平成27年度 道徳教育研究構想

平成 27 年度
井泉小学校の道徳教育
―研究の構想と指針 ―
羽生市立井泉小学校
平成27年度
ー
井泉小学校の道徳教育
研究の構想と指針
ー
羽生市立井泉小学校
1.学校課題と本年度の研究主題
平成27年度は、文部科学省道徳教育の抜本的改善・
充実に係る支援事業の委嘱を受け、平成27年度
埼玉
県教育委員会委嘱道徳教育研究モデル校に指定された。
平成28年2月23日(火)には、東京学芸大学大学院
教授で、前文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調
査官の永田繁雄
先生をお招きして研究発表会を行うこ
とになっている。
21世紀を担う子どもたちに生きる力を育む教育を推進していくことが本校の学校課題
である。
生きる力の基盤となる、確かな学力、豊かな心、健康と体力を3本の矢として、バ
ランス良く育んでいきたいが、本校児童の実態から特に豊かな心に重点を置き、教育活
動を充実させていく必要性を感じる。とりわけ、基本的な生活習慣の育成、学習規律や
生活規律などの規範意識の高揚、自己統制力や人間関係を築く力の育成が喫緊の課題で
ある。家庭や地域社会との連携を深め、日常の生徒指導や多様な体験活動などを充実さ
せ、道徳の時間を要とした道徳教育の推進を教育活動全体を通して推進していく。
学 校 課 題
21世紀を担う子どもたちに生きる力を育む教育の推進
本年度の研究主題
心豊かにかかわり、自他共によりよく生きようとする児童の育成
ー自己の生き方についての考えを深める道徳の時間の充実ー
=道徳科への移行をふまえて=
◇主題設定の理由
教育は人格の完成を目指して行われるものであるが、人格の基盤となるのが道徳性
であり、その道徳性を育てることが道徳教育の使命である。子どもたちを取り巻く環境
は大きく変化し、情報化、少子高齢化、価値観の多様化等社会の急激な変化が、児童の
心の成長に影を落とし、心の活力を阻害していく現象が懸念されている。
心と体の調和の取れた人間の育成に社会全体で取り組むことや、いじめ問題への対応
をはじめ人間性に深く迫る教育を行うことが教育再生実行会議から提言され、「道徳教
育の充実に関する懇談会」が設置された。更に道徳教育専門部会で10回にわたる専門
的な検討も行われてきた。これらの審議の成果をとりまとめ、「道徳教育に係る教育課
程の改善等について」中央教育審議会の答申が平成26年10月21日に出された。
この答申により、道徳教育の要である道徳の時間が「特別の教科
道徳」(仮題)と
して新たに教育課程に位置づける事が適当と示されるに至った。この報告を受け、平成
27年3月27日に「特別の教科
道徳」の新しい学習指導要領が告示されたところで
ある。これまでの「道徳の時間」は、「道徳科」となり、新たな枠組みとして教育課程
に反映され、 検定教科書を用いて、平成30年4月1日から実施されることになった。
平成27年4月1日~平成30年3月31日までは、移行期間となり、学校教育法施
行規則の一部を改正する省令により、現行の小学校学習指導要領の各規定にかかわらず、
その全部又は一部について改正後の各規定によることができるようになった。
こうした動向を踏まえると共に本校児童の実態と課題、保護者や地域の要望を受け止
め、本校では、昨年度に引き続き、道徳教育の充実を図っていくことを学校課題として
いく。道徳教育を通じて育成される道徳性は、「豊かな心」はもちろん、「確かな学力」
や「健やかな体」の基盤ともなり、児童一人一人の「生きる力」を根本で支えるもので
あると考えたからである。
本校児童の実態から、引き続き、基本的な生活習慣、規範意識、自己統制力、人間関
係を築く力をより高めるなど心の教育を充実させていく必要性を強く感じている。
児童の道徳性は、自然や人間社会における様々なかかわりを通して高揚していく。こ
のかかわりを児童自らが、主体的に受け止め、自他共によりよく生きたいという思いや
願いを膨らませながら、自らの人間性を高めていくことが求められている。また、学校
における道徳教育は児童一人一人が将来に対する夢や希望、自らの人生を切り拓いてい
く力を育む源としてとらえ、充実させていく必要がある。
そのためには、児童が自らの心を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己のよさ
