船舶の情報化と マネジメント

2008年10月1日
株式会社トキメックは
に
社名変更いたしました。
〒144-8551
東京都大田区南蒲田2-16-46
TEL.03-3732-2111 FAX.03-3736-0261
http://www.tokyo-keiki.co.jp/
トキメックレポート
1
9
9
9
A U T U M N
Vol. 04
Whole number 95
TOKIMEC
REPORT
1999 AUTUMN
▼かつて、外洋に出た船舶は社会から隔絶された存
ることはないに違いない。電子化された海図には、
在であった。港を離れれば陸地との連絡手段はもは
リアルタイムの航路状況が表示され、あるいは直近
やない。独立独行の 移動する国 は、手を差し伸
の港湾情報がダウンロードされてくる。船と陸との
べられることがない代わりに、誰からも縛られるこ
強固な結びつきは、船という交通手段を非常に近い
ともなくなる。確実に針路を取り目的地に達するに
将来に、陸上と同じように管理されるものと位置づ
は、自分たちの知識,技術のみが頼り。GPSはおろ
けられていくことが十分に予感される。バーチャル
か、正確な海図さえなかった時代のことである。し
な意味合いで言えば、「航路」は「道路」の延長と
かもそれは、長い航海の歴史の尺度で言えば、そこ
なるのだ。
そこ最近までの状況だったのだ。
▼もっとも、海上を移動することの物理的困難さは
▼先日のGPS誤作動問題の折りには、陸ほどの混
道路の比ではないから、ITSにおける自動運転のよ
乱は海上において起こらなかったようだ。これなど
うに全航路を自動操船(無人デッキ化)することは
は、GPSが現在の航海のなかでいかに重要性を持
極めてむずかしい。人工知能がどんなに進化しても、
ち、その前提において活用・メンテナンスがされて
ロボット・キャプテン
はそう簡単には登場しな
いるかの証左と考えられる。もちろん今後もGPS
いだろう。最後にはやはり人間の技がものをいう。
が使えなくなるような事態は起こり得るだろうし、
生活の基盤を船による輸入に依存している日本にお
万能のポジショニングシステムというわけでもな
いて、海を志す若者の教育と支援は、次世代航海シ
い。しかし、その他様々な衛星、あるいは情報通信
ステムの開発と並ぶ重要課題だ。
システムの進展が、もはや船舶を大洋の孤島とさせ
平成11年9月発行(通巻 95号)
発
行/
株式会社トキメック 営業統括室
〒144-8551 東京都大田区南蒲田 2-16-46
TEL.03-3730-7013 FAX.03-3733-3690
発 行 人/ 黒 石 守 郎
編 集 人/ 今 野 二 郎
編 集 協 力/(株)パルナス
本誌に対するご意見、お問い合わせは営業統括室まで
URL:http://www.tokimec.co.jp/
Mail:[email protected]
船舶の情報化と
マネジメント
特集
船舶の情報化と
マネジメント
10
Contents
Technical Report
13
01 光応用技術
キーワードは効率化とシステマチックなデータ管理!
16
保線作業の革新を追求する九州旅客鉄道株式会社
SCIENCE & TECHNOLOGY
04
04
18
AUTUMN
伝統のル・マン24時間レースで
トキメックの技術が本領発揮!
22
1999
挑戦する意志は
あらゆるシーンに冒険を生み出す
24
ロボットとの共生
HOT LINE
Vol.
Vol.
低騒音28MPa ピストンポンプ PHシリーズ販売開始!
「クリプトスポリジウム暫定対策指針」に対応
低濃度精密レーザ濁度計
99年度展示会のお知らせ
西暦2000年問題への対応について
船舶の情報化と
マネジメント
特 集
船舶の操船(ナビゲート)、情報通信(コミュニケーション)
そして運航管理(マネジメント)にかかわるシステム化が急速に進んでいる。
これらは航海の安全・省力化を一層実現し、また効率的運航のサポートを目指すものだ。
同時に、外的環境の影響を受けやすい海上物流に対し
情報システムを使い支援することで、陸・空ともを含めた
次世紀型物流ネットワーク構築の可能性に現実味を帯びさせる。
今号ではそのうち、キーとなる事項として航海に不可欠な機器機能を
シームレスに統合化する「IBS 」、陸から航海を支援する
「フリートマネジメントシステム(Fleet Management System )」
そして、動画像も含め、ストレスの少ない船陸間通信を実現させる
これからの通信システムについてレポートする。
特集:船舶の情報化とマネジメント
ーバーパナマックス型と呼ばれる全長
くためには、従来からの操船技法・シス
300m クラスの船舶が、近年、定期航路
テムを見直し、その効率的なマスターや
において活躍している。また、天然ガス
船陸における航行の共同管理が求められ
や石油を積載する専用船では20 〜 30 万
ている。
途切れないスムーズな
物流サービスの実現
船舶による貨物輸送においては、
総トンというスケールを誇る大型船舶が
作業の標準化および操船の学習システ
運航の安全管理と貨物の管理が特
積極的に利用されてきている。特に、資
ムということでは、運輸省が若年船員の
源の少ない我が国の場合、化石燃料など
養成プロジェクトを昨年より始動した。
に重要だ。貨物を搭載した船を無
事に港から港へと移動させ、その
場原理の浸透、操船技術の変化、物流体系の見直しなどの要因が存在する。そのために船内の情報を統合しようという
の資源を輸入をはじめ、一回当たりの輸
また、IMO(国際海事機関)では平成
動きや洋上の船を陸上からサポートしていこうという新しい試みが今、始まろうとしている。
送量を増やしたほうが効率的であるた
5年 10 月に ISM コード(国際安全管理
め、入港する船舶が徐々に大型化してき
コード)を採択し、安全運航ために緊急
ている。
時の手続きや保守管理業務などのマニュ
貨物と船の最初の接点である港湾におい
世界でも有数の貿易量を誇るわが国では、重量換算にして物資輸送のほぼ 100 %近くを外航海運による貨物輸送に
依っている。日本経済の根幹を支えている外航商船であるが、ここにも情報化の波が押し寄せている。その背景には市
グローバル化が進む外航海運
外航海運をめぐるビジネス状況が
活発な動きを見せている。大手海
運企業の再編をはじめ、一部の基
幹航路では規制が緩和され自由競
争が本格化する、といった出来事
が相次いでいるからだ。
間、預かった荷物の保全に努め、
荷役作業を行うわけだ。
それらを速やかに遂行するためには、
とされた。世界の海運市場でも大きなウ
ている。英ケーブル・アンド・ワイアレ
また、乗組員の質の変化ということで
アル化を進めている。とくに、安全管理
ても十分な受入体制を整えることが必要
ェイトを占めているアメリカ海運業界
ス(C&W)の合弁企業である C&W ノ
は、これまでの「船のことは船で完全に
については陸上からのチェックを行うよ
になる。つまり、
「モノ」のスムーズな
の、こうした市場原理導入の報が他の航
ーテックでは、海運業界に向けたデータ
管理する」という自律的な船内文化が変
うに指導する方向だ。業務における船内
移動が行われるために、モード(輸送機
路に与える影響は大きいであろう。規制
通信サービスを世界的に展開している。
容しつつある。乗務員数では、船長およ
の負担を減らし、ヒューマンファクター
関)同士のバランスをとること、ならび
もないかわりに諸々の保護もほとんどな
C&W が構築したフレームリレー通信網
び機関長の2名配乗体制の導入など、
を軽減することが念頭に置かれているた
にそのモノを乗せる「器」から「器」へ
くなる、そんな自由競争の時代に海運の
を利用し、運賃情報の交換、配船予約
省人化が進行し、さらに外国人船員の混
めだ。
の移し替え操作が速やかであることが肝
世界もいよいよ突入しそうだ。
から、貨物の移動状況、さらには空きコ
乗が進むためだ。船員一人ひとりのもつ
さらに、こうした「乗組員の少数精鋭
ンテナの数量など、船舶をめぐる各種市
裁量権が大きくなり、職務を兼用する比
化」、「船舶の大型化による輸送の効率
日本の港湾では、現在のところコンテ
率も高くなっている。
化」などを背景に、船内の情報を統合し
ナ荷役作業ではガントリークレーン、バ
反面、負うべき責任も大きくなるとい
ようとする取り組みが進行している。こ
ルク積みの不定形な各種物資はアンロー
うことだ。現在、そうしたプレッシャー
れによって、少ない乗組員でも、全長数
ダなどによる業務の機械化や自動化が実
この動きから第一に考えられるのが、
要だ。
まず、再編で言えば、平成9年に英
運賃の価格形成方法やサービス面の変化
況情報を入手できるのが特徴だ。そのた
P&OCL とオランダ・ネドロイド社の定
だ。基本的に船主と荷主の間において相
めに各種の相場をにらんだ、いち早い状
期船部門の合併があった。次いでシンガ
対で価格が決められる運賃は、船舶数の
況分析が可能になってくる。
ポールの海運企業による米国企業の吸収
需給に応じて各航路において常に変動し
グローバル化によって生じたもの、そ
からくる船員の緊張状態や、心理的不
百mもあるような長大な船体各部の情報
現している。さらに、港湾の全貌を見渡
など、世界規模での再編劇が相次いだ。
ている。主要な取引所での相場が速報さ
れは一言でいえば、海運の中で、
「情報
安、孤独感をいかに解放するかが、課題
を、ブリッジにおいて集中的に取り扱え
せる管理ターミナルからの集中制御体制
もともと海運の世界は古くは船舶数の安
れることで、指標的役割を果たしている
戦略」というファクターが極めて重要性
の1つとなっている。たとえば、海難事
るようにすることが可能になる。それが
も整いつつある。これを突き詰めて考え
定供給を行うための海運同盟を発端と
ものの、今後、各社独自のサービスに応
を持つに至ったことを意味するのであ
故については、日本の高等海難審判庁で
国際的な規約に基づいて構築される
るとどうなるだろうか。自動車工場など
し、近隣航路間におけるサービス向上を
じた価格形成が活発に行われていくと考
る。
の判決事例報告では、その半数以上の事
「IBS(統合ブリッジシステム)」だが、
では最適化理論に基づき、コンピュータ
目指すコンソーシアム(企業連合)の形
えれらる。
故が衝突と座礁であり、しかもその半分
これについては次章(P.5)において詳
