http://www.toyamadesign.jp/ 富山プロダクツ選定品の募集。年間を通して募集しています。(詳しくは http://www.toyamadesign.jp/toyama_products/ をご覧下さい) ■発行日/2006年3月31日 ■企画・編集/オファー編集部 ■発行/総合デザインセンター 〒939 -1119 富山県高岡市オフィスパーク5番地 TEL 0766 - 62 - 0510 FAX 0766 - 63 - 6830 ホームページ http://www.toyamadesign.jp/ ■発行人/黒木靖夫 ■編集長/桐山登士樹 ■アートディレクター/河越康彦 ■デザイナー/西田一生 ■ライター/長谷あづさ、篠原智子 ■印刷・製本/富山スガキ (この機関誌は 富山県新世紀産業機構のデザイン振興基金により制作したものです。) vol. 27 トピックス ピックアップ 2 トピックス 3 特集 5 電下奥井駅「旧駅舎」山口久美子 富山・ミラノデザイン交流事業報告 イタリアデザインの動向 城河原駅「旧駅舎」尾崎永治 ミラノワークショップ ミラノデザインミッション 11 デザイン講習会 + デザイントーク 生活に密着したロングライフデザイン 越中中島駅「中島閘門」吉野光男 ロングライフデザインに必要な5つのキーワード 講師 柴田 文江 過去から現在、ものづくりと売り場の現場から 講師 柴田 文江、ナガオカ ケンメイ 13 商品開発研究会 27 vol. C O N T E N T S 牛島新町「環水公園」上野博之 素材の可能性を生かす建築、都市景観 講師 佐々木 龍郎 新型車両は7色展開。立山の新雪をモチーフとしたスノーホワイトを基調色に、富山の自 然と地球の未来、子どもたちの笑顔を抽象化したアクセントカラーを配したデザイン。 会津塗の新ブランド、 「BITOWA」開発物語 講師 塚本 カナエ 15 ユニバーサルデザインセミナー サスティナブルデザインの実践 講師 T OPICS 電停壁面パネル 富山県と富山港線沿線の景観、祭り、歴史、食などを富山市在住、もしくは勤務のクリエ ーターがデザイン。参加デザイナーは次の15名(敬称略・五十音順)。石 悠子、伊藤久 恵、上野博之、尾崎永治、尾崎美穂、彼谷雅光、滝川正弘、舘近史、中山真由美、西田茂、 橋本利久、宮田裕美詠、森田雅人、山口久美子、吉野光男。 PICK UP 三沢 亮一、橘田 洋子 17 富山プロダクツ 優れた富山ブランドを全国へ発信! 19 ナイトフォーラム 暮らしの中で生きるデザインを、 幅広いフィールドからプロデュース。 ゲスト 橘田 洋子 20 デジタルデザインセミナー 21 2005年度事業報告 新・富山港線ライトレールのデザインに 富山のクリエーターや学生が多数参加。 富山と岩瀬浜を結ぶ富山港線がこの春、JRの ザイン決定後は、愛称を一般公募し、全国各 運営から第三セクター・富山ライトレール㈱ 地から寄せられた約2,400通の応募作の中か に移管し、路面電車化。これに伴い、新型の ら「ポートラム」を選んだ。 低床車両LRT(Light Rail Transit)が導入 また今回は、新設4駅を含む13の電停に、周 され、車両や電停などのデザインに富山のク 辺の歴史や歳時記などを紹介する壁面パネル リエーターが多数参加した。 を設置。そのデザインを富山市在住、または 新・富山港線は、路線デザインに関わる車両、 勤務のクリエーター15名に依頼した。パネル 電停、シンボルマーク、サイン、色彩、広告、 は環水公園や富岩運河、中島閘門、岩瀬曳山 広報などの対象物において、 「快適性・地域性」 祭、北前船などのモチーフが写真、イラスト、 「情報発信」「先進性」をコンセプトに、統一 ロゴタイプなどで個性豊かに表現され、乗客 性のあるデザインコントロールを実施。 の目を楽しませてくれるものとなった。この COVER ㈱GK設計(本社:東京)と富山在住のサイン ほか、富山北部高校の生徒たちが応援キャラ PROFILE グラフィックデザイナー・島津勝弘さん(島 クターを制作するなど、高校生のデザイン参 三池 律子 ritsuko miike グラフィックデザイナー REASE代表 平成9年よりフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動。射水市大 島絵本館カフェギャラリーにて個展を2度開催した他、 グループ展等にも 参加。現在に至る。 撮影/市山泰史(スタジオREVOLVER) 「伝わっているか?」 ボクシンググローブに込める熱い思いは、健常者へ のメッセージかもしれない。ユニバーサルデザイン も徐々に増えつつある昨今ではあるが、やはり健常 者にしか伝わらないものが多いのではないかと思う。 今日元気だった人も、明日にはどこかしら不自由にな ってもおかしくはない。そしてその時、初めて今の現 状に気付くだろう。私だってそうかもしれない。 デザインは美しさも重要だ。が、この先「感じ取る人 を選択しないデザイン」が当たり前の世の中になって いって欲しい…そう思っている。 津環境グラフィックス代表)によるトータル デザインチームがディレクションを担当し、 加もあった。 「近年、富山市ではデザイン振興に積極的に取 富山ライトレール㈱が監修した。 り組んでおり、これまで培ってこられたデザイ 車両は、岡山電気軌道の「MOMO」や万葉線 ナーの方の力により、新たな富山港線の魅力と の「アイトラム」と同型の新潟トランシス社 して発信したいという考えから、車両や壁面パ 製車両を導入。外観デザインはトータルデザ ネルのデザインに参加していただきました」 インチームが参加した富山港線デザイン検討 シンボルマーク 富山湾の生命感とTOYAMAのTをモチーフにデザイン。 海のブルーをブランドカラーに、重なり合う柔らかいライ ンで親しみやすく、優しいイメージを表現している。 (富山ライトレール㈱ とれねこ 富山北部高校3年生が学内コンペでライトレールの応援キ ャラクターを制作。優秀作品が採用された。 古西達也課長補佐)。 委員会が提案した4案に対し、市民アンケート デザインによるイメージアップと共に、新し を実施して最も得票数の高かったデザインを い時代の交通機関として生まれ変わった富山 採用した。車内は乗降、移動がしやすいバリ 港線。今後は地元の人々に愛されるだけでな アフリーデザインを基本に、シンプルでモダ く、全国から観光客や見学者を呼び寄せるラ ンなインテリアになっている。さらに車両デ イトレールとして発展することを期待したい。 ●富山ライトレール株式会社 TEL 076-405-1550 http://www.t-lr.co.jp/ 2 T OPICS トピックス 富山プロダクトデザインコンペから 球根ホルダーが商品化決定。 マッチング事業がビジネスに発展、 林さんがグラフィックツールを展開。 2003年度、富山プロダクトデザインコンペティ る形状にしたことで、安定感が増しただけでなく、 総合デザインセンターでは昨年8月、企業や個人事 イメージの統一が図られているという。 ションでとやまデザイン賞として入賞した寺田尚 球根やカップに合わせてホルダーの大きさも調節 業主を対象に県内グラフィックデザイナーが個別 林さんは「安南」のロゴデザインをはじめ、両店 樹さんデザインの球根ホルダーが、約2年におよぶ 可能になった。 相談に応じるデザイン相談会を実施した。そのマ 舗のオープンに向けて約2ヶ月間、DM、名刺、ホ ッチング事業で、グラフィックデザイナーの林久 ームページなどのグラフィック展開を手掛けた。 改良、改善を経て昨年11月に「my Cup garden」 「商品化を前提としたこのコンペで、自分の作品が として発売された。 実際に商品化されることになって嬉しく思います。 美さん(ハヤシデザイン代表)が対応した「ギャ 李朝障子をモデルにしたロゴをはじめ、一連のVI この球根ホルダーは、好みのマグカップやグラス これからも積極的に参加させていただきたいと思 ラリーとショップ 安南」のオーナー・田村梓さん について林さんは「先に完成しつつあった店鋪デ で球根を育てることができる水耕栽培用ホルダー。 っています」とデザイナーの寺田さん。 の相談が具体的なビジネスに展開した。 ザインのイメージを崩さないよう、シンプルなデ 当初はフラットな樹脂板ホルダーに球根をはめ込 商品の色はピンク、グリーン、ホワイト、スモー 依頼主の田村さんは昨年秋、リビングウェアやア ザインを目指しました。デザイナーとしてだけで み、カップに乗せるデザインだったが、「球根を育 クの4色展開で、カジュアルにもシックにも使える クセサリー、食器などを扱う「安南」を富山市に なく、一般ユーザーとしての意見も言い合える、 てるということを重視し、徐々に容量が大きくな ようパッケージやグラフィックデザインにもこだ 移転・開店。同時に「安南」が入居する建物の1階 いい関係の中で仕事ができました」と語る。 っていく球根をしっかりと保持する形状を」と、 わった。価格は3ホルダー1セットで630円。現在 で、田村さんの家族が和食料理店「神通町 田村」 林さんは今後もホームページの更新やブログの活 検討を繰り返し、直径12センチの円形ホルダーに はネット販売のみだが、今後はインテリアショッ を開店した。「神通町 田村」では「安南」で展 用を通じ、「安南」「神通町 田村」のブランディン 改良。円錐形に丸めたホルダーに球根をセットす プなどでの販売も予定しているという。 示・販売する器やクラフトなどが使用されるなど、 グや情報発信を続けていくという。 ●株式会社タカタレムノス TEL 0766-24-5731 FAX 0766-22-8071 http://lemnos.jp/ ●Naoki TERADA + teradadesign TEL 03-3769-0344 http://www.teradadesign.com/ http://www.studylab.jp/ http://www.cupgarden.jp/ 「神通町 田村」開店案内 ●ハヤシデザイン TEL&FAX 0766-63-2240 http://www.hayashidesign.com/ タカタレムノスの商品が 英、仏のコンランショップで発売。 ニューヨークのMoMA「SAFE展」に ナンワが防具盾、マスクを出展。 高岡市にあるタカタレムノスは、昨年2月ドイツで デザイナーの森豊史さん。商品はボウル、蓋付き 高岡市にある金属樹脂加工メーカー・ナンワが昨 ールドカップサッカーの警備に採用され、03年に 開催された、90ヵ国、4,600社が出展する国際 コンポート、ジュエリーボックス、茶筒など5種類 年秋、ニューヨーク近代美術館(The Museum はGマーク中小企業庁長官特別賞を受賞。現在、 雑貨見本市「アンビエンテ」に新商品「Design で、色はグレー、グリーンに日本の伝統色として of Modern Art New York:通称MoMA) 防衛庁や警察庁、警備会社などに納品されている。 Array Re+Born」を出展。同見本市の会場で、コ 欠かせないホワイト、レッドの4色展開とし、発色 で開催された「SAFE〜リスクに挑戦するデザイ 製品は素材、デザイン共にリニューアルを繰り返 ンランショップとの販売契約が成立し、昨年10月 をわずかに濁らせることで伝統的な趣きや深みを ン〜」展に、自社製品の防具盾とマスクの2点を しているが、今回出展したのは開発当初のベーシ からロンドンとパリのショップで販売されている。 もたせた。 出展した。 ックなもの。 