や課題をとらえながら、自己の生き方についての考えを深めていく道徳教育を充実させ
ていくことが大切であると考え、本主題を設定した。
なお、本校では、昨年度までの研究実績を基に、移行期間を踏まえ、その一部実施に
先進的に取り組んでいきたいと考える。
副題「自己の生き方についての考えを深める道徳の時間の充実=道徳科への移行を踏
まえて=」について
道徳の時間は、児童一人一人が、一定の道徳的価値の含まれるねらいとのかかわり
において自己を見つめ、道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを発達段
階に即して深め、内面的資質として道徳的実践力を主体的に身につけていく時間であ
る。また、新設された「道徳科」は、よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うた
め、道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、
自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲
と態度を育てることを目標としている。自己の生き方についての考えを深めることにつ
いては、共通の文言となっている。
現行の学習指導要領解説では、
道徳的価値の自覚を深めるためには、
①道徳的価値について理解すること
ア
道徳的価値は大切であること(価値理解)
イ
道徳的価値は大切であるが、その実現は容易でないこと(人間理解)
ウ
道徳的価値に関しては、多様な見方、考え方、感じ方があること(他者理解)
②自分とのかかわりで道徳的価値がとらえられること
道徳的価値についての理解(価値理解、人間理解、他者理解)を自分のかかわり
で行い、自己理解を深める。
③道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われること
自己や社会の未来に夢や希望が持てるようにする。
の3つの事柄を押さえることが必要であるとされている。
自己の生き方についての考えを深めることについては、
①児童がよりよくなろうとする自分を感じ、自己を肯定的に受け止めていくこと。
②他者とのかかわりや身近な集団の中で自分の特徴などを知り、伸ばしたい自己を深
く見つめられるようにすること。
③現在の生活及び将来の生き方の課題を考え、それを自己の生き方として実現してい
こうとする思いや願いを深めていくこと。
の3つが例示されている。
道徳的価値の自覚を深める過程で同時に自己の生き方についての考えを深めていくこ
とを強く意識した指導が求められている。いずれにしても、この過程においては、児童
一人一人の内面において、自己への問いかけが活発に行われなければ道徳的実践力へ
とつながらない。自己の生き方についての考えを深めるためには、自己への問いかけが、
子どもの内面でなされ、よりよく生きることを志向した自己内対話ができなければなら
ないとものと考える。そこで、副題として「自己の生き方についての考えを深める道徳
の時間の充実」に重点を置き道徳の時間の指導法の改善に着手することにした。
本校としては、道徳的価値の理解を基に、自己内対話の力を高め、自己の生き方につ
いての考えを深めていくために、以下の5つの内面的な力を育てていきたい。
①
価値の把握力
資料や友達との話合い、練り合いを通して人間として大切
な生き方を自分事としてとらえていく
②
現状分析力
把握した価値を尺度に自分の現状をありのままに探る力
主題に関わる事実、経験、体験を想起
主題に関わる自己の見方、考え方、感じ方。振る舞い方
を問い直す
③
自己像設定力
自己洞察力
自己省察力を伴う
今、自分はこの現状であるが、どういう自分を求めている
のか、どう在りたい、生きたいのか
かくありたい
かくなりたい
理想的な自己像への憧れ
かく生きたい
④
課題発見力
そういう人間、そういう生き方をしていくために、自分に
はどういうよさがあり、課題があるのか
⑤
自己統制力
その課題に向け自分自身にどう動機付け、方向付けていく
のか
セルフコントロールを発揮
なお、道徳授業の展開に当たっては、道徳科が求める方向性を視野に、
①道徳的価値の基本的な理解をベースとしていくこと
②児童が多面的、多角的に考えていくプロセスを重視していくこと