主導の無人化ラインが稼動しているが、
に該当するものがヒューマンファクター
述する。少なくとも今や、ジャイロやレ
こうした手法を、資源を輸入し、加工、
に起因すると言われている。海洋に囲ま
ーダ、海図といった操船に必要な情報、
輸出する我が国の物流全体をひとつの大
成など、歴史的に再三の編成があったこ
とは確かだ。
また、各社のサービスに、より独自性
近代化が進む船舶システム
が出てくるようになれば、
「どこにどん
しかし、海運企業と荷主の間で個々の
な荷物を乗せたいと考えている荷主がい
一方で、船舶の大型化やコンピュ
れた国家である日本の航海技術は、世界
機関にかかわる情報、通信システムなど
きな「ライン」と見なすことで、積極的
運賃やサービス内容は非公開にすること
るのか」
、一方で、
「どこの港にリーズナ
有数の高レベルと評価されてきた。海難
を一元的に管理し、安全で効率的な操
に応用することが考えられるだろう。
ができるという斬新な内容を盛り込ん
ブルな船が停泊しているのか」というよ
ータ化、また乗組員の少数精鋭化
など、船舶および運航体制の変化
だ、98 年の米海運法の改正、および、
うに、荷主、船主の双方による最適なパ
も見逃せない。まず、外航商船の
輸送能力が次第に大きくなる傾向
本年5月からのその施行により、北米航
ートナー探しのための情報交換が、一層
にある。
路に代表される米国発着の航路において
さかんになると考えられる。すでに、そ
は、本格的な自由化への端緒が切って落
うした情報を提供するシステムも登場し
2
コンテナ船では6万総トンを超えるオ
事故発生率も、イギリスやノルウェーに
船(ナビゲーションとコミュニケーショ
物流大国と言われるオランダの港では
代表される先進海運国と同様、極めて低
ン)を実現していく時期へとさしかかっ
やはりそうした取り組みが進んでいる。
い、と言われている。
ている。
「欧州の玄関口」と称されるロッテルダ
しかし、乗組員の負担が大きくなりつ
ム港や、ハブ空港として機能するスキポ
つある現在、事故を徹底してなくしてい
ール空港を抱えるオランダでは、外国の
3
特集:船舶の情報化とマネジメント
トータルな情報システム化が進む操船システム
―― IBS =統合ブリッジシステム
ブリッジシステムには、大別して、 ナビゲーション と コミュニケーション(情報通信) という基本機能がある。各機能の
中でさまざまなユニットが作動しているが、それらをブリッジで連携、集中管理するにことより、より高い安全性と各種操船作
業の効率化を獲得できる。それを実現するのがIBS(Integrated Bridge System :統合ブリッジシステム)だ。
情報通信関連企業などが参入し、インタ
ける手続きの簡素化も、スムーズな物流
一般的なコンピュータネットワークに
ーネット技術を活用した物流情報のコン
の実現に貢献するものと考えられる。今
おいては、各端末同士は物理的なケーブ
トロールを進めている。IBMが専門の研
年の 10 月から始まる通関業務における
ルによって情報の伝達を行うが、洋上に
究機関を現地に置くなど、輸送分野の垣
EDI(Electronic Data Interchange:電子
広く展開する商船隊においては、衛星を
根を超えた連携が加速する。
情報処理)化がそれだ。このシステムは
中継してデータの授受を行うことにな
安全性に支えられた操船省力化の進行
こうした動きは船舶,港湾,陸運を有
「Sea-NACCS」と呼ばれる従来の情報処
る。衛星通信ならば、船舶が海上のどこ
機的なネットワークと捉え直し、巨視的
理システムをさらに拡張したものだ。貨
な観点から最適化を図ろうというもので
■ IBS を構成する要素
救助システム),情報通信機器による
■根幹となる操船支援機能
から構成さ
船の航行そのものを管理するINSにつ
は、帰結の1つとしてワンマン運航を可
れる。これらの情報を集約し管理するこ
いて俯瞰しよう。この運航支援=ナビゲ
にいても常に双方向の通信が行える。移
能とする。内航船では既に導入され始め
とで、ブリッジを省力化したワークステ
ーションは3つのカテゴリーからなる。
物を保税地域に預けたあとの煩雑な書類
動体端末を乗せた地球規模のモバイルネ
ているが、乗務員の減少傾向の中で、将
ーションに変えることが可能になるの
まず、収集した航海情報の統合(INS A)。
ある。いわば陸運,海運,空輸,鉄道
手続きを大幅なコンピュータ処理に変更
ットワークと捉えることも可能だ。
来的には外航船においても実現しそう
だ。これら全体を総称してIBSと呼ぶ。
次いで、その評価および判断機能(INS
などを横断した総合的な物流体系の構築
し、端末上で行えるようにするものだ。
これを利用するとどうなるか。たとえ
だ。それにともなって、ブリッジにおけ
このうち、操船にかかわる機能につい
B)。最後にそれに基づいた実際的な制御
だ。たしかに、コンテナを利用した輸送
このシステムの導入により、従来の手続
ば、主要定期航路のひとつである欧州航
る操船システムにも変化が求められてい
て は INS( Integrated Navigation Sys-
体系の構築や、そのコンピュータ化など、
きと比べ時間が約1日分、短縮される見
路では通常、その往復に 50 日以上要す
る。広島大学の小瀬邦治教授は、
「かつ
tem)というシステムが管轄している。
すでに整備が進んでいる分野もあるが、
込みだ。もちろん、それだけ貨物をスム
るが、こうした長い期間においても陸上
てのように色々な航海機器が個々に装備
INSの活用により、基本的な操船部分の
コンパス,磁気コンパス,船速距離計な
課題もいくつかある。
ーズに流通ルートに乗せることが可能に
と洋上でコンスタントに情報を共有する
され、それを人のチームが使いこなす形
ほとんどは航海機器に任せることも可能
どの情報センサから獲得しされたデータ
なる。
ことで、息のあった航行管理が可能にな
の運航ではなくて、情報は航海システム
だ。例えるならば、操船責任者は工場の
が集約される。これらのデータは、電子
ってくる。
の側で集約され、それと対話する形で一
無人化ラインにおいて、個々の機械をモ
海図情報表示システム(ECDIS)、ブリッ
人で操船する形が必要」と指摘する
ニタリングし、必要なときだけ操作を行
ジモニタ等をプラットホームとして瞬時
(TOKIMEC REPORT '98 Vol.1 参照)
。
う立場に近づく。人間にしか対処し得な
に表示され、判断機能を提供する(INS
船長数百 m もの大型船舶が主力を占め
い、最終的な危機管理に専念できること
B)。
つつある今、従来以上にシステマティッ
になるのだ。
まず、船舶の大型化に伴う港湾の整備
が懸案になっている。日本の港は浅瀬が
安全を確立した上での、きめ細かな輸
多く、着岸しにくい船舶があるとも指摘
されてきた。効率輸送を目指す外航商船
の大型化が進行する現在では、
「大水深
ターミナル」の整備が必要だ。これは、
船陸間をスムーズにつなぐ
情報通信システム
海運業界に訪れたさまざまな変化
深度15m以上の港であるが、これによっ
には、すべて「情報」という言葉
てアジアにおける輸送拠点となるべく魅
がキーワードになっていることはこ
れまで述べてきた通りだ。コンピ
力的な港湾を成立させることが大切だろ
う。
また、これまで国内における物流の主
戦力となっていたのがトラック輸送だ。
しかし、さらなる効率輸送のため、運輸
省ではモーダルシフトを提案している。
ュータを導入した各種情報化で、
ビット化された情報が船内から港
湾内外に至るまで飛び交うことに
なる。そのさまざまなデータをい
かに有効活用するかが、現在、注
目されてきている。
送サービスには今後、不可欠なシステム
であると言えるのだ。
められているのだ。
図 1 IBS の構成とブリッジ装備機器の関連図
I BS
品やシステムに関して国際
的 な「規 格 作 り」を行 う
IEC(国際電子標準会議)
や ISO において IBS の標準
化が進められ、その全体像
そうした概念の中で目下、研究が進
その根幹的な仕様となるの
匹敵する鉄道、内航海運などへシフトす
み、今後主導的役割を果たすだろうと言
は、基本的な操船機能、す
べきとの提案だ。
「運輸省物流施策アク
われるのが、
「フリートマネジメントシ
なわち
ション・プラン」では、鉄道および海上
ステム(Fleet Management System)」と
能 、船内管理情報機器や
輸送の比重を 50 %以上まで高めたい考
いう概念である。港湾内外の情報や船内
船舶を動かす機関系統,お
えだ。
の情報を総合的にまとめ、衛星通信等を
よび港湾における貨物の荷
利用して、商船隊と陸上の間で自由に交
役機器等の 制御・監視機
換していこうという考えだ。
能 、それにGMDSS(遭難
4
(INS A)においては、GPS,ジャイロ
そうした動きの中で、製
ラック数台分、数十台分の輸送能力に
段の整備だけでなく、通関システムにお
機能(INS C)だ。
クな安全管理のスキルが求
管
理
情
報
機
器
荷
役
制
御
機
器
機
関
制
御
機
器
ジ
ャ
イ
ロ
コ
ン
パ
ス
G
P
S
測
位
装
置
が固まってきている(図1)
。
長距離貨物輸送には、低公害な上、ト
こうしたモード結節点および、物流手
コミュニケーション機能
G
M
D
S
S
/
通
信
機
器
IN S
INS機能
INS(C):制 御 機 能
INS(B):判 断 情 報 機 能
INS(A):
航海情報
集約機能
ナビゲーション機
磁
気
コ
ン
パ
ス
センサ情報
船
速
距
離
計
航海情報センサ
5
電
子
海
図
シ
ス
テ
ム
レ
ー
ダ
/
A
R
P
A
ヘ
デ
ィ
ン
グ
コ
ン
ト
ロ
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ル
シ
ス
テ
ム
ト
ラ
ッ
ク
コ
ン
ト
ロ
ー
ル
シ
ス
テ
ム
特集:船舶の情報化とマネジメント
フリートマネジメントシステムの可能性
フリートマネジメントシステム(以下FMS)という概念の導入により、自社及び同一グループ管理
下にある複数船舶の、総合的な陸上支援体制を構築することが可能になると言われる。以下、その
具体的な利用形態とキーテクノロジーとなる衛星通信技術についてまとめてみよう。
以下、トキメックの機器を例に、その