「Design Array Re+Born」は、商品寿命が尽き 同社の高田博社長は「質感や完成度にはこだわりま 同展覧会は「心身を危険やストレスから保護する 同展覧会のスタートを前に、ニューヨークに渡り、 たとされているものを発掘し、デザインの視点で した。文化的な背景を感じてもらえるモノづくりが デザイン」 「緊急事態に対処し、予防するデザイン」 内見会に参加したナンワの南豊社長は「世界の巨 現代に再生するプロジェクト。伝統的な山中漆器 したかったんです。手作りから量産に移行する時代 「安心感や快適を提供するデザイン」の3つの社会 匠と呼ばれるデザイナー作品と同じ土俵で当社製 の中に普遍的な美しさを見出し、現代のライフス に作られた商品には、現代にも通用するものがたく 的役割をテーマにした企画展で、会場には世界各 品が選ばれたことで、知的所有財産であるデザイ タイルになじむ製品を開発した。「漆器の美しさを さんあると思います。それらをうまく生かした商品 国から選ばれた約300点の製品、および試作品が ンが不動産と同じように保護される世界を実感し 現代のプロダクトとして蘇らせたかった」と同社 を作っていきたいですね」と語っている。 展示された。ナンワの透明防護盾は2002年度ワ ました」と語った。 2005年11月に誕生した 高岡市と射水市の市章が決定。 ●有限会社ナンワ TEL 0766-28-2625 http://www.nanwa.biz/ 「EGG FORM」と「かたり箱」が 2005年度Gマークに選定。 市町村合併に伴って昨年秋に誕生した県内2つの新 の平野拓夫金沢美術工芸大学学長は「リズムと調 昨年、富山県内で開発・発売されたニュープロダ 「かたり箱」「ローティスシリーズ」「ラウルスシリ 市の市章が決まった。 和のとれた作品」と評した。杜多さんのほかには3 クトがGマーク(日本産業デザイン振興会主催: ーズ」は、Gマーク中小企業庁長官特別賞を受賞 高岡市と福岡町の合併によって生まれた新・高岡 名に優秀賞が贈られた。 グッドデザイン賞)に認定された。 した。製作したのは、高岡で銅器・漆器に携わる 市では、専門家や両市町議で組織された選考委員 一方、新湊市・小杉町・大門町・大島町・下村の5 「EGG FORM」は、北陸アルミニウムがデザイナ 笠原昇雲堂、能作、二上製作所の3社で組織した高 会が全国から集まった応募作品2,242点の中から 市町村が合併して誕生した射水市では、まず選考 ーの高市忠夫氏と共同開発した調理器具で、同社 岡工作連盟「灯華香」。デザインはプロダクトデザ 候補作を4点選出。その後、広報誌などを通して住 委員会が一般公募2,747点から候補作3点を絞り 独自のアルミ鋳造技術と上質なデザインが融合し イナーの佐藤康三氏が手がけた。 民アンケートを実施し、広く市民の意見を募った。 込み、その後、5市町村長が選考委員の意見を参考 た高付加価値商品。卵の形からヒントを得た黄金 「かたり箱」は形式化された仏壇としてではなく、 その結果、神戸市西区の杜多利夫さんのデザイン に選定した。 矩形などを基本原則に、対流が起きやすく、おい 亡き人の思い出と語り合う場というコンセプトか が最も多くの票を集め、その意見を参考に首長を 選ばれたのは三重県のグラフィックデザイナー・ しく調理できる鍋側面のカーブや、吹きこぼれに ら生まれた。今回の審査では、都市部のマンショ 交えた選考委員会で市章に選定された。 当具薫さんの作品で、「射水」の「い」をモチーフ くいよう設計された鍋ふちなど、見た目の美しさ ンなど現代のライフシーンにも違和感なく調和す 杜多さんの作品は高岡市の「高」の文字をモチー に、循環する水の流れを日本海の青色で表現した や使いやすさだけでなく、料理も美味しくなるデ るモダンデザインと、地場産業界に新しい思想、 フに、自然と人の光り輝くまちをイメージしたも もの。射水市の持続可能な発展への願いが込めら ザインとなっている。 開発システムを構築した点が高く評価され、Gマ ので、新市の活気や躍動を表現している。委員長 れている。 一方、高岡銅器と高岡漆器の伝統技術を活かした ークに選定された。 3 「安南」ロゴタイプ 「高岡市」市章 「射水市」市章 ●高岡市役所 TEL 0766-20-1254 ●射水市役所 TEL 0766-57-1300 ▲かたり箱 ●株式会社笠原昇雲堂「灯華香」 TEL 0766-21-1858 EGG FORM ●北陸アルミニウム株式会社 TEL 0766-31-3500 http://www.eggform.com 4 T O YA M A M I L A N O DESIGN 平成17年度 富山・ミラノデザイン交流事業 イタリアデザインの動向 富山・ミラノデザイン交流事業 〜グローバルマーケットを意識したモノづくりの推進〜 〜イタリアデザインと富山の素材・技術の融合、新しい産業の創出に向けて〜 富山県では、イタリアのデザイン開発やビジネス戦略を学び、 「ローカル・トゥ・ローカル産業交流事業(LL事業) 」の採択を受け、 「富山・ミラノデザイン交流事業」を行ってきました。 最終年度となる17年度は、視察交流団の派遣、 富山の商品や技術を紹介する展示会の開催、 ミラノ在住デザイナーとのワークショップを実施しました。 その内容をまとめてお伝えします。 桐山登士樹 EU統合によって ない企業からのデザイン発注は大幅に減り、 一方、欧米型のモノづくりやデザインが成 急激な物価高になったイタリア デザイナーたちの仕事も減っています。残 熟した今、ヨーロッパの人々はアジア諸国 念ながら、かつてのように新しいデザイン や日本の伝統文化に高い関心を示していま EU統合から5年が経ち、イタリア経済は国 ムーブメントを起こすパワーは現在のイタ す。かつてアジアの商品は「異国情緒があ 際化への道を歩む一方で、依然、縮まらな リアデザイン界にはないと言えるでしょう。 る土産品的なもの」として受け入れられて い地域間格差の中でうごめいており、この しかしながら、これまで幾度も大きな波を いた感がありますが、今は新しいデザイン、 春、行われる首長選を含め、イタリアの政 つくってきたイタリアデザイン界なので、 新しい価値観として自分たちのライフスタ 局・政策が今後どう変わるのかが注目され 今、新しいデザインの可能性を模索してい イルに取り入れていこうという動きが見ら ています。現在のイタリア経済で最も深刻 る企業も数多く見受けられます。その可能 れます。我々の「富山・ミラノデザイン交 な問題は、かつてのリラからユーロへと通 性の一つとしては、これまでの欧米マーケ 流事業」では、平成16年度より現地で富山 貨が変わった際、貨幣価値が大きく変動し ットから、中国、日本を含めたアジアマー の商品や素材を紹介する「富山モノづくり たこと。イタリアは急激な物価高となり、 ケットへのシフト。アジアに焦点を絞った 技術展」を開催していますが、ここでもミ 国民の生活全体を圧迫しています。 商品開発に力を注いでいる企業も見られま ラノのデザイン関係者の高い関心を集めて モノづくりにおいては、EU統合でマーケッ す。例えばアレッシはステファノ・ジョバ います。例えば、北陸アルミニウム(高岡 トがグローバル化したため企業間競争が激 ンノーニに依頼し、中国マーケットを意識 市)が出展した調理器具「EGG FORM」は しくなっています。近年はコスト削減が重 した新ブランドを立ち上げ、30アイテムか イタリアの企業から大量の購入希望があり、 要課題になっており、かつては自国内で水 らなる新商品を開発しています。 能作(高岡市)が商品化した風鈴・錫製品 平分業体制を築いていたイタリアも、近年 もう一つの可能性としては、毎年開催され も高い評価を受けました。 は一次加工品、二次加工品を中国や東欧諸 るミラノサローネが2006年春、移築した こうした展示会を通して実感したのは、富 国に頼らざるを得なくなっており、製造の 新会場で開催されることです。経済的な鈍 山のモノづくりが国際マーケットの中で確 空洞化が起こっています。 化が進んでいる中、新しい会場で行われる かな評価を受けるには、日本独自の文化軸 また、通貨統合による外貨の流入によって、 ミラノサローネで、各企業がどういう提案 とデザイン軸、この両軸をしっかりと確立 企業統合や企業買収も活発化しました。こ を出してくるのか、どんな新商品を出して することが大切だということ。また、富山 れにより、各メーカーはいわゆるアメリカ くるかは、ミラノデザインが今後の求心力 のモノづくりはこうした追い風をうまく利 的マスプロダクションに向かい、かつての を保てるかどうかの試金石になると言える 用し、新たなシステム、コンセプトを立ち イタリア中小企業の優位性が崩壊しつつあ でしょう。 上げながら、今後、イタリアを中心とした 技術や伝統に裏づけられた富山のモノづくりを活性化させることを目的に、 平成14年から日本貿易振興機構(JETRO)の 総合デザインセンター デザインディレクター ります。これがプラスになるのか、イタリ ヨーロッパ市場を視野に入れたビジネス手 アらしさの損失になるのかは、もうしばら 欧州では日本のモノづくり、 法を具体的なかたちにして推し進めていく く状況の変化を見守りたいところです。 技術への関心が高まっている 時期にきているということ。 アジアマーケットを視野に入れた ミラノサローネでは近年、日本企業のブラ 役として、今後も積極的な支援、アドバイ デザイン開発 ンディングの場として注目されています。 スを行っていきたいと考えています。 当デザインセンターはその強力なサポート ●8月22日〜26日 ●10月13日〜20日 ●10月15日〜18日 ●現在 デザイナーの招へいと ワークショップ ミラノデザインミッション 富山モノづくり技術展 富山・ミラノデザイン 交流倶楽部の設立準備 昨年も国内メーカーが多数出展していまし イタリアデザイン界では、資本力、マーケ たが、今年度はTOYOTA、TOTO、 ット戦略において優位性をもった大企業は KOKUYOといった大手メーカーが展示スペ 別として、多くの企業はこの混迷から脱却 ースを確保し、十分な準備期間を経て出展 しています。当然、ここではイタリアデザ イタリア人デザイナー2名を招へいし、 行政機関と県内企業からなるデザインミ 富山の技術と商品(約30点)をイタリ 14年度から実施してきた事業の成果を 県内企業数社のモノづくり現場を視察体 ッションをミラノに派遣し、イタリアの アの企業・デザイナー・エージェントに 一過性で終わらせないため、富山・ミラ 験してもらいました。この結果をもとに 先進事例を視察するとともに、イタリア 紹介する展示会をミラノ市内で開催。富 ノ間で相互に情報交換し、商品開発の土 するため苦戦しており、デザイン開発に対 富山の素材・技術を生かしたデザイン提 在住デザイナーとの交流を図りました。 山の素材のイタリアデザインへの活用、 台つくりを目指す「富山・ミラノデザイ する余力がトーンダウンしている状況。い イナーと日本のデザイナーとの関係が構築 あるいはイタリア企業との商品開発の可 ン交流倶楽部」の設立準備を行います。 わゆる勝ち組企業と一緒に仕事をしている されるチャンスが芽生え、新しいスキーム 建築家やデザイナーは多忙ですが、そうで がつくられつつあります。 案をしてもらい、商品開発を行いました。 能性を探りました。 