③道徳的判断力の育成をこれまで以上に重視していく
ことを視座に授業改善を図っていくために、次の観点から学習過程の見直しを図って
いきたい。
◇教師の発問を待って反応を繰り返す受け身の授業から抜け出そう。
◇あらすじを追うだけの問いかけにならないようにしよう。
◇主人公の気持ちが中心の共感スタイルオンリーの展開から脱皮しよう。
◇ぶつ切りの心情追求から主題性(テーマ性)を分母に置いた展開を志向しよう。
◇発表羅列型の授業から練り合い、磨き合いを重視した相互啓発の学習にしよう。
◇問題解決型の学習を行ったり討論を深めたりするなど指導方法の工夫を図ろう。
◇道徳的価値を自覚するプロセスを重視し、自己を見つめる尺度を明確にしよう。
◇主人公の生き方に学び、自己への問いかけ(自己内対話)を深める学びの過程を重
視しよう。
◇学年段階に即して、多様で柔軟な指導の充実を図っていこう。
◇道徳の時間を孤立化させることなく、他の教育活動や家庭・地域社会との関連を積
極的に図っていこう。
◇ユニバーサルデザインの考えを採り入れ、全員が考える、わかる、参加・活動でき
るようにしよう。
◇授業に子どもの参画や提案を採り入れよう。
2.研究の方向性と研究計画
(1)研究の方向性
1.生きて働く道徳の指導計画の改善・充実
・全体計画における内容と時期の明記(別葉の作成と活用)
・本校ならではの年間指導計画の作成
・道徳教育の学級における指導計画の作成と私のクラスの道徳教育の実践
2.自己の生き方についての考えを深める道徳の時間の指導の充実
3.要としての道徳の時間と教育活動全体で行う道徳教育との関連
各教科等の指導案や学校行事等の活動計画にも道徳との関連を明記
「私たちの道徳」の活用促進
「ハートタイム」の設置
道徳推進の色が漂う教室経営
(第1週、3週の朝の活動
学校環境整備
15分)
(「私たちの道徳」を読んだり、書き込んだりする時間)
4.かかわりを豊かにする体験活動の充実(本物にふれ、その道のプロに学ぶ)
5.家庭や地域社会との連携を深める道徳教育の推進
「彩の国の道徳」家庭版の活用促進
道徳の時間
地域公開講座の開設
道徳の一斉授業参観と懇談会
井泉地区教育懇談会での道徳授業公開と心の課題をめぐる協議
(2)研究計画
研究推進の計画については研究主任が別に定める。
3.研究組織
校
長
教
頭
研究推進委員会
課題研究主任
課題研究副主任
道徳主任・副主任
低中高ブロック長
専
門
部
会
授業研究部会
調査・啓発部会
学
低学年部会
年
部
会
中学年部会
高学年部会
3.道徳教育における校長の方針
ふるさと「羽生」の文化や伝統、先人、偉人を誇りに、夢や希望を持ち、未来を切り
拓く豊かな心を育てるために、道徳の時間を要としながら、家庭や地域社会との連携を
深め、教育活動全体を通して、以下のことに重点を置き、井泉小の道徳教育を推進して
いく。
A
めあてを持ち、自分を磨いていく子ども
B
さわやかな人間関係を築いていく子ども
C
規律をもって、学級や学校の発展に尽くす子ども
D
かけがえのない命を大切にできる子ども
4.道徳教育重点目標
校長の方針と本校児童の実態・課題、教師や保護者の願いを受け止め、井泉小学校と
しての道徳教育重点内容項目を次のように設定した。
全学年共通
基本的な生活習慣
生命の尊さ
礼儀
親切,思いやり
規則の尊重
1.2年生
節度・節制
3.4年生
希望と勇気,努力と強い意志
規則の尊重
5.6年生
善悪の判断
自然愛護
友情,信頼
伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度
希望と勇気,努力と強い意志
よりよい学校生活,集団生活の充実
勤労,公共の精神
5.道徳教育の指導計画の改善と推進
上記の校長の方針の下、本校の道徳教育は、学校の教育活動全体で取り組まれ、個々
の教師の自覚と責任ある実践に託されて実現していくものと考える。したがって、道徳
の指導計画の作成・改善・実施にあたっては、道徳教育推進教師がリーダーシップを発
揮し、全教職員が参画する協力体制を整備して推進していく必要がある。
(1)道徳教育の全体計画の改善
道徳教育の全体計画は、学校における道徳教育の基本的な方針を示すと共に、学
校の教育活動を通して、道徳教育の目標を達成するための方策を総合的に示した教
育計画である。本校としては、次の7点を視野に改善を図っていく。
