イノベーション - 大竹国際特許事務所

イントロダクション
■大きな流れ:コンドラチェフの技術革新仮説
出所:志村幸雄(2004)『「発明力」の時代:夢を現実に変えるダイナミズム』麗澤大学出版会,p30
1
(C)Seigo OTAKE
イントロダクション
■本日の全体テーマについてのスタンス
2
イノベーション
– 技術革新の側面(製品技術,生産技術)
– 新結合の側面(『経済発展の理論』(Joseph A. Schumpeter(1929))
•
•
•
•
•
新しい財貨(あるいは新しい品質の財貨)の生産
新しい生産方法の導入
新しい販路の開拓
原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
新しい組織の実現(独占的地位の形成やその打破)
モノづくり企業におけるイノベーション
– モノづくり企業における技術製品に根ざした個性ある価値
創造の仕組み
(C)Seigo OTAKE
2
1
イントロダクション
■技術経営観のパラダイムシフト
技術経営観
“よそより上手くやる”から“わが社の個性を技術で活かす”経営へ
– 自社の知的資産を認識して強化する個性的経営の時代へ
事業観
競争優位から協創優位へ
– 自前主義の“一人勝ち”
– “利他の中の利己”を見る“ソーシャル・イノベーション”
技術製品観
相対的価値から個性的価値へ
– ロードマップ志向・技術優位志向・他社追随志向
– わが社の個性を技術で活かす顧客価値志向
知財経営観
知財管理から戦略的知財創造へ
– R&Dの出口管理
– 中長期的にわが社の個性を高めて顧客価値創造に寄与する知的資産の創造支援へ
3
(C)Seigo OTAKE
イントロダクション
■技術製品の価値は顧客価値にしたがう
大きな価値観
小さな価値観
4
世の中の大きな流れを通じて社会に醸成され
る全体的な価値観
– 例:歴史,文化,地球温暖化,環境問題,エネルギー
問題,格差社会,少子高齢化,様々な社会問題等
社会の大きな価値観を背景として,経験をつ
うじて市場の顧客に醸成される個の価値観.
– 例:人生経験,個人のライフスタイル,個人の消費基
準,個人の生き方,ワークライフバランス,CSR等
新しい価値
技術製品
の提案
市場の顧客に,新しい価値を提案し続けるの
が,技術製品の本質.
モノづくり企業
「技術製品の価値」は,顧客の中にある “大
きな価値観”と“小さな価値観”(顧客価値)に
したがう.
(C)Seigo OTAKE
4
2
イントロダクション
■技術製品の差別化・差異化・独自化
タイプ
差別化
5
内容
顧客の視点
同質のモノどうしの小さな差.→顧客価値:容易に陳腐化
技術製品の視点
漸進的な改良・改善を積み重ねていく技術製品.
例:携帯機器のミリ単位,グラム単位での軽薄短小化など.
差異化
顧客の視点
同質のモノどうしの異なる差.→顧客価値:逓減
技術製品の視点
同種の既存の技術製品に+αの異なる機能・用途がある技術製
品.
例:携帯電話に対するカメラ付き携帯電話,体重計に対する体脂肪計付き体重計など.
独自化
顧客の視点
これまでに無いモノ.→絶対的価値/顧客価値:持続
技術製品の視点
既存の技術製品にない異質でまったく新しい技術製品(カテゴ
リー創造).
例:新聞・TV・ラジオに対するインターネット,固定電話に対する携帯電話など.
5
(C)Seigo OTAKE
イントロダクション
■3つのポイント
3
1. 人・社会を起点とする技術製品の差異化・独自化
顧客価値の多様性に近づく技術製品
2. 市場と企業とのイノベーション・ネットワークシップ
異質で多様な個性の中から創造される新しい顧客価値
3. 企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント
“戦略”と“脱戦略”をキーワードにして展開
“戦略”と“脱戦略”をキーワードにして展開
(C)Seigo OTAKE
6
3
イントロダクション
■2つのキーワード“戦略”と“脱戦略”
6
戦略
経営的
意義
脱戦略
企業の存続・成長の
必須条件
企業の存続・成長に
プラスの変革点を創出
企業の成長
+脱戦略
+脱戦略の成長効果
戦略
戦略による成長効果
戦略不全
時間
7
(C)Seigo OTAKE
イントロダクション
■2つのキーワード“戦略”と“脱戦略”
7
8
戦略
脱戦略
組織活動
有効性と効率性のバランス
テーマの
発想パターン
既存の技術製品の常識に制 既存の技術製品の常識に制約さ
約される計画的な発想.
れない非計画的な発想.
技術製品の
競争優位性
技術製品の差別化中心
重要な経営資
社内
源の所在
単独WIN(一人勝ち)
勝者の構造
課題
ひたすら有効性を追求
人や社会を起点とする+非技術
要素による技術製品の差異化・独
自化
イノベーション・ネットワークシップ
(価値協創のネットワークシップ)
+社外
多数者間でのWIN
“有効性”と“効率性“の相互依 人材育成
存のジレンマ
組織のマネジメント革新
(C)Seigo OTAKE
8
4
本日のコンテンツ
9
1. テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界
2. アンチテーゼとしての“脱戦略”
3. 企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント
(C)Seigo OTAKE
9
10
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界
(C)Seigo OTAKE
10
5
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(1)
■戦略における組織の有効性と効率性
11
戦略
– 組織の有効性と効率性にかかわる組織の基本的意思決定
有効性
効率性
社会的ニーズの高い財・サービスを
提供できるかどうか
財・サービスの提供に際してそれに
要する費用を上回るより大きな収入
を獲得できるかどうか
何を作ったら良いか(what to make)
どう作ったら良いか(how to make)
有効性を高める
効率性を上げる
– 組織と環境との間の関係のあり方を変革.
– 組織の内部構造,業務の進め方を変革.
出所:榊原(2002)pp.29-34
(C)Seigo OTAKE
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(2)
■戦略の階層,領域,立ち位置,定石
階層
全社戦略
全社戦略
(ミッション・ビジョン・全社方針)
(ミッション・ビジョン・全社方針)
領域
ドメイン戦略
ドメイン戦略
(セグメント)
資源戦略
資源戦略
(製品・サービスのカテゴリ)
チャレンジャー
チャレンジャー
の戦略
の戦略
資源量大,質低
計画
画
計
機能分野別戦略
機能分野別戦略
(製品・サービスのカテゴリ)
リーダー
リーダー
の戦略
の戦略
資源量大,質高
計画
画
計
事業戦略
事業戦略
(セグメント)
立ち位置
競争戦略
競争戦略
ニッチャー
ニッチャー
の戦略
の戦略
資源量小,質高
11
12
定石
コストリーダー
コストリーダー
シップ戦略
シップ戦略
有効性<効率性
差別化戦略
差別化戦略
有効性>効率性
集中戦略
集中戦略
(コスト・差別化)
(コスト・差別化)
コスト集中:有効性<効率性
差別化集中:有効性>効率性
(C)Seigo OTAKE 出所:榊原(2002)pp.35-41,相葉pp.120-131を参考に発表者作成. 12
6
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(3)
■V字カーブと競争上のポジション
収益性
13
V字カーブ
例:売上高営業利益率
リーダー
ニッチャー
コスト・リーダーシップ戦略
差別化戦略
集中戦略
チャレンジャー
コスト・リーダーシップ戦略
差別化戦略
フォロワー
スケール
例:売上高
あらゆる技術製品を差異化・独自化しなければならない訳ではない.
