第8回講演会要旨集 - 日本地質学会四国支部

第8回日本地質学会四国支部総会・講演会
講演要旨集
日時 : 2008 年 12 月 20 日 (土) 12:30 より
会場 : 愛媛大学総合情報メディセンター・メディアホール
第8回日本地質学会四国支部総会・講演会
日時:2008 年 12 月 20 日(土)午後 12 時 30 分 - 午後 18 時
場所:愛媛大学総合情報メディアセンター・メディアホール(松山市文京町3)
12:30-14:00
個人講演 ポスターセッション・コアタイム
14:00-
開会挨拶
14:10-14:40
特別講演 「2000 年以降に発生した新潟地域の斜面災害について」
愛媛大学 防災情報研究センター 山岸宏光先生
14:40-15:10
総会
支部長挨拶
総会議事
報告事項:H20 年度活動報告・会計報告
議題:H21 年度活動計画
日本地質学会四国支部講演会の講演要旨公表について
H21 年度総会・講演会開催地について
15:15-17:35
個人講演 口頭発表
17:50-18:00
表彰式・閉会
1
プログラム
口頭発表
15:15-15:35
O-1
松山平野における縄文時代後期の火山灰質堆積物中のテフラの岩石学的研究
15:35-15:55
O-2
領家帯波方地域の苦鉄質深成岩体の結晶分化作用
16:55-17:15
O-3
ペルム紀前期井原オフィオライトにおける変玄武岩中の微生物変質組織
遠藤晴美(愛媛大・理)・榊原正幸(愛媛大・理工)
曽我部由香・佐野 栄(愛媛大・教育)
菅原久誠・榊原正幸(愛媛大・理工)・池原 実(高知大・海洋コアセンター)
15:55-16:15
O-4
四国中央部,伊野地域の秩父帯の地質構造
16:15-16:35
O-5
2005年台風14号豪雨で発生した宮崎県槻之河内地すべりの活動履歴
村田明広・犬房陽一(徳島大・総合)・橋本陽介・前川寛和(大阪府立大・院・理)
西山賢一(徳島大・総合)・北村真一(徳島大学大学院)・高谷精二・鈴木惠三(南九州大学)・長岡信治(長崎大学)
16:35-16:55
O-6
和歌山県白浜町シガラミ磯に露出する中新統白浜層の堆積学と生痕学
17:15-17:35
O-7
ニュージーランド,ワイヘケ島最下部三畳系層状チャートの放散虫化石と有機炭素同位体比‐予報‐
堀 利栄(愛媛大・理工)・山北 聡(宮崎大・教育文化)・池原 実・小玉一人(高知大・海洋コアセンター)・相田吉昭・酒井豊三郎(宇都宮大・農)・
竹村厚司(兵庫教育大・自然系)・鎌田祥仁(山口大・時間研)・鈴木紀毅(東北大院・理工)・K.Bernhard Spörli・Jack A. Grant-Mackie(Univ. Auckland, NZ)
奈良正和(高知大・理)
ポスター発表
P-1
ヘビノネゴザによる重金属の自然浄化作用
佐野 栄(愛媛大・教育)
P-2
P-3
東地中海の高塩水湖(Meedee Lake)より採取された海洋コアの堆積環境の解明
泉谷直希(高知大・院・総合人間自然科学研究科)・村山雅史・佐川拓也(高知大・海洋コア)・朝日博史・中村恭之・白井正明・芦寿一郎・徳山英一(東大・海洋研)
愛媛県東温市滑川地域おける中新統久万層群とその堆積環境
P-4
明神拓也(愛媛大・スーパーサイエンス)・奈良正和(高知大・理)
Accumulation of heavy metals by Eleocharis acicularis in an abandoned mining site of Hokkaido, Japan
P-5
NGUYEN Thi Hoang Ha, Masayuki SAKAKIBARA (Grad. school of Ehime Univ.), Daisuke TAKEHANA (Sumiko Consultant Co., Ltd.), Takashi HAMADA,
Sakae SANO (Faculty of Education, Ehime Univ.), Koichiro SERA (Cyclotron Research Center, Iwate Medical Univ.) and Rie, S. HORI (Grad. School of Ehime Univ.)
北海道東部・常呂帯のジュラ紀後期緑色岩中の微生物変質組織および方解石の炭素同位体地球化学
榊原正幸・菅原久誠(愛大・院理工)・富山雄太(九大・院生資環)・池原 実(高知大・海洋コアセンター)・伊東佳彦・岡﨑健治((独)寒地土木研)
P-6
P-7
高知県安田町東谷地域における鮮新統穴内層の層序とGlycymeris cisshuensisの産出
岩田朋子・近藤康生・高橋健一(高知大・理)
松山平野の第四系上部に挟在するテフラ層の岩石学的研究
高倉清香(愛媛大・理)・榊原正幸(愛媛大・理工)
2
る.また,火山ガラスの色調が濃くなるにつれて,SiO2量が低い傾向が認めら
れた.
4.鉱物化学組成
鉱物化学組成 斜長石は,An56-70 で,燐灰石を包有している.普通角閃石
は,鉄普通角閃石,フェロエデン閃石,エデン閃石,チェルマーク角閃石,パ
ーガス角閃石およびマグネシオヘスチング角閃石(Mg#=34-70)で,チタン鉄鉱
を包有する.斜方輝石は Mg#=64-89 である.単斜輝石は,Cr に富む普通輝石
(Mg#=87-88)である.
【考察】
考察】
文京試料の火山ガラスの屈折率 1.499~1.500 および 1.508~1.510 付近の火
山ガラスは,それぞれ姶良 Tn(AT/約 2.8 万年前;nd=1.498~1.500)と鬼界
アカホヤ(K-Ah/約 7300 年前;nd=1.508~1.516)に相当すると考えられる.
グループ A の火山ガラスはすべて暗褐色および淡褐色ガラスであり,その化
学組成領域は鬼界アカホヤ(K-Ah;約 7300 年前)のそれと類似する.しかし
ながら,文京試料に含まれる褐色ガラスの屈折率の多くは,K-Ah のそれ
(nd=1.508~1.516)より明らかに低い値を示すものが存在する.それらは,①
Cr に富み高い Mg#を示す単斜輝石を含むこと,および②斑晶鉱物として普通角
閃石および石英を含むというデータに基づくと,由布・鶴見火山群起源(太田
ほか,1990)である可能性が高い.
.
グループ B は無色透明ガラスであり,その化学組成および屈折率は姶良 Tn
(AT;約 2.8 万年前/nd=1.498~1.500)のガラス(青木・町田,2006)のそ
れと類似する.
したがって,今回検討した火山灰質土壌は,少なくとも再堆積した K-Ah お
よび AT,さらに由布・鶴見火山群起源と考えられるテフラの 3 種類のテフラが
混在していることが明らかになった.
【引用文献】
引用文献】
青木かおり・町田 洋, 2006, 日本に分布する第四紀後期広域テフラの主要元素組成―
K2O-TiO2 図によるテフラの識別.地質調査研究報告, 57,
57 239-258.
古澤 明, 1995, 火山ガラスの屈折率測定および形態分類とその統計学的な解析に基づ
くテフラの識別.地質雑, 101,
101 123-133.
太田岳洋・長谷中利昭・藤巻宏和, 1990, 大分県,由布・鶴見火山群の地質と岩石.岩
鉱, 85,
85 113-129.
吉川周作, 1976, 大阪層群の火山灰層について.地質雑, 82,
82 497-515.
松山平野における縄文時代後期の火山灰質堆積物中の
O-1 テフラの岩石学的研究
遠藤晴美(愛媛大・理)
・榊原正幸(愛媛大・院理工)
Petrologic study of volcanic ash-bearing sediments in the
late Jomon period in Matsuyama Plain
Harumi ENDO (Ehime Univ.) and Masayuki SAKAKIBARA (Grad.
school of Ehime Univ.)
【はじめに】
はじめに】 今回,愛媛大学キャンパス内における縄文時代後期の堆積物か
ら,テフラ起源の火山ガラスおよび斑晶鉱物を見出した.本研究では,火山ガ
ラスの化学組成・屈折率および斑晶鉱物の化学組成を測定し,それらの起源を
検討した.
【分析試料】
分析試料】 本研究で使用した試料は,愛媛大学城北キャンパス文京遺跡 33
次調査地点において採取した地表下 2m までの土壌サンプル 20 試料である.試
料採取地点の文京遺跡では,縄文時代前期~古墳時代(約 6000~2500 年前)の
遺物が出土している.
