第5章 妊娠期・育児期の ワークライフバランス 後藤 憲子 1 妊娠期の女性と仕事 第 4 章までは妊娠・出産や子育ての実態をみてきたが、ここでは子育てをし ながら共働きをしている夫婦に焦点をあて、生活の実態や意識を分析していき たい。第 1 節では、妊娠期の女性と仕事についてさまざまな角度からみていく。 ● ○ 仕事を持っている人は30.4%。妊娠 ● ○ 職場での状況 を機にやめた人は47.4% 妊娠後期まで仕事を続けている女性(221 今回の調査では、妊娠後期( 8 ∼10か月)の 人)は、妊娠にまつわるトラブルをどれくら 人を対象にしているが、調査時点で「仕事を い体験しているのだろうか。「妊娠中の体調 持っている」と答えた妻は全体の30.4%(221 不良が原因で、仕事を休んだり、遅刻・早退 人)だった(図 5 − 1 − 1 )。 したりしたことがありますか」という質問に 一方、「妊娠を機に仕事をやめた」妻は約 70.6%が「はい」と答えている(図 5 − 1 − 5 ) 。 半数の47.4%(345人)だった(図 5 − 1 − 2 ) 。 また、「つわりや切迫流産、切迫早産などで、 仕事をやめた理由(複数回答)としては、「妊 一時期仕事を休んだことがある」人は34.8% 娠・出産にまつわる健康上の理由から」がも にのぼる。仕事を休んだことのある人で、具 っとも多く、45.5%の人が挙げていた。つい 体的に休んだ日数を回答した70人の休職日数 で「子育てに専念したかったから」37.1%、 (土日を除く)を平均すると20.5日だった。 「仕事上の問題」32.5%、「自分の問題」19.1% と続く(図 5 − 1 − 3 )。 休職理由として多かったのは、切迫流産41.6 %(休んだことのある77人のうちの割合、複 数回答を含む、以下同)、つわり27.3%、切 ● ○ 仕事をやめた理由 迫早産20.8%、その他の体調不良・病気など 妊娠を機に全体の約半数が仕事をやめ、そ 10.4%、不正出血5.2%、その他6.0%だった。 の理由として、「妊娠・出産にまつわる健康 そのような状況の中、職場はどのように対 処しているのだろうか。「妊娠中の体調不良 上の理由から」を挙げる人が約半数いた。 「仕事をやめたことについての気持ち」を に関して、職場や上司・同僚は仕事上の配慮 きいたのが図 5 − 1 − 4 である。 「退職を望み、 をしてくれますか」という質問には89.6%が 今は納得」が61.7%ともっとも多く、自分の 「はい」と答えている。しかし、辛い状況を 選択を肯定的に受け止めている人が多いこと 回避する方法として、「妊娠後、勤務時間の がわかる。しかし、「できれば続けたかった 短縮やフレックス勤務」を活用していた人は ので、今は後悔」という人も3.5%いる。「で 37.6%と、決して高い数値ではなかった。 きれば続けたかったが、今は納得」28.7%の 今回の調査では、「妊娠や出産に関するこ ように、結果的に今の状態を肯定的に受け止 とで、困っていることや、行政や職場、地域 めているものの、仕事を続けることを希望し 社会に期待すること、あったらよいと思って ていた人が30%近く存在することは見逃せな いるサービスなど、ご自由にお書きください」 いことだろう。 という自由記述の項目を設けている。記述の 中には「妊娠初期のつわりが重く、仕事との 両立が難しかった。初期のころは周囲からの ― 106 ― 図 5 − 1 − 1 仕事の有無 (妊娠期妻) 無答不明 0.1 図 5 − 1 − 2 妊娠を機に仕事をやめたか (妊娠期妻) 無答不明 3.7 (%) (%) (%) 持っている 30.4 持っていない 69.5 いいえ はい 48.9 47.4 図 5 − 1 − 3 仕事をやめた理由 (妊娠期妻) (%) 50 45.5 37.1 40 32.5 30 19.1 20 10 9.0 8.1 の子 問ど 題も の 預 け 先 サ ポ ー ト の 問 題 10.4 0 理つ妊 由わ娠 かる・ ら健出 康産 上に のま た子 か育 って たに か専 ら念 し 仕 事 上 の 問 題 自 分 の 問 題 そ の 他 注 1)複数回答。 注 2)今回の妊娠を機に仕事をやめたと回答した人のみ分析(サンプル数 345人)。 図 5 − 1 − 4 仕事をやめたことについての気持ち (妊娠期妻) 退職を望んだが、今は後悔 できれば続けたかった ので、今は後悔 退職を望み、今は納得 できれば続けたかったが、 今は納得 その他 無答不明 (%) 61.7 1.4 注 1)今回の妊娠を機に仕事をやめたと回答した人のみ分析(サンプル数 345人)。 注 2)項目は一部、略記した。詳細は「調査票見本」(p.146)参照のこと。 28.7 2.3 2.3 3.5 図 5 − 1 − 5 職場での状況 (妊娠期妻) (%) 100 89.6 80 70.6 60 37.6 34.8 40 20 0 た り し た こ と が あ る だ り 、 遅 刻 ・ 早 退 し 原 因 で 、 仕 事 を 休 ん 妊 娠 中 の 体 調 不 良 が を し て く れ る 同 僚 は 仕 事 上 の 配 慮 関妊 と時切 し娠 が期迫 て中 あ仕早 、 の る事産 職 体 をな 場調 休ど や不 んで 上良 だ、 司に こ一 ・ 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 221人)。 注 2) 「はい」の回答率。 ― 107 ― つ わ り や 切 迫 流 産 、 て い た ︶ 勤 務 を し て い る ︵ し 短 縮 や 、 フ レ ッ ク ス 妊 娠 後 、 勤 務 時 間 の 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 理解も得られず、無理して働いていた」「妊 の身体への負担は大きなものになるだろう。 