どの技術製品を差異化・独自化するかは,企業の意図(戦略)によって異なる.
市場の立ち上げ,健全な2番手が育つまでは,意図的に改良・改善ベースの差
別化を選択する場合もある.
出所:早稲田大学大学院遠藤功教授の講義資料に加筆.
(C)Seigo OTAKE
13
主要自動車メーカーのAM
トヨタ‘00
日産‘00
ホンダ‘00
スズキ‘00
トヨタ‘07
12.0%
12.0%
10.0%
10.0%
8.0%
8.0%
日産‘07
ホンダ‘07
スズキ‘07
トヨタ‘07
ホンダ‘07
ホンダ‘00
日産‘07
6.0%
6.0%
4.0%
スズキ‘07
4.0%
スズキ‘00
トヨタ‘00
2.0%
2.0%
日産‘00
0.0%
0
50000
100000
150000
200000
250000
300000
0.0%
自動車メーカー2000年3月期のAM
0
50000
100000
150000
200000
250000
300000
自動車メーカー2007年3月期のAM
(C)Seigo OTAKE
14
7
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(4)
■伝統的な“戦略”の必要性と限界
14
戦略の意義
–
–
–
–
事業の進め方,資源分配の方針を“計画”として明確化.
外部環境が変化した場合の計画の修正の方向性を一目瞭然化.
社内,社外の多様なステークホルダーの理解,協力を得る.
したがって“合理性”が重要.
しかし,経営環境がグローバル規模で急速に変化し続けおり,
不確実性の高い時代.
戦略の合理性を追求して精度を高めることは必要だが,そ
れに過剰に固執し腐心するのは,却ってマイナス.
– 戦略の本質は『バカな』と『なるほど』(神戸大吉原教授).
• 遠く離れた田んぼの真ん中に建てられた「ホテル百万石」の事例.
• 吉原教授:『戦略が「合理的」であれば,誰もが同じことを考える.よって,どこかに
非合理の要素がなければ,独走につながらない.しかし,本当に非合理ではうまく
いくはずがない.ということは,世の人々が「理」と思い込んでいる通念や慣行に潜
む嘘を見破ることにこそ,戦略の第一歩がある』(三品pp.53-55)
– しかし,計画の合理性の精度を高めることで勝ち組となっているトヨタやロー
ム(2006年度営業利益率17%超)のような優れた企業が存在することも事実.
15
(C)Seigo OTAKE
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(6)
■経営環境の構造的な変化
情報非対称性の解消-“賢くなる顧客”.
多様化する消費者の価値観と消費行
動の流動化.
–
–
選択消費から意味消費へ
早熟する市場
流通構造の変化-ネット通販の拡大-.
市場構造
市場構造
の変化
の変化
16
急速なIT技術革新と陳腐化・チープ化.
ネットインフラの急速な整備.
インターネットの進化(Web2.0等).
認知限界を超える技術の高度化・異分
野複合化.自前主義の限界・崩壊.
急速な技術革新と陳腐化・チープ化.
技術構造
技術構造
の変化
の変化
企業
企業
競争構造
競争構造
の変化
の変化
制度構造
制度構造
の変化
の変化
直接金融から間接金融へ.
個人投資家,外国人投資家の拡大.
規制緩和.
三角合併解禁によるM&A本格化.
環境規制.
コスト構造の異なるアジアの新興諸国の技術力,デ
ザイン力の台頭.
競争のボーダレス化-異業種間・多国間競争
系列崩壊による供給市場のメッシュ化・水平分業化.
スピード優位.
資本集約化によるコスト優位.
(C)Seigo OTAKE
出所:寺本ほか(2007)p.p.20-27を参考に加筆.
16
8
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(7)
■組織の有効性と効率性の相互依存のジレンマ
17
顧客価値の多様化
市場の不確実性
需要変動の拡大
意味消費
市場
競争のボーダレス化
(異業種間・多国間競争)
競合技術・製品の
早期同質化
急速な技術・製品の
陳腐化・チープ化
顧客にも一目瞭然の
差別化志向の技術開発
体力勝負の投資合戦
コスト削減
好転しない低収益性
断ち切れない
組織の有効性と効率性の
相互依存のジレンマ
企業
17
(C)Seigo OTAKE
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(8)
■顧客価値の多様性の進化と技術製品の顧客価値
顧客価値の充足レベル
早熟する市場
18
独自化領域
学習により“賢くなる顧客”の
顧客価値の多様化と発散
差異化領域
バリエーションの充足
品質の充足
差別化領域
量の充足
時間
(C)Seigo OTAKE
18
9
1.テーゼとしての伝統的な“戦略”とその限界(9)
■これからのモノづくりの源泉
19
あらゆる技術製品(産業財)は,消費者に通じる.
– 素材も生産財も,最終的には消費財を作るために存在.
– 消費財だけでなく,素材,生産財もセットで顧客価値を考える必要.
– 技術製品の提供価値が,顧客の期待価値を上回ることで顧客価
値が充足され,売れる製品となる.
(製品の)
(顧客の)
期待価値
>
(顧客の)
(製品の)
>
期待価値
提供価値
提供価値
顧客価値
不足
売れない
技術製品
顧客価値
充足
売れる
技術製品
(C)Seigo OTAKE
19
27
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”
(C)Seigo OTAKE
20
10
2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (1)
■戦略と脱戦略のシンセシス(綜合)に向けて
28
顧客価値の多様性が,新しい技術製品を生み出す源泉.
“大きな価値観”と“小さな価値観”に根ざす顧客価値は“無形”.
縦横無尽に急速に変転.
戦略によって合理的に規定された技術製品の進化パスを,計画的にトレース
する技術開発だけでは,急速に変転する多様で“無形”の顧客価値に近づき
難い.
戦略は,それに過剰にしたがってしまうと,技術製品の開発の創造性を窮屈
にしてしまうおそれがある(現場感覚の無力化,テーマの小粒化).
21
(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (2)
■戦略と脱戦略のシンセシス(綜合)に向けて
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顧客の無形には,組織の無形で応じる.
それが脱戦略.
製品
技術要素
脱戦略
戦略
顧客価値
有形既知
技術要素+非技術要素
コストリーダー・シップ
差別化
集中(コスト,差別化)
計画的,合理的
+非技術要素による技術製品
の差異化
非計画的,非合理的
脱戦略
無形未知
–技術製品の独自化
–イノベーション・ネットワークシップ
(C)Seigo OTAKE
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11
2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (3)
■戦略と脱戦略のシンセシス(綜合)に向けて
30
非計画的・非合理的な技術製品の開発テーマを組織に蓄積.
顧客価値の変化を先取りして新技術製品の先発開発に役立てる.
非技術要素の知識量
顧客価値
(開発に使う資産)
人の知恵を使う
脱戦略の
アプローチ
知識の蓄積
知識の綜合
戦略の
アプローチ
(開発に使う資産)
モノと人の頭脳
技術要素の知識量
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(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (4)
■技術のコンテクスト(技術の文脈依存性)
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第1の非技術要素
– 国や地域の経済条件,天然資源,物理的環境,
人口動態,政治規制,社会のライフスタイル等
第2の非技術要素
大きな価値観
大きな価値観
– 歴史,文化,伝統等
効率性,合理性,経済性
小さな価値観
小さな価値観
非技術要素
非技術要素
新たな技術
新たな技術
既存の技術
既存の技術
技術要素
技術要素
時間
(C)Seigo OTAKE
出所:寺本・山本p127の図表5-2に発表者加筆.