【分析手法】
分析手法】 火山ガラスの形態分類は吉川(1976)に基いて行い,色調によ
って暗褐色,淡褐色および無色透明に細分した.火山ガラスの屈折率は,温度
変化型測定装置(MAIOT;古澤, 1995)によって測定した.火山ガラスおよび鉱
物の主成分化学組成分析には,EDS(JEOL JSM-5400 および Oxford Link ISIS)
を使用した.火山ガラスの測定条件は,電子顕微鏡下で 5000 倍,電流値 4.0
×10-10 A,加速電圧 10 kV,測定時間 100 秒で行った.鉱物分析では,加速電
圧を 15 kVとした.また,火山ガラスの分析に際しては.標準試料として,黒曜石
(Astimex Scientific Limited 社製)および合成ガラス(NIST 620)を用いて,正確
度および再現性をチェックした(Table 1).
【結果】
結果】
1.火山灰質堆積物における
火山灰質堆積物における構成粒子
における構成粒子の
構成粒子の量比 採取したすべての試料は,火山
灰質であり,5 %前後の火山ガラスを含んでいる.斑晶鉱物は,普通角閃石,
斜長石,不透明鉱物およびジルコンを主とし,少量の斜方輝石,単斜輝石,石
英および燐灰石である.
2.火山ガラス
火山ガラスの
ガラスの屈折率 火山ガラスの屈折率は,nd=1.496~1.511 の幅広い
値を示し,1.499~1.500 および 1.508~1.510 付近にピークが認められる. ま
た,火山ガラスの色調が濃くなるにつれて,屈折率が高い傾向がある。
3.火山ガラス
火山ガラスの
ガラスの化学組成 ハーカー図において,SiO2値がグループA(72.9
~75.3 wt%)およびグループB(77.1~78.7 wt%)の 2 グループに大別され
3
領家帯波方地域の苦鉄質深成岩体の結晶分化作用
O-2
化学組成分析から、本苦鉄質岩体の典型的な斑れい岩は、SiO2 を 46-54%(平
曽我部 由香・佐野 栄(愛媛大・教育)
均 49%)含み、Mg#は 64-75(平均 71)を示す。自形鉱物は主に斜長石であり、
Crystal differentiation of mafic plutonic rocks from
Namikata area in Ryoke belt
一部にカンラン石、単斜輝石も見られる。間隙充塡鉱物は角閃石である場合
が多いが、単斜輝石も見られる。スピネルの Cr# は 0.40-0.63 を示す。斜長
石 に は 累 帯 構 造 が 認 め ら れ ず 、An87-97 の 高 い 値 を 示 す 。 単 斜 輝 石 は、
Yuka Sokabe and Sakae Sano (Ehime Univ.)
Wo45En46Fs9(平均値)
、Mg#=73-87 を示し、主にオージャイトとサーライトで
愛媛県高縄半島はおもに領家花崗岩類からなり、一部に苦鉄質岩類が小規
ある。カンラン石の Fo 値は、単斜輝石の Mg#と比較して低い値で特徴付けら
模に分布する。瀬戸内地域の領家帯に分布する苦鉄質岩類に関し、これまで
れ、59-70 である。
に梶島の岩石学的研究が行われている。
梶島は愛媛県新居浜市の約 20km 北に
これらの斑れい岩の REE パターンは、ほとんどすべての岩石において正の
位置し、全島が斑れい岩からなる小島である。吉村(1940a, b)は、梶島に
Eu 異常を示す(図1)
。総じて、コンドライト規格値の低い岩石ほど正の Eu
産出する岩石を記載し、それらの岩石の成因的関係について、斑れい岩質マ
異常が顕著である。また、岩石の Mg#が高いほど希土類元素濃度が低い。さ
グマから、梶島の主な構成岩石であるカンラン石紫蘇輝石斑れい岩が生じ、
らに、苦鉄質岩体を構成する岩石には負の Eu 異常を示すものも認められる。
その残液がコートランド岩̶煌斑岩と斜長石̶アプライトに分化したとしてい
以上の岩石鉱物学的・地球化学的データに基づき、波方地域の苦鉄質深成
る。堀内(1984)は、梶島の斑れい岩類の母マグマは、Fe/Mg 比の高いソレ
岩体の特徴を検討する。この岩体に卓越する早期晶出相である斜長石には顕
アイト質とし、高水蒸気圧下で形成されたとしている。本研究では、領家帯
著な累帯構造が認められないこと及び岩石の REE パターンの特徴から、この
に産出する苦鉄質深成岩の形成プロセスを明らかにすることを最終目的とし
岩体をつくったマグマは基本的に Open system で斜長石を結晶分化させたと
て、梶島の西方延長に位置する愛媛県今治市波方町森上地区から馬刀潟地区
推察される。また、早期晶出鉱物が斜長石であること、続いて単斜輝石、角
の海岸沿いに約 500m にわたって露出している斑れい岩体の岩石学的特徴に
閃石が晶出すること、
さらにカンラン石の Fo 値が特徴的に低いことなどから、
ついて検討を行った。
特異な結晶分化トレンドを考える必要がある。この点に関してはまだ明確な
野外調査に基づくと、この岩体は結晶の大きさや鉱物の量比の異なる岩相
解は得られていないが、
が、塊状または層状に存在する。これは結晶成長および結晶分化をしながら
本斑れい岩体に付随する
岩石が形成されたことを示唆する。岩体南部では塊状、レンズ状の斜長岩も
極めて鉄に富むコートラ
観察される。また、この岩体は南側で花崗岩に貫入関係で接し、北側の花崗
ンド岩の形成に鍵がある
岩との境界は断層となっている。本苦鉄質岩体は、野外において、その大部
のかもしれない。
分で斜長石の自形結晶とそれを囲む苦鉄質鉱物からなるポイキリティック組
織が観察できる。主要構成鉱物は斜長石と単斜輝石、角閃石であり、角閃石
ガブロに分類され、梶島とは主要構成岩種が異なる。
偏光顕微鏡における観察結果に基づくと、晶出順序は、スピネル→斜長石
→単斜輝石→角閃石の関係が観察され、またスピネル、斜長石との関係は不
図1 斑れい岩類の REE パターン
明であるがカンラン石→斜方輝石→角閃石の晶出順序も観察された。全岩主
4
引用文献
吉村(1940a)地質学雑誌, 47,
265-269. ; 吉村(1940b)地質
学雑誌, 47, 297-305. ; 堀内
(1985)岩石鉱物鉱床学会誌,
80, 104-112.
O-3
ペルム紀前期
ペルム紀前期井原
紀前期井原オフィオライト
井原オフィオライトにおける
オフィオライトにおける変玄武岩
における変玄武岩中
変玄武岩中の微
生物変質組織
生物変質組織
Microbial alteration textures are found from 3 samples from the upper member
out of 16 metabasalt samples, and observed along clacks within quench glass of the
basaltic pillow lavas. They are morphologically divided into tubular and granular
textures. Tubular bioaltextures are observed as less than 150 µm in length, and they
are made up with granular textures with approximately 10 µm in diameters. These
alteration textures resemble reported microbial alteration textures along clacks of
modern oceanic pillow lavas (i.e. Furnes et al., 2001).
菅原久誠・榊原正幸(愛媛大・院理工)・池原 実(高知大, 海洋コア
センター)
Microbial alteration textures from metabasalts in early
Permian Ibara dismembered ophiolite, western Japan
Hisanari SUGAWARA (Ehime Univ.), Masayuki SAKAKIBARA (Grad. school of Ehime
Univ.), and Minoru IKEHAEA (Kochi Univ., Core center)
4. CARBON ISOTOPIC ANALYSIS
1.INTRODUCTION
The total of 9 samples from calcite veins and pools present in the Ibara
metabasalts are measured by the mass spectrometer housed at the Center for
Advanced Marine Core Research, Kochi University in order to obtain δ13CPDB
values. Resulted data varied from -8.46 to -5.05 ‰ with the average of -7.10 ‰.
Study of microbial alteration textures in oceanic crust gives a huge impact on
the global biomass, diversity of life, and geochemical fluxes in the earth. Field study
on land is critical to discuss the bioalteration in higher resolution; however, most
ancient oceanic crust outcropped on land have experienced metamorphism, and little
has been reported for the preservation of bioaltextures thorough metamorphism.
