地震が起こると ― 土の液状化

地震が起こると ― 土の液状化
一見、しっかりして見える地盤も地震などの際に泥水のようになることがあります。地盤がこ
のような状態になると、その上の建物が傾いたり、マンホールが飛び出してきたり、あるいは地
面が泥水で覆われてしまったりします。この現象を液状化といいます。地震のときに液状化が起
こるとどうなるのかを実際に見てみましょう。
【実
験】
1. 準備するもの
(1) 透明なプラスティックの容器(昆虫の飼育などに使う程度の容器が適しています)。
(2) 乾燥した粒子の細かい砂。あらかじめ水で洗って濁りを起こす細かい成分を除去したも
のの方が実験後濁りが速やかに消えるので観察に適しています(一般の砂場の砂では、
荒すぎます。もっと細かい砂の方がうまく液状化を観察することができます)。
(3) ショックレスハンマー等プラスティック容器に軽い衝撃を与えるための道具。木の棒等
でも代用できます。
(4) 水(プラスティック容器半分程度)。
(5) 家、建物等の模型。実験で土の中に沈むことを観察しますので、水に沈むものを選んで
下さい。
(6) 空のフィルムケース。
(7) 水性マジック、定規。
家等の模型
フィルムケース
写真-1
準備する用具の写真
2. 実験の準備
(1) 透明なプラスティックの容器に水を半分より少し少な目に入れ、その上からゆっくりと
砂を落としていきます。水がちょうど隠れるくらいまで砂を入れます(注:このとき、
できるだけ緩く砂を詰めることが実験のコツです)。
(2) 水面が隠れたら、乾いた砂をふりかけて下さい。容器に入れた砂の表面を定規で均して
水平にし、その上に家や建物等の模型をおきます。また空のフィルムケースをマンホー
ルに見立てて、砂の中にキャップがちょうど地表面に見えるように埋め込んで下さい
(注:フィルムケースがうまく沈まないときには、フィルムケースの底に少し砂等を入
れて重くして下さい)。
(3) 砂の表面の位置を水性のマジック等で容器の外側からマークして、実験前の地面の位置
を記録しておきます。これで実験の準備が終わりです。
水面が隠れるまで砂を入れて
、最後に乾いた砂をまいてか
ら水平に仕上げる。
写真-2 容器に最初に水を入れてそ
の中に砂を落としていく
仕上げ後の地表面の位置に
マジックで印を付ける
写真-4
水面が隠れるまで砂を入れて、
地表面の位置にマジックで印
を付けるフィルムケースをセ
ットする
写真-3
模型の家
フィルムケース
写真-5 模型の家とマンホールに見
立てたフィルムケースをセ
ットする
3. 実験の開始
容器の中の砂に地震荷重を与えます。地震荷重の与え方は、ショックレスハンマーや木の
棒等で容器の横を軽く繰り返したたきます。強くたたきすぎると容器を割ってしまいますの
で、コツコツという感じで軽く繰り返したたいて下さい。
この他、台車等の上に容器を載せて、2〜3 cm の震幅で 1 秒くらいの間隔で往復させる程
度の強さで揺すってください。(注:液状化が起こらないときには、少し強めの振動を与え
て下さい)。
液状化は、砂粒子の大きさと詰具合により、うまく起こるときと、起こらないときがあり
ます。比較的細かい大きさのそろった砂(粒子の大きさが 0.2〜0.6 mm 程度)を緩く詰める
とうまく液状化を起こすことができます。緩く詰めることができなかったり、繰り返し実験
をする場合には、水の中で手で砂をすくうように少し持ち上げ、ゆっくり落とすようにして
緩く詰め直してみて下さい。
【実験結果】
液状化が起こると次の現象が観察できます。
(1) 家や建物の模型が沈んで傾きます。
(2) マンホールに見立てたフィルムケースが飛び出してきます。
(3) 液状化の最中は地盤は泥水のようになり、液状化がおさまると地面はもとの位置より下
がっています。
水面
家や建物の模型
家が傾いて沈む
フィルムケース
フィルムケースが
飛び出てくる
水面
プラスティック
容器
地面が
下がる
砂と水
図-1
実験のイメージ図
土の中に沈んだ家の模型
浮き出てきたフィルムケース
地表面が沈下している
地表面に水が出てくる
写真-6
液状化後の状態 1
写真-7
液状化後の状態 2
【実問題との対応】
緩く堆積した砂地盤が地震の際に液状化を起こすことはよく知られています。これは、普
段は緩い状態で安定していた砂粒子が地震の揺れの作用を受けて、互いに移動して詰まった
状態になりますが、このとき砂粒子は一瞬水に浮いたような状態となるため、地盤は泥水状
の液体のようになるためです。液状化が起こると、地盤は家や建物を支えていることができ
ず、これらは沈んだり傾いたりします。また、マンホールなどの軽い物は、周りの土が泥水
状になり抵抗が無くなるとともに浮力が働くため地面から飛び出してきます。さらに、もと
もと緩く堆積していた砂は詰まった状態になるので、液状化がおさまると地面は下がってい
ます。このような現象は、阪神・淡路大震災のときに埋め立て地盤を中心に数多くの地点で
見られました。一見しっかりしているように見える地盤でもいったん液状化が起こると泥水
のようになることを理解して下さい。
写真-8 液状化で傾いた建物
写真-9 液状化で破損した水道管
写真-10
写真-11 液状化で地面が下がった跡
(柱は杭で支えられているので沈
まないが周りの地盤は液状化で
一斉に沈下した)
液状化で地面が泥水で覆われた