会報12・1月号 - 東京都中学校長会

平成 22 年 1 月 19 日(No.345)
12・1 月 号
発行
東京都中学校長会
会長 菊山 直幸
東京都中学校長会
〒 0105
港区西新橋 1 - 2 2 - 1 3
- 0003
全日本中学校長会館 202 号
電 話 03(3504)8705
FAX 03(3504)8706
〈巻頭言〉
「6 年制」でいいのか
副会長 牛島 正廣
「教員免許状の資格取得期間を、養成と研修
の充実を図るために2年延長して、大学院修士
課程終了とする」ことが、民主党のマニフェス
トに記述されている。
文部科学省では、来年度に制度設計を検討し
て、早期の導入を考えているという。
その主なねらいは、学校で起きている問題の
主な要因は、教師の力量不足であり、それを補
うために6年制にするという。また、保護者の
高学歴に対して、相応に教師の学歴も高くして、
教師が説得力のある対応をできるようにするた
めともいわれている。
果たして、現在の4年制を6年制に変えて、
上記のような問題が解決できるのであろうか。
今、手がけることは、年限延長ではなく現在
の4年制で行われている大学生への指導内容の
検討・改善ではないだろうか。端的に言えば大
学で、子どもに教える実践力をつけさせ、学校
で即戦力になる人材を養成することである。
埼玉県のある男性会社員が、「大学で教職課
程の授業をとっていたが、あの内容で卒業して
すぐに教壇に立たなければならないと思うと恐
怖を感じる。車の免許証で言うならば、道路交
通法と運転の概念だけを教えられて、公道を走
る恐怖の感覚だ。」と述べている。また、医者
でもある国立の大学の学長が、「学長就任後に
教育学部を見て、非常に驚いた。医学部では、
教授は自分が手術をするところを見せて指導す
るが、教育学部は何故、自分が子どもを指導す
るところを見せないのか。手術を見せられない
人が、手術について教えているようなもので、
これで、現場の教育が成り立つのかとショック
を受けた。
」とのこと。
(産経新聞 オピニオン H 21.12.18 より)
まさに、このショックが、現在の教育課題と
-1-
なって表出しているのであ
る。
私の大学時代の講義で
は、教材の解釈・授業の
やり方(話術・板書の仕
方・机間指導・学習形態・
子どもの動かし方・指示の
出し方等)や障害のある子ど
もへの対応のあり方等も、ほとんど学んだ記憶
がない。その実態の多くは、今も改善されない
ままではないだろうか。
多くの教師が、それを教わったのは、2〜3
週間の教育実習の期間中である。従って、4年
制の教育内容の改善と共に、教育実習期間をせ
めて、半年に延長すれば、多くの課題の解決が
できると思われる。半年間の実習を積めば、当
人にも、周囲にも、教員としての適・否や教師
としての可能性が明確になる。説得力のある対
応ができる人材の発掘・育成も容易になり、生
徒・保護者の信頼もついてくる。
また、長期化が予想される未曾有の不景気の
中で果たして、6年間を経済的な自立をせずに、
大学で学べる学生が増えるであろうか。「本当
に教師になりたい人しか、教育系大学に来なく
なる。」という大学関係者もいるが、「教師にな
りたい人の総てが、教師に適しているか否か」
は、実習を引き受けている学校現場の声を聞け
ば、一目瞭然である。
「薬剤師の資格は、4年間で取れたが、6年
制になったら志望学生が激減して、私学の薬学
部では定員割れも出てきて、優秀な人材が集ま
らなくなった」と聞く。
教員養成課程も同じ道を歩んではならない。
第2回区市等校長会長連絡会報告
12 月地区代表者連絡会報告
■ 第 2 回区市等校長会長会連絡会
日 時 平成 21 年 11 月 13 日(金)午後 3 時
場 所 日本赤十字社東京都支部 会議室
祈りたいと思います。あと2週間程で新しい年で
す。生徒たちには、大晦日の沈みゆく夕陽を感謝
の心で見送ろう、そして、半日後の初日を新鮮な
心で迎えて決意・夢をはっきりさせようというこ
