教育課題研究「学級経営」【3年研究の1年目】 「ソーシャルスキルトレーニングプログラム・モデルプランの作成」 小島 朋見 ・ 村山 幸輔 ・ 吉里恵理子 ・ 渡邉 豪 学級の現状の把握と課題の改善のためのスキル向上のために、学級集団アセスメントの結 果分析と、効果的なソーシャルスキルトレーニングプログラム(以下、SSTP)の実践に ついて研究し、モデルプランを作成する。 はじめに 2 研究経過 (1)学級集団アセスメントによる学級及 び個人の実態把握と分析 1 回目の学級集団アセスメント (hyper-QU)を実施(5月)し、その結果 をもとに、研究員4名の担当学級におけ る学級と個人の実態把握と改善のための 分析を行った。 さらに2回目(中学校11 月・小学校1月)の結果から、学級全体お よび個の変容を読み取り、各取り組みの 効果を検証した。 今年度は、学級集団アセスメント (hyper-QU)を活用し、日常の取り組み や観察と併せて、実態把握のための分析 を行い、学級や個人が抱える課題の改善 や支援のために効果的なSSTPの実践 について研究した。 学級集団アセスメント(hyper-QU)の 分析及びSSTPの実践等について、芝 浦工業大学准教授 岡田佳子先生にご指 導いただいた。 (2)SSTPの実践 SSTPの効果的な実践のためには、 プログラムを実施する目的を明確化し、 その目的に対する振り返りを行うことが 大切である。そのことを意識し、学級の 実態に合わせて、プログラムをアレンジ したり、短期目標を見直し計画したプロ グラムを変更・修正したりするなどの工 夫をした。 研究の内容 1 研究の基本方針 (1)学級集団アセスメントの結果分析 学級集団アセスメント1回目の結果を 分析し、学級および個人の現状や課題を 把握する。 また、2回目の結果から学級の改善に 向けたさまざまな取り組みの成果を検証 する。 (3)公開授業および研究協議 11月24日(火) 、綾北中学校第2学 年6組において、渡邉 豪研究員による 公開授業を実施した。 一部生徒の言動の影響を受けやすく、 中間層の多くが4つの群の境目付近にプ ロットされているという特徴のクラスに 対し、1学期から計画的にSSTを重ね てきた。 (2)SSTPの効果的な実践の探求とモ デルプランの作成 学級及び個人の課題改善のためのスキ ル向上を図り、学級の実態にあわせたS STPの効果的実践を探求し、モデルプ ランを作成する。 - 1 - 本授業では、グループの中で意見を聞 きあい、課題を解決しようとする活動の 中で、 「協力する」とは何かを考えさせる ことを目的に、SSTP「宝島を脱出せ よ!」を実践した。クラスの実態に合わ せて、難易度を調整したり、目的をより 意識させるために振り返りシートの内容 や配付のタイミングを変えたりするなど、 プログラムのアレンジを工夫した。 授業後の研究協議では、 「SSTPの効 果的な実践のために」をテーマに、目的 に応じたプログラムのアレンジのしかた やその効果、プログラムの意味づけと振 り返りの重要性などについて、岡田先生 にご指導いただいた。 ≪アレンジのポイント≫ ・目的を明確にするため、導入時に振 り返りシートを配付し、活動のゴー ルを意識させた。 また、振り返りシートにも「協力」 について考えたことを記述する欄を 追加した。 ・活動の難易度を下げるため、情報カ ードの情報を2つ削除した。 ・心的影響に配慮して、指示書の内容 を一部変更した。 生徒たちは「宝島脱出」の難問に苦戦 しながらも、協力するということを意識 しながら活動する姿を見せた。 ≪生徒の振り返りシートの記述より≫ ・お互いの意見を言い合うことが「協 力」だと思いました。内容は難しか ったけど、その分皆で意見を出し合 うことができました。 ・皆で一つの目標に向かうことが「協 力」だと思いました。難しかったけ ど、楽しくできたと思います。 ・一人ひとりがやれる事をしっかりと 行うことが 「協力」 だと思いました。 普段話せない人とも話すことができ たのでとても良かったです。 -- 32 -- 成果と課題 成果 ・アセスメント結果を丁寧に分析するこ とで、学級及び個人の実態や課題を正確 に把握することができ、そこから改善に むけて効果的な対応を考えることができ た。 学級全体の大まかな傾向の確認に終始 することなく、児童・生徒の人間関係(ふ だん行動を共にするグループ内の児童・ 生徒がそれぞれどこにプロットされてい るか)や日常の観察との開き(なぜここ にプロットされているのか)などに注目 した具体的な見取りが、正確な実態把握 につながることを実感した。 グラムを実施するかだけでなく、何を 目的にその時期にそのプログラムを行 うのかという意味づけが重要である。 また、併せてSSTの実施以外のさ まざまな場面で、どのように学級づく りを行っていくかを具体的に考えてい くことが大切である。 課題 ◇学級集団アセスメントの活用について ・日常の観察が不十分では、アセスメン ト結果と関連づけて実態を把握すること はできない。児童・生徒一人ひとりの様子 を日ごろから丁寧に観察し、アセスメン ト結果をより有効に活用したい。 ・SSTPの実践においては、以下のこ とが重要であることがわかった。 ①目的が明確であること 教師が児童・生徒に、どういう力を 使って活動してほしいのかを伝え、プ ログラムを実施することが大切である。 また、目的に応じたプログラムのアレ ンジがより効果的な実践につながって いく。1つのプログラムも、それぞれ の学級の実態に合わせてアレンジする ことで、さまざまな効果を発揮するこ とになる。 ・アセスメントの結果からどのような情 報を得て学級改善につなげていくのかと いう、結果を見取る力が重要となる。今 後も、研究員の結果を見取る力のより一 層の向上を図りたい。 ②振り返りを行うこと SSTPが、活動に終始し、ただ「楽 しかった」で終わってしまうのでは意 味がない。 学級全体で目的を再確認し、 振り返り用紙に記述するほかに、教師 の言葉で活動を振り返るのも有効であ る。その際、今回の活動で体験したこ とと普段の学級の様子とを関連づけな がら具体的に振り返ることがポイント である。 ・SSTPを実践するための時間の確保 が課題の一つといえる。年度当初から意 図的・計画的に実践の機会を設定してい く必要がある。 ◇SSTPの実践について ・学級改善は、あらゆる機会を通じて図 られるものである。SSTは一つのツー ルであることを念頭において、様々な活 動と併せて学級改善を図っていく必要が ある。 ・効果的な実践のためには、下準備に時 間や手間を要することが多くなりがちで ある。新たなプログラムを発掘したり、 教具を有効活用したりするなど、負担感 の軽減を工夫したい。 ③計画的に実践すること SSTPの計画において、どのプロ - 3 - 学級活動指導案(中学校) 平成 27 年 11 月 24 日(火)5校時 1 題材 第2学年6組 題材名 「宝島を脱出せよ!」 内 容 (話し合いでの大切な行動・態度に気付く) 指導者 渡邉 豪 2 題材について (1)生徒の実態 非承認群(25%)や、侵害行為認知群(17%) の値が全国よりも高く、分散した学級集団である ことが分かる。周囲の生徒へ多大な影響を与えて いる、学級内の一部の生徒は、感情のコントロー ルが苦手で、怒りに振り回されたり、自らを強く 見せるためにわざと乱暴な言動を選んだりして しまうことがある。