Therefore in this study, metabasalts from early Permian Ibara dismembered ophiolite
from the Maizuru tectonic belt, southwest Japan are examined by means of
petrography and carbon isotopic analysis. Ibara dismembered ophiolite is located the
main part of the Sabara formation, and it is divided into three units by lithofacies;
lower member of metabasalts with thin beds of hyaloclastite and slate; middle
member of slate and sandstone, and upper member of metabasalts and metagabbro
(Koide, 1986). The Ibara metabasalts is formed in a relatively deeper marginal sea as
inferred from scarce and small vesicles, and geochemical variations (Koide, 1986).
5. DISCUSSION
Tuberous- and granular-microbial alteration textures are found in the quench
glass and chilled glass of basaltic pillows lavas in the upper formation, and the
petrography implies that microbial alteration texture is well-preserved thorough the
prehnite-pumpellyite metamorphism. The average δ13CPBD in this study slightly
shifted from fresh basaltic values, from -7 to -5 ‰ (e.g. Alt et al, 1996), to the
δ13CPBD biogenic organic matters, and it implies that bacterial activity is concerned
with forming bioaltered textures. It is concluded that on-land-field investigation
targeted to metabasalts experienced up to prehnite-pumpellyite facies metamorphism
is the effective means for the study of bioalteration.
2. PETROGRAPHY
6. REFERENCES
Metabasalts in the lower and upper members are examined for petrography.
Representative metabasalts in the lower member consists of muscovite, actinolite,
plagioclase, chlorite and minor amount of opaque minerals. Quartz and calcite are
filled in contraction cracks mainly occurred in the gray pillow core. Mineral
assemblages within matrix of basaltic pillow lavas in the upper member are composed
of prehnite, pumpellyite, and chlorite for the metamorphic minerals, and relict
clinopyroxene, accessory spinel and opaque minerals for the magmatic minerals. The
mineral assemblages of matrix within metabasalts in the lower and upper members of
the Ibara metabasalts suggest that they are experienced greenschist-amphibolite and
prehnite-pumpellyite facies metamorphism respectively.
Alt, J. C., et al., 1996, In Alt, J. C. et al (eds). Proceedings of the Ocan Drilling
Program, Scientific Results, 148. Ocean Drilling Program, college Station, TX.
Furnes, H., Muehlenbachs, K., Torsvik, T., Thorseth, I. H., and Tumyr, O., 2001,
Chem. Geol., 173, 313-30.
Koide, Y., 1987, Jour. Geol. Soc. Japan, 92, 5, 329-348.
3. MICROBIAL ALTERATION TEXTURES
5
アルカリ角閃石・アクチノ閃石を産する.一方,中追ユニットの南側の勝賀
四国中央部,伊野地域の秩父帯の地質構造
O-4
村田明広・犬房陽一(徳島大・総合)・橋本陽介・前川寛和(大
瀬ユニットの北縁部には,ブドウ石+パンペリー石の共生を持つ緑色岩類が
分布する.すなわち,アルカリ角閃石を含む緑色岩類を含む地層と,ブドウ
阪府立大・理)
石+パンペリー石の共生を持つ緑色岩類を含む地層の境界である名野川衝上
断層が伊野地域まで連続する可能性が大きい.
Geological structures of the Chichibu Terrain of the Ino Area, Central
脇田ほか(2007)によると,中追東方約 2km の稜線上に分布する緑色岩類
Shikoku
は,アルカリ角閃石を含むことから新期伊野変成コンプレックスに含められ,
Akihiro Murata, Yoichi Inufusa (Univ. Tokushima) , Yosuke Hashimoto &
中追ユニットの上にのるクリッペと考えられた.しかしながら,この周辺の
Hirokazu Maekawa (Osaka Pref. Univ.)
中追ユニットの緑色岩類からはアルカリ角閃石が産出するため,この稜線付
四国中西部,名野川地域の秩父帯北帯は,名野川衝上断層(Kimura &
近の緑色岩類だけをクリッペと考えることは難しいと思われる.
Horikoshi,1959)によって大きく二分され,上盤の緑色岩類からはアルカリ
柿ノ又断層の東側
角閃石,アクチノ閃石などが,下盤からはブドウ石+パンペリー石の共生を
ト,国見山ユニット,新期伊野変成コンプレックス(上倉層),土佐山ユニ
示す変成鉱物が見られる(村田・前川,2007).
ットが分布する(脇田ほか,2007).ここでも,国見山ユニットとされた中
名野川衝上断層がさらに東方の伊野地域へどう延長するかについて,緑色
南北性の柿ノ又断層より東側では,北側から思地ユニッ
に,アルカリ角閃石・アクチノ閃石を含む緑色岩類とブドウ石+パンペリー
岩類の変成度と地質構造から検討を行った.その結果,名野川地域の上盤・
石の共生を持つ緑色岩類の境界,つまり名野川衝上断層が存在する.なお,
下盤と同様の変成鉱物の異なる境界が追跡可能であることが明らかになっ
白木谷石灰岩体を含む土佐山ユニットはジュラ系とされたが(脇田ほか,
た.また,新改ユニット(新改層)中の緑色岩類も黒瀬川帯分布域の新期伊
2007),現在までのところ,ジュラ紀や三畳紀の化石は発見されていないた
野変成コンプレックス(伊野層の大部分に相当)(脇田ほか,2007)と同様
め,ペルム系(須鎗ほか,1983)と考えておいたほうがよいと思われる.
の変成を受けていることが明らかになった.
柿ノ又断層の西側
新改ユニット(あるいは新改層)とされたペルム系は,白木谷の石灰岩体
伊野地域では,脇田ほか(2007)により伊野図幅が公表
と新期伊野変成コンプレックスとの間に分布するペルム系である(磯崎,
され,広範な地域で層序,地質構造,変成相,変成年代などが明らかにされ
1986;脇田ほか,2007).今回,このユニットに含まれる緑色岩類には,ア
た.伊野図幅内の南北性の柿ノ又断層より西側では,三波川帯~秩父帯北帯
ルカリ角閃石やアクチノ閃石を産出するものが多く含まれることが明らか
は,北から川又ユニット,思地ユニット,国見山ユニット,再度思地ユニッ
になった.新改ユニットとされたペルム系のかなりの部分が新期伊野変成コ
ト,中追ユニット,そして勝賀瀬ユニットのジュラ紀付加堆積物が分布して
ンプレックスと同様の変成を受けた可能性がある.
おり,北側の川又・思地ユニットのみが三波川変成作用を受けているとされ
名野川衝上断層は,名野川地域では大野ヶ原-鳥形山石灰岩体の北側を通
た(脇田ほか,2007).
り,伊野地域東半部では同石灰岩体に対比される土佐山ユニットの石灰岩体
伊野地域西部の五在所山付近の思地ユニットの緑色岩類は,レンズ状に途
の北側を通ることになり,基本的に同じ地質構造が連続すると考えることが
切れた分布ではなく,国見山ユニットとされた緑色岩類に連続し,いずれも
できる.また,新期伊野変成コンプレックスの変成作用は,新改ユニット分
アルカリ角閃石・アクチノ閃石を頻繁に含む.また,中追ユニットの北半部
布域まで及んでいる可能性がある.
の緑色岩類もアルカリ角閃石・アクチノ閃石を産する.つまり,思地ユニッ
文献:村田明広・前川寛和,2007,徳島大学総合科学部自然科学研究,21,65-75.
トだけでなく,国見山ユニットや中追ユニットとされた緑色岩類の一部も,
脇田浩二ほか,2007,伊野地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).
6
O-5
2005 年台風 14 号豪雨で発生した宮崎県
槻之河内地すべりの活動履歴
らなり,黒ボク土はほとんど分布しない.
地すべり地の北縁部と南縁部の露頭では,角礫状を呈する地すべり移動体
を覆う 3 枚のテフラが確認でき,いずれも整然と堆積している.テフラ間は
西山賢一(徳島大学)・北村真一(徳島大学大学院)
・
径数 cm~数 10cm の角礫と,テフラの二次的堆積物を含む褐色のローム層
高谷精二・鈴木惠三(南九州大学)
・長岡信治(長崎大学)
からなる.この 3 枚のテフラは,下位から,A-Ito(姶良入戸),K-Ah(鬼界
Movement History of Tsukinokawachi-landslide caused by heavy rainfall associate
アカホヤ)
,Kr-M(霧島御池)と考えられる.一方,地すべり地形の南西端
with Typhoon 0514, Miyazaki, Japan
の露頭では,指標テフラが大きく変形している.ここでは,ジグソーパズル
Ken-ichi NISHIYAMA, Shin-ichi KITAMURA (Univ. Tokushima),
状を呈する砂岩の地すべり移動体に高角(約 70°)のすべり面が認められ,
Seiji TAKAYA, Keizo SUZUKI (Minamikyushu Univ.) and
分離した岩体が 3m 程度落ち込むとともに,全体として円弧状に回転してい
Shinji NAGAOKA (Nagasaki Univ.)