①ミッション性を高める
④課題性を持たせる
校長の道徳教育の方針の具現化に努める
本校としての道徳教育上の課題を浮き彫りにし、重
点目標を設定し、その解決と充実を図る。
⑤機能性を高める
内容や時期も示し、実際に生きて働くようにPDC
Aサイクルで推進する。
④参画性を高める
全職員が各校務分掌の立場から積極的に作成に関与
していく。
⑤活用性を高める
各学年、各学級及び教科等の経営の視点から絶えず
よりどころとして使っていく。学級における指導計
画に反映させる。
⑥特色性を持たせる
地域に根ざし、ウオータープランに基づき本校なら
ではの特色を醸し出す。
⑦公開性を打ち出す
保護者や地域の方々にもよりわかりやすい表現で提
示し、家庭・地域社会との連携が深まるものにする。
ホームページ等にも示す。
なお、年間を通して活用しやすいように、各学年段階で各教科等との関連が見える
全体計画の別葉を作成していく。
(2)道徳の時間の年間指導計画の改善
年間指導計画は、道徳の時間の指導が、道徳教育の全体計画に基づき、児童の発達
段階に即して計画的、発展的に行われるように組織された全学年にわたる年間の指導
計画である。
本校では、道徳の副読本を個人持ちで購入してる。この副読本をメインの教材とし
て活用していくが、更に文部科学省の道徳資料、埼玉県教育委員会で作成した彩の国
の道徳、震災関連道徳資料、羽生市教育委員会作成の道徳資料、本校で開発した羽生
市の偉人や文化に関連した資料を適切に加えて年間指導計画の改善を図っていく。こ
の計画に基づき、意図的・計画的に道徳の時間を推進していく。なお、実施をしなが
ら、各学年、学級においてより効果のある展開や差し替えた方がいい資料等も朱書き
でメモし、次年度の改善に生かしていくものとする。尚、本年度は試行的に新設され
た内容項目の教材づくりにもチャレンジし、平成30年度からの道徳科への備えとし
ていく。
(3)学級における指導計画
学級における指導計画は、全体計画を児童や学級の実態に応じて具体化するもので
あり、学級において教師や児童の特性を生かした道徳教育を展開する指針となるもの
である。上記、全体計画及び年間指導計画の充実は、正に個々の学級にあり、各教師
の実践によって実現されるものといえる。更に個々の教師の個性も発揮しながら特色
ある「学級における指導計画」の作成に着手していく。本校の形式については、道徳
教育推進教師より提示される。絶えず形成的に評価しながら各担任は「私のクラスの
道徳教育」を推進し、毎学期末に自己評価、学年間評価を行い、校長に提出するもの
とする。担任の道徳教育の方針とこの計画については保護者にも提示し、懇談会及び
学年、学級だよりで進捗状況を示し、意見を戴いていく。
6.道徳の時間の指導を充実させるための基本方針
本校の道徳の時間の実施率は全学級100%の実施率(H27)であり、授業時数の
確保は十分になされている。今後とも、量の問題でなく質の問題を重視していく必要が
ある。子どもたちのニーズに応え、自己の生き方に反映していける、魅力に溢れ、待ち
遠しくなる道徳の時間の改善へと着手していくことが必要である。ここでは、現行の学
習指導要領が重視している事項を踏まえると共に平成27年3月27日に告示された新
しい学習指導要領の「道徳科」を志向しながら、道徳の時間の質的な充実を図っていく
ための8つの方針を設定し推進していきたい。
まずは、授業者である教師が本時でねらう道徳的価値についてどのように考えるのか、
そのねらいに即しての子どもの実態や課題をどう受け止めたか、その上でどういう意図
で資料を活用し学習過程を構想していくかという明確なビジョンを持って臨んでいくこ
とが大前提である。
(1)資料のジャンルを多様に広げ、活用の工夫を図る。
道徳の時間では、物語、随筆、寓話、詩などの読み物資料が一般的に多く活用されて
いる。特に、今回例示された、先人の伝記、自然、伝統や文化、スポーツなどを題材と
し、児童が感動を覚えるような資料の活用が強く求められているところである。副読本
を中心とした読み物資料はもちろんのこと、写真、マンガ、CDロム、ドキュメンタリ
ーなどの映像ソフト等多様なジャンルから資料を選択、開発し、バラエティに富んだ年
間指導計画の作成が望まれる。文部科学省で開発した資料、彩の国の道徳資料や震災関