反面、とても幼い部分もあり、 口には決して出さないが、クラスに対する帰属意 識もある。また、2学期に入り、進路に対する意 識も見えるようになってきた。 中間層の生徒には、先に挙げた力関係の強い生 徒のグループの行動を迷惑であると感じながら も、その幼さを理解し始めているものもおり、そ の部分を考慮しながらも、 「仲良く」ではなく「協 力」することでクラスを成り立たせようとしてい る。一方で、「わからなければ」や「面倒臭い」 という気持ちから、手を抜いてしまう傾向の生徒 もいる。また、多くの中間層の生徒は4つの群の 境目にプロットされていることから、僅かな影響で良い方向にも、悪い方向にも流れてし まうことが考えられる。 今年度当初は、相手の事を理解する前から「仲良くしよう」とする気持ちが先走ってし まい、形だけ「仲良くする」事が多くみられたため、人間関係のトラブルが多かった。そ こで、 「仲良くするのではなく、 『協力して』生活しなさい」という言葉かけを続けてきた。 2学期に入り、少しずつその言葉が浸透し始めてきており、できない生徒がいるのであれ ば、他の生徒がサポートしようとする行動が少しずつ観察され始めてきている。 (2)題材設定の理由 「宝島を脱出せよ!」は、自らの持っている情報を確実に他のメンバーに伝える作業を 通して、話し合いでの大切な行動や態度に気付くことが目的となっている。これまでに、 「感 情マップ」 「心の氷山」 「1列並びゲーム」 「仲間探しゲーム」「新聞タワー」「形を作ろう」 のSSTプログラムを行ってきた。 最初に「感情マップ」 「心の氷山」を行ってみたが、黙って座って「書く」作業を続ける - 3 - ことが困難な生徒が多く、なかなか指導者側のねらいに近付けない実情が見て取れた。そ こで、SSTに対する「面倒臭い」という印象を取り除くため、クラスの中でも体を動か しながらコミュニケーションの大切さを理解できるプログラムを多く行うよう意識した。 これにより、生徒達の活躍する場が増え、生徒それぞれの新しい一面を理解する機会も増 えた。また、身体を動かすSSTの回数が増えることで、SSTに対する「面倒臭い」と いう当初の印象も徐々に緩和され、 「皆と協力できて楽しかった」という意見が多くなって きた。このことから、SSTを前向きに取り組める下準備を整えることができた。 言葉による情報交換が苦手な生徒が多いため、コミュニケーションの大切さや難しさに 気付き、どのようにすれば相手に伝わりやすいのか等、考えながら行動し、意見を交換す る際に必要な行動や態度に気付かせ、 「協力する」ことそのものについて考えさせたい。 3 指導のねらい(身につけさせたい力) 「協力する」ということそのものを考えさせ、具体的に言語化させる。 4 評価の視点と本実践における評価規準 集団活動や生活への 集団や社会の一員としての 集団活動や生活についての 関心・意欲・態度 思考・判断・実践 知識・理解 学級や学校の集団や自己の生 集団や社会の一員としての 集団活動の意義、より良い生 活に関心をもち、望ましい人 役割を自覚し、望ましい人間 活を築くために集団として意 間関係を築きながら、積極的 関係を築きながら、集団活動 見をまとめる話し合い活動の に集団活動や自己の生活の充 や自己の生活の充実と向上 仕方、自己の健全な生活の在 実 と 向 上に 取り 組 もうと す について考え、判断し、自己 り方などについて理解してい る。 を生かして実践している。 る。 5 展開の過程 (1)より良い学級づくりのための具体策 実施日 7/6 9/28 10/16 10/23 プログラム名 感情マップ 心の氷山 選んだ理由 さまざまな感情を表す言葉を再確認したうえで、実際 の場面に適用させ、感情だけに左右されずに、理性的 に見つめなおす力を身につける。 1列並びゲーム 言葉を使わずにコミュニケーションを図る。また、SST 仲間探しゲーム に対する「面倒」というイメージを改善する。 新聞タワー かたちをつくろう (一回目) 自分の考えを積極的に発言したり、人の考えを受け入 れたりしながら協力する楽しさを体験する。 グループにおける自分の役割を意識して行動し、皆で 活動する楽しさを味わう。 - 4 - (2)本時の指導と生徒の活動 ア 課題 自らの意見と他の意見をすり合わせる事に困難さを抱えている生徒が多い。 イ 本時のねらい 自ら考え、自らの意見を集団内で発言する。また、他の意見を聞き、グループで一 つの答えを導き出す方法を学び、 「協力する」とはどのようなことを指すのかを考える。 ウ 展開 活動内容 指導上の留意点 ①「協力とは何かを考える」と ・振り返りシートを配り、最終的な目標や、や ・指示書 るべきことを明確にする。 ・情報カード いう今回の目標を明確に伝え る。 資料 ・島の地図 ②4人グループに分かれ、机を ・各グループに右の資料を配付する。 囲んで座る。 ・メモ用紙 ・振り返りシート ③指示書を読む。 ・指示書を読み、内容を説明する。また、約束 10分 ④一人が情報カードを配る。 を読み上げ確認する。質問があれば受ける。 ・情報カードの配り方を説明する。 <カードは裏返しのままトランプのように切っ て全員に配る> ⑤指示書に従い、カードの情報 を交換し合い、島の脱出方法 をグループで考える。 ⑥正解を確認する。 ・終了時刻を告げる。 (20分間) ・正解の地図 ・早く終わったグループには答えを確かめるこ とをすすめる。 ・全グループに正解の地図を配り、答えについ 30分 ⑦振り返りをする(個人) 。 て説明する。 ・振り返りシートに個人で記入させる。 (話し合 いはしない)。 ⑧グループ毎に振り返りシート の項目に沿って、この課題達 成で起こったこと、そこから ・グループで話し合いをさせる。 ※話し合いが進まないグループに声かけをす る。 学んだことを話し合う。 ⑨グループ毎に⑧で話し合った 内容を簡単に発表する。 ・発表をもとにねらいに沿ってまとめる。 10分 *引用文献 日本 GWT 研究会(2003)「学校グループワーク・トレーニング3」p52 遊戯社 - 5 - 資料1 難易度を下げるため、解答 に無関係な情報カードと、 空の情報カードを削除し た。 情 報 カ ー ド 1 体の色をもとにもどす薬の ありかは、暗号と鍵があれ ばわかる。 2 なぞなぞの鍵 アカイタヌキ 3 ダイカの木は、いかだになる 4 コンペイ島は、動く。 5 島は、宝の箱を開けてから、 6 いかだは、川をくだって、 5時間後に沈む。 海に進むことができる。 7 河口から、虹が浜まで、 8 河口から東の入り江まで、 海路で4kmである。 海路で3kmである。 9 河口から、時計回りに、 10 河口から、反時計回りに、 いかだは1時間に4km進む。 いかだは1時間に1km進む ことができる。 11 北の入り江に止めてある船に 乗って脱出しなければならない。 13 ほら穴から、ダイカの木まで 歩いて10分間かかる。 12 いかだを作って河口に出るま でに、1時間かかる。 14 虹が浜から、北の入り江まで 海路で4kmある。 15 東の入り江から、北の入り江 まで海路で2kmある。 16 北の入り江と城の間は、 歩くと1時間かかる。 17 東の入り江と城の間は、 18 船は、どちら周りでも30分 歩くと30分かかる。 間で2km進める。 19 4時間半のうちに薬を手に 20 2つに分かれた島の間は、 入れなければ、全身が灰色 プンカ山の噴火のため、 の石になってしまう。 渡れない。 