P.2 - RALLIART

連覇。
大逆転 !
!その時、何が起こったのか…
検証、1月18日
(土)
レグ16
昨年パリダカ総合優勝の増岡。彼にはディ
フェンディングチャンピオンの意地がある。
監督からの指示に従って我慢の走行をして
いたが、決して優勝をあきらめていなかった。
・SSスタート
やはり三菱パジェロは強かった!
三菱パジェロは3年連続パリダカ優勝!
三菱車1∼4位独占! 増岡浩パリダカ2連覇!
!
世界一過酷なラリー、
「 2003年ダカールラリー(正式名称テレフォニ カ・
ダカール2003/通称パリダカ)」が1月19日(日)についにゴール 。
19日間に及ぶ死闘の末 、三菱パジェロエボリューションの増岡浩が2連覇を達成した。
これは、史上4人目、日本人初の快挙だった。
また 、三菱ラリーア ートチームが総合1位から3位までを独占し、
三菱車がトップ4を占めた。
SS5位の増岡は、ペテランセルよりもひと
つ前でスタート。ここで増 岡はある仕 掛け
をした。
「わざとエンジンの回転数を上げ、
派手にスタートしました。プッシュすると思
過酷なパリダカもいよいよ終盤戦。今日の
わせるためにね」
レグ16を走りきると、あとはゴールへのわず
かな距離を残すのみ。首位ペテランセル、
・SSスタート66km地点
2位 増 岡ともに他を圧 倒するずば抜けた
これまでトラブルフリーだったパジェロエボ
・CP2へ向けて
走りで、3位以下に大差をつけていた。もう
リューション。しかし、ペテランセルにまさか
ペテランセルはフルアタックを開 始した。
無 理をすることはない。ゴールまで無 事
のトラブルが 発 生する。ラジエータの水漏
一 気に縮まった増 岡との 差を再 び広げる
再び増岡との差を広げるべく、
フルアタック
ために。増岡はペースを変えず淡々と走る。
を開始したペテランセル。その前方に現れ
・CP3目前 、ゴールまで
およそ50km
にマシンを運 ぶだ け。もう順 位の 変 動は
れだった。点検と修理のためにストップし
ないと、誰もが思っていた。ペ テランセル
た。先にスタートした増 岡との距離がどん
ペテランセルは手綱を緩めることができな
たのはこの日10番手スタートのフォルクス
の4輪初優勝をみんな信じていた。しかし、
どん開いていく。
かった。増 岡の影におびえるように……。
ワーゲンのアンラール。ペテランセルがス
トップしていた間に前に出ていたのだった。
奇跡は起こった。
・SS200km地点
アンラールに追いついたペテランセルは、
・レグ16スタート前
ペテランセルのフルアタックは見事なもの
彼を抜きあぐねていた。路面は砂地でもう
ここまで完璧に首位を守ってきたペテラン
だった。あっという間に先を走る増岡をとら
もうと砂 煙が立ちこめる。ペテランセルは
セル。それを唯一追う増岡。その差はおよそ
えた。
トラブルでストップした分の差を一気
ホコリをかぶせられ続けていた。
25分。パリダカで25分は安全なリードとは
に詰めた。だ が、ペテランセルはまだフル
視界は悪い。ホコリで何も見えない。そして、
言えないが、それでもここ数日タイム差が
アタックを続けていた。
ペテランセルは痛恨のミスを犯した。岩に
左フロントタイヤを激突。それはひどいクラッ
詰まることはなかった。
「リスクを避け、無理
三菱パジェロはパリダカ3連勝を飾った。
をするな」というセリエス監督からの 指示。
・CP3手前
シュだった。岩にヒットしたサスペンション
がもぎ取られていた。
2人は無 理なバトルをあえて避け、無 事に
・CP1
応 急 修 理 をした ペテランセルのマシンが
マシンをゴールに運ぶことを考えていた。
まず増岡が通過、
タイムは1時間42分27秒。
また、悲 鳴を上げた。水 漏 れだ。ペテラン
2輪でパリダカ6勝という輝かしい実 績の
続いてくるはずのペテランセルは遅れをと
セルは再びストップしてしまう。ペテランセ
ペテランセル。4輪転向後の初優勝は目前。
っている。ようやくペテランセルが通過、タ
ルは焦った。すでに平常心を失っていた。
ペテランセルの懸命の修理が続く。しかし
ペテランセルは首位を守るプレッシャーと
イムは2時間1分50秒。総合タイムで25分
同じ頃、やはり増岡はペースを崩さず慎重
応 急 処 置 程 度 で 直るような 状 態ではな
絶えず闘っていた。
あった差が、6分にまで縮まっていた。
に走行を続けている。
かった。後 から同じルートを走 行してくる
・クラッシュ地点
アクシデント続出の過酷な前半戦
先 に仕 掛 けたのはペ テランセル だった。
ラリーは1月1日(水)、フランスのマルセイ
14日(火)
のステージでこん身のアタック。
アシスタンストラックの 到 着を待つより他
ユをスタートした。フランス・スペインでの
増岡との差をおよそ25分まで広げる。その
はなかった。
ヨーロッパラウンドはほんの 肩 慣らし。本
差を詰めようと増岡も必死の走りを続ける
格的な砂漠のラリーは、6日
(月)チュニジア
が、パンクなどもありなかなかその差が詰ま
