(Winifred Karuga)
、Jomo Kenyatta University
of Agriculture and Technology(ジョモケニヤッタ農工大学)(ケニア)
アンドレア・ロサーノ(Andrea Lozano)
、Aligned Strategies(アライ
ンド・ストラテジーズ)コンサルタント(米国)
トリザ・ムウェンワ(Triza Mwenda)
、
(ケニア)
ウスマン・モロー(Ousmane Moreau)
、
(セネガル)
オ ル ウ ェ ミ モ・ オ ル ワ ソ ラ(Oluwemimo Oluwasola)、Obafemi
Awolowo University(オバフェミアウォロウォ大学)
(ナイジェリア)
ロバート・D・オセイ(Robert D. Osei)
、University of Ghana(ガー
ナ大学)
(ガーナ)
トフィク・シラジ・フィテ(Tofik Siraj Fite)
、Jimma University(ジン
マ大学)
(エチオピア)
コ ー ト ニ ー・ ス プ レ イ グ(Courtenay Sprague)
、University of the
Witwatersrand(ウィットワーテルスラント大学)
(南アフリカ)
ア ル フ レ ッ ド・K・ タ ー ウ ェ イ・ ト ワ ラ(Alfred K Tarway-Twalla)、
University of Liberia(リベリア大学)
(リベリア)
インタビュー協力者
報告書作成チーム
時間と見識を与えてくださったすべての専門家の方々に感謝いたします。
本書は、UNDPアフリカ局(RBA)によって作成されました。作成チーム
は、RBA局長のテゲグネワーク・ゲトゥー(Tegegnework Gettu)と副
局 長 バ バ カ ー・ シ セ(Babacar Cissé)
、UNDP Regional Service
Centre(UNDPリージョナル・サービス・センター)マネージャーのゲ
ルト・トログマン(Gerd Trogemann)に特に謝意を表します。
サラ・アブダルハフィズ・ユスフ(Sarah Abdulhafiz Yusuf)
、ICE Addis
(ICEアディス)
オリダプポ・アデオエ(Olidapupo Adeoye)
、Tony Elumelu Foundation
(トニー・エルメル・ファウンデーション)
ダニエル・アンナローズ(Daniel Annarose)
、Manobi(マノビ)
ジェイ・バンジェード(Jay Banjade)
、
CARE International Ethiopia(ケ
ア・インターナショナル・エチオピア)
ギブ・バアロッホ(Gib Bulloch)
、Accenture(アクセンチュア)
ゲルハルト・クッツェー(Gerhard Coetzee)
、ABSA(アブサ)
ア ン ド レ・ デ ル ヴ ォ ー ト(Andre Dellevoet)
、African Enterprise
Challenge Fund(アフリカ・. エンタープライズチャレンジ基金)
ヴァレンティーナ・ドゥアラ(Valentina Douala)
、HIV/AIDS に関する
Pan African Business Coalition(パン・アフリカン・ビジネス・コリショ
ン)(PABC)
リバン・イーガル(Liban Egal)
、First Somalia Bank(ファースト・ソ
マリア・バンク)
アーノルド・エクペ(Arnold Ekpe)
、Ecobank(エコバンク)
ジョン・フェイ(John Fay)
、
Shared Value Africa(シェアード・バリュー・
アフリカ)
ヨハネス・フロスバッフ(Johannes Flosbach)
、Roland Berger(ロー
ランド・ベルガー)
ラミラ・ハティファ(Lamira Hatifa)
、CSI +
ニーナ・ヘニング(Nina Henning)
、Johnson and Johnson(ジョンソ
ン・エンド・ジョンソン)
クリス・アイザック(Chris Isaac)
、AgDevCo(アフリカ農業開発企業)
ニコラ・ジョエル(Nicola Jowel)
、SAB Miller(SABミラー)
ボ ー ツ・ ブ ラ ッ キ ー・ カ イ ジ ー ル(Boaz Blackie Keizire)
、African
Union Commission(アフリカ連合委員会)
オスカー・キマニ(Oscar Kimani)
、Business Mind Africa(ビジネス・
マインド・アフリカ)
アンニャ・ケーニッヒ(Anja Koenig)
、
Reform Consulting(リフォーム・
コンサルティング)
ジュリア・クーニャ(Julia Kurnia)
、Zidisha(ジディシャ)
ユフキル・クマロ(Ufukile Kumalo)
、IDC(産業開発公社)
ダニエル・モブリー(Daniel Mobley)
、Standard Chartered Bank(ス
タンダードチャータード銀行)
リチャード・モーガン(Richard Morgan)
、Anglo American(アングロ・
アメリカン)
ジェームズ・ムワンギ(James Mwangi)
、Equity Bank(エクイティ・
バンク)
イニ・オヌク(Ini Onuk)