16 虹が浜と城の間は、歩くと 2時間かかる。 - 6 - 22 (情報なし) 資料2 指示書 あなたたちは、ある宝島のほら穴で、宝を手に入れました。 しかし、宝を取ったために、のろいがかかってしまいました。 あなたたちの体は、足から灰色に変わってきてしまい、この ままでは、石になってしまうのです。そのうえプンカ火山が噴火 し、島は2つに分かれ、もうすぐ沈んでしまいます。 あなたたちは、島が沈む前に、体の色を戻す薬を手に入れ、 船で脱出しなければなりません。 これから配られるカードの情報をよく読み、どのように薬を 取り、島から脱出するかを話し合ってください。そして、通る 道筋を赤鉛筆で地図に書いてください。 <あなたたちが、今持っているもの> ◆なぞなぞの鍵 ◆暗号文 『アシタイロノ カクスアリヲ タノメ』 より落ち着いて取り組めるよう、指 示書の一部を変更した。 金色→灰色 死んでしまう→石になってしま う 島の地図 正解 - 7 - 目的に合わせて、「協力」 についての振り返りの欄 を追加した。 振り返りシート 資料3 実施日 平成27年11月24日(火) 年 組 番:名前 今のグループの様子を、思い出して書きましょう。 1.グループの友だちは、宝島から脱出するために、いろいろな協力をしてくれました。 友だちが、どんなことをしてくれたのかを思い出して書きましょう。 自 分 が くれて、よかった。 が くれて、よかった。 が くれて、よかった。 が くれて、よかった。 が して、よかった。 2.今日の活動を通して、「協力」とは、どんなことだと思いましたか。 3.「宝島を脱出せよ!」をして、感想や考えたことを書きましょう。 - 8 - 資料4 ・プログラムの目標を明 確にするため、振り返り シート配付を最初に行っ 目 的 自分の持っている情報を、言葉によって確実にメンバーに伝える作業を た。 通して、話し合いでの大切な行動・態度に気づく。 ・グループ構成を6人か 準備するもの グループへの指示書・情報カード・島の地図・メモ用紙・正解の地図を ら4人に減らした。 グループに各1・振り返りシートを1人1枚 宝島を脱出せよ! 活動内容 指導上の留意点 ①「協力とは何かを考える」 ・振り返りシートを配り、最終的な目標 という今回の目標を明確に や、やるべきことを明確にする。 伝える。 資料 ・指示書 ・情報カード ・島の地図 ②4人グループに分かれ、机 ・各グループに右の資料を配付する。 を囲んで座る。 ・メモ用紙 ・振り返りシート ③指示書を読む。 ・指示書を読み、内容を説明する。また、 約束を読み上げ確認する。質問があれ 10分 ④一人が情報カードを配る。 ば受ける。 ・情報カードの配り方を説明する。 <カードは裏返しのままトランプのよ うに切って全員に配る> ⑤指示書に従い、カードの情 ・終了時刻を告げる。 (20分間) ・正解の地図 報を交換し合い、島の脱出 ・早く終わったグループには答えを確か 方法をグループで考える。 ⑥正解を確認する。 めることをすすめる。 ・全グループに正解の地図を配り、答え について説明する。 30分 ⑦振り返りをする(個人) 。 ・振り返りシートに個人で記入させる。 (話し合いはしない) 。 ⑧グループ毎に振り返りシー トの項目に沿って、この課 題達成で起こったこと、そ ・グループで話し合いをさせる。 ※話し合いが進まないグループに声か けをする。 こから学んだことを話し合 う。 ⑨グループ毎に⑧で話し合っ た内容を簡単に発表する。 ・発表をもとにねらいに沿ってまとめ る。 10分 *引用文献 日本GWT研究会(2003)「学校グループワーク・トレーニング3」p52 遊戯社 - 9 - 1.小学校第4学年での実践① (1)クラスの実態 第1回結果(5月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 右上 型 侵害行為認知群 学級生活満足群 0人 31 人 学級生活不満足群 非承認群 1人 5 人 人数 37人 配慮すべき児童・生徒の様子 A: 要支援 群 さまざまな場面で無気力であり、自己 肯定感も低い。被害者意識も強く、何か 嫌なことがあると、内にため、不適切な 表現方法をとってしまう。絵が得意なの で、そこをきっかけにして、関係を築き つつ、全体の場でも認める声かけをして いく。 A クラスの実態 学級生活満足群に83%属し、親和的なまとまりのあるクラスとなっている。ただ し、一部に承認得点の低い児童もいる。非侵害得点は低く、学級のルールや行動規範 がほとんどの子ども達に共有されていると思われる。行事や学級全体で取り組むこと などまとまって意欲的に取り組むことができるが、リーダーシップがとれる児童は限 られており、主体的に行動できる児童は少ない。 (2)ソーシャルスキル(クラス)の実態 第1回結果(5月実施) 良好な人間関係 19 人 9人 3 人 消極的 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 1 人 0 人 4人 0 人 0 人 評定2 て 1人 評定1 て 孤立 - 11 - 評定3 て 評定2 て 評定1 て 自己中心的 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の様子 配慮のスキルについては、評定3の児童が多く、「対人関係における基本的なマナ ーやルールが守られている」と感じていることが分かる。しかし、「かかわり」より も「配慮」が優位である児童は、12名と学級の3分の1にあたり、人と関わること が苦手、相手に配慮しすぎて自分を出せていないと思っている児童も多いことが分か る。 【かかわりのスキル】の様子 かかわりのスキルについては、評定1が4人、評定2が13人、評定3が20人と なった。能動的に友達と関わることについては消極的、あるいは1人でも平気と思っ ている児童も少なくない。 長期目標(3学期末までの最終目標) ・自主的・協働的に活動できるクラス 短期目標(2学期末までの目標) ・友達のいい所を探し、あたたかい言葉かけをお互いにし合う。 ・一人ひとりが素直に自分の意見を言える。 ・計画委員のそれぞれの役割が分かり、子ども達で学級会の計画・進行ができる。 (3)目標に向けての具体策(ソーシャルスキルトレーニングの実践) 時 間 実施日 実 施 プログラム名 時 1 4月9日(木) の 様 子 選んだ理由(ターゲットスキルを含めて) 実 1列並びゲーム クラス替え直後に実施したため、初めは緊 張した雰囲気だったが、何度か行ううちに 笑顔で楽しく活動できるようになった。ま た初めての友達にも関わろうとする児童 もでてきた。 - 12 - 施 後 の 様 子 言葉を使わずに、コミュニケーションを図 る。(自己表現) 「同じ誕生月だったね。」「○月生まれなん だ。」など会話のきっかけとなり、友達づく りのよい機会となった。また、コミュニケ ーションには表情や動作も重要であること を感じていた。 2 7月6日(月) ムシムシ教室 相手の話をしっかり聴き、協力して課題に 取り組む。(問題解決) 「相手の話を最後までしっかり聴く事」 「協力する事」のねらいを押さえてから実 施した。順番に話す・相手の話に反応する などの約束も示した。普段なかなか意見を 発言できない児童もグループの中で積極 的に発言することができていた。 3 9月15日(火) すごろくトーク 「友達についてたくさん知る」「あたたか い反応をする」のねらいをおさえてから実 施した。