連資料、羽生市及び本校で作成・開発した郷土資料を井泉小学校「道徳の時間の年間指
導計画」に位置づけ、意図的・計画的に道徳の時間を実施していきたい。
また、本年度は、新学習指導要領への移行期間を踏まえ、その一部実施に先進的に取
り組んでいくに当たって、新しく加わった内容項目についての資料を自作したり、その
内容項目で授業ができそうな題材を見付けたりする必要がある。学年単位で 1 つずつ新
たな内容項目についての資料を作成して活用し、新学習指導要領による学習を展開して
いく。それに伴い、年間指導計画も新学習指導要領に基づき書き換えを行う。
なお、中心となる資料も授業者の指導観に基づき、どのような意図を持って活用して
いくのかという構想によって学習過程は異なってくる。主題や児童の実態、資料の特性
を踏まえながら範例的な活用、批判的な活用、共感的な活用、感動的な活用など多様な
活用の仕方も視野に入れていきたい。
新内容項目についての資料作りの割り振り(案)
学年
1
新内容項目
【個性の伸長】自分の特徴に気付くこと
2
【国際理解,国際親善】他国の人々や文化に親しむこと
3
【公正,公平,社会正義】誰に対しても分け隔てをせず,公正,公平な態度
で接すること
4
【相互理解,寛容】自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,相手のこと
を理解し,自分と異なる意見も大切にすること
5
【よりよく生きる喜び】よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解
し,人間として生きる喜びを感じること
6
【よりよく生きる喜び】よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解
し,人間として生きる喜びを感じること
(2)指導体制に厚みを持たせる
嘗ては、原則として学級担任が行うものとすると言われていた道徳の時間も、今や校
長や教頭などが参加したり、他の教師との協力的な指導で学習を進めたり、保護者、地
域の方々、あるいは、専門家の方をゲストとして参加してもらうなど主題や資料の内容
に即して厚みをもった授業展開が求められるようになってきた。こうした指導体制の拡
充をデザインし、充実した成果を上げていくために道徳教育推進教師を中心とした組織
的な体制づくりを確立し、指導の拡充を図っていく。
なお、26 年度は、以下のような校長・教頭の参加、ゲストティーチャーをお呼びし
ての授業を行った。
学年
1年
授業内容
1-(1)節度、節制
ゲストティチャー
保護者の方
(「しまのおさるたち」)
2年
4-(1)公徳心、規則の尊重
給食補助員さん
(「オレンジ色のおいしい木のみ」)
2年
4-(2)勤労、奉仕
栄養教諭
(「みんなのニュースがかり」)
3年
4-(5)郷土愛
公民館長さん
(「心の花たば」)
(川俣先生)
4-(4)愛校心
4年
4年
(「ヒローズだいこ」)
1-(2)勤勉・努力
校長先生
教頭先生
(「グレンよ、走れ」)
5年
4-(2)勤労・社会奉仕
(「小さな手から」)
資料の執筆者
(藤澤美智子先生)
本年度は、授業参観での道徳授業公開の際に保護者に参加していただくなど、積極的
に保護者や地域の方に参加や協力を得て、家庭や地域社会との共通理解を深め、相互の
連携を図っていきたい。また、どの学級も年1回は、校長や教頭、学年の教員が参加し、
授業を充実させていきたい。
(3)子どもの主体的な参加を促す
学年段階が上がるにつれ、児童の道徳の時間の受け止めがよくなくなる傾向がある。
資料のストーリーを優先し、主人公の心情ばかりを聞いたり、単に教師の発問、そして
それに対する子どもの反応という形で進められていく羅列型、受け身型の授業、資料を
学ぶ授業では、満足が得られなくなる。高学年では、時には、自由と自分勝手とはどう
違うのかこの資料で考えていこうというような問題解決的な学習で資料に対峙したり、
学習テーマを設定して追求していくなど、学習への参画意識を高めていくことがあって
もよい。問題意識を高めるような範読を工夫したり、子どもの資料の受け止めを十分に
予想した上で授業構想をしていく工夫がなどが求められてくる。また、指導過程も全学
年一律なものでなく、発達段階を踏まえて構想していくことも大切であると考える。
子どもたちには、全員参加を図るためにも、道徳の時間のオリエンテーションを行い、