る.黄褐色を呈する粗粒の軽石質テフラが,高角のすべり面に沿って約 70°
の急傾斜をなし,分離した側では,落ち込んだ岩体とともに波状に変形して
2005 年台風 14 号に伴う豪雨の総雨量が 1,000mm 程度に達した宮崎県の山
いる.この変形したテフラの上位に堆積する 2 枚のテフラには,すべりに伴
間部では,大規模な地すべり・斜面崩壊が複数発生した.宮崎県南部の鰐塚
う変形が認められない.このことから,地すべり地形の南西端における地す
山地に位置する槻之河内では大規模な地すべりが発生し,地すべり土塊が川
べり変動は,変形したテフラの降下後,被覆する 2 枚のテフラの降下前と判
をせき止める被害が出た.2005 年災害前の地形図および空中写真判読に基
断される.切断されているテフラは A-Ito,被覆する 2 枚のテフラは K-Ah
づけば,2005 年災害地付近には地すべり地形が認められ,2005 年災害では
と Kr-M と考えられる.また,2005 年に移動した地すべり土塊の上にも A-Ito
その移動体を含む斜面が滑落した.このことから,槻之河内では 2005 年以
が点在している.従って,槻之河内の地すべり変動は,A-Ito の降下後,K-Ah
前にも複数回の地すべり活動が起こっていたことが推定される.鰐塚山地は,
の降下前に小規模な変動が少なくとも 1 回推定され,K-Ah 降下後にはテフ
霧島・姶良などのカルデラ火山に近いことから,多数の指標テフラが分布し
ラを変形させるような斜面変動は生じていないと判断される.
ており,これらを用いた地すべりの編年を行うことができる.そこで今回,
上記の露頭では,30cm 以上の厚さで分布することが予想される 27 ka 以前
地すべり移動体を覆う複数の指標テフラを用いて,地すべりの活動履歴につ
のテフラ(A-Fm:姶良深港,A-Iw:姶良岩戸,A-Fk:姶良福山など.町田・
いて検討を行った.
新井,2003)が残存していない.このことは,槻之河内地すべりでは,31
~27 ka 間に大規模な地すべりが発生して斜面が更新され,それ以前のテフ
槻之河内地すべり周辺に分布する地層は,四万十帯(古第三系日南層群)
の砂岩を主体とし,泥岩を挟み,地すべりの影響で全体として角礫状~ブロ
ラがすべて削剥されたことを示唆する.今後は,周囲の鰐塚山地に多数分布
ック状を呈する.角礫状を呈する岩体の上位は,しばしば複数のテフラに覆
する地すべりについても,テフラによる編年を進めていく予定である.
われている.それぞれのテフラ間は角礫や軽石が混在する褐色のローム層か
文献:町田・新井,2003,新編火山灰アトラス,東京大学出版会.
7
O-6
和歌山県白浜町シガラミ磯に露出する中新統白浜
層の堆積学と生痕学
合底堆積物では,生痕化石の多様性が最も高く, Asterosoma isp.,
奈良正和(高知大・理)
isp.,O. nodosa, Hillichnus isp., P. incertum, Rosselia socialis,
Sedimentology and ichnology of the middle Miocene
Shirahama Formation exposed in Shigarami-Iso Coast,
Shirahama, Japan. Nara, M. (Dept. Nat. Sci., Kochi Univ.)
Schaubcylindrichnus coronus,Thalassinoides suevicusなどの生痕化石
Bichordites isp., Cochlichnus isp., ?Dactyloisites ottoi, Macaronichnus
が観察できた.そして潮汐泥底堆積物では D. ottoi様生痕化石,
Macaronichnus isp.,O. nodosa,P. incertum,S. coronus,T. suevicus
紀伊半島南西部に分布する田辺層群白浜層は,下位の同層群朝
などが産出した.この様に,各サブシステムごとに産出する生痕化
来層を傾斜不整合で覆い,時代未詳の塔島礫岩層に傾斜不整合で
石の多様性に差異が見られることは,次の様に説明できる.
覆われる浅海成層である.本研究を行ったのは和歌山県西牟婁郡
潮汐チャネルは,これらのサブシステムの中で最も水のエネル
白浜町シガラミ磯の露頭である.
ギーレベルが高く,物理的に不安定な基質で特徴づけられる環境で
この露頭には,下位より,1) レンズ状あるいは楔状の単層形態
ある.そのため,生痕化石を形成する底生動物の生息にそもそも適
を取り,トラフ型斜交層理の発達する厚い礫質砂層,2) レンズ状
していなかった可能性がある.さらに,ひとたび形成された生痕も
砂層を頻繁に挟在し,フレイザー層理 (flaser bedding) や波状層理
砕屑物の活発な移動にともなって浸食されることで地質記録に保存
(wavy bedding) の発達するシート状中粒砂岩と泥岩との互層,3) 局
されなかったのであろう.こうした理由から,潮流のエネルギーが
所的にトラフ型斜交層理やウェーブリップル葉理が発達するも,一
弱まる上位(陸側)のサブシステムに向かうにつれて生痕化石の多
般に生物撹拌が発達した細粒砂岩と泥岩との互層,4) レンズ状層
様性が高くなっていったものと考えられる.そして,潮汐混合底に
理 (lenticular bedding) も発達することがある,細粒砂岩の薄層と泥
おいて多様性が最も高くなるのは,そこで基質中の砕屑物の異質性
岩との互層,の4ユニットが互いに整合で重なる堆積相サクセショ
が最も高くなることから,異なる生物群に生息地を提供していたた
ンが発達する.こうした堆積相サクセションは通常海退にともなっ
めか,あるいは,同じ生物でも異なる形態の生痕を形成した可能性
て前進した潮汐低地システムで説明することができ,それぞれのユ
があるためであろう.潮汐泥底堆積物で多様性が下がるのは,露頭
ニットは,下位より,潮汐チャネル,潮汐砂底,潮汐混合底,そし
の風化により観察が不十分であったこともあろうが,今回,認定さ
て潮汐泥底,の各サブシステムで形成された堆積物と考えられる.
れたサブシステムの中で最も長い干出時間が期待されることから,
各サブシステムにおいてそこに出現する生痕化石群を観察したと
こうした環境に特有のストレスが影響していた可能性もある.
ころ,それぞれ以下の様な特徴があることがわかった.まず,潮汐
チャネル堆積物には,?Bichordites isp., Conichnus conicusそして
Macaronichnus isp.のみが見られた.潮汐砂底堆積物には,
?Bichordites isp.,Cochlichnus isp., Macaronichnus isp., Ophiomorpha
nodosa, Phycosiphon incertumなどの生痕化石が確認された.潮汐混
8
ニュージーランド,
ニュージーランド, ワイヘケ島最下部三畳系層状
ワイヘケ島最下部三畳系層状チャート
島最下部三畳系層状チャートの
チャートの放散虫化
O-7
コノドント化石層序に基づき、最下部三畳系、おそらく Griesbachian 下部
石と有機炭素同位体比—
有機炭素同位体比—予報—
予報—
に対比される黒色チャートからは、Archaeospongoprunum sp., Entactinia sp.,
堀 利栄(愛媛大・理工)
・山北 聡(宮崎大・教育文化)
・池原 実・
小玉一人(高知大・海洋コアセンター)
・相田吉昭・酒井豊三郎(宇都宮
大・農)
・竹村厚司(兵庫教育大・自然系)
・鎌田祥仁(山口大・時間研)・
鈴木紀毅(東北大院・理工)
・K.Bernhard Spörli・Jack A.