娠初期のつわりの大変さを職場の人に理解さ そのような長時間勤務をしている人が少なか れなかったのが辛かったです。確かに病気で らず存在することは問題と言えよう。 はないのですが、気持ちの問題だけで治るも 通勤時間については、「20分以内」がもっ のではないので、もっと理解してもらえたら とも多く44.0%(92人)だった。「20分以内」 良いなぁ…と思います」というものがあった。 についでは、「40分以内」が27.8%(58人)、 外見はまだ妊娠していることがわからない初 期のほうが職場での理解を得にくい。こうし たことも妊娠を機に仕事をやめる理由の背景 「 1 時間以内」が18.2%(38人)であった。1 時間以上かけて通勤している人も約 1 割いた (図 5 − 1 − 8 )。 にあるのかもしれない。 また、休日の仕事については、「土曜日」 に仕事をすることのある割合は52.5%、「日 ● ○ 就業形態と勤務の実態 曜日」31.5%、「祝日」37.4%だった(図 5 − 妊娠後期の現在、仕事を持っていると答え 1 − 9 )。 た221人(この調査の妊娠期妻の約 3 割)の ● ○ 仕事の有無と妊娠中の生活の違い 仕事の実態をさらに詳しくみてみよう。 就業形態は、「常勤職」が133人(60.7%) 妊娠期の女性の生活は仕事の有無でどのよ ともっとも多く、つぎに「パートタイム・ア うに違っているのだろうか。「現在、どのよ ルバイト」21人(9.6%)、「自営業・家族従 うな生活をしているか」をきいたところ、 4 業」20人(9.1%)が続く。また、すでに休職 項目について仕事の有無により差異がみられ に入っている人も21人(9.6%)いた(図 5 − た。 1 − 6 )。 差異の大きい順にみていくと、「育児書を 正社員で勤務する場合、就業規則で定めら 読むなど、子育て情報を集めている」ことが れた 1 日の労働時間は短くて 7 時間、最大で 「ある」(「しばしばある」+「時々ある」、以 も 8 時間が一般的である。実働時間について 下同)は、仕事有49.8%、仕事無62.9%で、 は「 7 時間以内」が50人(実働時間回答者207 仕事有の人のほうが13.1ポイント低かった。 人のうちの24.2%、以下同)、「 8 時間以内」 同様に「妊婦向けのCDを聴いたり、アロマ が85人(41.0%)で、あわせると全体の65.2% セラピーをするなど、リラックスを心がけて を占めていた。「 7 時間以内」と回答した人 いる」ことが「ある」は、仕事有18.1%、仕 はパートタイム・アルバイト、派遣・契約、 事無30.5%で、12.4ポイントの差があり、「胎 自営業・家族従業者などが中心だが、常勤職 教をしている」ことが「ある」は、仕事有12.2 も13人含まれ、そのうち 5 人は時短利用者 %、仕事無24.1%で、11.9ポイントの差だっ ( 6 時間以内の勤務時間の人)と思われる。残 た。「妊婦向けの運動(マタニティスイミン 業については、就業時間を 8 時間としたとき、 グなど)をしている」ことが「ある」は仕事 1 時間以内の残業がある実働時間「 9 時間以 有14.9%、仕事無20.6%で、その他の 3 項目 内」の人が多く、41人(19.8%)だった。残業 ほど差異が開いていないが、5.7ポイントの 2 時間以内の「10時間以内」は15人(7.2%) 、 差があった。 仕事を持っている人は勤務時間に加え家事 3 時間以内の「11時間以内」は 8 人(3.9%) で、「12時間以内」と「12時間超」をあわせる 時間もあるので、自由に使える時間が少ない。 と 8 人(3.9%)だった(図 5 − 1 − 7 )。仮に就 そのため、これらのことを実施するかどうか 業時間が 9:00∼18:00だった場合、「11時 に差が出てくるものと思われる。また、妊娠 間以内」仕事をする人の終業時刻は20∼21時 に関する情報を得るために利用したメディア になる。それから帰宅するとなると、妊娠中 にも差異がみられた。「テレビ・ラジオ」を利 ― 108 ― 用したことが「ある」は、仕事有50.2%、仕 サービス」の利用は仕事有13.1%、仕事無 事無57.1%で、仕事を持っている人のほうが 20.0%で、仕事を持っている人のほうが6.9ポ 6.9ポイント低い。また、「携帯サイト・配信 イント低かった。 図 5 − 1 − 6 就業形態 (妊娠期妻) パートタイム・アルバイト 常勤職 派遣・契約(嘱託)社員 自営業・ 家族従業 内職・在宅ワーク 休職中 その他 学生 無答不明 (%) 60.7 5.0 9.6 9.1 9.6 1.8 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 219人)。 注 2) 「無職」を除く。 1.4 0.5 2.3 図 5 − 1 − 7 1 日の実働時間 (妊娠期妻) 0 20 40 60 7 時間以内 13 37 8 時間以内 59 26 9 時間以内 34 7 (41) 10時間以内 11 4 (15) 11時間以内 5 3(8) 12時間以内 6 0(6) 12時間超 (人) 100 80 (50) (85) 常勤者 常勤者以外 1(2) 1 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人で、1 日の実働時間を回答した人のみ分析(サンプル数 207人)。 注 2) ( )内は常勤者と常勤者以外の合計値。 注 3) 「無職」を除く。 図 5 − 1 − 8 片道通勤時間 (妊娠期妻) 0 20 40 60 20分以内 44.0 40分以内 27.8 1 時間以内 18.2 1 時間20分以内 6.7 1 時間40分以内 2.4 2 時間以内 1.0 (%) 100 80 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人で、片道通勤時間を回答した人のみ分析(サンプル数 209人)。 