とを話しています。先生方も仕上げとなる 3 ヶ月
を笑顔で元気に勤務していくために、しっかりと
休養する年末年始の休みとしましょう。
連絡・報告ですが
・本 会規約改正を検討中、3 月地区代表者連絡
会で確認
・研究大会、お疲れ様でした。さまざまな反響
があり、今後に生かしていきたい
・都立入試、インフルエンザ対応を都教委で検
討中
・東 京駅伝、たくさんの地区が参加予定。1 月
の地区代表者連絡会で説明してもらう予定
・都立高入学者選抜制度検討委員会の報告別紙
の通り
・教職員の勤務時間、部活動指導手当の見直し
検討中
・事業仕分け作業終了、校長のマネジメント能
力など話題もあったが全日中など 23 団体の
努力の成果もあり学校教育全体としては良い
方向になった
・中友会へ出席、都公立中及び校長の抱える課
題等説明
<行政説明>
(1)
「学習指導要領の完全実施に向けた学校現
場での取り組みについて」
文科省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室
企画室長 梶山 正司 氏
(2)
「教職員の人事異動について」
東京都教育庁人事部
主任管理主事 田口 康之 氏
<会長あいさつ>
(1)新 型インフルエンザ、落ち着きつつある
が予断を許さない
(2)全 日中研究大会、大都市中学校長会連絡
協議会について
(3)都校長会研究大会 全員参加で。紀要を 1
部副校長へ
(4)都立高入試 インフルエンザ対応検討中
(5)文科省へ要望書提出
(6)東京駅伝・都教職員物故者追悼式
(7)都立高推薦選考等見直しについて
<連絡事項>
(1)都校長会研究大会
・臨時総会議長について
・座席について
(2)組織等検討委員会の経緯と予定
(3)事務局より
<協議事項> 議長 折田 健(清瀬二中)
H22 年度都中学校長会活動方針について
中村一哉 総務副部長
来年度の総会に向けて 1 月の地区代表者連絡
会、2 月の校長会長連絡会で検討し 3 月にまと
める。意見集約をしたいので協力願いたい。
■ 12 月地区代表者連絡会
日 時 平成 21 年 12 月 15 日(火)午後 3 時
場 所 日本赤十字社東京都支部 会議室
<連絡事項>
役 員 会 ①若手教員研修
②仕分け作業部会の発言について
③入学者選抜検討
会 計 部 徴集ほぼ終了
研 究 部 第 1 部会 1015 時間確保情報
第 2 部会 食育栄養教諭配置 3 校
会 報 退職校長一言集原稿依頼
進路対策 進路調査集計 1 月プレス発表
修旅対策 22・23 年度情報地区対策委員に
事 務 局 ① 22 年度年間予定
②各行事の地区割当て
③エイド訴訟保険加入
④統廃合校情報
<行政説明>
(1)
「22 年度都立高入学選抜について」
東京都教育庁都立学校教育指導課
統括指導主事 川越 豊彦 氏
インフルエンザ対応。他道府県、入試日程に
余裕がある所は追試実施多い。都は日程が厳し
く、中学校への影響も大と考える。追試ではな
い方法で検討中で今週末に発表予定。
<会長あいさつ> 私立高校の入試相談が始まりました。
、今後2
~3ヶ月、生徒たちが希望の進路に進めることを
-2-
第 66 回大都市中学校長会連絡協議会
平成 21 年度千葉大会
■日時 平成 21 年 11 月 10 日(火)
・11 日(水)
(提案:東京都板橋区、千葉市)
■場所 ホテル ポートプラザちば(千葉市)
・学習指導要領移行期1年目における数学、
■大会趣旨
理科の時間増に対応する人的な問題と選択教
大都市のもつ中学校教育に関わる諸問題に
科の履修
ついて、情報交換、研究協議を行い、その
・平成 24 年度の学習指導要領全面実施に向
解決の方途を探りながら、各都市における
けての課題
中学校教育の充実・発展を期する。
(第2協議題)基礎・基本の定着と個に応じ
■主催 大都市中学校長会連絡協議会
た指導に関する現状と課題
■主管 千葉市中学校長会
(提案:神戸市、千葉市)