あたたかい反応が返ってくるので どのグループも和やかな雰囲気で活動で きていた。中には、反応だけでなく、質問 をしているグループもあったので、全体に 共有した。 4 1 1 月 1 3 日 しあわせ宅急便 (金) 「自分の良さ・友達の良さに気づく」のね らいをおさえてから実施した。まず、自分 の班の友達全員にプレゼントカードを書 いた。なかなか書けない児童もいたので、 個別に声かけをした。カードを読んで渡 し、最後に感想を書いた。 5 2月10日(水) 動物マンション 「ムシムシ教室」でやり方は分かっている ので、スムーズに話合い活動に入ることが できた。前回よりも難易度は上がっていた が、協力して解決に向かっていた。 - 13 - 「友達がしっかり話を聴いてくれて嬉しか った。」 「自分の意見が言えてよかった。」 「み んなで解決できて楽しかった。」などの感想 を児童は持つことができた。実践後の話合 い活動では学んだことを生かす姿が見られ た。 友達について知る楽しさを味わう。 (他者理 解) 「知らないことがたくさんあった。」「もっ と友達になれた気がする。」「質問されて嬉 しかった。」などの感想が出された。また「も っとやりたい。」という声も多かったので、 マス目だけの用紙を準備しておいた。休み 時間などに児童同士で質問を考え、楽しく 活動していた。 自分の良さを示してもらい、自己肯定感を 高める。(自己肯定感) 帰りの会に良い所見つけをやっているが、 今まで仲の良い友達の事を発表する児童が 多かったが、言った事の無い友達の事を発 表する児童も増え、 「良いこと・素敵なこと」 は伝えていこうという意識も持てるように なったと思う。 相手の話をしっかり聴き、協力して、課題 に取り組む。(問題解決) 前回は見られなかったタイミングよく発言 することができる児童が増え、臨機応変に 相手とコミュニケーションをとる力も育っ てきたと感じた。 (4)クラスの変容 第2回結果(1月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 右上 型 右上 侵害行為認知群 1人 型 学級生活満足群 32人 人数 (6月比較+1人) (6月比較+1人) ) 36人 学級生活不満足群 非承認群 2人 1人 (6月比較+1人) (6月比較-4人) 配慮すべき児童・生徒の変容 A: 要支援 群 学級生活不満足 群 得意である絵(マンガ)や宇宙のことなどに ついて友達からもたくさん認められ、良好な人 間関係を築けるようになった。また、課題や宿 題なども時間はかかるが、最後まできちんと終 わらせようという意識を持ち、実行できるよう になってきた。まだまだ取りかかりに時間がか かったり、ムラがあったりもするが、友達関係 が構築されるにつれて、学習に対しても意欲を 持てるようになってきた。 A クラスの変容 学級生活満足群が1名増えて、89%となり、非承認群は4名減った。承認得点は 全体的に高くなり、ほとんどの児童が周りから認められ、充実感をもてていると想定 される。特に「学級の雰囲気」の項目で高いポイントを示しており、1年間「チーム ワーク」を目標に取り組んできた児童の成長や頑張りが表れていると思う。 (5)ソーシャルスキル(クラス)の変容 第2回結果(1月実施) 良好な人間関係 24 人 4 人 2 人 2 人 消極的 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 0 人 2 人 評定2 て 評定3 て 0人 2人 評定2 て 0 人 評定1 て 自己中心的 評定1 て 孤立 - 14 - かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の変容 1回目同様、90%の児童が評定3となり、評定1の児童は0名となった。 「配 慮」が優位である児童も4名に減った。配慮の評定が高い児童が、スキルに課題 がある児童をさりげなくフォローしている姿が多く見られた。 【かかわりのスキル】の変容 1回目と比べると、「かかわりのスキル」の平均が高くなり、評定3の児童が 75%となった。これはプログラムの実施や様々な活動を通して、周りの人とか かわる機会を多く仕組んだ結果だと考える。 (6)成果と課題 成果 ・学級集団アセスメント(hyper-QU)の結果を丁寧に分析し、クラスや児童の実態 をふまえ、ねらいを明確にしてSSTPを実践することで、クラスや児童がどん な力を身につけていけばよいのかを意識して取り組むことができた。またねらい が明確になることにより、プログラムのアレンジの仕方などを学ぶことができた。 ・児童の学級での立ち位置や様子、児童がどう感じているのかを把握し、個別に支 援することができた。 ・集団という側面と個人という側面、両方へのアプローチを並行して行うことがで きた。 課題 ・支援が必要な児童や教師の見立てと違う児童を軸として、全体的なレベルアップ を目指したが、1回目と2回目で大きく後退した児童については、個別に対応し、 支援していく必要がある。 ・SSTPを実施する際、内容によっては準備に多くの時間がかかってしまう ものもあるので、学校全体で共有できるようにしていきたい。 - 15 - 2.小学校第4学年での実践② (1)クラスの実態 第1回結果(5月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 人数 33人 横型 侵害行為認知群 学級生活満足群 9人 14 人 学級生活不満足 非承認群 群 3人 7人 配慮すべき児童・生徒の様子 A:学級生活不満足群 1、2年生で不登校傾向があった。学 習内容を理解する力が乏しい。自分から 周りにかかわれず、休み時間に1人でい ることが多い。 B:学級生活不満足群 人前で話すことが苦手で、発表の際に 泣き出してしまうことがある。限られた 友だちとしかかかわれず、周りの人に強 くあたることがある。 A B クラスの実態 学級満足度尺度における結果は、全国的な傾向と比較すると、承認得点は全体的に高い。しかし 被侵害得点には差が見られ、侵害行為認知群が27%と全国平均より高い。1年生から単級という こともあり、友だち関係が固定化されつつあり、自分から集団に入っていけず孤立してしまう児童 もいる。そのため、自己主張ができ、自分の思い通りに活動できる児童が満足している反面、自分 の思いをうまく伝えることのできない児童は、活動や対人関係の面でつらい思いをすることがある と考えられる。 (2)ソーシャルスキル(クラス)の実態 第1回結果(5月実施) 良好な人間関係 10人 6人 3人 消極的 0人 5人 1人 2人 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 3人 評定2 て 3人 評定1 て 孤立 - 16 - 評定3 て 評定2 て 評定1 て 自己中心的 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の様子 評定1が4名、評定2が10名、評定3が19名、「配慮」のスキルの指数は107となっている。 「かかわり」より「配慮」が優位であるタイプの児童は11名おり、相手に配慮をしすぎて自分を出 し切れていない状況にある児童も多い。また、「配慮」のスキルが発揮されている範囲が、仲の良い 友だちの間だけに限られている状況である。