Grant-Mackie(Univ. Auckland, NZ)
Entactinosphaera aff. crassispinosa, E. aff. sporli, Tetraspongodiscus
stauracanthus および、アローロックスから初めて報告された Tripedocassis
oruatemanuensis Kamata に類似する Nassellaria (T. aff. oruatemanuensis)が得ら
れた。前者と得られた標本との相違は、cephalis と thorax の境界に明瞭な狭
Preliminary study of Radiolarian fossils and C-isotope ratios on a Lowest
Triassic bedded chert sequence from Waiheke Island, New Zealand
窄部が存在し、殻表面の殻穴が少ない点にある。T. oruatemanuensis は、アロ
R. S. Hori (Ehime Univ.) ・ S. Yamakita (Miyazaki Univ.)・M. Ikehara・K. Kodama (Kochi Univ.)・
Y. Aita・T. Sakai (Utsunomiya Univ.)・A. Takemura (Hyogo Univ.)・Y. Kamata (Yamaguchi Univ.)・
N. Suzuki (Tohoku Univ.)・K.Bernhard Spörli・Jack A. Grant-Mackie(Univ. Auckland, NZ)
ーロックスでは Dienerian 中頃から産出が確認される三畳紀型 Nassellaria であ
るが、ワイヘケ島の T. aff. oruatemanuensis は、より下位の層準から産出して
いる事になる。また、アローロックスでは、Griesbachian-Dienerian のチャー
ペルム紀/三畳紀(P/T)境界は、顕生累代における最大の絶滅イベントが起き
た時代として知られている。しかしながら、P/T 境界付近の連続した層序断
トから、P/T 境界イベントを生き残った古生代型(ペルム紀型)の放散虫化
面が得られる深海堆積岩層が稀なため、遠洋域に於ける生物相(例えば放散
石が産出する事が報告されているが(Takemura et al., 2007)
、ワイヘケ島の最
虫フォーナ)がどのように古生代型から中生代型へと移り変わったかについ
下部三畳系では、明瞭なペルム紀型放散虫化石が現在のところ確認できてい
ては不明な点が多い。特に三畳系最下部における放散虫化石については、ほ
ない。このような放散虫化石群集の違いが何に起因するかは、今後の検討課
とんど報告例がない。近年、ニュージーランド、アローロックス島に分布す
題である。
また、放散虫化石が産出した黒色チャート層の有機炭素同位体比を分析し
る Oruatemanu 層から上部ペルム系から最下部三畳系にかけてのほぼ連続な
含放散虫化石層状チャート層が発見され、珪質有殻プランクトンである放散
たところ、有機炭素含有量は 0.10wt.%で、δ13Corg は、-30.8‰であった。一方、
虫が、P/T 境界ではなく三畳紀古世 Induan に入ってから、古生代型から中生
黒色チャート層直下(約 30cm 下位)の灰緑色珪質凝灰岩からは、0.06wt.%,
代型に移り変わっていることが明らかにされた(Takemura et al., 2007)
。
-27.1‰の値が得られ、両者の同位体比には、約 4‰の違いが見られる。アロ
ーロックスとの岩相対比から直下の珪質凝灰岩は最上部ペルム系に対比され
ニュージーランド、ワイヘケ島北西部には、アローロックス島と同様な弱
変成を受けた玄武岩を伴う含放散虫化石層状チャートが分布している
(堀 ほ
る可能性が高いことや、P/T 境界層においては、普遍的に炭素同位体比の負
か 2008)
。ワイヘケ島の層状チャートは、コノドントの生層序解析から最下
へのシフトが報告されていることを考慮すると、珪質凝灰岩と放散虫化石を
部〜中部三畳系に対比されることが明らかになっている
(山北 ほか、
2008)
。
検討した黒色チャート層との間に P/T 境界が存在する可能性が高い。本チャ
特に、本チャート層は、アローロックス島の Oruatemanu 層に欠落している可
ート層のより解像度の高い古生物学的、同位体層序学的検討が待たれる。
—引用文献—————————————————————————————————————
能性の高い最下部 Induan(最下部三畳系)と Olenekian/Anisian 境界(下部/
Takemura, A., et al. (2007) Earliest Triassic radiolarians from the ARH and ARF sections on Arrow Rocks, Waipapa
Terrane, Northland, New Zealand. in GNS Monograph 24, 97-107.
Carter, E. S. & Hori, R. S. (2005) Global correlation of the radiolarian faunal change across the Triassic-Jurassic boundary.
Can. Jour. Earth Sci., 42, 777-790.
堀 利栄 ほか (2008) ニュージーランド・ワイヘケ島産三畳紀放散虫とその古生物学的意義。日本古生物学会
第 157 回例会予稿集、p.22.
山北 聡 ほか (2008) ニュージーランド, ワイヘケ島下部〜中部三畳系海洋底シークェンスのコノドント生
層序とアローロックスOruatemanu層との岩相層序比較。日本古生物学会2008年年会予稿集、p. 77.
中部三畳系境界)を含むことが明らかになっており、三畳紀最古世から中世
にかけての放散虫フォーナの変遷過程を解明する上で重要である。
本研究では、最下部三畳系層状チャートから産する放散虫化石群集の検討
と有機炭素同位体比の予察的な検討を行った。
9
P-1
ヘビノネゴザによる重金属の自然浄化作用
ヒ素,カドミウム濃度を分析した。ヘビノネゴザは,銅;7.1 – 220 mg/kg,
佐野 栄・河野里代子・木津友実(愛媛大・教育)
,
亜鉛;74 – 1975 mg/kg,ヒ素;0.40 – 1.95 mg/kg,カドミウム;27.8 – 2225
榊原正幸(愛媛大・理工学研究科)
mg/kg の濃度範囲を示す。これらの元素は,上流側から下流側に向かい含有
Natural clarification of heavy metals by Athyrium yokoscense
量が低下する傾向にある。さらに,各元素について若葉と成長葉,老いた葉
Sakae Sano, Riyoko Kohno, Tomomi Kizu and Masayuki Sakakibara (Ehime Univ.)
との間の濃度の違いを比較すると,
銅は,
老いた葉より若葉に多く含まれる。
それに対し,亜鉛,ヒ素,カドミウムは相対的に若葉より老いた葉により多
鉱山開発に伴って発生した残土やズリは,しばしば近隣の水環境に悪影響
く含まれる。図1に亜鉛の結果を示す。
を与えていることが指摘されている。特に硫化鉱物を伴う鉱山の場合,地下
以上の結果より,鉱山残土堆積場から高濃度の重金属が下流河川に溶出し
の還元的環境の安定条件から地表の酸化的環境への条件変化により,硫化鉱
ていることが明らかになった。さらに,下流河川では,ヘビノネゴザにより,
物の分解が促進され,重金属イオンが地表水中に溶出し,深刻な環境汚染を
明らかに水中の重金属が吸収されている。すなわち,当該地域の河川環境で
引き起こすことが知られている。西南日本でかつて金を採掘していたある鉱
は,群生するヘビノネゴザによる銅,亜鉛,カドミウムの自然浄化が効果的
山では,金と共に銅や亜鉛などを含む鉱石も同時に産出していた。この鉱山
に作用したといえる。ヘビノネゴザの群生により,その下流側では,すでに
の近くには,これらの資源となる鉱石を採掘した後の残土による堆積場が形
河川水中のヒ素を除く重金属濃度は通常の濃度範囲にまで低下することが明
成されている。この鉱山残土には高濃度の銅,亜鉛,カドミウムが含有され
らかになった。
ており,その溶出による環境汚染が危惧される。ところで,この堆積場周辺
【文献】Nishizono, H. et al. (1987) Plant and Soil, 102, 65-70.
から下流側に位置する谷筋には,ヘビノネゴザが群生しており,独特の植生
が形成されている。ヘビノネゴザは,日本においては,古くからカナヤマソ
ウとして知られており,しばしば金属鉱床を探索する際の指標植物として用
いられてきた。さらにヘビノネゴザは,汚染土壌中の銅,亜鉛,カドミウム
などの重金属を選択的に吸収するハイパーアキュムレータであることが報告
されている(Nishizono et al., 1987)。ここでは,上述の鉱山に付随する残
土堆積場周辺の河川水について,鉱山残土堆積場から下流側の河川水と,群
生するヘビノネゴザに含まれる重金属元素濃度分布を検討し,ヘビノネゴザ
による河川水の自然浄化の一例を報告する。
下流側から堆積場までの約1.5km の区間の 16 地点から採取した河川水の銅,
亜鉛,ヒ素,カドミウム濃度は,それぞれ,銅;0.5 – 157 μg/L,亜鉛;
1.1 – 1912 μg/L,ヒ素;1.4 – 55.6 μg/L,カドミウム;0.01 – 19.9 μ
g/L であった。河川水に含まれるこれらの元素濃度は,上流から下流に向か
い顕著に低下する傾向が認められる。いっぽう,ヘビノネゴザに関しては,
若葉と成長葉,老いた葉を採取し,それぞれの頂羽片について,銅,亜鉛,
10
図1 河川水とヘビノネゴザに
含まれる亜鉛濃度変化。上流から
下流に向かい顕著な亜鉛濃度の
減少が認められる。ヘビノネゴザ
の出現下限位置において,ヘビノ
ネゴザ及び河川水中の亜鉛濃度
が最低になることに注意。さら
に,同一株における若葉と老いた
葉の亜鉛濃度を比較すると,亜鉛
は老いた葉に蓄積されているこ
とが明らかである。
P-2
東地中海の高塩水湖(Meedee Lake)より採取された海洋
MAT253)を用いて酸素・炭素同位体比測定を行った.また,同残渣から底生
コアの堆積環境の解明
有孔虫200匹を目安に拾い出し,Benthic Foraminifera Number(BFN)/gを求
泉谷直希[1],村山雅史[2],佐川拓也[2],朝日博史[3],
めた.
