ロックン・ロールが産まれた1950代を代表するブランドの一つとして知られるKayブランド。ジャズ、ブルース・ マン、そしてロカビリー/R&Rプレーヤー達に愛されたヴィンテージ・モデルが蘇った。 (文:谷川史郎) 写真3 ユニークなピック・ガードとレトロながらポップ感のある ボディー・デザイン 写真4 フラットな特性を持つブレード・タイプのオリジナル・シ ングルピック・アップ 写真5 トーンはハイ・カット・タイプなど、細部に渡り個性が光 る、コントロール・ツマミ ブランドとして一部のレトロ・ファンを残しメジャー・ The Kayストーリー シーンからは遠のいてしまう。 しかし2000年代に入りそのレトロかつ渋さを持つデ ードが付けられたオリジナル・ダブル・カッタウエイ・ The Kay(ケイ) ミュージック・インストルメントと ザインやトーンを継承し、現代のサウンド・シーンに対 デザインのフラット・トップ・ボディーは、アコーステ して1930年代初期にシカゴで創立されアーチ・トッ 応したブランドとしてカリフォルニアから再登場。特に ィック・ギターの構造と同じようなKay独自のチェンバ プ・ギターをはじめシン・モデル、ベースなどをライン 今回紹介するヴィンテージ・シリーズは、トラディショ ー・ブレイシング・システムを持つアコースティック・ ナップ、50年代になると特に本国アメリカでは、ギタ ナルなジャズ・ギタリストはもちろん、かつてのKayを ホロー・タイプで、3プライによるカーリー・メイプ ホロー・ボディーとコンビネーションを組みナチュラ ーをメール・オーダーで購入可能という当時としては革 知らないロック世代には新鮮なルックス、キャラクター ル・トップ。そして緩やかなアーチを持つメイプル・バ ルでアコースティックなトーンを生み出すピック・アッ 新的なセールス・システムを取り入れたブランドとして のブランドとして注目を浴びはじめている。 アコースティック・トーンを 支えるオリジナルピック・アップ ック、サイドにはメイプルという仕様。セミ・アコース プには通常のシングル・ピック・アップに比べ、半分以 エントリー・クラスにヒット。ビギナーをはじめホロ ティック・サイズのボディー厚によるシン・ボディーの 下の幅を持ちながらツイン・ブレード仕様にされたKay ー・タイプのモデルを中心にラインナップしていたKay ホロー・タイプながら、生鳴りも良く豊かな低域を持っ オリジナル・シングルサイズ・ピックアップをマウン ているが、ブレイシング・デザインに独自のアンチ・フ ト。とてもスリムなルックスながらアンプからはクリア ィードバック構造を取り入れているため、余計な低音の ーでアコースティックなトーンを持つ低音が出てくる。 膨らみやハウリングを押さえたナチュラルなベース・ト ピック・アップはフロント・ポジションに1基だけだ ーンが得られるよう設計されている。 が、立ち上がりやブライト感などトーン全体がバランス のギターはハウリン・ウルフらブルース・マン、そして ジャズ、初期ロックン・ロール・シーンを中心に愛用者 '50sモデルらしい こだわりのデザイン を拡大していった。50年代後期に入るとプロ・シリー ズとしてハイエンド・モデルをラインナップ。中でも現 モダンかつ高級感のあるダーク・ブラウンとホワイト 在でもレジェンドなジャズ・ギタリストとして名を残し のツートーン・カラーに仕上げられたハード・ケースを Kayヴィンテージ・シリーズの特長的シルエットにも よく素直に出てくる感じだ。クセを付けずにシンプルに ているトップ・ジャズ・ギタリスト、バーニー・ケッセ 開けた瞬間、そのレトロでモダンなルックスが目に飛び なっているヘッド部のオリジナルKel-von-a-torエンブ 弦とボディーのサウンドを拾ってくる感じだが、フラッ ルのシグネイチャー・モデルを発表することによってプ 込んでくるK5970V ジャズ・スペシャル・モデル。今 レムとRoger Fritzとシグネイチャーされたトラスロッ トな分、ピッキング・ポジションなどのニュアンス・フ ロ・ユース・クオリティーのブランドとしての知名度を 回試奏したモデルは、ブラック・フィニッシュ(ブロン ド・カヴァーをもつネックは、'50s、'60sといったヴ ォローも付け易く、このあたりはジャズ系、ロック系、 得た。