■参加 札幌市、仙台市、新潟市、さいたま市、
・知識・技能の習得とこれらを活用する学習
東京都、川崎市、横浜市、静岡市、名古屋
活動のあり方
市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、広島
・
「総合的な学習の時間」における学習のあり方
市、北九州市、福岡市、千葉市(オブサー
バー参加 浜松市、岡山市)
(第3協議題)特色ある学校づくりに関する
■分科会の概要
現状と課題 (提案:堺市、千葉市)
・小中学校間連携の現状と課題
【A分科会】
・家庭や地域との連携の現状と課題
学校経営上の諸問題に関する内容
(第1協議題)学校経営の組織・管理・運営
【C分科会】
等に関する現状と課題
(提案:福岡市、千葉市)
大都市特有の諸問題に関する内容
(第1協議題)生徒指導に関する現状と課題
・保護者からの相談への対応の現状と課題
(提案:仙台市、千葉市)
・学校運営に関する広報活動の現状と課題
・不登校生徒の現状と課題
・今日的な生徒指導の現状と課題
(第2協議題)学校評価と評価結果の活用に
関する現状と課題 (提案:京都市、千葉市)
(第2協議題)中学校教育における進路指導・
・学校評価実施の検証と活用に関わる現状と課題
人権教育に関する現状と課題
・学校評価の効果的な実施に関わる現状と課題
(提案:名古屋市、千葉市)
・生徒個々の自己実現を図るキャリア教育の
(第3協議題)学校経営を支える人事管理・
推進
人事異動に関する現状と課題
(提案:大阪市、千葉市)
・通常学級における特別支援を必要とする生
徒への対応
・長時間労働に関する現状と課題
・若年層(経験年数6年未満程度)とミドル
(第3協議題)開かれた学校づくりとPTA
リーダー(学年主任等)の育成に関わる現状
活動・地域との連携のあり方
と課題
(提案:さいたま市、千葉市)
・開かれた学校づくりと地域との連携のあり方
【B分科会】
・PTA活動の推進と学校の関わり方
教育指導上の諸問題に関する内容
(第1協議題)教育課程の実施と管理に関す
る現状と課題
-3-
平成 21 年度東京都中学校長会研究大会
■日時 平成 21 年 11 月 19 日(木)14 時開会
(1)望 ましい教育課程の編成・実施や
■場所 なかのZERO・大ホール(中野区)
■概要
全体司会 逢見百樹 総務部副部長
指導法及び評価法の改善
(2)よりよい教育活動を推進するため
の教育設備の改善
(1)開会のことば 牛島正廣 副会長
(2)国歌斉唱
(3)教員の資質向上や教職員定数改善
等の人的条件の改善
指揮 風見 章(杉並区立杉森中)
伴奏 藤澤弥生(調布市立調布中)
(3)会長挨拶 菊山直幸 会長
(4)来賓挨拶
(4)教 職員の給与、各種手当及び勤務
条件の改善
(5)関 係諸機関、諸団体とのより強力
東京都教育委員会教育長 大原正行 様
中野区教育委員会教育長 菅野泰一 様
(5)来賓紹介
な連携・協力
(6)その他の必要事項
(6)臨時総会 提案者 牛島正廣 副会長
(7)研究発表 司会 三町 章 研究部長
〔主題〕教育課程の編成・実施にかかわる現状・
課題とその対策
【第1主題】
東京都中学校長会会則の改訂について
1 改正内容
「今後の教育課程編成・実施上の課題」
発表者 岡田芳廣(世田谷区立砧南中)
○調査内容と結果のまとめ(以下、抜粋のため、
18 条(3)企画部の名称を 会則第
①第
18 条(3)教育対策部とする。
詳細は「研究紀要」を御覧下さい。)
①学校教育目標等、教育課程の変更点について
・
「公共の精神」、「伝統・文化の尊重」、「我が
国の郷土を愛する態度」など新しく教育基本
②第 19 条 各部に部長及び若干名の副
部長を置く。総務部、会計部、教育
対策部、研究部の4部には必要に応
じた数の部員を置く。
法等で規定された内容を学校教育目標レベル
にどう盛り込むか検討が必要。
・今 年度になり、年間授業時数 1015 時間を設
定した学校は2割程度。多くの学校が苦心。
