一、はじめに 本町における町営住宅及び改良住宅は、昭和44年に時限

一、はじめに
本町における町営住宅及び改良住宅は、昭和44年に時限立法として施行された同
和対策事業特別措置法が施行されたことや、地元運動団体や住民の強い要望が出され
ていたこともあり昭和46年度から建設が開始された。当時、同和対策向け住宅の建
設は、本町における同和対策事業の重要な柱の一つと位置づけられ、昭和46年度か
ら昭和53年度にかけて上但馬団地122戸が建設された。また、昭和52年度から
は町内低所得者向け町営住宅として屏風団地6戸が建設された。その後、平成3年度
からは上但馬団地の建て替え事業が開始され、平成7年度には建て替え事業が完了し
106戸が建て替えられた。また、改良住宅は、本町の小集落地区改良住宅及び地方
改善事業や環境改善事業の進捗に伴い昭和60年度から建設が開始され、平成13年
度をもって全戸数38戸の建設を見た。
当初、町営住宅の入居は、行政、町議会、運動団体代表者による選考委員会で決定
し、管理は、入居者組合へ一任する形態であり、改良住宅については事業推進に伴う
改良住宅希望者が入居し管理は町で行なわれてきた。しかし、同和対策関連法の失効
と社会情勢の変化や、国の公営住宅法の改正に伴い、町営住宅の入居募集は、平成1
0年度から奈良県内を対象とした公募・抽選方式へと推移し、住宅管理については団
地入居者組合組織の衰退に伴い、次第に町の直接管理へ移行し現在にいたっている。
また、改良住宅の入居募集は、事業完了後は選考委員会を設置し入居の決定を行って
きたが、募集対象は改良住宅であるという性格上、対象地域に限定し募集を行なわれ
てきたところである。
近年社会情勢が大きく変化し、少子高齢化、格差社会が問題視されている中、これ
からの住宅施策は、社会情勢の変化に柔軟に、しかも弾力的に対応していくことが求
められている。国は、同和対策向けで建設した住宅を現在の社会状況に対応した少子
高齢社会に相応しいコミュニティーバランスが確保された団地として再生することが
望ましいとしている。
本審議会は、これらの経過を踏まえながら、今後、町営住宅や改良住宅の適切な管
理と整備の為に基本的な考え方を整理することが必要と考え、公営住宅の本来の趣旨
である住宅に困窮する低額所得者、高齢者、障害者などの住宅困窮者に対して重点的
に住宅を供給することができないかを検討し、町民の住生活の安定と社会福祉の増進
に寄与すると共に、今後、建て替え事業、改善事業、維持保全及び譲渡、用途廃止な
どの適切な手法を選択し、町営住宅及び改良住宅のストックを総合的に活用する為の
あり方を提案するものである。
今後、町行政においては、本答申を十分検討し有効適切な施策を計画的に実施され
ることを要望し期待するものである。
-1-
二、最近の公営住宅をめぐる動向
住宅施策全般として、国はこれまでの「住宅の量の確保」から「住環境を含めた住
宅の質の向上」への本格的な政策転換を図るため、平成18年6月に住宅政策の基本
的な方向を示した「住生活基本法」を制定した。
平成19年7月に低額所得者、高齢者、障害者、子供を育成する家庭など住宅困窮
者に公営住宅、公的賃貸住宅、民間賃貸住宅などの賃貸住宅の供給を促進することを
目的として、いわゆる「住宅セーフティーネット法」が制定された。また、公営住宅
は、国民の住宅セーフティーネットの中核として真に住宅に困窮する者に、公平かつ
的確に賃貸住宅を供給する役割を担うことが改めて確認された。
このような中で、公営住宅をめぐっては、真に住宅に困窮している者への入居を図
るため、家賃制度の見直し(平成21年度施行予定)
、入居継承に係る承認の厳格化ガ
イドラインの策定などを行うと共に、最近における住宅困窮者の多様化を踏まえ、入
居制度の見直しが行われるなど公営住宅管理制度の大きな見直しが行われつつある。
また、公営住宅に対する国庫補助制度においても、地方公共団体の自主性を尊重し
