4.社会貢献・地域貢献について考えよう

9章
社会・文化
TFU リエゾンゼミ・ナビ
『学びとの出会い』
4.社会貢献・地域貢献について考えよう
1
社会貢献・地域貢献の定義
広辞苑で「社会貢献」と引くと、「社会のためになるように力を尽くす
こと」とあります。また、皆さんおなじみの Wikipedia1)では、「法人ま
たは団体、個人による公益或いは公共益に資する活動一般を意味し、はじ
めから社会に資することを目的として行う直接的な社会貢献と特定の事
業や行為をすることが結果として社会貢献につながる間接的な社会貢献
とがある。
」2)と説明されています。
しかし、続いて「何を以って社会に資するというか、具体的な事例にも
より、明確な価値判断の基準、或いは合意がないことも多く、しばしば、
独善的な価値を含む場合もある。個人の社会貢献としては、代表的なもの
1)
Wikipedia
誰もが無料で読むことが
できる Web ベースの百科
事典。2001 年にジンボ・
ウェールズが信頼される
フリーなオンライン百科
事典を共同作業で創り上
げることを目的とする個
人的なプロジェクトとし
て開始。2003 年 6 月以降
は非営利団体であるウィ
キメディア財団によって
運営されている。
としてボランティアがあり、企業・団体など法人では、慈善事業または営
2)3)
引用
利活動を通しての結果的な社会問題の是正、或いはボランティアへの援助、 http://ja.wikipedia.org
特定の慈善活動への人材資機材の供出、寄付などがある。」3)とも書かれ /wiki/社会貢献より抜粋
ています。つまり、活動方法としては様々なものがありますが、「何が社
会のためになるのか」を良く考えて行動に移すことが大事なようです。
「地域貢献」は、一般には社会貢献活動のなかで地域社会に密着して行
うもの指しますが、公式な定義はまだ存在しないと思われます。しかしな
がら、企業などでは以下のような枠組み4)を用いる場合もあるようです。
①
経済の振興に関する活動(地場産業や商店街の活性化、特産品や農水
産物など地域資源の活用、創業支援や他企業の経営支援、他)
②
文化・環境に関する活動(祭りや伝統行事の開催や維持、地域におけ
る文化やスポーツの振興、地域の美化や緑化、地域の環境保全、他)
③
教育に関する活動(経済・金融・消費者教育、起業家教育、職場体験・
インターンシップの受け入れ、他)
④
雇用に関する活動(高齢者の雇用・就業支援、障害者の雇用・就業支
援、ニート・フリーターの雇用・就業支援、ホームレスの雇用・就業支援、
元受刑者の雇用・就業支援、外国人労働者の雇用・就業支援、他)
⑤
治安・安全・防災に関する活動(防犯活動、交通安全活動、消防・防災
活動、他)
⑥
保健・医療・福祉に関する活動(高齢者の生活支援、障害者の生活支
1
4)
地域貢献の定義
竹内英二:小企業における
地域貢献活動の実態、日本
政策金融公庫論集第5号
(2009 年 11 月)より
援、生活困窮者やホームレスの支援、食の安全確保、育児支援、他)
大学にも、
「教育」
「研究」
「社会貢献」の3つの役割があります。従来
から、研究成果の社会へ還元や教育の成果としての人材輩出を通して社会
に貢献する機関と位置付けられてきましたが、最近になって特に社会貢
献・地域貢献の役割が重視されるようになってきました。
2
私たちにとって社会貢献・地域貢献とは?
大学のサークルである「まごのてくらぶ」で活動している支援委員、な
らびに推進委員の方にインタビューをして、「私が考える社会貢献・地域
貢献」について語ってもらいました。これらを参考に、皆さんの思う社会
貢献・地域貢献について話し合ってみましょう。
■まごのてくらぶ推進委員(3年男子学生)
私は「まごのてくらぶ」の一員として、地域貢献に努めています。住民
の方の世代や環境によって求められるニーズは異なりますが、私たちが常
に念頭においているは「地域と大学が共に発展する」という地域共創の理
念です。求められることをすべてやってあげることは、時間と労力さえか
ければ簡単です。そうではなく、一人ではできないところを学生が補い、
できるところは積極的にやってもらうことで、住民の方にとっての自立の
促進に繋がります。地域の中にある大学の学生として、学生だからこそで
きることや発想を大事にし、普段生活する地域と住民の活性化に努めるこ
とが私にできる社会貢献であると考えています。
■まごのてくらぶ推進委員(3年女子学生)
私にとっての社会貢献・地域貢献とは、社会または地域の発展、自立の
ための一助という視点から考え、行動を起こしていくものだと思います。
私は2年次から「まごのてくらぶ」に入部し、大学周辺地域を中心に数々
のボランティアを行ってきました。この1年間で感じたことは、ボランテ
ィアの参加者が何もかも援助を行うと、その社会、地域づくりの主体が参
加者となってしまいます。活動する社会、地域の主体は誰なのか、それら
をより良くするために自分はどんな「お手伝い」ができるのかということ
を考える事で、本当のニーズが見えてくるものと考えます。
■まごのてくらぶ支援委員(20 代男性職員)
2
社会貢献とは、無償で社会活動などに参加するボランティアとは異なり、
団体・個人を問わずはじめから社会に資することを目的として行われる活
動と言われております。また、地域貢献とは社会貢献という大きな母体の