浮遊性有孔虫(G.ruber)のδ18Oとボストーク氷床コアの酸素同位体カーブと
中村恭之[3],白井正明[3],芦寿一郎[3],徳山英一[3]
Naoki Izumitani[1], Masafumi MURAYAMA[2], Takuya Sagawa [2],
対比させ年代決定をおこなった.コアの年代は,約5~19万年を示し,平均堆
Hirofumi Asahi[3], Yasuyuki Nakamura[3], Masaaki Shirai[3],
積速度は約2.1cm/kyr.と見積もられる.暗色層と明色層の堆積時間は,平均約
Juichiro Ashi[3], Hidekazu Tokuyama[3]
数千年である.各層の境界は,gradualにあるいはsharpに変化し,堆積環境の
[1] 高知大・院・総合人間自然科学研究科 [2] 高知大・海洋コア
変化が異なる.酸素同位体カーブから,明色層は氷期に,暗色層は間氷期に
[3] 東大・海洋研
対応していることが明らかになった.また,明色層,暗色層に分け底生有孔
[1] Graduate school of integrated arts and sciences, Kochi Univ.,
虫拾い出しを21層準行った.その結果,明色層では,相対的に産出量が少な
[2] CMCR, Kochi Univ., [3] ORI, University of Tokyo
く,多様性も低い.暗色層では,相対的に産出量が多く,多様性も高い.こ
地中海には,6~5.33 Ma前に起こった Messinian Salinity Crisis(地
れらのことから,明色層,暗色層はそれぞれ酸化,還元環境で形成されたと
中海が外海から孤立し,海水が干上がったイベント)時に形成された蒸
考えられる.本研究コアは,塩水湖の湖畔で採取されていることから,
,地形の凹地に
発岩類から塩類が染み出し(krijgsmann et al., 1999)
地中海の深層水循環の影響を受けていると考えられる.つまり,氷期—
塩水湖が存在している.湖内は,塩分が通常海水の約10倍にあたる>300
間氷期に対応する底層流の強さが,塩水湖面の上下変動の主な要因であ
psu,溶存酸素がまったくない極限環境である.現在この塩水湖は,地中
ると考えられる.
海に5つ発見されており,極限微生物学的な研究例は多いが堆積学的な
研究例は少ない.たとえば, Wallmann et al.(2002)では,塩水湖から採
取されたコア試料から,間隙水の化学組成,海水の化学組成,XRDによる
[引用文献]
鉱物同定等が行われている.本研究では,塩水湖(Meedee Lake)の湖畔よ
K. Wallmann,F.S. Aghib,D. Castradori,M.B. Cita, E. Suess, J.
Greinert, D. Rickert, Sedimentary and formation of secondary
り採取された海底コアの堆積環境を解明することを目的とする.
minerals in the hypersaline Discovery Basin, eastern
試料は,KH06-4次航海においてNavigable Sampling System(NSS)を用い
Mediterranean, Marine Geology, 186 9-28, 2002.
て海底を観察しながら,塩水湖の湖畔でピンポイントサンプリングされたピ
ストンコア(PC5;34°27.02 N,22°16.61 E,W.D.:2920 m,コア長:293.5 cm)
W. Krijgsman, F. J. Hilgen, I. Raffi, F. J. Sierro and D. S. Wilson
を用いた.岩相はcalcareous oozeで,肉眼やX線CT観察からは目立った堆積構
Chronology, causes and progression of the Messinian salinity
crisis, Nature, 400, 652-655, 1999.
造は見られない.しかしながら,明色層(grayish white)と暗色層(yellowish
orange)が,数cm~数十cm間隔で繰り返し見られる特徴を持つ.コア試料は,
半裁後,非破壊物性計測(X線CTスキャン・カラーイメージ・帯磁率・色・)
後,連続キューブサンプリングを行い,各キューブから,含水率とsand fraction
(>63µm)を求めた.浮遊性有孔虫2種を拾い出し,質量分析計(Finigan
11
P-3
愛媛県東温市滑川地域おける中新統久万層群と
その堆積環境
明神拓也(愛媛大・スーパーサイエンス)
・奈良
正和(高知大・理)
Geology of the Miocene Kuma Group of the
Namegawa Area, Ehime Prefecture, Japan, and its
depositional environment
Takuya Myoujin (Ehime Univ.) and Masakazu Nara
(Kochi Univ.)
て,それを覆う,堆積岩類や花崗岩由来の円礫岩類を主体とした明神層か
らなる.二名層は,基質支持で淘汰が悪く,巨礫を多く含む角礫岩層を主
体とし,基盤岩である三波川結晶片岩に高角でアバットする.局所的に,
礫支持で淘汰がよい小礫~中礫岩層を挟む.これらの礫岩は,その堆積相
から土石流堆積物とトラクション流堆積物と考えられ,基盤岩からなる斜
面の基部に発達した土石流堆積物のローブとそれを刻む流路堆積物,すな
わち,沖積扇状地システムで説明できる.一方,明神層は,弱い成層構造
やインブリケーションあるいはチャネル構造の発達した礫岩,そして植物
化石を含む砂岩泥岩互層を主体とする.これらの礫岩や砂岩泥岩互層は,
侵食面を境に上方細粒化サクセションをなして累重する.こうした特徴を
久万層群は,下位の三波川変成岩類を不整合に覆い,上位の石鎚層群に
有する明神層は、網状河川システムによって形成されたと考えれば説明で
より不整合に覆われる陸成中新統で,愛媛県中部から高知県にかけての四
きる.
国山地に広く分布する.この久万層群は,日本海の急速な拡大と日本列島
ところで,二名層と明神層は,境界を挟んで岩相と走向傾斜が急変する
の形成という地質学的イベントが起った前期中新世末期から中期中新世に
ことがあり,そのことから不整合関係にあるとする考え (Nagai,1968) と,
かけて孤内堆積盆を埋積した陸成堆積物であり,その堆積過程は,島孤形
礫種が漸移的に変化する観察事例から整合関係にある (甲藤・平,
1979) と
成期の陸域環境を知る上で興味深い.
する考えがあった.滑川ルートにおいて現在観察される露頭では,両層の
久万層群の堆積過程に関する研究は,従来,その部分の中心である四国
境界を挟んで礫種,岩相,そして走向傾斜がそれぞれ急変しており,一見
山地南方を中心に行われており,四国山地北方での研究例はなかった.そ
不整合のように見える.しかし,両層は,上述の様に沖積扇状地システム
こで,本研究では,久万層群の基底部から上位の石鎚層群との境界付近ま
および網状河川システムで形成されたことがわかった.礫種からわかる様
でほぼ連続して観察することができる愛媛県東温市の滑川地域において堆
に,それぞれの供給源が異なる場合,両システムの堆積面は大きく斜交す
積相解析を行い,久万層群の堆積過程の復元をこころみた.
ることがふつうである.したがって二名層と明神層の特徴 (上述) が不整
久万層群は,当初,三波川帯起源の角礫岩からなる下位の二名層と和泉
合関係を表すとは限らない.これは,甲藤・平 (1979) の結論と調和的で
帯や領家帯由来の円礫岩が卓越する上位の明神層とに区分された (Nagai,
ある.実際,現在は河床堆積物のため観察できないが,滑川左岸の河床で
1957) .その後,木原 (1985) や成田ほか (1999) により,模式地である
は,二名層と明神層が指交関係にあることが観察されている.以上の観察
久万盆地での詳細な地質調査から,円礫岩中に挟在する泥質堆積物主体の
から,両層の関係は整合であると考えたほうが合理的である.
層準に着目して上述の層序区分を細分する考えが示された.しかし,滑川
引用文献:NAGAI, K.,1957,Mem. Ehime Univ.,Sec.Ⅱ,73-89. NAGAI, K.,
ルートでは泥質堆積物が卓越する層準が見られず,木原らの層序区分を適
1968,Mem. Ehime Univ.,Ser.6,1-4.永井,1972,愛媛大紀要自然 D シ
用することは難しい.そこで,本研究では便宜的に Nagai (1957) の層序
リーズ,VII,1-7. 甲藤・平,1979,地質ニュース,293,12-21. 木原,
区分を用いる.