そこで、「友だちの話は最後まで聞く」「みんなで決め たことにはしたがう」などの基本的なスキルを向上させ、スキルの発揮される場を学級全体の生活に 広げていきたい。 【かかわりのスキル】の様子 評定1が8名、評定2が12名、評定3が13名、「かかわり」のスキルの指数は106となって いる。「配慮」より「かかわり」が優位であるタイプの児童は4名いる。相手への配慮が足りずに、 自己中心的な考え方で相手に接してしまい、トラブルが起きてしまうこともある。その際、周りの児 童が我慢をしているような状況も見られるため、ペアや小グループでの活動の機会を意図的に取り入 れ、人とかかわって活動する楽しさを味わわせていきたい。 長期目標(3学期末までの最終目標) 自分の良さや友だちの良さに気づき、自信をもって自分の考えを表現することの できる児童の育成をめざす。 ルールを守り、友だちや周りの人の気持ちを考えて行動できる児童の育成をめざ す。 短期目標(2学期末までの目標) 時間を意識して行動する、授業中の発言や話の聞き方などの基本的なルールを学 級に定着させることで、児童が安心して学級生活を送れるようにする。 (3)目標に向けての具体策(ソーシャルスキルトレーニングの実践) 回 数 1 実施日 プログラム名 選んだ理由(ターゲットスキルを含めて) 実施時の様子 実施後の様子 4月16日(木) ふわっと言葉 ちくっと言葉 人を元気にしたり、心が温かくなったりする言葉 と、人がいやな気持ちになる言葉について考える ため。 (自己表現・協調性) 「今のってちくっと言葉じゃない?」など、互い に声をかけ合いながら、人が嫌がるような言葉を 使わないようにしようという様子が見られた。 授業参観と重なったこともあり、児童は 緊張している様子だったが、相手の心を 温かくするような言葉を使っていこう という前向きな意見がたくさん出てい た。 2 5 月 2 7 日 (水) 相手の気持ちを 想像しよう - 17 - 自分の声のかけ方によって、相手の気持ちが変わ ることを考え、相手の気持ちを想像することの必 要性を感じるため。 (自己表現・他者理解) 3 4 5 6 7 8 どのような言葉をかけてあげれば、相手 を温かい気持ちにしてあげられるのか、 よく考えていた。はじめは、どう声をか ければよいか戸惑っている児童もいた が、グループで相談しながら活動できて いた。 7 月 6 日 みんなで決めた (月) ルールを守ろう クラスでどんな約束が必要なのか、一人 ひとりが真剣に考えていた。グループで 話し合う際も、司会が全員の意見を聞こ うと進めていた。 9 月 1 7 日 かたちをつくろう (木) どのような活動なのか理解するのに時 間のかかる児童もいたが、笑顔で活動に 取り組む児童が多く見られた。ルールを 守って活動に取り組めた。 1 0 月 2 2 日 イライラ虫を (木) 追い出そう どのようなストレスがあるのか、どのよ うにストレスに対して対処しているの かなど、なかなか自分の考えを発表する ことのできない児童も多かったが、友だ ちの発表を聞いて、様々な対処法がある ことに気づいていた。 1 1 月 1 2 日 しあわせ宅配便 (木) グループの友だち3人と秘密の友だち 1人に対して、うれしかったことやよい ところなどを書いて渡した。どの児童も 笑顔で取り組んでいて、友だちの書いて くれた紙を嬉しそうに読んでいる姿が 見られた。 1 月 2 1 日 動物マンションの (木) お引越し ルールを守り、自分のもっている情報を 言葉だけで伝えようとどの児童も頑張 っていた。自然に司会や記録を始める児 童が出てきたり、友だちの情報に自分の 情報をつなげて発表したりなど、スムー ズに活動に取り組めていた。 2 月 8 日 ムシムシ教室の (月) 席替え 前回の問題解決のプログラムより、進ん で活動に取り組める児童が増えていた。 - 18 - 声のかけ方次第で相手の気持ちが変わることを 理解することができ、相手のことを思いやって行 動しようとする姿が見られた。特に、困っている 友だちに進んで声をかけられる児童がプログラ ム直後は多く見られた。 ルールを守ることは、集団生活の中でお互いに安 全で安心に過ごすために必要であることを意識 させるため。(きまりの遵守) 「相手の話を聞く時は相手の目を見て話を聞く」 というめあてを全員で決めた。全員で決めたこと は守ろうという姿勢が見られた。 グループにおける自分の役割を意識して行動す るるため。みんなで活動する楽しさを味わうた め。(他者理解) 仲間と協力して行う楽しさを味わうことができ、 運動会に向けて友だちと協力して取り組んでい こうとする姿が見られた。グループでの活動に進 んで取り組む姿勢をもつことができていた。 ストレスについて理解を深めるとともに、適切な 対処法を身につける。(ストレス耐性) 学習の振り返りでは、「周りの人に自分のストレ スをぶつけてはいけないと思った。」 「○○さんの 対処法が私にもあっていそう。」などと、書かれ ていた。 自分の良さを示してもらい、自己肯定感を高める ため。 (自己肯定感) 学習の振り返りでは、「良いところがこんなにあ るとは思わなかった。」 「よく見てくれていてうれ しい」「自分と友だちの良いところをこれからも 見つけていきたい。」などの感想が多く書かれて いた。帰りの会での「今日のMVP」でも、友だ ちの頑張っていたところや良いところを発表し ようとする児童が増えた。 相手の話をしっかり聞き、協力して課題に取り組 むため。(問題解決) 「協力できた」 「みんな頑張っていた」 「もっとや りたい」などの振り返りが多かった。「1人では 全然わからなかったけど、みんなで力を合わせた ら、で決できてうれしかった。」などの意見もあ り、友だちとの活動に意欲的に取り組もうとする 姿が見られた。 相手の話をしっかり聞き、協力して課題に取り組 むため。(問題解決) 今まで以上に、いろいろな友だちと協力しようと する姿が見られるようになってきた。自分から積 9 また、前回のグループでうまく行ったこ となどを伝えながら協力する姿が見ら れた。 3月 3 日 自分を好きになろ (木) う 2分の1成人式に向けて、自分の良いと ころをまとめていたこともあり、スムー ズに活動に取り組むことができた。中に は自分の良いところをあまり書けない 児童もいたが、友だちから見つけてもら え、うれしそうにしていた。 (4)クラスの変容 極的に考えを発表できる児童も増えてきている ように感じた。 1年のまとめとして、自分を好きになって自己肯 定感を高め、自信をもって意見を言えるようにす るため(自己肯定感) 5年生に向けて、具体的にどんなことを頑張って いきたいか、具体的にイメージのできた児童が多 く、クラス全体でまとまることができた。 第2回結果(1月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 横型 侵害行為認知群 7人 斜め型 学級生活満足群 18人 人数 (6月比較-2人) (6月比較+4人) ) 33人 学級生活不満足群 非承認群 6人 2人 (6月比較-1人) (6月比較-1人) B 配慮すべき児童・生徒の変容 A:学級生活不満足群 → 学級生活不満足群 被侵害得点は21点から13点へと下 がっている。不快感や冷やかしなどを受け ていると感じる度合いが低くなったと考 えられる。休み時間も孤立せず、友だちと かかわっている事が多くなった。 