①自分の考えを持つこと、②その考えをみんなに語ること、③友達の考えにしっかりと
耳を傾けること、④自分の考えと友達の考えを比べ、再度自分の考え方を吟味すること
(比較照合)という学び方を身につけさせたい。そして、毎回の授業の最後には、そう
した学び方ができたかを自己評価させながら、さらに学びを深めていけるようにする。
子どもが道徳の時間に主体的に参加できたかどうかを授業者は、次の4つの観点から
実施した授業について振り返り、更なる改善を図っていく。
①子どもが、本時のねらいとする道徳的価値について、大切だと感じられたか。ま
た、新たに気づいたことがあったか(価値理解)
②子どもが自分の人間的な弱さや至らなさに気づき、克服、改善しようとする思い
が高まったか(人間理解)
③子どもが友達の考えに耳を傾け、自分の考えに生かすことができたか(他者理解)
④子どもが道徳的価値にかかわる自分の現状を受け止め、自尊感情を高めたり、新
たな課題に気づくことができたか(自己理解)
(4)多様で柔軟な指導方法の充実を図る。
道徳の時間の指導法が画一化されている、公開研究会で各学級を回っても金太郎飴の
ように指導法が学年を問わず同一な感があるという指摘を耳にすることも多い。ある意
味、それだけ浸透してきたという成果とも言えるが、今後は、道徳離れを激減させ、実
効性のあるものにするためにも指導法のパターン化、形骸化からの脱皮を図る工夫が必
要である。
道徳の時間に生かす多様な指導方法については、現行の学習指導要領の解説に、次の
7つの工夫が記されている。
①資料を提示する工夫、②発問の工夫、③話合いの工夫、④書く活動の工夫。⑤
表現活動の工夫、⑥板書を生かす工夫。⑦説話の工夫
このことを踏まえ、ねらい、児童の実態、資料や学習指導過程などの応じて、最も適
切な指導方法を選択し、工夫を凝らしていきたい。
なお、中央教育審議会報告「道徳に係る教育課程の改善等について」
(H26,10.
21)の中でも、道徳の時間において、「教員や他の児童生徒との対話や討論なども行
いつつ、内省し、熟慮し、自らの考えを深めていくプロセスが極めて重要である」こと
や、「指導のねらいに即し、適切と考えられる場合には、『特別の教科
道徳』におい
て、道徳的習慣や道徳的行為に関する指導、問題解決的な学習や体験的な学習、役割演
技やコミュニケーションに係る具体的な動作や所作のあり方等に関する学習などの指導
を、発達の段階を踏まえつつ取り入れることも重要である」と提言され、道徳科として
の新しい学習指導要領にも反映されている。他にも、グループ学習やロールプレイ、パ
ネルディスカッションの手法を取り入れたり、学び手である子どもを中心にした課題追
求型、問題解決型の学習を志向したり、展開の一部で、グループエンカウンターやセル
フエステューム、スキル学習の手法を取り入れ
たりする工夫も考えられる。
本校でも一昨年度から昨年度にかけて、二重自我法の役割演技で2つの対立する主人
公の自然性(人間的な弱さ)と良心の間で揺れ動く自己内対話を表現させる手法も工夫
されてきた。
本年度は、発達の段階に即して、児童自らが考え、理解し、主体的に学習に取り組み
自己の生き方をより深く考えることができるように、テーマ性のある発問、いわゆる「テ
ーマ発問」についても研究を深めていきたい。
その他にも、道徳の時間の本質を外さない中で様々な手法にチャレンジしていく創造
性、柔軟さも志向したいところである。
(5)学習の場や時間の設定を工夫する
四角四面の教室の中で、担任教師が前面に立ち、列ごとに並んだ机を前に向けて、授
業を受けるというスタイルが未だに多いのも現状である。円形、コの字型にするなど
座席の形態を工夫することはもちろん、主題によっては、教室から飛び出し、オープン
スペースや 図書室で行ったり、パソコンなどの情報通信を活用したり、校庭、体育館や
自然環境を生かした場で行ったり、公民館や役所などの公共施設、地場産業の場、堀越
館などの郷土の史跡に出向いてゲストを交えて授業を行うなど学習の場を拓いていく工
夫も考えたい。また、指導する時間についても柔軟な発想を考えたい。1時間1主題
が全てではない。年間指導計画の改善も志向しながら、特に、高学年では、例えば、命
に関する授業を3時間、シリーズ的につなげたり、丸ごと一人の先人の生き方を第一次