5 6 T O YA M A M I L A N O DESIGN 平成17年度 富山・ミラノデザイン交流事業 8/23 8/25 ものづくり現場の視察 ものづくり現場の視察 ●富山ゴーレックス㈱(シリコンゴム製品) ●三協アルミニウム工業㈱(アルミ押出形材の製造・販売) ●北陸アルミニウム㈱(アルミ鋳造、押出形材の製造・販売) ●㈱竹中製作所(アルミ、真ちゅう、銅製品) ●松岡研磨工業所(金属加工) ●折井着色工場(金属加工) 8/22 8/24 8/26 ものづくり現場の視察 ものづくり現場の視察 とプレゼンテーション 視察とデザイン提案に 関する協議 ●㈱高田製作所(鋳造加工) ●デザインセミナー ●交流会 ●㈱能作(鋳造加工) ●総合デザインセンターにてデザイン提案に関する打合せ ワークショップ スケジュール ミラノワークショップ 〜地方からオリジナル商品を生み出す可能性を見出した1週間〜 2005年8月22日(月)〜8月26日(金) イタリアから2名の若手デザイナーを招へいし、約1週間の日程で実施しました。今回は伝統 産業から最新技術まで、様々な業種の県内企業を視察見学し、富山の技術と素材を生かした商 品デザインを提案してもらい、共同開発につなげていくという内容。彼らがこれまで携わって きたデザインワークについてのプレゼンテーションもあり、県内企業だけでなく、デザイナー ●㈱リッチェル(プラスチック製品) にとっても、新しい情報と刺激を得た有意義なワークショップとなりました。 ■デザインプレゼンテーション Gabriele Pezzini Fabio Bortolani ガブリエル・ペッツィーニ/フィレンツェISIA(工業デザインインスティチュート)にてインダストリ アルデザインを修め、87年からフリーランスデザイナーとして活動を開始。フランスAllibert社にてシ ニアプロダクトデザイナー、デザインコンサルタント、デザイン部長を務めたあと、99年ミラノにス タジオを設立。2000年にウェブ上のみで製品を紹介する「virtuallydesign.com」を主宰。多くの企 業の製品デザインを手掛ける他、ミラノ工科大学、ドムスアカデミー、エコール・ド・ボザール、ロー ドアイランドデザインスクール他などで教鞭をとる。 Moving ファビオ・ボルトラーニ/フィレンツェ大学建築学部卒業。C.Leonardi&F.Stagi建築事務所(モデナ) 勤務後、V.I.A.選定デザインプロジェクト(パリ)インダストリアルデザイナーとなる。98年〈写真の まわりに〉展(ミラノ)、99年〈The Face〉展(ニューヨーク)、2000年〈Daytools〉展、 〈Usagetta〉展(ミラノ)などの展示会に参加。01年コンパッソドーロの他、ウディネ・トップテン プロモーセディア、セレクションオポス、デザインプラス・フランクフルトなど各種デザイン賞の入賞 歴多数。主なクライアントにアレッシ、カッペリーニ、ドリアデなど。 2 蓄積したアイディアを発表するため、 一番いい時期を 待つ ことも重要なこと。 デザインにはリサーチと研究が必要 1 2 かった高価なもの」というイメージがある いますし、また、芸術作品の優れた点を量 くだらないことにも目を向ける、 そんな遊び心が新たな発想を生み出す。 生活を観察する中からデザインを生み出す 小さな機能から新たな発想を掘り起こす 1 目的に使えるものです。また、エコマテリ と思います。 産品のデザインに生かすことも大事。そん 私はフィレンツェでデザインを学んだ後、 しかし、本当のデザインはコストをかけな な考え方でデザインしています。マッチ箱 私はイタリア中部にあるモデナを拠点にし 98年から2000年頃の作品はイタリアの た食器「Staccami」を開発しました。取り フランスの大手企業に所属し、デザイナー、 くても生み出せるもの。例えばトイレット 型のラジオは無印良品と契約しました。ヨ てデザイン活動をしています。イタリアは デザイン誌「アビターレ」にも度々掲載 外しできるフォークがセットされた使い捨 コンサルタントとして経験を積みました。 ペーパーホルダーは、元々シンプルな形状 ーロッパで「MUJI」はしっかりとした哲 国内各地に伝統産業があり、地方にいても さ れ ま し た 。 チ ュ ー ブ の 水 廻 り 商 品 ( 2) てのお皿です。 やがて「企業の中では、自分のデザインに のものですが、工夫次第で美しいデザイン 学をもった優良メーカーとして知られてい 様々なデザインの仕事があります。ですの は、日頃から「バスルームの部品はなぜ 対する考えを十分に理解してもらうのが難 性をもたせることが可能です。 ま す 。 ま た 、 ワ イ ヤ ー 製 の 椅 子 ( 1) は 、 で現在はモデナに住み、時々ミラノを往復 こんなに複雑なのか」という疑問があり、 しい」と感じ、ミラノで独立しました。私 また、デザインの世界というのはいろんな あるメーカーのためにデザインしましたが しながら仕事をしています。 シンプルなもので革新的なデザインを発 は、デザインには「リサーチと研究」、「産 ジャンルが連携しているので、例えば家具 商品化に至らなかったので、自分でメーカ 私はいつも生活に何が必要なのか、どうし 明したいという思いから、樹脂チューブ 近年はジャンルを限定せず、建築・インテ 業としての製品化」が重要だと思っていま のデザインであれば、家電や水廻りのデザ ーをつくり、市場に出すことができました。 たら楽しめるかという視点でデザインを考 と金具の単純な組み合わせで水廻り商品 リアといった大きなものから、ワインボト す。特にリサーチと研究は、モノの形やイ インを知ることが大切。広い視野でデザイ デザイン誌で高い評価を得た椅子です。懐 えています。椅子のようなワゴンは初期の をシリーズ展開しました。チューブの長 ルなどの身近なもののパッケージもデザイ メージにとらわれず、多様な可能性を生む ンを捉え、時には回り道しながら自分の道 中電灯(2)は上下2ヶ所が点灯するデザイ 作品で、ドムスにも掲載されたもの。機能 さとネジの位置を変えるだけで様々なア ンしています。長年、デザイン活動をして ヒントを与えてくれるからです。例えばソ を絞っていくことは悪いことではないと思 ン。これは昨年、ニューヨークで商品化さ 性を最大限に引き出そうと工夫したデザイ レンジが可能。低コストで製造できる商 きて、私が一番大事だと思っているのは、 ファーをデザインした時は、ソファーを買 っています。 れました。 ンです。日常生活に必要なものを追求して 品です。 ユーザーに心から満足してもらい、喜んで 私の作品は、どれも形はシンプルですが、 いった結果、できあがった形です。 テーブル「Figulla」はパネルの組み合わせ もらうこと。デザインは小さな煉瓦を積み リサーチと研究を重ね、入念に考えた上で ビニール製のフラワーベース「花のカーテ で色や陰影の変化を楽しむことができます。 上げていくような仕事だと思います。思い デザインしています。私は常に違った角度か ン」(1)は私のデザインが海外で知られる 機能性に美しさを加味した作品です。 つきのアイディアだけでは、本当に人を喜 今、私が考えるデザインは、芸術作品と工 らものを見ること、何気ない生活の1シーン きっかけとなった作品です。 01年から04年の作品には、ヒット商品も ばせられる作品は生み出せません。 業製品の中間にあります。 を切り取って、デザインに生かしていくプロ 点滴のようなチューブで水を供給し、ハー 生まれました。竹を使ったラックは室内で 時間のかかる仕事ですが、日頃から小さな 例えば、トラクターは工業機械ですが、デ セスを大事にしています。そういうプロセス ブや花を生けて小さな菜園を室内で楽しむ 家庭菜園を楽しんでもらいたいと思ってつ 出来事、小さな変化に注目し、その中から ザイン性も備えています。デザイン性を重 を一つ一つ着実に見出していくことが、いい というものです。生活を楽しむデザインと くったものです。簡易性と機能性を重視し 楽しさを掘り起こしていく作業の積み重ね 視した工業製品をつくることは大事だと思 デザインにつながるのだと思っています。 して考えました。 て竹を使いました。フェンスや花壇など多 がデザインだと思っています。 う人の消費動向を徹底的に調べてデザイン しました。人形をデザインした時も同じ。 形やイメージよりもプロセスが大事 「子どもは壊すことが大好き」というリサー チ結果を基に解体可能な人形を作りました。 幅広い視野をもってデザインすること デザインされた商品というと「コストがか 7 アルにも注目し、とうもろこしを素材とし 煉瓦を一つ一つ積み上げるような仕事 8 T O YA M A M I L A N O DESIGN 平成17年度 富山・ミラノデザイン交流事業 ■スケジュール 2005年10月13日(木)〜20日(木) ミラノデザインミッション M i l a n o D e s ▲ステファノ・ジョバンノーニ自宅兼事 務所。グリーンが印象的なインテリア。 i g n M i s s i o n 10月13日(木) 10月16日(日) 10月18日(火) 成田空港からミラノ・マルペンサ空港へ ○ワークショップデザイナーとデザイン提案に関する協議 10月14日(金) 10月17日(月) ○蓮池槇郎デザイン事務所訪問 ○イタリア貿易振興会訪問 ○サンタマリア・デレ・グラッツィエ教会見学 ○ステファノ・ジョバンノーニ事務所訪問 ○ミラノ在住デザイナーによるデザインショップ視察 ○富山モノづくり技術展オープニングパーティ・交流会 ○モルテーニ社視察 ○ゴールドウィンヨーロッパ視察 ○JETROミラノセンター訪問 10月19日(水) ミラノ・マルペンサ空港から成田空港へ 10月15日(土) 10月20日(木) ○富山モノづくり技術展 帰国 ■ステファノ・ジョバンノーニ事務所 ■蓮池槇郎デザイン事務所 インダストリアルデザイナーとして多彩な活動を展開し、アレッシ 40年前にイタリアに渡り、現在もイタリアデザイン界の第一線で活 社、マジス社、フロス社などのヒット商品を数多く手がける著名デ 躍する日本人デザイナー。富山・ミラノデザイン交流事業では、ミ ザイナー。氏のデザインは独特のユーモアをもち、ビビッドでウイ ラノワークショップのコーディネーターを務めるなど尽力をいただ ットに富んだイタリアデザインのイメージを確立しました。派遣団 いています。ここでは、県内企業のリッチェルと4年間にわたって は、新しく設立した事務所を訪問し、近年のデザイン動向、ビジネ デザイン開発したキッチン雑貨「CONO」の開発プロセスをはじめ、 ス戦略などについて説明を受け、ヒット商品などを見学しました。 近年のイタリアデザイン界の傾向などをうかがいました。 ■モルテーニ社 アルド・ロッシやジャン・ヌーヴェルといった、世界的なデザイ ナー・建築家を起用し、シンプルで美しい商品を発表する家具メー カー。現在、多くのイタリア企業が業績悪化に苦しんでいる中、売 ▲「蓮池槇郎デザイン事務所」 外観。 事務所にて作品を紹 介する蓮池氏。(写真手前) 上げ、輸出量を順調に伸ばし、安定した経営を続けている同社の経営 戦略、デザイナーの起用法、ブランド構築などについてお話をうかが いました。その後は木材加工工場、塗装現場などを見学しました。 ■ゴールドウィンヨーロッパ 富山ものづくり技術展 [日程]平成17年10月15日(土)〜18日(火) [会場]ARTE GIAPPONE(スカラ座近くにある日本人オーナーのギャラリー) 多彩なスポーツウェアを企画製造する国内メーカーのミラノ事務所。 イタリア企業と接点をもつ日本人デザイナーと県内企業がコラボレ 93年、ミラノにゴールドウィンヨーロッパを設立し、高級クラスの ートしたデザイン商品を中心に、アルミ加工、鋳造、漆芸などの優 スキーウェアを製造販売しています。