注 2) 「無職」を除く。 図 5 − 1 − 9 休日の仕事 (妊娠期妻) ある ない 無答不明 (%) 土曜日 52.5 44.3 3.2 日曜日 31.5 64.4 4.1 祝 日 37.4 58.4 4.1 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 219人)。 注 2) 「無職」を除く。 ― 109 ― 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 2 育児期の女性と仕事 子どもを産むと、女性の就業率は妊娠期よりもさらに下がり、約 2 割だった。 子どもが病気になったときは妻が仕事を休むことが多く、夫と比較すると妻の 精神的・肉体的負担は大きい。 ● ○ 仕事を持っている人は22.8%。出産 を機にやめた人は50.8% の中では「パートタイム・アルバイト」の割 合が増えることがわかる。 実働時間については、「 7 時間以内」が181 0 歳、 1 歳、 2 歳の子どもを育てている母 親のうち、仕事を持っているのは22.8%だっ 人(実働時間回答者402人のうちの45.0%、 た(図 5 − 2 − 1 )。子どもが 0 歳では13.2%、 以下同) 、 「 8 時間以内」が147人(36.6%)で、 1 歳で27.9%、 2 歳で34.6%に増加する。 あわせると全体の81.6%を占めていた。妊娠 一方、「出産を機に仕事をやめたことがあ 期の場合、65.2%だったので、育児期のほう る」母親は約半数の50.8%だった(この数値 が16.4ポイント多いが、これはパートタイ には、妊娠を機にやめた人も含まれると思わ ム・アルバイトなど、短時間で働く人の割合 れる)(図 5 − 2 − 2 )。仕事をやめた理由 が増えるためだろう。また、この中には常勤 (複数回答)としては、「子育てに専念したか 職で時短を利用していると思われる人( 6 時 ったから」がもっとも多く54.0%、ついで 間以内の勤務時間の人)も19人含まれていた。 「妊娠・出産にまつわる健康上の理由から」 残業については、就業時間を 8 時間としたと 32.2%、「仕事上の問題」26.7%、「自分の問 き、 1 時間以内の残業がある実働時間「 9 時 題」18.1%と続く(図 5 − 2 − 3 )。 間以内」が38人(9.5%)で、妊娠期と比較す 「仕事をやめたことについての気持ち」を ると10.3ポイント低かった(図 5 − 2 − 6 )。全 きいたのが図 5 − 2 − 4 である。数値は妊娠 体的に妊娠期と比較すると、育児期妻の長時 期妻の回答と同様の傾向を示していた。 間勤務は非常に少なくなっている。保育所な どへ子どもを迎えに行く時間的制約があるた ● ○ 就業形態と勤務の実態 めと思われる。 通勤時間については、「20分以内」がもっ 現在仕事を持っていると答えた育児期の 女性(この調査の育児期妻の 2 割強)の仕事 とも多く55.4%、ついで「40分以内」26.9%、 「 1 時間以内」が12.7%であった。 1 時間以上 と生活についてみてみよう。 就業形態は、「常勤職」が208人(49.2%)、 「パートタイム・アルバイト」121人(28.6%) 、 かけて通勤している人は約 5 %だった(図 5 − 2 − 7 )。 「自営業・家族従業」29人(6.9%)が続く(図 5 − 2 − 5 )。妊娠期に仕事を持っている人は、 また、休日の仕事については、「土曜日」 に仕事をすることのある割合は60.5%、「日 「常勤職」が60.7%なのに対し、11.5ポイント 曜日」32.4%、「祝日」36.6%で、妊娠期に仕 少ない。「パートタイム・アルバイト」は妊 事を持っている人と比較すると土曜日の出勤 娠期9.6%に対し28.6%で、19.0ポイント多い が8.0ポイント多かったが、日曜・祝日につ ことがわかる。出産後、仕事を持っている人 いては大きな違いはなかった(図 5 − 2 − 8 ) 。 ― 110 ― ● ○ 子どもが病気のときの対応 父親の場合、子どもの病気が理由では職場 共働き夫婦の場合、子どもが病気になった を休みにくい、つまり周囲の理解がない、と ときの対応をどうするかは、大きな問題だ。 いうこともあるだろう。第 3 節で、最近 1 か 子どもの病気などが原因で会社を休んだり、 月間に職場で経験したこととして「子どもの 遅刻・早退した頻度をきくと、妻の場合「月 病気などで急用が入ったとき、すぐに迎えに に 1 ∼ 2 回程度ある」がもっとも多く27.4%、 いけないことが多い」ということを挙げてい ついで「 2 ∼ 3 か月に 1 回程度ある」24.5% る父親も21.5%いるので(p.116 図 5 − 3 − となっていた(図 5 − 2 − 9 ) 。 2 )、父親自身も現状でよいと思っているわ 夫は、「月に 1 ∼ 2 回程度ある」2.8%、「 2 けではないようだ。しかし、母親のほうが子 ∼ 3 か月に 1 回程度ある」9.3%で、50.4%は どもの病気で休む割合が高く、それが仕事を 「まったくない」と答えている。子どもが病 継続するうえで大きな精神的・肉体的負担に 気のときに仕事を休むのは母親が圧倒的に多 なっているのではないだろうか。 い。 図 5 − 2 − 1 仕事の有無 (育児期妻) 図 5 − 2 − 2 出産を機に仕事をやめた ことがあるか(育児期妻) 無答不明 2.4 無答不明 1.6 (%) (%) 持っている 22.8 持っていない いいえ はい 47.6 50.8 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 74.8 図 5 − 2 − 3 仕事をやめた理由 (育児期妻) (%) 60 54.0 50 40 32.2 30 26.7 18.1 20 17.6 12.2 10 0 た子 か育 って たに か専 ら念 し 理つ妊 由わ娠 かる・ ら健出 康産 上に のま 仕 事 上 の 問 題 自 分 の 問 題 の子 問ど 題も の 預 け 先 注 1)複数回答。 