24
12
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(5)
■トヨタに見られる脱戦略の視点-TOYOTA DESIGN PHILOSOPHY-
J-factor
32
TOYOTA DESIGNの挑戦
静と動
伝統と革新
精神文化と物質文化
連綿と受け継がれてきた日本と
未来へ向けて進化し続ける日本
出所:トヨタ自動車ホームページ(2007.11.2アクセス).
グローバル・リーダーのトヨタは,既成概念を超える
異質性な創造性に向かっているという「企業イメージ
の独自化」を,コーポレート・レピュテーション戦略に
おける取組みの一つとして,意識的に世界に発信し
始めている(ように伺える).
相反する様々な事象を 対立でも妥協でもなく
「調和」することで新たな価値を創造する
日本の文化に根差した美意識
それが J-factor
TOYOTA DESIGNの根底にある考え方です
25
(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての“脱戦略”(6)
■トヨタに見られる脱戦略の視点-TOYOTA DESIGN PHILOSOPHY-
33
Perfect Imbalance
くずしのある完成.
ただバランスの良いデザインでは
面白みがありません
くずすことにより
これまでの既成概念を超えた新しい魅力を
つくり出すことができるのです
これもその一例.
(C)Seigo OTAKE
出所:トヨタ自動車ホームページ(2007.11.2アクセス).
26
13
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(8)
■トヨタに見られる脱戦略の視点-渡辺社長の危機感-
35
「マルKプロジェクト」
–
–
「K」は渡辺社長の名前「捷昭(かつあき)」から取ったとも,「狂気」から取ったとも言われている(?).
縦割り組織でつまはじきにされるような商品企画などの部門から集まった“異端者”十数人によるプ
ロジェクト.
– 検討テーマの例
• 「子供でも運転できる絶対ぶつからない技術は可能か」
• 「任天堂ならどんなクルマを造るだろうか」
「スカンクプロジェクト」
– 基礎研究分野の個性派を集めたプロジェクト.
2007年東京モーターショーでの発言,アニュアルレポート2006の記述等
– 「乗るほどに健康になるクルマ」:乗れば乗るほど心と体によいリズムが生まれるクル
マ:コンセプトモデルRin
– 「走れば走るほど空気がきれいになるクルマ」
– 「事故を起こさず,人を傷つけないクルマ」
こうした背景には,「従来の延長線上では立ちゆかない」,「トヨタはまだ
先頭ランナーの身の丈になっていない」との渡辺社長の強い危機感があ
る.
出所:日経新聞2007.10.31朝刊
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(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (9)
■脱戦略の2つの要素
36
②
企業
①新しい技術製品
市場
①.+非技術要素による差異化・独自化
②.+市場と企業のイノベーション・ネットワークシップ
(価値協創のネットワークシップ)
(C)Seigo OTAKE
28
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2.アンチテーゼとしての “脱戦略” (10)
37
人・社会を起点とする
+非技術要素による差異化・独自化
人・社会の価値観の多様性に近づく技術製品の事例
29
(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(13)/技術製品の差異化・独自化
■花王「エコナクッキングオイル」の開発
40
1999年発売以降,体に脂肪がつきにくい油として広く支持され続け
ている.
開発ストーリー(開発担当者:安川拓次氏)
– カカオ脂が高騰.代替用の廉価なチョコレート用油脂の研究(当初は経済性).
– 体温でさっと溶ける油: “口溶けのいいチョコレート”が作れる?
– 食用油の主成分:「脂肪酸」の分子で構成.
– 脂肪酸の1本が外れている“ジアシルグリセロール” 発見.
– これを使った食用油は消化されやすい “胃にやさしい油” では?と考えた.胃
の弱い社員を集めた実験で効果確認.
– その後,ジアシルグリセロール入り飼料で長期間飼育したラットは,血液中の中
性脂肪が普通より少ないことを発見(体脂肪が少ない).
– ジアシルグリセロールは体脂肪のもととなる中性脂肪に再合成されにくい.
– 「体に脂肪がつきにくい油」をテーマとして研究.
– エコナクッキングオイルが誕生(開発期間15年,特保付き).健康志向の波に乗
り,今日まで広く支持されている.
(C)Seigo OTAKE
出所:花王ホームページ(2007.11.2アクセス).
30
15
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(14) /技術製品の差異化・独自化
■花王「エコナクッキングオイル」の開発
41
さらに続きが・・・
– 『エコナクッキングオイル』の研究開発で蓄積した脂質代謝の知見をもとに研究を
継続.
– 高濃度茶カテキンの配合により体脂肪低減効果のある「ヘルシア緑茶」誕生.
– さらに,茶カテキンの体脂肪燃焼効果を確認.「ヘルシアウォーター」誕生.
目先の利益が出る代替油脂の発見時点で,研究開発は終了.
なぜエコナ→へルシア緑茶→ヘルシアウォーターの連鎖を生んだのか?
第1のポイント:最終製品の顧客価値をイメージして研究
– 消費者・顧客視点の“よきモノづくり”
• 消費者・顧客の求めるニーズ・価値を深く理解し,このニーズ・価値の実現により,世界
の消費者に心からご満足してもらえる商品・ブランドを開発する,という同社の企業理念
『花王ウェイ』で定められた同社の使命.
• 絶えず革新的で価値の高い商品を生み出す原動力.
第2のポイント:実験結果に応じて,当初の顧客価値(経済性)にこだわらず,
健康志向(非技術要素)にそって柔軟に開発テーマを転換.
(C)Seigo OTAKE
出所:花王ホームページ(2007.11.2アクセス).
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(15) /技術製品の差異化・独自化
■象印マホービン「iポット」,「みまもりホットライン」の開発
iポットの電源投入時,給
湯時ごとに、内蔵されてい
る無線通信機から操作信
号を発信。
電気ポットの操作信号は,NTTドコ
モのDoPa網(無線通信回線)を通
してシステムセンタの専用サーバ
(富士通運用)へ送信。
31
42
iポットの使用状況を1日2回
Eメールで受け取れる.専用
ホームページで1週間分を
グラフで確認できる。
2001年12月末にサービス開始.契約料5250円,月額利用料3150円でi
ポットをレンタル.累計契約数は2006年10月末で3000件.毎期ごとに契
約者数が増加中.
(C)Seigo OTAKE
出所:象印マホービンホームページ(2007.11.2アクセス).
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2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(16) /技術製品の差異化・独自化
■象印マホービン「iポット」,「みまもりホットライン」の開発
43
開発ストーリー(開発者:商品開発本部 三崎純氏,山田洋樹氏,経営企画室 若杉晋輔氏)
1996年4月,病気の息子と看病していた高齢の母親とが亡くなってから1ヶ月後に発見される事件.
ニュースにショックを受けた医師・網野氏
『日用品を利用してお年寄りの日々の生活を見守る仕組みができないか』と相
談.
相談を受け入れて,入社したての若手開発者が開発スタート.