今回紹介のジャズ・スタイルをターゲットにした ド・フィニッシュも有り)のボディーに大きめでユニー ィンテージ系ヴィザールなどに多くある31インチ・ス どちらのプレーヤーにも弾き易いだろう。 ベースなども発売しているが、R&Rをはじめギター・イ クなデザインを持つピック・ガードが貼られている。オ ケールでCタイプの細めのスリム・ネック。オールディ ピック・アップのコントロールは、ヴォリューム&ト ンスト・バンドなど幅広いジャンルで使用されていく。 フ・ホワイト地にゴールドの細かい撚り糸のような柄が ー・モデルに多い、細いグリップを持つネックは、1ピ ーンがボディーのボトム下寄りにシンプルにレイアウト しかし、その後エレクトリック・ギター・シーンはロ 入ったピックガード、そして専用ハード・ケースにも入 ース・カナディアン・メイプルを採用。弦間も狭めに作 されているが、トーン・コントロールはハイカット・タ ック・ミュージックの台頭と共にソリッド・モデルへと れられているブランド・ネームの頭文字「K」を配した られているため、ナット付近では一般的なベース・ギタ イプになっているため、通常のトーン・コントロールの 移行。Kayもボブ・ディランやエリック・クラプトンら ヘッドの大きなゴールド・プレートKel-von-a-torヘッ ーのネック・グリップというよりは、どちらかと言うと ようにアタックが消えトーン全体がソフトになっていく の使用もあったものの、レトロなデザインやロック・プ ド・ストックが、まずモダン・ポップ的な印象を強く感 ギターの細めのネックをグリップしているような感覚 のではなく、低、中域がある程度残ったまま、高域が抑 レイへのプレイアビリティーなどの点でマイナー・メー じさせてくれる。 で、ジョイント部に向かいスムーズに太さが増していく。 えられていく感じでトーンが落ちていく。モコモコなト ーンになるのではなく少しづつアタック感、エッジの部 写真6 ウッド・ブリッジと金属サドル/スタッドのコンビネーション カー的なイメージとなってしまう。しかし、ポール・マ このヴィンテージ・モデルには、ボディー・トップだ フィンガーボードにはローズウッドを採用。細めでや ッカートニーのシングル・ジャケットやプロモ・ビデオ けでなくコントロール・ツマミの名称(vol,tone)がツ やラウンドの付けられたフィンガー・ボードには、ニッ 分が滑らかなサウンドへと変化していくという感じだ。 での使用など、その50年代的オールディーでオリジナ マミの数字部分に入れられているなど、各所にオリジナ ケル・シルヴァー製ジャンボ・フレットが打たれスリ これは、やはりフラット・ワウンドでのジャズ・トーン リティーの高いシルエットによってレトロ、ヴィザー ル・デザインやアイデアが取り入れられている。独自の ム・ネックでもピッチの安定としっかりとしたトーンが を基本としたサウンド・メイクを前提にしたコントロー ル・ギター・シーンなどには必ずと言ってKayのギタ ブレイシングやオリジナル・サイズのピック・アップな 得られるよう考えられている。最終フレットは20fだが、 ルだと思うが、あくまで弦のナチュラルなトーンを基本 ー、ベースは登場し、'50年代アメリカン・ギターの代 ど、サウンド面からパーツ1つまでKay独自のデザイン 17フレット・ポジションでダブルカット・シェイプ・ にしたサウンド・メイクを求めるプレーヤーには、とて 表ブランドとして、その名を見つける事ができた。その が施されている。まだデザイン的に自由度の高かった ボディーとセット・ジョイントされているため、ハイ・ もトーンメイクし易いトーン・コントロールだろう。こ 後ロック・ギター・シーンを中心にヘヴィーなどより '50年代エレキ・ギター/ベース・シーンを感じさせ、シ ポジションまで非常にスムーズにポジショニングができ のハイカット・タイプのトーン・コントロールは、本体 も、ドライブ系へと進化するサウンドの中、Kayブラン ンプルなコントロール類、ピックガードのシェイプなど、 る。全体的にスリムに仕上げられ、ロー・ポジションで のヴォリューム・コントロール、そしてアンプ側のイコ ドのギターはロック向き変形ソリッド・モデルなど出す Kayならではの雰囲気を醸し出している。 