でのステージから開始された。
らない。しかし、
増岡は我慢の走りを続けた。
増岡はゴールして、ペテランセルのアクシ
砂 漠に出た直 後から、パジェロエボリュー
パリダカにおいて、25分差はセーフティリー
デントを詳しく聞いた。瞬間、とっさに意味
ション2台の激しいデッドヒートが繰り広げ
ドとはいえない。ワンチャンスで簡単にひっ
が分からなかったという。
「彼にとっては大
られ、3位以下のマシンはどんどん引き離さ
くり返る… …。それにずっとトップを走る
きな不 運 でした。自分は今 朝はずいぶん
れた。パジェロエボリューションはまさに
プレッシャーは相 当なもの。そ の 重 圧を
疲れを感じていましたし、スピードを出すに
「砂漠のF1」、走りの次元が違っていた。
一 番よく知っているのは、なにより増 岡 で
は路面がラフすぎたので、あえてプッシュは
しかし増岡を不運が襲う。8日(水)
はミスコ
あった。
しませんでした」
ース、10日(金)にはタイヤを6本もパンク。
そして奇跡は起こった。パリダカ最後の長
・ゴール地点
・ゴール地点 、数時間後
もう1台のパジェロエボリューションを駆る
距 離ステージの18日
(土)
、
トップの ペテラ
ペテランセルとおよそ15分の 差をつけら
ンセルにラジエータトラブルが発 生。何と
ようやくペテランセルがシャルムエルシェ
れてしまう。
か 修理したものの、増岡との差はわずか。
イクに到着。SS42位、総合3位に転落して
今年 の パリダカは、さまざまな事 件 が 起
ペテランセルは全 力でアタックをかけた。
こった。9日
(木)
、パジェロエボリューション
増岡との差を少しでも 広 げるために、そし
を 追 いかけて総 合 3位 につけていた日産
て… …。岩にクラッシュ。ペテランセル の
ピックアップの 篠 塚 建 次 郎が砂 丘 越えに
パリダカ最 初で最後のミスだった。これで
Leg16 18January
失敗。時速170kmで大クラッシュ。マシン
ペテランセルは3位へ転 落。代わりにトップ
に 立ったのは、増岡。奇跡を信じて我慢の
Sandy
は顔や足を負傷し、チュニスに緊急搬送さ
走りを続けた増 岡に、勝利の女 神は微 笑
Tar
mac
れた。12日
(日)
には、2輪チームのアシスタ
んだ。
Gr
avel
ントトラックが埋 設された地 雷を踏み、爆
総走行距離8576km、SS合計5257kmを
St
ony
発。乗員に怪我はなかったが、その後を走
通算49時間8分52秒で走り抜けた増岡。
るすべての車が現場で足止めされた。パリ
最 後までトップを快 走し続 けた ペテラン
ダカを走ること、それは常に危 険と隣り合
セル。この 2人の 激しく、そしてフェアな
わせであることを感じさせる出来事だった。
バトルは見ている者すべ てを魅了した。
モンスターマシン、パジェロエボリューション
の他を圧倒した走り。日産、フォルクスワー
13日
(月)
の休息日をはさみ、
後半戦スタート。
ゲン、BMWなどの 他 チームも 本 格 的 な
後 半 戦もパジェロエボリューション2台 の
ワークス体 制で参 戦し、パリダカは新しい
し烈なトップ争いは続く。
時 代を迎えた。
RALLIART JOURNAL
いた。しばらく三 菱 のサポートトラックの
中でエンジニアと話し込んでいた。顔を洗
アブリッシュ
は 砂 の上を数回転した。この事故で篠塚
そして増岡に奇跡は起きた
1
前日のSS順位がスタート順位となる。前日
リエゾン
413km
SS
スタート
0
ム 1
:0 0
:1 3
タイ 9
:0
ト
1
ー :
スタ 岡 ル 9
増 ランセ
ペテ
CP1
0km
い、落ち着 いたところで 記 者 団 に 取り囲
まれたが、涙の会見となってしまった。
「ひどい日だった。前をいくVWのアンラール
CP2
66km地点
325km
137km
7
:2 0
イム 53
: 4
:5
過タ 10
1
通
:
1 1
CP 岡 ル 1
増 ランセ
ペテ
の後ろで、ホコリがひどく、視界が悪く、岩
7
:5 4
イム 30
1
: 1
:
過タ 12
:3
2通 12
P
C
岡 ル 増 ランセ
ペテ CP3
手前
200km地点 253km
CP3
クラッシュ地点
2
:3 1
イム 31
: 3
:2
過タ 13
1
:
3通 6
CP 岡 ル 1
増 ランセ
ペテ
に当たった。モータースポーツはフィニッシュ
して勝利がある。初めからレースをリードし
てきたのに……。次のチャンスを生かすよ」
SS
ゴール
7
:3 2
3
:0 1
イム 14
:5
タ
5
ル 6
:
ゴー 岡 ル 1
増 ランセ
ペテ
リエゾン
我々の想像よりはるかに大きい、優勝への
プレッシャー。それに飲み込まれたペテラン
セル。プレッシャーに耐える術を知っていた
50km
からこそ、自分のペースを守り続けた増岡。
シャルムエルシェイク
勝利の女神は、最後に増岡に微笑んだ。
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