ここでは、国内と海外の市場 れた技術をもつ県内企業の商品を紹介。富山プロダクツ選定商品や を比較し、デザイン開発手法の違いや経営の苦労について、説明を ミラノワークショップで制作したモックアップ作品も展示しました。 受けました。 オープニングセレモニー・交流会には100名近い来場者があり、活 発な意見交換も行われました。特に展示作品の質、デザインの良さ には来場者の関心を集め、期間中、数十点を販売しました。 ■ジェトロミラノセンター ジェトロでは、海外とのビジネスに取り組む企業を支援するため、 様々なサービスを実施しています。特に海外事務所では、現地市場 に参入する際、経済事情や貿易投資手続などについて、スタッフが 情報提供をしています。ここでは平井所長からイタリアの経済状況 について説明を受けました。 9 10 デザイン講習会 + デザイントーク 生活に密着したロングライフデザイン 今回のテーマは「ロングライフデザイン」。人々に愛され、使い続けられる ロングライフデザインを数多く生み出している柴田文江さんのお話をうかがいました。 また後半のデザイントークでは、かつての名品、グッドデザインに コンビ「ベビーレーベルシリーズ」 再び息を吹き込んで販売しているナガオカケンメイさんに参加していただき 資生堂「プリペア」 無印良品「体にフィットするソファー」 象印「ZUTTOシリーズ」 「ロングライフ」について語り合っていただきました。 ●デザイン講習会 ロングライフデザインに必要な 5つのキーワード [講師]柴田 文江(インダストリアルデザイナー) [日時]2006年1月18日(水) [会場]富山県産業高度化センター会議室 ①新しいスタンダードを考える と自問してみます。そうするとエゴを抑えるこ れた時、日本の食卓に合う形を日本語の形容詞 バスタブは安定感を追求してつけた4つの脚の とができます。 で考えてみました。「この絵柄は似合う」とか おかげでかわいい印象に仕上がりました。 無印良品のソファは、側面と上面で布の素材 が違うデザインで、トップの面を変えれば 「部屋の佇まいにしっくりと馴染む」とか…。 そうやってできあがったのが、曲げわっぱのよ ④誰もが正しく使うことができる形 「かちっと座る」「軟らかく広げて座る」両方 の使い方が楽しめます。無印良品のユーザー うな炊飯器です。鍋やフライパンのような台所 の道具として、空間に馴染むデザインを目指し ロングライフデザインは誰でも愛着がもてる形 というと、一人暮らしでそれほど広くはない ました。その後は、炊飯器に合わせてポットや であること、特に問題を感じることなく使いや 部屋に住んでいるというイメージ。そういう コーヒーメーカーもデザインしました。 すいこと、ストレスを感じずに使い続けられる ユーザーのライフスタイルを考えながら、デ ことなどが大切です。 ザイナーのエゴを沈め、まっさらな形を目指 資生堂のカミソリ「プリペア」のリニューアル してデザインしました。 では、誰もが正しく使えるデザインに取り組み 以上、私が考えるロングライフデザインの5つ ③機能そのものをデザインの魅力にする な形状とし、文字盤は右利きでも左利きでも判 ですので、自分がデザインしたものが20年以 読できるよう、縦にレイアウト。 「計るところは 機能美という言葉があります。しかし、商品に ました。このカミソリはモデルチェンジする必 のキーワードをお話しました。世の中に出た商 上ロングライフで売れている経験はないのです 計りやすく、読むところは読みやすく」という よっては機能がデザインの中にうまく消化され 要がないほど売れていたのですが、従来品を使 品がロングライフデザインと呼ばれるには、多 が、いつも長く愛されるモノを作りたいと思い 体温計の基本性能を充実させたデザインにしま てないものも多いと思います。それならむしろ っていた女性の多くが肌に良くない逆剃りをし くのユーザーに支持され、長いスパンで売れ続 ながらデザインしています。本日は、ロングラ した。結果的にオムロンでは、この「フラット 機能を積極的にデザインすることで、機能その ていたことに注目しました。そこで上から下に けないといけません。ですからデザイナーは、 イフデザインを考える際の、5つのキーワード センサー」が新しいスタンダードになりました。 ものをデザインの魅力にしてしまえばいいと、 しか剃れないよう柄をティアドロップ形とし、 単なるモノのスタイリングではなく「人々の生 私は思います。そんな中でベビー用品のデザイ 眉毛も剃りやすいよう先端を斜めにカット。色 活を構成する道具をつくっている」という感覚 ンを手掛ける機会があったので「ピチピチ・プ などは従来のイメージを踏襲しました。この開 が大事。私はそういう気持ちをもって、毎日デ クプク」をキーワードに、かわいい部分を機能 発には2年半もかかり、シンプルなデザインほ ザインと向き合っています。 ど難しいものだということを実感しましたが、 1つめは「新しいスタンダードを考える」。例え ②日本語でデザインを考える ば既存の商品をモデルチェンジする場合、単な るリニューアルではなく、新しいスタンダード 2つめは、何でも日本語に直して考えてみるこ にするデザインを目指しました。例えば既存の を考え出さなければいけないと思います。オム とです。最近の私たちは「フォルムがいい」と 「おまる」は意外と角ばっていて、赤ちゃんの ロン体温計のモデルチェンジのお話をいただい か「アウトラインが美しい」とか「いいコーデ 肌にはやさしくない。そこでぷくっとしたひょ た時、私はコンセプトを「Mother's Love」と ィネートだ」とか、とかくカタカナ英語で表現 うたん型にして、跨ったら自然に足が前に出て しました。体温計は家庭にある医療機器の代表。 しがちです。でも私は、日本人が暮らしの中で 用が足せるという機能をもたせました。「かわ そこに「母の愛のような信頼感」をデザインで 使うモノのデザインは、日本語で考えた方がモ いいという第一印象で買ったけど、実際に使っ 私は、モノのデザインにデザイナーのエゴが出 きれば、1つのスタンダードをつくれると思い ノの本質を呼び起こしてくれると思います。 てみたら機能的で使いやすかった」と思わせる てはいけないと思っています。ですから迷った 思うか?」「古いものでも故障したらメーカー ているっていうのがすごいですよ。 方もあります。昔はそういうイメージだったの が直してくれるか?」ということ。こうした観 ナガオカ●デザイナーがいつも机の上でデザイ かもしれないけど、今は違います。20世紀は 点はロングライフデザインと共通していると思 ンしてるのって、違うと思うんです。なんでも、 ファーストでスクラップ&ビルドだったけど、 います。 どこでも通過しないとデザインできないと思 21世紀はスローでロハス(Lifestyle of て思うようなことまでなさってますけど、デザ 桐山●ナガオカさんのショップでは過去のGマ う。お店の経営もそう。だからうちはお客さん health and sustainability) 。そういう時代の インって本来はそういうものなんですよね。 ークを含め、様々な復刻版も販売されています。 が株主という感覚です。 ロングライフデザインはもっと可能性があると 桐山●そうですね。今、ビジネスにおいてもジ こうした展開は「まだまだ使えるものがある」 柴田●ナガオカさんのそういうところがデザイ 思うんです。 ャーナリズムにおいてもデザインに対する関心 という点で、多くのデザイナーに勇気を与えて ナーとして見習わなきゃいけないところ。今ま 桐山●ナガオカさんはデザインの本もいろいろ が高まっているので、もっとデザインをシステ いると思いますよ。店内も、物販というよりは でデザイナーはあまり責任を取ってこなかった と出版されていますね。 ム化して、新しい環境づくりをしていく必要が ミュージアムショップの雰囲気があっていい感 と思います。私もメーカーにいる頃はそうでし ナガオカ●この間、柳宗理を特集して、何故 ありますね。 じですよね。 たが、特にインハウスデザイナーは…。やはり みんなに尊敬されているのか解ったんです 桐山●ロングライフデザインには何か規定があ ナガオカ●デザインについて、ショップがある 自分でやるからには、モノをデザインしたら、 が、ロングライフデザインの秘訣ってフォル るのですか? 程度の影響力をもつことは大事なことだと思う 売るということころまできちんと責任をとらな ムや機能性だけじゃなくて、その商品の目的 ナガオカ●東京のD&DEPARTMENTでは、リ んです。今までデザイナーには販売という視点 きゃいけないと思いますね。 や背景、デザイナーの考え方や生き様なんで サイクル品も販売しているので、中古品や倉庫 がなかったから…。でもデザインを売るって、 に埋もれているものを買い取って再販売してい ビジネスとしては難しいですね。いつもジタバ ます。月に1回、スタッフ全員で商品会議をし タしてるだけで、お金儲けをしている感覚が全 ているのですが、そのときのポイントは「中古 然ないんです。 柴田●ロングライフデザインって例えば「新し 気があるんですが、ナガオカさんのお店はいつ 品でも引き取りたい?」「もう一度買いたいと 桐山●でも今でも自分で全国行脚して買い集め い金型は作らない」といったネガティブな捉え でも入りやすいし、カフェも居心地がいい。本 ●デザイントーク 過去から現在、ものづくりと 売り場の現場から 柴田 文江(インダストリアルデザイナー) ナガオカ ケンメイ(D&DEPARTMENT代表 プロデューサー) 聞き手:桐山 登士樹(総合デザインセンター デザインディレクター) 自分がもう一度買いたいと思うかどうか? 11 時は「ユーザーとして本当にこれを欲しいか」 計、手桶、バスチェアなどもデザインしました。 デザインを始めて16年になります。まだ16年 をご紹介します。 東京の奥沢にある「D&DEPARTMENT」の内観。 デザインです。このほかにはベビーバスや湯温 も合う炊飯器をデザインしてほしい」と依頼さ ました。そこで先端の検温部分は子どもが脇に 挟んでも回ったり落ちたりしないようフラット オムロン「電子体温計」 その一例ですが、象印から「どんなキッチンに おかげ様で今、よく売れています。 ⑤本当に欲しいという声に耳を澄ます D e s i g n すね。だから出版物では、そういうことを紹 21世紀のロングライフデザイン しばた・ふみえ/90年武蔵野美術大学工芸 工業デザイン学科卒業。㈱東芝を経て、94 年Design Studio Sを設立。エレクトロ ニクス商品から日用雑貨まで幅広い領域で デザイン活動をしている。最近のデザイン に「コンビ ベビーレーベルシリーズ」「無 印良品 体にフィットするソファー」「象印 ZUTTOシリーズ」「オムロン 電子体温計」 など。グッドドデザイン賞審査委員。 2006年より多摩美術大学非常勤講師。 介していきたいと思っています。 柴田●普通、デザイン事務所は入りにくい雰囲 Ta l k もかなりプライベートな意見まで公開してて、 すごく開放的。デザイナーはそうあるべきだと 思います。あと「そこまでデザインなの?」っ ながおか・けんめい/65年生まれ。89年朝 日広告賞受賞、日本デザインセンター入社。 翌年、原研哉氏と日本デザインセンター原デ ザイン研究室を設立。グラフィックデザイナ ー・プランナーとして活躍後、97年ドロー イングアンドマニュアルを設立。