B:学級生活不満足群 → 非承認群 被侵害得点は14点から6点へと下が り、承認得点が15点から18点へと上が った。発表の際も泣き出す事はなく、授業 中に発言することもできるようになって きた。友だち関係は広がってはいないが、 活動の中で、友だちとかかわることはでき るようになってきている。 A クラスの変容 侵害行為認知群、学級生活不満足群、非承認群の人数が減り、学級生活満足群が4名増え、55% となった。また、被侵害得点の減っている児童も見られる。特定の友だちだけでなく、他の友だち とも交流し、活動に取り組もうとする児童が増えてきていることで、学級全体として前向きに活動 に取り組めるようになってきている。また、互いの良さを認め合えるようになってきている。 - 19 - (5)ソーシャルスキル(クラス)の変容 第2回結果(1月実施) 良好な人間関係 18人 2人 1人 4人 消極的 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 0人 6人 1人 1人 評定2 て 評定2 て 0人 評定1 て 自己中心的 評定3 て 評定1 て 孤立 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の変容 評定3の児童が19名から24名に増え、評定1の児童が4名から1名に減少した。友だちの 気持ちを考える力や、友だちとの約束を守ろうとする力が育っていると考える。クラスレクの時間 でのトラブルも減った。しかし、限られたグループの中だけでスキルを発揮している児童もいるた め、クラス全体での活動の中で、ルールを徹底していくことで友人関係はより広がっていくのでは ないかと考える。 【かかわりのスキル】の変容 評定3の児童が13名から19名に増え、評定1の児童が8名から5名に減少した。ペア活動 や班活動を通して、仲の良い友だちに限らず、たくさんの友だちとかかわる楽しさを伝えてきた。 休み時間には男女関係なく大人数でサッカーをする姿なども見られ、積極的に友だちとかかわろう とすることができてきている。しかし、自分から声をかけるのが苦手な児童もいるため、様々な友 だちとかかわれる楽しさを感じられるプログラムを、さらに実践していく必要があると考える。 (6)成果と課題 成果 ・学級の実態に応じて適したプログラムを継続して行っていくことで、学級の実態 は変化していくと感じた。 ・学級集団アセスメント(hyper-QU)を活用することで、教師の見立てだけでなく、 データをもとに学級の様子を客観的に分析することができ、SSTPを計画的に 実践することができた。 ・何をねらってSSTを行うのかをしっかり考えることができ、効果的な活動にな るよう工夫することができた。それが児童の日常の様子にも表れてきた。 課題 ・SSTPを実践するだけではなく、日々の学級指導とつなげて学級に関わってい く必要があると感じた。 ・自己理解→他者理解→問題解決という流れで年間計画を立てたが、問題解決のプ ログラムを行っていく中で、自己や他者について理解することもあると感じた。 より早い段階で、問題解決のプログラムを行ってもよかったかもしれない。 - 20 - 3.中学校第1学年での実践 (1)クラスの実態 第1回結果(5月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 斜め型 人数 33人 侵害行為認知群 学級生活満足群 4人 17人 学級生活不満足群 非承認群 6人 6人 配慮すべき児童・生徒の様子 A: 学級生活不満足 群 学力が低く、授業の持ち物もそろいにく い。大事な手紙は、ファイルに入れて、き ちんと鞄に入れるまで見届ける必要があ る。イライラするとすぐに手を出し、トラ ブルを起こしやすい。 A クラスの実態 学級生活満足群に52%と約半数の生徒が属しているが、非承認群に近いところにいる生徒もい る。全体的に斜めに傾いており、ルールとリレーションの確立がともに低い学級集団とみられる。 男子生徒の中で、小さなトラブルが発生しており、男子のほとんどは、学級生活満足群に属してい ない。男子に注意してばかりで、なかなか集団の中で認めることが少なかった。4月の学級レクリ エーションでも、男女が共に活動し始めるのに時間がかかり、男子と女子でクラスの居心地の良さ がはっきり分かれている。 (2)ソーシャルスキル(クラス)の実態 第1回結果(5月実施) 良好な人間関係 10 人 3人 1 人 消極的 0人 5人 3人 5 人 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 4人 評定2 て 1 人 評定1 て 孤立 - 21 - 評定3 て 評定2 て 評定1 て 自己中心的 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の様子 教師の声かけがあると、係活動や当番の仕事に取り組むことができる。女子は女子同士だと活動し、 男子も男子同士だと活動するなど、メンバーによって取り組み具合が変わることがある。 【かかわりのスキル】の様子 学級会などクラス全体の中で発言する生徒は5人ぐらいである。友達同士や、担任と一対一のとき に、「実は・・・」と意見を発言することが多く、一体感が乏しい状態である。 長期目標(3学期末までの最終目標) 生徒たちのソーシャルスキルの定着は高いものの、これが発揮される範囲が仲の良い友人の間だ けに閉じているので、生徒たちのソーシャルスキルが発揮される範囲を、学級全体の生活や活動面 に広げていく。 短期目標(2学期末までの目標) 秋の行事を通して、互いに認め合う雰囲気をつくる。具体的には、練習のあとに、頑張ってくれ た生徒を集団の中で認め、励まし、行事は一部の得意な生徒のためではなく、みんなが一致するこ とでより深い満足感が得られることを感じさせたい。 (3)目標に向けての具体策(ソーシャルスキルトレーニングの実践) ソーシャルスキルトレーニングプログラム実践一覧表 時 間 1 実施日 実 プログラム名 施 時 の 様 子 9月3日(木) 実 MY 感情マップ 心の氷山 感情を表す言葉にたくさん触れることで、 改めて感情を考え直す良いきっかけになっ た。様々な感情を表す言葉を知ったあとで、 氷山の一角に取り組み、さらに理解を深め ることができた。 感情一つとっても、様々な背景があること を知り、感情コントロールのきっかけにな ることをねらいに、実施した。 (自己理解) 身近な場面設定を行うことで、生徒の 興味を引き出すことができた。 2 2月9日(火) 施 後 の 様 子 様々な感情の言葉を知り、その言葉がもつ ニュアンスを表にすることで、自分の気持 ちをよりわかりやすく表現できることをね らいに実施した。(自己理解) 読めない漢字や、意味の分からない 言葉があったときも、辞書をひきなが ら、積極的に取り組む生徒が多かった。 1 9月3日(木) 選んだ理由(ターゲットスキルを含めて) えっ?絵~っ? 怒りの感情でも、様々な感情の要素が隠れ ていることに気付くきっかけになった。 MY 感情マップの感情語リストを活用し、感 情語の理解を深めることができた。 生活班のメンバーで1つの絵を共有するこ とで、生活班のメンバーとコミュニケーシ ョンをとり、クラスのグループ化によって できた壁を取り除くことをねらいに実施し た。(他者理解) 一部、ルールが守られない班があったが、 「普段あまり話さない生徒と話せてよかっ 教師が注意深く指導することで、比較的 た」という意見が多く、クラスに和やかさ 安心してプログラムに取り組むことがで がでてきた。