1985, “スランプ相”の形成とテクトニクス,133-144. 成田ほか,1999,
滑川ルートの久万層群は,結晶片岩の角礫岩を主体とした二名層,そし
地質雑,105,305-308.
12
700
600
500
400
300
200
100
0
D
C
B
0
a
Heavy metal contamination has been one of serious problems in the
vicinity of abandoned mining sites. Physio-chemical cleanup methods are
generally costly and result in significant damage. Phytoremediation, a plant-based
and cost-effective technology for the cleanup of contaminated soil and water, has
been receiving renewed attention. Recently, Eleocharis acicularis, an aquatic
macrophyte which grows naturally throughout Japan, has been reported in our
laboratory investigation to exhibit an ability to accumulate Cu, As, Zn and Pb. The
purpose of this study was to assess the possibility of using E. acicularis for the
uptake of multiple heavy metals in an abandoned mining site in Hokkaido.
In this research, E. acicularis was transplanted for 92 days in mine tailing
drainage (sites A, B), in mine tailings (site C) and in wetland (site D). E. acicularis
samples were collected before transplanting, on the 30th and the 92nd day of the
experiment. The harvested plant samples were analyzed by PIXE and ICP-MS.
Soil and water samples were analyzed by PIXE and ICP-MS, respectively.
The results showed that the concentrations of Pb, Cu, and Zn in E.
acicularis at the 92nd day of experiment were higher than those at the 30th day,
by up to 40 folds. In addition, the concentrations of Pb, Cu, and Zn in brown (old)
leaves were higher than those in green (young) leaves. It suggested that the heavy
metals accumulation in E. acicularis during the experiment. The highest shoot
concentration of Pb was 599 mg/kg dry wt. in mine drainage after 92 days of the
experiment; that of Cu, and Zn was 680, and 2170 dry wt. in wetland after 30
days of the experiment, respectively. Pb, Cu, and Zn concentrations were higher
than those in other plants grown naturally in the same mine drainage. Results also
indicated high concentrations of Si in E. acicularis (1.76%). It is likely that heavy
metals may exist in opal-A form in cells of E. acicularis.
This study indicated that E. acicularis is a promising plant species for
phytoremediation of abandoned mining sites rich in Zn, Cu, Pb, and As.
A
50
100
Time after transplanting (days)
Pb Conc. (mg/kg-DW)
NGUYEN Thi Hoang Ha, Masayuki SAKAKIBARA (Grad. school of
Ehime Univ.), Daisuke TAKEHANA (Sumiko Consultant Co., Ltd.),
Takashi HAMADA, Sakae SANO (Faculty of Education, Ehime Univ.),
Koichiro SERA (Cyclotron Research Center, Iwate Medical Univ.) and
Rie, S. HORI (Grad. school of Ehime Univ.)
Pb Conc. (mg/kg-DW)
700
600
500
400
300
200
100
0
Green leaves
Brown leaves
Native plant
b
BT
A
B
C
D
P1 P2 P3
a
800
D
600
400
200
CA
B
0
0
50
100
Time after transplanting (days)
Cu Conc. (mg/kg-DW)
Cu Conc. (mg/kg-DW)
Fig. 1 Pb concentrations (a) in brown leaves (b) 30 days (site D) and 92 days (sites A,B,C)
after transplanting. P1: Lycopodium clavatum, P2: Juncus effuses var. decipiens and P3:
Juncus krameri Franch. et. Savat are plants that grow at sites A, B (Omori et al., 2006)
800
600
400
200
0
b
BT
A
B
C
D
P1 P2 P3
Zn Conc. (mg/kg-DW)
Fig. 2 Cu concentrations (a) in brown leaves (b) 30 days (site D) and 92 days (site A,B,C)
after transplanting
2500
2500
D
2000
1500
A
1000
500
0
0
a
C
B
50
100
Time after transplanting (days)
Zn Conc. (mg/kg-DW)
P-4
Accumulation of heavy metals by Eleocharis acicularis in an
abandoned mining site of Hokkaido, Japan
b
2000
1500
1000
500
0
BT A
B
C
D
P1 P2 P3
Fig. 3 Zn concentrations (a) in brown leaves (b) 30 days (site D) and 92 days
(site A,B,C) after transplanting
13
広域低温変成作用の変成条件は沸石相の高温側もしくはぶどう石-パンペリ
北海道東部・常呂帯のジュラ紀後期緑色岩中の微
P-5
ー石相に相当する.また,局所的にアクチノ閃石もしくは普通角閃石も見出
生物変質組織および方解石の炭素同位体地球化学
される.
榊原 正幸・菅原 久誠(愛大・院理工)
・富山 雄
太(九大・院生資環)
・池原 実(高知大・海洋コ
アセンター)
・伊東 佳彦・岡﨑健治((独)寒地土
木研)
Microbial alteration textures and carbon isotope geochemistry of calcite
from Late Jurassic greenrocks in the Tokoro belt, eastern Hokkaido,
Japan
微生物変質組織の産状
仁頃層群の微生物変質様組織は,すべてガラス質玄武岩から発見された.
ガラス質玄武岩は,枕状溶岩の急冷縁もしくはハイアロクラスタイトの玄武
岩質岩片に見出され,火山ガラスの縁辺部を取り囲むように,またはクラッ
クに沿って産する.それらはチューブ状タイプおよび粒状タイプに区分され
る.
チューブ状タイプの形態は,直線状もしくは湾曲状でガラス片内部に向か
Masayuki Sakakibara*, Hisanari Sugawara (Ehime Univ. Sci. & Engin.), Yuta
Tomiyama (Kyushu Univ. Biores. & Bioenviron.), Minoru Ikehara (Kochi Univ.
CMCR), Yoshihiko Ito and Kenji Okazaki (Civil Engin. Res. Insti. Cold Reg.)
って進行している.長さは一般に 50~150μm 以下で,幅は 5~10μm 程度で
ある.粒状タイプは,玄武岩質ガラスの縁辺部から内部に向かって密集して
産する.形態は粒状で直径は 10μm 以下である.これらは,チューブ状およ
はじめに
び粒状を示す海洋底のガラス質玄武岩中の微生物変質組織に酷似している.
地球史における地下微生物圏の変遷を解明することは,生命の進化や多様
方解石の炭素同位体比
性,地球表層の物質循環,さらには火星などの太陽系の地球型惑星における
生命の存否を検討する上でも極めて重要である.本研究では,北海道東部・
緑色岩類中の方解石脈およびプールのδ13CPDB は,-5.0~2.7‰の幅広い値
常呂帯仁頃層群において,ジュラ紀後期海山起源の緑色岩における微生物変
を示すが,特に 0.5~2.5‰の値に集中した.一方,石灰岩のδ13CPDB は,1.0
質様組織を記載し,それらに含まれる方解石の炭素同位体比を測定した.さ
~2.2‰の範囲に限定される.
らに,それらのデータに基づいて,その微生物変質様組織の形成時期および
考
成因について考察した.本研究では,北海道東部北見市および佐呂間町を結
察
ぶ国道 333 号線沿いの仁頃トンネル(910 m)および新佐呂間トンネル(4,122
仁頃層群緑色岩中の方解石のδ13CPDB は,その多くが石灰岩のそれに近い値
m)の先進ボーリングコアを使用した.採取・記載した試料は約 200 個である.
を示している.これは,CO2 が沈み込み帯の低温変成作用時に石灰岩から放出
され,微生物起源の炭素同位体が変質させられたためであると考えられる.
地質概説および岩石記載
一方,微生物変質組織を含む緑色岩中の方解石は,δ13C <-4.0‰の低い炭
仁頃層群はジュラ紀後期の海山起源の緑色岩類および石灰岩・チャートな
素同位体比を示すものがある.このことは,付加体形成時の低温変成作用を
どの遠洋性堆積岩類によって構成される.仁頃層群の玄武岩類は主にかんら
受けた緑色岩においても,バクテリア起源の炭素同位体比をある程度保持し
ん石玄武岩で,斑晶鉱物として,スピネル,かんらん石および斜長石を含む.
ていることを示唆している.
主要な変成鉱物はローモンタイト,ぶどう石,パンペリー石,緑れん石,緑
一方,仁頃層群中の石灰岩のδ13CPDB を有意に超える正の炭素同位体比は付
泥石,白色雲母,チタナイト,方解石,赤鉄鉱,アルバイトおよび石英で,
加体中でのアーキアの活動を示唆している可能性が高い.