1997年6月,当初は炊飯ジャー,電気ポットで実験.その後,ポットの方が生活のリズムが
つかみやすく,またお年寄りにもお湯を出すたびに「元気ですよと言ってるようで
安心。」と喜ばれる.しかし,有線配線問題の壁で開発が一時中断.
電気ポットをインターネットに繋ぐ手段を模索.目に止まった新聞にNTTドコモ製のDoPa端末の広
告発見.「これだ!」と閃く.NTTドコモと富士通とのコラボレーションでシステム実現.2001年12月
末サービス開始.
網野氏の言葉:『お年寄りにも「使っていると安心できる」と喜ばれています。人は、見られてい
るというのが嫌なんです。電気ポットの給湯ボタンを押すというのは、「見られてい
る」という受け身の行為ではなく、お年寄りが自ら無事を知らせるという能動的
な行為であるという点が重要。』
開発者山田氏の言葉:『今日も元気だよと思いながらお茶を飲み、今日も元気だね
と思いながらメールを確認する。この些細な安心感を提供したいと思い開発を
行いました。』
(C)Seigo OTAKE
出所:象印マホービンホームページ(2007.11.2アクセス).
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(17) /技術製品の差異化・独自化
■象印マホービン「iポット」,「みまもりホットライン」の開発
33
44
“日常生活発想” ・・・象印マホービンのモノづくりポリシー
『それぞれのライフスタイルは違っても、同じように求め続けるものがあり
ます。それは、「日常生活にこんなものがあればもっと楽しい、もっと満足
できる」と言った、心から共感を得られる商品やサービスです。・・・(中
略)・・・「本当に喜ばれるものは何か?」その答えは生活者の感性の中に
あります。その感性を敏感に捉えつつ、常に生活者の視点に立ちながら、
心から喜んでいただける商品開発を進める。これは当社が創業から持ち
続けているモノ作りのポリシーです。 』 出所:象印マホービンホームページ(2007.11.2アクセス).
一人暮らし,二人暮らし高齢者の孤独死という社会問題を日常生活品と
しての電気ポットで解決する,という+非技術要素の開発テーマ.
これ自体は社外からもたらされた.
しかし同社にはそれを受け入れる寛容性がある.
そして,それを若い技術者たちが “日常生活発想”という象印マホービン
のモノづくりポリシーの視点から追求した事例.
(C)Seigo OTAKE
34
17
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(18) /技術製品の差異化・独自化
■任天堂「Wii」の開発
45
開発にかかわった,各者のコメント.
・専務取締役 総合開発本部長 竹田玄洋氏
・総合開発本部 開発部 池田昭夫氏
竹田氏:『一般的な技術者、開発者というのは、そのロードマップを参考にしながら、将来、リリース
するマシンを作っていくわけですが、いま、できあがったWiiをあらためて見てみると、一般的な
テクノロジーのロードマップの延長上にある機械とはまったく異なるマシンになっ
たなという印象がありますね。
竹田氏:『従来のロードマップをそのまま踏まえるなら、「より速く、より豪華に」と
いうふうになったと思うんです。・・・ しかし、その方向に進んだとして、お客さんにどれ
ほどのインパクトがあるだろうかと感じたんです。より豪華にするときの開発側の苦労やコ
ストと、お客さんに新しさを感じてもらうことの効率の悪さ。そういったものを、開発の途中で感じる
ようになりました。』
池田氏:『思っていたのはやはり「シンプル」であること。それと「快適さ」ですね。これはWii全体の
コンセプトだと思いますが、どなたにも触っていただけるもの。敵視されないもの。つ
い触ってみたくなるようなコントローラというのを意識していました。』
出所:任天堂ホームページから引用
(http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html(2007.11.5アクセス))
35
(C)Seigo OTAKE
2.アンチテーゼとしての “脱戦略”(19) /技術製品の差異化・独自化
■任天堂「Wii」の開発
46
開発にかかわった,各者のコメント.
・専務取締役 情報開発本部長 宮田 茂氏
・総合開発本部 開発部 芦田健一郎氏
岩田社長:『なぜテレビのリモコンは家族みんなが触るのにゲーム機のコントロー
ラは触らないのか」というのはWiiを開発するうえでの大事なコンセプトでしたから。だから「絶
対、これはリモコンです!」と言い張りました。』
芦田氏:『いままでのコントローラというのは、ファミコン、スーパーファミコン、ニンテンドウ64、ゲー
ムキューブと、何かを足していくような進化だったと思うんです。各ハードにマッチした
新しい機能を足して、どうまとめていくか、ということですね。ところがWiiのコントローラ
の場合は、足すだけじゃなくて引くこともありましたし、それこそ掛けたり割ったりするようなことも
あって、開発の仕方が根本的に違ったという印象があります。』
宮田氏:『やっぱり作ってる現場の人間としては新しいことに保守的になる部分もあるん
ですよね、どうしても。だから、そういうふうな「保守的になってしまう自分たち」があることを認めた
うえで、それを崩してくれる人たちがまわりにいっぱいいるということを大事にしていこ
うというふうに思ってます。それと、任天堂というのは、ハードとソフトの両方を考えな
がら商品全体を作れる組織であって、そういう組織って世の中にそうはたくさんないと思う
んです。今回のWiiでは、あらためてそのことを実感したし、何か新しいものを作
るときにはよりその力を発揮する会社だなとあらためて感じましたね。』
出所:任天堂ホームページから引用
(http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html(2007.11.5アクセス))
(C)Seigo OTAKE
36
18
アンチテーゼとしての “脱戦略” (20)/イノベーション・ネットワークシップ
47
人・社会と共進化する
市場と技術のイノベーション・ネットワークシップ
異質で多様な個性を活かす価値協創のネットワークシップの事例
37
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (43)/イノベーション・ネットワークシップ
■人・社会との企業価値の協創:”利益“とは何か?
70
非貨幣的価値(知識レント)
企業
無形資産
人的資本
有形資産
物的資本
製品
サービス
人・社会
組織資本
財務資本
貨幣的価値(経済レント)
(C)Seigo OTAKE
38
19
アンチテーゼとしての “脱戦略” (21)/イノベーション・ネットワークシップ
48
イノベーション・ネットワークシップ
企業
人・社会
・技術製品の差異化,独自化
・顧客への適応・利用
差異・独自性の強化
・次なる開発テーマへの知見
・自社技術製品の付加価値向上
・顧客の要請・気付き
・顧客等による自律開発行動
39
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (22)/イノベーション・ネットワークシップ
49
自律行動型ペット型ロボット「AIBO」のケース
(ソニー㈱)
世界初のエンタテインメント・ロボット.
試作機
1995年6月、日本とアメリカに向けてインターネット販売。日本
では3000体(1体約25万円)を17分で完売。
試作機
日・米・欧向けのAIBO専用サイトが開設。当時は世界中で購
入可能。(現在は終了)
グローバルな『エンタテインメント・ロボット市場』の創造に成功.
初代AIBO(ERS-110)
写真出所:ソニーマーケティング㈱ホームページ(http://www.jp.aibo.com/aibostory/history/index.html
(2005.4.23アクセス) )より引用
(C)Seigo OTAKE
40
20
アンチテーゼとしての “脱戦略” (23)/イノベーション・ネットワークシップ
50
AIBOの特徴
自律行動機能
コミュニケーション機能(双方向)
– AIBOへ:触覚,聴覚,視覚
– 人へ:光,音,ボディランゲージ
本能
– 愛情欲,好奇心,運動欲,食欲(自己充電機能),睡眠欲
感情
– 喜び,悲しみ,怒り,驚き,恐怖,嫌悪
個性
– 幼年期→少年期→青年期→成長期へと徐々に成長.