つつ地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備を推進するために「地域
住宅交付金」制度が平成17年9月に創設されたところであり、国の住宅施策は全般
的に大幅な見直しが行われており、今後、国の動向に大きな注意をはらっていかなけ
ればならない。
三、本審議会の審議経過
本審議会は、平成19年6月20日三宅町長の「三宅町町営住宅・改良住宅の今後
のあり方」について諮問されたことを受け、町議会代表、民生児童委員代表、地元自
治会代表、学識経験者及び行政機関代表者によって構成される委員5名が次のとおり
6回の会議を開催した。
平成19年
6月20日
審議会趣旨説明及び会長選出について
平成19年
8月
9日
三宅町の住宅ストック計画について
平成19年10月
5日
町営住宅の現状と課題について
平成19年12月
6日
改良住宅の現状と課題について
平成20年
2月
7日
改良住宅の現状と課題について
平成20年
6月23日
答申案について
-2-
四、町営住宅・改良住宅の現状と課題
1、町営住宅
【屏風団地】
屏風団地は昭和52・53年度に建設されたことから老朽化が著しく、町財政の
状況から建て替えは困難であるので、現在の入居者5戸を政策的入居として上但馬
団地11戸の空き家に平成19年8月に転居を完了された。今後屏風団地住宅の除
却と残地をどうするかが課題である。
【上但馬団地】
上但馬団地の入居・募集は公募による抽選で行っており、今後も現在の方法で進
めるべきと考える。入居資格、入居収入基準については、公営住宅法に基づき運営
されており、住宅の又貸しなどの問題は発生していない。また、福祉施策としての
特定入居も課題となったが、これまでの募集倍率が非常に高いことから当面の間は
現行の募集方法で実施するのが望ましい。
また、慢性的家賃滞納者が存在することから、今後、法的措置も含めた対応策が
求められる。また、修繕や周辺管理において、
「全て役場に・・」という意識が見ら
れることや、コミュニティー意識の向上を図る意味からも入居者の自主的な管理組
織を作ることが必要であり、その育成に積極的に取り組むべきである。加えて、行
政と入居者の役割分担を明確化するための啓蒙・啓発を進めていくことも必要であ
る。
2、改良住宅
【入居・募集】
本町の改良住宅の入居・募集は、これまで対象地域に限定して募集を行ってきた
ところである。本審議会は、事業協力者が入居するのは当然であるが、事業が完了
して5年が経過した今日もその方法が最善であるのか検討を加えた。
主な意見としては、今後も同じ方法ですべきとの意見と、対象地域限定は相応し
くないとの意見に別れたが、協議の結果、県下の動向を加味し、これからの国の流
れに沿った基本的な方向性を示すのが審議会の役割であるとの認識から以下のとお
り整理した。
改良住宅は、地域限定をはずして募集することが望ましいが、新制度への移行に
伴う周知期間も必要であり、入居・募集方法の変更の周知期間を基本的に1年程度
-3-
とし、以後、新しい募集方法の検討を行われたい。
【家賃】
現在改良住宅の家賃は、住居の構造による定額制である。しかし、今後事業協力
者でない新たな入居者が増えて行くことが想定されることから、新たに入居する者
に対しては、公営住宅法に準じた収入に応じ家賃を徴収することで意見の一致をみ
た。また、事業協力者でもその世帯の子供、孫の世代も同じ定額家賃でいいのかに
ついても協議し、定額家賃は、事業協力者の世代までとすることが望ましい。但し、
この件は、入居者に説明をする必要があると考えるので、行政の責任において家賃
改定の説明を徹底されたい。なお、改良住宅においては顕著な家賃滞納がみられな
いが、引き続き適切な措置が望まれる。
【住宅の払い下げ】
公営住宅法では、町営住宅の払い下げは認められづらいが、改良住宅については
従前居住者の代替住宅という性格上、条件が整えば認められることになっている。
しかし、入居者の意向についてまったくわからない段階で議論することは控えるべ