、Thristle Consulting(トリストル・コンサル
ティング)
テミトペ・オシコヤ(Temitope Oshikoya)
、Ecobank(エコバンク)
サグン・サクセナ(Sagun Saxena)
、Cleanstar Ventures(クリーンス
ター・ベンチャーズ)
ハインリヒ・シュルツ(Heinrich Schultz)
、Organimark(オーガニマー
ク)
サフィアトー・トラオレ(Safiatou Traore)
、African Union Commission
(アフリカ連合委員会)
ジャスティン・スミス(Justin Smith)
、Woolworths(ウールワース)
ラ イ ア ル・ ホ ワ イ ト(Lyal White)
、Gordon Institute of Business
Science(ゴードン・インスティテュート・オブ・ビジネス・サイエンス)
ゲリー・ファン・デン・ハウテン(Gerry van Den Houten)
、SAB Miller
(SABミラー)
トーマス・セールス(Tomas Sales)率いるUNDP AFIMチームメンバー:
ティーナ・トゥルネン(Tiina Turunen)
、ユルゲン・ナグラー(Jürgen
Nagler)
、パスカル・ボンゾム(Pascale Bonzom )
、ダニエル・アクア
イ(Daniel Acquaye)
サーバ・ソバーニ(Sahba Sobhani)率いるGIMチームメンバー:スバ・
シヴァクマラン(Suba Sivakumaran)
、ティーラウト・ティーラスパル
ク(Teerayut Teerasupaluck)
これらのチームは、研究コンサルティング機関の「エンデヴァ」
(Endeva)
と「レシプロシティ」
(Reciprocity)から支援を受けました。
私たちは、報告書の中心的な共著者として、クリスティーナ・グラドル
(Christina Gradl)とピエール・クッツァー(Pierre Coetzer)
、エイリー
ン・クレイマー(Aline Krämer)
、ニコ・パスカレル(Nico Pascarel)
、
クローディア・クノブロッフ(Claudia Knobloch)
、アリッサ・リベラ
(Alyssa Rivera)に感謝します。
また、UNDP RBAのチーフ・エコノミスト、ペドロ・コンセイソン(Pedro
Conceicao)のほか、アヨデル・オデュソラ(Ayodele Odusola)
、マ
ル コ ス・ ネ ト(Marcos Neto)
、 キ ャ ス パ ー・ ソ ネ ソ ン(Casper
Sonesson)ドミンゴス・マシヴィラ(Domingos Mazivila)
、
アーネスト・
フォースター(Ernest Fausther)らUNDPの同僚たち、そのほかの方々
から貴重な支援をいただいたことにも謝意を表します。
R e a l i z i n g A f r i c a’ s W e a lt h
107
アフリカの富の実現―
共栄のためのインクルーシブビジネスの構築
2013年5月
本報告書で表明されている意見や提言は、必ずしも国連、
UNDP、およびその加盟国の見解を反映したものではあり
ません。また、本書の地図に掲載している国境、国名、名称
は、国連が公式に支持もしくは承認していることを示すもの
ではありません。
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すべての著作権は保護されています。UNDPの事前の許可
なく、本出版物のいかなる部分の電子、機械、コピー、その
他のいかなる形や手段での複製、保管システムへの保存、伝
送を禁じます。
デザイン:Martin Markstein
編集:Barbara Serfozo
Em
R
アフリカの富は、
そこに居住する人々です。彼らは若く、またその数も増加しており、つねに社会参加や雇用
の機会を求めています。これらの人々をビジネスに参加させることができるならば、民間セ
クターは、彼らの持っている潜在力を顕在化させることができます。インクルーシブビジネ
スは、低所得層の人々をバリューチェーンに組み込むことで、こうした人々の人生の基礎と
なる様々な機会を生み出します。
これまでもアフリカでは、さまざまなイノベーションや起
本報告書は、サハラ以南アフリカにおけるインクルーシブ
業家精神に基づいたインクルーシブビジネスが実施されて
ビジネスの現状と、インクルーシブビジネスを進めている
きました。しかし、アフリカのビジネス環境には数多くの
企業と起業家を支えるエコシステムについて説明していま
制約があるため、多くの場合、より大きな規模で展開する
す。また、これらの企業と起業家が、より多くの、より強
までには至っていません。適切な情報やインセンティブを
力なインクルーシブビジネスを構築することを可能にする、
提供し、投資やビジネスの実施を後押しするような支援型
エコシステム強化のための有望な機会を明らかにするもの
のエコシステムが整備されれば、より大きな影響力を持っ
です。
たインクルーシブビジネスが増えると考えられます。
Empowered lives.
Resilient nations.
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