– 成長過程でのコミュニケーションの取り方によって個性が変化.世界
に一体だけの「わが家のAIBO」に成長.
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (26)/イノベーション・ネットワークシップ
■ソフトウェアによる知性・個性の転換
•
41
53
AIBOの知性は『AIBO-ware』で実現されている。
– 『AIBO-ware』はメモリースティックで書換可能。
– メモリースティックをAIBOに装着することで、AIBOの性格や特技など知性を入れ
替えることが可能。
•
『AIBO-ware』の一種として『AIBOマインド』がある(ERS-7の場合)。
– 『AIBOマインド』には『カスタムデータ』を追加することで、AIBOの個性を伸ばすこと
が可能。
(図の出所)http://www.jp.aibo.com/aibostory/aboutaibo/story/06/063.html(2005.6.4アクセス)
(C)Seigo OTAKE
42
21
アンチテーゼとしての “脱戦略” (27)/イノベーション・ネットワークシップ
■市場における自律開発
54
OPEN-R,OPEN-R SDK
OPEN-R (Open Architecture for Entertainment Robot)と開発キット「OPEN-R
SDK」をインターネット上で無償提供.
¾市場での自律開発を容易に.
「OPEN-R」:脚部などのハードウェアモジュールを交換することで機能や
形態を変えたり、ソフトウェアモジュールを変更することにより行動や反
応パターンなどを容易に変更できるエンターテインメントロボット用アーキ
テクチャ.
国際サッカー競技『RoboCup』での『四足ロボットリーグ』の開催
世界各国で「国内大会」と「世界大会」とが開催されている.
参加チームはOPEN-R、OPEN-R SDKで、市販のAIBOの運動性能向上さ
せて参加.
毎年の優勝チームは、プログラムのソースコードの公開が義務付けられてい
る.
現在では、人間がリモコン操作するAIBOチームが、自律行動するAIBOチー
ムに負けてしまう程、技術が進化している.
43
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (28)/イノベーション・ネットワークシップ
■ロボット技術における市場と企業の共進化
ソニー
55
人・社会
【技術製品の独自化】
(技術製品の独自化)
・ 自律行動機能
自律行動機能等.
• 双方向コミュニケーション
開発ツールの無償提供.
・ 本能・感性・個性
国際サッカー競技大会.
・ 学習と成長
優勝チームはソースコードの公
開義務.
【顧客の利用】
・ サッカーするロボット!
・ 単なる玩具を超えたロボット研
(人・社会での利用)
究の対象.
人と共生する家族の一員
・ 自分で運動性能を向上可能.
ロボット技術を高める
ロボット技術を高める
イノベーション・ネットワークシップ
イノベーション・ネットワークシップ
【次なる開発テーマ】
【顧客等の自律開発行動】
技術者,大学研究室
・ ソフトウェアの自主開発による
運動性能の向上.
・ 世界№1のAIBOサッカーチーム
の実現.
・最新最高のソースコード公開.
・ 公開ソースコードと新たな技術
蓄積.
・ 期待を超える運動性能の段違
いの向上.
(C)Seigo OTAKE
44
22
アンチテーゼとしての “脱戦略” (29)/イノベーション・ネットワークシップ
56
携帯音楽プレーヤ「iPod」のケース
(Apple Computer, Inc. )
iPhone
2007年6月米国
第1世代
(2001年10月)
第2世代
(2002年7月)
第3世代
2003年4月
第4世代
2005年6月
液晶カラー化
写真表示
統合
第4世代
2004年7月
第5世代
2005年10月
動画対応
第5世代
2006年9月
マイナーチェンジ
第6世代
2007年9月
iPod Classic
後継機種
iPod mini
2004年1月
iPod photo
2004年11月
iPod shuffle
2004年11月
iPod nano
2005年9月
第2世代
2006年9月
第3世代
2007年9月
スペック向上
iPod Touch
2007年9月
iPhoneの電話なし版
開発キット公開予定.
第2世代
2006年9月
クリップ付き
ウェアラブル
写真出所:アップル社ホームページ(2005.4.25,2005.12.9,2007.11.3アクセス)
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (30)/イノベーション・ネットワークシップ
■iPodとiTMSによる楽曲配信サービス
45
57
iTunesMusicStore(iTMS)
¾ 楽曲:100万曲以上(日本)
¾ Podcast:25,000以上
¾ オーディオブック:11,000冊以上
¾ ビデオ:1000以上
¾ 欧米諸国、日本を含む世界21カ国
でサービス提供。
写真出所:アップル社ホームページ(http://www.apple.com/jp/itunes/music/(2005.12.10アクセス))
(C)Seigo OTAKE
46
23
アンチテーゼとしての “脱戦略” (33)/イノベーション・ネットワークシップ
■市場からの多数の参加者-楽曲配信販売サービスの実現-
アップル
60
人・社会
【技術製品の独自化】
【技術製品の独自化】
【顧客の利用】
【顧客の利用】
消費者
消費者
・・小型大容量.
小型大容量.
・・スクロールホイール,大画面等によ
スクロールホイール,大画面等によ
るダントツの操作性
るダントツの操作性
・・iTunesとのオートシンク機能.
iTunesとのオートシンク機能.
・・合法的なiTMSの立上げ計画.
合法的なiTMSの立上げ計画.
・すべての音楽コレクションを持ち運べ
・すべての音楽コレクションを持ち運べ
(人・社会での利用)
(人・社会での利用)
る革新的プレーヤ,という消費者認知.
る革新的プレーヤ,という消費者認知.
人と共生する家族の一員
人と共生する家族の一員
楽曲配信販売サービスを実現した
楽曲配信販売サービスを実現した
イノベーション・ネットワークシップ
イノベーション・ネットワークシップ
【自社技術製品の付加価値向上】
【自社技術製品の付加価値向上】
【顧客等の要請】
【顧客等の要請】
レコード会社
レコード会社
・頭打ちの音楽CD販売への依存から
・頭打ちの音楽CD販売への依存から
の脱却願望.
の脱却願望.
・消費者支持のある革新的プレーヤを
・消費者支持のある革新的プレーヤを
利用する新しい音楽販売への期待.
利用する新しい音楽販売への期待.
・しかも曲単位での合法的販売.
・しかも曲単位での合法的販売.
・・音楽配信事業の立上げとiTMSの構
音楽配信事業の立上げとiTMSの構
築.
築.
・結果,20万曲超のライブラリ構築し,
・結果,20万曲超のライブラリ構築し,
音楽配信事業のスタート.
音楽配信事業のスタート.
47
(C)Seigo OTAKE
アンチテーゼとしての “脱戦略” (34)/イノベーション・ネットワークシップ
■市場からの多数の参加者-ポッドキャスティング機能の実現-
アップル
61
人・社会
【技術製品の独自化】
【技術製品の独自化】
【顧客の利用】
【顧客の利用】
アダム・カーリー氏
アダム・カーリー氏
・携帯音楽プレーヤを利用.
・携帯音楽プレーヤを利用.
