11月 Forum Report「82MPa対応水素スタンドの

Safety Forum Report
発行:セーフティ フォーラム
(大阪府堺市中区 小川
幸士)
2012年(平成24年)11月26日
№24-4
<本 Safety Forum Reportの内容については万全を期しておりますが、その責を負うものではありません。>
82MPa対応水素スタンドの技術上の基準の整備
一般則、コンビ則、製造細目告示及び例示基準の改正
燃料電池自動車の航続距離を伸ばすために70MPa充填化(常用圧力82MPa)が取り組まれており、これまでの
常用圧力が40MPa(充填圧力は35MPa)の水素スタンドに比較して、水素の圧力が高いこと、設備構成が複雑に
なること等から、以下のようなより厳しい技術基準が設けられた。(一般則、コンビ則、製造細目告示及び例示基準の
改正。11月26日公布、同日施行。)
① 水素の常用圧力が40MPaから82MPaに高くなることに伴い、安全面の確保から、水素スタンド設備と公道
までの距離を8m以上に延長。
② 40MPa水素スタンドと82MPa水素スタンドを併設し、共用する設備がある場合には、82MPaの水素が、4
0MPaの設備に流入するのを防止するための措置(逆止弁の設置)を講ずること。
③ 火災などにより、水素を貯蔵している蓄圧器が危険な状態になったときに、蓄圧器内の水素を安全に放出で
きる措置を講ずること。
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1.一般高圧ガス保安規則
第2条第1項第25号:用語の定義における常用の圧力の制限をなくし、「特定圧縮水素スタンド」を一般的な名称で
ある「圧縮水素スタンド」に改正。
第6条:本条文で定める技術上の基準の対象である定置式製造設備から圧縮水素スタンドを除くことを規定。(用語の
定義の定義の改正に伴う整合化)
第7条の3第1項:常用圧力が40MPa以下である「特定圧縮水素スタンド」に限定していたものを、「圧縮水素スタン
ド」の技術上の基準とし、本条文の対象は、82MPa以下の圧縮水素スタンドに限ることとした。また、一般的な定置
式製造設備の技術基準を定めた第6条における、いわゆる「附属冷凍」に関する規定を、本条文においても同様に冷
凍則の技術上の基準によることができるとした。
同第2号:ディスペンサー本体の外面と公道の道路境界線との距離は、ディスペンサーから水素が漏えいした場合でも、
公道にいる人等に被害が生じないような距離が設定されており、40MPaメガパスカル圧縮水素スタンドでは、6m以
上と規定している。82MPaメガパスカル圧縮水素スタンドでは、漏えいした水素がより遠くまで到達すること等から、
実験結果等を踏まえ、8m以上とした。
同第4号:圧縮水素スタンドに使用する蓄圧器の材料としては、これまで鉄鋼又は非鉄金属が使用されてきた。複合容
器を蓄圧器として使用することが提案されているが、安全性が十分に評価されていないことから、複合容器の安全性
の評価が終了するまでは、蓄圧器の材料を鉄鋼又は非鉄金属に限定した。
同第10号:圧縮水素スタンドのうち水素の通る部分については、水素が漏えいした場合に引火しないよう、その外面
から火気を取り扱う施設に対して距離を確保することを求めており、40MPa圧縮水素スタンドでは、水素が着火しな
い濃度まで薄まる距離として6m以上を規定している。この距離について、82MPaスタンドでは、実験結果等を踏ま
え8m以上と規定した。
同第13号(新設):ナフサや都市ガスの改質等による通常の水素供給が一時的に停止した場合に、水素を充填したタ
ンクローリーの充填容器等から水素を供給する場合がある。この場合、充填容器等から供給される水素の流量を制御
し、水素スタンドの配管の破損等に対応する必要があるため、過流防止弁を設置する等の措置を規定する。また、水
素スタンドの常用の圧力が充填容器等の最高充填圧力未満の場合は、充填容器等から供給される水素の圧力を減圧弁
の設置等の措置により、水素スタンドの常用の圧力以下に減圧することを規定。
同第14号(新設):1つの圧縮水素スタンドにおいて、40MPa圧縮水素スタンドと82MPa圧縮水素スタンドが併設
