心電図について 田上病院 原 広大 心電図 Electrocardiogram:ECG 心臓内の電気の流れを視覚的に表示する検査 目的 • 心疾患の存在を示唆する症状(胸痛、動悸、労作後の呼吸困難など) がある場合や、以下の診断または判定に利用される 心電図の基本 刺激伝導系 ① 洞結節 ② 房室結節 ③ ヒス束 ④ 右脚・左脚 ⑤ プルキンエ線維 ①不整脈 ②心筋梗塞、狭心症 ③ペースメーカー機能 ④心房・心室の肥大、負荷 ⑤薬物の影響(ジギタリス、抗不整脈薬など) 正常心電図のパターン P波:心房の興奮(収縮) 心電図波形のルール① ルール1 心筋の興奮が近づいてくる時は上向き、遠ざかる時は下向き QRS波:心室の興奮(収縮) ⇒0.10秒までが正常範囲 T波:再分極 U波:プルキンエ細胞の再分極? ⇒T波の半分以上の高さにはならない 1 心電図波形のルール② ルール2 収縮する心筋の量が多いほど、波形は高く(深く)なる 心電図波形のルール③ ルール3 収縮が伝わるのに時間がかかれば、波形の幅は広くなる 正常ではスムーズで短時間 ⇒幅は狭い 時間がかかると ⇒幅は広くなる(異常な収縮) 遠ざかって近づいてくると ⇒左図のようになる 心電図の種類 12誘導心電図 四肢誘導(6種類) 〈種類〉 12誘導心電図 モニター心電図 ホルター心電図 イベントレコーダー 運動負荷心電図 薬物負荷心電図 植込み型心電用データレコーダ + 胸部誘導(6種類) 〈主な用途〉 健康診断~不整脈や心疾患の評価 不整脈の監視 不整脈の診断・狭心症の推定 症状と不整脈の関連性の評価 狭心症の評価 特殊な疾患/症候群の評価 失神と不整脈の関連性の評価 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ aVr,aVl,aVf の6種類 12誘導心電図:四肢誘導 四肢誘導は正面から見たもの 箇所によって見える場所が違う 例えば・・・ Ⅱ,Ⅲ,aVfは左室後壁、下壁の 情報がたくさんある V1,V2,V3 V4,V5,V6 の6種類 12誘導心電図:胸部誘導 V1,V2は心臓の右側(右心室側) V3,V4は心臓の前面 (左心室前壁・中隔・心尖) V5,V6は心臓の左側 (左心室側壁) 2 実際の12誘導心電図 心拍数の数え方 T波は若い人や女性は低いこ とが多く、しばしば陰性 300÷RR間の太いマス目の数=心拍数 1500÷実測のRR間隔(mm)=心拍数 60÷実測のRR間隔(mm)×0.04(秒) =心拍数 aVrは右上方からの誘導のため、 正常パターンには当てはまらない • 1マス=0.04秒 • 5マス=0.20秒 • 太い線5マス=1秒 心筋梗塞:AMI 冠動脈の閉塞によって 心筋が不可逆的ダメージを受けた状態 心電図波形:ST上昇 ※6時間以内の急性心筋梗塞に対しては、 すぐに冠動脈造影を行い、再潅流治療が行われる 虚血性疾患の心電図 ⇒心筋のダメージを少なくし、合併症を減らすことができる 早期発見が大切になる!! AMI:時間経過による変化 狭心症:AP 発作時にST低下所見を呈する! 発症前 ⇒非発作時には正常心電図を呈することが多い! 数時間 ①まずST上昇 24時間 ②次に異常Q波 1週間 ③陰性T波 ST改善 1年 ④T波改善 慢性期 ⑤Q波残存 異常Q波出現 =心筋に不可逆的 ダメージ完成! ※運動負荷心電図にて診断 狭心症の場合 部位診断は難しい 3 不整脈の種類 不整脈 期外収縮 • 心房性期外収縮(APC) • 心室性期外収縮(VPC) 徐脈性不整脈 洞不全症候群(SSS) 房室ブロック(AV-block) 頻脈性不整脈 不整脈の心電図 心房細動(af) 心房粗動(AFL) 発作性上室性頻拍(PSVT) WPW症候群 心室性頻拍(VT) 心室細動(VF) 心房性期外収縮 atrial premature contraction:APC 異所性の興奮!! 特徴 P-QRS-Tの波形がほとんど同じ (P波の形が若干異なる) QRSもほぼ正常で、幅が狭い 期外収縮 心室性期外収縮 ventricular premature contraction :VPC 異所性の興奮!! 特徴 幅広い、異常なQRSの出現 重症度分類はLown分類を用いる ⇒GradeⅢ以上は注意! Lown(ラウン)分類 Grade 特徴 0 心室性期外収縮(VPC)なし Ⅰ 一源性VPCが1時間に30個未満 Ⅱ 一源性VPCが1時間に30個以上 Ⅲ 多源性VPC Ⅳa VPC2連発 Ⅳb VPC3連発 Ⅴ R on T ◎リスク高い!! 