2 改正理由
部の名称と活動内容の整合性を図るため。
〈参考〉 ②校内研究・研修あるいは実践の重点項目につ
現規程による企画部の活動内容
いて
・校長会、教育研究会、教育委員会とが協議し
中学校教育が現在抱えている諸問題を
ながら体系的な研究・研修活動を構築するこ
とが重要。
・体験活動の実施校は多いが、その内容は総合
的な学習の時間や学校行事に関連したものが
明確にする。また、望ましい教育条件
についての調査、研究を推進し、より
よい教育活動を実践していくための方
策の検討と提言を行う。
多い。
-4-
③理数教育・選択教科の実施と課題について
・第1学年の数学と第3学年の理科の授業時間
の増加実施については、指導面・運営面の混
(9)質疑応答
司会 中村一哉 総務部副部長
乱はさほどない。
・選択教科の開設については、徐々に実施しな
い方向がみえてきている。
(10)講評
教育庁指導部義務教育特別支援教育指導課長
坂本和良 様
④今後の教育課程の編成に関する課題について
・年間 1015 時間の授業時数確保。
○概要
①平成 22 年度予算要望事項
・教員の資質能力向上について
・長期休業日の短縮に当たっては、生徒や家庭、
教員の研修等にとっての長期休業日の意義に
ついて再考が必要。
(初任者研修、2・3 年次教員研修等の改善など)
・学力向上策について
(学力調査の継続実施、実施時期を 10 月下旬
【第2主題】
「当 面する経営課題・教育課題への対応の
に変更など)
・スポーツ教育の推進について
(部活動外部指導員導入促進補助事業など)
現状と課題」
発表者 梅原 哲(小平市立小平第五中)
○調査内容と結果のまとめ
①「OJT」の実施状況とその推進にかかわる
・登校支援員モデル事業について
(5地域から 10 地域へと拡大など)
・環境教育について
取組の成果と課題
・教員のOJTに関する理解不十分と、OJT
実施の時間確保の困難さが課題。
②公立中学校第1学年の生徒の実態調査の結果
概要について
*調査対象及び標本数:校長 624 名、教諭 624 名、
生徒 2026 名
*調査時期:平成 21 年 7 月 13 日〜 17 日
(校長及び教諭、生徒ともに、平成 21 年度に
所属している学校での適応状況について回
答したものである。)
*主な調査項目
・入学前の不安の有無〈生徒の回答〉
・入学3ヶ月後の不安の有無〈同〉
・入学3ヶ月後の新たな不安の発生状況〈同〉
(学習、友達関係、生活)
・入学前の不安内容の比較〈校長、教諭、生徒の回答〉
(学習、友達関係、生活)
・中学入学時の適応のために必要な対応策〈校長の回答〉
②「主任教諭」の導入状況とその活用にかかわ
る取組の成果と課題
・主任教諭の自覚の向上と、主任教諭の校内で
の機能的な活用が課題。
③「食育」の実施状況とその推進にかかわる取
組の成果と課題
・栄養教諭の各学校への配置が課題。
④「環境教育」の実施状況とその推進にかかわ
る取組の成果と課題
・環境教育の全体計画や年間指導計画の作成と、
教員の共通理解・実践が課題。
(11)閉会のことば 村上みな子 副会長
(8)活動報告
司会 原美津子 生徒指導部長
「生徒指導の現状と課題」
発表者 赤木宏行(練馬区立開進第四中)
○報告の内容
項目A・部活動推進について
項目B・ハイテク(サイバー)犯罪関連について
項目C・学校の安定度調査について
項目D・学校総体として生活指導力を上げる校
内研修の取組について
-5-
「私の学校経営」
「稲城エデュケーションプログラムと本校の教育活動」
稲城市立稲城第五中学校長 千々岩 保任
1 本校の概要について
本校は、昭和63年4月1日に向陽台
主体的な学習習慣を目指す学習ガイダン
スを実施したり、パソコンを使った個別
の街開きとともにお隣の向陽台小学校と
一緒に開校した比較的新しい中学校で
学習を学校のみならず全家庭で行える環
境(eライブラリ)を整備したり、五中
す。開校の翌年、昭和から平成へと年号