99年リサ イクルビジネスをデザインの視点で再構築す る百貨店「D&DEPARTMENT PROJECT」 を立ち上げ、2000年東京・奥沢に大型路面 店をオープン、その後大阪店、ニューヨーク 店をオープン。 12 商品開発研究会 商品開発研究会 素材の可能性を生かす 建築、都市景観 会津塗の新ブランド、 「BITOWA」開発物語 佐々木 龍郎(建築家) [日時]2005年9月14日(水) 塚本 カナエ(プロダクトデザイナー) [日時]2006年1月23日(月) [講師] [講師] ▲高齢者介護施設の建築。柱 や可動家具、キッチンなどシ ナベニアで統一し、明るく、 軽やかなイメージを演出した。 什器やテーブルなどインテ リアもすべて同じ集成材で統 一した横浜の中華料理店。 ささき・たつろう/65年東京都生まれ。東京都立大学建築学科卒業。 デザインスタジオ建築設計室を経て、㈱佐々木設計事務所主宰。主 な建築作品と して賃貸集合住宅「スマート南青山」 、介護老人保健施 設「山望苑」、「四谷」など。宇都宮中心市街地再開発アドバイザー、 医療福祉トイレ環境研究会委員、アルミニウム建築構造協議会委員 などを歴任。現在、横浜まちづくり倶楽部理事、神奈川大学・京都 造形芸術大学・東海大学・東京大学・東京都立大学の非常勤講師と しても活躍。 素材の特徴や質感を最大限に生かした建築 都市景観をみても、カーテンウォールやサッシ、スパンドレルなど、 つかもと・かなえ/香川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、三菱 電機㈱、デザイン総研広島㈱勤務。フィンランド国立芸術工科大学 大学院、イギリス王立芸術大学院修士課程修了。ダーティントンク リスタルLtd、クィーンズベリー・ハント・レヴィーンデザイン事務 所勤務。99年Kanae Design Labo設立。現在、多摩美術大学非常 勤講師、イギリス王立芸術大学院客員講師。東京ドームテーブルウ ェアコンテスト優秀賞、英国王立芸術振興協会コンペティション最 優秀賞など受賞。 伝統を踏まえながら、いかに新しい価値観を提案できるか 様々なアルミがあふれていますが、カーポートとアルミサッシのデ どのモチーフ、そして日本の伝統的な文様も応用し、具体的なビ ジュアルを共有しながらデザインしていきました。今、欧米では 現在、建築素材としてのステンレスやアルミなど、マテリアルに興 ザインがばらばらだったりと、うまくコーディネートされていない。 昨年、福島県の会津若松商工会議所が国の助成金を得て、地場産業 ちょっとオリエンタルなデザインが流行っています。でも実際は、 味をもっていろいろな研究をしています。本日はマテリアルを通し このあたりのデザインの整合性がきちんとすれば街並はもっとすっ の会津塗の新ブランド「BITOWA」を立ち上げ、今年1月、パリで 欧米人が見た東洋と我々の東洋のイメージは微妙にずれています て建築や都市景観を考えてみたいと思います。 きりするのではないでしょうか?街の景観を形成する材料として、 行われた見本市「メゾン・エ・オブジェ」で展示・発表しました。 よね?今回はその辺の「東洋でも西洋でもない感じ」をうまく表 では、マテリアル別に事例をご紹介します。まずはステンレス。リ 今、アルミのデザインをもう一度見直さないといけない時期に来て 私はそのデザインを担当し、会津の方々と一緒に商品開発に取り組 現したいと思いました。 ビングデザインセンターOZONEの「ユニバーサルデザイン展」で いるのだと思います。 みました。今回はそのお話をご紹介したいと思います。 最終的に商品になったのはチェストやドレッサー、ポータブルミラ 依頼を受けたのは昨年7月のこと。半年後に迫った見本市までに30 ー、ティッシュボックス、書類ケースなど28アイテム。チェストは アイテムほど開発したいというものでした。まずは会津塗の現状を サイズをA2、A3、A4の3種類展開し、入れ子式にして自由に組み キッチンに親指を引っ掛ける部分を作りました。来場者からは「ス テンレスなのに温かい感じがしますね」と感想をいただき、硬い、 マテリアル×ディテール、マテリアル×カラーの関係性を見直す 冷たいイメージのステンレスでも加工次第でソフトなイメージも提 知らなければならないと思い、会議所の方々とディスカッションを 合わせられるようにしました。ベッドは組み立て式にしたり内部構 案できるのだと実感しました。次はシナベニア。温かい質感がある 都市景観を考える上で、マテリアル(素材)とディテール(装飾) 重ね、現行品を調査したり、歴史的背景や伝統技法を把握したり、 造を工夫して軽量化を図りました。これまでお椀や重箱などの和食 ので高齢者介護施設の建築で採用しました。館内は染色して色分け の関係には大変興味深いものがあります。例えばヨーロッパの都市 産地の工場や倉庫、作家の工房を訪ねたりしました。 器をつくってきた業者さんたちにとって、家具は初めての領域だっ したシナベニアのドアでゾーニングしました。柱や可動家具、キッ はマテリアルの基本が石。加工は様々でデザインも過剰ですが、マ 今回はパリで発表するということなので、欧州市場を意識したター たので途中、何度も修正を入れたりと苦労していました。 チンなどもシナベニアで統一し、明るく、軽やかなイメージを演出 テリアルが石だけなので統一感が感じられます。一方、日本は急速 ゲット、ブランドイメージ、商品構成を絞り込んでいきました。デ しました。集成材は横浜の中華料理店で使いました。ここでは建材 に都市が発展してしまったので、石、金属、パネル、アルミなどい ザインのテーマは「ホテルライクで上質な生活の提案」。会津塗の伝 としてだけでなく、什器やテーブルなどインテリアもすべて同じ集 ろんな素材が混在しています。でもディテールは少なめなので納ま 統技法である沈金や高蒔絵などを継承しながら、現代のライフスタ 成材で統一しました。最近の接着技術は優れていて集成材を0.3ミ りはシンプルな感じです。これに対して中国の住宅などはマテリア イルに合ったモダンデザインを施すことで、ちょっと上質な生活を 「メゾン・エ・オブジェ」の展示ブースは赤と黒でカラーコーディネ リから140ミリまで好みの厚さに挽くことができるので、壁、柱に、 ルもディテールも少なめ。単調なイメージがします。 彩ってくれる家具や小物を目指しました。旅先の高級ホテルで過ご ートし、上質かつ高級なイメージを演出。漆に馴染みのないヨーロ 家具にも応用しやすいですね。こうして素材を絞ってデザインした もう一つの視点として、マテリアルとカラーの関係があります。こ した時間や空間を、自分の日常にも取り入れてみたいと思う…。そ ッパの人たちに実際に触れてもらうため、漆を使ったタイルなどを ことで空間全体が締まり、テーマカラーの赤がくっきりと映えまし のバランスによって街の見え方は随分違ってきます。例えばベニス んな価値観を誘発していくことができればいいと思いました。 用意して体験的な要素も取り入れました。おかげさまで予想以上の た。そしてセラミック。この素材については今、INAXと共同でタ の街並みはマテリアルは少なめだけど色合いはカラフル、一方、横 イルの可能性を追求しています。タイルと洗面器、スイッチ、棚な 浜のビル群はマテリアルはばらばらですが、色遣いが少なく全体と どの隙間は一番汚れが貯まるところ。そこでタイルの壁面と棚、あ して白っぽいので、とりあえずはまとまったイメージがしますね。 るいはタイルと手すりを一体化したものを考えました。素材が同じ 日本の都市景観はこれまで形の規制には厳しかったのですが、素材 会議所の担当者、デザイナー、業者など大勢のスタッフで開発する きました。私自身も半年で15回程度会津に通い、産地を徹底的にリ なら掃除も楽ですし、きれいに使えると思います。このほかには保 や色にはあまりこだわってこなかった点があると思います。これか 際、ビジュアルでイメージを共有することが大事。そこでホテルの サーチし、業者さんと議論できたのは有意義な体験でした。 水性、発泡性など目的に応じたタイルの材料も研究しています。 らは異素材を組み合わせたときのバランスや、色同士が隣り合った 一室を絵にして全員に見せながらイメージ統一を図りました。 漆をはじめ日本の文化は今、世界的に好印象で受け入れられていま ときの印象などをきちんとコントロールするべき。これからは素材 現地の空気を知ることも大事ということで、視察にも出かけました。 す。追い風が吹いている状態なので、富山県の高岡漆器や高岡銅器 がもつ可能性をもっと深く理解し、ディテールやカラーとの関係を ミラノの見本市やインテリアショップ、ロンドンやパリのショール などの地場産業も、新しいブランディングや価値の創出で海外の市 考えながら都市景観を形成していく時代だと、私は思っています。 ームなども見学しました。ヨーロッパは石造りの街並の一角にフェ 場を開拓していけるといいですね。 住空間や都市景観の中でアルミが占める割合は大きい 反響があり、来場者の注目を集めることができました。 上質なホテル空間を彩る漆の質感をアピール ラーリショップがあったり、古い建物の工事現場にポップなファサ いますが、私自身も今、一番興味をもって研究している素材です。 ード広告があったりしても違和感がない…。古いものと新しいもの 集合住宅の中でアルミがどれくらい使われているかというと、サッ を調和させるのがうまいんですね。そういうヨーロッパの文化や生 シやブラインド、照明器具など結構多いことが解ります。特に家電 活風景を感じながら商品のイメージを膨らませていきました。 製品の比率が高いのですが、質感はいまひとつ。そこでもっとアル ブランド名の「BITOWA」は、「美とは?」「美と和」から。ディ ミの質感を生かした建築空間を考えてみました。例えば、床材に使 テールについてはまず、他の塗料にない漆独特の質感を大切にし うとか、壁の腰板から床を全部アルミにしたら暖かく、省エネにな ました。色はニュアンスのある赤にこだわり、オリジナルの玉虫 13 マテリアルとディテールの関係(ヨーロッパの都市・左/日本の都市・右) 今回は非常に限られた納期、コストの開発でしたが、産地の若手ス タッフが理解と協力を示してしてくれたおかげで形にすることがで アルミは富山の地場産業なのでみなさんも馴染みの深い素材だと思 るのではないかということを専門の先生と一緒に研究しています。 追い風に乗って日本の美を海外市場に発信していく 色をつくりました。模様はヨーロッパにあるレースやツタ模様な 「メゾン・エ・オブジェ」の展示ブース。赤と黒でカラーコーディネートしている。 14 ●ユニバーサルデザインセミナー サスティナブルデザインの実践 都心の大型マンションを次々と手掛ける建築家・三沢亮一氏と、 〜ユナイテッド・デザイン・オブ・マテリアルプロジェクトの取り組み〜 サスティナブルデザインにおいて様々な事業を展開してきた橘 リビングデザインセンターOZONEでユニバーサルデザインや 田洋子さんのお二人をお招きし、現実の問題点を直視して新た [講師]三沢 亮一(建築家/㈱ミサワアソシエイツ一級建築士事務所 代表) [日時]2006年2月23日(木) [会場]富山県産業高度化センター2階会議室 〜まずは、それぞれの仕事について聞かせ てください。 橘田●住宅・インテリアを基軸としてデザ 橘田 洋子(クリエイティブディレクター/シトラス 主宰) なスキームをつくり、実践しているサスティナブルデザインの 事例をお話いただきました。 サルデザインの食器開発、有田焼の再生陶 ルな願望があるからです。