機能を少々説明しよう。
ックコントロールでは、事前の航路計画
いて、スムーズな航海を行うために、こ
に基づく自動航行も可能だ。
うしたシステムによる情報交換が今後必
Report 1
安全と効率輸送を実現する、情報ツールとしてのFMS
「船長が変われば、同じ船でも動きが変わる」とされるほど、実際の航行は現場管理者
に依存する面が大きい。運航を巡る状況が一層複雑化する現在、船内の過剰な負担を陸
上へシフトし、より安全で効率的な海上輸送システムの研究が進められている。
要になるものと考えられる。
ECDIS(EC-6000)では、自船位置及び
これらシステム機器は、今後さらなる
各種レーダから採取した船舶の周囲の情
機能強化がなされ、より高度な航行支援
最後に、IBS の優れた点は、それが十
報を、あらかじめROM データとして記
および乗組員のワークロード軽減に寄与
分な拡張性を備えているということだ。
録されている電子海図に重ねあわせて表
するものと考えられる。その1つに、運
前述の小瀬教授は、
「信頼度の高いシス
示させる。こうすることで、周囲の状況
航する船舶を登録し、それぞれに固有の
テムを完成させるにはモジュール化の手
の変化をリアルタイムに目視できる。ほ
ID を付与していく動きが進んでいる。
法が有効である」とし、
「小さなシステ
か、オートパイロットとの連動によるル
電子海図上に捉えられる船舶の情報は、
ムの信頼度を上げて、それらを組み合わ
ートトラッキングや、レーダ映像等を重
現在のところ、レーダによる対物的情報
せてサブシステムの信頼度、性能を上げ
畳表示できる。
に基づいている。そこに、その船がどこ
マリンレーダ(BR-3440)はDAC(Dan-
の国の船で、行く先はどこであるか、と
gerous Area Collision)方式を採用し、
いう運航上の情報もあれば、衝突回避に
新たな機能を"プラグイン(付加)"で
の危険、あるいは機関系の故障まであら
こうした状況の中で、海運企業は一定
現実問題として、船が頻繁に行き交う輻
IMO規格に準拠したARPAと呼ばれる衝
もより有効だろう。こうした機能を実現
きる柔軟性を備えたIBSを軸に、船舶に
ゆる不確定要素に満ちている。ときには
の航海品質を保つ努力をしているわけだ
輳海域などでは、最終的には個々の船長
突予防援助装置からのデータを加えて表
するために、それぞれの船舶が自船の情
おける高度な情報通信システム、そのソ
海域近くでの紛争や戦争が勃発すること
が、洋上にある船舶については、陸上で
の力量に依存せざるを得ない状況を生ん
示する。 近海を航行する他の船舶の動
報を周囲に発信し合うシステムが考えら
フトウエア(例えば次ページ以降で述べ
さえある。だが、こうした予期の難しい
は細かいところまでを把握しきれないと
でいた。逆に乗組員にしてみても、責任
向を把握し、最適航路の表示や、衝突
れている。 これが AIS(Auto Identify
るフリートマネージメントシステム)が
リスクに対しても、海運企業では常に一
いう難点がある。
「たしかにFAX や無線
は非常に重たくなり精神的に負担がかか
回避コースが明示される仕組みだ。
System)
、すなわち船舶の自動認識シス
導入されることで、新しい航海支援シス
定水準の安全を確保し、荷物を無事に
電話などの手段はあるのですが、緊急時
っている。それでは人為的な操船上のミ
(INS A),(INS B)におけるデータ及び
テムである。対向する船舶同士がお互い
テムは、さらなる発展を遂げていくと考
目的地まで届けなくてはならない。それ
にある程度時間を要しますし、視覚的に
スなども起きかねない。
機能は(INS C)に連携し、目的の方位に
に名乗りあえば、双方が動きを読み取る
えられる。伴って航海機器メーカには、
を達成しなくては、荷主からの信頼を勝
伝えにくい場合もある。いずれにせよ、
向かって航海するように舵を自動制御す
ことができる。外航商船だけでなく、客
これらをトータルにサポートすることが
ち得ることができないからだ。そうした
現場のことは現場で対処せよ、という考
まうことは、事故ゼロを目指す側にとっ
る(オートパイロット/PR-6000)
。トラ
船、漁船などが数多く存在する海洋にお
求められてくるだろう。
中、近年、海運に携わる船が質、量と
え方が基本にならざるを得ません。管理
て、安全面で不十分ではないか、との課
もに変化してきていると中村氏は語る。
すべき対象は質、量ともに大きく変容し
題になっているんです。そこで、これか
「まず、商船隊の規模の拡大が挙げら
ているにもかかわらず、陸上からのチェ
らは過重な管理責任を陸上と分担してい
れます。日本郵船では液化天然ガス,石
ックやサポートは十分とは言えない面も
こう、そのためには、操船上のスキーム
油,自動車を運搬する専用船から、コン
あるわけです」
と船のパフォーマンスの管理が非常に重
わけだが、それでは本当に現場で指示が
技術が進歩した現代においても、いち
日本人だけではありませんから、操船技
行き届いているのか、あるいはそのマニ
る方法。それが今後の技術開発の流れて
ど港を離れ洋上に出てしまえば、船を巡
術だけでなくバックボーンとなるカルチ
ュアルの内容が実際の局面において妥当
いく方向」であると言う。
る状況というのは、天候の不良から座礁
ャーや言語も異なってきます」
なのか、の確認は非常に困難だ。それが
トキメックでは、IBS を構成する
機器全てを自社製品でご提供でき
ます。1社単独によるインテグレ
ートは、各機能を確実かつスムー
ズにつなぎ、統一したインターフ
ェイスを確保できます。これによ
り操作性の向上,メンテナンスの
信頼性が高まるほかに、お客様の
ニーズに応じたカスタマイズが容
易であることが大きな特長となっ
ています。
6
●運航管理体制の変化
中村紳也 氏(工学博士)
様化も進行している。操船する乗組員も
統合ブリッジシステム
ECDIS による海図情報と
レーダ画像との重畳表示の例
日本郵船(株) 運航技術グループ海務チーム チーム長
「各人の技量や経験が頼りとなってし
要であろうことが見えてきました」
テナ船や客船まで約500 隻の船舶を動か
では、これまでどのように安全水準を
しています。またその船自体も、自社で
満たしてきたのだろうか。
「1つにはマ
保有しているものばかりではない。傭船
ニュアル化の徹底でした。例えば、
『あ
という形で他の管理会社から船をチャー
る海上交通上の要所では船長なり、当直
ターするケースも半数以上を占めるよう
航海士なりがブリッジに立ち、責任ある
技量にも差はでてくる。しかし、海運企
になっています。乗組員を含めて自社で
指揮に直接当たらなければならない』
業としては安全面で一定の水準を極力キ
●安全と効率輸送
操船するのが人間である以上、当然、
すべて管理するものだけでなく、関係会
『エンジンなどの機関系の管理方法はこ
ープしたい。そうした操船レベルを達成
社に一部任せるもの、第三者的な外国の
うである』など、国際的な標準化コード
していくためには、船陸間の高度な情報
管理会社に乗務員を含めすべて任せきる
に基づき文書化していました」
システムを構築することが検討され始め
もの、と管理主体も管轄領域も複雑に絡
陸上側は、あくまでも着船後の報告書
み合ってきます。さらに乗務員の質の多
の受け渡しで航海の状況を把握してきた
7
ている。
陸上と船との間で情報を交換したり、
特集:船舶の情報化とマネジメント
くことに深く関わっているのだ。
またトラブルの可能性に対して陸上から
積極的に予防情報を流す、万が一発生
●過去の操船情報の蓄積を活用
した場合には、密接にサポートすること
す。では、その判断は何に基づいて決定
たチャンネルの有効利用のために前述の
き、これまでの通信にまつわるイメージ
ムといえる。たとえば、いち早い市況情
されるかというと、過去の運航実績が材
ような圧縮技術や信号の符号化技術など
を180 度、転換することが必要。コンテ
報や港湾情報などを随時、陸上だけでな
料になります」
が必要になってくる。
ンツの質など、もういちど見直すべき時
くブリッジでも入手しようというもの
期に来ているのではないでしょうか」
。
だ。積み込んだ貨物商品の市場の変化に
が可能となってくる。この場合も、船内
「FMS による情報装備は、安全面の
日本郵船のように、500 隻をも管理下
における各種計器からの情報を衛星を通
ほかに、荷主さんとの契約が決まった時
に置くとなると、それぞれの履歴を効率
なわち、
『Communication,Computer,
じて陸上でも把握することで、今後どう
点でどういう船を今回は使用する(傭船
的に管理したり、速やかに情報共有する
Control』がテーマになっていました。
いうスキームでメンテナンスすべきかの
する)べきか、その選択肢を絞り込む際
にも工夫が要る。そのために陸側は、各
つまり、コンピュータ中心の情報通信、
運航の実現へ
庫に貯蔵して相場が回復するのを待つよ
検討ができる。また少ないタイムラグで
の目安としても活用できます。というの
船固有のパフォーマンスをデータベース
あるいは電気信号が通る物理的な伝送路
一方で、鈴木教授は伝送のマルチメデ
うに」というような荷主の意向に応えた
適切なアドバイスも行えるだろう。
は、船も人間のように一隻一隻、異なっ
として備えておく。そのデータと、通信
の制御などハード的な面に主眼が置かれ
ィア化が進むことで、海上通信に従来に
航路修正にも、船陸双方で呼応していく
一方船側においても、陸側のデータベ
た特性を持っていますので、ひいてはパ
によって逐次得る実際に運航している船
ていたわけです。しかし、これからの通
ない価値が付加されてくるとも展望す
ことが可能になるだろう。
ースに常時アクセスすることで、最新の
フォーマンスの差という形で現れてきま
の位置情報とを連動させることで、どの
信には
の要素が重要に
る。たとえば、現在研究が進む 電子翻
今後の船陸間通信では、機関系の情
港湾情報など、必要な情報を必要に応
す。ですから、船の種類や仕様によって
船を次のどのミッションに回すのが最適
なってくるでしょう」
。これまでは、大
訳 や 電子秘書 と呼ばれるインテリ
報をはじめとする船体、船内の情報だけ
じて取得できる。
輸送サービスの善し悪しが左右されてく
となるかをプランニングでき、また安全