が改まり、まさに平成の誕生とともに時
カフェテリア研修と称しOJTによる指
導研修等を行っています。<本物との出
代を歩んできた学校です。校地一万坪と
いう広大な敷地に建てられた総二階建て
会い>では、中1で冬の野沢温泉村で三
泊四日の宿泊体験学習を行い、スキー体
験や宿舎の方々との触れ合いを通して本
校舎を緑の樹木が囲むように植樹され、
校舎西側には可愛らしい三角屋根の時計
台があり、学校のシンボルとなっていま
す。
2 稲城市の教育プログラム
稲城市には、稲城エデュケーションプ
ログラムという市内全小中学校が共通で
取り組む骨格型の教育プログラムがあ
り、そこに以下のような三つの重点が掲
げられています。
A:基礎・基本の徹底
B:本物との出会い(子どもに出会わせ
る内容)
C:連携(学校における重点的な教育活
物の実技指導に触れたり野沢の文化に触
れ、お団子作りやかまくら作り等を体験
し、東京では味わえない本物との出会い
を体験しています。文化的な面では音楽
の授業に箏曲体験を取り入れ、本物の指
導者との出会いを大切にしています。<
連携>では、大学との連携による教育ボ
ランティアや教育プラクティクム(参観
実習)を取り入れています。特に参観実
習においては、指定された日に複数の大
学から多くの学生が先生とともに訪れ、
教師を目指す学生に学ぶ機会を設けてい
ます。地域との連携については、毎週木
曜日に地域の方々が門に立ち挨拶運動に
協力をいただき、大変大きな力となっ
ております。特に今年度は中学校ブロッ
動)
学校はこの重点を受けマイプランを作
成し、日々学校経営にあたっています。
クを中心とした学区域の小学校との連携
に総力で取り組んでいます。中学生が小
学校で合唱を披露したり、リトルティー
チャーを務めるのは本校の伝統ですが、
3 本校の特色ある教育活動
私の学校経営は、稲城市の教育方針
に基づき、自校の課題を把握しながら子
どもたちのためになることをしっかりと
さらに教育課程の連携や合同地域清掃、
保幼小中地域連携による挨拶運動などに
やっていこうというのが基本です。難し
いことより今、子どもたちや教職員に力
を付けてほしいことを最優先とし取り組
も取り組んでいます。学校と家庭、地域
が一体となった教育活動をいっそう充
実・発展させていきたいと考えています。
んでいます。<基礎・基本>については、
-6-
「随想」
文化の発信塔
足立区立渕江中学校 三島 光
生まれ育った地方は、蔵王連邦東側
小学校時代のことはあまり覚えてい
の麓の扇状地にあり、稲作を中心にし
ませんが、中学校時代のことは鮮明に
ながらも、高地や山間部、丘陵地では
記憶しています。
畑 作 が 多 く 行 わ れ、 丘 陵 地 は 桃、 梨、
校長・教頭は官舎に住み、先生方の
リンゴ、ブドウなどの果樹園が切り開
何人かは町営住宅に住んでおられまし
かれ、高冷地では漬物用の大根が栽培
た。親に言い付かって届け物を持って
されていました。
いくと、いろんなものをご馳走になり
多くの子どもたちは、下校後は近所
ました。紅茶、珈琲、角砂糖、ケーキ
のガキ大将を中心に、男女別に遊んで
など本でしか見たことのないものが目
いた。
の前にありました。そこだけ文化の違
ただ、農繁期は例外で、学校も農繁
う世界でした。
休業があり、農家ではなかった私も近
同じクラスに教頭先生の娘が居り、
所の田植えの手伝いに行きました。苗
幾度か教頭官舎に招かれました。転入
床から天秤に早苗を入れ、畦を運び、
したての娘を思ってのことだったので
腰を折って田植えをしている大人の後
しょうが、招かれた者すべてが街場の
方に上手に投げ入れるのです。それぞ
生活様式に凍りついたのを思い出しま
れに速度が違うので、丁度の所に投げ
す。
入れるのは難しい作業でした。
毎日、毎時間の授業で教わることす
終わると「早苗饗(さなぶり)
」があり、
べてが夢の世界で、とても魅力的でし
大人達は座敷で、子ども達には縁側で、
た。知らない未知の世界が目の前にど