される場合、両スタンドで共用する蓄圧器や配管が存在することとなる。この場合、82MPaの高圧ガス設備中の圧縮
水素が、40MPaの高圧ガス設備に流入し、蓄圧器を損傷するおそれがあることから、そのような流入を防止する措置
を講ずることを規定。
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同第2項(都市型水素スタンドの基準)第1号:旧第7条の3第2項において圧力計は第10号に規定されているが、
第7条の3第1項第1号と同様に、本号において第6条第1項を準用する形で圧力計の設置等を規定。
同第2号:高圧ガス設備の外面と当該事業所の敷地境界との距離は、高圧ガス設備から水素が漏えいした場合でも、敷
地境界の外側の人や物等に被害が生じないような距離が設定されており、40MPa圧縮水素スタンドでは、6m以上と
規定している。82MPa圧縮水素スタンドでは、実験結果等を踏まえ、安全な距離として8m以上と規定。
同第2号の2(新設):高圧ガス設備は、事業所の外側にある学校・病院等の保安物件に対して一定の距離(設備距離)
を有する必要があるが、第7条の3第2項に規定する圧縮水素スタンド(いわゆる都市型水素スタンド。)には、第
2号に規定する高圧ガス設備から事業所の敷地境界までの距離を設けることや第4号に規定する防火壁を設置するこ
と等により、事業所の外側の施設に対する保安が確保できることから、設備距離の規制を課していない。しかし、8
2MPa圧縮水素スタンドに設置されるプレクール設備(附属冷凍設備。)については、設備距離を有しなくても敷地境
界までの距離等により、保安を確保できることについての技術的な評価が行われていないことから、一般的な高圧ガ
ス設備と同様に設備距離を定めた。
同第10号:圧力計の設置については、第1号において第6条第1項第19号を引用することとしたので、本号から圧
力計に関する規定を削除。
同第27号:第1項第10号に同じ
同第33号ト(新設):第1項第13号に同じ
同第34号(新設):第1項第14号に同じ
同第35号(新設):蓄圧器が危険な状態となったときに、当該蓄圧器内の水素を安全に放出するための適切な措置を
講ずることを規定。
同第3項(製造の方法に関する基準)第5号(新設):82MPa圧縮水素スタンドにおいては、プレクール設備により-
40℃程度まで水素が冷却されることから、充填ホース先端の充填ノズルに、着霜、着氷が生じるおそれがある。こ
のような状態で車両に接続を行うと、損傷、漏洩の危険があるため、充填ノズルの車両との接続部が凍結した状態で
接続しないことを製造の方法として規定。
第64条第2項第5号:40MPa圧縮水素スタンドは、本来は保安統括者等の選任(法第27条の2第1項等)が必要で
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あるが、処理能力が25万m 未満の場合には、特定の要件を満たす者(以下「監督者」という。)に製造に係る保安
を監督させることにより、保安統括者等の選任を不要とすることができる。82MPa圧縮水素スタンドは、40MPa圧
縮水素スタンドと比較すると、イ)水素の圧力が高い、ロ)プレクール設備を有する等の相違点はあるが、監督者に
より40MPa圧縮水素スタンドと同等の安全レベルを確保することが可能と考えられるため、監督者を選任することに
より保安統括者等の選任を不要とする。
別表第1及び第3:新たに圧縮水素スタンドの技術基準として規定された設備等について、完成検査の方法(一般則第
35条第1項)及び保安検査の方法(一般則第82条第3項)を、別表第1及び別表第3に規定するほか、検査項目
の規定内容を明確化。
2.コンビナート等保安規則
コンビ則の適用を受ける82MPa圧縮水素スタンドの技術基準については、基本的に一般則の技術基準と同様の改正で
あるが、附属冷凍設備の保安距離については、以下のとおりコンビ則の規定の例による。
コンビ則第7条の3第2項第2号の2:コンビ則の適用を受ける事業所の処理設備等についての保安距離の規定は、
一般則の適用を受ける事業所についての設備距離の規定と異なり、その設定条件が細かく規定されており、附属冷凍に
ついても、コンビ則の保安距離の各規定が適用される。