ざっぱに言えば、受信側と送信側との間
ジェント通信がそうだ。GMDSS などの
でなく、乗務員のアメニティ(快適性)
このように高度情報システムの導入
るんですね。船の積載量をはじめ、どん
で経済的な船舶管理が可能となる。
を信号が通ればよいという発想に基づい
情報は英語がベースとなるが、各国の船
を考慮したリアルタイムの画像伝送など
は、船に対し、陸上からのサポートとい
な種類の荷物を運ぶのか、目的地はどこ
情報システムを活用した運航のマネジ
てきた。これからの通信は、人間から人
員が乗り込む現在の船舶では、意思の疎
も考えられている。それは、乗組員と家
う ソフトウエア を備えることになる。
で、そのためにどんな航路を通らなくて
メントは、ニーズにマッチした船種の選
間へ情報を伝えるという概念が重要なの
通が難しい場合もある。そこで、電子翻
族の間での TV 電話
それは、従来のように船単体で運航の安
はいけないのか、運航距離は、コストは
択から操船のサポートに至るまで、合理
だ。
訳という、衛星を通じて自動翻訳ソフト
ニケーションも実現していくだろう。
全性を確保していくのではなく、船陸が
……、など総合的に分析した上で最適の
的にリスクを取り除いていくことを実現
一体となり、より高い安全を獲得してい
配船、あるいは傭船という判断が必要で
させるのだ。
H = Human
応じて、「A 港で貨物を陸揚げし、すぐ
●物理的距離を意識しない
に流通に乗せるよりも、一旦、B 港の倉
のようなコミュ
「結局、通信によって情報を得ている
にアクセスする研究が進められ、ロシア
「情報の送受信端末の小型化やこうした
のは人間ですよね。しかしながら、いま
語なども含め約 80 %ほどまで完成しつ
インテリジェント通信を利用すること
までの通信はその人間を置き去りにして
つあるという。
で、実際の地理的な距離を感じさせない
語られていた部分がある」
。操船ブリッ
また、 電子秘書 は情報検索などを
ジでも、数多くの計器類があちこちに分
効率化するためのエージェント・システ
船陸間の通信が我々の身近なものになる
と思います」
散していては、情報を常に管理するとい
Report 2
高密度なコミュニケーションを可能にするマルチメディア船陸間通信
情報通信における近年の新しい傾向として、人間の情報処理能力の特性を活かした通
信ネットワークの構築と通信作業の非専門化、非特殊化を挙げられる。船陸間通信にも
こうした視点を取り入れることで、今後、船内と陸上でより快適なコミュニケーション
が成立していくと考えられる。
日本工業大学教授
「これまでの通信は3つの『C』、す
うことは非常に難しい。だが、
「どんな
情報でも最終的に判断し、利用するのは
人間の思考である。だから、情報も人間
現在、船陸間における衛星通信で主に活躍している衛星が、インマルサットや NTT が運用する N-
工学的に捉えるべきだ」と鈴木教授は言
STAR だ。静止軌道上にあり、世界中に散らばる船舶がどの海域にいても通信を行える。船舶の標準と
う。
ルサット衛星では、送受信できる情報の種類も多く、電話、ファクシミリ、データなどほとんどの形式
特に、情報の絞り込みが重要だ。人間
鈴木 務 氏(電気通信大学名誉教授)
■衛星を使った船陸間通信の今後
の思考特性は刺激として入ってきた信号
を常時、100 %理解し、瞬時にどれも等
なった遭難・安全通信システム―GMDSS ―においてもインマルサット衛星は利用されている。インマ
に対応する。ライデックス社が開発した船陸間での電子メール送受信システムもインマルサットを利用
したアプリケーションである。本年末にはインマルサットB を使用した初の船陸間画像伝送実験が予定
されていることにも本文中(P7)でも触れた。
そうした静止衛星以外の利用で、最近、話題になっているのが、中高度、もしくは低高度軌道上の
周回衛星を利用する通信システムだ。ひとつの円軌道しかない静止軌道と比べ、利用できる衛星数、チ
しかし、少人数での航行管理が行われ
では、どんなシステムを使って陸上と
しく利用しているわけではない。本当に
もはや「通信」という行為が、特殊な
る現在の船内環境においては、いくつか
海上で双方向の通信を行うのか、が具体
重要な信号だけを取捨選択し、それだけ
を使うICO のサービスは、2000 年からの開始予定。衛星を介した携帯電話サービスを提供していく考
免許を要する専門的な仕事ではなくなっ
の作業を兼務することが当たり前になっ
的な課題となる。
を「情報」として受け取っている。逆に
えだ。
てきた、と鈴木教授は指摘する。たとえ
てきている。特に、緊急時の発信などは、
「本年末ごろには、インマルサットB
言えば、その重要な核心的なシグナルだ
ローラ社など出資するテレデシック計画をはじめ、アルカテル社のスカイブリッジ計画などがある。テ
ば、携帯電話に代表されるように、端末
通信の専門家でなくても乗組員の誰もが
を経由した初の船陸間画像伝送実験を
けをまとめて送信すればよいとも言える
レデシックのシステムでは高度 700km に288 機の衛星を打ち上げる予定。衛星間通信を行うことによ
の小型化や操作の簡易化によって移動体
行えるほうが望ましい。また、乗組員と
考えています。今回の実験では新しく開
わけだ。端的にいえば、それが情報の符
● 人間 を主体とした通信技術
通信は急速に普及した。それは、船陸間
陸上とのコミュニケーションが盛んにな
発された情報の圧縮方式を利用して、陸
号化や圧縮技術である。従来の通信の発
での通信についても言える。海上通信は
れば、これまで沖に出てしまえば、半ば
上と海上を結ぶスムーズな映像伝送を実
想では、それは「欠落して」送っている、
もともと通信士によるモールス符号電信
「孤島」と化してしまっていた船内生活
現する考えです」
。衛星通信は、衛星の
つまりは通信品質の劣化と捉えられかね
や無線通信によって築かれた、非常に専
に、陸上とのつながりを持つことで安心
中のトランスポンダ(中継器)を経由し
ない考え方とも言える。
「ですが、情報
門性の高い分野だった。
感が生まれるとも考えられる。
て送受信を行っている。そこで、限られ
を利用する主体が人間であると考えたと
8
ャンネル数が格段に増えるメリットがある。高度約1万km の中高度軌道に打ち上げた衛星(MEO)12 機
また、低高度軌道の衛星(LEO)を打ち上げるものには、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏やモト
って、ダウンリンク時には1 秒間に最大 64M ビットの情報伝送を実現すると言われている。
このように、さまざまな移動体衛星通信の可能性が増えることにより、それぞれの特徴を活かした利
用が可能になる。従来からあるインマルサットのような通信インフラを利用すれば、新しく衛星を打ち
上げるよりは経済的であり、それが利用者コストにも反映されうる。だが、高度3万6000km 以上の静
止衛星では、低高度の周回衛星と比べ、送受信時にわずかながらタイムラグが生じうることは避けられ
ない。そこで、たとえば高い通話品質を求められる場合には中・低軌道衛星を使い、船体情報などを
定期的にバッチ処理でまとめて伝達する場合には静止衛星を使うなど、柔軟な選択がされるようになる
だろう。
9
図 1
01
時間制御性
光技術の拡がり
光応用技術
「光源」と「受光素子」の発展が
光エレクトロニクスを伸長させていく
光通信
リモートセンシング
光演算
空間制御性
エレクトロニクス
土木・建築工学
機械工学
農
学
バイオテクノロジ
バイオテクノロジー
ホログラフィ
ホログラフィー
データ処理・表示
測量・照準
1960年のレーザの発明により、「光学技術」と「エレクトニクス」は互いの境界が取り払われ、「光エレクトロニクス」とし
レーザ
て飛躍的な発展をとげました。
今回は光技術応用における裾野の広がりを俯瞰し、その将来展望をご紹介します。
見るように、従来は理論上のみでの現象であったものを、
1 はじめに −光技術の歴史−
我々に実際に見せてくれる「夢の光」を与えた。エレクトロ
人類が「火」を使い始めた有史以前から「光」は人類に大
ニクス分野に対しては、電波領域の電磁波と同じ性質を備え
きな関わりを持ってきた。しかし、「光」が長きに渡り利用さ
た波長の短い電磁波を与え、扱う周波数を10GHz程度から
れてきた割りには、「光」を科学的に扱うのは17世紀以降ま
一気に100THzのオーダに押し上げた。
で待つことになる。かのガリレオでさえ「幾何光学」の範疇
また、レーザはセンシングの分野にも大きな恩恵をもたら
を出ず、「光」の本質には触れていない。「光」の本質は18世
した。トキメックが得意とするジャイロスコープの分野には、
紀後半の波動説に端を発し、アインシュタインの光量子論、
マイケルソンが実験した600m×300mの巨大な光ジャイ
相対性原理でようやく極められた。
ロを、現実的な大きさにまで小さくすることを可能にしたの
物性物理
化
学
情報科学
生命科学
周波数制御性
化学工業(光化学)
分光分析
環境計測
エネルギー制御性
光化学プロセス
光化学
光化学プロセス(半導体プロセス)
プロセス(半導体プロセス)
(半導体プロセス)
医
療
加
工(溶接・切断)
工
が好例である。
一方、「光」の技術的取り扱いは「光線」としての取り扱い
赤外域までの広範囲を実用域とし、光パルスは数十フェムト
応用の「枝」を見ると、時間制御性を利用した通信、セン
で発展してきた。
3 光技術応用の現状と将来展望 −光技術の拡がり−
ギリシャ時代に既に反射の法則が取り扱われ、13〜15世
秒と極限近くにまで短縮されている。
シング、空間制御性を利用した情報処理、土木・建築、周波
しかし、応用面からの要求は「より短波長、より長波長」、
数制御性を利用した分析、エネルギー制御性を利用した加工、
紀の眼鏡用としてのレンズの完成、20世紀初頭のカメラの完
レーザの発明から約40年が経過した今、光学とエレクトロ
医療への応用と様々な分野で開発・実用化が進められている。
「より短く」が望まれ、21世紀にはその波長域をX線領域か
恩恵をもたらした。「光技術」即「光学器械技術」の発想は、
ニクスが融合した「光技術」は光エレクトロニクスとして飛
一方、
「光技術」の大きな「幹」の一つに「視覚」の高度化、
らサブミリ波領域にまで実用域を拡げ、光パルスは数フェム
我々の最も身近にある「光を利用する技術」が「光学器械技