・フリージャーナリストサイトで公開して
・フリージャーナリストサイトで公開して
(人・社会での利用)
(人・社会での利用)
いたインタビューのMP3形式をダウン
いたインタビューのMP3形式をダウン
ロードして聞いていた.
人と共生する家族の一員
ロードして聞いていた.
人と共生する家族の一員
・しかし訪れてはダウンロードする作業
・しかし訪れてはダウンロードする作業
に疲れた.
に疲れた.
・すべての音楽コレクションを持ち運ぶ
・すべての音楽コレクションを持ち運ぶ
革新的プレーヤ.
革新的プレーヤ.
・iTunesとのオートシンク機能
・iTunesとのオートシンク機能
Podcasting機能を実現した
Podcasting機能を実現した
イノベーション・ネットワークシップ
イノベーション・ネットワークシップ
【次なる開発テーマ】
【次なる開発テーマ】
【顧客等の自律開発行動】
【顧客等の自律開発行動】
アダム・カーリー氏
アダム・カーリー氏
・2004年「iPodder」(ポッドキャスティン
・2004年「iPodder」(ポッドキャスティン
グ用ソフト)を自作しWebで無償公開.
グ用ソフト)を自作しWebで無償公開.
社会
社会
・その結果,ポッドキャストが急激に社
・その結果,ポッドキャストが急激に社
会に普及.
会に普及.
・ポッドキャスティング機能の実現の要
・ポッドキャスティング機能の実現の要
請.
請.
・その結果,2005年6月,iTunes4.9で
・その結果,2005年6月,iTunes4.9で
ポッドキャスティング機能を実現.
ポッドキャスティング機能を実現.
(C)Seigo OTAKE
48
24
アンチテーゼとしての “脱戦略” (35)/イノベーション・ネットワークシップ
■市場側からの多数の参加者-専用ケースの事例-
アップル
62
人・社会
【技術製品の独自化】
【技術製品の独自化】
【顧客の利用】
【顧客の利用】
ファッション・ブランド
ファッション・ブランド
・すべての音楽コレクションを持ち運ぶ
・すべての音楽コレクションを持ち運ぶ
革新的プレーヤ.
革新的プレーヤ.
・ファッション・アイテムの一つになりう
・ファッション・アイテムの一つになりう
(人・社会での利用)
(人・社会での利用)
る携帯音楽プレーヤ,というファッショ
る携帯音楽プレーヤ,というファッショ
ン・ブランドの認知.
人と共生する家族の一員
ン・ブランドの認知.
人と共生する家族の一員
・5色筐体でカラーバリエーションが豊
・5色筐体でカラーバリエーションが豊
富なiPod
富なiPodmini.
mini.
多様な専用ケースにより
多様な専用ケースにより
付加価値向上を実現した
付加価値向上を実現した
イノベーション・ネットワークシップ
イノベーション・ネットワークシップ
【自社技術製品の付加価値向上】
【自社技術製品の付加価値向上】
【顧客等の自律開発行動】
【顧客等の自律開発行動】
・外部からの参加者によって,アップル
・外部からの参加者によって,アップル
だけでは不可能な多様な専用ケース
だけでは不可能な多様な専用ケース
の販売.
の販売.
専用ケース発売
専用ケース発売
・2004年アニヤ・ハインドマーチ
・2004年アニヤ・ハインドマーチ
・2005年エルメス,グッチ,ヴァレン
・2005年エルメス,グッチ,ヴァレン
ティノ.
ティノ.
・iPodの顧客価値が増強.
・iPodの顧客価値が増強.
現在でも続々とサードパーティから専
現在でも続々とサードパーティから専
用ケースが発売され続けている.
用ケースが発売され続けている.
(C)Seigo OTAKE
49
72
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント
知財経営マネジメントにおけるビジョンの新構築
(C)Seigo OTAKE
50
25
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(1)
■知財経営概論
73
知財は,事業と一体となって,企業価値を高めてゆくための
経営資源の一つ.
– あくまで企業価値を高めるための資源の一つであり,経営のための
知財.
知財経営は,経営資源としての知財を利用して企業価値を
高めるための組織的な取り組み.
知財戦略は,組織の有効性と効率性にかかわる知財につい
ての組織の基本的意思決定.
51
(C)Seigo OTAKE
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(2)
■知財経営概論
知財戦略は経営戦略にしたがう.
– 特に関連性が高いのは,事業戦略と機能分野別戦略の階層.
74
• ちなみに知財戦略が同業他社間で代わり映えがないように見えることがあるのは,
– ①.事業戦略,機能分野別戦略が同質
– ②.知財を事業戦略,機能分野別戦略の制約を超えて活用していない.
個性ある企業には,それなりに知財に対する考え方が見え隠れする.
• ヒロセ電機: 「マーケティングと技術革新」という技術開発指針のもと,5万数千種
にもおよぶ製品開発.その30%を常に新製品として生まれ変わらせている.(同社
ホームページ)
• しかし,新製品を大量に投入しつつも,知財権の取得については,同業他社と比
較してそれほど積極的に行っているようには見えない.
• 理由として,製品特性や事業特性が想定される.
– ①.競争の土俵を,低利益率の汎用品の販売総量におくのではなく,利益率の高い高
付加価値品の先発販売に特化.
– 先発かつ高付加価値ゆえに,技術製品の独自性という点で,他社特許の侵害問題が
起こりにくい構造
– ②.事業のビジネスサイクル(顧客のビジネスサイクル)が早く,製品寿命が短命で,製
品寿命に対して知財権の存続期間は長すぎる.
– ③.製品の撤退利益率基準が明確で,多くの製品がいつ撤退するか分からず,多くの
権利化がサンクコストになる可能性.
• 業界標準になりそうな新技術製品等に絞って,権利化している可能性.
(C)Seigo OTAKE
52
26
変わる特許権の意義
オープン・イノベーション・プラットフォームとしての意義
– リーダー企業による特許権の開放政策
– 技術の独占から多様な参加者によるオープン・イノベーションを加速
するための社会貢献へ(ソーシャルイノベーションの追求)
IBM・・・2005年パテント・コモンズ(特許共有資産)
– オープンソースコミュニティ(OSS)への特許開放.
– オープンイノベーションのプラットフォームとして利用.
– 2007年,SOA(サービス指向アーキテクチャ)やWebサービス関連の
標準規格を対象として150以上の特許権を開放.ドキュメントの提出
不要.
サンマイクロシステムズ
マイクロソフト
(C)Seigo OTAKE
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(3)
■知財経営概論
53
75
経営環境は,過去の大量生産・大量消費の工業化
社会と一変.
経営戦略にしたがう知財戦略にも,時代の変化に
応じた戦略性が求められる.
個の多様性ある知識を「共有」し,
個の多様性ある知識を「共有」し,
異質で多様な知識を効率的に「創造」し,
異質で多様な知識を効率的に「創造」し,
創出した知識を「活用」する
創出した知識を「活用」する
組織的な仕組みとしての「戦略的創造性」
組織的な仕組みとしての「戦略的創造性」
(C)Seigo OTAKE
54
27
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(4)
■多様なアイデアの創発を加速させる小林製薬㈱の事例
76
多数の独自性あるニッチ市場を多数創出.自他共に認める
典型的なニッチャー.