白金台のマンシ の家具をビルトインしたりすることで、ワ 色の白色をつくり、プロジェクトの頭文字 〜このプロジェクトの今後は? 土を使った食器開発などを手掛けました。 ョンは、コンサバドリーをつくって光と緑 ンランク上の充足感を提供することができ をとって「UDMホワイト」としました。現 三沢●参加企業は今まで1業種1社にしてい を取り込みました。住宅には解放感や癒し るわけです。これは消費が美徳だった時代 在では、この色を各社の商品カタログに載 たのですが、今後はもう少しオープンにし (P.19ナイトフォーラムでも詳しく紹介) インのディレクション、キュレーションを 三沢●私は住宅の設計、特にマンション建 感を求められるケースが多く、このような とは違うサスティナブルな概念につながる せてもらえるようにもなっています。 て広げていきたいと思っています。富山の しています。サスティナブルデザイン、ユ 築の仕事に多く携わっています。ご存知の 住まいにはリゾートホテルに共通する要素 と思います。 三沢●白色の次は木調素材も考えました。 メーカーさんにもぜひ、参加していただき ニバーサルデザインについては1998年か ように今、都心はマンションバブルで高級 を提案することもあります。 住空間における木調素材は、床や壁のよう たいですね。 らリビングデザインセンターOZONEで企画 マンションの販売が好調です。私も自分で 〜では、お二人が実践している「UNITED な大きな面に使われることが多く、重要な 橘田●サスティナブルデザインというと商 展を開催していました。始めた頃、サステ は絶対に買えないようなマンションのデザ 〜高度経済成長時代から現在まで、この40 DESIGN OF MATERIALS PROJECT」 ファクターとなります。しかしフローリン 品単体のデザインをイメージしがちなので ィナブルデザインという言葉は馴染みが浅 インをしています。今日富山でなぜ都心の 年ほどの間で「人とモノの関係性」は様変 の取り組みについてご紹介ください。 グを含め、木製家具、壁面、収納庫、造作 すが、これからはもっと大きなエリアで見 く、エコと同義語で捉えられていました。 高額マンションの話をするかというと、立 わりしたと思います。サスティナブルデザ 橘田●3年前に発足したプロジェクトで、集 材などには多くのメーカーが関与するため、 ていかないといけないと思います。そのた ですから企画展ではエコだけではなく、ロ 地条件、日当たり、治安、交通条件・病 インの概念も随分、浸透したのでは? 合住宅における様々なインテリアパーツの すべての色を調和させることは困難でした。 めにも企業、業態を超えて統一していこう ングライフの視点の展示内容に力を入れて 院・学校など、あらゆる条件の選択が可能 橘田●そうだと思います。私はサスティナ 色、形を中心とした仕様をコーディネーシ そこで、近年多く使用されている濃淡2色と という取り組みが必要なんです。 いました。一方、ユニバーサルデザイン展 な場合、人は本来住宅に何を求めるのかと ブルデザインには今後も深く関わっていき ョンしやすい仕様へと開発検討していく活 伝統的中間色2色、計4色をプロジェクト推 三沢●そうですね。これまでいろんな企業 はバリアフリーからはじまり、家具・プロ いうことが解るからです。そういう意味で たいと思っています。多様化した価値観、 動です。OZONEが組織したプロメンバーシ 奨色としました。マンション空間のインテ がそれぞれの商品の基本色や定番をつくっ ダクト、ガーデン、リフォームなど毎回テ 都心でどういうマンションが売れるかを調 ライフスタイルに対して、いかに長く使え ップからスタートしたもので、三沢さんと リアは色、素材、デザインなど細かいツー てきたと思います。でもそれは個々の努力 ーマを変えながら企画しました。毎年続け べると現代人の住まいに対するニーズのゆ るものを提案できるかが課題だと思います。 私を含め、建築家やインテリアデザイナー、 ルの積み重ねです。だから面倒なことだけ であって、みんなそれぞれ微妙に違うんで ることで、サスティナブルデザインも、ユ くえがよく解ると思います。 三沢●マンション設計で最近、感じるのは カラープランナーなど6名が実行委員メンバ ど、小さなことから一つ一つ整理していく すね。昔は独自色や独自素材をもつことが ニバーサルデザインも、かなり認知されて サスティナブルの視点でいくつか事例を紹 「品質や広さ、機能だけでなく、プラスαの ーになっています。 ことでトータルなバランスがとれていくと 企業のプライオリティになっていましたが、 きたと思います。 介します。千代田区三番町に建てた「パー 充足感を求めている」ということ。日本人 例えば住まいのリビングをリサーチすると、 思うんですよね。 これからは企業を超えた調和が必要な時代。 ユニバーサルやサスティナブルの視点での クテラス桜苑」は自然素材を生かしたマン らしいリラックスの仕方をふまえたマンシ 白っぽい壁面だけでもクロス、コンセント 橘田●推奨色はそれぞれの色をつくり、立 このプロジェクトもできるところから共同 商品開発のプロデュースもしました。サス ション。フローリングはムク材、建具は良 ョン設計が求められているのです。そこに 類、照明器具など、異なる白が混在してい 体CGを使ってシミュレーションし、三次元 で商品開発していきたいという思いからス ティナブルデザインをテーマに、家具のよ 質な木を使って特注しました。今、上質な は既製品や量産品で満足できないユーザー ることがわかります。そこでハウスメーカ ビューアーの眼鏡を参加企業のみなさんに タートしたものなので、みなさんに支援し うに運べるシステムキッチンや、膜構造を 暮らしをしている人は「末長く使えるいい がいて、例えばオーナーの名前を刻印した ー、住設機器メーカー、家電メーカーなど かけていただき、立体空間でのコーディネ ていただいて大きなネットワークにしてい 内装材としたシステム、燕三条でユニバー ものを手にしたい」という、サスティナブ オリジナルの洗面器をつくったり、特注品 16社に協力していただき、基本となる推奨 ートを検証しながら決めていきました。 きたいと思っています。 みさわ・りょういち/1998年㈱ミサワ アソシエイツ一級建築士事務所代表取締 役、2000年㈱エム・エイ・アイ代表取 締役に就任。大規模マンションの建築設 計・ランドスケープデザインを手がけ、 高い信頼と評価を得ている。グッドデザ イン賞受賞作品も多数。主な作品として、 麻布霞町パーク・マンション、パークシ ティ成城、武蔵野ガレリア、三番町パー クテラス桜苑など。日本建築家協会、東 京建築士会、東京都建築士事務所協会。その他の活動として 「UNITED DESIGN OF MATERIALS PROJECT(UDMプロジ ェクト)」メンバー。 リビングデザインセンターOZONEにて開催された「住ま いと都市展」展示風景。 きつだ・ようこ/日本女子大学住居学科 を卒業。同年、東京ガス「都市生活研究 所」の設立に参画し、所属。住宅・イン テリア関連の企画マーケティングリサー チを担当。93年「リビングデザインセ ンターOZONE」の開設準備に参画し、 04年3月まで所属。現在独立し、住宅・ 家具インテリア・設備・生活用品に関す る企画・デザインなどを手掛ける。旧建 設省住宅宅地審議会専門委員、住宅金融 公庫委員などを歴任。インテリアコーディネーター、マンション リフォームマネージャー、消費生活アドバイザー。その他の活動 として「UDMプロジェクト」メンバー。 白金台のマンション内観。コンサバドリーをつくって光と 緑を取り込み、解放感を演出している。 千代田区三番町「パークテラス桜苑」。フローリングはムク材、建具は良質な木を使うなど、自然素材を生かした建築。 15 白金台のマンション内観。オーナーの名前が刻印された洗 面器がビルトインされている。 「UNITED DESIGN OF MATERIALS PROJECT」の推奨色を掲載したパンフレット。 16 T O Y A M A P スグね〜ル ㈲ナンワ ミユキ化成㈱ 高岡市 射水市 ユニバーサルベル 目にやさしいキーボード ㈱能作 イワタデザイン 高岡市 O D KAUSBW-A1 氷見市 U C T S 置振り子時計 キッチン雑貨 キーボード スイング式乳児ベッド スポーツ用顔面保護マスク R DESUS[CONO]シリーズ Lump-Pendulum(LC05-08WH) ㈱リッチェル ㈱タカタレムノス 富山市 高岡市 スポーツ(特にハンドボール、野球、バレーボールなどの球 技)用顔面保護マスク。 母親と赤ちゃんとのコミュニケーション、安全性を考え、 手動で上下にスイングさせるベッド。赤ちゃんはお母さん のお腹の中にいるような安心感があり、夜泣きやぐずりが すぐに収まる。 真鍮鋳物のベルにカバーが取り付けてあり、どこを持って も音が鳴る。障害者や高齢者の介護用ベルとしての役割も 果たす。 文字の大きさを通常の10倍、英字も2倍に拡大。 高齢者や視力の弱い人にも使いやすいキーボード。 また、キーを6色で色分けしている。 ・機能、デザインともによい製品。(黒木) ・介護用品への応用も考えられる。(小松) ・圧力分散を考慮したデザイン、形もきれい。(八木) ・視点が面白い。(小松) ・商品は良いが販促ツールのリ・デザインが必要。(桐山) ・子どもが携帯し、防犯グッズとしても使える。(浅野) ・持ち手のリ・デザインが必要。(末坂) ・日本では今まで開発されていなかった商品なので期待し たい。(浅野) ・弱者には必要な商品。だが素材感や配色等もっとデザ イン性を考慮してほしい。 (桐山) ・優れている。(黒木) ・食空間に上質な空気をもたらしてくれる。(桐山) ・美しい。(小松) ・本体の厚みを薄くして壁に掛けてもよいのでは。(浅野) 優れた富山ブランドを 全国へ発信! 〜平成17年度 富山プロダクツに12点が選定〜 [富山プロダクツ選定品展示会]2006年3月23日(木)〜5月7日(日) [展示会会場]富山県産業高度化センター 1階展示室 「CONO」は円錐の意。シャープな本体のフォルムにステ ンレスの平板を合わせたモダンデザイン。透明感の高いア クリル樹脂を使用し、テーブルの和洋を問わない。 漆喰を思わせる真っ白い振り子時計。 文字盤のインデックスなどを省き、飾らないことでモノと の対話を引き出すデザイン。 富山県では、県内で企画・製造された工業商品で性能、品質および デザイン性に優れたものを「富山プロダクツ」として選定し、製品 の普及と販路拡大を支援しています。平成17年度の審査会をさる1 月24日に実施し、12点を選定しました。今後は国内外の展示会な どへの出展や販路開拓をバックアップしていきます。 ■選定委員 ●委員長/黒木靖夫(総合デザインセンター所長)●副委員長/小松研治(富山大学芸術文化学部教授)●委員/浅野隆(金沢美術工芸大学製品デザイン助教授)・野田雄一(富山ガラス工房 技術部長)・末坂幸子(高岡市デザイン・工芸センター所長)・八木絋一( 富山県デザイン協会常務理事・事務局長)・桐山登士樹(総合デザインセンターデザインディレクター) 苔器 掛時計 ドアストッパー 調理用具 ペーパーウェイト 掛時計 はりねずみ 刻(コク) TUBE DOOR STOPPER EGG FORM シリーズ モリ、ポー Drops draw the existance(KC03-23) ㈱能作 黒田昌吾 富山ゴーレックス㈱ 北陸アルミニウム㈱ 大寺幸八郎商店 高岡市 高岡市 高岡市 高岡市 高岡市 ㈱タカタレムノス 高岡市 器は青銅鋳物(ロストワックス)で製作。 