注 2)出産を機に仕事をやめたことがあると回答した人のみ分析(サンプル数 945人)。 ― 111 ― サ ポ ー ト の 問 題 9.5 そ の 他 図 5 − 2 − 4 仕事をやめたことについての気持ち (育児期妻) 退職を望んだが、今は後悔 できれば続けたかった ので、今は後悔 退職を望み、今は納得 できれば続けたかっ たが、今は納得 その他 無答不明 (%) 5.2 64.5 24.0 0.9 2.9 2.6 注 1)出産を機に仕事をやめたことがあると回答した人のみ分析(サンプル数 945人)。 注 2)項目は一部、略記した。詳細は「調査票見本」(p.159)参照のこと。 図 5 − 2 − 5 就業形態 (育児期妻) 内職・在宅ワーク パートタイム・ 自営業・ アルバイト 家族従業 派遣・契約(嘱託)社員 常勤職 学生 休職中 その他 無答不明 (%) 49.2 5.7 28.6 6.9 3.1 0.2 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 433人)。 注 2) 「無職」を除く。 1.9 2.4 2.1 図 5 − 2 − 6 1 日の実働時間 (育児期妻) 0 7 時間以内 8 時間以内 9 時間以内 10時間以内 11時間以内 12時間以内 12時間超 40 80 120 (181) 38 143 95 52 34 (人) 200 160 (147) 4(38) 20 1(21) 4 0(4) 常勤者 7 2(9) 常勤者以外 1(2) 1 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人で、1 日の実働時間を回答した人のみ分析(サンプル数 402人)。 注 2) ( )内は常勤者と常勤者以外の合計値。 注 3) 「無職」を除く。 ― 112 ― 図 5 − 2 − 7 片道通勤時間 (育児期妻) 0 20 40 60 20分以内 55.4 40分以内 26.9 (%) 100 80 12.7 1 時間以内 2.2 1 時間20分以内 1 時間40分以内 1.2 2 時間以内 1.0 2 時間超 0.5 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人で、片道通勤時間を回答した人のみ分析(サンプル数 401 人)。 注 2) 「無職」を除く。 図 5 − 2 − 8 休日の仕事 (育児期妻) ある ない 無答不明 (%) 土曜日 60.5 36.2 3.3 日曜日 32.4 62.6 5.0 祝 日 36.6 57.7 5.7 注 1)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 423人)。 注 2) 「無職」を除く。 図 5 − 2 − 9 子どもの病気などによる欠勤、遅刻・早退 (育児期妻・夫) 毎週ある 月に 1 ∼ 2 回 程度ある 2 ∼ 3 か月に 1 回程度ある 半年に 1 回 ほとんど 程度ある ない まったくない 無答不明 (%) 育児期妻 27.4 24.5 9.7 16.3 17.0 3.8 (424人) 1.4 育児期夫 (1300人) 9.3 11.8 24.1 50.4 1.6 2.8 0.1 注)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 ― 113 ― 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 3 職場ストレスと ワークライフバランス 妊娠期の女性の場合、通勤に時間・体力をとられることが職場ストレスの上位 に挙げられていた。仕事と家庭生活のバランス満足度については、妊娠期・育 児期ともに妻よりも夫のほうが不満を持つ人が多かった。 ● ○ 最近 1 か月の間に仕事や職場で経験した こと と続き、 「通勤に時間や体力をとられる」16.1 %は 5 番目に挙げられている。このことから この調査では、妊娠・出産・子育てを経験 する夫婦がワークライフバランスを保つうえ も、妊娠期妻にとって通勤は大きなストレス 要因であることがわかる。 でどのような課題を抱えているかを明らかに 育児期の夫婦の場合、妻の第 1 位は「仕事 するため、いくつかの問いを設けた。回答者 が忙しすぎるので、子どもと過ごす時間が少 は「仕事を持っている人」なので、夫のサン ないと感じている」24.5%だが、第 2 位の プル数と比較して妻のサンプル数が少なくな 「仕事と家事・育児の両立が大変で体を壊し たことがある」22.6%は深刻な事態と言えよ っている。 「最近 1 か月の間に仕事や職場で経験した う(図 5 − 3 − 2 )。同じ項目について、夫は こと」という設問では、仕事と生活を両立さ わずか2.6%にすぎない。家事・育児の負担 せるうえで何がストレスの上位に挙げられる が体調に影響するほど一方的に働く母親の肩 のかをきいている(複数回答)。まず妊娠期 にのしかかっていることが表れている。つい の夫婦からみてみよう。妊娠期妻の場合、 で第 3 位の「通勤に時間や体力をとられる」 「通勤に時間や体力をとられる」がもっとも 19.3%は妊娠期妻とも共通している。 多く、「あてはまる」と答えた人が33.9%と 夫の第 1 位は「仕事が忙しすぎるので、子 なっている(図 5 − 3 − 1 )。実際にこの33.9% どもと過ごす時間が少ないと感じている」が の人の片道通勤時間をみると、「20分以内」 43.9%と、特に高く、妻と比較しても19.4ポ は7.0%と少なく、「40分以内」33.8%、「 1 時 イント多かった。