– 商品例
• タンククリーナー「ブルーレット」(市場シェア№1(74.3%))
• 額用冷却シート「熱さまシート」(市場シェア№1(約54.4%))
• 洗眼薬「アイボン」(市場シェア約55%(日刊工業新聞2007.8.21))
ブランドスローガン
– 「 “あったらいいな”をカタチにする」
• 製薬にして製薬にあらず.消費者目線を基軸にした経営.
当期発売の新製品の売上高比率10%を目標(2006年度売上高
2570億円) .
2006年度の新製品販売数:約35製品.過去10年で最も少な
い年でも約14件 .(日刊工業新聞2007.8.23)
(C)Seigo OTAKE
写真・商標出所:小林製薬ホームページ (2007.11.3アクセス)
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(5)
■多様なアイデアの創発を加速させる小林製薬㈱の事例
55
77
小林豊社長のトップメッセージ
『今は変化の時代です。顧客のニーズが変わる、社会のニーズが変わる、競争する
相手が変わる…しかも、変化のスピードは年を追うごとに早くなっています。これ
までは年単位の変化であったものが、月単位、あるいは週単位にスピードアップしています。
このような環境下では「変化しないリスク」は「変化するリスク」より、はるかに
高くなります。企業には「企業自らがスピードをもって変化する力」すなわち
「企業の変身力」が求められています。
こうした認識に立って、私は、現状の打破、常識の打破を行っていきたいと考えて
います。「小林製薬の常識」はステークホルダーの目線からどう見えるのか、お客様本位で
製品を変えていくことができているか、お得意先様に今までの業界の常識を超え
た新たな提案ができているか―そうした現状の打破、常識の打破を通じて「企
業の変身力」を高めていきます。』 (同社ホームページより)
(C)Seigo OTAKE
56
28
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(6)
■多様なアイデアの創発を加速させる小林製薬㈱の事例
社内提案制度
–
–
–
–
–
78
新製品アイデア,業務改善提案.
毎年数千件.日刊工業記事(07.8.22)では月3万7000件.
優秀提案:金賞・銀賞・銅賞の表彰.
製品化した新製品提案:最高100万円の社長賞.
毎年の提案件数及び受賞提案をポイント集計して上
位50名を社長主催の夕食会に招待.
アイデア会議
– 月1回アイデアプレゼン会議.研究,技術開発,Mktg
が参加.
– アイデア段階で経営者が直接関与.良いアイデアは
その場で即決採用.
– 小林社長「まず技術を考えるな」との教えを徹底.
研究開発部門の“マザーコンセプト開発グルー
プ”
– 社会トレンドから大きなニーズを捉え,大型新製品を
開発するセクション.製品企画から開発まで幅広く手
掛ける.
– 2005年に更年期障害用の女性保健薬「命の母A」を
発売.武田薬品に先発.
(C)Seigo OTAKE 写真・商標・図の出所:小林製薬ホームページ (2007.11.3アクセス)
企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(7)
■多様なアイデアの創発を加速させる㈱サトーの事例
57
79
株式会社サトーの「三行提報」
– 創業昭和15年(1940年)
– 主力製品:
• 業務用ラベルプリンタ
• RFID・バーコード・2次元コード等を利用する自動認識システム
– 従業員数:連結3330名,単体1221名
– 売上高:連結824億,単体567億(2006年度)
– 「会社を良くする創意・くふう・気付いた事の提案や考えとその対策の報告」を、
三行以内(最大文字数127文字)で,全社員が毎日実行.
– 平均提出率99.9%
– 6名のフィルタリング担当者.
– トップに届くのは毎日約40通.
– 人事考課に加点要素として連動.
– 当初は社員から経営に関する有益な情報を吸い上げるのが目的.現在は社
員のもつ知識,知恵,技術,情報を社員間で共有(フリーアクセスDB化)。
– 良い提案や営業情報に対しては,関係部門長に即座に指示,実行.
(C)Seigo OTAKE
58
29
■多様なアイデアの創発を加速させるグーグルの研究開発プロセス
ソフトウェア・エンジニア群(3000名超)
全員
投稿
全員
評価
全員
参加
移動
自由
評価
Google
Google
Lab
Lab
公開
完成
正式Pj
正式Pj
80%
80%
予算配分
予算配分
公開
完成
発想を
発想を
即カタチに
即カタチに
↑
プロトタイプ
コーディング
コーディング
有望
暫定Pj
暫定Pj
プロトタイプ
全員
参加
自然淘汰
自然淘汰
アイデア
アイデア
メーリング
メーリング
リスト
リスト
20%義務
20%義務
移動
自由
一般ユーザー(∞)
Β版
Β版
リリース
リリース
共有
3M・・・アングラ
Google・・・アングラの制度化
全エンジニアの
週報
Google
Resume
(20と80.義務・数行)
(HRID)
四半期報
全プロジェクト
DB
携帯ソフト公募・・・最高11億円
「岡田正大 Google」で検索.
出所:http://itpro.nikkeibp.co.jp/watcher/okada/index.html
59
(C)Seigo OTAKE
学習し、実践する場の全体構造
賢くなるマネジメントプロセス
自律多様
全体概観
自在連結
仮説実験
戦略的創造性を
戦
略
的
創
造
性
を
イノベーション・トリガ
ガー
ーと
とす
する
る
イ
ノ
ベ
ー
シ
ョ
ン
・
ト
リ
学習
習す
する
る組
組織
織
学
知識共有
早稲田大学大学院ビジネススクール2004年寺本義也教授講義資料に加筆
(C)Seigo OTAKE
60
30
「私が知財部長だったらこうする・・・」
企業の戦略的創造性に貢献する知財マネジメント革新への取り組みの例
80
1. 知財経営における知財部門のミッション(使命),ビジョン(あ
るべき姿)の制定.
– “企業経営に資する”ための「あるべき姿」と「現在の姿」とのビジョン・ギャッ
プを「見える化」.理念ベースでビジョン・ギャップを共有し,次なる部門課題
を解決するための求心力の拠り所とする.
2. 知財部門にとっての“顧客”の定義の明確化
– 知財は,自社の技術製品を利用してくれる顧客に分かり易い安心を保証す
る経営品質の一つでもある.
– 知財部門にとっての顧客は,経営層,R&Dといった社内部門だけでなく,市
場の顧客(究極的には人・社会)といった社外にも向けるようにし,それを明
確に意識する.
経営
知財
顧客
R&D
61
(C)Seigo OTAKE
「私が知財部長だったらこうする・・・」
企業の戦略的創造性に貢献する知財マネジメント革新への取り組みの例
81
3. 事業戦略,機能分野別戦略と個々の戦略,技術製品のビ
ジネスサイクルに応じた権利化・非権利化ポリシーの作成.
–
事業戦略ごと,技術製品ごとに競争上のポジションが異なる.どのような技
術製品を権利化し,どのような技術製品を権利化しないかの基準を明確化.
4. 発明の発掘基準・視点の明確化.
–
–
〔技術の視点+代替技術の視点〕だけでなく,〔顧客の視点+顧客の顧客
の視点+バリューチェーン〕を加えた発掘基準・視点を明確化.
代替技術のオプション
•
構成要素の増加,減少,付加,削除,置換による周辺実施形態の拡張.
5. クレーム・ドラフティングの見直し.