躍的発展を遂げ、多くの分野で利用されている。応用分野は
つまり画像処理技術の進歩がある。この分野はレーザの恩恵
ト秒と光の1周期以下のパルス幅にまで短縮されることが予
術」であることによる。
ありとあらゆる分野に及び、我々の活動に関与する全ての分
よりはエレクトロニクスの発展、特にCCD(Charge
想される。これらの発展は従来の「光波」の常識を越えた応
野に応用されていると言って過言ではない。
Coupled Device)を代表とする固体撮像素子の進歩とCPU
用を生み出し、科学技術の進歩にも寄与するであろうし、
これらは、レーザの持つ優れた特性によるところが大きい
の進歩による信号処理の大容量・高速化によるところが大き
我々に大きな恩恵を与え続けることが予測される。
が、幾何光学、物理光学、画像光学、電磁気学等の多くの学
い。我々の「目」と「判断」の機能を持ち、かつ高速・高精
一方、光源の発展は受光素子の発展を促し、受光素子を
問体系により支えられているのである。
度化を可能とした画像処理技術は、我々に大きな恩恵を与え
「目」とする画像処理技術も我々の「目」で見えない波長域で
成に見られるように、「光学器械技術」の進歩は我々に多大な
しかし、近年喧伝される「光技術」は視覚を中心とする
「光学」と電磁波を中心とする「エレクトロニクス」を融合し
た新しい技術分野であると考えるべきである。
レーザの優れた特性は(1)時間制御性、
(2)空間制御性、
2 光技術の発展 −レーザの発明−
(3)周波数制御性、(4)エネルギー制御性に集約できる。
の画像処理が簡便化される。また、エレクトロニクスの発展
る技術として応用分野を拡げている。
上述のような「光技術:光エレクトロニクス」の発展の歴
は「判断」の高速・高精度化に磨きをかけ、新しい「目」の
1960年のメイマンによるレーザの発明は、今世紀最大の
図 1にこれらの特性を利用した応用分野を示す。物性物理を
史は、
「光源」と「受光素子」の発展の歴史だと言っても過言
獲得と相まって、画像処理の分野も「視覚」を越えた新たな
発明の一つに数えられ、光学技術、エレクトロニクス両分野
はじめとする基礎科学、エレクトロニクスから農学まで幅広
ではない。
「光源」としてのレーザは応用面からの要求に応え
領域へと踏み出す。
が飛躍的な発展を遂げる基になった。
い学問体系に支えられ、レーザを「幹」として多様な応用が
るべく、その波長域の拡大、光パルス幅の短縮の努力が重ね
花開いている。
られた。その結果、波長域は0.2μmの紫外域から10μmの
すなわち、光学分野においては、ホログラフィ技術に例を
10
「光」を利用する、光技術はその応用分野をますます拡げ、
真の意味での「光の世紀」が到来する。
11
列車の運転保安に欠かすことのできない保線。その作業は深夜に行われる
01
光応用技術
一方、画像処理技術の高速・高精度化はレール遊間計測
4 トキメックにおける光技術応用 −光応用製品−
(写真④)を非接触かつ移動中の測定を可能にし、印刷欠陥検
出(写真⑤)を人間の「目」から開放するとともに、効率向
上を達成した。
トキメックにおける光技術応用の歴史も上述の歴史と軌を
光技術のより一層の発展は、トキメックの製品群に対して
同じくし、1910年代の「光学式測距儀」の開発に見られる
も影響・恩恵を与え、新しい光技術を取り入れることで、新
ように「光学器械技術」から始まっている。
センシングの分野にも革新をもたらしたレーザの発明は、
たな機能を持つ製品群が生まれるはずである。
「光ジャイロ」の実用化を可能にし、リングレーザジャイロ
(写真①)や光ファイバジャイロ(写真②)の製品化を現実と
参考文献
した。また、半導体レーザの進歩によるレーザのコンパクト
1.光ファイバ応用技術集成:末松安晴監修,1986.12,日経技術図書
化は、「夢の光」のフィールドでの使用を現実のものとし、レ
2.ここまできた光技術:浮田宏生,1995.10,講談社ブルーバックス
ーザプロファイラ(写真③)を製品群に加えた。
①リングレーザジャイロ
③レーザプロファイラ
②光ファイバジャイロ
④レール遊間量測定装置
12
⑤印刷欠陥検出器
キ
ー
ワ
ー
ド
は
効
率
化
と
シ
ス
テ
マ
チ
ッ
ク
な
デ
ー
タ
管
理
!
ことが多いため実際に目するチャンスは少ないのですが、保線の重要な役
割を果たすシステムの1つにレール探傷車があります。そしていま、最新鋭
の検査装置を搭載したトキメックのレール探傷車が九州旅客鉄道株式会社
保
線
作
業
の
革
新
を
追
求
す
る
九
州
旅
客
鉄
道
株
式
会
社
で活躍中です。今号では、九州旅客鉄道株式会社の保線に対する取り組み
を話題の中心としながら、レール探傷車の導入効果についてレポートいた
します。
信頼性の高い検査を
が手作業で行うものですからどうしても
実現するために
検査データに個人差がでやすい。こうし
たヒューマンファクターを排除して、客
九州旅客鉄道株式会社は本社直轄お
よび長崎支社、大分支社、熊本支社、
鹿児島支社を擁し、本線軌道延長は
観的なデータを得たいという希望は以前
から強く持っていました」
(浜崎課長)
「ひとくちにレール検査と言っても、
2,900キロにおよびます。その線路の保
その種類は多岐にわたります。私共は
守業務を行っているのが施設部保線課
検査の自動化を可能な限り図っていき
です。
たいと考えています。このたび導入し
「今までレール検査を手作業で行って
たレール探傷車には超音波レール探傷
いました。しかし、鉄道の高速化や大量
装置のほか、レール断面磨耗測定装置
輸送化に伴うレールに対する負荷の増大、
やレール波状磨耗測定装置も装備して
より安全で快適な輸送を確保するという
おり、これによって検査効率の飛躍的
立場から、効率的な検査が強く望まれる
なアップが図れました」
(紺屋)
ようになってきたのです。保線作業の省
レール探傷車は今年の4月から稼働
力化と効率化はもちろんですが、もう一
を始め、8月4日現在でおよそ660キロ
つ重要なのがデータのクオリティアップ
の測定を終えています。実際に使われ
です。今までのクオリティが低かったと
てみてのご感想はいかがでしょうか。
いうわけでは決してありませんが、人間
13
「先日、私も検査に同行したのです
浜崎 明氏
九州旅客鉄道株式会社
施設部 保線課 課長
が、車内のレイアウトが大変スマートで
ます。レール探傷車だけでなく、各種保
これらのデータをハードディスク上にス
「通常、距離情報は走行車輪に取り
線車両の制御にも役立てられる便利なシ
トレージして鳥栖レールセンターで一括
付けられたパルスジェネレータのパルス
ステムです。全営業路線にデータデポを
してデータ処理が行えるようになったの
を計測して得ています。しかし、長距離
導入いただいたのは九州旅客鉄道株式会
です。こうして蓄積されたデータによっ
を走る間には車輪のスリップなどによる
社が初めてであり、保線作業の革新に取
て、将来的にはレールの経年変化を時系
誤差が蓄積され、探傷距離が10km の場
り組む強い姿勢がうかがえます。
列で分析したり、保線・修理計画、あ
それを防止するために、全営業路線にト
このように九州旅客鉄道株式会社で
キメックさんのデータデポを敷設しまし
は、保線作業を総合的な見地からシステ
た」
(浜崎課長)
マチックに行っています。たとえば、探
力が加わるわけで、そうなるとレールが
るでオフィスで働いているようでした
磨耗の2つを計測することによって管理
熱膨張で張り出してしまうため列車の運
(笑)
。それと、やはりBスコープによる
しています。断面磨耗はレール頭頂面や
行ができなくなります。そうならないよ
超音波探傷結果というのはわかりやすく
側面の磨耗を指し、レールの長手方向に
うに、適正な遊間量で膨張を吸収してや
いていい。Aスコープの波形表示は傷の
直角の断面形状を測定することによって
っているのです。しかし、当社の遊間検
判定が難しいため評価結果に個人差が現
検査を行います。従来は専用の測定器に
査対象レール延長は 4,400km もあり、
れることもありますが、Bスコープのイ
よって人力手動で行われていましたが、
検査・整正・巡回の管理業務には多大
メージ画像ならそういうことも無くなり
大変手間のかかる作業だったのです。こ
な労力を費やしていました」
(浜崎課長)
ます」
(浜崎課長)
れがレール探傷車に搭載されることによ
「従来は歩きながらゲージを差し込ん
「レール内部に超音波を入射すると傷
って自動化され、数 10km の区間に及ぶ
でレール温度,レール長さ,遊間量を測り、
からのエコー以外にも様々な反射エコー
大量の測定が容易に行えるようになりま
ハンディターミナルに入力するという作
が受信されます。これらの反射エコーと
した。一方の波状磨耗はレール頭頂面に
業を1カ所毎に行っていました。また、
傷からの反射エコーを識別するのが今ま
できる波状の磨耗で、これが発生すると
レール温度によって測定時期が限定され
では非常に難しかった。このような識別
乗り心地の悪化や騒音の原因となりま
るため、多くの人手を要していたのです。
についてもBスコープ画像での表示は有
す。これも従来は記録紙に転写する手動
このたびのレール遊間量測定装置の導入
効ですね。ボルト穴のような人工反射源
の測定器で検査が行われてきましたが、
によって1回の検査で約 50km の遊間量
との区別ができるだけでなく、ボルト穴
レール探傷車から走行中に非接触で行え
測定ができますので、少人数で効率的な
に派生する横列欠陥も発見できるように
るようになりました」
(紺屋)
検査が行えるようになりました」
(紺屋)
◆◆◆
データデポの地上子には距離程情報が
傷記録をはじめとする膨大なレール情報
書き込まれています。これを1km 間隔
のデータベース化を図るため、鳥栖レー
で枕木に設置し、線路上をレール探傷車
ルセンターに地上局を設置しました。従
が通過する際に車上側のアンテナから距
来はレール探傷車が作業を終えて車両基
離情報をダウンロードすることによって
地に戻った後、保線スタッフが車上でデ
探傷装置
るいは手探傷の検査指示書作成などにも
応用されていくことでしょう。
(文中敬称略)
取材協力:九州旅客鉄道株式会社殿
データデポ
また、九州旅客鉄道株式会社ではレ
ール探傷車だけでなくレール遊間量測定
装置も7台ご採用いただいています。レ