男女でコミュニケーションを きた。 とる姿も見受けられるようになった。 - 22 - 3 2月26日(金) かたちをつくろう 課題が難しすぎて諦めそうになるグル ープがあったが、教師の声かけでなんと か最後まで課題を完成させることがで きた。 4 3月10日(木) 新聞タワー 前回と比べ、とてもシンプルな課題だっ たので、どの班も意欲的に取り組むこと ができた。具体的なアイディアが出せな い生徒も、応援で盛り上げてくれた。 (4)クラスの変容 前回のプログラムを通して、クラスのコミ ュニケーションの輪が広がったので、さら に、クラスメイトを知るきっかけになるこ とをねらいに実施した。 (他者理解) 課題を見に行ってくれた生徒、のりづけを 頑張ってくれた生徒など、認め合う姿があ った。班のメンバーについて関心をもつ良 いきっかけになった。 シンプルな課題のプログラムを通して、生 活班内の交流を深め、よりよいコミュニケ ーションをとれるように土台を作る。 (他者理解) 片付けのときに、余った新聞を使って剣状 にし、友人を叩き合う姿が多くみられた。 後片付けに課題が残った。普段おとなしく 生活している生徒が活躍するような場面も 見られ、より生活班の仲が深まったように 思える。反面、プログラムに参加できなか った生徒もいるので、二極化が進んでしま ったようにも思える。 第2回結果(11月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 斜め型 侵害行為認知群 2人 斜め型 学級生活満足群 15 人 人数 (5月比較-2人) (5月比較-2人) ) 33人 学級生活不満足群 非承認群 9人 7人 (5月比較+3人) (5月比較+1人) 配慮すべき児童・生徒の変容 A:侵害行為認知 群 要支援 群 休み時間は寝て過ごすことが多く、特定の友 人がいない。クラスメイトからは、よくちょっ かいを出され、怒ると泣くことが多い。学習意 欲が低く、提出物も取り組めていない。係活動 や当番は責任をもって取り組んでいる。 A クラスの変容 5月とくらべ、中学校生活にも慣れてきて、緊張感がゆるみ、いじめやいたずらが増えた。人間 関係がグループ化し、孤独感を感じる生徒が出てきた。 - 23 - (5)ソーシャルスキル(クラス)の変容 第2回結果(1月実施) 良好な人間関係 11 人 4 人 3人 1 人 消極的 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的な マナーやルールについて 0人 7 人 0 人 1人 評定2 て 評定2 て 4 人 評定1 て 自己中心的 評定3 て 評定1 て 孤立 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の変容 評定2の生徒が3人減り、評定3の生徒が2人増えた。行事を通して、様々な生徒が活躍し、 責任感が芽生えてきたと考えられる。しかし、配慮のスキルが高い生徒同士、配慮のスキルが低 い生徒同士でグループ化してしまい、なかなか交流する機会が持てていない。 【かかわりのスキル】の変容 評定1の生徒が1人減った。しかし、行事などでもうまく溶け込めずに、単独行動をする生徒 がいる。SSTPを通して、普段コミュニケーションをとらない生徒ともコミュニケーションを とり、過度なグループ化を防ぐ必要がある。 (6)成果と課題 成果 ・学級集団アセスメント(hyper-QU)により、クラスの現状を数字を通して把握することがで きた。また、担任と教科担当の情報交換を通して、さらに分析を深めることができ、SST Pをアレンジするときに有力なデータになった。 ・SSTPのねらいを明確にすることで、教師にとっても生徒にとっても、安心してプログラ ムに取り組むことができ、多くの生徒がふりかえりをきちんと行うことができた。また、日 常生活の中でフィードバックを行うときも、生徒の抵抗感をできるだけ取り除いて、指導を 行うことができた。 ・SSTPを通して、グループ化しつつあった集団をほぐすことができた。普段あまり話さな い生徒と話す姿も見られるようになり、休み時間で生徒の笑顔が増え雰囲気が和やかになっ た。 課題 ・「学校がつまらない」 「授業がつまらない」ことを理由に、欠席しがちな生徒や、授業を邪魔 する生徒がでてきた。SSTP実践の時間を計画的に確保し、「協力するって楽しい」「クラ スが楽しい」と感じられる体験を積み上げることができれば、もう少し現状は良くなってい たかもしれない。 ・小グループ内で喧嘩やトラブルが発生するなど、人との関わりのスキルにおいて、課題が見 られた。 - 24 - 4.中学校第2学年での実践 (1)クラスの実態 第1回結果(5月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 斜め型 侵害行為認知群 学級生活満足群 5人 13 人 学級生活不満足群 非承認群 8 人 8人 人数 34 人 配慮すべき児童・生徒の様子 A: 学級生活不満足 群 集団内での自己表現の方法に悩みを抱 えている。正義感は強く、公徳心も高い。 非建設的な言動を行う生徒達に対する不 満感はとても強い。クラスの方向性を決め る、中間層の生徒。自分の世界観を集団の 中でも出そうとするため、合わない生徒か ら目を付けられやすい。 A クラスの実態 クラスに対し非建設的な一部の生徒が、他生徒に対し暴力的な表現をしてしまう傾向にあ り、強い影響力を持っている。そのため、クラスの方向性を決めるであろう、中間層の生徒が 我慢を強いられる場面が多い。また、非建設的な生徒の影響の陰で、要領よく力を抜こうとす る生徒も多く見られる。一方で、非常に幼く、どのような生徒同士でも受け入れる傾向が見ら れる。この傾向からか、すぐに「友達」になるが、人間関係が成り立っていない状態での友達 なので、友達になっても嫌な部分があると、すぐに離れたり、仲間外れにしたりしてしまうこ とが多い。逆に、どの生徒もクラスに対する帰属意識は高く、それぞれが楽しく生活していき たいが、どのようにしたらよいかが分からず、各々で探っているような状態である。 (2)ソーシャルスキル(クラス)の実態 第1回結果(5月実施) 良好な人間関係 7 人 9 人 3 人 消極的 1 人 5 人 1人 5 人 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 3 人 評定2 て 2人 評定1 て 孤立 - 25 - 評定3 て 評定2 て 評定1 て 自己中心的 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の様子 全国平均よりも高い値で、「配慮」側に偏っている。生徒たちのソーシャルスキルの発揮される範 囲が、仲の良い友人の間だけに限られている。色々な活動や授業の中で、小グループでの認め合い活 動をこまめに取り入れるなどし、色々な級友とのかかわりを広げていくことが必要である。 【かかわりのスキル】の様子 「かかわり」に偏った生徒を見ると、幼く、自分が「今」行いたいことを「今」やらないと落ち着 けない生徒が多い。相手のことを思いやる気持ちを育てるため、「相手の話は最後まで聞く」や「相 手の立場や状況を考える」といったことを様々な活動の中で徹底させることで、育てていく必要があ る。 