–
–
–
機能別に請求項を立てることも重要.それだけでなく,サブクレームとして
顧客価値ごとの実施形態に近い請求項を立案.
権利単位の総クロスによる知財権のコモディティ化の防止.
権利単位の総クロスから,捨てても良い顧客価値単位での部分クロスへの
転換.
(C)Seigo OTAKE
62
31
モジュール化=コモディティ化のコントロール
すり合わせ
の有効性
アーキテクチャの
モジュール化
confidential
部品点数
開発期間
【モジュール化有効領域】
【強み】低コスト・低価格,顧
客価値の差異化・独自化
■白物家電,デジタル家電
等
【すり合わせ有効領域】
【強み】要素技術間の統合力
の信頼性
■自動車,ステッパー等
【NASA型組合せ有効領域】
【強み】フェーズ管理のノウ
ハウの蓄積
■造船,飛行機等
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「私が知財部長だったらこうする・・・」
企業の戦略的創造性に貢献する知財マネジメント革新への取り組みの例
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6. 戦略的知財現場の構築(ビジネス知財人材の育成)
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知財の現場にビジネス思考を加える(戦略的知財現場の構築).
専門性が高いゆえに知が蛸壺化するおそれのある知財部員のビジネス研
修,教育の実施.目を外に向ける癖をつける.JSR等では4C
どうするか?の一例
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リアルな自社の技術製品を題材にしたグループワーク研修
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どうすれば,自社のチャレンジャー製品を,差異化・独自化の視点で,リーダー製品に転換できるか?
そのために不足しているモノやコトはなにか? Why? 制約要因は? 克服するための代替要素は? Why?
どれらを,どのようなカタチで現状のチャレンジャー製品に織り込めばよいのか? Why? 実行上の阻害要因は? 克
服プランは? Why?
どのような資源,社内・社外の協力が必要か? Why? 実行上の障害要因は何か? 克服プランは? Why?
めでたくチャレンジャー製品に転換できた後に出てくる,競合技術に対する先行的な打ち手は何か?
Why? 制約要
因は何か? 克服プランは? Why?
以上の道筋を想定した上で知財をどのように使うのか? Why? 実行上の障害要因は? 克服プランは? Why?
はじめの一歩は「知財プラス1」
•
•
一人ひとりがスーパーマンになる必要はない.
やる気のあるアーリー・アダプターを募る.個々の知財部員ごとに社会動向分析
担当,市場動向分析担当,技術担当,Mktgプラン立案担当,収支モデル立案
担当といった,知財だけでないプラス1の役割と学習の機会を提供.制度化.
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当初目標は新製品を企画開発部門へ社内提案.
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最終目標は知財部発のビジネスプランに基づく新技術製品の発売.
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「私が知財部長だったらこうする・・・」
企業の戦略的創造性に貢献する知財マネジメント革新への取り組みの例
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7. 知財部発,顧客の夢を実現する“限界マップ”づくり
社内版“コンセプト・イン” による新技術製品の開発支援
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顧客価値
子供でも運転できる
ぶつからないクルマ
顧客価値を先ず決める.
その実現に必要な要素技術のイメージを決定.
要素技術のイメージごとの社内資源・社外資源の有無を調べる.
資源が無い技術は特許文献をサーチ.ズバリ・類似技術を調べる.
ズバリ・類似技術がある場合,それによる実現可能性を調べる.
ズバリ・類似技術がない場合,継続的に類似技術を調べる.
実施可能要件を充足可能なら出願.
要素技術の
イメージ
社内資源
社外資源
他社特許文献
社内・社外連携先
要素技術A
具体例・・・あり
1.・・・・
2.・・・・
あり
なし
なし
要素技術B
具体例・・・なし
1.・・・・
2.・・・・
なし
あり
あり
X社への要素技術B
の実現可能性につ
いての打診.
要素技術C
なし
なし
なし
R&D,営業部門へ
の継続的な情報探
索の協力依頼.
実施可能要件
要素技術Cをアイデアベースで
充足できれば実施可能要件を
充足可能.
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企業経営に資する創造優位の知財経営マネジメント(12)
■まとめ
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顧客価値は,無形ゆえに急速に変転・陳腐化する.
他社に先駆けて顧客価値を創造し続けて企業価値を高める.
ポイントは,社内・社外の個の多様性から,異質で多様な差異化・独自化
された技術製品を効率的に創出し,活用すること,
つまり,組織的な仕組みとして“戦略的創造性”が求められる.
知財部門は,知を財産に転換する部門.
21世紀の先進的な知財部門は,戦略的創造性を統括する部門.
顧客価値を自社の技術と紐付けて体系化し,モノづくり企業における,新
しい顧客価値の創造を部門横断的に支援する,
“イノベーション・ナレッジ・センター”としての役割が期待される.
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戦略と脱戦略
戦略
脱戦略
発生
計画的
非計画的(創発的)
行動
規律
自律
価値基準
同質・安心ベース
コミュニケーショ
ン・スタイル
マネジメント・
スタイル
組織の創造性
クローズ
異質寛容
信頼ベース
オープン
型作りのマネジメント 型破りのマネジメント
創造性の均質化
創造性の多様化
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(C)Seigo OTAKE
主要参考文献
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1. 相葉宏二著・グロービス・マネジメント・インスティテユート編(1999)『MBA経営戦略』ダイヤ
モンド社.
2. 大竹正悟(2006)『価値協創の共進化アーキテクチャの構築』早稲田大学大学院アジア太
平洋研究科修士論文.
3. 大竹正悟(2006)「オープン・オートノミー戦略:多様性から創造する協創優位のビジネスモ
デル革新」『オフィスオートメーションVol.27,No1,pp21-30』.
4. 恩蔵直人(2007)『コモディティ化市場のマーケティング論理』有斐閣.
5. サイトウ・アキヒロ(2007)『ゲームニクスとは何か:日本初,世界基準のものづくり法則』幻
冬舎.
6. 榊原清則(2002)『経営学入門(上)』日本経済新聞社.
7. 榊原清則(2005)『イノベーションの収益化:技術経営の課題と分析』有斐閣.
8. 寺本義也・山本尚利(2004)『技術経営の挑戦:ちくま新書』筑摩書房.
9. 寺本義也(2005a)『コンテクスト転換のマネジメント』白桃書房.
10. 寺本義也(2005b)「「ものづくり」から「ことづくり」へ」『早稲田ビジネススクール・レビュー第2
号』p.6-12、日経BP企画.
11. 寺本義也・岩崎尚人(2000)『ビジネスモデル革命:競争優位へのドメイン転換』生産性出版.
12. 寺本義也・岩崎尚人(2007)『ビジネスモデル革命〔第2版〕:競争優位から共創優位へ』生
産性出版.
13. 三品和広(2006)『経営戦略を問いなおす:ちくま新書』筑摩書房.
14. 安富歩(2006)『複雑さを生きる』岩波書店.
15. J.M.アッターバック(1998)『イノベーション・ダイナミクス:事例から学ぶ技術戦略』有斐閣.
16. 志村幸雄(2004)『「発明力」の時代:夢を現実に変えるダイナミズム』麗澤大学出版会.
17. 藤田東久夫(2007)『たった三行で会社は変わる:変化と行動の経営』ダイヤモンド社.
18. 田中央(2003)『商品企画のシナリオ発想術:岩波アクティブ新書56』岩波書店.
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