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平成 24 年度
地域新成長産業創出促進事業
第二回製薬等大手企業トップセミナー
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社
首都圏バイオネットワークコーディネーター
金子
健二
はじめに
「平成 24 年地域新成長産業群創出基盤形成事業」の支援事業として、第二回製薬 等企
業トップセミナーを、平成 24 年 12 月 19 日(水)に(一財)バイオインダストリー協会
会議室で開催した。本セミナーの開催にあたり、経済産業省 関東経済産業局次世代産業
室 西野清則参事官より、開会の挨拶、セミナー開催の趣旨などのご説明をいただいた 。
今回のセミナーでは、従来の製薬企業のトップセミナーから、少しスコープを広げ、医療
機器関連の事業を国際的に展開している日本ベクトン・ディッキンソン社(以下、日本B
D社)の山岡義明氏、村本孝一両氏より米国BD本社 (以下、BD 社:Becton, Dickinson and
Company)の事業全般、および興味のある事業連携分野についてご紹介いただいた。
演者:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社
ストラテジック ディベロプメント マネージャー 山岡 義明氏
ファーマシューティカルシステム事業部 マーケティングマネージャー
村本 孝一氏
講演内容は以下の通り。
山 岡 氏 は 日 本 の お も し ろ い ネ タ (技 術 シ
ーズや製品、コンセプト)を探す役目をして
おり、今後、皆様方と様々な連携の機会を
頂きたいと考えている。最近の状況は、200
件ほどの日本国内のネタをレビューして、
こ の 情報 を 米 国 本 社 に 送 り 、 そ の 結 果 、3
件で、日本のベンチャーと CDA を結ぶ段
階にある。大凡、1~2%が具体的な検討に
進む状況で、米国 BD 本社でこれらの案件
の評価をしている。特に、技術シーズやア
イデアを幅広く探すため、民間企業はもと
左:村本 孝一氏、 右:山岡 義明氏
より、大学の研究所、業界団体、更には、
VC,銀行を訪問している。既に完成した製品のグローバル販売サポートのような短期的収
益を探す一方で、数年後にものになるような基礎技術も探索している。
BD 社は、①治療用医療機器部門、②検査、診断部門、③研究機器、試薬を扱うライフ
サイエンス部門がある。BD 社全体の売り上げは、テルモとオリンパスを併せた 7,700 百
万米ドルほどになり、グルーバルに事業を展開している。BD 社 の歴史をみると、ルアー
式ガラス注射器、インシュリン注射器、真空採血管、ディスポ製品など、画期的な“世界
初製品”が数多ある。バイオ研究にとって重要なフローサイトメーター(BD FACS シリー
ズ)は、スタンフォード大で開発され BD 社
が製品化に成功したもので、現在では、こ
の BD FACS フローサイトメーターにより
各種リンパ球の解析が可能となり免疫学の
進歩に大きく貢献している。
日本 BD は 40 年以上の歴史があり、日
本 BD は世界の BD 社全体の 1/60 の社員数
で、約 1/20 の売り上げに貢献している。ま
た日本 BD の1つの特徴は福島に製造工場
を保有していることである。1987 年に設立
され、現在は、培地、プレフィルドシリン
ジの 2 品目を製造している。従業員も地元
で採用している。また製造用原材料の一部は日本国内から調達して おり、日本への貢献・
日本発のイノベーションに取り組んでいる。福島工場で生産される製品の品質は高く、で
きれば、海外で製造しているものを福島に持ってくる可能性についても考えている。今後、
技術力の高いパートナーと連携し、日本発の製品を開発し、日本の医療の成長とともにグ
ローバルに展開していきたい。
BD 社には、治療用医療機器分野(抗癌剤曝露防ぐ機能を備えた閉鎖式薬物移送システ
ム、ペン型インシュリン注入器用注射針、安全機構付きカテーテルなど)、臨床検査用製品
分野(インフルエンザやアデノウイルス迅速診断キット、子宮頸がん検査システム、各種
細菌検査用培地、採血用製品など)、ライフサイエンス分野(免疫学・再生医療などの研究
者に広く使われているフローサイトメーターや試薬など)で、幅広い製品を取り扱ってい
る。中でも BD 社の重点分野としては、迅速かつ正確な診断技術、非経口のドラッグデリ
バリー、ライフサイエンス、がん、感染症、糖尿病、女性の健康の領域があり、いくつか
のアイデアが例示された。今後、BD 社ではグローバルな売上げを安定的に、かつ成長す
るよう事業の幅を広げたいと考えており、特に、日本には、技術シーズが多くあることを、
BD 社のトップは認識している。そのため「日本にシーズを探索する係りをつくれ」との
指示で、山岡氏がこの役目を担当している。
今注目される製品の1つに、Point Of Care(POC)と呼ばれる迅速診断機器がある。POC
は医療の現場で素早く診断し治療につなげることを可能とする。BD 社の POC キットはイ
ムノクロマト法によるもので、現在はインフルエンザ等の 3 種類のみの検査項目であるが
今後、小児感染症などにも領域を広げたいと考えている。また、日本のニーズに合わせた
食物アレルギー、ドラッグテスト等も有望な技術があれば取り組んでみたい領域として位
置付けている。
また BD 本社には、グローバルヘルスやウーマンズヘルスなどの専門チームがあり、そ
れぞれ熱帯地域の風土病や女性の健康といった課題を解決するための シーズ探索から製品
化を進めている。POC の点から言えば、発展途上国でも利用して頂けるような廉価な機器
でグローバルヘルスケアに貢献することも重要と考えている。
さらに採血の分野においても、痛みの少ない採血針や難しい採血をサポートする技術、
あるいは血液検査の前処理工程の簡素化など、様々なニーズがあり、BD 社は常に世界に
先駆けた画期的な機能や技術を駆使した製品を開発し続けている。
続いて、ファーマシューティカルシステム事業部の村本氏より医薬品キット製品が紹介
された。この事業本部はフランスのグルノーブルにあり、プレフィル ドシリンジの製造販
売をしている。現在、世界で使用されているプレフィルドシリンジは約 25 億本といわれ
ているが、BD 社ではこのうち 20 億本、約 80%を生産している。福島工場でも 2000 年か
らプレフィルドシリンジの生産を開始しており、これらのシリンジは、低分子ヘパリンの
抗血栓藥、インフルエンザなどのワクチン、エリスロポエチン、G-CSF などバイオ医薬品
に使われている。BD 社では更に進化したプレフィルドデバイスである経鼻投与デバイス、
皮内投与デバイス、ペン型デバイス、オートインジェクター等を海外で既に実用化してお
り、ワクチン・バイオ医薬品用デバイスとして供給している。その他、パッチインジェク
ター、注射薬アドヒアランスモニターシステムなど近未来のライフスタイルを見据えた次
世代型プレフィルドデバイスを開発中で、これらの製品については、各製薬メーカーと話
を進めている。その他、興味のある領域、製品としては、薬物ライフサイクルマネージメ
ントのための製剤技術、患者、医療従事者の安全性を高める技術、地域特有な医療ニーズ
に対する診断技術などがある。
結び
質疑応答ではフロアーのベンチャー企業から具体的 質問が出され、アライアンスの具体
的提案、アライアンスの提案方法、その後のプロセス、商談が成立する場合の条件などの
質問があり、両演者より丁寧にご回答いただいた。その後の交流会にも参加者も多く、名
刺交換も行われ、アライアンスの期待を持たせるトップセミナーとなったと考えている 。
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