心室細動や心室頻拍 に移行する可能性がある! GredeⅢ以上が見られたら、運動療法中止し経過観察、医師に報告! 4 VPC心電図波形 多源性 VPCが様々な形 連発・ショートラン VPCが数個連続 徐脈性不整脈 R on T VPCが前のTに乗る 洞不全症候群 sick sinus syndrome:SSS 房室ブロック:AV block 洞停止 心房 - 心室の連絡障害 ↓ ↓ P - QRSの繋がりをみる 洞房ブロック Ⅰ度 Ⅱ度 Ⅲ度 洞不全症候群(SSS) ①洞停止・洞房ブロック ②高度な洞性徐脈 ③徐脈-頻脈症候群 ⇒ つながっているが時間がかかる ⇒ 時々つながらない ⇒ 全くつながらない ◎ペースメーカーの適応! Ⅰ度房室ブロック Ⅱ度房室ブロック ウェンケバッハ(Wenckebach)型ブロック PQが延長して1個脱落 ①心房と心室の伝導は1:1で保たれている ②PQ時間の延長(0.21秒以上) 無症状が多く、治療の必要性はない! ただし、高度なブロックへの移行はないか等のチェックは必要! 健常者でも時々みられ、治療の必要なし! モビッツ(Mobitz)Ⅱ型ブロック ①PQが一定の脈から突然QRSが脱落 ②脱落する頻度は様々 予後不良であり、ペースメーカーの適応となることが多い 5 完全(Ⅲ度)房室ブロック P QRS 一定リズムのPと無関係に、別の遅いリズムのQRS ⇒PとQRSは別のリズム ※急性心筋梗塞で、完全房室ブロックが起こると心停止の危険が高くなる 徐脈性心不全、低心拍出状態となり Adams-Stokes発作を起こす! 頻脈性不整脈 ペースメーカーの適応! 心房細動 atrial fibrillation:AF ①P波がはっきりしない:細かい波(f波) ②QRSは幅が狭い ③R-R間隔は不規則 心房粗動 atrial flutter:AFL リエントリー :電気刺激が正常に伝わらず、グルグルと回転する状態 ①250~300/分の鋸歯状F波 ②QRSの幅は狭く、正常波形 臨床的注意点 僧帽弁疾患などの基礎疾患を持つことがある 血栓塞栓症の頻度が高い 頻脈あるいは徐脈を呈することがある 発作性上室性頻拍 paroxysmal supraventricular tachycardia:PSVT リエントリー ③R-R間隔が規則的(2:1あるいは4:1伝導が多い) ④F波はⅡ、Ⅲ、aVFで見られることが多い WPW症候群 Wolf-Parkinson-White Kent束(副伝導路) ①突然起こる頻拍(毎分140~240【180前後】) ②間隔はほぼ一定で規則的 ③QRSは幅が狭く、正常に近い ①Δ(デルタ)波の出現 ②PQ時間の短縮、幅広いQRS波 ③副伝導路により心室の一部が早期興奮を起こす 臨床的注意点 心拍数が早過ぎる場合や継続する場合 ⇒胸痛や呼吸困難、血圧低下や心不全を起こす可能性↑ ◎PSVTやVTに移行する可能性がある!! 6 心室頻拍 ventricular tachycardia:VT トルサード ド ポアンツ Torsades de pointes 心室レベルでのリエントリー ①心拍数は約140~180/分、ほぼ規則的 ②QRSは幅が広く、異常な波形 ③心室細動(VF)に移行する可能性がある ◎危険な不整脈の一つ!! 直ちにDrへ報告!! 心室細動 ventricular fibrillation:VF 大きさや形が変化する ①多形性心室頻拍の一種 ②発作は30秒程度で洞調律に戻ることが多い ③中には心室細動に移行し、突然死に至ることもある まとめ ~注意すべき不整脈~ 致死性不整脈 ①心停止 ②心室細動(VF) ①全く不規則な基線が振動のような波形 ②致死性不整脈 ③血液の駆出はできておらず、心停止と同じ状態 早急にCPR、DCショックが必要!! 危険なVT!! 直ちにCPR、DCショックが必要! 致死性不整脈に移行する危険性が高い不整脈 ①心室頻拍(VT) ②洞不全(補充収縮が出ないもの) ③完全房室ブロック(下位の自動能が低下しているもの) 注意が必要な不整脈 ①高度の徐脈:完全房室ブロック、MobizⅡ型房室ブロック 洞不全症候群、AF ②高度の頻脈:PSVT、AF、AFL ③悪性のVPC:連発、ショートラン、多源性多発、R on T 運動療法を中止し、ドクターコール! 7
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