女性ヒューマノイドロボット HRP-4C の初仕事は ファッションショー ── ロボット産業化への試金石となるか スリムでナイスボディの女性ヒューマノイドロボットが誕生した。エンターテインメント分 野での応用をめざし、すでにファッションショーでの初仕事を終えた。華やかな外見に目を 奪われがちだが(?) 、むしろ注目すべきはこのロボットが担う開発戦略の方かもしれない。 道方しのぶ(サイエンスライター) スリムなヒューマノイド これまでに日本で発表された全身ヒュー マノイドロボット(ASIMO や、HRP-2、 HRP-3、SONY のかつての小型のヒュー マノイドなど)のほとんどは性別不能とは いえ、無骨なボディでどちらかというと男 性っぽいイメージだ。 しかし、 (独)産業技術総合研究所(以 下、産総研)知能システム研究部門ヒュー マノイド研究グループ(写真 1)が、3 月 写 真 2 歴 代 の HRP と。 向 か っ て 左 か ら HRP-2(2002 年)、HRP-3(2007 年)、そし て HRP-4C(2009 年)。 写真 5 これだけ細い足首でも歩行は安定。 16日に発表したHRP-4Cは“女性”を意 も、そのボディ。私を含め、女性記者たち 識し、設計されたヒューマノイド。実際に の羨望の眼差しを一心に集めるほどの(?) ボディの外観は、若い日本人女性(19 ∼ 。世 ナイスプロポーションだ(写真 3、4) 一方、将来性という意味で開発グルー 29 歳の約 100 名)の平均値を参考に決め 界で最もスリムな足首(写真 5)をもつ歩 プがアピールしたいのは、魅力的なボディ られたというが、ロボットにしては大変ス 行ヒューマノイドとしても、他に類を見な 以上に HRP-4C を含むロボット開発の体 。アンドロイド系では女性 リムだ(写真 2) い。 制かもしれない。一般にヒューマノイド 開発コストを低減 ロボットは少なくないが、ASIMO のよう ロボットの開発には膨大な開発費と開発 な安定した 2 足歩行も行えるという点で、 期間がかかり、実用化への「死の谷」をな HRP-4C は初の本格的な女性ヒューマノ かなか乗り越えられないのが現状だ。だ イドロボットといえる。 が、ヒューマノイド研究グループの金広文 外見も動作も人間に近いということで、 男主任研究員によると、HRP-4C は通常 開発グループは HRP-4C を “ サイバネ の開発コストの 1/3 ∼ 1/4 ですんだとい ティックヒューマン”と名づけた。細かく う。というのも、これまでの HRP シリー 見れば、動作機能はまだ研究途上のところ ズの男性(的 ?)ヒューマノイド HRP-2、 もあるが、HRP-4C の売りは何といって HRP-3 で開発された要素技術を、性差を 写真 3 スリムな下半身 乗り越え(!?)HRP-4C に流用したからだ。 とはいえ、かかった総開発費は約 2 億円 で、製造コストも何千万円のオーダーだ。 しかし、商品化したときにはボディ本体の 価格を 2000 万円ほどに抑えたい意向だ (この価格は ASIMO の年間レンタル料と ほぼ同じ) 。 写真 1 HRP-4C 開発グループの面々。中央 HRP-4C の向かって右隣が梶田秀司グループ 長(当時) 、一番右が金広文男主任研究員。 46 産総研ではすでに 3 年前に共通化のた めの RT 基盤技術の開発に着手し、将来 写真 4 バストもチャームポイント の“低価格”ロボットへの実現へと踏み出 ROBOCON Magazine 2009.7 P46P49_64_HRP-4C.indd 46 09.5.29 4:14:22 PM
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