データデポで
ール遊間とはレール接合部の隙間のこと
レール欠陥位置を確定
レールを総合的に
です。夏場は熱膨張によってレールが伸
診断するために
びますが、接合部分に適切な遊間(隙
鉄道において、線路上の位置は起点か
間)が無いとレールに歪みが起きてしま
ら距離で表され「距離程」と呼ばれてい
います。
ます。この距離を正しく知ることは、保
レールの検査項目は内部欠陥だけでは
できなくなってしまうからです。
合だと数 10m の差ができてしまいます。
「レールの磨耗測定は断面磨耗と波状
大きく貢献しますね」
(紺屋)
ータを再確認する必要がありましたが、
九州旅客鉄道株式会社
施設部 保線課
乗った感じがとても良かったですね。ま
なりました。これは保線データの充実に
正確な距離情報を得ることが可能になり
紺屋 直光氏
す。つまり10 ℃上がれば約 15 トンもの
必要があります。
できなくなり、探傷データの有効活用が
ありません。車両の通過に伴って進行す
「たとえば、表面温度が1℃上がると
るレールの磨耗状態も定期的に点検する
レールには約 1.5 トンの応力が溜まりま
14
線車両にとって重要な意味を持ちます。
これが間違っていると欠陥位置の確認が
レール遊間量測定装置
断面摩耗測定装置
CCD カメラで撮影した画像データを基に遊間量の計算表示やレール継目部のビジュアル点検が行
える新鋭機。軌道管理作業の効率アップに大きく貢献しています。写真右はレール遊間の画像例。
15
ロボットや人工知能の開発には多
くの資金,時間,人材、そして最先
てくれる運動システムを持つ機械、
会「ロボカップ」が行われた。ロボ
長性のない完全にプログラムされた
それがロボットである。
ットは複数でチームを作り、ボール
動きというのは、外乱に対して非常
に弱い。
端の技術が必要になる。ロボットの
一方で、人工知能とはコンピュー
を蹴って(もしくは動かして)対戦
歩行運動ひとつをとっても、そこに
タとともに発展してきた考え方だ。
する。だが、お互いに通信で連絡し
また、ひとつの最適解を探す目的
は大量のデータの集計、その統計処
たとえば、目的地へ向かうルート検
あったり、あるいは時にノイズを発
的な人工知能システムだけでなく、
理から始まってセンサ技術や制御理
索のように時間や予算などの与えられ
信して相手チームを撹乱するなど、
解答を
論も欠かせない。それでも世界中で
た制約条件から、最適な答えを探す
一種のチーム戦略を行える点がユニ
知能も提案される。反復演算によっ
研究・開発はさかんに進めらている。
場合などにその威力を発揮する。要
ークだ。これによって協調や対立と
てある一つの解に収束させることを
その理由は生命を模倣することを通
は、しらみつぶしに条件に該当する
いう利害関係、ひとつの大きな社会
しない、とも言えるかも知れない。
ものを探しにいくわけだが、コンピ
性をも模倣することになる。チェス
そういった、ひとつの「生き方」の
ュータならば何万回の計算でも瞬時
などのように、1対1で相手の動き
枠にはめない知能づくりが考えられ
じて生命そのものの神秘や不思議に
なることで、医療機関や福祉関係者
触れられるからではないだろうか。
などがロボットを介して、間接的に
ロボット らしくない
ロボットの登場
21世紀を目前にして、ちょっとし
ロボットと
人工知能の融合
積極的に探そうとしない
暮らしぶりをチェックすることもで
こうしたロボットには、学習機能
にやってのける。さらに、過去のデ
をゆっくり見てからおもむろに計算
る。先ほどのサッカーゲームのよう
きる。ロボットの活用次第で、この
や判断機能を備えた人工知能が多く
ータを蓄積し、それを試行の度にア
を開始する、という「知能」とは状
に、得点の多いほうが勝つという大
ようにデリケートな部分もうまく解
併用されている。ところが、このロ
ルゴリズムへとフィードバックすれ
況が異なり、戦局は流動的に変化す
枠のルールはあるものの、その中で
消することができそうな例である。
ボットと人工知能はそれぞれ由来を
ば、効率的な解決方法に収束させる
るのだ。実際は口で言うほどにロボ
どう振る舞うかについてはプログラ
たロボットブームが起きている。ソ
知的なロボットが生活の中に溶け
別にしている。ロボットは、1920年
ことできる。 自己学習 も可能であ
ットは順調に動かない場面も散見さ
ム自体は言及しない、利害に応じて、
ニーが今年6月に発売した犬型ペッ
込み、コミュティの一員を成すのは
にチェコの作家が自分の作品の中で
るのが人工知能だ。
れたのだが、ロボットや人工知能の
状況に協調もしくは対立していくの
トロボット「アイボ」がまず話題を
もはや時間の問題でありそうだ。だ
チェコ語の「強制労働」を意味する
このように、ロボットと人工知能
世界に一種の「社会性」を持ち込ん
はロボットの裁量に任せる、という
呼んだ。さらにオムロンでは猫型ロ
が、何もペット型のような「形状」 「ROBOTA」から造語したもの。SF
は異なった位相にある。そのため、
だ点はおもしろい。こうしたネット
考え方だ。
ボット「タマ」を来世紀初頭の販売
にこだわらなければ、電子炊飯器か
や映画の世界で描かれる「人間型の
その基礎的な研究方法もまた異なる。
ワーク化され、コミュニケーション
さらに、二足歩行が得意なロボッ
に向け開発中であり、松下電器産業
ら自動車まで、すでに生活のあらゆ
機械」という不変的なイメージはこ
たとえば、ホンダが開発した「P2」
を図れる機械の研究は今後も進めら
トと、マジックハンドのような手の
からも「たま」と呼ばれる高齢者向
る側面にICチップと化したコンピュ
こから始まっている。ペットロボッ
や「P3」といった、階段の昇降や台
れるだろう。
動きに優れたロボットの長所を採り
けのロボットが登場する予定だ。複
ータが入り込んでいる。特に自動車
トなども、本家たる動物の持つ「ら
車押しなどをスムーズにこなす人間
雑な動きや仕草をこなしたり、優し
分野ではその進歩が著しい。ギヤチ
しさ」にどこまで近づけるか、に対
く扱えば 機嫌が良くなったりする
ェンジなど、ドライバーの動きを学
する回答のひとつと言えよう。
その振る舞いに、思わず「意識」や
習できるインテリジェントカーのほ
無論、前述のように形状模倣にこ
タの採取や運動系の解析があったと
まず、環境順応性を持たせること
「心」といった内面性さえも見出して
か、運輸省をはじめとした関係5省
だわらなければ、その使用目的に一
いう。人間は歩行時においてどのよ
が挙げられる。人間や動物はアクシ
ースを利用できるようにしたことは、
庁では交通体系の情報化を図るITS
番マッチした形と動きを初めから与
うに筋肉を動かし、地面からの力を
デントや外乱に満ち、先々の予測が
ロボット開発者層の裾野を拡げるこ
こうした新しいタイプのロボット
(Inteligent Traffic System)を進めてい
えたほうが効率的である。アーム型
どう分散しているのか。ロボットを
難しいなかで生活している。ホンダ
とにも貢献すると考えられる。
にはいろいろな役割が期待されてい
る。カーブ直前になるとスピードを
の産業用ロボットなどはまさにその
作るには、はじめに人間の研究あり
の歩行ロボットでは、歩行機能にお
このような課題を乗り越えること
る。たとえば、松下電器の「たま」
落とすといった、判断機能を備えた
典型だ。また、東京工業大学・広瀬
きというわけだ。
いて従来のボディの安定をどう確保
で、ロボットと人間の新しいかかわ
はISDN回線を経由したネットワーク
「スマートカー」の開発もついに始ま
茂男教授が研究、開発している地雷
するかという考え方を逆転させ、不
り合いが生まれてくるはずだ。何よ
機能を備え、 飼い主 との会話など
った。これが進めば、もはや車とい
除去作業を行う四足歩行のロボット
安定な状態をむしろ当たり前のもの
りも、こうしてロボットを研究する
をデータ通信によって遠隔地にいる
う手動機械ではなく、移動用ロボッ
も、そのカテゴリーに分類されるだ
として、それを常にセンサで感知し、
ことは、人間自身が自分たちの存在
第三者に伝送できるのがポイントだ。
トとも呼べるものになりそうだ。
ろう。このように、人間、もしくは
1997年、名古屋において第一回の
随時リアクションを起こすという柔
を見直す独特の視点を与えてくれる
ロボットによる国際的なサッカー大
軟性を持たせているのが特徴だ。冗
ことに注目していたい。
愛着を感じてしまう。
例えば一人暮らしの老人の随伴者と
動物の行う特定の
16
仕事
を代行し
ここであらためて、今後、ロボッ
入れ合うような、開かれた情報交換
型歩行ロボットの開発プロセスには、
トには何が求められるかについて触
も必要になる。ソニーがペット型ロ
各種センサなどを使った膨大なデー
れてみたい。
ボットのような今後のロボットの基
共生するロボットに
必要なもの
17
本仕様「OPEN-R」を公開し、そのソ
ト ル伝
キ ・統
メ マの
ッン
ク
2年間戦ってきたR390 に代わって登場したニューマシ
ンR391。基本に忠実なデザインで、美しいフォルムが特
徴だ。23 号車は予選クラッシュのためリタイア、22 号車
のみで決戦に臨む。順調に周回を重ね、一時は4位まで
上がるが電装系のトラブルのため110 周目で残念ながら
リタイアした。
ニッサンR 391 のラップテレメータに、
SS通信トランシーバモジュールが採用さ
れました。
モータースポーツの最高峰といえば、誰もが真っ先にF1GP
を思い浮かべることでしょう。しかし、耐久レースの祭典『ル・
マン24時間レース』を忘れてはいけません。ルマンカーはF1と同
等の最高時速300km/h以上でサーキットを疾走するモンスターで
あり、しかも、そのスピードを維持しながら24時間走りきるので
すから、そのパフォーマンスたるや恐るべきものがあります。
そして、67回目を迎えるル・マン24時間レースは去る6月12
〜13日にフランスのサルテ・サーキットで開催されました。この
ル・マンに参戦した日産ワークスチームのマシン、R391のラッ
プテレメータとしてトキメックの高速データ伝送用トランシーバ
モジュール『TWU 2400』をご採用いただきました。
ここで、R391の開発に携わった日産自動車株式会社殿の小野
氏と進士氏にお話をうかがいながら、ラップテレメータとは何か、
の
技
術
時
レ
が
本 ー間
領ス
発で
揮
!