の押さえ易さや移動し易いハイ・ポジションなど、レト ライザーとマッチさせる事によって、ピッキング時のア 付ける場合にもこのベースは最適なトーンを造り出して ロなボディー・デザインながら広いレンジでもプレイし タックなど、かなりキメ細かく調整できるので一般的な くれるだろう。 易いようデザインされている。弦間も狭めにされている パッシヴ・タイプのトーン・コントロールに比べると、 ピックアップ自体の持つシングル特有の明るいサウン ためビギナーや女性ベーシストにも弾き易いだろう。ホ かなり使い易く、フレーズや曲によっての微妙なトー ドは、クセが無くフラットなトーンを持っているため、 ロー・ボディーによるジャズ・スペシャル・モデルだけ ン・セッティングを楽しむ事ができるだろう。もちろん ラウンド・ワウンド弦を張ることによって、アタックを にウッディーでナチュラルなトーンが得られるよう、ブ ヴォリューム・コントロールによってもレベル位置によ 活かしたクリアーでエッジのしっかりとしたベース・サ リッジ&テイルピースにもフル・アコなどアコースティ って微妙なトーン・メイクが可能で、ベース側のヴォリ ウンドを出す事もできる。フラット弦に対してサステイ ック・モデルにマウントされているタイプのような、ロ ュームを若干落とし気味にしたフラット・ワウンド弦と ンも増すので、ロック的なサウンドにはラウンドを張る 今回紹介するベースは「ジャズ・スペシャル・シリー ーズウッド・ブリッジとトラピーズ・テイルピースを使 指弾きならではのアコースティック感のあるオーソドッ とクリーンでレンジの広いベース・サウンドが得られる ズ」としてラインナップされたレトロ・デザインが個性 用している。自然なサステインとソフトなテンション感 クスなベース・トーンは、ソリッド・ボディーでは得ら ハズだ。ホロー・ボディーなだけにラウドなドライヴ系 を放つヴィンテージ・リイシュー・モデル。ジャズ・モ を作り出しているが、ブリッジのサドルとスタッド部分 れない独特な箱鳴りを持ったアコースティックなトーン のベース・サウンドには、フィードバックなどの点で難 デルとネーミングされているように、発売当時のスタイ にはスティール・パーツを採用。フラット・ワウンド弦 を感じさせてくれる。 しいかもしれないが、歌モノやオールディーなソウル ル同様にジャジーなトーンをキャラクターとし、メーカ でも適度なアタックとサステインそしてソリッド・ベー またジャジーなトーンだけではなく、レコーディング /R&Bベース・トーンをはじめ、ライトなポップ・バン ー出荷時点でフラット・ワウンド弦が張られているのが ス系の分離の良さが得られるよう考えられている。サド などでアメリカン・ヴィンテージ・アンプやプリ・アン ドの中でブライトさとシングル特有のクリアーな低音を このモデルの大きな特長と言えるだろう。 ルはブリッジに成形された溝に装着するように作られる プなどでのヴィンテージ・チューブ・トーン系のシミュ 活かしたピック弾きなど、ジャズ・タイプだけではなく など各所にKay特有のこだわりが表われている。 レートを基にフラット弦をピックで弾き、60年代イン 幅広いスタイルに使えるサウンドを持ち合わせている。 価格:13万1,250円 ものの、アコースティックやエコノミーなエントリー・ ヴィンテージ・リイシューのK5970V ジャズ・スペシャル・モデル '50年代に発表されたオールディーかつポップなイメ 写真1 高級感のあるツートーン・カラーの専用ケース 写真2 ヘッドに立体的に付けられたKel-von-a-torエンブレム ージを感じさせるオリジナル・デザインによるピックガ 写真7 ハイ・ポジションが弾きやすいカッタウエイとスリムなネック スト・バンド系やオールディーなポップ・サウンドに近 ■お問い合わせ:日本エレクトロ・ハーモニックス http://www.electroharmonix.co.jp/ 16 ElectricGuitar 30|JUL・2010 ElectricGuitar 30|JUL・2010 17
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