きとして今後の検討課題とした。したがって、入居者の意向を把握する必要がある
ことから、まずアンケート調査などを実施されるのが望ましい。
五、今後の町営住宅・改良住宅のあり方
1、入居・募集
これからの入居・募集については、本答申の四、町営住宅・改良住宅の現状と
課題の中で報告したとおり、町営住宅は従来どおりの募集とし、改良住宅について
は、平成21年度からは募集対象地域を町内全域に拡大すべきと結論づけたが、現
行の空き家については、経過措置として今日までの募集方法により実施し、新制度
への移行に関しては周知に十分配慮することが望まれる。なお、新しい入居・募集
方法の対象地域は三宅町内全域とすることで意見の一致をみた。
また、公営住宅の本来の趣旨である住宅に困窮する住宅困窮者に対して重点的に
住宅を供給することができないかについては、福祉対策として福祉世帯向けの募集
は、県の県営住宅の募集で実施されていることや、福祉向け入居の提案がされたこ
ともあり、全委員が早急に取り組むべきと意見の一致をみたところである。したが
って、実現に向けた具体策を早急にまとめられるべきである。なお、町営住宅上但
-4-
馬団地では、募集倍率が高いことから実態として困難であるので、改良住宅の募集
時において行うことが望ましい。
2、入居承継
入居の承継は、町営住宅及び改良住宅とも公営住宅法にもとづいて処理されてお
り、おおむね問題はないと考える。ただ、今後の国の動向としては、入居承継は現
行の3親等までから、配偶者のみという流れに向かうことが推測されることから、
他の市町村の動向に注意をはらうことが必要であると考える。
3、家賃設定
家賃設定については、四、町営住宅・改良住宅の現状と課題、2、改良住宅、
【家
賃】で記載したとおり、改良住宅については、新規入居者及び事業協力者の二世代
からは、公営住宅法に準じた所得に応じた家賃設定とするのが望ましいと考える。
しかし、家賃制度の改定は、現在入居している事業協力者をはじめとした改良住宅
入居者の経済状況に直結する課題でもあるので、理解と協力を得るための説明会の
開催などを検討されたい。
なお今後、公営住宅法の収入基準の改定が予定されていることから、町営住宅及
び改良住宅とも家賃滞納処理などその対応策を考えることが必要である。
4、適正・計画的な維持管理
町営住宅や改良住宅の維持管理は、三宅町公営住宅ストック総合活用計画(平成
19年8月)に基づいて行うのが望ましい。ストック総合活用計画では、効率的・
効果的な住宅整備の推進が求められており、特に、計画的な維持管理が必要とされ
ている。今後、住宅の老朽化が予測されることから、住宅設備等の計画的な修理や
少子高齢化に対応した整備の検討が必要である。
なお、住宅の適正な維持管理には、居住者の理解と協力が不可欠であることから、
十分な啓発活動やアンケート調査の実施などを検討されたい。また、入居者組合の
設立を積極的に働きかけ、地域内のコミュニティー活動の活性化をはかることが望
まれる。
-5-
六、おわりに
本町の町営住宅及び改良住宅は、同和対策事業の一環として建設されてきたという
性格を持つ。しかし、本審議会は、昨今の社会情勢や本来の公営住宅の建設目的に照
らして検討を加える時期を迎えていると考え、今後のあり方について審議を行ったと
ころである。
本審議会は、今後の町営住宅及び改良住宅のあり方について一定の方向性を示した
がまだまだ課題は多い。特に、町営住宅や改良住宅の入居者の意識がどうなっていく
のかという点においては十分協議を願いたい。ただし、公営住宅建設の本来の趣旨で
ある公平性や福祉対策としての募集などに一定の方向性を示したものと考える。しか
し、本町が厳しい財政状況であることを踏まえつつ、引き続き最小の経費で最大の効
果を挙げるという視点に立ちながら公営住宅の維持管理を進めていくべきであること
は言うまでもない。
本審議会は、行政がこの答申を尊重されることを強く希望するものであり、合わせ
て広く町民に周知されることを望むものである。
-6-