――ラップテレメータとはどのような働
す。それなら、無線でやればどうかとい
ところ、
「ぜひ一緒にやってみましょう」
きをするものですか。
う検討を始めたところで、次回のレース
ということで、今回のラップテレメータ
小野 簡単に言えば『マシンの状態をピ
からテレメータが解禁になるという情報
が完成しました。
ットに居ながらにして知る装置』という
を得ました。そこから本格的に活用の検
ことになります。具体的には、冷却水温、
討が始まったのです。
――ラップテレメータによって1周毎に
油温,油圧,電圧,エンジンの燃焼状
小野 ただし、静止しているマシンと走
データを得るのとピットイン毎にデータ
態などの各種データを、ピット前を通過
行中のマシンとでは電波の環境条件があ
を得るのとでは、レース展開にどのよう
する1ラップ毎に無線で高速伝送すると
まりにも違いすぎます。果たして、ちゃ
な違いが現れるのでしょう。
いうものです。
んとデータ伝送できるのだろうかという
進士 ル・マンの場合、一度ピットを後
心配がありました。しかもテレメータ解
にすると、12 〜13 周は戻ってきません。
――どの程度のデータ容量を伝送してい
禁の情報を得たのが昨年の 10 月末、マ
1周のラップタイムはおよそ3分 30 秒
るのですか。
シンは3月にはシェイクダウンに入るた
ですから、約 45 分という空白の時間が
小野 マシンがサーキットを一周してス
め、その開発に割ける時間はわずかしか
生まれてしまう。その間に何かあったら
トアするデータはだいたい 120kbyte で
残されていなかったのです。そこでSS
手の施しようがありません。ところが、
す。それを、時速 200km/h 前後でピッ
データ通信で実績のある御社に相談した
1ラップ毎にマシンの状態を知ることが
ト前を通過する3秒間弱で送信します。
――ラップテレメータ導入に至る背景に
ついてお聞かせください。
進士 ル・マンは92年からレギュレーシ
ョンによってテレメータが禁止されてい
日産自動車(株)
モータースポーツ開発グループ
が非常にできにくい環境にありました。
しかし、我々は量/質ともに満足できる
データを得て、その解析によってレース
を有利に展開することがどうしても必要
入社以来、電気自動車用モータ制御開発やエンジン制御開
発、モータースポーツ専用エンジン電子制御開発に携わって
きた制御技術のスペシャリスト。ルマンには87 年からエン
ジン制御とデータ処理技術開発に従事している。
だったのです。そのため、レギュレーシ
ョンをよく調べてみると、禁じられてい
るのは走行中のマシンからデータを得る
ことだけということがわかりました。つ
小野 輝久氏
まり、ピットで停止中のマシンからデー
日産自動車(株)
計測技術センター
タを吸い上げることは何ら問題ないとい
うことです。そこで、マシンにデータロ
ガを搭載してデータをストレージする方
法も考えたのですが、ピットインのわず
レース展開にどのようなアドバンテージをもたらすのかなどにつ
かな時間の中では、メモリーカードを抜
いて、説明をしていきましょう。
き出すという数秒の時間も惜しいので
01
進士 守氏
ましたので、データを一元管理すること
ボデー実験部における商品開発部門での計測技術開発をはじ
め、計測技術センターでは開発・生産両部門での計測技術
開発に従事する。98 年よりルマンプロジェクトに参加。
R391 ではラップテレメータ開発ならびにセンサ開発を担当
した。
19
受信アンテナ
ピット
できれば、トラブルを微小な段階で察知
――レーシングマシンの車上という条件
メータの送受信モジュールとしてトキメ
とによってより完成度の高いものができ
できます。次にピットインしてくるまで
は、無線データ通信を行う上で非常に厳
ック製を選んだ理由のひとつに、御社は
たと思います。
に不具合箇所を確定させ、部品を用意
しい環境条件といえます。
『TWU 2400』
航空・宇宙市場向けに MIL スペックの
はラップテレメータの心臓部としてご満
マイクロ波デバイス機器を納めていると
残念ながら99 年のル・マン24 時間レ
足いただける性能を発揮したでしょうか。
いうことがありました。過酷な要求条件
ースにおいて、ニッサンR391 は完走を
小野 ユーザの立場からしてみると、本
をクリアしているという実績を信頼して
果たすことができませんでした。来年の
ですから、トラブルでリタイアというの
当に振動やノイズに耐えられるのか、ち
のことです。ラップテレメータの開発に
参戦はまだ検討中というお話ですが、今
が一番怖い。そうした芽は小さいうちに
ゃんと電波が飛ぶのかという不安はあり
あたっても、短期間でスピーディに対応
年の雪辱を果たすためにもぜひ新たなチ
ました。しかし、結果的にはすべてパー
していただいて本当に感謝しています。
ャレンジを期待したいと思います。その
フェクトでした。最初のテスト走行の時
進士 レーシングマシンは振動がものす
時は、ラップテレメータの中核としてト
は正直言ってドキドキしましたが、ファ
ごいので、送信ユニットの振動対策には
キメックのSS無線通信トランシーバモ
ーストラップでピットにデータが送信さ
特に神経を使いました。私たちがレース
ジュールも共にレースを戦っていること
――トラブルの回避という側面だけでな
れてきたときは心の中で密かにガッツポ
で培ったノウハウもありますが、トキメ
でしょう。
く、レースの戦略的な運営にも役立つと
ーズをしていました(笑)
。ラップテレ
ックさんの的確なアドバイスを受けるこ
して体制を整えておけば大きなトラブル
燃料供給タワー
に至ることなく走り続けられるのです。
とにかく 24 時間という長丁場のレース
送信アンテナ
摘み取ってしまうという意味でも、ラッ
プテレメータから得るデータは非常に重
要なのです。
ECU
送信ユニット
(TWU 2400)
車載センサ
Eg.回転数
水 温
油 温
油 圧
燃 圧
燃 温
燃料噴射量
排気温
燃料状態
電 圧
車 速
etc
◆◆◆
うかがいましたが。
進士 たとえば、走行中のマシンは排気
量 5,000cc もの大きなエンジンでサーキ
ットの大部分を全開走行しているため、
高速データ伝送用トランシーバモジュール『TWU 2400』
走行中は燃料だけでなくエンジンオイル
も消費していきます。ですから、レース
『TWU 2400』はSS無線方式(Spread Spectrum)を採用した
の作戦を組み立てる上においては、燃料
高速データ伝送用トランシーバモジュールです。スペクトラム拡散通信
補給のタイミングと共にエンジンオイル
方式とも呼ばれるSS無線方式は、ラジオやテレビの放送のように決め
の補給も考えなくてはなりません。こう
した時はラップテレメータから得たデー
タを基に検討し、的確なタイミングで判
ドライバーの前方に小さく
突き出ているラップテレメ
ータのアンテナ。
られた狭い周波数帯に無線エネルギーを放出するのではなく、20MHz
以上の広い帯域に弱い電波を薄く拡散させるというもの。特長としては、
優れた秘匿性と耐ノイズ性、混信のない多元接続などが挙げられます。
断します。また、レースマシンそのもの
トキメックでは、SS無線方式を採用したトランシーバモジュールの
をケアするメカニックのほかに、データ
開発にいち早く着手しており、
『TWU 2400』にはそのノウハウが余す
処理を専門に行うスタッフが大勢いま
ことなく発揮されています。SS通信の特長に加え『TWU 2400』は
す。今やレースの運営においてはデータ
以下の特長を備えています。
処理をいかに効率よく行うかが求められ
▼専用に開発したディジタル相関器を用いて素早い同期補足を行い、スループットの低下を防止
ており、それはすでに戦闘力の一部とな
▼郵政省技術基準適合証明を取得しているので免許が不要
っています。つまり、エアロダイナミク
▼ 16 ビット高速マイクロコントローラを内蔵。パケット構造はRCS STD-33A に準拠
スやエンジンパフォーマンスと全く同一
のパラメータで、データ処理が語られる
時代になっているのです。その中におい
て、ラップテレメータは最も重要な存在
マシンに搭載された送信ユ
ニット。
『TWU2400』のユ
ニットは、この中に万全の
防振対策を施されて封入さ
れている。
▼モジュール裏面のコネクタ(50P)より、他機器に容易に接続可能
▼拡散符号の変更が可能(11 〜 31)
無線 POS システムなどのストアオートメーションや工場内移動システムなどのファクトリーオートメーション、画像伝
送システム、無線操縦システムの送受信モジュールとして高い性能を発揮します。
として位置づけられています。
20
21
冒険スキーヤー 和田好正のV-9 チャレンジ
南極活火山から、北極圏最高峰までに挑む!