長期目標(3学期末までの最終目標) ・協力しながら、他を考え、クラスの一員としてどうすべきなのかを判断できるように する。 短期目標(2学期末までの目標) ・相手を思いやり、協力しようとする心を育てる。 ・中間層の生徒の建設的な気持ちを伸長する。 (3)目標に向けての具体策(ソーシャルスキルトレーニングの実践) 時 間 実施日 プログラム名 実 施 時 の 様 子 1 7月6日(月) 感情マップ 心の氷山 選んだ理由(ターゲットスキルを含めて) 実 施 後 の 様 子 さまざまな感情を表す言葉を再確認したうえで、 感情だけに左右されずに、理性的に見つめ直す 力を身につけさせたい。(自己理解) 座った状態での活動に加え、自身 ほとんどの生徒が作業することができていたが、 に向き合う形の内容だったため、 通り一辺倒の答えが多く、本当の意味で向き合う 「面倒」という気持ちが一部生徒 ことはできていない印象があった。 から観察された。 2 9月 28 日(月) 1 列並びゲーム 言葉を使わずにコミュニケーションを図る。 仲間探しゲーム また、SSTに対する「面倒」というイメージを改善 させたい。(自己表現・他者理解) 机や椅子を後ろに下げるところか 実施後の感想でも「言葉でのコミュニケーション ら、ほとんどの生徒が笑顔で楽し の大切さに気付いた。」「楽しく行うことができ みにしているようだった。SST た。」という感想を多く見ることができ、ターゲ 実施時にも生徒から「もう一回や ットスキルとSSTPの活動の壁の両方に効果を ってみたい」等の声も上がるほど 感じることができた。 熱中して行うことができた。 3 10 月 16 日(金)新聞タワー 自分の考えを積極的に発言したり、人の考えを 受け入れたりしながら、協力する楽しさを体験 する。(他者理解) - 26 - 前回行ったSSTの印象もあり、 普段クラスに対して非建設的な言動をする生徒が 授業の前から「今日はどのような 思わぬ発想をし、一位になる等、活躍することが ことをやるの」と聞かれるほど、 できた。このことにより、非建設的な生徒が中間 生徒からの期待感は大きかった。 層の生徒も彼らの活躍を素直に認めることができ 実施している最中は、気の合う仲 た。授業後の感想も「良く話し合いができ、皆で 間で作業をさせたこともあり、皆 協力しながら問題解決することができた」という で「協力」しながら活動できてい 感想を多く見ることができた。 た。 4 10 月 23 日(金)かたちをつくろう グループにおける自分の役割を意識して行動し、 皆で活動する楽しさを味わう。(他者理解) 動きの多いSSTPから、徐々に SSTをゲーム感覚で取り組むようになっており、 自席でのSSTPへの移行段階と 「協力」する意識を持って取り組むことができて して行った。生活班でよく話し合 いた。また、コミュニケーションを取ることの難 いながら落ち着いて活動すること しさを再確認するような感想を多く見ることがで ができていた。 きた。 5 11 月 24 日(火)宝島を脱出せよ 自ら考え、自らの意見を集団内で発言する。また、 他の意見を聴き、グループで一つの答えを導き 出す方法を学び、「協力」するとはどのようなこ とを指すのかを考える。(問題解決) 少ないヒントをグループで持ち寄 「協力すること」とはどのようなことなのかを具 り、自身の持つ情報を相手に伝え 体的に考えてみるという目標を、授業の最初に生 ながら難題を解決しようとする姿 徒に伝えたことで、生徒が明確な目標を持って取 を見ることができた。 り組むことができていた。 (4)クラスの変容 第2回結果(11月実施) *1 点に複数人重なる場合がある。 分布図 斜め型 拡散型 侵害行為認知群 5人 学級生活満足群 13人 人数 (6月比較0人) (6月比較0人) 35 人 学級生活不満足群 非承認群 9人 8人 (6月比較+1人) (6月比較0人) A 配慮すべき児童・生徒の変容 A:学級生活不満足群 学級生活満足群 自らの独特な世界観を、集団の中で抑えら れるようになった。また、他の生徒達に対し ても必要以上に自己主張することが無くな った。自身の学習への意欲も上がり、周囲よ りも自身の成長へ目が向くようになった。 →:担任が中間層(建設的でクラスの方向 性を決めるであろう)と判断した生徒 の動向 - 27 - クラスの変容 建設的な言動をする生徒達が増えてきた一方で、非建設的な言動をする生徒達がクラ スから浮いてきた印象がある。また、建設的な生徒達は非建設的な生徒の言動に対して 不満はあるものの、見切りをつけている雰囲気になっている。 また、建設的で中間層と位置付けていた生徒達のほとんどは、満足群へとシフトして きている。このことからも、非建設的な生徒達を無理に変えようとするのではなく、自 分自身がクラスのためにできることを一つずつ行うことが、クラス全体への協力に繋が ることを理解してきていると思われる。 (5)ソーシャルスキル(クラス)の変容 第2回結果(1月実施) 良好な人間関係 9人 7人 1 人 4人 消極的 評定3 て 配慮のスキル 対人関係における基本的 なマナーやルールについ て 0 人 5人 評定2 て 評定3 て 5人 3人 評定2 て 2 人 評定1 て 自己中心的 評定1 て 孤立 かかわりのスキル 人とかかわるきっかけや 関係の維持・感情の交流の 形成について 【配慮のスキル】の変容 1回目から比べ、「良好な人間関係」の方へシフトしている傾向を見ることができ た。「かかわり」とのバランスも全国の平均とほぼ同じだが、消極的な生徒が多いこ とがわかる。また、クラスの女子の殆どが中心から左側の「配慮」に入っている。一 部の非建設的な生徒が学級全体にマイナスの影響を与えている現状がある。それらの 生徒達が、「自己中心的」に偏っていることからも、建設的に取り組む生徒達の意欲 にブレーキをかけていると考えられる。 【かかわりのスキル】の変容 1回目から比べ、「自己中心的」と「孤立」寄りの生徒が増えた(評定2)。ここ に所属している生徒の様子には、故意に自己を主張しようとする傾向がある。中間層 の生徒が、周囲に流されずに自身の生活を整えようとする意識が高くなってきたため、 度が過ぎた行動を取ったときには、周囲の生徒から浮いてしまう場面が増えてきてい る。 - 28 - (6)成果と課題 成果 ・ターゲットにしていた、中間層の生徒のほとんどが学校生活満足群へと移動して いた。SSTだけではなく、普段の声かけなどの複合的な効果ではあると思われ るが、SSTを行うことで、一部生徒の普段見ることができない意外な一面を見 ることができたり、活躍の場を用意できたりしていたため、SSTが今回の結果 に大きく影響していると思われる。 ・SSTはアプローチの仕方次第で、複数の目標達成することも可能であると思われ る。 課題 ・学級の実態の見極めが甘く、最初に用意したSSTPが学級の実態に合わず、あま り効果的な指導にならなかった。最初の時点で、もう少し丁寧に準備をするべきだ った。 ・SSTPを行うだけではなく、その後の振り返りの時間の確保が十分ではないこと があった。 ・SSTで得られた成果を、学級経営の中でも機会があるたびに言葉で伝えるなどし て、生徒の意識を高めていくことで、より高い効果を得ることができるのではない かと考える。 - 29 -
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