14
高知県安田町東谷地域における鮮新統穴内層の
層序と Glycymeris cisshuensis の産出
岩田朋子・近藤康生・高橋健一(高知大学・理)
Stratigaphy of the Pliocene Ananai Formation in
Todani area, Yasuda-cho, Kochi, and occurrence of
Glycymeris cisshuensis
Tomoko Iwata, Yasuo Kondo and Ken’ichi Takahashi
(Kochi Univ.)
Glycymeris 属二枚貝が発見された.本地域の穴内層からは,ベニグリ G.
2005 年以後,高知県安田町唐の浜地域で陸上掘削(ANA1, ANA2)が行われ,
上部中新統から記載された G. cisshuensis(Makiyama, 1926)が,穴内
これまで不明であった穴内層の中下部の詳細な層序が明らかとなり,年代や
層の下部から見つかったことは,寒冷化が進行する前の温暖期には,中新世
古環境についての多くの新情報が得られつつある(Kondo et al., 2006; 岩
からの遺存種が生存できたことを示す.
P-6
rotunda の多産が従来から知られているが,ビロードタマキガイ G. pilsbryi
もわずかに産する.今回得られた Glycymeris 属二枚貝標本は,これらとサ
イズその他の特徴が全く異なるが,他の現生大型タマキガイ類とも区別され
る.すなわちタマキガイ Glycymeris vestita よりも膨らみが強く,殻前縁
が突き出す.殻前縁が突き出す点ではよく似ているベンケイガイ G.
albolineata とも,殻全体の形態と,殻外表に小刻点が存在しない点で明確
に区別される.
井ほか,2006;Kita et al., 2008)
.これらの研究によると,唐の浜の穴内
層は,ガウス・松山境界(2.58Ma)をまたいでおり,北半球で寒冷化が進行
引用文献
した時期の古環境変遷が詳細に記録されていることが明らかとなっている.
岩井雅夫・近藤康生・菊池直樹・尾田太良,2006.地質学雑誌,112,補遺,
一方,コアからは十分な試料が得られない大型化石群の分析のためには,露
27-40.;甲藤次郎・中村純・高柳洋吉,1952.高知大学研報 2(32): 1-15.;
頭での層序確立が不可欠であるが,陸上に露出している穴内層の本格的な調
Kita, S., Ikehara, M., Iwai, M. and Kondo, Y., 2008. Abstracts, 6th
査は甲藤ほか(1952)や Kurihara(1968)以後報告がなく,地下地質と陸上
International conference on Asian Marine Geology (Kochi), p.122.
の露頭を統合した理解は未だ得られていない.
近藤康生,2005.高知地学研究会会報,
(29)
:4-8.
;Kondo, Y., Iwai, M.
今回,従来から好露頭が知られている唐の浜の農道沿いルート(近藤,
and Kodama, K., 2006. Scientific Drilling, No.3, p.38-39.;Kurihara,
2005)に加え,その東方の東谷川沿いのルートでも調査を行った.農道沿
K. 1968. Trans. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N. S., 70: 267-283.;
いでは穴内層はほぼ南北の走向と緩やかな西傾斜を示すことが知られてい
Makiyama, J., 1926. Memoirs of the College of Science, Kyoto Imperial
るが,東谷川でも同様の走向・傾斜を示すことが確認され,コアから知ら
University, Series B. Vol.II, No.3. p.155-156.
れた層序の一部は露頭でも確認できることがわかった.すなわち,ANA2 コ
アに認められる礫質な岩相を主体とする下部層(ユニット 1-3;30m)が東
谷川沿いに露出し,外浜から内側陸棚の砂質相を主体とし,上方粗粒化し
て礫岩に覆われる中部層(ユニット 4-5;30m)が川沿いの露頭上部から上
位に点々と露出する砂層に当たる.そして,これらの地層は農道沿いに露
出する,生物攪拌の顕著な砂質シルトを主体とし海進海退のサイクル(近
藤,2005)が明瞭な上部層(ユニット 6-7;40m)へと続く.
今回,東谷川底より, Glycymeris cisshuensis に同定される大型の
15
P-7
松山平野下の第四系上部に挟在するテフラ層の岩石学的
研究
高倉清香(愛媛大・理)・榊原正幸(愛媛大・院理工)
Petrologic study of tephra formation in Upper Quaternary under
Matsuyama Plain, Ehime Prefecture, Japan
Sayaka TAKAKURA (Ehime Univ.) and Masayuki
SAKAKIBARA (Grad. school of Ehime Univ.)
【はじめに】
近年,松山平野下の第四系の地層区分は,平井(1989)
,水口ほか(2003)や
市原ほか(2004)などによって再検討されてきた.多くの研究は松山平野下の深
度約 10~20 m に堆積しているテフラを鬼界アカホヤテフラ
(K-Ah;約 7300 年前)
に対比している.今回,松山平野下で採取されたボーリング試料に挟在されるい
わゆる“鬼界アカホヤテフラ”中の火山ガラスを岩石学的に検討し,その起源に
ついて考察した.
【分析試料および分析手法】
本研究の対象は愛媛県松山市富久町で採取された総掘進長129 mのボーリング
(以下,B-1)における深度 10.5~14.7 m の試料である.分析には,EDS 分析お
よび火山ガラスの屈折率測定を行った.EDS 分析では,粒径 0.25 mm~0.125 mm
の火山ガラスを使用し,火山ガラス 1 個につき 5 点測定し,その平均を出した.
分析には,エネルギー分散型 X 線マイクロアナライザー(EDS:JSM-5400,JEOL)
を用い,主要元素分析を行った.測定条件は,電圧 10kV,電流 4.0×10-10A,ビ
ーム走査範囲約 4×4μm である.屈折率測定では,粒径 0.125~0.063mm の扁平
型火山ガラスを使用し,試料ごとに 20~23 個測定した.ただし,14.5~14.6m お
よび 14.6~14.7m の試料は火山ガラスが少なかったため,7 個ずつ測定した.分
析には,温度変化型屈折率装置(MAIOT:古澤,1995)を用いた.
【結果】
1.火山ガラスの形態は,すべての試料において P 型,B 型および T 型(古澤,
1995)が含まれていた.色は,無色~褐色まで多様である.
2. 斑晶鉱物は斜方輝石,単斜輝石,普通角閃石および斜長石である.
3. 火山ガラスの組成は,ハーカー図に基づくと,SiO2 が 72.7~74.9 wt.%(グル
ープ A)および 74.4~75.8 wt.%(グループ B)2 グループに区分される.
4. 火山ガラスの屈折率は2つのグループに分けられる。ひとつは最頻値が 1.
1.500 のグループで、他の一つは、1.509 付近に最頻値を有するグループであ
る.
【考察】
16
本研究で検討したテフラ層中に火山ガラスの形態ならびにその主成分化学
組成,および鉱物組成の特徴に基づいて K-Ah および姶良 Tn テフラ(AT;約
2.6~約 2.9 万年前)と比較検討した.
主成分化学組成および火山ガラスの形状に基づくと,グループ A およびグル
ープ B は,それぞれ K-Ah テフラおよび AT テフラに対比される(図1)
.さら
に,グループ A は 2 つに細分され,小林ほか(2006)による K-Ah のグループ
ⅠおよびⅡに対応する.また,火山ガラスの屈折率測定に基づくと,1.500 の
最頻値を有するグループは AT テフラに,1.509 付近に最頻値を有するグループ
は K-Ah テフラに対比される.
本研究において検討した松山平野下の深度約 10~20m のテフラ層は,従来,
K-Ah テフラに対比されてきた.しかしながら,本研究結果に基づくと,K-Ah
テフラおよび AT テフラの 2 種類のテフラが再堆積・混合したものであること
が明らかになった.また,どの試料にも少なくとも両テフラが混合しているこ
とから,
このテフラ層は K-Ah テフラが降下堆積後に再堆積したと考えられる.
図 1.火山ガラスの化学組成と屈折率.
【引用文献】
・市原寛・榊原正幸・大野一郎,2004,地質雑.110,746-757
・水口公徳・秦扶士雄・矢田部龍一,2003,地域防災総合研究,第 1 巻,39-47.
・平井幸弘,1989,愛媛大教育紀要(自然科学)
,9,59-73.
・古澤明,1995,地質雑,101,123-133.
・小林信宏・藤岡導明・佐藤茜・伊藤泰弘,2006,地質雑,112,210-221.
・町田洋・新井房夫,2003,新編 火山灰アトラス‐日本列島とその周辺.東京大学出版会.