「急激な衰退は予期せぬ形で起きる」空巣家庭だらけ 中国の死⾓角 2013年年1⽉月3⽇日産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/news/130103/asi13010311310001-‐‑‒n1.htm http://sankei.jp.msn.com/world/news/130103/asi13010311310001-‐‑‒n2.htm http://sankei.jp.msn.com/world/news/130103/asi13010311310001-‐‑‒n3.htm http://sankei.jp.msn.com/world/news/130103/asi13010311310001-‐‑‒n4.htm http://sankei.jp.msn.com/world/news/130103/asi13010311310001-‐‑‒n5.htm 「故郷の農村は『空巣家庭』だらけになった」 四川省省から上海に出稼ぎにきた劉劉国碧さん(28)は話す。建設現場で働く同郷の夫 と6歳の娘と3⼈人暮らし。兄弟のいない夫妻の両親は農作業をしながら実家を守ってい る。 ⼦子供が巣⽴立立ったあと残された夫婦の家庭を中国では「空巣家庭」と呼ぶ。そんな家庭 が地⽅方の農村部で急激に増えている。30年年以上続く⼀一⼈人っ⼦子政策の影響で、少⼦子⾼高齢 化が猛烈烈な勢いで進んでいるからだ。 劉劉さんの出⾝身地では⼀一時期、2⼈人⽬目の妊娠が地元当局に知れると、係官が押しかけて 堕胎を強要するなどした。この結果、祖⽗父⺟母の世代が4⼈人、⼦子供世代が2⼈人、孫が1⼈人 という⼀一族ばかりになった。 2010年年の国勢調査によると、60歳以上は1億7800万⼈人と総⼈人⼝口の13%。 中国紙、⼈人⺠民⽇日報によれば、「中国は1億⼈人以上の⾼高齢者を抱える世界唯⼀一の国」。専 ⾨門家の予測では、60歳以上は14年年には2億⼈人を突破し、25年年には3億⼈人、42年年 には総⼈人⼝口の30%を超える。 ◇ 「急激な衰退は予期せぬ形で起きる」。経済史学者のニオール・ファーガソン⽶米ハー バード⼤大教授は10年年、過去の帝国の衰退を検証した⽶米誌フォーリン・アフェアーズの 論論⽂文でこう指摘した。 ⾼高成⻑⾧長と軍拡を推し進めてアジア・太平洋での海洋覇権の獲得を狙う“新たな帝国” の中国。だが、順⾵風満帆に⾒見見える「パックス・シニカ(中国中⼼心の秩序)」への歩みに も死⾓角がある。⼈人⼝口動態の激変だ。 ⾼高齢化や若若年年層の縮⼩小、移⺠民、都市⼈人⼝口の膨張、その結果としての⾷食料料や⽔水、資源の 逼迫(ひっぱく)…。⽶米国家情報会議(NIC)が昨年年12⽉月に公表した報告書「世界 の潮流流2030」でも、中国など途上国の⼈人⼝口動態の変化を「世界の巨⼤大な潮流流」に位 置づける。 実際、中国にとって悩ましいのは、⼈人⼝口構成をめぐる2つの転換点がほぼ同時に訪れ ていることにある。 ⼀一⼈人っ⼦子政策の影響で⽣生産年年齢⼈人⼝口(15〜~59歳)が15年年までに減少に転じる⼀一 ⽅方で、農村部の余剰労働⼒力力が出稼ぎ先の都市部の雇⽤用拡⼤大で底をつき、労働⼒力力の供給拡 ⼤大がストップする⼤大転換点を迎えつつある。 ◇ ■インド襲う都市化の波 少⼦子⾼高齢化による労働⼒力力不不⾜足で、中国⾃自体が、⾼高齢者を養い、国の経済を⽀支える働き ⼿手の⾜足りない“空巣国家”となるかもしれない。⽶米国家情報会議(NIC)の報告書は、 中国が⾼高齢化社会を⽀支える海外移⺠民の受け⼊入れに頼らざるをえなくなるとも予測する。 ⽣生産労働⼈人⼝口層が60歳以上の⾼高齢者を養う⽐比率率率は2010年年段階で5⼈人に1⼈人だ が、20年年に3⼈人で1⼈人、30年年に2・5⼈人で1⼈人を養う必要に迫られる。