ステージセットインタフェースを用いた 協調音楽演奏システム 学籍番号 : 96234029 1 西田研究室 金森一樹 はじめに 近年,携帯電話,インターネット,その他情報機器の 発達や,交通機関の発達に伴い,新しい人と知り合う機 会が増加している.しかし,それに伴って人のコミュニ ケーションスキルも発達しているかというと, 決してそ うとは言い切れない. 集団で音楽演奏を行うことは複数の楽器をいかに調 和させるか,そのために周りと息を合わせることがどれ だけ重要か,学ばなければ成り立たないものであり,コ ミュニケーションスキル育成の場としての有効性が期待 できる.しかし,音楽演奏に参加するための,音楽演奏 技術の習得には音楽初心者にとっては困難な事も多く, ここでつまずいてしまう人も非常に多い. 本研究では,旧来の音楽演奏手法をより容易な手法に システム側で置き換えることにより,音楽初心者であっ ても集団での音楽演奏に参加することのできるシステム 「ステージセットインタフェース」を提案,プロトタイ プを作成した.本稿ではシステムの内容と行った予備実 験について述べる. 図 1: ステージセットインタフェース の容易さに重点を置き,比較的簡単に操作を覚えること ができるバージョン.2つ目はややコントロールが複雑 になる代わりによりバンド演奏らしい動きを可能とする バージョンである. 操作の一例としてメロディ切り替えのトリガを述べる. 主旋律を演奏する奏者はステージの前,リズムを演奏す 2 関連研究 る奏者はステージの後で演奏する傾向があること.サブ 音楽初心者でも参加できる音楽演奏システムの音楽構 メロディ演奏にはメインメロディの音にあわせる必要が 成に関するアプローチとして,我が研究室の吉田・山岸 あること,同じくベースはドラムの音に合わせることか らによるセッションシステム用いられてたアプローチ, ら以下の切り替えトリガを実装した. • ステージ前でメインメロディ奏者の方向を向かない 「構成主義」を用いることにした.構成主義とは複数の →メインメロディ フレーズを同期した状態で流し,それらの音のオン・オ • ステージ前でメインメロディ奏者の方向を向く→サ フを切り替えることで,音楽全体の雰囲気を変化させる ブメロディ 手法である.構成主義的音楽構成は音楽の自由度を狭め • ステージ後でドラム奏者の方向を向かない→バッキ てしまうものの,高度の音楽的知識を持たない音楽初心 ングメロディ 者に取っては,むしろ理解が容易な利点が目立つ. • ステージ後でドラム奏者の方向を向く→ベースメロ インタフェース作成に関するアプローチの案としては, ディ 実世界指向インタフェースの研究例を参照した.実世界 指向インタフェースとは身近に存在するもの,あるいは 4 評価実験 それを模したものをインタフェースに用いることで,そ 集団での音楽演奏という行為はそれ自身がコミュニ のものが持つメタファーを利用する,入力に違和感を感 ケーションスキル育成の場としての可能性を持ってい じない入力インタフェースのことである. る.そこで,本システムを用いて行う音楽演奏が果たし 3 ステージセットインタフェース て本来の音楽演奏手法と同等,もしくはそれ以上の満足 奏者を模した人形とステージを入力インタフェースに 感を得られるものであるか,評価を行った. 同時にシステムの操作性に関する評価も行った.思い 用い,人形をバンド演奏時に奏者がアクションをする感 覚で動かすことで,その位置・向き・動きを検出し,演 通りの操作が出来ず,不満を感じるシステムであれば, 奏音楽のスイッチングを行うインタフェース「ステージ それは容易な演奏手法としては問題がある. セットインタフェース」を作成した.(図 1) ギター,サイドギター,ベース,オルガン,ドラム 奏者の人形が入力インタフェースであり.演奏できるフ レーズは,ドラムを除く4奏者がメインメロディ,サブ メロディ,ベースメロディ,バッキングメロディの4種 類,それぞれについて地味・普通・派手の計12種類か ら選択.ドラム奏者は専用パートを持ち,地味・普通・ 派手の3種類から選択できる. 人形の動きから出力フレーズを決定するまでの評価関 数は2つバージョンを用意した.1つ目はコントロール 5 まとめ 今回作成した環境は旧来の音楽演奏手法ほどでは無い が,ある程度の熟練を必要とするシステムであったため, 今回行った数十分の実験では,操作に慣れないとの意見 を多く受けた.しかし,音楽経験者からは相談して音楽 の演奏方針を決める点など,バンド演奏に共通する点が 多くあるとの意見を,また,音楽初心者からは経験した ことの無い新鮮な体験ができると,音楽演奏を楽しむた めのシステムとしては良い評価を得ることが出来た.
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