3.製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示
製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示(昭和50年通商産業省
告示第291号。)第9条の「保安電力を保有する等の措置を講じなければならない製造施設等」に、圧縮水素スタ
ンドの過充填防止装置、圧力リリーフ弁等の保安の確保に必要な設備を追加。
4.一般高圧ガス保安規則の機能性基準の運用について(平成13・03・23原院第1号)」及びコンビナート等保安規則の機能
性基準の運用について(平成13・03・23原院第3号)
・流動防止措置(一般則例示基準2.コンビ則例示基準2.):可燃性ガスの通る部分の外面から火気を取り扱う施設
に対して、遮蔽する範囲を圧縮水素の常用の圧力が40MPa以下の場合は6m未満、40MPaを超え82MPa以下の場合
は8m未満とする。
・ガス設備等に使用する材料(一般則例示基準9.コンビ則例示基準3.):主に低温におけるSUS316L等の水
素脆性の試験結果から、温度範囲とニッケル当量を限定し、使用できる材料を規定。また、ガス設備(圧縮水素スタ
ンドの高圧ガス設備であって水素が通る部分を除く。)又は消費設備(ガスの通る部分に限る。)に使用できる材料
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の規定を、これまでの規定内容を変更せずに、書きぶりをわかりやすく修正。
・圧力リリーフ弁(一般則例示基準13の2.コンビ則例示基準7の2.):① 設定圧力に対する圧力変化の検出範囲
の明確化。② 動力源が喪失した場合の機能を保持。③ 82MPa圧縮水素スタンドの放出管開口部と敷地境界との距離
及び圧力リリーフ弁のオリフィス直径等の規定。
・ガスを自動的に閉止する遮断措置(一般則例示基準19の2.コンビ則例示基準19の2.):蓄圧器の配管に講ず
る遮断措置の基準を規定する。(一般則例示基準においてのみ、圧縮水素を受け入れる配管に設置する2以上の遮断
措置のうち一つを逆止弁とすることができる。)
・停電等により設備の機能が失われることのないための措置(一般則例示基準20.コンビ則例示基準33.):圧縮
水素スタンドの運転自動停止装置、圧力リリーフ弁等に保安電力等を確保することの規定。
・過充填防止のための措置(一般則例示基準55の2.コンビ則例示基準62の2.):燃料電池自動車の燃料装置用
容器への圧縮水素の過充填防止のために、自動的に充填を停止する装置等の規定。
・流入防止措置(一般則例示基準55の3.コンビ則例示基準62の3.):82MPaの蓄圧器から40MPaの蓄圧器へ
の圧縮水素の流入を防止するための逆止弁の取付位置の例示。
・敷地境界に対し8m以上の距離を有することと同等の措置(一般則例示基準56の2.コンビ則例示基準63の2.):
82MPa圧縮水素スタンドにおける敷地境界に対し8m以上の距離を有することと同等以上の措置を規定。(40MPa
圧縮水素スタンドについては、従前のとおり。)
・圧縮水素の充填流量の制限に係る措置(一般則例示基準59の4.コンビ則例示基準66の4.):燃料電池自動車
の燃料装置用容器への圧縮水素の充填を安全に行うために、あらかじめ定めた圧力上昇率以下で充填を行うよう流量
の制限を行うことを規定。
・ディスペンサーへの車両衝突防止措置(一般則例示基準59の7.コンビ則例示基準66の7.):ディスペンサー
への車両の衝突を防止する措置として防護柵の設置等を規定。
・車両の誤発進等によるホースの破損を防止するための措置(一般則例示基準59の8.コンビ則例示基準66の8.):
誤発進等による充填ホースの破損を防止するため、緊急離脱カプラーの設置を規定。
・車両の誤発進防止(一般則例示基準59の9.コンビ則例示基準66の9.):車両の誤発進を防止する措置として、
充填ノズルをディスペンサーに収納しなければ充填作業が完了しない構造等を規定。
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本資料は、経済産業省ホームページ、官報を参考に作成しました。
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