だが、すで に中国の社会保障制度度は機能不不全に陥っている。 ◆未富先⽼老老の国 中国で定年年退職後に⽀支給される年年⾦金金は「養⽼老老保険」と呼ばれる。中国社会保障基⾦金金に よると、中国の国内総⽣生産(GDP)に占める養⽼老老基⾦金金の積⽴立立残⾼高の規模は現在約2% しかない。⽶米国の15%や⽇日本の25%を⼤大きく下回っている。 その理理由は致命的ともいえる積み⽴立立て不不⾜足にある。政府系シンクタンク、中国社会科 学院の調べでは、都市住⺠民向けの養⽼老老保険の個⼈人⼝口座記載総額は11年年で2兆4900 億元(約34兆3400億円)。 だが、実際に積まれているのは2703億元(約3兆7300億円)にすぎなかった。 他の社会保険料料への流流⽤用や実際には積まれていない「カラ⼝口座」が絶えないからだと いう。年年⾦金金破綻は必⾄至と専⾨門家も指摘する。 しかも、中国の1⼈人当たりの国⺠民所得は先進国よりまだまだ低い⽔水準にある。 中国社会科学院で⼈人⼝口労働経済研究所⻑⾧長を務める蔡●(さい・ほう)⽒氏は、中国紙へ の投稿で「⽇日⽶米欧など先進国が経済発展の上で⾼高齢化社会を迎えたのに対し、途上国の 中国は⼤大衆に富が⾏行行き渡る前に⽼老老いてしまう世界初の『未富先⽼老老』の国」と嘆いた。 中国にとって少⼦子⾼高齢化は格差拡⼤大を加速させ、国家の統⼀一性をも揺るがすものなの だ。 ◆⾜足りない電⼒力力 経済成⻑⾧長で中国の後を追い、インド洋というシーレーン(海上交通路路)に⾯面して中国 海軍と対峙(たいじ)する、もうひとつの⼤大国インド。経済協⼒力力開発機構(OECD) は、30年年には経済規模で中国、⽶米国に次ぐ世界3位となると予測。だが、アジアの巨 象も、⼈人⼝口動態の急変は避けられない。都市⼈人⼝口の急増である。 昨年年7⽉月、インド史上最悪という⼤大規模停電が発⽣生し、全⼈人⼝口の約半分に当たる6億 ⼈人以上が住む約20州が停電に⾒見見舞われた。 ⾸首都ニューデリーでは、「メトロ」と呼ばれる⼀一部地下鉄の都市交通がストップする など、市⺠民⽣生活が混乱した。夏場の電⼒力力需要が発電能⼒力力を上回ったのが原因だった。 インドでは、都市化とともに、国⺠民1⼈人当たりの電⼒力力使⽤用量量は6年年間で34%も増え た。発電能⼒力力を増強しても需要の増加に追いつかない状態が続く。今後20〜~25年年間 で都市⼈人⼝口は6億⼈人に倍増する⾒見見通しだ。政府計画委員会は「都市のシステムに膨⼤大な ストレスがかかることになる」と危機感をあらわにする。 しかし、都市部のインフラ整備には国⺠民1⼈人当たり年年間100ドルが必要とされるの に現在は17ドルしか費やされていない。財源の確保が⼤大きな悩みである。 NICの報告書は、インドなど途上国の急速な都市化は中間層の拡⼤大につながる半⾯面、 対応を誤れば成⻑⾧長の「アキレス腱(けん)」ともなると指摘する。 ◆先輩格の⽇日本 ⽇日本は、⾼高齢化や都市化の先輩格である。新たな帝国や⼤大国の浮沈沈を傍観するのでは なく、経済協⼒力力やビジネスのチャンスとすべきだろう。それはアジア地域の安定にも寄 与するはずだ。 医療療などサービス市場は急成⻑⾧長し、電⼒力力などインフラ整備、渋滞や⼤大気汚染の緩和へ 地下鉄の導⼊入も相次ぐはずだ。 「中国が抱える問題は、かつて⽇日本が経験したことでもある。われわれができること は、経済活動を通じて中国を軟着陸陸させていくことだ」。関⻄西経済同友会の⼤大林林剛郎郎代 表幹事はこう提⾔言する。 ●=⽇日へんに⽅方
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