「休日・休暇がとれない」 間以内」36.6%、「 1 時間以上」22.5%で、全 25.3%、「子どもの病気などで急用が入った 体数値(p.109 図 5 − 1 − 8 参照)よりも通勤 とき、すぐに迎えにいけないことが多い」21.5 時間が長い傾向があった。妊娠期妻の「妊娠 %と、上位 3 位には、父親として家族に十分 や出産に関することで、困っていることや、 にかかわれないジレンマが挙げられていた。 行政や職場、地域社会に期待すること、あっ たらよいと思っているサービス」についての ● ○ 仕事と家庭生活のバランス満足度 自由記述をみると、「妊娠初期の通勤ラッシ 図 5 − 3 − 3 は、仕事と家庭生活のバラン ュは本当に辛かった」「通勤に車で50分かか ス満足度についてきいたものである。「不満」 り、つわりの時期辛かった」など、通勤の辛 さを訴えるものがあった。 (「 不 満 」 + 「 や や 不 満 」) は 妊 娠 期 夫 で 44.2%、育児期夫47.3%で、どちらも妻より 一方、妊娠期夫は「休日・休暇がとれない」 数値が高くなっている。妻の場合、妊娠期妻 27.5%、「自分の裁量で仕事を進めることが は「不満」が31.2%なのに対し、育児期妻 できない」20.2%、「上司とあわない」19.6% 39.4%と、8.2ポイントの差が出ている。子ど ― 114 ― もが生まれると仕事に加え、家事・育児の多 然の結果だが、夫の側にも仕事優先の今の生 くを担う妻の負担が大きくなるためだろう。 活に不満を持つ人が 4 割以上いることに注目 しておきたい。 「仕事」と「生活(家事)」で成り立ってい た共働き夫婦に「育児」という第三の柱が加 なお、妻の就業形態別にみたのが図 5 − わることで、当然のことだが、ワークライフ 3 − 4 である。勤務時間に柔軟性のない「常 バランスが難しくなることが見て取れる。妻 勤職」の妻の「不満」が他よりも高くなって の「不満」が育児期になると上がることは当 いる。 図 5 − 3 − 1 最近 1 か月の間に仕事や職場で経験したこと (妊娠期妻・夫) (%) 50 〈妊娠期妻・221人〉 40 33.9 30 20 10.0 10 8.6 6.8 4.5 4.1 3.6 3.6 3.2 0.9 0.5 0.5 0.5 上 司 と あ わ な い きを自 な 休 な進分 い 日 いめの 休 る裁 暇 こ量 が とで と が仕 れ で事 ・ を通 と勤 らに れ時 る間 や 体 力 く部 い下 かや な同 い僚 と う ま (%) 50 に自 評分 価の さ能 れ力 なが い正 当 事 業 が 不 振 で あ る が家 な庭 いの 職事 場情 でに あ理 る解 あ職 る場 に 男 女 差 別 が 重昇 く進 なな っど たで 責 任 が る職 場 に い じ め が あ 行会 わ社 れで てリ いス るト ラ が 制年 度俸 が制 導や 入目 さ標 れ管 た理 さ会 れ社 たが 合 併 3.7 3.2 2.6 2.5 1.4 制年 度俸 が制 導や 入目 さ標 れ管 た理 あ職 る場 に 男 女 差 別 が る職 場 に い じ め が あ 行会 わ社 れで てリ いス るト ラ が さ会 れ社 たが 合 併 ・ 1.4 0 吸 収 〈妊娠期夫・570 人〉 40 30 27.5 20.2 20 19.6 17.4 16.1 14.7 9.8 10 9.6 6.3 0 ・ 上 司 と あ わ な い に自 評分 価の さ能 れ力 なが い正 当 を通 と勤 らに れ時 る間 や 体 力 事 業 が 不 振 で あ る が家 な庭 いの 職事 場情 でに あ理 る解 く部 い下 かや な同 い僚 と う ま 注 1)複数回答。 注 2)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 ― 115 ― 重昇 く進 なな っど たで 責 任 が ・ な休 きを自 い日 な進分 いめの 休 る裁 暇 こ量 が とで と が仕 れ で事 吸 収 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 図 5 − 3 − 2 最近 1 か月の間に仕事や職場で経験したこと (育児期妻・夫) (%) 50 〈育児期妻・424人〉 40 30 24.5 22.6 19.3 18.6 20 12.0 12.0 10 10.1 8.3 7.1 6.4 4.5 3.5 3.3 2.6 1.9 っ昇 た進 な ど で 責 任 が 重 く な 職 場 に い じ め が あ る 2.6 2.4 0.9 0.2 導年 入俸 さ制 れや た目 標 管 理 制 度 が 会 社 が 合 併 ・ 吸 収 さ れ た て会 い社 るで リ ス ト ラ が 行 わ れ 2.4 2.3 1.7 職 場 に い じ め が あ る 職 場 に 男 女 差 別 が あ る 会 社 が 合 併 0 変 で 体 を 壊 し た こ と が あ る 仕 れ 通 い入子 休 事 る 勤 けっど 日 と に なたも 家 時 いとの 休 事 間 こき病 暇 ・ 育 や と、気 が 児 体 がすな と の 力 多ぐど れ 両 を いにで な 立 急 い と 迎 が え用 ら にが 大 ・ な子仕 いど事 ともが 感と忙 じ過し てごす いすぎ る時る 間の がで 少、 上 司 と あ わ な い る自 こ分 との が裁 で量 きで な仕 い事 を 進 め 職家 場庭 での あ事 る情 に 理 解 が な い さ自 な部 れ分 い下 なの や い能 同 力 僚 が と 正 う 当 ま に く 評 い 価 か 事 業 が 不 振 で あ る 職 場 に 男 女 差 別 が あ る (%) 〈育児期夫・1300人〉 50 43.9 40 30 25.3 21.5 20.5 19.0 19.0 20 15.9 14.7 10.8 10.4 10.2 10 6.2 0 上 司 と あ わ な い さ自 れ分 なの い能 力 が 正 当 に 評 価 る自 こ分 との が裁 で量 きで な仕 い事 を 進 め 事 業 が 不 振 で あ る 職家 な部 っ昇 導年 変 仕 て会 場庭 い下 た進 入俸 で 事 い社 での や な さ制 体 と るで あ事 同 ど れや を 家 リ 事 る情 僚 で た目 壊 ス し・ に と 責 標 た育 ト 理 う 任 管 こ児 ラ 解 ま が 理 との が 両 が く 重 制 が立 行 な い く 度 あが わ い か な が る大 れ 注 1)複数回答。 