は「思いやり」の視点から、第二次は、「人類愛」の視点から切り込むなど多時間扱い
の構想も志向していきたいところである。
(6)学習集団を多様に生かす
道徳授業は学級担任を中心に当該学級内で行われることが一般的であるが、一斉指導
型にとらわれず、ペアや少人数の話合いを採り入れたり、一部、パネルディスカッショ
ンの形態をとったり、主題によっては、学年内でテーマ別のコースを設定し、少人数指
導的に二人の教師で担当したり、学級の枠を越え、教師の協力的指導により学習集団を
多様に構成していく工夫も考えられる。例えば、子どもたちのニーズや課題に応じ、学
級を解体し2学級の児童を3コースに構成し、3人の教師で分担して指導にあたる。こ
の場合、同じ主題であっても3コースが異なる資料を選択して臨むなどの方法も想定で
きる。他にも、前例にとらわれず、様々な方法に前向きにチャレンジしていきたい。
(7)他の教育活動や家庭・地域社会との風通しをよくする。
道徳の時間の役割は教育活動全体で行う道徳教育を補充・深化・統合する要の時間
としての位置づけにある。したがって、これらの教育活動と切り離して、かかわりを
持たせず、孤立的な授業が行われることがあってはならない。取り上げる主題に対して
他の教育活動ではどのような道徳教育が行われているのか洗い出した上で、それらを導
入や終末で活用したり、体験や学習経験に基づいて自己をみつめるなど本時との関連を
図っていくことが必要である。
特に、総合的な学習の時間、特別活動については共に自 己の生き方についての考え
を深める視点から、子どもの意識の連続を図り、相乗効果を高めていくなど、積極的に
関連を深めていく必要がある。そのために、全体計画の別葉に総合的な学習の時間や特
別活動、とりわけ学級活動(2)日常の生活や学習への適応及び健康安全との関連を詳
しく書き込み、計画的に関連を図れるようにする。また、各学校行事の計画書に、その
行事で育むことのできる道徳的価値を明記し、全教員の共通理解の基に道徳教育が行え
るようにする。
主題によって、家庭での取り組みや体験、子供会や地域行事への参加などの経験や体
験を生かしていくなどの関連も視野に置き、時には、協力を要請するなどの工夫を凝ら
し、授業を構想していきたい。
ー公開授業をとおして家庭や地域社会との連携を深めるー
道徳教育の充実のために、保護者や地域の人々の積極的な参加や協力を得たりするな
ど、家庭や地域社会との共通理解を深め、相互の連携を深めていくことについては、従
来から望まれているところである。
新しい学習指導要領では、「道徳科の授業を公開したり、授業の実施や地域の教材開
発や活用などに家庭や地域の人々、各分野の専門家等の積極的な参加や協力を得たりす
るなど、家庭や地域社会との共通理解を深め、相互の連携を図ること」と記されている。
自校の道徳教育の取り組みを積極的にアピールしたり、道徳教育を巡って懇談の場を持
つなどの工夫もしながら、地域ぐるみで道徳教育を推進する体制にまで高めていきたい
ところである。
(8)「私たちの道徳」との積極的関連を図る
「私たちの道徳」は、児童が道徳的価値について自ら考え、実際に行動できるように
なることをねらいとして作成された道徳教育用教材である。活用場面は、①道
徳の
時間での活用、②学校の教育活動全体を通じての活用、③家庭や地域での活用、④児
童による自主的な活用があげられる。今回の改訂では、「読み物部分」と「書き込み
部分」で構成され、道徳の時間の1単位時間でこれを併せて活用したり、他の教材と併
せて活用することもできるようになった。また、従来のように導入、展開、終末の各段
階の中でその一部を活用していくことも可能である。年間指導計画に位置づけた計画を
基に授業で積極的な関連を図っていきたい。
なお、前年同様、第1週と第3週の朝の活動の時間に「私たちの道徳」を読んだり、
書き込んだりする時間「ハートタイム」を設け、児童による自主的な活用を推進してい
くことにする。また、家族が書き込んだりする欄も多く設定されているので最低月に
1回、月末に全校統一で家庭に返し、各家庭での活用を促す働きかけを強化したい。そ
のために、懇談会等で、「私たちの道徳」についての説明と活用のお願いをしていく。
付記
新しい学習指導要領「道徳科」の解説書が提示された段階で、本構想については更に
見直し、加除修正を図っていくものとする。