和田さんの新チャレンジ V-9 2000 年 アドベンチャースキー計画は、
「21 世紀へ、今の
地球を伝える」をコンセプト。南極の活火山〜北極圏最高峰での滑降に挑むことで、地球の
自然環境保護の重要性を訴えていきます。
V-9 は、南極大陸・ロスアイランド エレバス山(3,794m)及び北極圏最高峰・グリーン
ランド グンビョンアン山(3,700m)の両峰にチャレンジすることがプランの骨格。2000年の
プロジェクトを生み出す醍醐味
これまで難攻不落と思われていた世界
つでもできます。とにかくチャンスがや
中の危険な高峰をひとつ、またひとつと
って来るまで耐える。そのときに向けて、
ジュール・ベルヌの「海底2万里」やス
スキーで走破してきた和田氏は西暦2000
1日 10cm でもいいから前進するよう動
ティーブンソンの「宝島」は今なお世界中
年から、南極から北極へとまたがるスケ
くんです」と、
和田氏は笑って話す。
で読み次がれる有名な冒険物語だ。筋書
ールの大きい、挑戦に取り組もうとして
固定観念を覆す着想を得ることも大変
きは荒唐無稽かもしれないが、大人にな
いる。
「私の挑戦を通じて自然のすばら
だが、その着想を貫き通すには一層のパ
って読み直してみても意外に楽しめる。
しさを人々に伝えたい」――、そんな少
ワーがいる。
「必ずチャンスが来ると信
おそらく、未知のものへの畏怖と憧れと
年のように楽しげな和田氏を見ている
じて待つ」――、スピード最優先のビジ
いったものは、いくつになっても胸中に
と、20 世紀の終焉が冒険の終着点では
ネスの中ではそれが中々できない面もあ
もくすぶり続けているからだろう。
ないことが自然と見えてくる。
るが、性急に結果のみを求める余り、魅
一方、この20 世紀を「冒険」という観
点から振り返ると、その圧倒的な科学力
大胆に着想、貪欲に前進
1月〜6月の期間において実行することを目指しています。特に南極のエレバス山は火口
の底に溶岩が覗ける活火山。和田さんは斜面だけでなく、火口内へ下りる(ロックスキー)こ
とも企てています。成功すればもちろん初の快挙! となります。
和田さんを応援する会「和田好正サポーターズ・ジャパン」では、入会サポーターを募集し
ています。会では和田さんを中心に、スキーツアー、アウトドア、登山、パーティーなど、楽
しい企画を実施しています。 V-9 応援パーティは11月29日(月)に開催されます。
●問い合わせ
「和田好正サポーターズ・ジャパン」事務局
03-5269-8751(森の風法律事務所内)
※ V - 9 や和田さんのより詳しい情報は以下のHPで。
http://www2u.biglobe.ne.jp/˜wadapro/
力あふれたテーマを簡単にあきらめてい
ないだろうか。冒険をしないのは、成功
する機会を自らの手で絶ってしまってい
和田 好正(Yoshimasa Wada)
と好奇心を背景に、人類が地球上の未
和田氏の冒険は 素朴な 疑問から始
踏の地をほぼ征服した時代と評価され
まることが多い。ニューギニアのジャヤ
る。自然から遠ざかりつつある現代人に
山
(標高5030m)
への冒険もそうして始ま
とっても、
「冒険」という言葉そのものが
った。緯度がほぼ0度、赤道直下のニュ
フィクションと化しつつある。しかし、
ーギニアだが、
これだけ標高があればそ
何か新しいことに挑む際には、事前に
は成功と呼べるものなのですが、
やはり
は 3000m 級の山、もしくはそれ以上の
なら、もう一度プランを組み立て直すし
冒険の醍醐味とは想像もしなかった困難
の頂に雪があるのではないか、
あればぜ
できるだけの情報を集めることから始め
プロとして評価される成功とはゴールす
高所がほとんどだ。気温が極めて低く、
かありません。意地やプライドに引きず
を乗り越えていく、そのプロセスにある
ひ滑ってみたい。大胆な発想である。し
る。これは冒険も同様だ。ただし、情報
ることなんです」
。確実にゴールできる
天候もみるみる変わる。コースもクレバ
られることがあってはならない。もちろ
はずだ。それを通じて自分の力を試し、
かし、専門家に尋ねても、
図書館で調査
収集の徹底度合いはまるで違う。
よう、本番さながらの機材を持ち込みリ
スが真下で口を開ける60 度以上の急斜
んその過程においては、挫折とか、葛
極限状態の中で自己と向き合う。冒険
してもはっきりした事実が得られなかっ
「とにかく、
本番の前には現場には必
ハーサルを行う。こうした調査から既に
面や、スキーエッジが蹴り出す雪が雪崩
藤とか、悔いとか、そういった気持ちは
の本質を課題を乗り越えることで生まれ
た。
「誰も知らないのなら、
現地で情報を
ず行きます。2次情報でもアウトライン
冒険は始まっている。 ぶっつけ本番で
を引き起こし、和田氏自身が飲み込ま
去来します。でも、それを乗り越えて、
る達成感や充実感と捉えれば、挑戦する
集められるだけ集めようと決めました」
。
はつかめるけれど、
それは理屈に過ぎな
も何とかなるだろう が、
いかに過信に満
れかねない状態もあった。一度斜面を滑
絶対成功させるんだ ともう一度チャ
意志の数だけ新しいドラマが誕生するは
この即断即決が、
偶然、
かの地で出逢った
い。自分で実際に感じないと、絶対にわ
ちた無謀な行為であるかを和田氏は体
降し始めれば、頼るものは自分の力だ
レンジ精神を盛り上げていくんです。冒
ずである。
人間から、
頂に雪を載せた山々の写真を
からないことがあるわけです。特に一流
験から熟知している。
け。この中で、滑降における最適なコ
険は、描いた通りには絶対にいかないも
見せてもらう幸運を導いた。ニューギニ
の冒険家と言われる人ほど、慎重な調査
ース、活路を見出してきた。
の。だから面白いんですね」
。
アの冒険はこの一枚の写真が成功への皮
を欠かしませんね。ここがアマチュアと
切りになったと和田氏は語る。
の絶対的な差だろうと思います。冒険は
興味深いのは和田氏の冒険哲学であ
ひとつのやり方に固執しないことです」
。
るのは、もし、仕事なり、プロジェクト
冒険には前述のようなシビアな準備を
なりを自分の力を試す「チャレンジの
るのも同じだろう。
1954 年、北海道生まれ。1985 年にマッターホルンの頂上からの世界初の滑降を成し遂げて以降、日本を
代表する冒険スキーヤーとして、世界五大陸における数々の山々において困難なチャレンジを成功させる。
冒険家――プロとアマチュアの違い
数多くの挑戦から生まれた哲学
「目的地にたどり着くためには、常に
和田氏の冒険に対する姿勢が示唆す
「冒険に限らず、
常識に反することって
いきなり行って出来ない。結果として成
る。果敢な挑戦への情熱やアイデア、
それが突飛であるほど目立ちますよね。
功することもあるかもしれないが、
3倍
それを実現するための技術、メンタル面
行うが、それが100%活きるというもの
場」と考えたならば、そこにいつでも
アピール性やメッセージ性がある。する
ぐらいの時間,
食料,
労力,
プレッシャー
のコンディション調整……。極限状態
でもない。スタート地点に立つことがで
「冒険」が生まれてくる素地があるとい
と、
そのアイデアに乗ろうという人も出
が掛かる。それで成功する確率は、本当
におけるこれらの考えが、一見、世界
きても、想定していたやり方やルートで
うことだ。大胆な発想、チャンスを呼
てくるんです。それでまた情報も集まる。
に低いはずです。私はプロですから、
結果
の異なる我々のビジネスシーンに対して
はゴールできそうにない状況に見舞われ
び込むあきらめない精神、修正を厭わな
そのうちに面白いもので、
そんな突飛な
をきちんと出さないといけない。恐怖心
もいろいろな意味を示唆するのだ。
ることもある。この時、修正能力が問
い柔軟なアプローチ……、これらがあれ
挑戦を実現できそうなビッグチャンスが
や厳しい訓練に打ち勝ってチャレンジを
和田氏はこれまで世界各所で行って
われる。
「冒険は生きてゴールすること
ば、きっとビジネスの未踏峰も征服でき
必ずやってくるんです」
。
「やめるのはい
実行した、
ということも、自分の内側で
きた8回の大きな挑戦では、ターゲット
が大前提。そのままでは絶対にできない
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22
23
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■10/19〜22
ジニアがご説明致しますので、
マイクロウェーブ展'99
実際にご覧いただきます。
IFPEX'99(油空圧国際見本市)
日頃の具体的な案件もぜひ御
パシフィコ横浜
個々のお客様の具体的な問題
東京ビッグサイト
相談下さい。
小間番号:未定
には、商談スペースにて詳し
小間番号:5F-526(東5ホール)
検査装置,検品対象ウェブ,
最高回転数
1800min
-1
マイクロ波デバイス、デバ
「クリプトスポリジウム暫定対策指針」に対応
くお話を伺わさせていただき
省エネと複合化をテーマに
■11/16〜19
イス応用ユニット,スペクト
低濃度精密レーザ濁度計 LTK-S100(スタンド形) / LTK-P200(ポータブル形)
ます。どうぞこの機会をご利
油圧空気圧市場のニーズにお
INCHEM TOKYO 99
ラム拡散方式による通信モジ
用ください。
応えする各種商品を一堂に集
東京ビッグサイト(東4ホール)
ュールを展示いたします。
結いたします。省エネ機能を
小間番号:4164
高品位な通信を実現するシス
LTK-S100 / LTK-P200
があり、水質管理の重要性を
虫や細菌類の早期発見,上
パーティクル管理,化学薬品
は、水などの濁りの要因であ
改めて考えさせられた事件で
水・ろ過水の濁度管理が可能
の希釈水・精製工程の管理な
■9/24〜28
搭載した小形パワーパッケー
汎用タイプからプロセス制
テムをご提案いたします。ぜ
る微粒子を高感度で検出・測
した。
です。また、純水,超純水の
どにも最適です。
IPF'99(国際プラスチックフェア)
ジをはじめ、小電力保持ソレ
御用など、化学プラントのニ
ひお立ち寄りのうえ、お気軽
幕張メッセ
ノイドバルブ,NCコントロー
ーズにお応えする各種電波レ
に説明員にご相談ください。
定する低濃度精密レーザ濁度
計です。
微粒子モニタ,洗浄液の残留
その後、厚生省は「水道に
おけるクリプトスポリジウム
96年6月、埼玉県下で住民
暫定対策指針」を作り、それ
《問い合わせ》
の6割が発症するという下痢
までの水質基準で定められて
制御システム事業部
の集団発生があり、患者の体
いた濁度「2度以下」から、
電話(03)3737-8621
内から国内で初めて*塩素耐性
浄水場ろ過池出口の濁度を
原虫クリプトスポリジウムが
「0.1度以下」とするよう、各
発見されました。感染経路を
自治体の水道事業者へ通達を
調査したところ、水源の川か
出しています。
INFORMATION
西暦2000年問題への対応について
当社では、西暦2000年問
いているお客様のリストも備
ましても、当社は2000年問
トキメック・ホームページ
題(Y2K)を社会的信用と
えておりますので、処置の実
題の一環として対応してまい
http://www.tokimec.co.jp/
施をお客様のご都合に合わせ
りましたので、お客様からの
て鋭意進めております。
ら浄水場の処理をくぐり抜け、
LTK-S100 /LTK-P200
経営維持に関わる重要課題と
水道水に浸入したことが判明。
は、半導体レーザビームの照
して認識し、全社をあげて組
水道水は取水後、浄水場で沈
射により水中に含まれる直径
織的に対応しています。主要
殿,ろ過,2度の塩素処理を
0.1ミクロン以上の微粒子を
経て供給されていますが、ク
検出し、1ml中の総和を求め
リプトスポリジウムは塩素消
ることによって濁度を測定し
毒では死なず、広域感染を引
ます。厚生省通達の「クリプト
き起こしたのです。澄みきっ
スポリジウム暫定対策指針」を
てきれいに見える水にも原虫
クリアする濁度0.0001度の
や細菌類が存在していること
精密測定によって、病原性原
LTK-P200
24
LTK-S100
クレームや不具合の発生はあ
2000年問題専用Eメールアドレス
さらに、社内の情報システ
りませんでした。その他、詳
[email protected]
商品の対策につきましては、
ムにつきましては、既に連接
細につきましては、当社のイ
対象商品に対する対応ソフト、
するシステムを通してのスル
ンターネットホームページを
ソフトを組み込んだROM、コ
ーテストを実施して問題が無
ご参照ください。ご不明な点
ンピュータ上で日付情報を修
いことを確認済みです。
がございましたらお気軽に当
*塩素耐性原虫クリプトスポリジウム
正する手順書などの準備が全
過日、マスコミで取り上げ
直径は約5ミクロン、人畜の腸内で無性と有性の生殖を繰り返して増殖し、呼吸器や胆
のうを侵すことがある。感染した場合の治療法がなく、人の免疫力に頼るしかない。
塩素殺菌でも死なないため、水道水への浸入を防ぐことが先決である。
て完了いたしております。ま
られました8月22日のGPSロ
た、対象商品をご利用いただ
ールオーバートラブルにつき
25
社営業部、もしくはEメールに
てご相談くださいませ。