注 2)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 ― 116 ― ・ 休 い入子 れ 通 日 けっど る 勤 なたも に 休 いとの 時 暇 こき病 間 が と、気 や と がすな 体 れ 多ぐど 力 な いにで を 迎急 い え用 と にが ら ・ な子仕 いど事 ともが 感と忙 じ過し てごす いすぎ る時る 間の がで 少、 吸 収 さ れ た 図 5 − 3 − 3 仕事と家庭生活のバランス満足度 〈妊娠期妻・育児期妻〉 無答不明 満足 やや満足 やや不満 不満 (%) 妊娠期妻 18.1 46.6 27.6 4.1 (221人) 3.6 育児期妻 (424人) 15.6 40.1 31.4 8.0 5.0 〈妊娠期夫・育児期夫〉 無答不明 満足 やや満足 やや不満 不満 (%) 妊娠期夫 17.0 37.7 31.9 12.3 1.1 (570人) 育児期夫 11.0 39.3 36.2 11.1 2.4 (1300人) 注)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 図 5 − 3 − 4 仕事と家庭生活のバランス満足度(育児期妻、就業形態別) 満足 やや満足 無答不明 不満 やや不満 (%) 自営業・家族従業、内職・ 在宅ワーク(42人) 31.0 45.2 21.4 0.0 2.4 派遣・契約(嘱託)社員、 21.4 42.8 30.3 4.1 1.4 パートタイム・アルバイト (145人) 常勤職 (208人) 7.7 38.5 36.1 12.5 5.3 注) 「学生」 「休職中」「その他」を除き、現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析(サンプル数 395 人)。 ― 117 ― 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 4 妻の仕事の有無と 親世代との交流 育児期の共働き夫婦は、妻の両親または夫の両親と「同居・二世帯住宅・同じ 敷地内」に住む割合が、そうでない夫婦よりも多かった。また、仕事を持つ母 親の子どもは祖父母と会う頻度が高かった。 ● ○ 仕事を持つ育児期妻は、夫または自分 の両親と近居している たものである。仕事を持っている妻の子ども が、自分の両親と会う頻度は「ほぼ毎日」 第 1 節から第 3 節で、妊娠期・育児期の仕 「ほぼ毎週」をあわせると、59.4%を占めて 事を持つ夫婦の実態をみてきた。仕事を持ち いた。それに対して、仕事を持っていない妻 ながら家庭生活を運営していくのは、苦労も の子どもは50.6%で、仕事を持っている妻の 多い。妻が仕事を続けることを選択した夫婦 子どものほうが8.8ポイント高かった。 同様に、夫の両親と会う頻度を妻の仕事の は周囲の人々、特に自分たちの親からどのよ 有無で比較すると、仕事を持っている妻の子 うな支援を受けているのだろうか。 まず、親世代との住居の距離をみてみよう。 どもが夫の両親と会う頻度は「ほぼ毎日」 自宅と妻の実家の距離をきいたところ、仕事 「ほぼ毎週」をあわせると52.2%、それに対 を持っている妻の13.7%は「同居・二世帯住 して仕事を持っていない妻の子どもが夫の両 宅・同じ敷地内」に住み、「徒歩圏内」も14.2 親と会う頻度は34.1%で、仕事を持っている %で、いずれも仕事を持っていない妻よりも 妻の子どものほうが18.1ポイント高かった 高かった(図 5 − 4 − 1 ) 。 (図 5 − 4 − 4 )。 同様に、自宅と夫の実家の距離を調べると、 自分、または夫の両親と子どもが頻繁に会 仕事を持っている妻の23.7%は「同居・二世 うということは、子どもの面倒を一時的に見 帯住宅・同じ敷地内」に住み、仕事を持って てもらったり、一緒に時間を過ごすことで、 いない妻より近距離に住む傾向が強かった 育児の負担を軽減してもらっているものと考 (図 5 − 4 − 2 )。また、仕事を持っている妻 えられる。仕事と子育てを両立するために両 の中でみると、自分の親と近居している妻 親のそばに計画的に転居したのか、あるいは (13.7%)よりも夫の親と近居している(23.7 もともと近居していたから仕事を続けること ができたのか、どちらの要因が強いのか今回 %)割合のほうが10.0ポイント高かった。 の調査のみではわからない。しかし、妻が仕 ● ○ 仕事を持つ母親の子は祖父母と会う頻 度も高い 事を持っているほうが、自分の親または夫の 親の近くに住み、家族で頻繁に交流し、親世 図 5 − 4 − 3 は、妻の仕事の有無により子ど もが自分の両親(祖父母)と会う頻度を比べ 代からの支援をうまく引き出しているといえ るだろう。 ― 118 ― 図 5 − 4 − 1 自分 (妻) の両親とどのくらいの距離に住んでいるか(育児期妻、仕事の有無別) 電車・バス・車を使って 1 時間以内 同居・二世帯住宅・ 電車・バス・車を 同じ敷地内 徒歩圏内 使って30分以内 仕事を持っている (424人) 飛行機を利用する距離 電車・バス・車を 使って 1 時間以上 いない 無答不明 (%) 13.7 14.2 30.0 13.0 21.9 7.1 0.2 0.0 仕事を持っていない (1391人) 9.7 9.2 27.5 16.7 26.5 9.3 0.6 0.5 図 5 − 4 − 2 自分 (夫) の両親とどのくらいの距離に住んでいるか(育児期夫、妻の仕事の有無別) 電車・バス・車を使って 1 時間以内 同居・二世帯住宅・ 同じ敷地内 徒歩圏内 妻は仕事を持って いる(274人) 飛行機を利用する距離 電車・バス・車を 使って 1 時間以上 電車・バス・車を 使って30分以内 いない 無答不明 (%) 23.7 9.9 29.6 7.7 20.4 6.6 1.1 1.1 妻は仕事を持って いない(978人) 12.1 8.1 26.3 15.6 27.1 9.3 0.9 0.6 注)夫婦をカップリングしたデータを使用しているため、サンプル数が少なくなっている。 図 5 − 4 − 3 ○○ちゃんと自分 (妻) の両親はどのくらい会う機会があるか(育児期妻、仕事の有無別) イベント(お誕生日、敬老の 日など)、連休の時だけ ほぼ毎日 ほぼ毎週 仕事を持っている (424人) 月に 1 回程度 ほとんど会わない まったく 会わない いない 無答不明 (%) 34.9 24.5 20.5 10.4 8.5 0.9 仕事を持っていない (1391人) 18.0 32.6 26.2 11.1 10.7 0.2 0.2 0.0 0.5 0.6 図 5 − 4 − 4 ○○ちゃんと自分(夫)の両親はどのくらい会う機会があるか(育児期夫、妻の仕事の有無別) イベント(お誕生日、敬老の 日など)、連休の時だけ ほぼ毎日 ほぼ毎週 月に 1 回程度 ほとんど 会わない (%) 妻は仕事を持って いる(274人) 33.2 19.0 20.8 12.0 10.9 1.8 妻は仕事を持って いない(978人) まったく 会わない いない 無答不明 14.0 20.1 30.3 17.8 14.7 1.7 注)夫婦をカップリングしたデータを使用しているため、サンプル数が少なくなっている。 ― 119 ― 1.1 1.1 0.4 0.9 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 5 育児休業の取得について 妊娠・出産を経て、就業継続した妻は育児休業制度のある会社や事業所に所属 し、制度を利用した人が多い。妊娠期の妻を持つ夫の 3 割以上が育児休業の 取得を希望していた。これは妻の就業状況と関連がみられなかった。 育児休業は原則として、 1 歳に満たない子 回答した割合が妊娠期妻のほうが高いのは、 を養育する男女労働者(一定の範囲の期間雇 「妊娠を機に仕事をやめた」人が除外され、 用者を含む)であればとれることが法律で定 結果的に育児休業制度のある会社や事業所に められている。しかし、所属する会社や事業 所属する人が残ったためと思われる。育児休 所に制度があるかないか、あったとしても実 業制度のある会社だから妊娠後期まで続ける 際に運用されているかどうかでとりやすさが 人が多かったという見方もできるだろう。育 違ってくる。 児休業を「とりたい」と回答した人は仕事を 平成17年度に次世代育成支援対策推進法が 持つ妊娠期妻の81.0%にのぼり、制度を活用 施行され、従業員が301人以上いる事業主は して出産後も仕事を継続させる計画を持って 育児休業も含め、次世代育成のための行動計 いる人が多いと言えるだろう(図 5 − 5 − 2 ) 。 画を都道府県労働局に届け出ることが義務づ 夫の側の取得意向は、もっとも多いのが けられた。平成17年12月時点で、301人以上 「とりたい」34.6%で、「とりたくない」15.8% の従業員のいる企業の97%が計画書を提出し の 2 倍以上の割合を占めていた。しかし、 「と ている(注:厚生労働省発表「一般事業主行 れない」と答えた人も26.7%いて、 4 人に 1 動計画策定届」の届け出状況より)。日本の 人強は何らかの事情で取得は難しいと考えて 場合、従業員の 7 割は300人以下の中小企業 いることがわかる。 で働いているので、育児休業制度の有無が把 夫の育児休業取得意向は妻の仕事の有無の 握できない企業が多い。しかし、中には独自 影響を受けるのだろうか。妻が仕事を持って の制度を定めたり、女性従業員比率が多いた いる場合、「とりたい」は35.4%で、妻が仕 め、柔軟な勤務を認めている企業もある。 事を持っていない場合の33.7%と比較しても ほとんど差はなかった。「とりたくない」「と ● ○ 妊娠期の妻・夫の育児休業取得意向 れない」「わからない」も大きな差はみられ 本調査で、妊娠後期の現在も仕事を続けて ず、妻が仕事を持っているかどうかは、夫の いる妻の場合、職場に育児休業制度が「ある」 育児休業取得意向に影響していないようだ。 と答えた人の割合は79.6%で、一方、夫の場 (図 5 − 5 − 3 )。 合は48.9%だった(図 5 − 5 − 1 )。「ある」と ― 120 ― 図 5 − 5 − 1 あなたの職場には育児休業制度があるか(妊娠期妻・夫) (%) 100 80 79.6 妊娠期妻(221人) 妊娠期夫(570人) 60 48.9 40 28.6 21.8 34.6 20 13.6 4.5 2.3 0.7 0 あ る な い 知 ら な い 注)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 無 答 不 明 図 5 − 5 − 2 育児休業取得意向(妊娠期妻・夫) (%) 100 80 81.0 妊娠期妻(221人) 妊娠期夫(570人) 60 40 34.6 26.7 20 19.5 15.8 5.9 2.3 5.4 2.7 1.4 2.7 2.1 そ の 他 無 答 不 明 0 と り た い と り た く な い と れ な い わ か ら な い 注)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 図 5 − 5 − 3 育児休業取得意向(妊娠期夫、妻の仕事の有無別) とりたい とりたくない その他 とれない わからない 無答不明 (%) 妻は仕事を持って いない(380人) 33.7 16.6 26.8 19.2 1.8 1.8 妻は仕事を持って いる(178人) 35.4 14.6 27.0 19.7 2.8 0.6 注)夫婦をカップリングしたデータを使用。 ― 121 ― 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 実際のところ育児休業制度を利用する夫は とらなかった」が40.5%と多く、ついで「制 非常に少ない。厚生労働省の平成18年度の 度がないのでとらなかった」33.8%、「とり 「女性雇用管理基本調査」によれば、配偶者 たかったが制度がなかった」14.1%、と続く。 が出産した男性のうち、育児休業を取得した また、出産を機に仕事をやめたが、現在は のは0.57%にすぎない。この調査でも育児期 仕事についている(再就職)人の場合、「制 夫のうち取得したのは1.0%であった(図 5 − 度がないのでとらなかった」27.5%、「制度 5 − 4 )。 はあるがとらなかった」24.8%、「とりたか しかし、見方を変えれば妊娠期の妻を持つ ったが制度がなかった」22.9%と数値が均衡 夫の34.6%が育児休業の取得を希望している し、興味深い結果になっていた。育児休業制 (図 5 − 5 − 2 )。こうした願いが実現するた 度がなかったか、あるいはあっても使いにく めには、厳しい職場条件(上司や同僚の理解、 かったため一旦やめ、仕事に再チャレンジし 忙しさ、休業中は収入が減ることなど)が改 た人たちが多く含まれていると言えよう。 善され、子育てしやすい環境整備がされなけ ればならない。人材の繋ぎ止め策として、今 ● ○ 育児休業制度の今後 後、企業や事業所は家族を持つ男性が働きや 出産後も就業継続した妻は育児休業制度が すい環境を整える努力が求められていくだろ ある企業に所属している場合が多かった。ま う。 た、出産を機にやめ、現在無職の人の14.1%、 一方で、制度の有無を「知らない」と答え 再就職した人の22.9%は「とりたかったが制 た夫も21.8%いる(図 5 − 5 − 1 )。夫側の関 度がなかった」と回答している。制度があれ 心を高めるとともに、すでに制度のある企業 ば続けたであろう人が一定数いることも今回 や事業所では、職場の中でその存在を周知徹 の調査からわかった。したがって、今後制度 底させる努力も必要だろう。 を定める企業が増えることによって、女性の 就業継続が促進されることが予測される。し ● ○ 育児期の妻・夫の育児休業利用状況 かし、制度があることと並んで職場に取得し 図 5 − 5 − 4 は育児期の妻と夫の育児休業 やすい雰囲気があるかどうか、復帰後、仕事 制度の有無と取得結果をまとめたものであ と子育てを両立しやすい環境が整備されてい る。妻と夫で比較すると、妻は「制度がある るかなど、職場での運用面の努力も必要だろ のでとった」は50.5%、「制度はあるがとら う。 なかった」14.4%だった。夫は「制度がある 夫の場合、制度があっても取得にいたる人 のでとった」は1.0%にすぎず、「制度はある はまだ少数だが、取得希望者は少なくないの がとらなかった」が43.9%だった。職場に育 で、職場環境が変化すれば増えていく可能性 児休業の制度が整っていても制度を利用しな もある。しかし、職場環境がますます厳しく い、またはできない人の割合は多い。また、 なっている業種もある。育児休業は女性がと 夫の場合「制度があるか知らなかった」も るものという意識が社会一般の中でも多いた 17.3%いる。 め、すぐには男性の取得者は増えないだろう。 一方で、これから子どもを産む世代では核 また、育児期妻で仕事を継続させた人と、 仕事をしていたが出産を機にやめた人を比較 家族化が進む中、「家族の中で家事・育児を してみた(図 5 − 5 − 5 )。仕事を継続させた 担う人」として、妻から夫への役割期待は大 人は「制度があるのでとった」と答えた人が きくなってくると思われる。男性の育児休業 もっとも多く72.8%だったが、出産を機に仕 の必要性は今後もさまざまな形で議論されて 事をやめて現在無職の人は、「制度はあるが いくだろう。 ― 122 ― 図 5 − 5 − 4 育児休業制度の有無と取得状況(育児期妻・夫) (%) 100 80 育児期妻(424人) 60 育児期夫(1300人) 50.5 43.9 40 22.2 20 0 14.4 17.3 10.6 9.9 7.0 9.4 8.5 5.2 1.0 と制 っ度 たが あ る の で と制 ら度 なは かあ っる たが と制 ら度 なが かな っい たの で 制と 度り がた なか かっ った たが 知制 ら度 なが かあ っる たか 無 答 不 明 注)現在、仕事を持っていると回答した人のみ分析。 図 5 − 5 − 5 現在仕事を持っている人と、出産を機にやめた人の育児休業取得状況(育児期妻) とりたかったが制度がなかった 制度があるのでとった 制度がないのでとらなかった 制度はあるが とらなかった 制度があるか 知らなかった (%) 出産を機にやめていない・ 現在仕事あり(就業継続) 72.8 11.7 5.7 6.4 3.4 (265人) 出産を機にやめた・ 現在無職 4.3 40.5 33.8 14.1 7.4 (704人) 出産を機にやめた・ 現在仕事あり(再就職) 12.8 24.8 27.5 22.9 11.9 (109人) 注)「無答不明」を除き、分析。 ― 123 ― 第 5 章 妊 娠 期 ・ 育 児 期 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス
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