中にある社会福祉や地域社会・教育・災害・スポーツなどの様々な分野の
中の一つと言えます。
「まごのてくらぶ」では、地域共創の理念の下、本学が属している国見
地区連合町内会を活動の拠点とし、日常的な地域貢献活動に取り組んでお
ります。中でも「地域社会」の分野に力を入れており、大学周辺地域に暮
らす方々との良好な関係性の構築はもとより、地域住民に対する自立(自
助)を促し、学生と住民が一体となって、より良い地域を創るための仕組
みづくりを目的としています。
昨今、教育機関をはじめ企業などにおいても社会貢献・地域貢献に積極
的に取り組む団体が増えてきております。
「まごのてくらぶ」が現在取り
組んでいる活動は勿論ですが、各団体や個人における活動においても、そ
の活動が時代や地域のニーズに沿った形の活動であるかが今後の重要な
取り組みの一つと位置づけられます。
■まごのてくらぶ支援委員(40 代男性職員)
社会貢献の括りの中にある地域貢献。一般的にはこのように考えられて
いるかもしれません。社会貢献やボランティア、地域貢献という言葉が登
場して久しいですが、意識的にそれらをしなくても、元来、サラリーマン
でも公務員でも自営業であっても、更にアルバイトにしたって仕事をする
ことも立派な社会貢献の一つと考えます。なぜならば、世の中はすべてが
繋がりを持ち、そして循環しているからです。生活のためにお金のために、
それが自分のためや家族のためという動機がほとんどだと思いますが、一
生懸命働くことは企業を豊かにし結果儲かり、個人も企業も税金を納め、
消費が回り、みんなが豊かになる。しかし、“みんなが豊かに”の部分は
バブルが弾けて以降はそうではなくなってきた感じがしますが。
人には、みんなが幸せになってほしいと思う気持ち、心が存在するのだ
と思います。反面、争いがあるのも人間社会ではありますが、家族、暮ら
す地域、国同士が豊かで幸せになりたいと思うのも同じ人間です。転じて
社会貢献、地域貢献をしたい、やったと言っても、相手(明確な対象がな
い場合でも)が嫌な気持ちになったり幸せを感じなければ自分よがりの自
己満足で、とても○○に貢献したとは言い難いのではないかと考えます。
お互いが幸せになる行動こそが、世間に対しての貢献活動の一つだと思い
3
ます。そしてそれは人間の本能ではないかと思います。周りに灯りと豊か
さ、幸せをもたらすことが私の考える大きな意味での貢献活動だと思いま
す。
■まごのてくらぶ支援委員(60 代町内会長)
私は現在町内会長を8年、町内にある公園の愛護協力会の会長を約20
年、そして国見地区連合町内会の副会長・事務局長の任に就いています。
その関係で「まごのてくらぶ」発足時から支援委員長として学生の地域貢
献活動を見守ってきました。また地域のスポーツ少年団の指導者として約
30年スポーツをする子ども達に関わりを持って生活しています。これら
私が行っていることが、学問的用語で言う「社会貢献活動・地域貢献活動」
にあたりますが、あまり深く考えたことはありません。
私の心の中にあるものは(皆さんの考える材料提供として)
、
① 皆さんが知っていることわざ
「情けは人のためならず」
② 出身大学の精神
「人在りて我在り、他を思いやり、慈しむ心。これ即ち仁」
この「仁」の心をもって、日々学問にスポーツに取り組むこと
③ 書物の中から学んだこと
●道元禅師の教え
・人生を幸福にするのは、与えられた現在の瞬間を一所懸命生きるこ
と。そのことが人生を幸福にする唯一最大の方法です。
・自分のために何か一所懸命やってみても幸福感にはつながらないの
です。人様のお役に立ったと思うと「幸せだ」と実感するのです。
・人に接するときの大切な四つの教え。「一は布施、二は愛語、三は利
行、四は同事」
、布施は「人に施しをすること」
、愛語は「人にやさ
しい言葉をかけること」
、利行は「人の役に立つようなことをするこ
と」、同事は「人と協調してやること」です。
●稲盛和夫 (若手経営者が集まる経営塾「稲盛塾」塾長、京セラの設
立者・名誉会長) 著、
「生き方」
(サンマーク出版)より
・「利他の心」で生きる。
「利他の心」とは、仏教でいう「他に善かれかし」という慈悲の心、
キリスト教でいう愛のことです。シンプルに表現するなら「世のため、
人のために尽くす」ということです。人生歩んでいくうえで、また企
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業人であれば会社を経営していく上で欠かす事のできないキーワー
ドであると思っています。
人間はもともと、世のため人のために何かをしたいという善の気持
を備えているものです。手弁当で災害地にかけつけるボランティアの
若者が多くいるという話を聞くと、利他というのは人間が持つ自然
な心の働きだという思いを強くします。
人間の心がより深い清らかな至福感に満たされるのは、エゴを満た
した時でなく、利他を満たしたときであるというのは、多くの人が同
意してくれることでしょう。また賢明な人は、そのように他人のため
に尽くすことが、他人の利だけにとどまらず、めぐりめぐって自分も
利することにも気づいているものです。
④ まとめ
あなたが学ぶ東北福祉大学の建学の精神「自利・利他円満」を、皆さ
んの人生の中で、出来る時に、出来ることを実践して下さることを望ん
でいます。
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