苔をはりねずみの背に見立てたデザイン。 器の中の小さな景色を楽しんでほしい。 手仕事の素朴さを表現したクラフト的要素のある掛時計。 チューブの形のドアストッパー。使わないときは立ててお けば空間の楽しさを演出するインテリアとして楽しめる。 タマゴの美しいフォルムから生まれたデザイン。アルミキャ スト、形状、表面加工により食材のうまみと味わいを最大限 に引き出すキッチンウェア。 リング、ブレスレットなどを飾ることで、それぞれの個性 で楽しむことができるペーパーウェイト。 磁器のもつ、上品でやさしい清潔感を最大限に活かすカタ チを、高度な成形技術によって実現した掛け時計。 ・アイディアがいい、和める。(小松) ・着想がよいと思う。(八木) ・金属と苔とのマッチングがよい。(桐山) ・工芸的な美しさがある。(浅野) ・クラフトとデザインがよくあっている。(桐山) ・グッドデザインだが、富山らしさがほしい。(小松) ・楽しいデザイン。(黒木) ・アイディアが楽しい。玩具としてバリエーションを拡げ てほしい。(小松) ・Very Good.(浅野) ・優れている。(黒木) ・Good.(浅野) ・面白い。(黒木) ・アプローチがおもしろい。もっと実用性も向上できると 思う。(桐山) ・へこみの美しさが秀逸。(黒木) ・美しい。(浅野) 17 18 N i g h t F o r u m S t o r y 152回ナイトフォーラム D I G I TA L D E S I G N SEMINAR デジタルデザインセミナー 暮らしの中で生きるデザインを、 幅広いフィールドからプロデュース。 「AKARI The Sculpture of Light 展」会場風景。 リビングデザインセンターOZONEにて。 [ゲスト]橘田 洋子(クリエイティブディレクター/シトラス 主宰) [日時]2005年12月13日(火) [会場]アキデザイン 2F「アルファ」 しようということで「ザ・コンラン ショッ や、地場産業を活性化するためのイベント プ」を誘致、日本での経営も行っています。 や研究会、市場調査、展覧会、デザインコ 大学では住宅の設計デザインを専門に学び これは、ライフスタイルが成熟した今の時 ンペ、商品開発のプロデュースなどを行い ました。でも、在学中から自分には建築家 代に合ったセレクトショップとして大変多 ました。 にも、デザイナーにも向いていないと思い、 くの人々の支持を得ることができ、年間集 就職活動をしながら、何か自分に合った仕 客数も100万人を超え、リビングデザイン 事がないかと考えていた時、東京ガスが生 センターの「ネクタイのような存在」にな 活研究に関するシンクタンクを立ち上げる りました。 生活者の視点でデザインを考える仕事 OZONEを離れ、独立してからは様々な住 宅・インテリア関連企業と一緒にインテリ 話があり、運良く加わることができました。 ここでは主にマーケティングを担当し、ラ ジャンルを越えたデザインプロデュース コラボレーションの良さを最大限に活用 ア関連のイベントを開催したり、新商品開 発からプロモーションまでのプロデュース イフスタイルやインテリア、家具、住設機 ■3次元スキャナー体験セミナー デザインの現場でも活用される広告写真(コマーシャルフォト)に係 からCAD等を用いて3Dデータ化するリバースエンジニアリング。 り、コンシューマー向けで低価格となったデジタル一眼レフカメラ 本セミナーでは、コストパフォーマンスに優れた3次元スキャナー の活用は県内デザイン業にも広がりつつあります。 (ローランド・ディー・ジー・社製3次元レーザースキャナー)及び付 本セミナーではデジタル一眼レフカメラの操作方法や、モニターと 属の編集CADソフトウェア(Pixform Pro)を使って、実際のリバ のカラーマッチング、パソコン上で画像劣化がなく写真を補正でき ースエンジニアリングを体験するセミナーを開催しました。 るRAWデータ現像の方法、Photoshop CS2を使った各種画像処 今までCAD上で3D化が難しかった複雑な形状もスキャナーを活用す 理の方法など細部に渡りデジタルフォトのテクニックが解説され、 ることで比較的短時間に3Dデータ化できたほか、生成した形状デー 短期間ながらプロのフォトテクニックを垣間見ることができました。 タを簡易なモデリングマシンで切削するなどの活用事例も紹介されま 参加した受講者は、デジタル一眼レフカメラを使った撮影技術、商 した。参加者自身も当日実際に操作して、立体物の3D化を体験し、 品のライティング方法、画像の後処理等の一連のワークフローを体 リバースエンジニアリングが高岡銅器等の伝統工芸品分野や各種プロ 感し、実際に今回のテクニックを基礎に、普段の仕事の中で活用し ダクトデザイン分野へ有効に活用できることを確認できました。 ていきたいとの声が聞かれました。 関連事業としては建築家や工務店、ハウス を行っています。例えば、深澤直人さんが ち何年か経って、OZONEを立ち上げること メーカーの情報収集をし、家づくりのサポ デザインディレクターを務める「±0」の仕 になり、そのメンバーとして約10年ほど、 ート事業もスタート。そんな中、デザイン 事は、東京、青山のショップの立ち上げや 生活者の視点に立ったデザイン提案の仕事 の依頼を受けることもあり、デベロッパー PRをサポートしています。ショップにはカ に携わりました。OZONEは54階建てのビ と組んでデザイナーズブランドの家を提案 フェを作ってオリジナルの商品を販売した ルの中にあり、3〜8階をデザインセンター したりもしました。また、年間100万人も り、イベントを企画したり…。常に利用者 としました。ミュージアムやアーカイブ機 の人が訪れる施設なのでマーケティングリ の意見や感想を拾い上げながら、展開を考 能中心のヨーロッパスタイルと、テナント サーチにも取り組み、会員制度を設けて市 えています。このほか最近は雑誌媒体の仕 やショールームなど問屋的要素の強いアメ 場のニーズを収集し、そのニーズを基にリ 事として「婦人画報」のスタイリングを担 リカンスタイルを共存させたことにより、 フォームの事業も立ち上げました。多くの 当させてもらっています。 デザイナーにも一般ユーザーにも使いやす デザイナーやプランナーと知り合い、ネッ 私はデザイナーでも、設計士でも、スタイ い施設になったと思います。 トワークを広めることができたのもこの頃。 リストでもありませんが、これまでの仕事 ここでは様々な企画展を開催していますが、 商品開発プロジェクトも生まれ、システム を通して積み重ねた経験やネットワークを ユニバーサルデザイン展、サスティナブル キッチンや内装材の開発などにも携わりま 生かしながら、これからもデザインをキー 県内試験研究機関が取り組む研究課題につ デザイン展は毎年恒例になっています。ま した。また石川県、徳島市、佐賀県(有田) ワードに人々の生活の中にいろんな仕掛け いて、公平性、透明性を確保するとともに た、集客施設としてのショップ機能も付加 など全国の地場産業との共同プロジェクト づくりをしていきたいと思っています。 研究資料を効率的・効果的に活用してより ■研究評価 優れた成果を生みだすこと、その成果を県 内産業界等に波及させることを目的として、 平成16年度より、富山県は研究評価制度を 導入しています。デザインセンターにおい 3 1 2 4 1.徳島家具ブランド「ennSTYLE」見本市 2. 「東京ガス ピピッとコンロ Bonheur」 3. 「有田エコポーセリン」4.「Πキッチン」 きつだ・ようこ/日本女子大学住居学科を卒業。東京ガスの生活シンクタンク「都市生活研究所」の設立準 備に参画し、所属。住宅・インテリア関連の企画マーケティングリサーチを担当。93年住まいとインテリ アの総合情報センター「リビングデザインセンターOZONE(オゾン)」の開設に参画し、2004年3月まで 所属。退社後独立し、住宅・家具・インテリア・設備・生活用品に関するプロデュース会社「シトラス」を 設立。企画・デザイン活動に携わる一方、地場産業の活性化事業コーディネートも手掛けている。旧建設省 住宅宅地審議会専門委員、旧通商産業省、住宅金融公庫、埼玉県などの委員を歴任。日本女子大学非常勤講 師。インテリアコーディネーター、マンションリフォームマネージャー、消費生活アドバイザー。 19 [講師]玉内 公一(ティー・コア 代表) [日時]2006年3月14日(火)〜15日(水) [会場]富山県総合デザインセンター プレゼンテーションルーム、デジタル撮影室他 プロダクトデザイン等において、立体形状を3D測定し、測定データ 器などのリサーチをしていました。そのう ±0 青山本店 ■デジタルフォトテクニック基礎セミナー [講師]大江 浩史(モデリングアール㈱) [日時]2005年7月1日(金) [会場]富山県産業高度化センター 研修室 ても、 「研究課題外部評価委員会」を設置し、 9月には県内外の産業界、学会などの有識者 6名による外部委員を召集して、研究課題 「錫のラバーキャスティング法の研究」(平 成18年度〜平成19年度)について事前評 価会を実施しました。右記のとおり、委員 研究課題「錫のラバーキャスティング法の 研究」の評価項目(各5点) 委員の平均評価点数(点) ●事前調査等の状況(5点) 4.2 ●社会的・政策的な必要性(5点) 4.4 ●新規性(5点) 3.8 ●推進体制の妥当性(5点) 4.6 ●期待される効果(5点) 4.2 合計(25点中) 21.2 からの評価を受けましたので、本研究につ いては、デザインセンターの計画どおり研 究を推進していくこととしています。 20 2005年度(平成17年度)事業報告 事業名 名称・日時 内 1. デザイン開発 支援事業 商品開発研究会 2005.6.23 容 摘 要 場 所 事業名 名称・日時 ■協賛事業 商品開発研究会の活動について(年間運営計画について、 ミラノワークショップ について、 ミラノサローネ報告について) 講 師:桐山登士樹(総合デザインセンターデザインディレクター) 総合デザインセンター プレゼンテーションルーム 〃 講 「廣田尚子のデザインと展開」 師:廣田 尚子(プロダクトデザイナー/ヒロタデザインスタジオ代表) 富山県産業高度化センター 会議室 9.13 「富山プロダクトデザインコンペティション2005」第一次選考会 9.14 「現代建築&デザインにおけるアルミの可能性」 講 師:佐々木龍郎(建築家/㈱佐々木設計事務所代表) 2006.1.23 2.22 2. 