平成 25 年度電気関係学会東北支部連合大会 2E16 2 次位相スペクトルの差を持つ信号間の位相限定相関関数について ○伊藤理人 † ,八巻俊輔 ‡ ,阿部正英 † ,川又政征 † † 東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 ‡ 東北大学国際高等研究教育機構学際科学フロンティア研究所 1. はじめに 4. 位相限定相関 (Plase-Only Correlation: POC) 関数 は 2 つの信号の類似性を評価する関数であり,様々な 分野で応用されている.2 つの信号の位相スペクトルの 差が周波数インデックス k に対して一定または 1 次式 (線形)となる場合,POC 関数にピークが立つ.POC 関数の応用には,このピークの座標と大きさが利用さ れる. しかし,位相スペクトルの差が周波数インデックス k の 2 次式となる場合の POC 関数の性質は解析されて いない.本稿では,位相スペクトルの差が周波数イン デックス k の 2 次式の場合の POC 関数の性質を定振 幅零自己相関系列を用いて解析する.また,その結果 から,POC 関数のピークを利用した応用の有効性の範 囲を考察する. 2. 位相限定相関関数 長さ N の 2 つの複素信号 x(n) と y(n) の位相スペク トルをそれぞれ θk と φk とし,x(n) と y(n) の位相ス ペクトルの差を αk = θk − φk とする.このとき,x(n) と y(n) の POC 関数 r(m) は以下の式で定義される. r(m)= IDFT[ejαk ], m = 0∼N − 1 (1) 次式の場合の POC 関数の解析 本稿では,N mod 2 = 1 かつ gcd(N, u) = 1 の場合 についてのみ解析する.しかし,N mod 2 6= 1 または gcd(N, u) 6= 1 の場合も同様に解析できる. 位相スペクトルの差 αk が次の式の場合を考える. αk = −τ2 · ejαk = xu (k)WN−τ2 k , k = 0∼N − 1 un(n+1)/2 xu (n) = WN , n = 0∼N − 1 (2) ここで,u は ZC 系列の番号を表す整数である.また, WN = exp (−j2π/N ) は離散フーリエ変換の回転因子 を表す.ZC 系列は時間インデックス n に対して偶対称 である. 文献 [2] より,ZC 系列の離散フーリエ変換 Xu (k) は, N mod 2 = 1 かつ gcd(N, u) = 1 のとき,以下のよう に計算される. (4) (5) となる.ここで,u = 2τ2 とおいている.式 (5) を式 (1) に代入し, h i r(m)= IDFT xu (k)WN−τ2 k , m = 0∼N − 1 (6) と求められる.この場合の POC 関数は,ZC 系列の逆 離散フーリエ変換を τ2 だけ平行移動したものである. 式 (3) と ZC 系列の偶対称性を用いると,gcd(N, u) = 1 の場合,POC 関数 r(m) は以下のように求められる. r(m)= 定振幅零自己相関(CAZAC)系列 CAZAC 系列は,時間インデックス n に対して振幅が 一定で,自己相関関数がデルタ関数の系列である [1].本 稿では,CAZAC 系列の一つの Zadoff-Chu(ZC)系列を 用いて POC 関数の性質を解析する.本稿では,ZC 系列 のみを用いるが,他の CAZAC 系列(Wiener CAZAC, P4 系列など)を用いても同様の結果が得られる. 長さ N が N mod 2 = 1 の場合の ZC 系列 xu (n) は 以下の式で定義される. 2π 2 k , k = 0∼N − 1 N ここで,τ2 は定数である.ZC 系列を周波数領域の系列 として考え,位相因子 ejαk を ZC 系列を用いて表すと, ここで,位相スペクトルの差 αk に対して ejαk を位相 因子と呼ぶ. 3. 位相スペクトルの差が周波数インデックス k の 2 ¢ 1 ∗ ¡ −1 x u (m − τ2 ) Xu (0), N u m = 0∼N − 1 (7) したがって, |r(m)|= X(0) , m = 0∼N − 1 N (8) となり,POC 関数の絶対値は m によらず一定値を持 つ.すなわち,従来の,ピークを利用した応用ができ ない. 5. まとめ 本稿では,2 つの信号の位相スペクトルの差が周波数 インデックス k の 2 次式となる場合の POC 関数の性 質を解析した.その結果,この場合の POC 関数の絶対 値 |r(m)| は m によらず一定値となると明らかにした. すなわち,従来の,POC 関数のピークを利用した応用 ができないことを示した. 参考文献 (3) [1] J. J. Benedetto, I. Konstantinidis and M. Rangaswamy, IEEE Signal Processing Magazine, Vol. 26, No. 1, pp. 22–31, 2009. ここで,“∗”は複素共役を表し,u · u−1 mod N = 1 で ある. [2] S. Beyme and C. Leung, Electronic Letters, Vol. 45, No. 9, pp. 502–503, 2009. Xu (k)= x∗u (u−1 k)Xu (0), k = 0∼N − 1
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