ご馳走と搗き立ての餅が大量に振舞わ
んどん現れるのです。東京で生活した
れます。
先生方の体験談を聞くのは、正に夢の
そんな時代(昭和 34・5 年)でも、
「勉
世界であり、憧れの世界でした。
強」に関する考え方が次第に変化して
情報も、通信手段も発達した現代の
いました。集落に珠算塾ができ、2ヶ
東京。しかし、この情報過多の今でも、
月通い6級を取りましたが、遊べない
学校・教師は「文化の発信塔」として
ので辞めました。
の役割があると思う。物事・事象の的
東京は高校進学率が 70% を超えてい
確な判断の方法。未来を見つめる目。
た時代ですが、この農村部は 40% に届
生き様など。新たなる意味での清新な
いていませんでした。勿論、40 年代に
「文化の語り部」の学校でありたい。
なり 70% を超えました。私が中学を卒
業した時(昭和 39 年)は、学年 250 人
の 60%が農業自営や集団就職でした。
-7-
わが市
わが町の
教育
水と緑薫る歴史のまち、そして
街角で自然や文化と出会うまち・・・府中
府中市立府中第五中学校長 中村 一哉
森を貫く並木道の中央で流木の中から
じっと見つめる機械仕掛けの青い眼差
し。噴水の調べに合わせて不動の姿勢で
フルートを吹く少女とサックスを演奏す
る中年紳士。競技場へ向かう道の曲がり
角を急ぐ駆け足のコロボックル ・・・。そ
れは、いたるところで彫刻に出会う府中
の情景。自然と文化、伝統とモダンが解
け合いながら暮らしを営む府中の街のあ
りふれた姿です。
1 府中市の歴史と教育
大化の改新の後、武蔵国の国府が置か
れていた府中の街は、名だたる武将が戦
勝祈願に訪れた地であり、江戸時代には
甲州街道の宿場町として栄えたことか
ら、由緒ある寺社旧跡が数多く残ってい
るまちです。
教育委員会は、教育目標として「誇り
をもてるふるさと府中を創り、世界に活
躍する府中っ子を育てる教育」の推進を
目指すとともに、府中市の歴史を学び、
文化・伝統を継承・発展させる生涯学習
社会の実現を目指して、次の6項目を基
本方針とした施策を推進しています。
1 人権尊重の教育の推進
2 豊かな個性と創造力を伸長する教育の推進
3 健全育成の推進と社会貢献の精神の育成
4 市民の教育参加と学校経営の改革の推進
5 多様な学習機会を提供する生涯学習の拡充
6 総合的な地域教育力の向上と「学び返
し」の推進
2 「府中市学校教育プラン21」
さらに、府中市では、平成15年に「府
中市学校教育プラン21」を策定し、次
の「10の提言」に基づいて、実施期間
を3期に分けて体系的な施策の推進を
-8-
図ってきています。
1 たくましい府中っ子になろう
2 自ら学ぶ子どもになろう
3 オンリーワンの学校をつくろう
4 子どもに合った学校を選ぼう
5 学校から文化を発信しよう
6 府中を愛する、府中の教員を育てよう
7 ゆとりある教育環境を整備しよう
8 教育委員会は学校のパートナー
9 ふるさと府中で活きる子どもを育てよう
10 子どもを愛する親になろう
平成21年度からは後期5か年がス
タートし、重点的に取り組む課題を次の
6課題として、総合的な教育施策を進め
ているところです。
1 新教育課程の円滑な実施
2 知・徳・体に加え地域を核とした教育実践
3 環境教育への取組
4 ライフステージに応じた教師力の向上
5 学校・家庭・地域の連携・協力
6 教育環境の整備・充実
本年度は、
「環境教育」への取組みを重
点的に推進し、市内にある東京農工大学
や NPO 法人と連携して全小・中学校に
ゴーヤの苗を植えてグリーンカーテンと
したり、
「Kid’
s ISO」の取組みを市内全
校で行ったりして、環境に対する意識を
高め、身近なところから進んで行動でき
る児童・生徒の育成を目指しています。
府中の宝である自然と歴史、その中に
息づく時代を超えた文化の数々。恵まれ
た教育環境を子どもたちの成長に結びつ
ける使命が、府中の教育に求められてい
ます。