市場開拓・ 流通支援事業 3.23〜3.25 3. デザイン人材 育成事業 会津漆器「B I TOWA」の開発物語 講 師:塚本カナエ(インダストリアルデザイナー/Kanae Design Labo代表) 〃 富山プロダクトデ 富山プロダクトデザインコンペティション2005の商品化状況、 ザインコンペティション2006計画、 会津漆器「B I TOWA」結果報告 ほか 講 師:桐山登士樹(総合デザインセンターデザインディレクター) 〃 市場開拓・流通支援 2006.1.18 「ロングライフデザイン〜人々の生活にプロダクトを密着させていくこと」 「ロングライフデザイン〜過去から現在、 ものづくりと売り場の現場から」 I Tモノづくり研修 2005.5.11〜5.13 6.14 7.1 2006.3.14〜3.15 5. デザイン情報 発信事業 総合デザインセンター プレゼンテーションルーム 富山プロダクトデザインコンペティション2005商品化に向けての検討協議 ほか 師:柴田 文江(インダストリアルデザイナー/Design Studio S 主宰) 師:柴田 文江 〃 ナガオカケンメイ (D&DEPARTMENT 代表 プロデューサー) 桐山登士樹(総合デザインセンターデザインディレクター) 機関誌の発行 2005.10/2006.3 インターネット情報発信 摘 要 場 所 主催:工芸都市高岡2005クラフトコンペ実行委員会 大和高岡店 主催: 富山県デザイン協会 ウイング・ウイング高岡ホール ほか offer26号・27号 平成17年度事業報告 ナイトフォーラム、 デザイン講習会、 デザインウエーブなどの開催情報をホーム ページに随時掲載 デザインライブラリーの整備・運用とデータベース作成業務 富山のCr ea to r展→15 2005.5.31〜6.30 「JAGDA TOYAMA POSTER DESIGN EXHIBITION 2005 GREEN vol.10」 主 富山県内のグラフィックデザイナーが環境をテーマに制作したポスターを展示。 富山県産業高度化センター 会議室 富山のCr ea to r展→16 2005.8.2〜8.31 リビングデザインセンターOZONE 6F パークサイドスクエア 富山プロダクトデザインコンペティション展示会 新しいクラフトを求めて 第45回富山県デザイン展 2005.11.23〜11.26 「音」をテーマにしたデザインや過去2年以内に制作された作品を県内デザイナ ー、 学生から公募した作品や「ノーマイカーデー」を呼びかける環境グラフィック スをテーマに県内公募参加者がグループごとにオリジナル作品を制作したワー クショップによる作品を展示。 サン・センター共同企画展 クラフトマンズギャザリング!2005 2005.7.17〜7.18 講 講 容 〃 ホテルニューオータニ高岡 瑞竜 プレゼンテーションルーム 10.26 「富山プロダクトデザインコンペティション2005」最終選考会 11.24 〃 工芸都市高岡2005クラフト展 2005.10.27〜10.31 内 富山プロダクツ2006 2006.3.23〜5.7 デザイン雑誌情報 Maste rcamによる3次元CAD/CAM技術研修会 講 師:福岡 勝弘(㈱ジェー・ビー・エム) Maste rcam総合活用セミナー 講 師:安井 健治(㈱ジェー・ビー・エム)ほか 3次元スキャナー体験セミナー 講 師:大江 浩央(モデリングアール㈱関東営業所) 富山県産業高度化センター 会議室 デジタルフォトテクニック基礎セミナー 講 師:玉内 公一(ティー・コア代表) 総合デザインセンター プレゼンテーションルーム ほか 催:TOYAMA ADC 富山県産業高度化センター 展示室 総合デザインセ 富山県内で活躍中のクラフトマン20組の「つくり手」たちが、 金属、 漆、 ガラス、 主 催:サン・センター(高岡市デザイン・工芸センター、 ンター、 ㈱富山県産業高度化センター) 陶器、 七宝、 木工など様々なジャンルのハンドメイド品を展示。 富山ガラス工房新人スタッフ展「無色」 富山ガラス工房新人スタッフ2名による作品展 出展作家:津田清和、 吉田安喜 〃 〃 富山県内で企画、 製造される性能、 品質及びデザイン性に優れた工業製品を「富 山プロダクツ選定商品」として認定した12点のほか過去3年間の選定商品の 一部も展示紹介。 〃 デザイン雑誌を整備し、 閲覧などの情報提供 富山県産業高度化センター 研修室 〃 6.ユニバーサルデザイン 推進事業 ユニバーサルデザインフォーラム 2006.2.23 「サスティナブルのトライアル事例〜具体的なアクション」 講 師:三沢 橘田 亮一(建築家/㈱ミサワアソシエイツ一級建築士事務所 代表) 富山県産業高度化センター 洋子(クリエイティブディレクター/シトラス主宰) 会議室 7. その他 4. デザイン交流 支援事業 ミラノワークショップ 2005.8.22〜8.26 第151回ナイトフォーラム お菓子の話」 2005.6.21 「東京で流行っている料理、 講 師:藤本紀久子(㈲スタジオ・カルティベイト主宰、松屋生活研究所研究員) 富山市民プラザ2F 「Cafe' de PAPA」 第152回ナイトフォーラム 2005.12.13 「OZONEらつ腕プロデューサー 講 師:橘田 デザインウエーブ 2005.4.22 8.5〜8.7 9.13 10.26 脱サラ物語」 ワークショップ 10.27 2006.2 ■協賛事業 21 デザイン事業支援 デザインフェア2005 2005.10.7〜10.10 ㈱アキデザイン2F アルファ ガラスとアルミのプロダクト 富山プロダクトデザインコンペティション2005第一次選考会 アドバイザー:近藤 康夫(近藤康夫デザイン事務所代表) 審査員:安藤 貴之(Pen編集部編集長) 近藤 康夫(近藤康夫デザイン事務所代表) 名児耶秀美(アッシュコンセプト代表取締役) 廣田 尚子(ヒロタデザインスタジオ代表) 黒木 靖夫(総合デザインセンター所長) 〃 最終選考会(公開)/デザインセミナー/授賞式・交流会 最終選考会:富山プロダクトデザインコンペティション2005の最終選考に残っ た招待デザイナー10組によるプレゼンテーションの後、 5人の審査員が公開で 選考を行った。 講 師:名児耶秀美(アッシュコンセプト代表取締役) 佐藤オオキ(㈲nendo代表) 富山ガラス工房、 高岡市デザ イン・工芸センター、 総合デザ インセンター デザインプレゼンテーション 2005.8.24 「ヒット商品を生み出す工夫〜イタリア・デザインビジネスの現場から〜」 ホテルニューオータニ高岡 行政機関、 県内企業からなるデザインミッションをミラノに派遣し、 イタリアの先 進事例を視察するとともにイタリア在住デザイナーとの交流を図る。 富山モノづくり技術展 2005.10.15〜10.18 〃 イタリアデザインのニューパラダイム展 富山県の企業とコラボレーションした、 現代イタリアで活躍する4人のイタリア 人デザイナーの作品を展示紹介。 参加デザイナー:ガブリエル・ペッツィーニ、 デザイントリップ ファビオ・ボルトラーニ、 ミキ・アストリ 〃 ワークショップ作品展 富山県の主要産業であるアルミと、 これからのデザイン分野に多用されるガラ スを用いた新たなプロダクトを展示。 参加デザイナー: ガラス/中林鉄太郎、 夏目知道、 福田秀之、 ホセ・カントゥ・グスマン アルミ/浅野隆、 五十嵐広威、 内藤裕孝、 舟橋慶祐 〃 デザイン相談会 2005.8.3 新商品のパッケージデザイン等についての相談など、 県内で活躍するグラフィッ クデザイナーが個別で応対。 ㈱リッチェル、富山ゴーレック ス㈱、 三協アルミニウム工業㈱、 北陸アルミニウム㈱、㈱高田 製作所、 ㈱竹中製作所、 松岡研 磨工業所、 折井着色工場、 ㈱能 作、 総合デザインセンター ホテルニューオータニ高岡 選定委員会 2006.1.24 国際協力事業団(JICA)研修生受入 2005.5.10〜11.9 デザインウエーブ2005イン富山報告書作成 主催:富山デザインフェア実行委員会 富山市民プラザ ステファノ・ジョバンノーニ事 務所、 モルテーニ社、 ゴールド ウィンヨーロッパ、 ジェトロミラ ノセンター、 蓮池槇郎デザイン 事務所、 イタリア貿易振興会 ほか ARTE GIAPPONE ミラノスカラ座近くのギャラリー 講 師:粟辻 粟辻 美早(㈱粟辻デザイン代表) 麻喜(㈱粟辻デザインデザイナー) 富山県産業高度化センター 会議室 応対デザイナー:上野博之(㈲上野博之デザイン室代表取締役)、 彼谷雅 光(㈲ナチュラル・デザインスタジオ代表取締役)、 中山真由美(㈲ファイ ン・プロジェクトアートディレクター)、 林 久美(ハヤシデザイン代表) 富山県産業高度化センター 会議室 ほか 審査員 委員長:黒木靖夫(総合デザインセンター所長) 副委員長:小 松研治(富山大学芸術文化学部教授) 委員:浅野隆(金沢美術工芸大 学製品デザイン助教授)、 野田雄一(富山ガラス工房技術部長)、 末坂幸 子(高岡市デザイン・工芸センター所長)、 八木 紘一( 富山県デザイ ン協会常務理事・事務局長)、 桐山登士樹(総合デザインセンターデザイ ンディレクター) 富山県産業高度化センター 展示室 富山プロダクツ選定 製造される性能、 品質及びデザイン性に優れた工業製品の認定制 集中募集期間2005.11.1〜 県内で企画、 2006.1.15(通年募集) 度「富山プロダクツ選定商品」の公募 富山ゴーレックス㈱、 ㈱能作、 国宝勝興寺、 デザインウエーブ 展示会場 デザインツアー「ものづくり見学ツアー」 全国各地からデザインウエーブのコンペティションに参加したデザイナーを対象 に、 様々な加工技術や素材のもつ特性を新たなデザイン提案に活用していただ くことを目的に、 県内企業の「ものづくり現場」を体験するデザインツアーを実施。 団長:竹平栄太郎( 富山県デザイン協会理事長) 団員:内島錬一郎(三 協アルミニウム工業㈱技術開発本部本部長/執行役員)、 宮森慶男(㈱ ミヤモリ取締役会長)、 温井邦彦(日本貿易振興機構(JETRO)富山貿 易情報センター所長)、 室田健一郎(室田商店代表)、 八木紘一( 富山 県デザイン協会常務理事・事務局長)、 事務局:鈴木敬一(総合デザイン センター副所長)、 桐山登士樹(総合デザインセンターデザインディレク ター)、 堂本拓哉(総合デザインセンター主任研究員)、 イタリアミラノとつながりをもつデザイナーと県内企業とがコラボレーションし た製品を中心に県内で企画・製造される「デザイン性・機能性に優れた製品」を イタリアミラノで展示。 商品デザインセミナー 2005.8.2 「コミュニケーションから生まれるデザイン」 〃 招待デザイナー:浅野泰弘、 芦田秀一、 f.a.t、 大友学、 小野里奈、 梶本博司、 富山県産業高度化センター 金山元太・金山千恵、 菅野傑、 桐本隆志、 斉藤大介、 笹川寛司、 佐藤ナオキ、 展示室 佐藤徹、 渋谷哲男、 清水久和、 下尾和彦・下尾さおり、 澄川伸一、 高田晃一、 デザインシップ 虎、 寺田尚樹、 中林鉄太郎、 西川学、 馬場威彰、 福間祥乃、 三浦秀彦、 山中祐一郎 ほか ミラノデザインミッション 派遣期間 2005.10.13〜10.20 富山県産業高度化センター 会議室 富山プロダクトデザインコンペティション2005 富山県の産業特性を生かした新しいデザインの商品化を目的に、 全国各地のデ ザイナー26組を指名し、 コンペティション形式で提案された作品を展示紹介 課題: 「大切にしたい美しいデザイン」 日本パッケージデザイン展2005とやま 招待デザイナー:ガブリエル・ペッツィーニ(プロダクトデザイナー) ファビオ・ボルトラーニ(プロダクトデザイナー) 富山県民会館 デザインウエーブ開催委員会開催 デザインセミナー 「デザイナーとプロデューサーのコラボレーション アッシュコンセプトの秘密解剖」 10.26〜11.7 洋子(クリエイティブディレクター/シトラス主宰) ミラノ在住のデザイナーを招待し、 県内企業を視察・商品開発 第33回日墨交流計画(工業デザイン) メキシコ人研修員2名 国際協力事業団(J I CA)から研修生を受入れ、 デザインセンター職員の指導の もと、 3次元CADや画像処理ソフトウエア等を用いた工業デザインの実践的な 研修を実施。 アトリウム 22
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